JP2006331901A - 位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法 - Google Patents

位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法 Download PDF

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Abstract

【課題】実像と電子回折像を測定する際の微小径かつ平行な電子線を、明るくかつ均一な強度分布にする位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術を提供する。
【解決手段】位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像を観察する際には、収束電子線を試料3の注目領域2に走査しながら照射し、撮像素子11で検出した透過電子線の強度を前記収束電子線の走査と同期させてモニター17に表示することによって前記注目領域2を画像化し、前記電子回折像を観察する際には、前記注目領域2の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞り15を前記試料3の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞り15を通して前記試料3の注目領域2に照射し、前記試料3を透過した電子線が作る電子回折像を前記撮像素子11により検出する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、電子線を試料に照射して、試料を透過した電子を検出して拡大像を得る電子顕微鏡装置に係り、特に、位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術に関する。
電子顕微鏡の高分解能化技術の主なものとして、分解能を制限する要因である対物レンズの収差を電子光学系のハードウエア技術によって取り除き高分解能な実像を観察する方法と、試料の電子回折像と試料外側はゼロポテンシャルという条件を用いて位相回復アルゴリズムで演算処理することにより、高分解能な実像を得る方法の2つがある。前者の技術は、例えば、「Journal of Electron Microscopy, Vol. 48, p. 821-826 (1999)」に示されている。後者の技術は、例えば、「SCIENCE Vol. 300, p. 1419-1421 (2003)」に示されている。
後者の技術内容を図示すると、図1のようになる。例えば、試料が結晶性の微粒子である場合、電子顕微鏡の電子回折像モードにより、図1(a)に示すような微粒子の電子回折像(逆空間拘束条件)を得る。微粒子の形状を何らかの観察法で観察し、図1(b)に示すような、微粒子の外側をゼロポテンシャルとしたデータを得る。図1(b)は、微粒子の外側のポテンシャル分布(実空間拘束条件)を示し、図中、白い部分は微粒子の形状、黒い部分はゼロポテンシャルを示す。それらを入力データとして位相回復アルゴリズムを用いたプログラムによる位相回復再生像の計算をコンピューターで行う。その結果、図1(c)に示すような、微粒子の高分解能な実像(位相回復再生像)が得られ、原子配列が見えるようになる。
位相回復のアルゴリズムを、図2に示す。実空間における試料の構造(ポテンシャル分布)をρtとすると、それをフーリエ変換(FT)したものは、
f = |f(K)|eiφ(K)
と表せる。ここで、f(K)、φ(K)はK空間(逆空間)における振幅と位相である。fを逆フーリエ変換すれば、元の試料構造ρtが得られる。
電子顕微鏡において試料に電子線を照射すると対物レンズの後焦点面には電子回折像が形成されるが、それは|f(K)|2に相当する。すなわち、試料を構成する周期構造の振幅情報のみが含まれており、位相情報は失われている。しかし、電子回折像には電子顕微鏡の実像が有する分解能以上の高周波数の周期構造情報が含まれている。一方、電子顕微鏡で観察される実像は、対物レンズの実像面に形成される像を後段のレンズで拡大したものであるが、それはρtの投影像に相当する。ただし、実像の分解能は、対物レンズの収差、伝染の波長やエネルギー幅などで制限される。さらに、測定時の試料ドリフトや振動、磁場などの外乱影響が付加され、記録された実像の分解能が決まる。結果として、その分解能以上の微細構造情報は失われている。従って、電子回折像の位相情報を回復できれば、それを逆フーリエ変換することにより、電子顕微鏡の実像が有する分解能あるいは記録された像の分解能以上の実像を再生できる可能性がある。
電子顕微鏡で観察した試料の電子回折像と、何らかの観察法で得た試料外形と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータを用いて、位相回復により高分解能実像を得るための手順は、次のようになる。先ず、試料構造ρtの初期値としてランダム構造ρを仮定し、それをフーリエ変換してfを求める。fの振幅|f(K)|に電子回折像の強度分布から求めた値|f'(K)|を逆空間拘束の条件として代入する。これによってfは、
f' = |f'(K)|eiφ(K)
となる。これを逆フーリエ変換して、試料構造の位相が回復したρ'tが得られる。次に実空間拘束の条件として試料外形と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータを代入する。これによって位相情報の回復が高速化される。こうして試料の実像が再生される。これを新たなρtとして上記の操作を繰り返す。操作終了の目安は、再生した実像において試料が存在しない領域の強度の総和を、実像を構成する全画素数で割った値が収束することである。
逆空間の拘束条件となる電子回折像は、以下のようにして測定される。先ず、位相回復アルゴリズムを用いたプログラムによる位相回復再生像の計算を行う際に、扱える電子回折像と試料の外側をゼロポテンシャルとしたデータのサイズには条件がある。そのため、図3に示すように、試料3の電子線照射領域2に照射する電子線1の直径を通常観察の場合よりも小さくする必要がある。許容される最大の電子線径は、電子線の波長と電子回折像のカメラ長との積を撮像デバイスの1画素のサイズで割って得られる。撮像デバイスとしてイメージングプレート(画素数:3200×4000個、画素サイズ:25×25μm)を用い、電子線の加速電圧を200kV(波長:0.0025nm)とし、カメラ長が1mである場合には、最大電子線径は100nmとなる。また、シャープな電子回折像を観察するために、平行な電子線を照射しなければならない。これらを満足させるために、前記従来技術では、図4(b)に示す電子光学経路で観察している。
以下に、従来技術による電子回折像の測定方法を、図4(b)を用いて説明する。従来技術では、電子顕微鏡のうち透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)を用いている。透過電子顕微鏡は、電子銃4、コンデンサー絞り5、照射レンズ6、対物レンズ(前磁場)7、対物レンズ(後磁場)8、中間レンズ9、投射レンズ10、撮像素子11から構成される。通常の観察では試料の広い領域(ミクロンのオーダー)に平行な電子線を照射するために、照射レンズ6によって電子線1を広げる。これに対して前記従来技術では、図4(b)に示すように、照射レンズ6によって電子線1を収束させ小さな電子線径にする。但し、この段階では電子線は平行ではないので、対物レンズ(前磁場)7を強励磁状態で用いて収束した電子線を平行にして、試料3(図中、黒色の矢印で示す。)の電子線照射領域(注目領域)2(図中、白色の矢印で示す。)に照射する。電子線照射領域2の大きさは、電子銃4の加速電圧や電子放出方式、コンデンサー絞り5の孔径、照射レンズ6と対物レンズ(前磁場)7の励磁条件などによって決まる。数十nm直径にすることが可能である。試料内部で散乱や回折した後に透過した電子線は、対物レンズ(後磁場)8、中間レンズ9、投射レンズ10によって結像される。図4(b)に示した電子回折像モードでは電子線照射領域の電子回折像12が観察される。
また、従来技術では明記していないが、通常の透過電子顕微鏡の観察モードとして、図4(a)に示した実像モードがある。このモードでは電子線照射領域の実像13が観察できる。両モードでは、中間レンズ9と投射レンズ10の励磁条件が異なる。すなわち、(a)実像モードでは、対物レンズ(後磁場)8下方の実像面に形成された電子線照射領域の実像13を中間レンズ9、投射レンズ10で拡大する。(b)電子回折像モードでは、対物レンズ(後磁場)8下方の回折像面(後焦点面)に形成された電子線照射領域の電子回折像12を中間レンズ9、投射レンズ10で拡大する(カメラ長が可変である)。
Journal of Electron Microscopy, Vol. 48, p. 821-826 (1999) SCIENCE Vol. 300, p. 1419-1421 (2003)
実像と電子回折像を観察する場合に、試料に照射する電子線は微小径かつ平行であるという条件の他に、明るさとその均一性が重要である。明るさは、実像や電子回折像を撮像デバイスで記録する時の露光時間や試料の観察視野を探す時の操作性に影響する。電子線が暗くて露光時間が長くなると、電子線照射による試料へのダメージの増大や試料のドリフトによる観察視野のずれが起こり、データの信頼性や精度が低下するという問題がある。また、暗い電子線では視野探しの効率が低下する。均一性は、特に観察した実像の明るさむらに影響し、試料構造と無関係なコントラストを与える。従って、その実像や実像から決定した試料外形と試料外側をゼロポテンシャルとしたデータを用いて位相回復した試料構造の精度を低下させる可能性がある。
前記従来技術の電子光学経路では、電子線径を小さくするために、10μm程度の小さな孔径のコンデンサー絞り5を用いているので、電子線は必然的に暗くなる。また、数十nm直径に細く絞った電子線による照射領域の全体を撮影するので、実像には電子線の強度分布(ガウス分布)が反映され照射領域周辺部が暗くなったり、また、小さな孔径のコンデンサー絞りで散乱や反射された電子によって生じるフレネルフリンジの影響で照射領域周辺部が振動した強度分布になったりする。
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、実像と電子回折像を測定する際の微小径かつ平行な電子線を、明るくかつ均一な強度分布にする位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、以下のように構成する。
(1)収束電子線を試料上で走査することが可能な走査透過電子顕微鏡(STEM;Scanning Transmission Electron Microscope)の機能を有する電子顕微鏡を用いて、実像を観察する際には収束電子線を試料の注目領域(電子線照射領域)に走査しながら照射し、電子線検出器で検出した透過電子線の強度を収束電子線の走査と同期させてモニターに表示することによって注目領域を画像化し、電子回折像を観察する際には、前記注目領域の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞りを試料の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞りを通して前記試料の注目領域に照射し、透過電子線が作る電子回折像を撮像素子で検出する。実像と電子回折像はデジタルデータとしてコンピューターに記録する。
(2)汎用型の透過電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron Microscope)を用いて、実像と電子回折像を観察する際に、対物レンズの実像面に挿入する制限視野絞りの孔径を、対物レンズの実像面における倍率と電子線の波長とカメラ長との積を、撮像素子の1画素のサイズで割算した値よりも小さくする。実像と電子回折像は、それぞれ、TEMの実像モードと電子回折像モードにより観察し、デジタルデータとしてコンピューターに記録する。
上記(1)あるいは(2)の観察方法により、数十nmの電子線照射領域に対して、従来技術の場合よりも多い電子線量で均一に照射できるので、明るくむらの無い実像と電子回折像を測定できる。
上記(1)あるいは(2)の方法で測定した実像と電子回折像のデジタルデータを、位相回復アルゴリズムを用いて演算処理することにより、デジタル記録した実像よりも高分解能な実像を再生できる。
以下、本発明の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法の代表的な構成例を列挙する。
(1)加速した電子線を収束あるいは平行にして試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子線を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像を観察する際には、前記収束電子線を前記試料の注目領域に走査しながら照射し、前記撮像素子で検出した透過電子線の強度を前記収束電子線の走査と同期させてモニターに表示することによって前記注目領域を画像化し、前記電子回折像を観察する際には、前記注目領域の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞りを前記試料の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞りを通して前記試料の注目領域に照射し、前記試料を透過した電子線が作る電子回折像を前記撮像素子により検出することを特徴とする。
(2)前記(1)の位相回復方式電子顕微鏡による観察方法において、前記実像を観察する際に、前記撮像素子で検出される散乱電子の検出角度範囲を、前記撮像素子の上方に挿入した検出角度制限絞りを用いて設定するようにしたことを特徴とする。
(3)加速した電子線を対物レンズを介して試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像と電子回折像を観察する際に、前記対物レンズの実像面に、前記対物レンズの実像面における倍率と電子線の波長とカメラ長との積を前記撮像素子の1画素のサイズで割算した値よりも小さい孔径を有する制限視野絞り挿入して、前記実像と電子回折像の強度分布を得るようにしたことを特徴とする。
(4)前記構成の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記実像と電子回折像の強度分布を、前記撮像素子や検出系によりデジタル記録したデータを、位相回復アルゴリズムを用いて演算処理することにより、デジタル記録した実像よりも高分解能な実像を再生するようにしたことを特徴とする。
(5)前記構成の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、観察に用いる電子線が透過しない厚さの金属板に、収束イオンビームや機械研磨や化学研磨のうち少なくとも何れか一つの加工方法によって加工した孔を有し、かつ、前記孔の加工面は電子回折像の強度分布にノイズを与えない滑らかさを有していることを特徴とする。
(6)前記(4)の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、前記位相回復アルゴリズムを用いて演算処理するための実像や電子回折像の観察に用いる第1の孔および通常の制限視野観察に用いる第2の孔の両方、または前記第1の孔のみを有することを特徴とする。
本発明によれば、実像と電子回折像を測定する際の微小径かつ平行な電子線を、明るくかつ均一な強度分布にする位相回復方式の電子顕微鏡による観察技術を実現できる。
以下、本発明の実施例について、図面を参照して、詳述する。
(実施例1)
図5は、本発明の第1の実施例になる走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察する場合の電子光学系と検出系を示す。本実施例は、従来技術の図4に示した透過電子顕微鏡(TEM)の光学系とは、走査コイル14や微小制限視野絞り15や検出角度制限絞り16やモニター17が付加されていること、結像レンズである中間レンズと投射レンズが無いことなどが異なる。また、図5(a)に示す実像モードの場合の撮像素子11は、電子線強度を測定するための半導体検出器やシンチレーターとフォトマルチプライアーから成る検出器であり、図5(b)に示す電子回折モードの場合は、2次元画素を有するCCDカメラや撮像管などの検出器である。
図5(a)に示す実像モードの場合、電子銃4から放出された電子線1は、照射レンズ6によって収束された後にコンデンサー絞り5によって小さな照射角を度有する部分のみにカットされ、さらに対物レンズ(前磁場)7によってサブnm径の細い電子線1に収束される。該電子線は、走査コイル14によって試料3のうちの数十nm径の電子線照射領域(注目領域)2に走査しながら照射される。
図6(a)に、実像モードにおける電子線の走査形状の一例を示す。この場合には、テレビと同様にXおよびY方向に2次元走査しているが、X方向の走査幅をY方向で変化するように制御しており、集束電子線の走査領域の形状は円形である。サブnm径の細い電子線1はpA(ピコアンペア)オーダーの電流であるが、それを試料上で走査するので走査領域全体では従来技術よりも明るい電子線照射が達成できる。また、電子線照射領域2内のどの場所においても同一強度を有する電子線を照射するので、均一な電子線照射も達成できる。
図5(a)に示す電子線照射領域2で散乱され透過した電子線は、対物レンズ(後磁場)8を介して撮像素子11で検出される。撮像素子11の上方に配置された検出角度制限絞り16は、撮像素子11で検出される散乱電子の検出角度範囲を設定する。通常、数mradに設定すると明視野の実像が得られる。撮像素子11で検出された電子線の強度を走査コイル14の走査と同期してモニター17に表示して画像化する。像倍率は、電子線照射領域2とモニター17の表示面積との比で決まる。測定した実像は、デジタルデータとしてコンピューターに記録する。
図5(b)に示す電子回折像モードの場合、電子銃4から放出された電子線1は、照射レンズ6によって広げられた後に、コンデンサー絞り5によって均一な明るさを有する部分のみにカットされる。前記従来技術の電子光学経路では、電子線径を小さくするために、10μm程度の小さな孔径のコンデンサー絞り5を用いていたので、電子線は必然的に暗かった。しかし、本発明では、電子線自身を細くする必要は無いのでコンデンサー絞り5の孔径は数十μm以上が使え、電子線を明るくできる。コンデンサー絞り5を通過した電子線は、対物レンズ(前磁場)7によって平行にされる。電子線を走査コイル14によって走査することはしない。
試料3の直上には、微小制限視野絞り15を、試料3に接触することなく配置する。この絞りは、外部から駆動機構を用いて出し入れ可能である。絞りの材料としては、結晶粒などの組織が小さな、例えばタンタル材を用い、厚さは使用する電子線が透過しない厚さとして、例えば数μmにする。絞りには、収束イオンビームや機械研磨や化学研磨のうち少なくとも何れか一つの加工方法によって加工した孔が設けられている。数十nm以下の直径の孔を加工する際にはnmオーダーに細く出来る収束イオンビームが有効である。孔の加工面は、凹凸によって電子線が散乱されないように滑らかに仕上げる。孔の形状は、電子線走査領域の形状、すなわち、上記の電子線照射領域と一致している。従って、図6(b)に示すように、微小制限視野絞り15でカットされた後の平行で静止した明るく均一な電子線は、図6(a)と同一の電子線照射領域2に照射される。
電子線照射領域2で散乱、回折した後に透過した電子線は、撮像素子11上に電子回折像を結像する。電子回折像は電子線の波長に対して無限遠の距離に結像されるが、例えば電子線の波長が0.0025nm(加速電圧が200kVの場合)である時、試料3から撮像素子11までの実効的な距離が数十cmあれば、十分な無限遠にあると言える。この距離(カメラ長)は、撮像素子11の位置が駆動機構によって可変なので自由に設定できる。
(実施例2)
図7は、本発明の第2の実施例になる透過電子顕微鏡を用いて観察する場合の電子光学系と検出系を示す。本実施例は、図4に示した透過電子顕微鏡の光学系とは基本的な構成が同じであるが、微小径制限視野絞り15を対物レンズ(後磁場)8下方の実像面に設置している点が異なる。
図7(a)に示す実像モードおよび図7(b)に示す電子回折モードの両方の場合において、電子銃4から放出された電子線1は、コンデンサー絞り5によって均一な明るさを有する部分のみにカットされる。前述した従来技術の電子光学経路では、電子線径を小さくするために、10μm程度の小さな孔径のコンデンサー絞り5を用いていたので、電子線は必然的に暗かった。しかし、本発明では、電子線自身を細くする必要は無いので、コンデンサー絞り5の孔径は数十μm以上が使え、電子線を明るくできる。コンデンサー絞り5を通過した電子線は、照射レンズ6によって広げられ、対物レンズ(前磁場)7によって平行された後に試料3に照射される。試料3により散乱、回折した後に透過した電子線は、対物レンズ(後磁場)8によって実像面における試料の実像21および後焦点面における電子回折像として結像される。
ここで、実像面に微小径制限視野絞り15を設置すると、実像モードでは試料の実像21のうち絞りの孔に対応する視野(試料中注目領域の実像20)のみが、微小径制限視野絞り15以降の結像レンズで拡大される。すなわち、絞りの孔を通過する電子線を逆に辿った時に試料3と交差する領域(試料中注目領域18)が得られ、その領域のみに電子線が照射された時と等価な電子線経路になる。同様に電子回折像モードでは、試料中注目領域18に電子線が照射された時と等価な電子線経路により試料中注目領域の電子回折像19が結像される。従って、電子線を細く平行にして照射領域を設定した従来技術の場合や、収束電子線の走査や試料直上の絞りにより照射領域を設定した実施例1の場合と同様な照射領域設定が微小径制限視野絞り15の孔径を選択することによって可能である。これによって、前述した平行かつ明るくて均一な電子線を微小領域に照射するのと同等のことが可能である。
この観察方法は、通常の制限視野観察による実像と電子回折像の観察法と同様であるが、本実施例では、微小径制限視野絞り15の孔径を以下のように規定する。
通常の制限視野絞りは、孔径が小さくても50μm程度である。本実施例では、微小径制限視野絞り15の孔径を対物レンズの実像面における倍率と電子線の波長とカメラ長の積を撮像素子の1画素のサイズで割算した値よりも小さい径にする。対物レンズの倍率が50倍、電子線の波長が0.0025nm(加速電圧200kV)、カメラ長が1m、撮像素子の1画素のサイズが25×25μm(市販の画素数3200×4000個のイメージングプレート)である場合には、微小径制限視野絞り15の最大孔径は5μmとなる。この時、試料上の電子線照射領域は100nm径に相当する。孔径が5μm以下では通常の制限視野観察に用いるには小さ過ぎるので、微小径制限視野絞り15の孔の配列は、図8に示すように、5μm以下の位相回復観察用孔22と50μm程度の汎用孔23を並べたものにする。
また、上述の制限視野絞りは、実施例1における制限視野絞りと同様に、観察に用いる電子線が透過しない厚さの金属板に、収束イオンビームや機械研磨や化学研磨のうち少なくとも何れか一つの加工方法によって孔を加工し、孔の加工面は電子回折像の強度分布にノイズを与えない滑らかさを有するように仕上げる。
以上詳述したように、本発明によれば、実像と電子回折像を測定する際の微小径かつ平行な電子線を明るくかつ均一な強度分布にすることができ、試料への電子線露光時間の短縮や観察視野探索の操作性向上が達成できた。また、実像の明るさむらを低減できた。さらに、この方法で測定した実像と電子回折像のデジタルデータを、位相回復アルゴリズムを用いて演算処理することにより、測定した実像よりも高分解能かつ高精度な実像を再生することができた。
試料の電子回折像と試料外側のポテンシャル分布から位相回復により高分解能実像を得るフローを説明する図。 実空間と逆空間における位相回復アルゴリズムのフローを説明する図。 位相回復処理に用いる電子顕微鏡像を測定する際の電子線と試料上の電子線照射領域を説明する図。 従来技術による位相回復処理用電子顕微鏡像を測定するための電子光学経路を示す図。 本発明の第1の実施例になる走査透過電子顕微鏡を用いた場合の電子光学経路を示す図。 図5に示した第1の実施例による試料への電子線照射方法を説明する図。 本発明の第2の実施例になる透過電子顕微鏡を用いた場合の電子光学経路を示す図。 図7に示した第2の実施例における微小径制限視野絞りの構成例を説明する図。
符号の説明
1…電子線、2…電子線照射領域、3…試料、4…電子銃、5…コンデンサー絞り、6…照射レンズ、7…対物レンズ(前磁場)、8…対物レンズ(後磁場)、9…中間レンズ、10…投射レンズ、11…撮像素子、12…電子線照射領域の電子回折像、13…電子線照射領域の実像、14…走査コイル、15…微小径制限視野絞り、16…検出角度制限絞り、17…モニター、18…試料中注目領域、19…試料中注目領域の電子回折像、20…試料中注目領域の実像、21…試料の実像、22…位相回復観察用孔、23…汎用孔。

Claims (6)

  1. 加速した電子線を収束あるいは平行にして試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子線を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像を観察する際には、前記収束電子線を前記試料の注目領域に走査しながら照射し、前記撮像素子で検出した透過電子線の強度を前記収束電子線の走査と同期させてモニターに表示することによって前記注目領域を画像化し、前記電子回折像を観察する際には、前記注目領域の形状と面積に一致する孔を有する制限視野絞りを前記試料の直上に挿入し、静止した平行電子線を前記制限視野絞りを通して前記試料の注目領域に照射し、前記試料を透過した電子線が作る電子回折像を前記撮像素子により検出することを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
  2. 請求項1に記載の位相回復方式電子顕微鏡による観察方法において、前記実像を観察する際に、前記撮像素子で検出される散乱電子の検出角度範囲を、前記撮像素子の上方に挿入した検出角度制限絞りを用いて設定するようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
  3. 加速した電子線を対物レンズを介して試料へ照射する電子線照射系と、前記試料を透過した電子を撮像素子により検出して実像と電子回折像の強度分布を得る結像系とを備えた位相回復方式の電子顕微鏡にあって、前記実像と電子回折像を観察する際に、前記対物レンズの実像面に、前記対物レンズの実像面における倍率と電子線の波長とカメラ長との積を前記撮像素子の1画素のサイズで割算した値よりも小さい孔径を有する制限視野絞り挿入して、前記実像と電子回折像の強度分布を得るようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
  4. 請求項1又は3に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記実像と電子回折像の強度分布を、前記撮像素子や検出系によりデジタル記録したデータを、位相回復アルゴリズムを用いて演算処理することにより、デジタル記録した実像よりも高分解能な実像を再生するようにしたことを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
  5. 請求項1又は3に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、観察に用いる電子線が透過しない厚さの金属板に、収束イオンビームや機械研磨や化学研磨のうち少なくとも何れか一つの加工方法によって加工した孔を有し、かつ、前記孔の加工面は電子回折像の強度分布にノイズを与えない滑らかさを有していることを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
  6. 請求項4に記載の位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法において、前記制限視野絞りは、前記位相回復アルゴリズムを用いて演算処理するための実像や電子回折像の観察に用いる第1の孔および通常の制限視野観察に用いる第2の孔の両方、または前記第1の孔のみを有することを特徴とする位相回復方式の電子顕微鏡による観察方法。
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