JP2006327857A - シリコンカーバイド系多孔質体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のシリコンカーバイド系多孔質体は、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有し、主としてシリコンカーバイドから構成されたことを特徴とする。また、このシリコンカーバイド系多孔質体の製造方法は、メソポーラスシリカ粉末11の細孔内部にシリコンカーバイド前駆体溶液12を充填する工程と、充填粉末13を乾燥させて充填した溶液に含まれる溶媒成分を除去する工程と、充填粉末を大気圧下、100〜200℃で1〜24時間保持する工程と、充填粉末を不活性ガス雰囲気下、1000〜1200℃で1〜2時間焼成する工程と、シリカを溶解するエッチング液を用いて焼成した粉末14よりメソポーラスシリカを消失させる工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
一方、SiCは耐熱温度が高く、熱伝導性と電気伝導性に優れ、化学的安定性を備えているため、高温用の各種構造材料として利用されている。また活性炭では不可能であった過酷な酸化雰囲気中での使用が可能であることから、比表面積の大きな多孔質SiCは、触媒担体、高温ガス浄化フィルター、溶融金属濾過用フィルター、マイクロ波吸収発熱体、通気性断熱材など多様な分野において使用されている。しかしSiCは焼結性が低いため、高表面積を有するSiCの製造は困難であった。
本発明の目的は、高い比表面積を有するシリコンカーバイド系多孔質体及びその製造方法を提供することにある。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、BET比表面積が450〜700m2/gである多孔質体である。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明であって、シリコンカーバイド前駆体溶液12を構成するシリコンカーバイド前駆体がポリカルボシランであって、溶媒がテトラヒドロフラン(以下、THFという。)又はトルエンである製造方法である。
本発明者はシリコンカーバイド系多孔質体について、メソポーラスシリカ粉末を鋳型として用い、このシリカ粉末が有するメソ孔にシリコンカーバイド前駆体溶液を充填し、所定の処理を施した後に焼成して、シリカ粉末内部にシリコンカーバイドを形成し、更に、メソポーラスシリカ粉末のシリカ成分を除去することで高い比表面積を有するシリコンカーバイド系多孔質体が得られることを知見した。本発明のシリコンカーバイド系多孔質体は、三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有し、主としてシリコンカーバイドから構成されたことを特徴とする。本発明のシリコンカーバイド系多孔質体のBET比表面積は450〜700m2/gである。上記範囲としたのは鋳型となるメソポーラスシリカ粉末が有するメソ孔の大きさによっても異なるが、下限値未満ではその使用用途に供するのに十分ではなく、上限値を越えると強度に劣るためである。本発明のシリコンカーバイド系多孔質体は、シリコンカーバイドだけでなく、シリコンカーバイドに酸素が一部結合したSiCxOyの構造を有する化合物の双方を含む。SiCxOyのxは1〜1.5の範囲であり、yは0〜0.5の範囲である。
先ず、図1に示すように、メソポーラスシリカ粉末11の細孔内部にシリコンカーバイド前駆体溶液12を充填する。メソポーラスシリカ粉末11としては、粒径が数十μm程度で、細孔が2〜50nm程度のメソ孔を有するものが好適である。またシリコンカーバイド前駆体溶液12を構成するシリコンカーバイド前駆体としてはポリカルボシランが、溶媒としてはTHF、トルエンがそれぞれ挙げられる。前駆体溶液12にメソポーラスシリカ粉末11を浸漬、攪拌することで、メソポーラスシリカ粉末11の細孔内部にシリコンカーバイド前駆体溶液12が充填される。この充填の際に、減圧してシリカ粉末の細孔内を脱気することが好ましい。次いで、前駆体溶液から充填粉末13を取り出して、フィルターで濾過した後、充填粉末13を乾燥させて充填した溶液に含まれる溶媒成分を除去する。ここでの乾燥は自然乾燥で十分である。
<実施例1>
先ず、粒径が数十μmのメソポーラスシリカ粉末(日本化学工業社製;商品名シリファム)を用意した。また、ポリカルボシランをTHFに所定の割合で添加してシリコンカーバイド前駆体溶液を調製した。次いで、調製した前駆体溶液にメソポーラスシリカ粉末を浸漬、攪拌することで、メソポーラスシリカ粉末の細孔内部にシリコンカーバイド前駆体溶液を充填した。次に、充填粉末を取り出し、フィルターで濾過した後、充填粉末を自然乾燥して充填した溶液に含まれる溶媒成分を除去した。続いて、充填粉末を大気圧下、200℃で24時間保持して細孔中の前駆体に不融化処理を施した。次に、充填粉末を窒素ガス雰囲気下、1000℃で1時間焼成することにより、細孔中の前駆体をシリコンカーバイドとした。更に、50重量%フッ化水素酸溶液をエッチング液として用意し、このエッチング液で焼成した粉末のメソポーラスシリカを溶解除去することによりシリカ成分を消失させ、シリコンカーバイド系多孔質体を得た。
活性炭素繊維を比較検体として用意した。
<比較例2>
平均長径15μm、平均短径10μmのシリコンカーバイド系繊維(日本カーボン社製;商品名:ニカロン)を比較検体として用意した。
<比較例3>
平均粒径1μmのβ型シリコンカーバイド粉末を比較検体として用意した。
実施例1の多孔質体及び比較例1〜3の比較検体について以下の試験を行った。
(1) 得られた実施例1の多孔質体及び用意した比較例1〜3の比較検体についてBET比表面積を測定した。
(2) 16mol/lの濃硝酸を用意し、実施例1の多孔質体及び比較例1の比較検体を濃硝酸に浸漬して室温で1週間保持する濃硝酸処理を行った後に、BET比表面積を測定した。
(3) 16mol/lの濃硝酸を用意し、実施例1の多孔質体及び比較例1の比較検体を濃硝酸に浸漬して100℃で3時間保持する濃硝酸処理を行った後に、BET比表面積を測定した。
得られたBET比表面積結果を表1にそれぞれ示す。
実施例1のシリコンカーバイド系多孔質体、比較例2のシリコンカーバイド系繊維並びに比較例3のβ型シリコンカーバイド粉末をそれぞれX線回折測定した。得られたX線回折結果を図2に示す。
図2より明らかなように、結晶性の高い比較例3のβ型シリコンカーバイド粉末は、特徴のあるピークが得られており結晶性が高いことが判る。一方、実施例1の多孔質体及び比較例2のシリコンカーバイド系繊維は、明確なピーク値が得られておらず、それぞれ結晶性が低い構造であると考えられる。また、比較例2のシリコンカーバイド系繊維では20°〜30°の回折強度が小さいのに対し、実施例1の多孔質体では回折強度が大きく、両者の結晶構造は異なるものと推察される。
実施例1のシリコンカーバイド系多孔質体及び比較例1の活性炭素繊維について熱重量分析測定を行った。測定条件は大気中、昇温時間5℃/分である。得られた熱重量分析結果を図3に示す。
図3より明らかなように、比較例1の活性炭素繊維では500℃を越えたあたりから急激な重量減少が生じ、600℃に達するあたりで重量減少率が−100%となり、測定サンプルが全て消失した。この消失は活性炭素繊維が燃焼してしまったためと考えられる。一方、実施例1のシリコンカーバイド系多孔質体では、500℃を越えたあたりで約20%程度の重量減少が生じたが、その後は800℃を越えても、大きな重量変化はなく、難燃性に優れた多孔質体であることが判った。
12 シリコンカーバイド前駆体溶液
13 充填粉末
14 焼成した粉末
15 シリコンカーバイド系多孔質体
Claims (4)
- 三次元網目状に形成され、かつ網目内部の空孔が連続気孔構造を有し、主としてシリコンカーバイドから構成されたことを特徴とするシリコンカーバイド系多孔質体。
- BET比表面積が450〜700m2/gである請求項1記載の多孔質体。
- メソポーラスシリカ粉末(11)の細孔内部にシリコンカーバイド前駆体溶液(12)を充填する工程と、
前記充填粉末(13)を乾燥させて前記充填した溶液に含まれる溶媒成分を除去する工程と、
前記充填粉末(13)を大気圧下、100〜200℃で1〜24時間保持する工程と、
前記充填粉末(13)を不活性ガス雰囲気下、1000〜1200℃で1〜2時間焼成する工程と、
シリカを溶解するエッチング液を用いて前記焼成した粉末(14)より前記メソポーラスシリカ(11)を消失させる工程と
を含むことを特徴とするシリコンカーバイド系多孔質体の製造方法。 - シリコンカーバイド前駆体溶液(12)を構成するシリコンカーバイド前駆体がポリカルボシランであって、溶媒がテトラヒドロフラン又はトルエンである請求項3記載の製造方法。
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