JP2006322829A - 未定量の生体試料の定量分析方法 - Google Patents

未定量の生体試料の定量分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 生体試料の分析技術者及び検査対象者の負担軽減し、生体試料の採取から実際の検査までの煩雑を軽減するとともに、正確な生体試料分析を可能にする。
【解決手段】 生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と、生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質とを含む緩衝水溶液であって、浸透圧が血液とほぼ等張圧である緩衝水溶液を調整する。採取した未知量の生体試料を一定量の前記緩衝水溶液に加え、前記生体試料中の血球成分を除去し、血球成分が除去された前記混合溶液を分析し、前記第1の指示物質に基づく生体試料の第1の希釈倍率と、第2の希釈倍率とをそれぞれ算出し、血球膜を通過する生体試料の成分に対しては、前記第1の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出し、血球膜を通過しない生体試料の成分に対しては、前記第2の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出することを特徴とする。

Description

本発明は、未定量の生体試料を所定の緩衝水溶液で希釈し、希釈された混合溶液から、生体試料成分の分析、定量する方法に関するものである。
一般に、採血には、医師等の一定の有資格者が注射器を用い静脈から採取する一般採血と、検査対象者本人が自分の手の指等に採血針を刺して血液を採取する自己採血がある。一般採血により採取された血液は、採取容器に密閉された状態で検査場所に搬送され、そこで遠心分離器により血球と血漿、または血清成分に分離された後、検査が行われていた。また、自己採血により採取された血液は、ろ紙に含浸され検査場所に搬送されろ紙の赤色部分は血球で白色部分が血漿であるので、その検査場所にて白色部分を切り取り溶剤に溶解させ、分析が行われていた。臨床検査において医師や看護士、臨床検査技師等の一定の有資格者または専門の技術者が採血等により生体試料を採取し、採取した生体試料から定量用試料を調製し、定量すべき生化学項目成分は血漿または、血清濃度として定量している。定性的または定量的な判定を行う特定の検査項目では検査対象者自ら生体試料を採取方法も知られているが、一般の定量のための検査項目は検査対象者が医師や看護士、臨床検査技師等の有資格者または専門の技術者がいる病院等に出向くか、医師や看護士、臨床検査技師が検査対象者の居る所等に出向いて検査対象者からの生体試料の採取が行われている。また、採取された生体試料から定量用試料を調製する操作も、医師、看護士、臨床検査技師等の一定の有資格者または専門の技術者が行っている。定量用試料を調製するに際しては、一定容量を正確に定量する必要があることから、煩雑になることを避けるために検査対象者が生体試料を一定容量定量し定量試料を調製することや、採取した生体試料をその場で希釈し定量用試料を調製することは行われていない。最近では、自動分析装置は性能向上に伴い試料の微量化が進み、従来のような多量の生体試料を採取する必要がなくなってきている。少量の生体試料の定量分析装置として、たとえば、Bio Majesty JCA−BA1650(JEOL社製)が知られている。また、特開2003−344429号公報には、採取した生体試料を所定の指示物質を含む溶液で希釈し、定量分析を行うことが開示されている。
特開2003−344429号公報
一般採血の場合、採取された血液を遠心分離した後、上澄みの血漿をスポイトで吸い取り、血漿分析機用の特殊容器に移さなければならないので、血液を血球と血漿に分離するのに手間が掛かり試料ロスを生じ、また、特殊容器に移す際に、取り違う等の事故が起きる虞があった。遠心分離器により血液を分離させ、所定項目の検査を行うためには、1回に5〜10mL程度の採血量が必要とされていた。したがって検査対象者本人で採取することは困難であり、医師等一定の有資格者が採血することになるので、検査対象者が病院等に行くか、或いは有資格者が検査対象者の居る所に出向いたりする必要があり、採血に手間が掛かっていた。検査対象者本人が自分の手の指等に採血針を刺して採取する自己採血は、血液をろ紙に含浸させ乾燥させた後に溶剤に溶解させる工程を必要とするため、斯かる工程を経ても検査値に影響を与えるおそれのない特定の検査項目に関してのみ有効であり、これらの検査項目以外での実施は不可能であった。
また、血液生体試料の生化学項目は、検査対象者ごとに血液中の赤血球容積量が異なり、定量値は血漿または血清濃度として表されることから血液を直接希釈することはなかった。さらに、血球内に含有されている有形物容積が検査対象者ごとに異なることから血液を直接溶液で希釈し血漿または、血清濃度として定量することは不可能とされていた。
また、これまでの臨床診断の形態では、医師や看護士、臨床検査技師等の一定の有資格者または専門の技術者及び検査対象者の負担が大きく、生体試料の採取から実際の検査までの過程も煩雑であったためまたは専門の技術者及び検査対象者の負担が大きく、生体試料の採取から実際の検査までの過程も煩雑であった。従って、医師または看護士、臨床検査技師等の一定の有資格者または専門の技術者並びに検査対象者の負担を最小限にするような診断法の開発及び該診断法を組み入れた簡素な診断システムの構築が望まれている。
そこで、本発明は上記事情を鑑みて、血液検査のコスト低減化、検査精度の向上が図れ採血量が微量で済み、作業の簡素化が可能でかつ正確な血液分離及び定量法を提供するものである。
また、本発明は生体試料から該生体試料中の定量すべき成分の定量に使用する定量用試料を調製する方法、生体試料中の定量すべき成分を定量する方法、容量を定量することなしに採取した定量すべき成分を含有する未知容量の生体試料から定量用試料を調製するために使用する溶液、分析法を提供することである。
本発明は上記事情を鑑みて構成されたもので、上記課題を解決するために以下の特徴を有する。すなわち、本発明の1つの特徴によれば、採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質を用意し、
所定量の第1の指示物質と第2の指示物質とを含む緩衝水溶液を調整し、
一定量の該緩衝水溶液中の前記第1の指示物質の吸光度を測定し、
前記一定量の該緩衝水溶液中の前記第2の指示物質の吸光度を測定し、
前記生体試料を前記一定量の前記緩衝水溶液に加え、
前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第1の指示物質にかかる吸光度を測定し、
前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第2の指示物質にかかる吸光度を測定し、
前記生体試料の血漿の前記第1の指示物質にかかる吸光度に基づき、第1の成分の希釈倍率を算出し、
前記生体試料の血漿の前記第2の指示物質にかかる吸光度に基づき、第2の成分の希釈倍率を算出し、
それぞれの希釈倍率に基づいて、前記血漿中の第1の成分および第2の成分を定量することを特徴とする方法が提供される。
また別の特徴によれば、採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と、生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質を用意し、
所定量の第1の指示物質と第2の指示物質とを含む緩衝水溶液を調整し、
一定量の該緩衝水溶液中の前記第1の指示物質の濃度を測定し、
前記一定量の該緩衝水溶液中の前記第2の指示物質の濃度を測定し、
前記生体試料を前記一定量の前記緩衝水溶液に加え、
前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第1の指示物質にかかる濃度を測定し、
前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第2の指示物質にかかる濃度を測定し、
前記生体試料の血漿の前記第1の指示物質にかかる濃度に基づき、第1の成分の希釈倍率を算出し、
前記生体試料の血漿の前記第2の指示物質にかかる濃度に基づき、第2の成分の希釈倍率を算出し、
それぞれの希釈倍率に基づいて、前記血漿中の第1の成分および第2の成分を定量することを特徴とする方法が提供される。
この場合、前記緩衝水溶液の浸透圧がほぼ血液浸透圧となるように調製されるのが好ましい。
なお、好ましい態様では、前記第1の指示物質が血球膜を通過する物質であり、前記第2の指示物質が血球膜を通過しない物質である。別の態様では、血球膜を通過しない物質がイオン化合物である。また、別の態様では、血球膜を通過する物質が小径で電荷を持たない極性の低分子である。
本発明の別の好ましい特徴によれば、採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と、生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質とを含む緩衝水溶液であって、浸透圧が血液とほぼ等張圧である緩衝水溶液を調整し、
採取した未知量の生体試料を一定量の前記緩衝水溶液に加え、
前記緩衝水溶液が加えられた生体試料との混合溶液を遠心分離して、前記生体試料中の血球成分を除去し、
血球成分が除去された前記混合溶液を分析し、
前記第1の指示物質に基づく生体試料の第1の希釈倍率と、前記第2の指示物質に基づく生体試料の第2の希釈倍率とをそれぞれ算出し、
血球膜を通過する生体試料の成分に対しては、前記第1の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出し、
血球膜を通過しない生体試料の成分に対しては、前記第2の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出することを特徴とする方法が提供される。
好ましくは、血球膜に対する浸透圧が200〜340mOsm/Lの範囲にある。
好ましくは、容量を定量することなしに採取した定量すべき成分を含有する未知容量の生体試料から定量用試料を調製するために赤血球を通過しない物質、または、赤血球膜を通過する物質を使用、あるいは、併用した溶液で構成される。
また、赤血球膜を通過する物質、通過しない物質が生体試料内に含有されていない、または含有されているとしても極微量であることを特徴とする。
また、赤血球膜通過する成分、通過しない成分をそれぞれ簡便にかつ正確に計測できる方法がある。
好適な状態で採取するための溶液は、赤血球内水分の移動による血球容積の変化をできるだけ少なくするようになっている。
たとえば、赤血球の形態的恒常性を保つ血液浸透圧、膠質浸透圧を有する。この場合、好適な状態の血液浸透圧は、上記したように200〜340mOsm/Lの範囲にあることが望ましい。
本発明によれば、未知量の生体試料の成分の血球膜を通過する成分および、通過しない成分のいずれの成分に対しても、簡便にかつ正確に定量することができる。
本発明によれば、生体試料から該生体試料中の定量すべき成分の定量に使用する定量用試料を容量を定量することなしに採取された、すなわち未知量の生体試料を一定量の赤血球膜通過する指示物質、または、かつ赤血球膜を通過しない指示物質を含有する緩衝水溶液であって、生体試料と略等張圧である緩衝水溶液と混合することにより生体試料成分を定量する方法が提供される。赤血球膜を通過する物質には、グリセロール、尿素、クレアチニン、尿酸、エタノールなどがあげられるが、これらに限定されるものでない。また赤血球膜を通過しない物質には、αーグリセロール3リン酸、グルコース6リン酸、デキストランなどがあげられるがこれらに限定されるものではない。また、本発明に関して、生体試料と等張圧と見なせる範囲は約200〜340mOsm/Lの範囲であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。表1には、赤血球膜を通過する物質の1つであるグリセロールの指示試薬の組成が示されている。
Figure 2006322829
ここで、
HEPES:2-[4-(2−ヒドロキシエチル)-ピペラジニル]エタンスルフォニック酸
GPO:グリセロール3リン酸オキシダーゼ
EDTA2Na:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
ADPS:N-エチル-N-スルホプロピル-3-メトキシアニリン
GK:グリセロールキナーゼ
POD:パーオキシダーゼ
ATP・2Na:アデノシン5`-三りん酸二ナトリウム三水和物、である。
以下に、グリセロールの測定の手順を示す。
グリセロール測定にあたって、上記試薬R-1およびR-2を使用する。
1.混合生体試料:5μl、R-1:80μl混合、37℃で5min放置する。
2.546/884nm波長で吸光度測定する。−− A1(吸光度)
3.R-2:40μl混合、37℃で5min放置する。
4.546/884nm波長で吸光度測定する。−− A2(吸光度)
吸光度は測定値の差として表すことができる。したがって、一般に吸光度はΔA=A2-A1として得られる。
5.したがって、赤血球膜を通過するグリセロールは、生体試料採取後、平衡状態に達した状態では、採取時には、血球内にあった一部のグリセロールが血球膜を透過して、血漿成分中に混入する。したがって、血漿成分だけを、定量分析すると、このような血球膜を通過する物質は、採取時の成分比率よりも多くなる。しかし、これをそのまま分析結果として採用することは、妥当性を欠くことになる。本発明では、このような状況であっても、正確に血球膜通過物質の定量を行うことができるようにした。
すなわち、本発明では、血球膜を通過する物質であってほぼ血液と等張圧の関係を有する緩衝水溶液を使用することによって、正確な血漿成分の定量分析を可能にしている。
すなわち、上記の試薬あるいは指示物質は、グリセロールと同様に血球膜を通過する性質を有している。したがって、この指示物質を用いてグリセロールを定量することにより、血球膜を通過するグリセロールを常に正確に追跡することができ、正確に定量することができる。
本発明にかかる手法では、採取する生体試料は、未定量であるが、しかし、これを希釈する緩衝水溶液は正確に定量されている。そして、生体試料のうち血球成分が除去されたのち、血漿成分と緩衝水溶液との混合液を用いて定量分析が行われる。
本発明の指示物質は、血球膜との通過の性質に関するかぎり、指示するための対象となる生体試料中の1つの成分と同一の挙動を示すから、その吸光度を測定することにより、正確に対象となる物質(血球膜を通過する性質を有する物質)の希釈倍率を算出することができる。
すなわち、混合前緩衝水溶液中のグリセロールの吸光度ΔAo、混合後生体試料中のグリセロールの吸光度ΔAsとすると、赤血球水分を含む希釈倍率=ΔAo/(ΔAs-ΔAo)で表すことができる。
一方、血球膜を通過しない成分が血漿には含まれている。たとえば、グリセロール3リン酸などである。このような血球膜を通過しない成分については、その指示物質も血球膜を通過しない成分とすることが好ましい。本発明では、グリセロール3リン酸については、以下の組成の指示薬すなわち指示物質を調整する。






Figure 2006322829
グリセロール3リン酸の測定手順は以下のとおりである。
1.上記のグリセロールと同様に、表3にそれぞれ示す組成を有する。R-1とR-2とを用いる。
混合生体試料:4μl、R-1:80μl混合、37℃で5min放置する。
546/884nmの波長で吸光度測を定する。 (A1(吸光度)を求める。)
2.R-2:40μl混合、37℃で5min放置する。
546/884nmの波長で吸光度を測定する。(A2(吸光度)を求める。)
3.A1、A2を用いてΔAを求める。
ΔA=A2-A1
4.血漿成分特に、血球膜を通過しない物質に対する希釈倍率を求める。
混合前緩衝水溶液中のグリセロール3リン酸の吸光度ΔAo
混合後生体試料中のグリセロール3リン酸の吸光度ΔAs
希釈倍率=ΔAo/(ΔAo−ΔAs)
本発明で使用する緩衝水溶液の組成が表3に示されている。
Figure 2006322829
ここで、
EDTA2Na:エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム
G3P 2Na:グリセロール3リン酸2ナトリウムである。
以下本発明の具体的実施例について説明する。
指示物質としてグリセロールに着目し、グリセロールの吸光度を計測することにより、血漿成分のうち血球膜を通過する物質に対する希釈倍率を算出した例である。
小試験管11本を用意し上記緩衝水溶液を1000μlを正確に分注した。ついで、試験管1〜11にヒトプール血清(3000rpmで遠心分離して得られた10人分の血清をプールして保管したもの)を第1表に示した様に、10μl単位で性格に分注した。分注後、ミキサー(AUTMATIC LAB MIXER MODEL TH−2)で5分間攪拌した。表4は、サンプル番号と対応する量、およびその理論希釈倍率との関係を示す表である。
Figure 2006322829
グリセロール含有する緩衝水溶液中のグリセロールおよび第4表に記載の11サンプル中のグリセロールを上記グリセロール測定試薬と測定条件にて自動分析機Bio Majesty JCA−BA1650(JEOL社製)にてその吸光度を測定した。グリセロール含有する緩衝水溶液を使用した場合の吸光度ΔAoは0.5085 ABSであり、サンプル1〜11の吸光度は第2表に示すとおりであった。
ΔAo値及びそれぞれのΔAsとから希釈倍率〔=ΔAo/(ΔAo−ΔAs)〕を算出し、理論希釈倍率と比較した。結果を第5表に示す。


Figure 2006322829
上記の表から明らかなように、希釈倍率は26倍以下の場合には、精度よく希釈倍率を求めることできる。
つぎに、指示物質として血球膜を通過しない血漿成分に含まれる物質であるグリセロール3リン酸に着目して、血球成分を通過しない物質に対する希釈倍率の算出した例である。上記のグリセロールの場合と同様に、小試験管11本を用意し上記緩衝水溶液を1000μlを正確に分注した。ついで、試験管1〜11にヒトプール血清(3000rpmで遠心分離して得られた10人分の血清をプールして保管したもの)を第1表に示した様に、10μl単位で性格に分注した。分注後、ミキサー(AUTMATIC LAB MIXER MODEL TH−2)で5分間攪拌した。表6は、サンプル番号と対応する量、およびその理論希釈倍率との関係を示す表である。















Figure 2006322829
グリセロール3リン酸含有する緩衝水溶液中のグリセロール3リン酸および第1表に記載の11サンプル中のグリセロール3リン酸を上記グリセロール3リン酸測定試薬と測定条件にて自動分析機Bio Majesty JCA-BA1650(JEOL社製)にてその吸光度を測定した。グリセロール3リン酸含有する緩衝水溶液を使用した場合の吸光度ΔAoは0.4972 ABSであり、サンプル1〜11の吸光度は第7表に示すとおりであった。 ΔAo値及びそれぞれのΔAsとから希釈倍率〔=ΔAo/(ΔAo−ΔAs)〕を算出し、理論希釈倍率と比較した。結果を第7表に示す。
Figure 2006322829
上記の表から明らかなように、希釈倍率は26倍以下の場合には、精度よく希釈倍率を求めることできる。
つぎに、希釈された生体試料中のクレアチニン(CRE)の酵素法による定量した。
指示物質としてグリセロール、グリセロール3リン酸の吸光度を用いて得られた、生体試料の希釈倍数を用いて、該希釈血液中のCRE値を酵素法により定量し、該血漿中のCRE値を算出した。
指示物質含有緩衝液としてグリセロール、グリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製し900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第10表に示すように100μL添加混合し、遠心分離後上清液を試験管に移し試験管番号1〜10の試料を調製した。
ΔAoおよびΔAs値からグリセロールによる希釈倍数とグリセロール3リン酸の吸光度測定に基づいてそれぞれの希釈倍数を求めた。グリセロールのΔAo値は0.4692、グリセロール3リン酸のΔAo値は0.4717であった。
一方において、試験管番号1〜10の定量用試料中のCRE値は酵素法により定量した。そして、各検体における希釈倍数値とCRE値とからヒト血漿値を算出し、実際に血漿を用いて測定したCRE値との一致率を求めた。
結果を第8表に示す。
Figure 2006322829
上記の表から、クレアチニンは、血球膜を通過する物質であって、グリセロールに着目した希釈倍率がグリセロール3リン酸のものに比較して、一致率が高いことが判明する。
すなわち、クレアチンに対しては、血球膜を通過する物質であるため、グリセロールの方が適当であることが判明する。
つぎに、緩衝水溶液で希釈された生体試料中の尿素窒素(UN)を定量し、上記と同様に分析を行った。
指示物質含有緩衝液としてグリセロール、グリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製し900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第10表に示すように100μL添加混合し、遠心分離後上清液を試験験管に移し試験管番号1〜10の試料を調製した。
また、試験管番号1〜10の定量用試料中のUN値は酵素法により定量した。
更に各検体における希釈倍数値とUN値とからヒト血漿値を算出し、血漿を用いて測定したUN値との一致率を求めた。この場合においても、該希釈血液中のUN値を酵素法により定量し、該血漿中のUN値を算出し、指示物質としてグリセロール、グリセロール3リン酸を用いてえられたそれぞれの希釈倍数に基づいて、生体試料中のUN値を定量した。
結果を第9表に示す。
Figure 2006322829
この結果から、上記のクレアチニンの結果と同様に、指示物質としてグリセロールを選択し、この希釈倍率に基づいて算出するのが適当であることが判明する。同時に、UNは、クレアチニンと同様に、血球膜を通過する物質であることが判明する。
つぎに、生体試料と、緩衝水溶液との混合液中の総コレステロール(T-CHO)を上記と同様の手順で、分析した。総コレステロール(T-CHO)は酵素法により定量した。
上記同様に指示物質としてグリセロール、グリセロール3リン酸を用いて血液の希釈倍数を算出した。該希釈血液中のT-CHO値を酵素法により定量し、該血漿中のT-CHO値を算出した。指示物質含有緩衝液としてグリセロール、グリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製し900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第10表に示すように100μL添加混合し、遠心分離後上清液を試験験管に移し試験管番号1〜10の試料を調製した。
また、試験管番号1〜10の定量用試料中のT−CHO値は酵素法により定量した。
更に各検体における希釈倍数値とT-CHO値とからヒト血漿値を算出し、血漿を用いて測定したT-CHO値との一致率を求めた。
結果を第10表に示す。
Figure 2006322829
グリセロールとグリセロール3リン酸との一致率の差をみれば、T−CHO値に対しては、グリセロール3リン酸に基づく希釈倍率が適当であることが判明する。すなわち、T−CHOは、血球膜を通過しない物質であることが判明する。
つぎに、生体試料中の中性脂肪(TG)について分析した。
上記同様に、指示物質としてグリセロール、グリセロール3リン酸を用いて得られた、希釈倍数を用いて、該希釈血液中のTG値を酵素法により定量した結果にもとづき、血漿中のTG値を算出した。
指示物質含有緩衝液としてグリセロール、グリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製し900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第10表に示すように100μL添加混合し、遠心分離後上清液を試験験管に移し試験管番号1〜10の試料を調製した。
試験管番号1〜10の定量用試料中のTG値は酵素法により定量した。
更に各検体における希釈倍数値とTG値とからヒト血漿値を算出し、血漿を用いて測定したTG値との一致率を求めた。
結果を第11表に示す。
Figure 2006322829
TG値に対しては、グリセロール3リン酸に基づく希釈倍率が適当であることが判明する。すなわち、TGは、T−CHOと同様に、血球膜を通過しない物質であることが判明する。
つぎに、生体試料と緩衝水溶液との混合液中のγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)を上記同様の手順で、分析した。γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)は、酵素法によって定量した。指示物質としてグリセロール、グリセロール3リン酸を用いて血液の希釈倍数を算出し、該希釈血液中のγ-GTP値をJSCC標準対応試薬により定量し、該血漿中のγ-GTP値を算出した。
上記同様に、指示物質含有緩衝液としてグリセロール、グリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製し900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第10表に示すように100μL添加混合し、遠心分離後上清液を試験験管に移し試験管番号1〜10の試料を調製した。
更に各検体における希釈倍数値とγ-GTP値とからヒト血漿値を算出し、血漿を用いて測定したγ-GTP値との一致率を求めた。
結果を第12表に示す。
Figure 2006322829
γ-GTP値に対しては、グリセロール3リン酸に基づく希釈倍率が適当であることが判明する。すなわち、γ-GTPは、T−CHOと同様に、血球膜を通過しない物質であることが判明する。従来、血液等、生体試料に存在する測定対象物質を測定する場合に於いて、血液の場合真空採血管等により採取した血液を、(一定時間放置し、後、)遠心分離器等により血清若しくは血漿成分と血球等組織成分に分離し、液状試料を生化学自動分析器で測定していた。この場合、測定目的物質は、血液内に存在し、成分の大きな変化の無い状態で行われてきた。本発明は、血液を、血液成分とは異なる希釈液内に滴下し、血液内測定目的物質を測定する方式であり、本発明に於いて、赤血球を通過しない物質と赤血球を通過する物質の存在が上記実施例より明確化されたものである。
上記実施例より、今日一般的に病院・検診等で測定されている生化学項目のうち代表的な12項目を対象に、未定量な血液を採取し、赤血球を通過しない物質に因る希釈倍率と赤血球を通過する物質による希釈倍率による検査結果とで、通常血漿成分に於ける検査結果とのとの比較を以下の表13、14および15に示す3つの場合について行った。
希釈倍率測定物質は、赤血球を通過しない物質としてG3Pを用い、赤血球を通過する物質としてGYLを用いた。
希釈倍率は、G3P(グリセロール3リン酸)及びGLY(グリセロール)について、それぞれのE1/E1ーE2で算出した。基準濃度は、各項目のデバイス実測濃度に上記希釈倍率を乗じて算出した。たとえば、G3P(グリセロール3リン酸)基準濃度は、それぞれの成分について、希釈倍率をG3P(グリセロール3リン酸)の吸光度変化に基づいて算出した値である。同様に、GLY(グリセロール)基準濃度は、それぞれの成分について、希釈倍率をG3P(グリセロール3リン酸)の吸光度変化に基づいて算出した値である。測定は、Bio Majesty JCA-BA1650(JEOL社製)により、行った。一致率は、G3P基準濃度及びGLY基準濃度を希釈しない状態の採取した生体試料(血液中)の原血漿に含まれるそれぞれの成分量の値で除して、算出した。
Figure 2006322829








Figure 2006322829

















Figure 2006322829
上記の実験から明らかなように、赤血球の血球膜を通過しない物質と赤血球の血球膜を通過する物質が存在することが実証された。
検査対象成分である、それぞれの血漿成分(本例では、TP、ALB、GOT、GPT、γ-GTP、TC、TGおよび、HDL)に対しては、血球膜を通過しない物質として、G3P(グリセロール3リン酸)を指示物質として選択することにより、極めて正確な定量分析結果が得られることが判明した。また、血漿成分の(BUN、CRE、UA、およびGLU)に対しては、血球膜を通過する物質としてGLY(グリセロール)を指示物質として選択することにより極めて正確な定量分析結果が得られることが判明した。
すなわち、血球膜を通過しない血漿の検査対象成分としてTP、ALB、GOT、GPT、γ-GTP、TC、TGおよび、HDLが確認できるとともに、それらの物質の指示物質としてG3P(グリセロール3リン酸)を選択することが的確であることもまた確認することができた。同様に血球膜を通過する血漿の検査対象成分としてBUN、CRE、UA、およびGLUが確認できるとともに、これらの物質の指示物質としてGLY(グリセロール)が適当であることが確認できた。すなわち、G3P(グリセロール3リン酸)及びGLY(グリセロール)対応するG3P及びGLYの希釈倍率に因る、基準濃度の正確性・再現性を確認できた。上記3つの例は、あくまでも日常測定されている代表的生化学項目を対象に行ったものであり、測定目的物質に因っては、赤血球を通過する程度等の程度差は十分に予測される事、又、上記希釈倍率算出物質も、G3P・GLY以外にも十分に測定目的物質に対応する物質の存在が予測される。
つぎに、生体試料と緩衝水溶液との混合水溶液中の希釈血液中の血算項目(Ht%、WBC、RBC、Hb、PLT)を分析した。
指示物質としてグリセロール3リン酸を用いた血液の希釈倍数を算出し、該希釈血液中の血算項目を定量した。
指示物質含有緩衝液としてグリセロール3リン酸を含有する緩衝水溶液(表5)を調製した。この溶液を正確に900μLずつ10本の試験管に分注した。ついでヒト血液10例を第15表に示すように100μL添加混合し、試験管番号1〜10の試料を調製した。
調製した試験管番号1〜10の試料の血算項目を測定した。
次に測定したΔAo、ΔAsおよび希釈血液のHt%(α)値から血液希釈倍率=100XΔAo/(100XΔAo−100XΔAs+αXΔAs)を算出した。
更に各検体における血液希釈倍数値と血算項目値とからヒト血液の血算項目値を算出し、血液を直接用いた血算項目値との一致率を求めた。結果を表16ないし表20に示す。
Figure 2006322829







Figure 2006322829
Figure 2006322829







Figure 2006322829
Figure 2006322829
いずれも、高い一致性率を示すことが判明する。
本発明によれば、高い分析技術を駆使することなく容易に生体試料の分析が可能となるので、生体試料の分析の分野における極めて高い要請に応えることできる。将来、特定の有資格者のみが可能であった生体試料分析の分野を一般に解放する可能性を有するものである。

Claims (9)

  1. 採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
    生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質を用意し、
    所定量の第1の指示物質と第2の指示物質とを含む緩衝水溶液を調整し、
    一定量の該緩衝水溶液中の前記第1の指示物質の吸光度を測定し、
    前記一定量の該緩衝水溶液中の前記第2の指示物質の吸光度を測定し、
    前記生体試料を前記一定量の前記緩衝水溶液に加え、
    前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第1の指示物質にかかる吸光度を測定し、
    前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第2の指示物質にかかる吸光度を測定し、
    前記生体試料の血漿の前記第1の指示物質にかかる吸光度に基づき、第1の成分の希釈倍率を算出し、
    前記生体試料の血漿の前記第2の指示物質にかかる吸光度に基づき、第2の成分の希釈倍率を算出し、
    それぞれの希釈倍率に基づいて、前記血漿中の第1の成分および第2の成分を定量することを特徴とする方法。
  2. 採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
    生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と、生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質を用意し、
    所定量の第1の指示物質と第2の指示物質とを含む緩衝水溶液を調整し、
    一定量の該緩衝水溶液中の前記第1の指示物質の濃度を測定し、
    前記一定量の該緩衝水溶液中の前記第2の指示物質の濃度を測定し、
    前記生体試料を前記一定量の前記緩衝水溶液に加え、
    前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第1の指示物質にかかる濃度を測定し、
    前記生体試料の血漿と前記一定量の前記緩衝水溶液との混合試料溶液中の前記第2の指示物質にかかる濃度を測定し、
    前記生体試料の血漿の前記第1の指示物質にかかる濃度に基づき、第1の成分の希釈倍率を算出し、
    前記生体試料の血漿の前記第2の指示物質にかかる濃度に基づき、第2の成分の希釈倍率を算出し、
    それぞれの希釈倍率に基づいて、前記血漿中の第1の成分および第2の成分を定量することを特徴とする方法。
  3. 前記緩衝水溶液の浸透圧がほぼ血液浸透圧となるように調製されている請求項1または2記載の方法。
  4. 前記第1の指示物質が血球膜を通過する物質である請求項1または2のいずれかに記載の方法。
  5. 前記第2の指示物質が血球膜を通過しない物質である請求項1に記載の方法。
  6. 血球膜を通過しない物質がイオン化合物である請求項4に記載の方法。
  7. 血球膜を通過する物質が小径で電荷を持たない極性の低分子である請求項3に記載の方法。
  8. 採取した未定料の血球を含む生体試料の成分を定量分析する方法であって、
    生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過する第1の成分を指示するための第1の指示物質と、生体試料に含まれる成分であって、血球膜を通過しない第2の成分を指示するための第2の指示物質とを含む緩衝水溶液であって、浸透圧が血液とほぼ等張圧である緩衝水溶液を調整し、
    採取した未知量の生体試料を一定量の前記緩衝水溶液に加え、
    前記緩衝水溶液が加えられた生体試料との混合溶液を遠心分離して、前記生体試料中の血球成分を除去し、
    血球成分が除去された前記混合溶液を分析し、
    前記第1の指示物質に基づく生体試料の第1の希釈倍率と、前記第2の指示物質に基づく生体試料の第2の希釈倍率とをそれぞれ算出し、
    血球膜を通過する生体試料の成分に対しては、前記第1の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出し、
    血球膜を通過しない生体試料の成分に対しては、前記第2の希釈倍率に基づいて生体試料中の量を算出することを特徴とする方法。
  9. 血球膜に対する浸透圧が200〜340mOsm/Lの範囲にある請求項1、2または6のいずれかに記載の緩衝水溶液。
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