JP2006327833A - セラミック粉末の製法およびセラミック粉末 - Google Patents

セラミック粉末の製法およびセラミック粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】微粒且つ高純度のセラミック粉末およびその製法を提供する。
【解決手段】金属成分を含む前駆体粉末を、交流電磁界を印加しながら、温度100℃以上1000℃以上、真空度が0.05Pa以下の条件で加熱する。
【選択図】図1

Description

本発明は、セラミック粉末の製法およびセラミック粉末に関し、特に、金属成分を含む前駆体粉末から得られる微粒のセラミック粉末およびその製法に関する。
積層セラミックコンデンサや圧電部品などの機能部品、あるいは自動車用部品や機械工具などに用いられているセラミックスはその優れた電気的特性や機械的特性を持つものであるが、近年、これらの特性をさらに高めるためにセラミック粉末の微粒化および高純度化が図られている。
そのような微粒のセラミック粉末を調製する方法として、従来より、原料粉末として酸化物粉末を用いる固相法が一般的に用いられているが、一方で、金属成分を含有する前駆体を用い、例えば、その前駆体の溶液を高周波誘導プラズマなどのプラズマ中に供給してセラミックス粉末を得る方法が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の方法によれば、前駆体を含む溶液を高周波誘導プラズマのプラズマ中に供給すると、高周波誘導プラズマ中に発生した火炎や放電に伴う発光により前駆体の構成成分である有機物が燃焼し、残った金属が酸化されて酸化物であるセラミック粉末を得ることができる。
特開平5−269372号公報
しかしながら、上術した高周波誘導プラズマ中に火炎や放電による発光を伴う製法では、時に、前駆体に含まれる有機成分が分解しきらずに重合や炭化が起こり得られるセラミック粉末に炭素成分が残存しやすく、不純物の多い粉末しか得られないという問題があった。
また、上記した発光を伴う条件では前駆体自体が燃焼するために、その燃焼によって高温となるために生成するセラミック粉末が粒成長してしまい、微粒なセラミック粉末を得ることが難しいという問題があった。
従って本発明は、微粒且つ高純度のセラミック粉末およびその製法を提供することを目的とする。
本発明のセラミック粉末は、(1)金属成分を含む前駆体粉末を、交流電磁界を印加しながら、温度が100℃以上1000℃以下、かつ真空度が0.05Pa以下の条件で加熱することを特徴とする。
また上記セラミック粉末の製法では、(2)前記金属成分が、バリウムおよびチタンであること、(3)前記前駆体が、蓚酸塩粉末、炭酸塩粉末および酸化物粉末から選ばれる少なくとも1種であること、が望ましい。
そして上記の製法により得られる本発明のセラミック粉末は、(4)平均粒子径が100nm以下、X線回折分析による不純物のピーク強度が主成分のセラミックスの最大ピーク強度の100分の1以下であることを特徴とするものであり、(5)前記主成分セラミックスが、バリウムおよびチタンの複合酸化物であること、が望ましい。
本発明は、金属成分を含む前駆体粉末からセラミック粉末を合成する場合に、交流電磁界を印加しても高真空下で加熱することにより、合成されるセラミック粉末同士の焼結を抑えることができるために、微粒かつ高純度のセラミック粉末を容易に調製できる。
本発明のセラミック粉末の製法に用いる金属成分を含む前駆体粉末とは、金属と有機化合物とが化合して形成されたもの、あるいは金属成分の炭酸化合物や酸化物である。
また、前駆体粉末を形成する有機化合物としては蓚酸、クエン酸などから選ばれる少なくとも1種が望ましく、特に、金属成分との解離がしやすいという理由から蓚酸がより望ましい。
金属成分としては、加熱により金属酸化物を形成できるアルカリ土類元素、希土類元素、遷移金属元素、半金属元素など、殆どすべての金属およびそれらの金属から派生した複合酸化物を用いることができる。例示すれば、誘電体や抗菌材として有望な材料となる二酸化チタンや、積層セラミックコンデンサの誘電体材料に好適なチタン酸バリウムとなるチタンやバリウムおよびそれらの複合金属がより望ましい。
また、本発明に用いる前駆体粉末は、例えば、金属酸化物や炭酸化合物の場合、合成後に得られるセラミック粉末の微粒化の点で比表面積は10m/g以上、平均粒径は前駆体物質まで含めた大きさとして300nm以下が好ましい。前駆体粉末を構成する有機物は同じ官能基を含んでいるものである場合、加熱により分解しやすいという点で構造的には直鎖状であることが好ましく、また、分子量はより小さいことがより好ましい。
図1は、本発明のセラミック粉末を製造するためのマイクロ波真空炉本体を示す断面模式図である。1はマイクロ波真空炉本体、3はマイクロ波発生装置、5は真空排気口、7は熱電対、9は前駆体、11は前駆体粉末を載せるための敷板である。
本発明の製法に用いる好適な加熱装置としては前駆体に交流電磁界を印加できるマイクロ波真空炉を用いることが望ましいものであるが、その加熱手段としては高周波誘導型、マイクロ波誘導型、あるいはECRプラズマ型などいずれのプラズマを形成する方式を用いることができる。
本発明では、上記の加熱装置を用いる場合に交流電磁界を印加を印加するとともに、加熱したときの温度が100℃以上1000℃以下において、真空度が圧力0.05Pa以下の条件であることが重要であり、特に、気体温度が600℃以上、さらには700℃以上であることが前駆体が分解蒸発しやすい点で好ましい。また、発光しないことが、前駆体の燃焼を抑制し得られるセラミック粉末の粒成長を抑制するという理由から好ましい。
真空度としては加熱炉内の熱伝導を維持できるという理由から0.0001Pa以上であることが好ましい。
つまり本発明の製法では、プラズマ加熱しても、炉内を高真空に保つことでガス分子の平均事由行程が長くなりセラミック粉末の合成時に発光しない状態となり、そのため加熱時における前駆体の燃焼を抑制でき、このように前駆体の燃焼を抑制できることで、前駆体である有機物の炭化を抑えつつ分解を促して、より高純度の金属酸化物または複合酸化物を容易に得ることができるのである。その加熱速度は前駆体粉末の発光を抑制するという理由から500℃/h以下の昇温速度に設定することが望ましい。
なお、発光しない状態というのは、マイクロ波電界によるガスのイオン化は起きているものの肉眼で確認できるほどの発光が起きない状態のことである。
これに対して、温度100℃以上の範囲において圧力が0.05Paより高い場合にはガス分子同士の衝突が多くなってマイクロ波電界中に放電が発生しやくすくなり、このため加熱時に前駆体粉末の燃焼が起こり、結果的にセラミック粉末が一部焼結し粒成長する。
また、本発明の製法における加熱温度は1000℃以下、特に、900℃以下に設定することが好ましい。加熱時の温度を900℃以下に設定すると得られるセラミック粉末の粒成長を抑制するのが容易であるという利点がある。一方、低温側の温度としては、加熱時に前駆体の分解を促進しやすいという理由から600℃以上が好ましく、特に、加熱の温度が700℃以上であるとセラミック粉末の結晶性を効果的に高めることができるという利点がある。加熱温度が1000℃を超えると得られる粉末が粒成長する。
なお、本発明の製法における他の条件として以下の点が挙げられる。マイクロ波加熱炉中において前駆体を載せておく敷板としては、前駆体と反応しにくい高融点のセラミック基板を用いるのがよい。
このような製法によれば、原料粉末として酸化物粉末を用いる固相法におけるような1日以上もの長時間の仮焼を行う必要がなく、前駆体粉末から数時間の処理時間で所望のセラミック粉末を得ることができる。
もし、加熱中に発光が起こる場合には、前駆体に含まれる有機成分が分解するよりも重合しやすくなる場合があり、その場合には炭化がおこり得られるセラミック粉末に炭素成分が残存しやすく、不純物の多い粉末しか得られない。
上記の製法によって得られたセラミック粉末としてチタン酸バリウムを例示する。このセラミック粉末は平均粒子径が100nm以下であることを特徴とするものであり、特に、40〜80nmが好ましく、得られたセラミック粉末は微粒であっても凝集しにくいものである。これは本発明の製法によって得られるセラミック粉末の表面が光沢があるほどに平滑な面を有するものであり、微粒であってもある程度比表面積が小さいものとなっているからである。
なお、前駆体粉末およびセラミック粉末の平均粒径は写した電子顕微鏡写真に対角線を引き、その線上にある粉末の最大径を各々測定し平均化して求める。
平均粒径が100nm以下であると、より薄層化したセラミック焼結体を形成できるとともにセラミック焼結体中において多くの粒界を形成できることから高い絶縁性が得られるという利点があり、特に平均粒径が80nm以下ではセラミック粉末が高い反応性を有することからより低温で焼結できるものとなる。このため、例えば、積層セラミックコンデンサなどの小型の電子部品を構成する絶縁層をより薄層化でき高絶縁化できるものとなる。
セラミック粉末の平均粒径が40nm以上であると結晶性の高いセラミック粉末の割合を高めることができるという利点がある。また、本発明のセラミック粉末は、加熱後における前駆体の残存量が少ないために容易に白色化したものにできる。一方、平均粒径が100μmより大きいと薄層化した絶縁層として不向きなものとなる。
また、本発明の製法によって得られるセラミック粉末は短時間での合成が可能であることから、セラミック粉末の粒成長を抑制できるとともに、粒径のばらつきも小さくできる。これは、前駆体の蒸発により残された金属成分が酸化される際に相互に接する機会が少ない状態でセラミック粉末が形成されるためである。
本発明の製法により得られたチタン酸バリウム粉末は、X線回折図上での不純物ピーク強度が主成分セラミックスの主ピーク強度の100分の1以下となり微粒かつ高純度のものとなる。そのため、このチタン酸バリウムは正方晶性が高くc/a≧1.005以上である。
以上述べたように、本発明のセラミック粉末は平均粒径が100nm以下であっても凝集や粒成長が抑制された状態で合成されているために単分散に近い粒子形状をしたセラミック粉末を容易に形成できる。
また、こうした微粒かつ均一に近い粒径を有し、かつ平均粒径が100nm以下の微粉末であっても比表面積が小さいために、本発明のセラミック粉末を用いれば、焼結時の粒成長も抑制でき、焼結後も微粒の状態を維持したセラミック焼結体を形成できる。
さらに本発明の製法では原料粉末として酸化物粉末を用いる固相法に比較して、原料粉末の仮焼に要する時間の短縮化を図ることができ、これにより製造におけるサイクルタイムを短くできる。
本発明に関し、セラミック粉末としてチタン酸バリウムを例にとりその調製を行った。前駆体粉末として金属成分がバリウムとチタンとを等モル量含む、平均粒径が約250nmの蓚酸チタニルバリウム粉末を10g用意し、敷板として用いるジルコニアセッタ上に載せマイクロ波真空炉内に置いた。
図2は本発明のセラミック粉末の製法における加熱プロファイルの例である。この場合、炉内の温度は熱電対を用いて測定した。加熱プロファイルは、マイクロ波出力を調節して得られたときの熱電対温度の時間依存性を示している。加熱炉内の真空度は室温〜800℃付近の範囲において0.05Pa以下に保つようにした。加熱プロファイルを表1に示した。
Figure 2006327833
図3は、本発明のセラミック粉末のひとつであるチタン酸バリウム粉末についてのX線回折図である。本発明の製法により得られたセラミック粉末は白色化したものであり、それらの平均粒径は100nm以下、X線回折により求めた不純物の存在を示すピーク(Aで示すところ)強度は2θ角度35°付近にある主成分の最大ピーク強度の1/100以下であり、また、この試料粉末はX線回折線がある特定の指数のピークにおいて2分割になっており正方晶を示し(Tの部分)、c/aが1.006であった。
(比較例)
次に、表2に示す加熱プロファイルを用いて、実施例と同様にして蓚酸チタニルバリウム粉末の調製を行った。
Figure 2006327833
図4は、加熱時に温度140℃〜745℃の範囲において圧力が0.097Paよりも上昇し、発光のあった条件で調製したセラミック粉末についてのX線回折図である。
加熱プロファイル中において、熱電対温度140℃〜745℃の範囲において圧力が0.097Paより高くした場合にはマイクロ波電界中に放電が発生し、このため加熱時に前駆体の燃焼が起こり、結果的にセラミック粉末の平均粒径が約800nmまで粒成長し、粉末が黒色化し、不純物(Aで示すピーク)が残っていた。
本発明のセラミック粉末を製造するためのマイクロ波真空炉を示す断面模式図である。 本発明のセラミック粉末の製法における加熱プロファイルの例である。 本発明のセラミック粉末のひとつであるチタン酸バリウム粉末についてのX線回折図である。 加熱時に温度140℃〜745℃の範囲において圧力が0.097Paよりも上昇し、発光のあった条件で調製したセラミック粉末についてのX線回折図である。
符号の説明
1 マイクロ波真空炉本体
3 マイクロ波発生装置
5 真空排気口
7 熱電対
9 前駆体
11 敷板

Claims (5)

  1. 金属成分を含む前駆体粉末を、交流電磁界を印加しがら、温度が100℃以上1000℃以下、真空度が0.05Pa以下の条件で加熱することを特徴とするセラミック粉末の製法。
  2. 前記金属成分が、バリウムおよびチタンである、請求項1に記載のセラミック粉末の製法。
  3. 前記前駆体が、蓚酸塩粉末、炭酸塩粉末および酸化物粉末から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載のセラミック粉末の製法。
  4. 請求項1乃至3のうちいずれか記載のセラミック粉末の製法により得られ、
    平均粒子径が100nm以下、X線回折分析による不純物のピーク強度が主成分のセラミックスの最大ピーク強度の100分の1以下であることを特徴とするセラミック粉末。
  5. 前記主成分セラミックスが、バリウムおよびチタンの複合酸化物である、請求項4に記載のセラミック粉末。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP2438987A1 (en) * 2010-10-06 2012-04-11 Ibiden Co., Ltd. Manufacturing methods of a ceramic fired body, a honeycomb structure, and an exhaust gas converting device, and a drying apparatus
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