JP2006314955A - カルボニル化合物捕集用カラム - Google Patents

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Abstract

【課題】 迅速、簡便かつ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、カルボニル化合物、特にアルデヒド類を効率よく捕集し、分析に供することのできるカルボニル化合物捕集用カラムを提供する。
【解決手段】 数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲のスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲のメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされた無機系充填剤が少なくとも充填されてなることを特徴とするカルボニル化合物捕集用カラム。
【選択図】 図1

Description

本発明は、カルボニル化合物捕集用カラム関するものであり、特にガス中に微量存在するカルボニル化合物を迅速に捕集するためのカルボニル化合物捕集用カラムに関する。
近年、種類及び量が著しく増加している化学物質に関して、環境汚染状況の把握は急務であり、環境中の有害化学物質の迅速な測定方法の開発が待たれている。
特に、大気中の有害化学物質については、改正された大気汚染防止法(環境省)で定められているように、特定の有害化学物質を規定し、その環境中の濃度を測定することにより、人体に対して有害な有害化学物質の量を規制しようとしている。また、大気中の揮発性化学物質(VOC)については、光化学オキシダントの原因物質となりうることから、排出量の規制が始まるなど、大気中の化学物質を規制あるいは管理する方向にある。
また、近年シックハウス症候群など、化学物質が人体に与える影響について大きく取り上げられるようになってきているが、室内空気中の化学物質濃度が、環境省の定める指針値を大きく下回るにもかかわらずシックハウス症候群の症状を表す人がいるなど、低濃度の化学物質を定量的に測定する方法が望まれている。
これらの化学物質のうち、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類については、排気ガス中、室内空気中、建材からの放散量などを測定する方法が開示されている。
下記非特許文献1には、排ガス中のホルムアルデヒド分析方法が開示されている。この非特許文献1には、(1)4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール吸光光度法、(2)2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)捕集−ガスクロマトグラフ法(吸収瓶捕集)及びDNPH捕集−高速液体クロマトグラフ法(吸収瓶捕集)、(3)DNPH捕集−ガスクロマトグラフ法(カートリッジ捕集)及びDNPH捕集−高速液体クロマトグラフ法(カートリッジ捕集)の3種類の分析方法について開示されている。これらの方法のうち、操作が簡便で容易な(3)DNPH捕集−高速液体クロマトグラフ法(カートリッジ捕集)が主流の方法として採用されている。
また、下記非特許文献2には、室内空気中のホルムアルデヒドの分析方法について開示されている。この非特許文献2には、非特許文献1に記載されている(3)DNPH捕集−高速液体クロマトグラフ法(カートリッジ捕集)に若干の改良を加えたホルムアルデヒドの測定方法について記載されている。
さらに、非特許文献3には、従来のカルボニル化合物捕集用カートリッジを用いたアルデヒド類の捕集について、定量下限値を下げる試みがなされている。非特許文献3には、ホルムアルデヒドの目標定量下限値である0.08μg/mを測定可能とするための分析操作方法について開示されている。
他に、下記特許文献1には、DNPH以外のコーティングを行ってカルボニル化合物を捕集する方法について開示してあり、O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミンなどを用いることによりカルボニル化合物を捕集する方法が開示されている。
JIS K0303:2004 「排ガス中のホルムアルデヒド分析方法」 「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書−第6回〜第7回のまとめについて」 厚生労働省 「アルデヒド類捕集及び誘導体化用カートリッジのブランク値測定方法について(2)ガラス器具の影響」 和光純薬時報 73(2),10(2005) 国際公開第00/02041号パンフレット
室内大気等のガス中のカルボニル化合物を分析する際、ガス中のカルボニル化合物の濃度が低い場合は、カルボニル化合物を濃縮する必要がある。そのためには分析試料を大量に捕集しなければならないが、分析試料を大量に捕集しようとするには、捕集時間を長くするか、捕集速度を高くする必要がある。収集時間を長くすることは、収集のための手間が多くなることになる。このため、捕集速度を高くする検討が行われている。
本発明者らは、シリカの持つ高い吸着・脱着能力を維持しつつ、分析試料を高流速で流通させた時にかかる圧力を比較的低く抑えるカルボニル化合物捕集用カラムの実現を鋭意検討してきたが、小粒子径の充填剤粉末をそのまま、またはこの小粒子径の充填剤粉末を圧縮させて粒子間の隙間を狭くした状態でカラムに詰めて用いている限り、上述の目的を達するのは極めて困難であると判断された。
また、ホルムアルデヒドに代表されるカルボニル化合物は、通常のシリカ系充填剤には吸着されにくいという問題点があり、当該充填剤の細孔径や粒子径を調整してもカルボニル化合物を捕集することは極めて困難であった。
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、上述の従来技術の欠点を解消することが可能なカルボニル化合物捕集用カラムおよびこのカルボニル化合物捕集用カラムを用いたカルボニル化合物の回収方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明の目的は、簡便且つ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、分析に供する被分析試料の前処理時間の短縮を実施するためのカルボニル化合物捕集用カラムを提供することにある。また、本発明の目的は、簡便かつ安価に、再現性よく、高い回収率を維持しながら、対象となる物質を迅速に精製し、分析に供する試料の前処理時間を短縮する方法を提供することにある。
本発明は以下の手段を提供する。すなわち、
(1)数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされた無機系充填剤が充填されてなることを特徴とするカルボニル化合物捕集用カラム。
(2)前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする前項1に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
(3)前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする前項1または前項2に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
(4)前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする前項1ないし前項3のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
(5)前記カルボニル化合物が、アルデヒド類またはケトン類であることを特徴とする前項1ないし前項4のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
(6)前記アルデヒド類またはケトン類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−トルアルデヒドであることを特徴とする前項5に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
(7)カルボニル化合物および共存物質が含有された分析試料を、前項1ないし前項6のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラムに流通させて前記カルボニル化合物を前記無機系充填剤に吸着させた後、前記カルボニル化合物捕集用カラムに溶離液を流通させて前記カルボニル化合物を流出させることを特徴とするカルボニル化合物の分取方法。
(8)前記カルボニル化合物が、アルデヒド類またはケトン類であることを特徴とする前項7に記載のカルボニル化合物の分取方法。
(9)前記アルデヒド類またはケトン類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−トルアルデヒドであることを特徴とする前項8に記載のカルボニル化合物の分取方法。
(10)数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされたことを特徴とする無機系充填剤。
(11)前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする前項10に記載の無機系充填剤。
(12)前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする前項10または前項11に記載の無機系充填剤。
(13)前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする前項10ないし前項12のいずれかに記載の無機系充填剤。
本発明者らは、アルデヒド類、ケトン類などのカルボニル化合物に対して高い吸着能力を維持しつつ、しかも通気時にかかる圧力を比較的低く抑えるカルボニル化合物捕集用カラムの実現を鋭意検討してきたところ、シリカ材質に高性能分析が可能な細孔(メソポア)に加えて、高速分離が可能な細孔(スルーポア)を導入後、DNPHをコーティングすることで、両方の目的が達成できることを見いだした。つまり、スルーポアが存在することによって、試料を高速で通気することが可能であり、細孔にコーティングされたDNPHが試料中のカルボニル化合物と選択的かつ定量的に反応する。
本発明によれば、簡便且つ再現性よく、高い回収率を維持しながら、分析に供する被分析試料中のカルボニル化合物の迅速な捕集を実現するためのカルボニル化合物捕集用カラムが提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の一例であるカルボニル化合物捕集用カラム1は、数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと、数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされた無機系充填剤2が、充填剤層2aとしてカラム容器3である注射筒型容器(リザーバー)に収容されることにより構成されている。また充填剤層2aの上下には、図示略のフィルターが取り付けられている。
本発明に係る無機系充填剤2は、その表面がDNPHで修飾(コーティング)されたものである。またカラム容器3には必要に応じて上記無機系充填剤2と別の充填剤を混合して充填してもよく、無機系充填剤2と他の充填剤もしくは基材とで多層構造を形成させるように充填してもよい。
カラム容器3(リザーバー)の形状は特に制限はない。通常の円筒型であっても、ディスク状であっても良い。カラム容器3のサイズは分析処理量に対応して適切な大きさのものを使用できる。通常は、容積0.1〜100ml、好ましくは3〜6ml程度のものがハンドリングの面で好適である。また、カラム容器3(リザーバー)の材質としては、ガラス製、ステンレス製、樹脂製(たとえばポリプロピレン、ポリエチレン)のものが好ましく、使用する溶媒に不溶性で、無機系充填剤2が試料の濃縮作業中にカラム容器3から流出しなければよく、その材質、形は特に制限されない。
このカルボニル化合物捕集用カラム1に試料を流し、この試料に含まれるカルボニル化合物をいったん吸着させてから抽出することにより、対象物質を分取、回収させることができる。
本発明に係る無機系充填剤2の形状は、ロッド状(充填剤が一つの塊としてカラム容器の内部とほぼ同じサイズとなっている)、バルク状(1mm〜5cm程度の塊)、粒子状、繊維状のいずれでもよいが、ロッド状あるいは粒子状にすることが好ましい。粒子状の場合は、破砕型粒子でも球状粒子でもよい。粒子状とする場合の数平均粒子径は、10μm以上1000μm以下の範囲が好ましく、30μm以上700μm以下の範囲がより好ましく、50μm以上500μm以下の範囲が最も好ましい。平均粒子径が10μm未満になると、カラム1に流通させる液体または気体等の分析試料の流速を上げた場合に、無機系充填剤2からなる充填剤層2aの前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができない。また平均粒子径が1000μmを越えると、対象物質の吸着効率が悪くなるので好ましくない。なお、無機系充填剤2の平均粒子径は、JIS Z 8801に定める試験用ふるいを用いて、JIS Z8815ふるいわけ試験方法通則に準拠して測定する。
また無機系充填剤2は、上記の形状のものを組み合わせて使用することもできる。例えば、バルク状充填剤の隙間に粒子状または繊維状のものを詰めて使用することも可能である。
本発明に係る無機系充填剤2の比表面積は、50m/g以上であることが好ましく、100m/g以上がより好ましい。比表面積が50m/g未満だと対象物質の吸着効率が悪くなるので好ましくない。なお、比表面積はBET法により測定されたものである。
また、本発明に係る無機系充填剤2は、シリカにより形成されることが好ましい。またこの無機系充填剤2は特に、数平均直径が0.5μm以上10μm以下の範囲のスルーポアと、数平均直径が2nm以上50nm以下のメソポアとが相互に連結し、3次元的に広がった細孔構造を持つ2重細孔構造を有することがより好ましい。なお、スルーポアは充填剤内部を貫通する多数の貫通孔であり、メソポアは、充填剤表面またはスルーポアの壁面に形成された多数の細孔である。
スルーポアの数平均直径は0.5μm以上25μm以下の範囲が好ましく、0.5μm以上10μm以下の範囲がより好ましく、0.5μm以上7μm以下の範囲が特に好ましい。スルーポアの数平均直径が0.5μm未満だと、カラム1に流通させる液体、気体等の分析試料の流速を上げた場合に、充填剤層2a前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができないので好ましくない。またスルーポアの数平均直径が25μmを越えると無機系充填剤2自体の空隙率が大きくなり、無機系充填剤2の物理的強度が保てなくなるので好ましくない。
無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合は、30%以上90%以下の範囲であることが好ましく、40%以上85%以下の範囲がより好ましく、50%以上80%以下の範囲がより好ましい。スルーポアの細孔容積の割合が30%未満では、カラム1に流通させる液体、気体等の分析試料の速度を挙げた場合に、充填剤層2a前後の静圧の差(圧力損失)が大きくなり、高流速で分析試料を流すことができないので好ましくない。また、スルーポアの細孔体積の割合が90%を超えると、無機系充填剤2自体の空隙率が大きくなり、無機系充填剤2の物理的強度が保てなくなるので好ましくない。
また無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合は、無機系充填剤の密度と、無機系充填剤の質量当たりのスルーポアの細孔容積との積から求めることができる。無機系充填剤の密度は、スルーポア及びメソポアの細孔容積を含む無機系充填剤の全体積をその無機系充填剤の質量で除して求められる。また、無機系充填剤の質量当たりのスルーポアの細孔容積は、水銀圧入法により求めることができる。
なお、ロッド状の無機系充填剤については、シリカの体積、スルーポア及びメソポアの細孔容積を含む全体積を比較的容易に求められるので、その密度の算出が比較的精度良く行えるが、バルク状、粒子状または繊維状の無機系充填剤については、全体積の算出が難しく、結果的に無機系充填剤の密度の算出が精度良く行えない場合がある。このような場合には、ゲルの調整条件を同一にしてロッド状の無機系充填剤を製造し、このロッド状の無機系充填剤の密度をスルーポアの細孔容積の割合の算出に用いればよい。
次に、メソポアの数平均直径は2nm以上50nm以下が好ましく、5nm以上40nm以下の範囲がより好ましく、8nm以上35nm以下の範囲が特に好ましい。メソポアの数平均直径が2nm未満だと、吸着対象となる物質がメソポア内に入りこめず、吸着されにくくなって回収率が低下するので好ましくない。また、数平均直径が50nmを越えると十分に吸着されなくなるので好ましくない。
本発明に係る無機系充填剤2は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、酸性水溶液に、テンプレートとなる水溶性化合物を加えて溶解させる。その後、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物を加えてこのアルコキシシラン化合物を加水分解させる。その後、加水分解と重縮合反応を更に進行させて、溶液がゲル化してシリカ(シリカゲル)が形成されるまでこの溶液を静置する。この工程により、スルーポアが形成される。すなわち、ゲル化したシリカ(シリカゲル)中に水溶性化合物が残存してこの水溶性化合物がテンプレートとなり、シリカ中にスルーポアが形成される。この段階でスルーポアの大きさが決定される。すなわち出発溶液の組成や、重合速度を制御して水溶性化合物の凝集の程度をコントロールすることでスルーポアの大きさを決定することができる。
次にゲル化したシリカを水洗後、塩基性溶液により処理する。この工程により、シリカ骨格の溶解・再析出が起こり、メソポアが形成される。次いで、ゲルを水洗後、高温で焼結させてテンプレートとなった水溶性化合物を除去して無機系充填材が得られる。
本発明においては、上記酸性水溶液として、濃度0.01Mないし1.0Mの硝酸、酢酸等の水溶液を用いることができる。またテンプレートの水溶性化合物として、分子量100000程度のポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリアクリル酸等を用いることができる。この水溶性化合物の添加量としては、例えば上記酸性水溶液に対して2質量%ないし15質量%とすることができる。またゲル化したシリカを処理する塩基性溶液としては、尿素水溶液、アンモニア水溶液等を用いることができる。更にシリカの焼結条件としては、焼結温度300℃ないし600℃の範囲で2時間ないし10時間焼結する条件とすることができる。また焼成雰囲気は不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気などが良い。
上記のようにして得られた無機系充填剤の形状は、焼成時のシリカの収納容器の内形状に対応した形状となる。例えば、収納容器の内形状が円柱状であれば、円柱状(ロッド状)の無機系充填剤が得られる。またこのロッド状の無機系充填剤を更に粉砕することで、粒子状の無機系充填剤が得られる。
また、粒子状の無機系充填剤は、次のようにして製造することもできる。
すなわち、前述の製造方法と同様にして、酸性水溶液にテンプレートとなる水溶性化合物を加えて溶解させてから、アルコキシシラン化合物を加えて加水分解させることにより、シリカゲルを形成する。
次に、得られたシリカゲルを粉砕してから水洗し、更に塩基性溶液により処理する。また、得られたシリカゲルを先に水洗、塩基性溶液で処理してから粉砕しても良い。要は、シリカゲルを形成してから焼成するまでの間に粉砕すればよい。
そして、粉砕されたシリカゲルを水洗後、高温で焼結させてテンプレートとなった水溶性化合物を除去することによって、粒子状の無機系充填剤が得られる。このように焼成前に粉砕を行うと、粉砕処理による細孔の破壊や閉塞が低減され、より好ましい。
シリカゲルを粉砕する手段としては、複数の貫通孔を有する多孔質板材の一面側からシリカゲルを貫通孔に圧入することにより、シリカゲルを粉砕することができる。多孔質板材としては、例えば、金属網、篩材などを例示できる。貫通孔の孔径は30−800μmの範囲が望ましく、100−700μmの範囲がより望ましく、200−500μmの範囲がもっとも望ましい。孔径が500μm以下であれば、焼成後の粒子径を適正な範囲に制御できる。また、孔径が100μm以上であれば、ゲルを多孔質板材に圧入する際の圧力を小さくすることができる。
このとき、シリカゲルを多孔質板材の一側面から圧入する際に多孔質板材の出口に分散媒を存在させると、該溶媒中にミセルを形成させることにより粉砕することもできる。分散媒としては、シリカゲルと均一に混合しないような媒体であれば特に制限なく使用することができ、好ましくは、水との相溶性が低い液体を用いることができる。この水との相溶性が低い液体としては、例えば、ヘキサン、トルエン、オクタノールなどの有機溶剤を使用することができる。この時使用する分散媒中に、界面活性剤を存在させておくと、シリカゲルと分散媒が乳化するので、均質に粉砕することができる。界面活性剤としては、カチオン系やノニオン系の界面活性剤を使用することができ、アルキルスルホン酸系や、ポリオキシエチレン系の界面活性剤を使用することができる。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムや、ポリエチレングリコールアルキルエーテルなどを使用することができる。
なお、ゲル化は短時間で完結するものではなく、ゲル化の開始と終了にはある程度時間の幅がある。ゲル化が完全に終了した後に押し出して成形しようとすると、押し出す際に圧力がかかり、押し出しが困難となる。したがって、より好ましくは完全にゲル化する前に押し出して成形することが好ましい。また粉砕する手段としては、上記の他に、スプレードライ法、W/Oエマルジョンによる方法などが知られており(特開平7−069617号公報)、これらの手段で粉砕を行っても良い。
なお、上記の製造方法に類似する方法として、例えば、以下の参考文献1および2に詳細に記載されており、本発明に係る無機系充填剤は、これら参考文献に基づいても製造できる。
「参照文献1」
石塚紀生、外2名、「次世代クロマトグラフィーカラム−モノリス型シリカによる超高速・高分離能の実現」、表面、Vol39、No8、p.297―307
「参照文献2」
Kazuki Nakanishi、「Pore Structure Control of Silica Gels Based on Phase Separation」、Journal of Porous Materials、1997、4、67―112
次に、得られた無機系充填剤はロッド状、バルク状、粒子状のいずれの状態でも使用してもよいが、カルボニル化合物を捕集するためにDNPHでコーティングすることによって、本発明に係る無機系充填剤2として得ることができる。
コーティングする方法としては特に制限はないが、無機系充填剤にDNPHの溶液を含浸させた後に乾燥により溶媒を除去してコーティングする方法や、無機系充填剤にDNPHの溶液を流通させ、無機系充填剤にDNPHを吸着させた後に乾燥することにより残っている溶媒を除去してコーティングする方法などを使用することができる。また、超臨界状態の媒体にDNPHを溶解させておき、これと無機系充填剤を混合した後、超臨界状態を解除し、媒体を取り除くことによりDNPHをコーティングする方法も使用することができる。
本発明のカルボニル化合物捕集用カラム1には、前記の無機系充填剤2の他に通常の充填剤、例えばポリスチレンビーズ、ODS、アルミナビーズを併用することも可能である。即ち、前記の無機系充填剤2の粒子と通常充填剤の粒子または繊維を混合して、あるいは層状にカラム容器に詰めて使用することができる。
本発明のカルボニル化合物捕集用カラムの吸着対象物質は、カルボニル化合物(カルボニル基:−(C=O)− を有する有機化合物)であり、さらに詳しくは、アルデヒド類またはケトン類である。アルデヒド類またはケトン類としては、25℃における蒸気圧が1.0×10−10Paよりも大きいカルボニル化合物が挙げられる。その具体的な化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、プロピオンアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、バレルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、ヘキサナール、ノナナールなどをあげることができるがこれらに限定されるものではない。
以上説明したように、本実施形態のカルボニル化合物捕集用カラムによれば、シリカ材質に高性能分析が可能なメソポアに加えて、高速分離が可能なスルーポアが形成されているので、通気時にかかる圧力を比較的低く抑えることができるので高速通気が可能であり、かつ、DNPHを担持させることにより、ガス中のカルボニル化合物を効率よく捕集することができる。
本発明のカルボニル化合物捕集用カラムの具体的な用途としては、焼却炉排気ガス、各種製造設備排気ガス、幹線道路上空捕集大気、室内大気、自動車内空気のような環境大気中のカルボニル化合物の分析、また、建材、塗膜、成形品などから発散する化合物を含んだガス中に含まれるカルボニル化合物の分析などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]粒子状の無機系充填剤を入れたカラムの製造
(無機系充填剤の調製)
酸性水溶液として1M硝酸水溶液20gを用意し、この硝酸水溶液に、テンプレートとなるポリエチレンオキサイド(分子量Mv=100,000、Aldrich社製)を1.2g加えて溶解させた。次に、ソルビトール(和光純薬(株)製)1.0gを加えて溶解させた後、氷浴下で冷却した。氷冷下、アルコキシシラン化合物としてテトラエトキシシラン(信越化学工業(株)製)14mlを激しく攪拌しながら加えた。30分氷冷下で攪拌してから2mlを内径12mmの円筒容器に移し、60℃の恒温装置内に静置した。静置から約2時間程度でテトラエトキシシランが加水分解されてゲル化し、固体状になった。
次に、固形化した円筒形のゲルを、JIS8801で規定されている開口径300μmのステンレス製の網から押し出すことにより粉砕した。
粉砕後のゲルを純水中に8時間静置することにより洗浄し、次に純水を排出させてからゲルを100mlのオートクレーブに入れ、1.5M尿素水溶液を70ml加えた。2時間静置後、110℃まで3時間で昇温してから5時間保持して熟成させた。冷却後ゲルを取りだし、純水中に8時間静置することにより洗浄した。純水を排出してからゲルをるつぼに移し入れ、600℃まで2時間で昇温、600℃で2時間焼結させてポリエチレンオキサイドを分解除去させた。このようにして、メソポアとスルーポアとを有する骨格が絡み合った構造を持つ2重細孔構造の無機系充填剤を得た。
得られた無機系充填剤について、BET比表面積、メソポアの数平均直径、スルーポアの数平均直径及び細孔容積を測定した。BET表面積は、マイクロメトリックス社製ASAP2000を用いてBET法により測定した。
メソポアの数平均直径は、液体窒素の沸点(−196℃)における窒素の吸着量から比表面積、細孔体積を求め、細孔直径を以下の計算式に基づき算出した(細孔は円筒形とみなしている)。
細孔直径=4×細孔体積/比表面積
更に、スルーポアの数平均直径及び細孔容積は、マイクロメトリックス社製PORESIZER9320を用いて、水銀圧入法により測定した。
更に、スルーポアの細孔容積とシリカゲル比重から、無機系充填剤の体積に占めるスルーポアの細孔容積の割合を算出した。
表1に、スルーポア及びメソポアの数平均直径、シリカゲルのBET比表面積、スルーポアの細孔容積及びシリカゲルにおけるスルーポアの細孔容積の割合を示す。
Figure 2006314955
「実施例1の無機系充填剤の物性評価」
表1に示すように、実施例1の無機系充填剤は、スルーポアの数平均直径が2〜25μm以下の範囲であり、メソポアの数平均直径が6〜15nmの範囲であり、本発明に係る無機系充填剤であることが分かる。
図2〜図3には、実施例1の細孔直径と累積細孔容積及び累積細孔容積の微分値との関係をグラフで示す。なお、これらのグラフは、BET法によるメソポアの数平均直径の測定と、水銀圧入法によるスルーポアの数平均直径及び細孔容積から求めたものであって、表1の数平均直径並びに細孔容積及び細孔容積の割合の基礎データとなるものである。
図2のグラフにおいて、累積細孔容積とは、メソポア及びスルーポアを含む無機系充填剤が有する全ての細孔の容積を累積したものである。即ち図2は、累積細孔容積を縦軸とし、メソポア及びスルーポアを含む全ての細孔の直径を横軸にしたグラフである。
更に図3には、細孔直径と累積細孔容積の微分値との関係を示すグラフであって、横軸である細孔直径を1〜100nmの範囲で拡大したグラフを示す。図3に示すように、実施例1の無機系充填剤は、2〜50nmの範囲で微分曲線がピーク形状を示すことが分かる。従って、実施例1ついては、直径が2〜50nmのメソポアが確かに存在していることが分かる。
(粒子状の無機系充填剤を入れたカラムの調製)
得られた無機系充填剤を分級して平均粒子径106μm〜250μmの粒子状無機系充填剤を得た。次に、底部にポリエチレン製フィルターが取り付けられた内径12mm、内容積6mlの筒型のカラム容器(リザーバー)に、粒子状無機系充填剤350mgを入れ、上から別のポリエチレン製フィルターで栓をして棒で押しこむことにより、実施例1の粒子状の無機系充填剤を入れたカラムを製造した。
[実施例2]カルボニル化合物捕集用カラムの調製
カルボニル化合物捕集用カラムの調整を、JIS K0303:2004(排ガス中のホルムアルデヒド分析方法)に準じて行った。すなわち、実施例1で調製した粒子状の無機系充填剤を入れたカラムにアセトニトリル5mlを通液して洗浄し、窒素を通気して乾燥させた。続いて、DNPHを1mg含有するアセトニトリル溶液5mlを通液してDNPHを担持させた後、窒素を通気して乾燥させることにより、カルボニル化合物捕集用カラムを調整した。
[実施例3]アルデヒドの捕集
実施例2で調製したカルボニル化合物捕集用カラムを用い、図4に示すように、カラムの出口側(図1の下部)にガスポンプを接続し、カラムの入口側(図1の上部)からガス流量計を介して室内空気がカラムに通気するように連結した。通気速度は毎分8リットルとし、通気時間は30分とした。
通気後のカラムに、アセトニトリル5mlを通液し、未反応のDNPHおよびDNPHとカルボニル化合物が反応して生成したDNPH−カルボニル化合物付加体を溶出させた。溶出液をアセトニトリルで5mlにメスアップし、高速液体クロマトグラフ分析(下記条件参照)を行ったところ、DNPHとともに、DNPH−ホルムアルデヒド付加体、DNPH−アセトアルデヒド付加体、DNPH−アセトン付加体が検出された。これらの付加体を各カルボニル化合物に換算したところ、表2に示すような結果が得られた。
「高速液体クロマトグラフ分析条件」
(1)カラム:Shodex C18M−4E 4.6×250mm
(2)温 度:40℃
(3)溶離液:水:アセトニトリル=55:45(体積比)
(4)検出器:UV360nm
(5)流 速:1ml/min
Figure 2006314955
[比較例1]
DNPH/シリカカラムとして、ウォーターズ社製 Sep−Pak(登録商標) DNPH(充填量350mg、DNPH担持量1mg)を用いた以外は上記実施例3と同様にしてカルボニル化合物の捕集を行ったが、カートリッジ前後の差圧が大きく、毎分8リットル通気することができなかった。
以上の結果より、本発明のカルボニル化合物捕集用カラムは、通気性がよく、高速通気が可能であるので、低濃度のカルボニル化合物を検出することができた。このことは粒子状の無機系充填剤が2重細孔構造をもっているからに他ならない。
図1は、本発明の実施形態であるカルボニル化合物捕集用カラムを示す断面模式図。 図2は、実施例1の無機系充填剤の累積細孔容積及びその微分値と細孔直径との関係を示すグラフ。 図3は、実施例1の無機系充填剤の累積細孔容積の微分値と細孔直径との関係を細孔直径1〜100nmの範囲で示すグラフ。 図4は、実施例3において、室内空気を、本発明に係るカルボニル化合物捕集用カラムに通気する際の接続状態を説明する概略図。
符号の説明
1…カルボニル化合物捕集用カラム、2…無機系充填剤、2a…充填剤層、3…カラム容器(リザーバー)

Claims (13)

  1. 数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされた無機系充填剤が充填されてなることを特徴とするカルボニル化合物捕集用カラム。
  2. 前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
  3. 前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
  4. 前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
  5. 前記カルボニル化合物が、アルデヒド類またはケトン類であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
  6. 前記アルデヒド類またはケトン類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−トルアルデヒドであることを特徴とする請求項5に記載のカルボニル化合物捕集用カラム。
  7. カルボニル化合物および共存物質が含有された分析試料を、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のカルボニル化合物捕集用カラムに流通させて前記カルボニル化合物を前記無機系充填剤に吸着させた後、前記カルボニル化合物捕集用カラムに溶離液を流通させて前記カルボニル化合物を流出させることを特徴とするカルボニル化合物の分取方法。
  8. 前記カルボニル化合物が、アルデヒド類またはケトン類であることを特徴とする請求項7に記載のカルボニル化合物の分取方法。
  9. 前記アルデヒド類またはケトン類が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−トルアルデヒドであることを特徴とする請求項8に記載のカルボニル化合物の分取方法。
  10. 数平均直径が0.5μm以上25μm以下の範囲であるスルーポアと数平均直径が2nm以上50nm以下の範囲であるメソポアとを有する2重細孔構造からなり、DNPH(2,4−ジニトロフェニルヒドラジン)で表面がコーティングされたことを特徴とする無機系充填剤。
  11. 前記無機系充填剤の体積に占める前記スルーポアの細孔容積の割合が30%以上90%以下の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の無機系充填剤。
  12. 前記無機系充填剤がシリカを主成分として形成されたものであることを特徴とする請求項10または11に記載の無機系充填剤。
  13. 前記無機系充填剤が粒子状であり、その数平均粒子径が10μm以上1000μm以下の範囲であり、かつBET法による比表面積が50m/g以上であることを特徴とする請求項10ないし請求項12のいずれかに記載の無機系充填剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010151607A (ja) * 2008-12-25 2010-07-08 Japan Automobile Research Inst Inc 有害大気汚染物質捕集方法及び装置
JP2018087776A (ja) * 2016-11-29 2018-06-07 ジーエルサイエンス株式会社 酵素センサー
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WO2023098632A1 (zh) * 2021-12-02 2023-06-08 湖北中烟工业有限责任公司 羰基化合物捕集剂、呼出烟气中羰基化合物的捕集装置和检测方法

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