JP2006327852A - Lec法における化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 LEC法により化合物半導体単結晶を製造するに際し、液体封止剤の直上の温度を規定することにより、固液界面の融液面に対する凹面化と結晶表面の組成比の不良を防ぎ、全域単結晶の生産歩留りを向上することを可能にする。
【解決手段】 LEC法における化合物半導体単結晶の製造中に、液体封止剤(三酸化硼素)直上の温度、より好ましくは液体封止剤の直上で且つ単結晶の表面近傍Aにおける温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲、例えば900℃以上1000℃以下に入るように規定することにより、固液界面を原料融液側に凸の最適な形状とし、多結晶化を防ぎ、単結晶収率を高める。
【選択図】 図1

Description

本発明は、LEC法(液体封止引き上げ法)における化合物半導体単結晶の製造方法、特に半絶縁性砒化ガリウム単結晶の製造方法に関するものである。
化合物半導体はその単結晶の高品質化により、高速集積回路、光−電子集積回路やその他の電子素子に広く用いられる。なかでも、III−V族化合物半導体のGaAs(砒化ガリウム)は電子移動度がシリコンに比べて速く、107Ω・cm以上の比抵抗のウエハが製造容易という特長がある。現在では上記GaAsの単結晶は、主に液体封止引き上げ法(LEC法:Liquid Encapsulated Czochralski法)により製造されている。
LEC法でGaAs単結晶を製造する方法の一例を、本発明の実施形態に係る図1を併用して説明する。
LEC法によるGaAs単結晶の製造装置1は、炉体部分である高圧容器2と、結晶を引き上げる為に下端に種結晶7を有する引上軸(シード軸)3、原料の容器であるPBN(Pyrolitic Boron Nitride)製のるつぼ5、このるつぼを受ける為のるつぼ軸4を有する構造となっている。
LEC法によるGaAs単結晶の製造方法については、先ず原料の容器となるPBN製のるつぼ5に、GaAs多結晶25,000gと、液体封止剤6である三酸化硼素2,000gを入れ、このるつぼ5を高圧容器2に収納し、容器内の圧力が9.0kg/cm2になるように不活性ガスを充填する。充填後、ヒータ8により加熱することで、三酸化硼素、GaAs多結晶を融解させ、種結晶7(シード)先端と原料融液9の接触面の温度を調整し、種結晶7を降ろして種付けを行ない、その後、外径制御を行ないながら引き上げることにより、GaAs単結晶を成長させるのが一般的である。
上記のLEC法によってGaAs単結晶を成長させるに際しては、結晶が多結晶化するのを防止して単結晶部分をできるだけ長くすることが好ましい。単結晶部分が長ければ、1本の材料からより多くのウェハをスライスすることができ、また引上げ炉の準備時間と準備回数を削減でき、さらには特性評価の回数も減らすことができる。また、引き上げに用いる消耗品(るつぼ、封止剤)の費用の原価に対する割合を下げることができる。
ところが、上記結晶をウェハ状に切断し、鏡面研磨した後、KOH液で転位をエッチングし、ウェハの結晶性を評価してみると、ウェハ面内でリネージ、亜粒界、粒界(以後、総称して多結晶と記す)が観察される場合がある。
上記の多結晶化の原因は主として2つあり、一つは固液界面の形状が凹凸になり、その部分に熱応力が集中して転位が発生して起こるものであり、他の一つは結晶の表面荒れ、つまり結晶表面が輻射熱を受けて高温となり、As(砒素)が解離して残されたGa(ガリウム)が表面を伝って固液界面に達して起こるものである。
前者の原因を解消すべく、ヒータの発熱量の制御、ヒータやホットゾーンの形状等を改良する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
また後者の原因の解消策としては、単結晶の周りに筒や板を設けて輻射熱を遮ったり、筒や板或いは単結晶にガスを吹き付けることが試みられている。 例えば、特開2004−315271号公報(特許文献2)では、引き上げる単結晶の周囲に赤外線透過率が20%以下である筒を配設し、その筒の一端が液体封止剤中にあり、他端が液体封止剤の上側の不活性ガス側にあるように設定することで、ヒータ及びGaAsの原料融液から結晶への熱輻射を抑制し、結晶長さ方向での温度勾配を大きくする技術を開示している。
特開2004−323269号公報 特開2004−315271号公報
しかしながら、従来技術において、液体封止剤(三酸化硼素)直上の温度の実際値と、多結晶化の関係に着目し、全域単結晶が得られる割合(単結晶収率)に言及したものはない。
上述したように、多結晶化の原因は主として2つあり、一つは固液界面形状が凹凸になり、その部分に熱応力が集中して転位が発生して起こるものであり、他の一つは結晶の表面荒れ、つまり結晶表面が輻射熱を受けて高温となり、As(砒素)が解離して残されたGa(ガリウム)が表面を伝って固液界面に達して起こるものである。この2つの原因を同時に解消することができれば、多結晶化が大きく低減されることになる。しかし、従来技術においては、液体封止剤(三酸化硼素)直上の温度、特に単結晶表面との界面近傍における温度を規定することが、この要請を満足させる多結晶化の解消策として有効であるという認識には至っていなかった。
そこで、本発明は、液体封止剤の直上の温度を規定することにより、固液界面の融液面に対する凹面化と結晶表面の組成比の不良を防ぎ、全域単結晶の生産歩留りを向上し得るLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法を提供することにある。
請求項1の発明に係るLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法は、加熱されたるつぼに原料融液と液体封止剤を収納し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とるつぼとを相対的に移動させて、化合物半導体の単結晶を成長させるLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、液体封止剤の直上の温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲に入るように設定して、化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とする。
請求項2の発明に係るLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法は、加熱されたるつぼに原料融液と液体封止剤を収納し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とるつぼとを相対的に移動させて、化合物半導体の単結晶を成長させるLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、液体封止剤の直上で且つ単結晶の表面近傍の温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲に入るように設定して、化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、上記目標とする所定温度範囲の上限は、原料融液の熱流を適正にして固液界面形状を融液側に凸にする条件より定め、また、上記目標とする所定温度範囲の下限は、単結晶の表面が過剰に局所加熱されて組成比の不良が生じるのを防止する条件より定めることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項2記載のLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、上記目標とする所定温度範囲を900℃以上1000℃以下に設定して化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とする。
<発明の要点>
LEC法によるGaAs単結晶の製造における多結晶化の原因の1つとして、結晶成長途中の固相と液相の界面(図1に示す固液界面11)の形状が、液相側(原料融液側)に凹面形状となっていることが挙げられる。固液界面11の形状が液相側に凹面形状になると、多結晶化の原因となる転位は固液界面に垂直に伝播するので、転位が集合して、多結晶化してしまう。転位の集合を防止して単結晶部分をできるだけ長くする為には、固液界面11の形状を結晶成長中に常に融液側に凸となるように制御する必要がある。
図2の右半分に、成長途中の単結晶下端と原料融液との固液界面11の形状が、単結晶の下端の全体にわたり、原料融液側に凸の形状(理想的な凸面形状11a)となった状態を示す。矢印は、このバランスした理想的な熱流12aを示す。
これに対し、図2の左半分は、固液界面11の形状が単結晶の周縁部付近で下向き(原料融液側)に凹の形状(凹面形状11b)となった状態を示す。図中の矢印は、このときの熱流12bを示す。単結晶の周縁部付近に凹面形状11bが生じる理由は次のように考えられている。すなわち、原料融液9の径方向の温度勾配が緩くなること、および原料融液9の液面直上で結晶表面から非発熱領域へ熱が逃げることにより、結晶表面からの熱流の方向が単結晶の外側上方に向かう方向となる。結晶成長の方向は熱流の方向と反対方向に進むので、その結果として単結晶下端の固液界面形状は周縁部で下向きに凹型となることになる。
要するに、固液界面11の形状には、原料融液9から単結晶10の方向への放熱が影響し、特に、単結晶10が炉内雰囲気に初めてさらされる液体封止剤6の直上で且つ単結晶10の表面との界面近傍(図2にAで示す)の温度が大きく影響する。
かかる観点より、本発明者等は、LEC法により化合物半導体単結晶を製造するに際し、液体封止剤(三酸化硼素)の直上の温度を実測し、この温度が所定範囲に収まるように適切に温度設定することにより、固液界面の融液面に対する凹面化と結晶表面の組成比の不良の発生を同時に防ぎ、全域単結晶の生産歩留りを向上し得ることを見出し、本発明に到達した。
本発明によれば、LEC法における化合物半導体単結晶の製造中に、液体封止剤の直上の温度、より好ましくは液体封止剤の直上で且つ単結晶の表面近傍の温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲、例えば900℃以上1000℃以下に入るように規定しているので、これにより固液界面を原料融液側に凸の最適な形状とし、多結晶化を防ぎ、単結晶収率を高めることができる。
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
本実施例では、LEC法により結晶径φ100mm以上のGaAsの単結晶を製造した。
前提となるLEC法によるGaAs単結晶の製造装置には、図1のものを用いた。すなわち、このGaAs単結晶の製造装置1は、炉体部分である高圧容器2と、GaAsの単結晶10を引き上げる為に下端に種結晶7を有する引上軸(シード軸)3と、原料融液9及び液体封止剤6の容器であるPBN製のるつぼ5と、このるつぼ5を受ける為のるつぼ軸4と、るつぼ5を加熱するためのヒータ8とを有する構造となっている。
13は熱電対であり、該熱電対13は、その検出先端が液体封止剤6の直上で且つ製造中の単結晶10の表面近傍Aの部分に来るように配設されている。
この製造装置によりLEC法でGaAsの単結晶を製造するに際して、本実施例では、熱電対13により、三酸化硼素からなる液体封止剤6の直上で且つ単結晶10の表面近傍Aにおける温度を測定し、測定された実際温度Tが目標とする下記の所定温度範囲に入るように設定して、化合物半導体単結晶を成長する。
900℃≦T≦1000℃
上記の手段を取った理由は次の通りである。すなわち、上記実際温度Tの下限を900℃としたのは、上記実際温度Tが900℃未満では、原料融液からの熱流が単結晶側面方向へ逃げるため、固液界面形状が融液側に凹面形状となり、多結晶化する。また熱応力により、歪みが生じ、スリップが発生するためである。
次に、上記実際温度Tの上限を1000℃としたのは、上記実際温度Tが1000℃を超えると、単結晶の表面が過剰に加熱され、GaAs中のAsが揮発し、結晶表面の組成が不良となり、多結晶化するからである。
上記実際温度Tが所定の温度範囲を外れた場合、不都合となる理由をまとめると、下記の表1のようになる。
Figure 2006327852
本発明の効果を確認するため、実施例1〜6、比較例1〜14についてGaAs単結晶の試作を行った。
[実施例1]
PBN製のるつぼ5に、GaAs多結晶25,000g、液体封止剤として三酸化硼素2,000gを入れ、高圧容器2に収納し、容器内の圧力が9.0kg/cmになるように不活性ガスを充填する。充填後、ヒータ8により加熱することで、三酸化硼素、GaAs多結晶を融解させ、液体封止剤6と原料融液9にする。次いで種結晶(シード)7の先端と原料融液9の接触面における温度を調整し、種付け(シード付け)をする。そして、三酸化硼素の直上で且つ単結晶10の表面との界面近傍Aの温度を熱電対13で測定し、その実際温度Tが940℃になるように温度調整して、種結晶7を引き上げることにより、結晶径φ105mmの単結晶10を成長させ、結晶全長450mmのGaAs単結晶を成長させた。
上記条件下でGaAs単結晶の成長を10回行い、計10本のGaAs単結晶を作製したところ、多結晶の発生は、0本であった。すなわち、種付けから単結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)である割合(単結晶収率)は100%であった。
[実施例2〜6]
同様に、三酸化硼素の直上で且つ単結晶10の表面との界面近傍Aにおける温度(実際温度T)を、900℃、920℃、960℃、980℃、1000℃(実施例2〜6)とした以外は、実施例1と同じ条件で、GaAs単結晶を成長させたところ、種付けから単結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)である割合(単結晶収率)は、それぞれ単結晶収率90%以上であった。特に、温度が920℃、960℃(実施例3、4)のときは、940℃(実施例1)のときと同じく、As揮発組成が不良のものやスリップ結晶のものが1本も発生せず、単結晶収率100%という高い値が得られた。
[比較例1〜11]
次に比較例1〜7として、同様に、三酸化硼素の直上で且つ単結晶10の表面との界面近傍Aの温度(実際温度T)を、700℃〜880℃の間で変更し、他は実施例1と同じ条件にてGaAs単結晶を成長させたところ、スリップ結晶のものが10本中で1本〜3本発生した。つまり、種付けから単結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)である割合(単結晶収率)は70%未満となり、歩留りが悪くなった。
また、比較例8〜14として、同様に、三酸化硼素の直上で且つ単結晶の表面との界面近傍Aにおける温度(実際温度T)を、1020℃〜1200℃の間で変更し、他は実施例1と同じ条件にてGaAs単結晶を成長させたところ、As揮発の組成不良のものが1本〜6本発生し、種付けから単結晶成長最終部まで全域単結晶(All Single)である割合(単結晶収率)は、それぞれ単結晶収率60%未満となり、歩留りが悪くなった。
以上の実施例1〜6と比較例1〜14における温度Tと単結晶収率を、一覧にして表2に示す。
Figure 2006327852
上記の試作結果から、三酸化硼素の直上で且つ単結晶表面の界面近傍Aにおける温度(実際温度T)は、900℃〜1000℃が最適であり、これによりLEC法で化合物半導体単結晶を得る場合の単結晶収率を大幅に向上させることができることが確認された。
上記実施例では、熱電対13を液体封止剤の直上で且つ単結晶表面の界面近傍Aの温度を計測するように配置したが、熱電対13は単結晶10の表面から多少離れていてもよい。液体封止剤の直上の温度を測定した場合でも、同様の効果が確認されるからである。
上記実施例では、GaAsの単結晶をLEC法で結晶成長する製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、InP、GaP、InAs等の化合物半導体の単結晶をLEC法で結晶成長を行う製造方法についても適用することができ、同様の効果を得ることができる。
本発明の化合物半導体単結晶の製造方法を適用したLEC法によるGaAs単結晶の製造装置の概念図である。 成長途中の単結晶下端と原料融液との固液界面の形状を示したもので、図2の右半分は理想的な凸面形状の場合を、図2の左半分は、固液界面が単結晶の周縁部付近で下向きに凹面形状となった状態を示す。
符号の説明
1 GaAs単結晶の製造装置
2 高圧容器
3 引上軸
4 るつぼ軸
5 るつぼ
6 液体封止剤(三酸化硼素)
7 種結晶
8 ヒータ
9 原料融液
10 単結晶
11 固液界面
11a 凸面形状
11b 凹面形状
12a 熱流
12b 熱流
13 熱電対

Claims (4)

  1. 加熱されたるつぼに原料融液と液体封止剤を収納し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とるつぼとを相対的に移動させて、化合物半導体の単結晶を成長させるLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、
    液体封止剤の直上の温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲に入るように設定して、化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とするLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法。
  2. 加熱されたるつぼに原料融液と液体封止剤を収納し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とるつぼとを相対的に移動させて、化合物半導体の単結晶を成長させるLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、
    液体封止剤の直上で且つ単結晶の表面近傍の温度を測定し、測定された実際温度が目標とする所定温度範囲に入るように設定して、化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とするLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載のLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、
    上記目標とする所定温度範囲の上限は、原料融液の熱流を適正にして固液界面形状を融液側に凸にする条件より定め、
    また、上記目標とする所定温度範囲の下限は、単結晶の表面が過剰に局所加熱されて組成比の不良が生じるのを防止する条件より定めることを特徴とするLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法。
  4. 請求項2記載のLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法において、
    上記目標とする所定温度範囲を900℃以上1000℃以下に設定して化合物半導体の単結晶を成長することを特徴とするLEC法における化合物半導体単結晶の製造方法。
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