JP2004315270A - 化合物半導体単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】LEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、結晶直径を変更した場合の、固液界面の融液面に対する凹面化を防ぎ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐ。
【解決手段】単結晶の直径をW、ヒータの発熱部の長さをLとしたとき、結晶直径を変更した場合にも、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】単結晶の直径をW、ヒータの発熱部の長さをLとしたとき、結晶直径を変更した場合にも、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEC法(液体封止チョクラルスキー法)により化合物半導体単結晶を製造する方法、特に半絶縁性GaAs単結晶を製造するのに適した方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体はその単結晶の高品質化により、高速集積回路、光−電子集積回路やその他の電子素子に広く用いられるようになってきた。なかでも、III−V族化合物半導体の砒化ガリウム(GaAs)は電子移動度がシリコンに比べて早く、107Ω・cm以上の比抵抗のウエハが製造容易という特徴がある。現在では上記GaAsの単結晶は、主に液体封止引き上げ法(LEC法)により製造されている。
【0003】
GaAs単結晶の製造方法を、本発明の実施形態に係る図1を併用して説明する。
【0004】
図1に示すLEC法のGaAs単結晶製造装置は、炉体部分である高圧容器1と、結晶を引き上げる為の引上軸8と、原料の容器であるPyrolytic Boron Nitride(略称:PBN)製のルツボ3と、このPBNルツボを受ける為の図示してないルツボ軸と、上記ルツボ3の周囲を取り巻いて設置された加熱手段としてのカーボンヒータ5とを有する構造となっている。
【0005】
LEC法によるGaAs単結晶の製造方法については、図1において、先ず原料の容器となるPBNルツボ3に、化合物半導体原料のGa及びAsと、Asの揮発防止材である三酸化硼素4を入れ、これを高圧容器1内にセットする。又、引上軸8の先端に結晶の元となる種結晶2を取りつける。高圧容器1に原料をセットした後、高圧容器1内を真空にし、不活性ガスを充填(真空・ガス置換)する。
【0006】
その後、高圧容器1内にルツボ3を取り巻いて設置してあるヒータ5に通電し、高圧容器1内の温度を昇温させ、GaとAsを合成し融液化させて、GaAs融液6とする。
【0007】
次に、PBNルツボ3を移動させ、GaAs融液6の最上面の位置を、ヒータ5の発熱する部分(発熱部の長さL)の中心位置と一致させる。
【0008】
次いで、引上軸8、ルツボ軸を回転方向が逆になるように回転させつつ、引上軸8を、先端に取り付けてある種結晶2がGaAs融液6に接触するまで下降させる。続いて、ヒータ5の出力の調整により高圧容器1内の温度を徐々に下げつつ、引上軸8を一定の速度で上昇させることで、種結晶2(種付け部)から徐々に直胴部まで太く結晶を成長させる。目標とする結晶直径(W)となったならば、直径(W)を一定に保つため、直胴部の外形を制御をしつつGaAs単結晶7を製造する。
【0009】
ところで、上記のLEC法によってGaAs単結晶の製造に際しては、結晶が多結晶化するのを防止して単結晶部分をできるだけ長くすることが好ましい。単結晶部分が長ければ、1本の材料からより多くのウェハをスライスすることができ、また引上げ炉の準備時間と準備回数を削減でき、さらには特性評価の回数も減らすことができる。また、引き上げに用いる消耗品(ルツボ、封止剤)費用の原価に対する割合を下げることができる。
【0010】
上記の多結晶化の原因は主として2つあり、一つは固液界面形状が凹凸になり、その部分に熱応力が集中して転位が発生して起こるものであり、他の一つは結晶の表面荒れ、つまり結晶表面が輻射熱を受けて高温となり、Asが解離して残されたGaが表面を伝って固液界面に達して起こるものである。
【0011】
前者の原因を解消すべく、ヒータの発熱量の制御、ヒータやホットゾーンの形状等を改良する試みがなされている。例えば、スリットの入った保温筒を用い、結晶が引き上がるにつれて変化する融液の深さに応じてルツボを上昇させて、引き上げ中に液体封止剤とルツボが接している部分とスリットの部分が常に重なるようにし、液体封止剤と接しているルツボ側面の部分を他の部分より加熱されやすいようにして、引上げ結晶と液体封止剤の接している部分が局所的に加熱されるようにする方法がある(例えば、特許文献1参照。)。これによれば、結晶側面から液体封止剤に逃げる熱量を減らし、結晶、融液、封止剤が接している部分の下にある固液界面の形状が融液面に対して凹面になるのを防ぐことが可能になる。
【0012】
また後者の原因の解消策としては、結晶の周りに筒や板を設けて輻射熱を遮ったり、筒や板或いは結晶にガスを吹き付けることが試みられている。また、結晶の引上げ長さに応じて炉内雰囲気ガスの熱伝導率を徐々に高くする方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
【特許文献1】
特開平5−163094号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平5−17289号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のGaAs単結晶の製造方法の場合、ヒータの形状は、製造する単結晶の直径(W)に変更があったときでも、変更しない。このため、次のような課題があった。
【0016】
LEC法により製造された半絶縁性GaAs単結晶の製造において、多結晶化の原因の1つに融液中の対流の影響が挙げられる。融液中の対流には大別して二つある。結晶の回転により固液界面付近で渦巻く強制対流と、融液内の温度差によりルツボ側壁付近で上昇してから成長結晶に向かって流れる自然対流とであり、両者の相互関係が固液界面形状に大きな影響を与えている。
【0017】
しかるに、従来技術では、製造する単結晶の直径(W)の変更があっても、ヒータ形状の変更を行わない。このため、結晶直径を大型化すると、つまり成長結晶の直胴部の目標直径を大きなものに変更すると、結晶回転による強制対流が、融液内の温度差による自然対流よりも支配的となる。このため、固液界面が融液面に対して凹面形状となり、転位が集中し多結晶化することが課題として残っている。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、結晶直径を変更した場合における、固液界面の融液面に対する凹面化を防ぎ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる、LEC法による化合物半導体単結晶の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0020】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、ルツボ内に化合物半導体原料及び液体封止剤を入れて圧力容器内に収容し、ルツボの周囲に配設したヒータにより加熱融解し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とルツボとを相対的に移動させて、化合物半導体単結晶を成長させるLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する単結晶の直径の大きさに対応してヒータの発熱部の長さを変更し、ヒータの発熱部の長さが、製造する単結晶直径の1.2倍以上1.8倍未満の長さとなるようにすることを特徴とする。
【0021】
これは、製造する単結晶の直径Wに対するヒータの発熱部の長さLに関して、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保つようにする化合物半導体単結晶の製造方法である。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する単結晶の直径に比例して、ヒータの発熱部の長さを長くすることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する化合物半導体単結晶の直径が100mm以上の大口径の結晶であることを特徴とする。
【0024】
<発明の要点>
本発明の要点は、LEC法により製造した化合物半導体単結晶において、上記課題を解決するために、単結晶の直径をWとし、ヒータの発熱部の高さ方向長さ(発熱長)をLとしたとき、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保って製造することにある。
【0025】
上記の手段を取った理由は次の通りである。単結晶収率を向上させるためには、固液界面を成長過程全般に渡り、融液側に凸形状に制御することが重要である。ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.2W未満と短い場合(L<1.2Wの場合)、強制対流が自然対流と比較して支配的となり、固液界面が融液面に対して凹面形状となり、転位が集中して多結晶化する。また、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.8W以上と長い場合(1.8W≦Lの場合)、製造中に結晶頭部が長時間に渡り過大に加熱され、結晶表面からAsが揮発し、組成不良となり多結晶化する。これらをまとめて表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明では、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造するため、結晶直径を変更した場合にも、LEC法の化合物半導体単結晶の固液界面の凹面化を防ぎ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる。
【0028】
上記した条件の許容範囲内においては、製造する単結晶の直径に比例してヒータの発熱部の長さを長くすることで、結晶直径を変更したことに追随することができる。
【0029】
発明の製造方法は、製造する化合物半導体単結晶の直径が100mm以上の大口径の結晶である場合に特に有効となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】
前提となる製造装置には図1のものを用いた。製造方法は、ヒータの発熱部の長さLの切り換え制御を除き、基本的に従来技術で説明したところと同じである。すなわち、不活性ガスを充填した耐圧容器たる高圧容器1内に収容され、ヒータ5により加熱されたルツボ3に、GaAsの原料融液、液体封止剤の三酸化硼素(B2O3)を収納し、種結晶2を原料融液に接触させつつ種結晶2とルツボ3とを相対的に移動させて、LEC法により化合物半導体単結晶を成長する。
【0032】
ただし、ヒータ5は、その高さ方向の発熱部の高さ方向長さLが最長のものをカバーする長さで配設されており、その高さ方向の長さの所定間隔位置から必要個数だけの中間タップ(電気的な接続端子)が引き出されている。そして、このヒータ5の中間タップを切換器により切り換えることにより、ヒータ5の発熱部の長さ(発熱長)Lを可変できる構成となっている。
【0033】
[実施例1]
上記構造の図1に示したLEC法の高圧炉を用い、ガリウム10,000g、砒素10,500g及び封止剤である酸化硼素2,300gをPBNルツボ内に収納する。本発明における条件である(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を満たすものとして、ヒータ5の発熱部の長さ(ヒータ発熱長)Lが220mmであるヒータを用いて、融点温度以上に加熱し、GaAs融液を形成した後、単結晶の引上げ育成を行ない、直径Wが約160mmで、重量約17,000gのGaAs単結晶を作製した。以上の条件で、10本の結晶を作製した結果、多結晶化は発生しなかった。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は100%となった。
【0034】
[比較例1〜6]
上記実施例1と異なる条件で次のように比較例1〜6を製造した。これを評価した結果として、10ロット中の多結晶発生本数と、単結晶歩留りを表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
比較例1は、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.2W未満と短い場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを150mmとし、直径160mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、結晶欠陥であるリネージが集積し5本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は50%に止まった。
【0037】
比較例2は、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.8W以上と長い場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを300mmとし、直径160mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAsの揮発が原因で3本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は70%に止まった。
【0038】
比較例3はヒータの発熱長Lが短すぎる場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを130mmとし、直径130mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、リネージが集積し3本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は70%に止まった。
【0039】
比較例4はヒータの発熱長Lが長すぎる場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを250mmとし、直径130mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAs揮発が原因で2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0040】
比較例5はヒータの発熱長Lが短かすぎる場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを110mmとし、直径110mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、リネージが集積し2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0041】
比較例6はヒータの発熱長Lが長すぎる場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを220mmとし、直径110mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAs揮発が原因で2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0042】
上記の試作結果(実施例1と比較例1〜6)から、L<1.2Wの範囲及び1.8W≦Lの範囲、つまり本発明の範囲である(1.2W)≦L<(1.8W)を外れた範囲では、全域単結晶を得る歩留が低下すること、従って本発明の範囲が最適条件であることが判る。
【0043】
上記実施例はLEC法により製造されたGaAs単結晶のついてのみ述べたが、本発明の製造方法はGaP、InP等の全ての化合物半導体に適用することが可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、単結晶の直径をW、ヒータの発熱部の高さ方向長さをLとしたとき、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造するため、結晶直径を変更した場合にも、LEC法の化合物半導体単結晶の固液界面の凹面化を防ぐことができ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を適用したLEC法の化合物半導体単結晶製造装置を示した図である。
【符号の説明】
1 高圧容器
2 種結晶
3 PBNルツボ
4 三酸化硼素
5 ヒータ
6 GaAs融液
7 単結晶
8 引上軸
【発明の属する技術分野】
本発明は、LEC法(液体封止チョクラルスキー法)により化合物半導体単結晶を製造する方法、特に半絶縁性GaAs単結晶を製造するのに適した方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体はその単結晶の高品質化により、高速集積回路、光−電子集積回路やその他の電子素子に広く用いられるようになってきた。なかでも、III−V族化合物半導体の砒化ガリウム(GaAs)は電子移動度がシリコンに比べて早く、107Ω・cm以上の比抵抗のウエハが製造容易という特徴がある。現在では上記GaAsの単結晶は、主に液体封止引き上げ法(LEC法)により製造されている。
【0003】
GaAs単結晶の製造方法を、本発明の実施形態に係る図1を併用して説明する。
【0004】
図1に示すLEC法のGaAs単結晶製造装置は、炉体部分である高圧容器1と、結晶を引き上げる為の引上軸8と、原料の容器であるPyrolytic Boron Nitride(略称:PBN)製のルツボ3と、このPBNルツボを受ける為の図示してないルツボ軸と、上記ルツボ3の周囲を取り巻いて設置された加熱手段としてのカーボンヒータ5とを有する構造となっている。
【0005】
LEC法によるGaAs単結晶の製造方法については、図1において、先ず原料の容器となるPBNルツボ3に、化合物半導体原料のGa及びAsと、Asの揮発防止材である三酸化硼素4を入れ、これを高圧容器1内にセットする。又、引上軸8の先端に結晶の元となる種結晶2を取りつける。高圧容器1に原料をセットした後、高圧容器1内を真空にし、不活性ガスを充填(真空・ガス置換)する。
【0006】
その後、高圧容器1内にルツボ3を取り巻いて設置してあるヒータ5に通電し、高圧容器1内の温度を昇温させ、GaとAsを合成し融液化させて、GaAs融液6とする。
【0007】
次に、PBNルツボ3を移動させ、GaAs融液6の最上面の位置を、ヒータ5の発熱する部分(発熱部の長さL)の中心位置と一致させる。
【0008】
次いで、引上軸8、ルツボ軸を回転方向が逆になるように回転させつつ、引上軸8を、先端に取り付けてある種結晶2がGaAs融液6に接触するまで下降させる。続いて、ヒータ5の出力の調整により高圧容器1内の温度を徐々に下げつつ、引上軸8を一定の速度で上昇させることで、種結晶2(種付け部)から徐々に直胴部まで太く結晶を成長させる。目標とする結晶直径(W)となったならば、直径(W)を一定に保つため、直胴部の外形を制御をしつつGaAs単結晶7を製造する。
【0009】
ところで、上記のLEC法によってGaAs単結晶の製造に際しては、結晶が多結晶化するのを防止して単結晶部分をできるだけ長くすることが好ましい。単結晶部分が長ければ、1本の材料からより多くのウェハをスライスすることができ、また引上げ炉の準備時間と準備回数を削減でき、さらには特性評価の回数も減らすことができる。また、引き上げに用いる消耗品(ルツボ、封止剤)費用の原価に対する割合を下げることができる。
【0010】
上記の多結晶化の原因は主として2つあり、一つは固液界面形状が凹凸になり、その部分に熱応力が集中して転位が発生して起こるものであり、他の一つは結晶の表面荒れ、つまり結晶表面が輻射熱を受けて高温となり、Asが解離して残されたGaが表面を伝って固液界面に達して起こるものである。
【0011】
前者の原因を解消すべく、ヒータの発熱量の制御、ヒータやホットゾーンの形状等を改良する試みがなされている。例えば、スリットの入った保温筒を用い、結晶が引き上がるにつれて変化する融液の深さに応じてルツボを上昇させて、引き上げ中に液体封止剤とルツボが接している部分とスリットの部分が常に重なるようにし、液体封止剤と接しているルツボ側面の部分を他の部分より加熱されやすいようにして、引上げ結晶と液体封止剤の接している部分が局所的に加熱されるようにする方法がある(例えば、特許文献1参照。)。これによれば、結晶側面から液体封止剤に逃げる熱量を減らし、結晶、融液、封止剤が接している部分の下にある固液界面の形状が融液面に対して凹面になるのを防ぐことが可能になる。
【0012】
また後者の原因の解消策としては、結晶の周りに筒や板を設けて輻射熱を遮ったり、筒や板或いは結晶にガスを吹き付けることが試みられている。また、結晶の引上げ長さに応じて炉内雰囲気ガスの熱伝導率を徐々に高くする方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
【特許文献1】
特開平5−163094号公報
【0014】
【特許文献2】
特開平5−17289号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のGaAs単結晶の製造方法の場合、ヒータの形状は、製造する単結晶の直径(W)に変更があったときでも、変更しない。このため、次のような課題があった。
【0016】
LEC法により製造された半絶縁性GaAs単結晶の製造において、多結晶化の原因の1つに融液中の対流の影響が挙げられる。融液中の対流には大別して二つある。結晶の回転により固液界面付近で渦巻く強制対流と、融液内の温度差によりルツボ側壁付近で上昇してから成長結晶に向かって流れる自然対流とであり、両者の相互関係が固液界面形状に大きな影響を与えている。
【0017】
しかるに、従来技術では、製造する単結晶の直径(W)の変更があっても、ヒータ形状の変更を行わない。このため、結晶直径を大型化すると、つまり成長結晶の直胴部の目標直径を大きなものに変更すると、結晶回転による強制対流が、融液内の温度差による自然対流よりも支配的となる。このため、固液界面が融液面に対して凹面形状となり、転位が集中し多結晶化することが課題として残っている。
【0018】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、結晶直径を変更した場合における、固液界面の融液面に対する凹面化を防ぎ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる、LEC法による化合物半導体単結晶の製造方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、次のように構成したものである。
【0020】
請求項1の発明に係る化合物半導体単結晶の製造方法は、ルツボ内に化合物半導体原料及び液体封止剤を入れて圧力容器内に収容し、ルツボの周囲に配設したヒータにより加熱融解し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とルツボとを相対的に移動させて、化合物半導体単結晶を成長させるLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する単結晶の直径の大きさに対応してヒータの発熱部の長さを変更し、ヒータの発熱部の長さが、製造する単結晶直径の1.2倍以上1.8倍未満の長さとなるようにすることを特徴とする。
【0021】
これは、製造する単結晶の直径Wに対するヒータの発熱部の長さLに関して、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保つようにする化合物半導体単結晶の製造方法である。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する単結晶の直径に比例して、ヒータの発熱部の長さを長くすることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、製造する化合物半導体単結晶の直径が100mm以上の大口径の結晶であることを特徴とする。
【0024】
<発明の要点>
本発明の要点は、LEC法により製造した化合物半導体単結晶において、上記課題を解決するために、単結晶の直径をWとし、ヒータの発熱部の高さ方向長さ(発熱長)をLとしたとき、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保って製造することにある。
【0025】
上記の手段を取った理由は次の通りである。単結晶収率を向上させるためには、固液界面を成長過程全般に渡り、融液側に凸形状に制御することが重要である。ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.2W未満と短い場合(L<1.2Wの場合)、強制対流が自然対流と比較して支配的となり、固液界面が融液面に対して凹面形状となり、転位が集中して多結晶化する。また、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.8W以上と長い場合(1.8W≦Lの場合)、製造中に結晶頭部が長時間に渡り過大に加熱され、結晶表面からAsが揮発し、組成不良となり多結晶化する。これらをまとめて表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
本発明では、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造するため、結晶直径を変更した場合にも、LEC法の化合物半導体単結晶の固液界面の凹面化を防ぎ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる。
【0028】
上記した条件の許容範囲内においては、製造する単結晶の直径に比例してヒータの発熱部の長さを長くすることで、結晶直径を変更したことに追随することができる。
【0029】
発明の製造方法は、製造する化合物半導体単結晶の直径が100mm以上の大口径の結晶である場合に特に有効となる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0031】
前提となる製造装置には図1のものを用いた。製造方法は、ヒータの発熱部の長さLの切り換え制御を除き、基本的に従来技術で説明したところと同じである。すなわち、不活性ガスを充填した耐圧容器たる高圧容器1内に収容され、ヒータ5により加熱されたルツボ3に、GaAsの原料融液、液体封止剤の三酸化硼素(B2O3)を収納し、種結晶2を原料融液に接触させつつ種結晶2とルツボ3とを相対的に移動させて、LEC法により化合物半導体単結晶を成長する。
【0032】
ただし、ヒータ5は、その高さ方向の発熱部の高さ方向長さLが最長のものをカバーする長さで配設されており、その高さ方向の長さの所定間隔位置から必要個数だけの中間タップ(電気的な接続端子)が引き出されている。そして、このヒータ5の中間タップを切換器により切り換えることにより、ヒータ5の発熱部の長さ(発熱長)Lを可変できる構成となっている。
【0033】
[実施例1]
上記構造の図1に示したLEC法の高圧炉を用い、ガリウム10,000g、砒素10,500g及び封止剤である酸化硼素2,300gをPBNルツボ内に収納する。本発明における条件である(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を満たすものとして、ヒータ5の発熱部の長さ(ヒータ発熱長)Lが220mmであるヒータを用いて、融点温度以上に加熱し、GaAs融液を形成した後、単結晶の引上げ育成を行ない、直径Wが約160mmで、重量約17,000gのGaAs単結晶を作製した。以上の条件で、10本の結晶を作製した結果、多結晶化は発生しなかった。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は100%となった。
【0034】
[比較例1〜6]
上記実施例1と異なる条件で次のように比較例1〜6を製造した。これを評価した結果として、10ロット中の多結晶発生本数と、単結晶歩留りを表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
比較例1は、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.2W未満と短い場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを150mmとし、直径160mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、結晶欠陥であるリネージが集積し5本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は50%に止まった。
【0037】
比較例2は、ヒータの発熱長Lが単結晶の直径Wに対し1.8W以上と長い場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを300mmとし、直径160mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAsの揮発が原因で3本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は70%に止まった。
【0038】
比較例3はヒータの発熱長Lが短すぎる場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを130mmとし、直径130mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、リネージが集積し3本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は70%に止まった。
【0039】
比較例4はヒータの発熱長Lが長すぎる場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを250mmとし、直径130mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAs揮発が原因で2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0040】
比較例5はヒータの発熱長Lが短かすぎる場合(L<1.2Wの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを110mmとし、直径110mmの引上げ育成を実施した。固液界面が凹面形状となり、リネージが集積し2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0041】
比較例6はヒータの発熱長Lが長すぎる場合(1.8W≦Lの場合)の例であり、ヒータ発熱長Lを220mmとし、直径110mmの引上げ育成を実施した。結晶表面からのAs揮発が原因で2本の多結晶化が発生した。従って、単結晶(全域単結晶)を得る歩留は80%に止まった。
【0042】
上記の試作結果(実施例1と比較例1〜6)から、L<1.2Wの範囲及び1.8W≦Lの範囲、つまり本発明の範囲である(1.2W)≦L<(1.8W)を外れた範囲では、全域単結晶を得る歩留が低下すること、従って本発明の範囲が最適条件であることが判る。
【0043】
上記実施例はLEC法により製造されたGaAs単結晶のついてのみ述べたが、本発明の製造方法はGaP、InP等の全ての化合物半導体に適用することが可能である。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、単結晶の直径をW、ヒータの発熱部の高さ方向長さをLとしたとき、(1.2W)≦L<(1.8W)の関係を保持して製造するため、結晶直径を変更した場合にも、LEC法の化合物半導体単結晶の固液界面の凹面化を防ぐことができ、且つ結晶表面からのAsが揮発することによる多結晶化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を適用したLEC法の化合物半導体単結晶製造装置を示した図である。
【符号の説明】
1 高圧容器
2 種結晶
3 PBNルツボ
4 三酸化硼素
5 ヒータ
6 GaAs融液
7 単結晶
8 引上軸
Claims (3)
- ルツボ内に化合物半導体原料及び液体封止剤を入れて圧力容器内に収容し、ルツボの周囲に配設したヒータにより加熱融解し、種結晶を原料融液に接触させつつ種結晶とルツボとを相対的に移動させて、化合物半導体単結晶を成長させるLEC法による化合物半導体単結晶の製造方法において、
製造する単結晶の直径の大きさに対応してヒータの発熱部の長さを変更し、ヒータの発熱部の長さが、製造する単結晶直径の1.2倍以上1.8倍未満の長さとなるようにすることを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。 - 請求項1記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、
製造する単結晶の直径に比例して、ヒータの発熱部の長さを長くすることを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。 - 請求項1又は2記載の化合物半導体単結晶の製造方法において、
製造する化合物半導体単結晶の直径が100mm以上の大口径の結晶であることを特徴とする化合物半導体単結晶の製造方法。
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