JP2006321817A - レトロウイルス感染を阻害するための医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】式(I)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許されるその塩を含有するレトロウイルス感染を阻害するための組成物。
R11〜R27は、水素、ヒドロキシル、アミノ、スルホ、カルボキシル、アミド、アシルアミノ、スルホンアミド、スルホニルアミノ、アルコキシ又はハロゲンであり、R11〜R17のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシルまたはアミノであり、R21〜R27のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシルまたはアミノであり、R11〜R17のうちの少なくとも一つはスルホであり、かつR21〜R27のうちの少なくとも一つは、スルホであり、AおよびBは、水素、アルキル(C1-C4)、アルコキシ(C1-C4)又はハロゲンである。
【選択図】なし
Description
発明の分野
本発明は、患者におけるレトロウイルス感染を防止する方法に関わり、該方法は該患者中に、治療上有効な量のナフタレンスルホン酸化合物または本明細書で定義するような製薬上許容されるその塩を投与することを含む。
後天性ヒト免疫不全症候群(以下“AIDS”という)はCD4+リンパ球の枯渇によって特徴付けられている。結果として、AIDS患者においては、T-細胞媒介免疫が害されており、重度の日和見病原体による感染、および異常な新生物形成をもたらす。
AIDSは、Tリンパ球および他の免疫細胞の、密接に関連したレトロウイルス集団(LAV、HTLV-III、HIV またはARV)による感染によって生ずる。これらによる感染の範囲は、一般的に表面上に該CD4 糖蛋白質を発現する細胞に限られている。
従って、このCD4 糖蛋白質はターゲット細胞表面上の分子に対するレセプタとしてばかりでなく、レトロウイルス感染に対するレセプタとしても機能するものと考えられている。
更に、スルホ部分を含む以下の化合物が、該HIV の複製サイクルにおける幾つかの重要な段階の効果的な阻害剤であるものとして報告されている。
(a)エバンスブルー(Evans Blue(EB))が、HIV rgp120とCD4 細胞との相互作用の阻害剤であることが報告されている(非特許文献4:バルザリニ(Balzarini)等,Biochem.Biophys.Res.Commun.,1986,136, pp.64-71)。
(b)スラミン(Suramin)およびダイレクトイエロー(Direct Yellow)50が、逆転写酵素の阻害剤であることが報告されている(非特許文献5:バルザリニ(Balzarini)等,Int.J.Cancer,1986,37,p.451)。
(c)ビス−ナフタレンジスルホン酸(非特許文献6:モーハン(Mohan)等,Life Science,1990,47,p.993および非特許文献7:タン(Tan)等,J.Med.Chem.,1992, 35, p.4846)およびフクシン酸(Fuchsin Acid)(非特許文献8:(Baba),Biochem.Biophys.Res.Commun.,1988,155, p.1404)が、シンシチウム形成阻害剤であることが報告されている。
本明細書において言及する、全ての米国特許および刊行物を本発明の参考文献とする。
従って、本発明の目的の一つは、レトロウイルス感染を防止する方法で使用する、低毒性かつ高い抗レトロウイルス活性をもつ化合物を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、しばしばビリオンと宿主細胞との融合を伴う、レトロウイルス糖蛋白質の相互作用を阻害する化合物を提供することにある。
更に別の本発明の目的は、逆転写酵素を阻害する方法で使用する化合物を提供することにある。
但し、R11〜R17のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、R21〜R27のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、R11〜R17のうちの少なくとも一つは、スルホ基であり、かつR21〜R27のうちの少なくとも一つは、スルホ基であり、
AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれる。
アルキルまたはアリール基により置換されたアミド基の適当な例は、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基または6〜12個の炭素原子を有するアリール基で置換されたアミド基、例えば-CONHCH3、-CONHC4H9、-CONHC8H17および-CONHPhを包含する。
適当なアシルアミノ基の例は、式:R1-(Y)n-CONH-で表されるものであり、ここでR1は置換または無置換のアルキル(C1-C12)基、置換または無置換のアリール(C6-C12)基および置換または無置換のヘテロアリール(C1-C12)基からなる群から選ばれ、Yは-NH-、-CH2- または-OCH2-であり、nは0または1である。
スルホニルアミノ基の適当な例は、式:R1-(Y)n-SO2NH- で表されるものであり、ここでR1およびYは上記定義の通りである。
アルコキシ基の適当な例は、1〜6個の炭素原子をもつアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシおよびヘキシルオキシ基を包含する。
ハロゲン原子の適当な例は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。
本発明の好ましい態様の一つによれば、患者におけるレトロウイルス感染を阻害する方法が提供され、該方法は以下の式(II)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む:
但し、R21〜R27のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、かつR21〜R27のうちの少なくとも一つはスルホ基であり、
AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれ、 R1は置換または無置換のアルキル(C1-C12)基、置換または無置換のアリール(C6-C12)基および置換または無置換のヘテロアリール(C1-C12)基からなる群から選ばれ、Yは-NH-、-CH2- または-OCH2-であり、nは0または1である。
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、患者内のレトロウイルス感染を阻害する方法が提供され、該方法は以下の式(III)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む:
AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれ、Yは-NH-、-CH2- または-OCH2-であり、nは0または1である。
上記のように、本発明の目的の一つは、式(I)、(II)または(III)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩を、治療上有効な量で使用することにより達成された。
R1、R2およびR3に対する、炭素原子数1〜12をもつアルキル基の適当な例は、直鎖または分枝鎖で、置換または無置換の、炭素原子数1〜12のアルキル基(例えば、CH3、C2H5、n-C4H9、n-C6H13、t-C5H11、CH2C6H5等)および炭素原子数3〜6の置換または無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル基)を包含する。
R1、R2およびR3に対する、炭素原子数6〜12をもつアリール基の適当な例は、置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のα−およびβ−ナフチル基を包含する。置換フェニルまたはナフチル基の適当な置換基の例は、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、シアノおよびヒドロキシル基を含む。これらの中で、好ましいものはハロゲン原子、例えばフッ素または塩素、トリフルオロメチル、炭素原子数1〜4のアルキル基および炭素原子数1〜4のアルコキシ基である。最も好ましいものは、ハロゲン原子、特に塩素原子である。
R1、R2およびR3に対する炭素原子数1〜12のヘテロアリール基の適当な例は、ピリジル、チエニル、フリル、キノリルおよびイソキノリル基を包含する。該ヘテロアリール基上の置換基の適当な例は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シアノ基およびヒドロキシル基を含む。これらの中で好ましいものは、フッ素または塩素等のハロゲン原子、および炭素原子数1〜4のアルキル基である。
置換または無置換のヘテロアリール基の適当な例は、3-ピリジル、4-ピリジル、2-チエニル、2-フリルおよび3-キノリル基である。特に好ましいものは、3-ピリジルおよび3-キノリル基である。
式(I)〜(IV)において、AおよびBは同一または異なるものであってもよく、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基およびハロゲン原子を表す。アルキル基の適当な例は、メチル、エチルおよびブチル基を含む。アルコキシ基の適当な例は、メトキシ、エトキシおよびブトキシ基を含む。ハロゲン原子の適当な例は、フッ素、塩素および臭素原子を含む。アルキルおよびアルコキシ基が好ましく、またアルコキシ基が特に好ましい。
AおよびBは同一または異なるものであってもよいが、好ましくは同一のものである。より好ましくは、AおよびBは、炭素原子数1〜4のアルコキシ基であり、かつ最も好ましくはAおよびBは共にメトキシ基である。
本発明の方法において使用する該ナフタレンスルホン酸化合物は、一般的にビリオンとターゲット細胞(抹梢血リンパ球)との融合を阻害する能力、および逆転写酵素を阻害する能力を有する。かくして、本発明の化合物は、HIV および他のレトロウイルス、例えばHIV-1 、SIV 、CHJ およびHSD によって引き起こされる、ヒトまたは動物の疾患、特に哺乳動物の疾患を治療および/または予防するのに使用できる。
本発明の方法で使用する該化合物は、ウイルス感染またはウイルスの複製を阻害するように、患者、例えばヒト、他の哺乳動物または他の動物に投与することができる。
より具体的には、該化合物を処方して、該化合物の治療上有効な量と、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物とすることができる。該治療上有効な量の該化合物および該特定の製薬上許容される担体は、該患者の年齢、体重、性別、投与様式、および治療しようとするウイルス感染状態の型に依存して変化するであろう。
特定の一局面においては、レトロウイルス感染を阻害するのに使用できる該医薬組成物は、有効な単位用量型で本発明の化合物を含む。本明細書で使用する用語「有効な単位用量」または「有効単位投与量」とは、インビボでウイルス生物に対して有効であるのに十分な、所定の抗−レトロウイルス量を意味する。
これらの医薬組成物は、本発明の方法で使用する該化合物を、全組成物の重量基準で0.01〜99重量%、好ましくは全組成物の重量基準で0.1 〜80重量%の範囲の量で含有する。経口投与のためには、該化合物は、一般に0.1 g/身体〜15g/身体、好ましくは0.5 g/身体〜5 g/身体の量で投与される。静脈内注射のためには、約0.1 〜約30mg/kg/日、好ましくは約0.5 〜約10mg/kg/日の範囲の用量であり得る。液体、軟膏剤またはクリームとして局所的に適用する場合には、該化合物は、該組成物基準で、約0.1 〜約50 mg/ml、好ましくは約0.1 〜約30 mg/mlの範囲の量で存在し得る。
更に、これらの組成物は、油性または水性賦形剤中の懸濁液、溶液またはエマルション等の形態をとることができ、また製薬業界で一般的に引用されている懸濁剤、安定化剤または分散剤、等張化剤および/または溶解補助溶媒等の配合剤を含むことができる。
また、本発明で使用する化合物は、使用前に適当な賦形剤、例えば無菌で、発熱物質を含まない水等によって復元される粉末形状で使用することができる。
更に、口および皮膚等の外部組織の感染については、本発明の組成物は、該患者身体の感染部分または該身体の感染し易い部分に、局所投与用の軟膏剤、クリームまたは含そう剤として適用することもできる。
該化合物は、また身体の開口部分、例えば直腸および膣等に、坐剤またはクリームの形状で適用することもできる。
本発明において使用される化合物は、約0.1 〜100%(w/v)、好ましくは0.5 〜90%(w/v)の濃度で、例えば水溶性の軟膏剤主薬と共に軟膏剤またはクリームとして提供することができる。
吸入またはエーロゾル処方物の場合、液体または微細に粉砕された粉末としての本発明で使用される該化合物は、ガスまたは液状噴霧剤、および必要ならば保湿剤等の公知の助剤と共に、エーロゾル容器に充填することができる。
本発明で使用する化合物は、またネブライザーまたはアトマイザー等の非−加圧式処方の製剤として、あるいは制御放出型処方もしくは生分解性インプラントとして処方することも可能である。
全身的投与のためには、成人のヒトの治療に使用されるような、毎日の投与量は、約0.1mg/kg〜約150mg/kgおよび好ましくは約0.2mg/kg〜約80 mg/kgの範囲内であろう。
局所的な投与については、成人のヒトの治療に使用されるような、毎日の投与量は、約0.01 mg/kg〜約50 mg/kgおよび好ましくは約0.03 mg/kg〜約30 mg/kgの範囲内であろう。
これらの医薬組成物は、抗菌剤等の他の活性成分およびベンジルアルコールおよびフェノール化合物等の他の助剤、および当分野で従来から使用されている希釈剤を含むことができる。
これらの医薬組成物は、溶液、エマルション、懸濁液、ローション、軟膏剤、クリーム、顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、サシェット剤、ロゼンジ剤、アンプル剤、膣坐剤、または坐剤等の形状をもつことができる。これらは、該処方が内部または外部レトロウイルス感染症の何れを治療するのに使用されるかに依存して、非経口的に、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、経皮、経口、あるいは舌下経路を通して投与でき、あるいは局所的には坐剤または膣坐剤として、エーロゾルスプレーまたは滴剤として投与することができる。
これらの化合物は、また他の抗−ウイルス剤および/または生物学的応答改良剤と共に投与することもできる。例えば、本発明において使用される化合物は公知のHIV-RT阻害剤、例えばddC 、AZT およびddl または非−ヌクレオシド系RT阻害剤、例えばTIBO誘導体類およびトリサイクリックジアゼピノン類、あるいはプロテアーゼ、インテグラーゼおよびRNA アーゼ等のHIV 蛋白質に対して作用する他の阻害剤、並びに生物学的改良剤、例えばα−、β−またはγ−インターフェロン、あるいはその組み合わせ、インターロイキン-2およびGM-CSFと共に投与することができる。AIDSまたはARC ヒト患者において使用されるddC およびAZT の用量は、既に公開されている。
本発明の方法において使用する好ましい化合物を以下に示す。
化合物6の合成
中間体化合物(1)の合成
改良ショッテン−バウマン(Schotten-Baumann)法に従って、中間体化合物(1)を調製した。脱イオン水(200 ml)中に、8-アミノ-3,6- ジスルホ-1- ナフトール(H- 酸,34.2 g,一ナトリウム塩として100mM)、水酸化ナトリウム(5.0 g,125mM)および炭酸ナトリウム(37.0 g,350 mM)を溶解した。この溶液に、2,3-ジクロロベンゾイルクロリド(23.1g,110mM)をテトラヒドロフラン(20ml)中に溶解した溶液を、窒素ガス流の下で、約1時間に渡り、35〜40℃にて滴下した。この反応混合物を該温度にて1時間、次いで80℃にて1時間激しく攪拌した。10% 塩化ナトリウム水溶液(250 ml)を該溶液に添加し、次いで室温まで冷却した。生成した沈殿を濾別し、10% 塩化ナトリウム水溶液で、次いでアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、40.0 gの化合物(1)(二ナトリウム塩として)を、75% の収率で得た。
改良ショッテン−バウマン(Schotten-Baumann)法に従って、中間体化合物(3)を調製した。脱イオン水(400 ml)中に、8-アミノ-3,6- ジスルホ-1- ナフトール(H- 酸,68.2 g,一ナトリウム塩として200mM)、水酸化ナトリウム(8.6 g,140mM)および炭酸ナトリウム(12.7 g,120 mM)を溶解した。この溶液に、2,4-ジクロロベンゾイルクロリド(46.1g,220mM)を、窒素ガス流の下で、約1時間に渡り、38〜44℃にて滴下した。この反応混合物を該温度にて1時間、次いで80℃にて1時間激しく攪拌した。10% 塩化ナトリウム水溶液(80ml)を該溶液に添加し、次に35℃まで冷却した。生成した沈殿を濾別し、10% 塩化ナトリウム水溶液で、次いでアセトニトリルで洗浄し、乾燥して、82 gの化合物(3)(二ナトリウム塩として)を、77% の収率で得た。
中間化合物(2)の合成
2,5-ジメトキシ-4- ニトロアニリン(4g,20mM)を、濃−HCl(5.1ml)を含有する脱イオン水(20ml)中に溶解した。この溶液に、亜硫酸ナトリウム(1.56 g,22mM)を脱イオン水(10ml)に溶解した溶液を、氷冷下に添加した。この反応混合物を、該温度にて60分間攪拌した。かくして調製したジアゾニウム塩水溶液を、10℃にて、該化合物(1)(12g,二ナトリウム塩として22.2 mM)および酢酸ナトリウム(5.5g)を脱イオン水(200 ml)中に溶解した溶液に添加した。得られた混合物を20℃にて1時間攪拌し、次いで45℃にて1時間攪拌した。
得られた粗生成物(中間体化合物(2))を、トルエン(160 ml)とイソプロピルアルコール(40ml)との混合溶媒中に懸濁し、還流条件下で激しく攪拌した。得られた沈殿を濾別し、トルエンとイソプロピルアルコールとの混合溶媒(4:1容積比)で洗浄し、次いで乾燥して、12.2 gの該中間体(2)(二ナトリウム塩として)を、収率84% で得た。
化合物6の合成
該中間体(2)(10g,14mM)を脱イオン水(120 ml)に溶解した溶液に、濃HCl(3.5ml)を、氷冷下で添加し、かつ激しく攪拌した。 この溶液に、亜硝酸ナトリウム(1.18 g,17mM)を脱イオン水(10ml)に溶解した溶液を添加し、氷冷下で60分間攪拌して、ジアゾニウム塩を調製した。
上記中間体化合物(3)(9g,16.8 mM)を脱イオン水(60ml)中に溶解した。この溶液に、ピリジン(30ml)を添加し、次いで10〜15℃にて、該ジアゾニウム塩の懸濁液を添加した。この反応混合物を室温にて60分間攪拌し、次いで50℃にて30分間攪拌した。該反応混合物を70℃に加熱し、これにイソプロピルアルコール(200ml)および飽和酢酸ナトリウム水溶液(60ml)を添加し、次いで50℃に冷却した。得られた沈殿を濾別し、10% 酢酸ナトリウム水溶液で洗浄し、次いでイソプロピルアルコールと水との混合溶媒(4:1体積比)で洗浄し、次にイソプロピルアルコールで洗浄し、かつ乾燥した。
得られた粗生成物(化合物6)を80℃にて水(150 ml)に溶解し、この溶液にイソプロピルアルコール(600 ml)を70℃にて滴下した。この反応混合物を50℃に冷却した。得られた沈殿を濾別し、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(4:1体積比)で洗浄し、次にイソプロピルアルコールで洗浄し、かつ乾燥して、9.5gの化合物6(7.5 mM)を54% の収率で得た。分解点: 282 ℃; λmax: 717nm(DMSO; ε=87,700 M-1cm-1)。
本発明の化合物が、例えば以下に示すようなケト型とヒドラゾ型との間等で互変異性を生ずることにも注意すべきである。
(静脈内注射剤(凍結乾燥したバイアル)の調製)
化合物6(1g)とD-グルコース(1g)とを注射用水(100 ml)中に溶解し、室温にて1時間および80℃にて20分間攪拌した。この溶液を0.22μmのメンブランフィルターを通して濾過することにより滅菌した。2mlの該滅菌溶液を、内毒素を含まないバイアル(30ml)に入れた。このバイアルを、-90 ℃の液体窒素によって24時間凍結乾燥し、減圧下にゴムキャップで封止した。
実施例1(シンシチウムアッセイ)
細胞培養に基づくシンシチウムアッセイを、ウイルス間の融合、および/またはウイルス感染細胞とCD4 を発現する細胞、即ち該細胞の表面における分子量55kDa をもつ糖蛋白質との融合を阻害できる化合物の、迅速かつ定量的な検出のために利用した。上で論じた如く、リンパ球およびマクロファージのHIV 感染の主な経路はCD4 を介するものである(フォシ(Fauci),Science,1988,239:617;ステイン(Stein)等,Cell,1987,49:659; マックルーア(McClure)等,EMBO J.,1988,7:521; およびマッドン(Maddon)等,Cell,1986,54:864)。CD4 は、HIV-1 およびHIV-1-感染細胞上の、膜発現gp120 と相互作用する(ダルグレイッシュ(Dalgleish)等,Nature,1984,312:763;クラッツマン(Klatzmann)等,Nature,1984,312:767; マクダウガル(McDougal)等,Science,1986,231:382; およびマッドン(Maddon)等,Cell,1986,47:333)。このCD4-gp120 相互作用は、シンシチウム形成、巨細胞凝集体の形成に導く細胞融合過程および場合によりウイルス感染細胞のインビトロでの破壊にとって必須である(リフソン(Lifson)等,Nature,1986,323:725;およびソドロスキー(Sodroski)等,Nature,1986,322:470)。幾人かの研究者は、このシンシチウム形成過程が未感染のCD4 細胞を補給しており、かつHIV-1 感染個体内での減少したCD4+細胞数におけるある因子となっている可能性があると推測した。しかしながら、該初期のgp120-CD4 結合後のシンシチウム形成に関与する正確なメカニズムおよび細胞成分は、依然として未知である。まさに該gp120 およびCD4 蛋白質のみを含むELISA は、HIV-1 感染性および細胞融合において重要であると考えられる付随的な要素、例えば該蛋白質の立体配座の変化、新たに露出されたgp41サイトおよび該細胞上の他の依然として未知のサイトを与えることはできない(サッテントー(Sattentau)等,J.Exp.Med.,1991,174:407;およびギャラハー(Gallaher),Cell,1987,50:327)。従って、以下に説明するインビトロアッセイは、gp120-CD4 結合ばかりでなく、シンシチウム形成に要求されるあらゆる必要事象を評価するために使用できる。
実施例2(変異誘発性)
ビス−アゾビフェニル構造をもつ、抗-HIV活性を有する幾つかの染料、例えばEBおよびCSB は、インビボで変異誘発性のベンジジン分子を形成することから、標準的なエイムステスト(Ames Test)(K-T.チャン(Chung),Mutation Research,1992,277:201-220)において強力な変異誘発作用を示すことは周知である。
他方、本発明で使用する化合物は、このような部分を全くもたない。以下の第2表に示すように、本発明で使用する化合物の殆どは、該エイムステストにおいて、負のまたは極く低い正の変異誘発性値を与えた。
得られた結果を以下の第2表に示す。この実験では、6種のサルモネラティフィムリウム(Salmonella typhimurium)菌株TA98、TA1535、TA1537、TA1538、TA100 およびW2P2uvr を使用した。
実施例3(逆転写酵素阻害アッセイ)
組み換え逆転写酵素(RT)の阻害は、ジゴキシゲニン標識dUTPのDNA への組み込みに基づく、市販品として入手可能な、ベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim)RTアッセイキット(Cat.No..1468 120)を使用して実施した。HIV-1 由来の組み換え酵素は、ワーシングトンバイオケミカル社(Worthington Biochemical Corporation)から購入した。該サンプル中の抗−RT活性のレベルは、ELISA リーダーを使用して、405 nmにおける吸光度を測定することにより決定した。
得られた結果は以下の第3表に示した。
実施例4(LD50値)
該テスト物質を、5種の増大する投与量で、5匹の雌マウスに、静脈内投与した。死亡率を1週間に渡り記録し、統計的計算によってLD50値を決定した。これらのLD50値を上の第2表に示した。
第2表に示した如く、本発明で使用した化合物のLD50値は、極めて高く、化合物1〜26の全ての場合において130mg/kgを越えるものであった。これらの結果をエバンスブルー(100mg/kg)、スラミン(40 mg/kg)およびフクシン酸(100mg/kg)と比較した場合、本発明の化合物が低毒性であるという利点をも有することが明らかである。
実施例5(抗ウイルスアッセイ)
CEM 、H9、MT2 細胞および抹梢血単核細胞(PBMC)中で、HIV-1 感染の研究を実施した。CEM 、H9およびMT2 は、10% の加熱−不活性化子牛血清(FBS)含有RPMI1640培地中で成育させた。PBMC細胞を、HIV-1 感染前に、10%FBS含有RPMI1640培地中で、48時間に渡り、4μg/mlのPHA で刺激した。HIV-1 感染後、PBMC細胞を10% のFBS および10単位/mlのIL-2を含有するRPMI1640培地中に維持した。使用した主なHIV-1 単離体は、NIH AIDSリサーチ&リファレンスリエージェントプログラム(NIH AIDS research and reference reagent program)により提供された、MN、IIIB、SF2 、AZT-感受性A018およびAZT-耐性A018であった。2つの主な抗ウイルスアッセイが、本発明の化合物(阻害剤としての)の抗ウイルス活性を測定するために開発された。
I.本発明の化合物の不在下で、感染力多重度(infectivity multiplicity:moi)0.001 にて、HIV-1 RFまたはIIIBによって該細胞を感染させた。HIV-1 感染細胞を、PBS で1回洗浄し、10%FBS含有RPMI1640培地中に再懸濁させ、阻害剤としての本発明の化合物の存在下で、24−ウエルの培養皿(1ウエル当たり5x105細胞)に分布させた。この細胞培養物を7日間維持し、該ウイルス塗膜をHIV-1 p24 ELISA によってアッセイした。
II.該HIV-1ウイルスを、細胞を添加(5x105細胞/ウエル)する前に、24−ウエルの培養皿中で本発明の化合物と共に1時間インキュベーションした。該moi は0.001 であった。化合物および細胞を含まないウイルスを、一夜のインキュベーション後に洗い流した。新たな10%FBS含有RPMI1640培地を添加した該細胞培養物を7日間維持し、ウイルスの増殖をHIV-1 p24 ELISA によってアッセイした。
MTS アッセイ(R.J.グラコースキー(Gulakowski)等,J.of Virological Methods,1991,33,87)を利用して、細胞毒性をアッセイした。
HIV-1 RFを使用して得た結果を以下の第4表に示す。
実施例6
他のナフタレンスルホン酸化合物の阻害作用を以下のようにしてテストした。
実験の詳細
PBMC細胞を、4μg/mlなる濃度でPHA を含有する調整培地中で、48時間活性化させた。その後、106個の細胞を、10%FCSまたは50%FCSを含有する24−ウエルのプレートの各々に塗布した。予めグルコース溶液中に溶解した(1mg/ml)該テスト化合物を、次に該ウエルの各々に添加して、適当な濃度とした。次に、このプレートを一夜(約15時間)インキュベートし、その後細胞を含まないHIV-1患者からの単離物50μlを、各ウエルに添加した。これらプレートを、更に6〜8時間インキュベートし、その後全ての自由に浮遊するウイルス溶液を洗い流した。洗浄は4回実施した。
該ウイルスの除去後、全ての培養物を、10%FCS含有調整培地に再懸濁した。
コントロール実験として、10%FCSまたは50%FCS何れかにおいて、該観測期間全体(15日)に渡り、ウイルスの成長を監視した。
グルコースプラシーボ実験に関連して、テストした該化合物に必要とされるのと同様な量(体積比)のグルコースを、10%FCSまたは50%FCSウエルの何れかに添加した。
実施例7:動物モデルプロトコール
免疫不全CB-17 SCID(重度複合免疫不全)マウスを、ヒト抹梢血細胞(Scid-hu)によって再構成した。移入後2週間目に、機能性のTおよびB細胞の存在を意味する、ヒトIgG の存在が確認された。移入後4週間目に、SCID-hu マウスを、腹腔内(ip)注射によってRF株を106組織培養物なる感染性用量/ml(TCID)で感染させた。
このウイルスの用量は、数週間以内にSCID-hu マウスの100%感染性を生ずることが既に示されている。感染の24時間後に、8匹の感染マウスを、毎日化合物6の5%グルコース水溶液を、50 mg/kgなる用量で、ip経路で注射することにより5日間だけ処置した。コントロールとしてSCID-hu マウスに同一の用量のD-(+)-グルコースを注射した。最後のip投与の1カ月後に、該マウス由来の腹腔細胞をヒトリンパ球と共に、同時培養した。4週間後に、培養物を、上澄中のHIV-1 p24レベルをアッセイすることにより、ウイルスの生成について評価した。第6表に示した如く、化合物6を注射した8匹のマウスの何れも、ウイルスを含まないコントロールのバックグラウンドを越える、如何なる検出可能なHIV 特異的p24 をもたなかった。他方、8匹のコントロールマウスのうちの5匹は、培養されたウイルスを有していた。これらの結果は、化合物6による5日間の処置が、動物モデルにおいて、再構成されたヒト免疫細胞の感染を防止するのに十分であったことを立証している。
Claims (14)
- 患者におけるレトロウイルス感染を阻害する方法であって、以下の式(I)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許されるその塩の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む、上記方法:
但し、R11〜R17のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、R21〜R27のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、R11〜R17のうちの少なくとも一つは、スルホ基であり、かつR21〜R27のうちの少なくとも一つは、スルホ基であり、
AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれる。 - 該方法が、式(I)の該ナフタレンスルホン酸または製薬上許容されるその塩を、油、バッファー、塩水、ポリエチレングリコール、アミノ酸、界面活性剤、吸収性改良剤、脂質、ジメチルスルホキシド、蛋白質、モノサッカライド、オリゴサッカライドおよびポリサッカライドからなる群から選ばれる、製薬上許容される担体と共に投与することを含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 該製薬上許容される担体が、油、蛋白質、アミノ酸、界面活性剤、脂質、ポリエチレングリコール、モノサッカライド、オリゴサッカライドおよびポリサッカライドからなる群から選ばれる、請求の範囲第2項に記載の方法。
- 該方法が、式(I)の該ナフタレンスルホン酸または製薬上許容されるその塩を、経口、局所または注入によって投与する工程を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 該方法が、制御放出処方物の形態にある、式(I)の該ナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩を投与する工程を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 該方法が、生分解性インプラントの形態にある、式(I)の該ナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩を投与する工程を含む、請求の範囲第1項に記載の方法。
- 患者におけるレトロウイルス感染を阻害する方法であって、以下の式(II)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む上記方法:
但し、R21〜R27のうちの少なくとも一つは、ヒドロキシル基またはアミノ基であり、かつR21〜R27のうちの少なくとも一つはスルホ基であり、 AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれ、
R1は置換または無置換のアルキル(C1-C12)基、置換または無置換のアリール(C6-C12)基および置換または無置換のヘテロアリール(C1-C12)基からなる群から選ばれ、
Yは-NH-、-CH2- または-OCH2-を表し、かつ
nは0または1である。 - 患者におけるレトロウイルス感染を阻害する方法であって、以下の式(III)で表されるナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩の治療上有効な量を、該患者に投与することを含む上記方法:
AおよびBは、それぞれ独立に水素原子、アルキル(C1-C4)基、アルコキシ(C1-C4)基およびハロゲン原子からなる群から選ばれ、
Yは-NH-、-CH2- または-OCH2-を表し、かつ
nは0または1である。 - 該方法が、式(III)の該ナフタレンスルホン酸または製薬上許容されるその塩を、油、バッファー、塩水、ポリエチレングリコール、アミノ酸、界面活性剤、吸収性改良剤、脂質、ジメチルスルホキシド、蛋白質、モノサッカライド、オリゴサッカライドおよびポリサッカライドからなる群から選ばれる、製薬上許容される担体と共に投与することを含む、請求の範囲第9項に記載の方法。
- 該製薬上許容される担体が、油、蛋白質、アミノ酸、界面活性剤、脂質、ポリエチレングリコール、モノサッカライド、オリゴサッカライドおよびポリサッカライドからなる群から選ばれる、請求の範囲第10項に記載の方法。
- 該方法が、式(III)の該ナフタレンスルホン酸または製薬上許容されるその塩を、経口、局所または注入によって投与する工程を含む、請求の範囲第9項に記載の方法。
- 該方法が、制御放出処方物の形態にある、式(III)の該ナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩を投与する工程を含む、請求の範囲第9項に記載の方法。
- 該方法が、生分解性インプラントの形態にある、式(III)の該ナフタレンスルホン酸化合物または製薬上許容されるその塩を投与する工程を含む、請求の範囲第9項に記載の方法。
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