JP2006312677A - 炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】樹脂マトリックスの持つ本来の特性を損わずに、優れた導電性を付与する炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂マトリックスに対して0〜2.0重量%(ただし、0は含まず)の炭素繊維を含有した混合物を加熱し、加熱中もしくは加熱後に、電場印加し、炭素繊維を実質的に一方向に配向させ、更に、炭素繊維が、互いにその長さ方向の端部方向で接触して連接構造を形成させた炭素繊維配向連接フィルムとする。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法に関する。
樹脂等の高分子材料に添加されるフィラーは、従来から、増量による原料コストの低減、補強用フィラーによる力学的・熱的強度の改善を主目的に用いられてきた。しかし、最近では、導電性、磁性、電磁波吸収性、紫外線遮蔽性等の様々な特殊機能を持ったフィラーが開発され、樹脂複合材料の高機能化、高付加価値化に大きな役割を果たしている。
ところで、樹脂に導電性を付加するために利用される導電性フィラーの代表的な材料としては、カーボン系フィラーが知られている。カーボン系フィラーは、カーボンブラック、黒鉛および炭素繊維(カーボンナノチューブも含む)に大別される。カーボン系フィラーを樹脂に分散させた複合材に導電性が付与されるメカニズムには、カーボン系フィラーの連鎖が互いに接触し導電回路を形成するという電気的接触説の他、カーボン系フィラーの粒子間を電子がジャンプすることによるいわゆるトンネル効果で発現するというトンネル説がある。導電性フィラーとしてカーボンブラックを用いた場合における導電性の向上は、前者の電気的接触説で説明できると言われている。
導電性フィラーを樹脂等に混合する場合、導電性フィラーの分散状態が複合材の性能に大きく影響を及ぼすことは広く知られている。このため、導電性フィラーの分散状態を知り、分散をコントロールすることは、複合材に優れた導電性を付与するための極めて重要なファクターとなる。
導電性フィラーの分散を制御する方法の一つに、カーボンブラックを含有するポリマーの成形時に、ポリマーの軟化点以上の温度において電場勾配をかけることによって、カーボンブラックをポリマー中に均一に分散させ、かつ高度に配向させる技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、カーボン系フィラーとしてカーボンナノチューブCarbon Nano Tube: CNT)を用いて、CNTをイソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)中に分散させて直流電界をかけると、IPA中でCNTがその電場に沿って配列するという報告がある(例えば、非特許文献1参照)。
特開平5−200743号公報(実施例1、2等) J.Phys.D: Appl. Phys. 31(1998)L34−L36
しかし、上述の従来技術には、次のような問題がある。特許文献1に開示される技術の場合、カーボンブラックの混合量は、マトリックスであるポリマー100重量部に対して20重量部以上である。このため、マトリックス本来が有する特性が損なわれるという問題がある。例えば、マトリックスが透明樹脂の場合には、カーボンブラックの混合量が多くなると、透明性が損なわれる。しかも、カーボンブラックの混合量に対する複合体の電場印加による体積抵抗率の低下効果は決して高いとは言えず、マトリックスの特性を犠牲にした代償は小さい。複合体中に球状のカーボンブラックがランダムに分散している状態において電場を印加しても、かかる分散状態に変化はない。このため、電場印加によって導電性を大きく向上させることは難しい。
一方、非特許文献1に開示される技術は、IPA100重量部に対して約0.63重量部のCNTを分散させた溶液に電場をかけてCNTを配向させる技術に過ぎない。この技術では、カーボンブラックとは異なりアスペクト比(長径/短径)の高いフィラーが用いられている。しかし、当該技術はCNTを樹脂中で配向させるものではなく、粘度の高い高分子マトリックス中におけるCNTの挙動を類推できない。
本発明は、樹脂マトリックスが有する本来の特性を損わずに、優れた導電性を付与する炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法を提供する。
上述の課題を解決するため、本発明は、樹脂マトリックスに対して0〜2.0重量%(ただし、0は含まず)の炭素繊維を含有し、炭素繊維は実質的に一方向に配向し、互いにその長さ方向の端部方向で接触して連接構造を形成している炭素繊維配向連接フィルムとしている。このため、樹脂マトリックスが有する本来の特性を損なうことなく導電性にすぐれた樹脂フィルムとなる。粘度の高い高分子マトリックス中において、最初にランダムに分散している炭素繊維が、電場の印加によって配向しはじめ、さらに炭素繊維の末端同士が接触し、炭素繊維の連結構造を形成することは、カーボンブラックの分散状態あるいは有機溶媒中における炭素繊維の配向からは類推できない新しい現象である。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維の繊維径が平均1ミクロン以下である炭素繊維配向連接フィルムとしている。このため、炭素繊維の含有率が少なくても、炭素繊維が配向しかつ互いに長さ方向に連接した構造を形成することができる。したがって、樹脂マトリックスが有する本来の特性をより発揮できる。
また、別の本発明は、先の発明における樹脂マトリックスの誘電率が50Hzにおいて4.0以下である炭素繊維配向連接フィルムとしている。このため、樹脂マトリックス中において、炭素繊維を一方向に配向させ、かつその長さ方向に連接させた構造を形成させやすくなる。このため、炭素繊維の配向性および連接性により優れた炭素繊維配向連接フィルムとなる。また、配向と連接に優れるということは、製造上、短時間にて炭素繊維の配向と連接を形成させることができることをも意味する。したがって、製造コストの低減を図ることができる。
また、別の本発明は、先の発明における樹脂マトリックスが透明である炭素繊維配向連接フィルムとしている。このため、透明でかつ導電性に優れた炭素繊維配向連接フィルムとなる。したがって、透明電極あるいは透明タッチパネルへの応用が可能となる。
また、別の本発明は、先の発明における炭素繊維が樹脂マトリックスの厚み方向に平行に配向している炭素繊維配向連接フィルムとしている。このため、樹脂マトリックスの厚み方向に導電性が高い炭素繊維配向連接フィルムとなる。また、炭素繊維の繊維断面が小さい場合には、炭素繊維配向連接フィルムの厚み方向と平行な方向からみると、炭素繊維の断面方向は極めて小さな点として認識されるにすぎないので、厚み方向と平行な方向からは透明にみえる。
また、別の本発明は、先の発明における樹脂マトリックスはポリエチレンである炭素繊維配向連接フィルムとしている。このように、ポリエチレンを樹脂マトリックスに用いると、透明性および導電性に極めて優れた炭素繊維配向連接フィルムとなる。ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンおよび線状低密度ポリエチレンを含むが、特に低密度ポリエチレンが好ましい。
また、別の本発明は、樹脂マトリックスと炭素繊維とを混合する混合工程と、当該混合工程で得られた混合物に対して、炭素繊維が上記混合物中で可動な状況下としながら電場をかける電場印加工程と、当該電場印加工程により炭素繊維がその長さ方向に連接した状態を保持する状態にて混合物を硬化する硬化工程とを有する炭素繊維配向連接フィルムの製造方法としている。このため、炭素繊維の配向と連接とを容易に形成できる。特に電場を印加することにより、炭素繊維が電場の方向に沿って回転するだけではなく、炭素繊維同士を互いに連接させることができる。
また、別の本発明は、先の発明における電場印加工程を、混合物を加熱中あるいは加熱後に行う工程とする炭素繊維配向連接フィルムの製造方法としている。このため、樹脂マトリックスに熱可塑性樹脂を用いた場合に、加熱することにより炭素繊維の可動状況を容易に形成することができる。したがって、製造が容易になり、製造コストの低減を図ることができる。
また、別の本発明は、先の発明における電場印加工程が樹脂マトリックスの厚み方向に電場を印加する工程である炭素繊維配向連接フィルムの製造方法としている。このため、樹脂マトリックスの厚み方向に導電性が高い炭素繊維配向連接フィルムを製造できる。炭素繊維の繊維断面が小さい場合には、炭素繊維配向連接フィルムの厚み方向と平行な方向からみると、炭素繊維の断面方向は極めて小さな点として認識されるにすぎないので、厚み方向と平行な方向からは透明にみえる。
本発明によれば、樹脂マトリックスが有する本来の特性を損わずに、優れた導電性を有する炭素繊維配向連接フィルムが得られる。
以下、本発明に係る炭素繊維配向連接フィルムおよびその製造方法の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、この実施の形態に係る炭素繊維配向連接フィルムの製造工程を示す図である。
炭素繊維配向連接フィルムは、樹脂マトリックスの溶融(ステップS1)、樹脂マトリックスへの炭素繊維の混合(ステップS2)、電場の印加(ステップS3)、樹脂マトリックスと炭素繊維の混合物の硬化(ステップS4)という各工程を順に経て製造される。なお、後述のように、樹脂マトリックスに紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、ステップS1は要しない。以下、各工程につき説明する。
(1)樹脂マトリックスの溶融工程(ステップS1)
樹脂マトリックスには、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、GF強化ポリエチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フッ素樹脂、液晶性ポリマー、ポリアミノビスマレイミド、ポリビスアミドトリアゾール等が挙げられる。
当該溶融工程は、マトリックスに熱可塑性樹脂を用いる場合には加熱して当該樹脂を溶融する。加熱温度は、熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、当該樹脂の軟化点より高い温度とする。
また、樹脂マトリックスには、紫外線硬化性樹脂を用いることもできる。この場合には、加熱を要しないので、ステップS1の工程を省くことができる。紫外線硬化性樹脂としては、ジアゾ樹脂とポリマーとからなる樹脂が挙げられる。ジアゾ樹脂としては、芳香族ジアゾニウム塩と活性カルボニル化合物またはエーテルとの縮合物が用いられる。また、ポリマーは、酸性基を有するものが好ましい。酸性基としては、カルボキシル基またはフェノール性ヒドロキシル基が好ましい。カルボキシル基を有するポリマーとしては、不飽和脂肪酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸)のポリマーまたはコポリマーが挙げられる。さらに、樹脂マトリックスに熱硬化性樹脂を用いることも可能である。この場合にもステップS1の工程を省くことができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂あるいはアミノ樹脂に代表されるホルムアルデヒド樹脂の他、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂あるいはウレタン樹脂に代表される架橋型樹脂が挙げられる。
(2)炭素繊維の混合工程(ステップS2)
用いる炭素繊維は、アスペクト比(長径/短径)が1より大きければ、その大きさおよび形状に制限はないが、繊維径が1ミクロン以下のカーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube: CNT)を用いるのが好ましい。
ここで、CNTは、グラフェンという炭素六角網面がナノレベルの直径を持つ円筒形状に丸めた中空状のチューブであり、一枚のグラフェンからなる単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nano Tube: SWCNT)と、複数枚のグラフェンを丸めた径の異なる筒を入れ子状の構造とした多層カーボンナノチューブ(Multi-Walled Carbon Nano Tube: MWCNT)に大別される。本発明では、SWCNTおよびMWCNTのいずれを使用しても良い。さらには、両方の混合物を使用しても良い。
また、カーボンナノチューブは、アーク放電法、レーザーアブレーション法、プラズマ合成法、化学気相析出(Chemical Vapor Deposition: CVD)法等のいずれの製法により製造されたものでも採用可能である。ただし、量産に有利なCVD法により製造されたカーボンナノチューブの方がより好ましい。混合は、液状の樹脂マトリックス中に炭素繊維を入れて、攪拌機、マグネティックスターラー、超音波振動機等の攪拌手段を使って行われる。
(3)電場印加工程(ステップS3)
この工程は、ステップS2を経た樹脂マトリックスと炭素繊維の混合物に対して、一方向から直流電場をかけて、炭素繊維を実質的に一方向に配向させる工程である。この工程において、炭素繊維は、自転して電場の方向に沿うように方向を変える。しかも、炭素繊維同士がその長さ方向に連接する。その結果、樹脂マトリックス中において炭素繊維が配向および連接した構造が得られる。
(4)硬化工程(ステップS4)
マトリックスに熱可塑性樹脂を用いる場合には、加熱をやめて室温まで冷却する。一方、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線を照射して架橋を起こさせる。さらにマトリックスに熱硬化性樹脂を用いる場合には、加熱して硬化させる。なお、電場の印加は、硬化工程が完了してから停止するのが好ましいが、硬化のタイミングによっては、硬化が完了する前に炭素繊維が動かなくなることもあるので、かかる場合には硬化工程の途中で電場の印加を停止したり、硬化工程の直前に電場の印加を停止しても良い。
1.基礎実験
ここでは、炭素繊維の配向性に及ぼす要因を探索することを目的に、マトリックス中における炭素繊維の配向性と、マトリックスと炭素繊維の混合物に与えられるせん断速度、当該混合物の粘度およびマトリックスの誘電率との各関係を調べた。
1.1 せん断速度と配向性との関係
1.1.1 用いた材料
(1)マトリックス
ここでは、分散媒に信越化学工業株式会社製のシリコーンオイル(信越シリコーン、KF−96−l000)を用いた。このシリコーンオイルの動粘度(25℃)は、1000cstである。
(2)炭素繊維
分散媒に分散させる分散質として、昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維VGCF−H(登録商標)を用いた(以後、単に、「VGCF−H」という。)。VGCF−Hは、平均繊維径150nm、平均繊維長3.9ミクロンのチューブ形状の炭素繊維である。VGCF−Hの繊維軸方向の抵抗値は、約1×10−4Ω・cmである。
1.1.2 装置
(1)攪拌機
シリコーンオイルとVGCF−Hとの混合には、株式会社井内盛栄堂製のトルネード攪拌機(PM−203)を用いた。
(2)せん断流動装置
攪拌機を用いた混合後の懸濁液にせん断応力を与えるために、Linkam社製のせん断流動装置を用いた。
(3)光学顕微鏡
せん断流動下における懸濁液の直接観察を行うために、オリンパス株式会社製の光学顕微鏡(BX−50)を用いた。
1.1.3 実験条件
シリコーンオイルに、当該シリコーンオイルに対して0.1重量%のVGCF−Hを入れて、回転数718rpmにて30分間の攪拌を行った。次に攪拌後の懸濁液をせん断流動装置にセットして、ひずみ速度0.001、0.002、0.004(s−1)・・・で600秒間せん断変形を加えた。各せん断過渡応答特性の測定は、一度調整した試料を用いて入れ替えることなく行った。一回の測定が終了するたびに、2.0(s−1)のせん断を1分間与えて、せん断開始前の構造に戻すようにした。各ひずみ速度の条件下における分散状態は、光学顕微鏡で観察すると共に写真撮影に供した。
1.1.4 実験結果と考察
図2は、ひずみ速度を変えて、せん断流動場下におけるVGCF−Hの構造の変化を調べた際の各構造を示す顕微鏡写真である。
図2に示すように、せん断速度S=0.019(s−1)では懸濁液は分散状態を保持していた。一方、S=0.11〜1.9(s−1)では、懸濁液は凝集状態となった。また、S=7.5(s−1)以上では、懸濁液は分散状態に変化した。せん断速度が極めて小さい場合には、VGCF−H同士が一定の距離を保ち、凝集構造を形成する相互作用の力が働きにくい状況であったために、分散状態を維持できたと考えられる。また、S=0.11〜1.9(s−1)では、VGCF−Hに応力が加わり、相互に近づくことによって相互作用を誘起され凝集構造を形成したものと考えられる。ここでの凝集力の原因は、ファンデルワールス力である。さらに、S=7.5(s−1)以上になると、VGCF−Hの凝集力よりも強いせん断応力がはたらくために、懸濁液は分散状態になったものと考えられる。
以上の結果から、VGCF−Hを分散質として用いる場合、せん断応力によって分散状態が変わること、ある一定のせん断応力の下では分散状態が維持できることがわかった。このことは、すなわち、マトリックスの粘度がVGCF−Hの分散状態に影響を与える可能性が大きいことを示唆している。
1.2 粘度と配向性との関係
1.2.1 用いた材料
(1)マトリックス
分散媒には、粘度が異なる3種類の信越化学工業株式会社製のシリコーンオイル(KF−968、KF−96−1000およびKF−96H)を用いた。KF−968、KF−96−1000およびKF−96Hの各動粘度(25℃)は、それぞれ100cst、1000cstおよび10000cstである。
(2)炭素繊維
分散質には、先の実験と同様、昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維VGCF−Hを用いた。
1.2.2 装置
(1)攪拌機
シリコーンオイルとVGCF−Hとの混合には、株式会社井内盛栄堂製のトルネード攪拌機(PM−203)を用いた。
(2)電場印加セル
VGCF−Hを分散させたシリコーンオイルに対して、観察方向からみて垂直に電場を印加するためのセルと、観察方向からみて平行に電場を印加するためのセルを用意した。
図3は、観察方向からみて垂直に電場を印加するための垂直電場印加セル(a)と観察方向からみて平行に電場を印加するための平行電場印加セル(b)とを示す図である。
垂直電場印加セル1は、互いに140〜150nmの間隔をあけた2枚の金属板2,2をガラス基板3の上に固定した構造を有している。2枚の金属板2,2同士の間隔を一定にするために、両金属板2,2の間に予めポリイミドフィルムを挟んでから、両金属板2,2をエポキシ樹脂にてガラス基板3に固定した。2枚の金属板2,2に挟まれた領域4は、シリコーンオイルとVGCF−Hとの懸濁液を滴下するエリアとした。
また、平行電場印加セル5は、2枚のインジウム−錫酸化物(Indium Tin Oxide: ITO)製の透明電極6,6の間に厚さ25〜125ミクロンの厚さを有するポリイミド製のスペーサ7を挟んだ構造を有している。スペーサ7の一面には、10mm四方の正方形の面積で数十ミクロンの深さの凹部8を形成した。この凹部8を、シリコーンオイルとVGCF−Hとの懸濁液を滴下するエリアとした。
(3)電源装置
2枚の金属板2,2の間および2枚の透明電極6,6の間に一定の電圧を与えるために、株式会社ケンウッド製の電源装置PR18−1.2Vを用いた。
(4)光学顕微鏡
電場印加前、印加中および印加後の任意の時間における懸濁液の直接観察および写真撮影を行うために、オリンパス株式会社製の光学顕微鏡(BX−50)を用いた。
1.2.3 実験条件
3種類のシリコーンオイルに対してそれぞれ0.1重量%のVGCF−Hを入れて、回転数718rpmにて30分間の攪拌を行った。次に、攪拌後の懸濁液を、垂直電場印加セル1の領域4に滴下した。滴下の際、金属板2,2はアースにつないだ。懸濁液の滴下を終えると、アースをはずして金属板2,2の間に18Vの直流電圧を印加した。印加時間は10分以上とし、その間の所定時間経過時に、電場方向と垂直でガラス基板3の面に垂直の方向から懸濁液の状態を観察および撮影した。
一方、攪拌後の懸濁液は、平行電場印加セル5の凹部8にも滴下した。滴下の際、透明電極6,6はアースにつないだ。懸濁液の滴下を終えると、アースをはずして透明電極6,6間に18Vの直流電圧を印加した。印加時間は10分以上とし、その間の所定時間経過時に、電場と平行の方向から懸濁液の状態を観察および撮影した。
1.2.4 実験結果と考察
図4は、垂直電場印加セル1を用いた場合の電場印加時間とシリコーンオイルKF−96−1000中におけるVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真(a)と、平行電場印加セル5を用いた場合の電場印加時間とシリコーンオイルKF−96−1000中におけるVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真(b)である。なお、(a)に示す写真群において、図中の写真の左右の黒い帯は、金属板2,2の側面である。
図4に示すように、両セル1,5において、直流電場印加前(0min)には、VGCF−Hは無配向であることがわかる。また、0.5min経過時点から、両セル1,5において、VGCF−Hが電場の方向に沿って配向しはじめる様子がわかる。垂直電場印加セル1を用いた場合(a)には、電場の印加時間の経過に伴い、VGCF−Hが電極間を繋ぐカラム構造を形成していく。一方、平行電場印加セル5を用いた場合(b)にも、VGCF−Hが点を形成していく様子から、上述と同様、VGCF−Hが電場の方向に沿って電極間を繋ぐカラム構造を形成していくと考えられる。また、垂直電場印加セル1および平行電場印加セル5を用いた両ケース共に、電場の印加時間の経過と共に、VGCF−Hが太く広がっていくことがわかる。
図5は、垂直電場印加セル1を用いた場合において、2種類の粘度の異なるシリコーンオイルを分散媒に用いた懸濁液の電場印加時間とVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真である。ここで、図5の左側の写真群は動粘度100cstのシリコーンオイル(KF−968)を用いた懸濁液を、同図右側の写真群は動粘度10000cstのシリコーンオイル(KF−96H)を用いた懸濁液を、それぞれ示す。
図5から明らかなように、動粘度の低い懸濁液の方が電極間を繋ぐカラム構造を形成するまでの時間が短いことがわかる。具体的には、100cstの懸濁液の場合にはカラム構造の形成に1分しかかからないが、10000cstの懸濁液の場合にはカラム構造の形成には10分以上を要した。
図6は、電場の印加時間0〜3分の間で、VGCF−Hが電場に沿って配向して連接し電極間をつないだカラム構造が形成されていく様子を表した模式図である。
上記の結果から、VGCF−Hは、電場の印加により、それ自身を繊維軸方向に沿って回転させ電場の方向に配向すると考えられる。これは、VGCF−Hが誘電異方性を有しており、繊維軸方向への誘電双極子モーメントを持つからであると考えられる。また、分散媒の粘度が低いと、VGCF−Hが自由に動き電場の方向に回転しやすいため、直線性の高いカラム構造を短時間で形成できるものと考えられる。
図7は、電場に替えて磁場の印加効果を調べるため、先に説明した平行電場印加セル5を用いて、観察方向と平行に磁場(0.23T)を与えた場合におけるVGCF−Hの配向状態を示す写真(a)と、観察方向と垂直に磁場を与えた場合におけるVGCF−Hの配向状態を示す写真(b)である。
図7(a)の写真からは定かではないが、図7(b)の写真から、VGCF−Hが磁場の方向に配向してはいても、互いに端部を連接しておらず、カラム構造を形成していないことがわかる。懸濁液の抵抗率を測定したが、それは10Ω・cm以上の高い体積抵抗率であり、導電性は極めて低かった。このことから、電場に替えて磁場を与えた場合、VGCF−Hはそれ自身回転するが、互いに連接しないと考えられる。
1.3 マトリックスの誘電率と配向性との関係
1.3.1 用いた材料
(1)マトリックス
分散媒には、信越化学工業株式会社製のシリコーンオイル(KF−96−1000)、東ソー株式会社製の低密度ポリエチレン(ペトロセン354)、東ソー株式会社製のエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVAウルトラセン)および荒川化学株式会社製のエポキシアクリレート系光硬化性オリゴマー(ビームセットAQ−9)の4種類を用いた。シリコーンオイルの誘電率は、カタログ値である50kHzにおける2.8を採用した。
(2)炭素繊維
分散質には、先の実験と同様、昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維VGCF−Hを用いた。
1.3.2 装置
(1)攪拌機
シリコーンオイルまたはエポキシアクリレート系光硬化性オリゴマーとVGCF−Hとの各混合には、株式会社井内盛栄堂製のトルネード攪拌機(PM−203)を用いた。
(2)電場印加セル
先の実験で用いた2種類のセルの内、垂直電場印加セル1を用いた。
(3)電源装置
先の実験で用いた株式会社ケンウッド製の電源装置PR18−1.2Vを用いた。
(4)溶融混合機
室温で溶融状態とならないマトリックス(低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー)を軟化点以上の温度まで加熱してVGCF−Hを分散させるために、株式会社東洋精機製作所製のLABO PLASTOMILL 30C150を用いた。
(5)加熱制御装置
垂直電場印加セル1を加温するために、坂口電熱株式会社製のマイクロセラミックヒータと昇降温装置を用いた。
(6)光学顕微鏡
先の実験で用いたオリンパス株式会社製の光学顕微鏡(BX−50)を用いた
(7)非線形誘電率測定装置
図8は、非線形誘電率測定装置のブロックダイヤグラムを示す図である。
図8に示すように、マトリックスの誘電率を測定するために、次の4つの装置(a)〜(d)を有する非線形誘電率測定装置を用いた。
(a)2CH.シンセサイザ(ヒューレットパッカード社製、Model3326A)
周波数:DC〜13MHz、分解能:1マイクロンHz(100kHz未満) 1 mHz(100kHz)
(b)高電圧アンプ(KEPCO社製、ModelBOP1000M)
出力:−1000V〜+1000V バンド幅(d−c to f−3dB):1kHz
(c)2CH.FFTアナライザ(株式会社エー・アンド・ディ製、ModelAD3521)
2チャンネル入力、100kHz、15ビット、ダイナミックレンジ90dB
(d)チャージアンプ
使用OPアンプ:BURR−BROWN(OPA627BM)
高速セトリングタイム:550nS(0.01%)
低オフセット電圧:最大100マイクロV
低バイアス電流:最大5pA
1.3.3 実験条件
シリコーンオイルまたはエポキシアクリレート系光硬化性オリゴマーに対して0.1重量%のVGCF−Hを入れて、回転数718rpmにて30分間の攪拌を行った。次に、攪拌後の懸濁液を、垂直電場印加セル1の領域4に滴下した。滴下が終わると、金属板2,2間に18Vの直流電圧を印加した。印加時間は10分間とし、10分後に電場方向と垂直でガラス基板3の面に垂直の方向から懸濁液の状態を観察および撮影した。
一方、低密度ポリエチレンとエチレン酢酸ビニルコポリマーについては、各マトリックスとVGCF−Hとを合わせて5gを溶融混合機に入れて、回転数450rpmで10分間混合した後、その一部を垂直電場印加セル1の領域4に入れた。次に、電熱ヒータを用いて領域4内の試料を加熱して溶融状態を維持しながら、金属板2,2間に18Vの直流電圧を印加した。印加時間および懸濁液の状態観察および撮影は、シリコーンオイルの場合と同様である。さらに、エポキシアクリレート系光硬化性オリゴマーについては特に加熱せずに金属板2,2間に18Vの直流電圧を印加した。印加時間および懸濁液の状態観察および撮影は、シリコーンオイルの場合と同様である。
誘電率の測定は、シリコーンオイル以外について実測した。以下、測定方法について、図8に基づいて簡単に説明する。シンセサイザより発生した高調波歪の少ない正弦波を高電圧アンプにより増幅し、試料に印加する。試料からの電荷の応答をチャージアンプで検出しFFTアナライザに入力する。また、同時に印加電場をアッテネータにより減衰させてFFTアナライザに入力し、電場Eと電気変位Dの応答をフーリエ変換し、周波数スペクトルと位相情報を得ることにより線形および非線形誘電率を複素誘電率として求めた。
1.3.4 実験結果と考察
図9は、各マトリックスの誘電率とVGCF−Hの配向状態との関係を示す図である。図中、(a)はエポキシアクリレート系光硬化性オリゴマー、(b)はエチレン酢酸ビニルコポリマー、(c)はシリコーンオイル、(d)は低密度ポリエチレンを、それぞれマトリックスに用いた試料(マトリックス+炭素繊維)を示す。
エポキシアクリレート系光硬化性オリゴマーを用いた試料(a)では、電極間をつなぐカラム構造は認められなかった。他の3種類の試料(b)、(c)および(d)では、電極間をつなぐカラム構造が認められた。一方、4種類の試料(a)、(b)、(c)および(d)の各マトリックスの誘電率は、それぞれ、8.2、3.1、2.8および2.7であった。この結果から、マトリックスの誘電率がVGCF−Hの配向に大きく関係している可能性がある。試料(b)および(d)は、誘電率が低く、かつフィルム成形ができることから、VGCF−Hが配向・連接した構造を有し、導電性に優れた有望な樹脂複合材料となると判断される。
2.炭素繊維配向連接フィルムの作製および評価
2.1 用いた材料
2.1.1 樹脂マトリックス
ここでは、樹脂マトリックスとして、東ソー株式会社製の低密度ポリエチレン(ペトロセン354)を用いた。
2.1.2 炭素繊維
樹脂マトリックスに分散する炭素繊維として、先に説明した昭和電工株式会社製の気相成長炭素繊維VGCF−Hを用いた。
2.2 装置
2.2.1 溶融混合機
低密度ポリエチレンをその軟化点以上の温度まで加熱してVGCF−Hを分散させるために、先に説明した株式会社東洋精機製作所製のLABO PLASTOMILL 30C150を用いた。
2.2.2 電場印加セル
図3(b)に示す平行電場印加セル5を用いた。
2.2.3 電源装置
電場をかけるための電源装置として、株式会社ケンウッド製の電源装置PR18−1.2Vを用いた。
2.2.4 加熱制御装置
平行電場印加セル5を加温するために、坂口電熱株式会社製のマイクロセラミックヒータと昇降温装置を用いた。加熱制御装置は、マイクロセラミックヒータと昇降温装置とを備えている。
2.2.5 光学顕微鏡
ハイロックス社製の光学顕微鏡(HK−2700)を用いた。
2.2.6 電気抵抗測定装置
平行電場印加セル5内でVGCF−Hを配向および連接させた後に冷却して得られた炭素繊維配向連接フィルムの電気抵抗値の測定には、株式会社ダイアインスツルメンツ製のロレスタGP MCP−T600を用いた。
2.3 実験条件
低密度ポリエチレンと、当該低密度ポリエチレンに対して1.0重量%のVGCF−Hとを溶融混合機内に投入して、回転数450rpm、攪拌時間10分、加熱温度120℃という条件で混合した。得られた低密度ポリエチレンと1.0重量%VGCF−Hとの混合物を3つに分けて、その内の2つに低密度ポリエチレンを加えて再度溶融混合機にて混合し、VGCF−Hが0.1重量%および0.2重量%含有の2つの試料も用意した。この結果、0.1、0.2および1.0重量%VGCF−H含有低密度ポリエチレンという3種類の試料を用意することができた。
図10は、VGCF−Hの配向および連接を行う方法を説明するための図である。また、図11は、各試料を昇温・降温する昇降温プログラムに電場印加のタイミングを示した図である。
各試料は平行電場印加セル5にセットされた。平行電場印加セル5は、台座10上のマイクロセラミックヒータ(単に、「ヒータ」という。)11の上に載置され、平行電場印加セル5の上から重り12を載せて一定の荷重をかけた状態とした。ヒータ11は、昇降温装置13に接続され、図11に示す昇降温プログラムを用いて温度制御した。この昇降温プログラムは、室温から120℃まで昇温速度10℃/minにて昇温し、120℃にて115分間保持した後、室温まで降温速度20℃/minで降温するプログラムである。
また、平行電場印加セル5の透明電極6,6には電源装置14が接続され、図11に示す昇降温プログラムに表したタイミングで電場を印加し(図中、「E(18V)オン」と示す時間)、その後電場の印加を停止した。具体的には、120℃の温度になってから30分後に18Vの電場を印加しはじめて、室温まで徐冷してから電場の印加を停止した(図中、「E(18V)オフ」と示す時間)。その後、作製したフィルムを透明電極6,6の間から剥離して、評価に供した。評価は、光学顕微鏡による観察と写真撮影および電気抵抗値の測定とした。
図12は、電気抵抗値の測定の状態を説明するための図である。
図12に示すように、 測定に供するフィルムは、その両面にグラファイトシート19,19を介して2枚の真鍮製の板20,20で挟んだ状態とした。グラファイトシート19,19で挟んだのは、作製したフィルム(試料)と真鍮製の板20,20との接触抵抗をキャンセルするためである。さらに、上から1.1Mpaの圧力をかけながら、電気抵抗測定装置21の両電極を各真鍮製の板20,20に接触させて電気抵抗値を測定した。なお、測定値は、体積抵抗値に変換した。
2.4 実験結果と考察
図13は、電場印加前後の低密度ポリエチレン内のVGCF−Hの分散状態を比較して示す光学顕微鏡写真(フィルム表面の写真)と模式図(フィルムの斜視図)である。(a)は電場印加前の状態を、(b)は電場印加後の状態をそれぞれ示す。
図13の(a)と(b)を比較すると明らかなように、電場印加前にはVGCF−Hがランダムな方向に分散しているが、電場を印加すると、図中の上下方向(電場の方向)にVGCF−Hが配向した。さらに、フィルムの厚み方向から観察すると、VGCF−Hは、互いに電場に沿って連接しカラム構造を形成していることがわかった。
図14は、作製したフィルムを文字が書かれた書類上に載せた状態を示す写真である。少し薄黒い部分(1cm四方の領域)がVGCF−Hを配向および連接させた低密度ポリエチレンフィルムである。このように、作製したフィルム(厚さ:約125ミクロン)は、非常に高い透明性を有している。
図15は、VGCF−Hの含有率(重量%)と体積抵抗率(Ω・cm)との関係を示すグラフである。
0.1重量%VGCF−H、0.2重量%VGCF−Hおよび1.0重量%VGCF−Hの各試料の電気抵抗は、それぞれ2.8×10Ω・cm、3.3 ×10Ω・cmおよび3.0×10Ω・cmであった。一般的に、CNT(平均繊維径10〜15nm)を樹脂中にランダムに分散させた試料の場合、CNTの含有率が2重量%の時に10Ω・cm、5重量%の時に10Ω.cmのオーダである。このことから、0.2重量%という極めて少ない含有率であっても、電場の印加により10Ω.cmオーダの体積抵抗率を有する本発明の炭素繊維配向連接フィルムは、極めて優れた導電性を有していることを意味する。図14に示したように、本発明の炭素繊維配向連接フィルムは、透明性にも優れることから、透明電極、透明タッチパネルなどへの応用が可能であると考えられる。
樹脂マトリックスとして、低密度ポリエチレンに替えて、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、あるいはエチレン酢酸ビニルコポリマーを用いた場合にも、導電性が極めて高くなった。0.2重量%VGCF−Hの添加によって3〜4×10Ω・cmの体積抵抗率が得られた。
VGCF−Hを2.0重量%加えた場合、導電性はより高くなった。なお、VGCF−Hをそれ以上加えると、透明性をはじめ、樹脂マトリックスが本来有する特性の一部が損なわれる場合がある。VGCF−Hを2.0重量%より多く加えると、フィルムの厚み方向にVGCF−Hがランダムに分散した状態であっても導通した。この場合、電場を印加しても、構造の変化はみられなかった。このため、VGCF−Hの含有率としては2.0重量%以下とするのが良い。
また、上述のVGCF−H以外の炭素繊維を使用しても良い。特に、繊維径が平均1ミクロン以下の炭素繊維が好ましいが、これに限定されず、もっと太い炭素繊維を使用しても良い。また、誘電率が高い樹脂マトリックスを使用すると、炭素繊維の配向、炭素繊維末端の連接に長時間を要する傾向がある。このため、樹脂マトリックスの誘電率は低い方が望ましく、50Hzにおいて4以下の樹脂マトリックスを使用するのがより好ましい。具体的には、ポリエチレンの他、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン66(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、三酢酸セルロース、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタンなどが好ましい。
本発明は、透明で、導電性に異方性を有する樹脂フィルム、特に透明電極や透明タッチパネルに利用できる。
本発明の実施の形態に係る炭素繊維配向連接フィルムの製造工程を示す図である。 ひずみ速度を変えて、せん断流動場下におけるVGCF−Hの構造の変化を調べた際の各構造を示す顕微鏡写真である。 観察方向からみて垂直に電場を印加するための垂直電場印加セル(a)と観察方向からみて平行に電場を印加するための平行電場印加セル(b)とを示す図である。 垂直電場印加セルを用いた場合の電場印加時間とシリコーンオイルKF−96−1000中におけるVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真(a)と、平行電場印加セルを用いた場合における電場印加時間と同シリコーンオイル中におけるVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真(b)である。 垂直電場印加セルを用いた場合において、2種類の粘度の異なるシリコーンオイルを分散媒に用いた懸濁液の電場印加時間とVGCF−Hの配向状態との関係を示す写真である。ここで、図中左側は動粘度100cstのシリコーンオイルを用いた懸濁液を、図中右側は動粘度10000cstのシリコーンオイルを用いた懸濁液を、それぞれ示す。 電場の印加時間0〜3分の間で、VGCF−Hが電場に沿って配向して連接し電極間をつないだカラム構造が形成されていく様子を表した模式図である。 電場に替えて磁場の印加効果を調べるため、平行電場印加セルと同じ構造のセルを用いて、観察方向と平行に磁場(0.23T)を与えた場合におけるVGCF−Hの配向状態を示す写真(a)と、観察方向と垂直に磁場を与えた場合におけるVGCF−Hの配向状態を示す写真(b)である。 非線形誘電率測定装置のブロックダイヤグラムを示す図である。 各マトリックスの誘電率とVGCF−Hの配向状態との関係を示す図であり、(a)はエポキシアクリレート系光硬化性オリゴマー、(b)はエチレン酢酸ビニルコポリマー、(c)はシリコーンオイル、(d)は低密度ポリエチレンを、それぞれマトリックスに用いた試料を示す。 VGCF−Hの配向および連接を行う方法を説明するための図である。 各試料を昇温・降温する昇降温プログラムに電場印加のタイミングを示した図である。 電気抵抗値の測定の状態を説明するための図である。 電場印加前後の低密度ポリエチレン内のVGCF−Hの分散状態を比較して示す光学顕微鏡写真(フィルム表面の写真)と模式図(フィルムの斜視図)である。(a)は電場印加前の状態を、(b)は電場印加後の状態をそれぞれ示す。 作製したフィルムを文字が書かれた書類上に載せた状態を示す写真である。少し薄黒い部分(1cm四方の領域)がVGCF−Hを配向および連接させた低密度ポリエチレンフィルムである。 VGCF−Hの含有率と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 垂直電場印加セル
2 金属板
3 ガラス基板
4 領域
5 平行電場印加セル
6 透明電極
7 スペーサ
8 凹部
10 台座
11 マイクロセラミックヒータ
12 重り
13 昇降温装置
14 電源装置
19 グラファイトシート
20 真鍮製の板
21 電気抵抗測定装置

Claims (9)

  1. 樹脂マトリックスに対して0〜2.0重量%(ただし、0は含まず)の炭素繊維を含有し、炭素繊維は実質的に一方向に配向し、互いにその長さ方向の端部方向で接触して連接構造を形成していることを特徴とする炭素繊維配向連接フィルム。
  2. 前記炭素繊維の繊維径は平均1ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維配向連接フィルム。
  3. 前記樹脂マトリックスの誘電率が50Hzにおいて4.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の炭素繊維配向連接フィルム。
  4. 前記樹脂マトリックスは透明であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炭素繊維配向連接フィルム。
  5. 前記炭素繊維は、前記樹脂マトリックスの厚み方向に平行に配向していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の炭素繊維配向連接フィルム。
  6. 前記樹脂マトリックスはポリエチレンであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の炭素繊維配向連接フィルム。
  7. 樹脂マトリックスと炭素繊維とを混合する混合工程と、
    上記混合工程で得られた混合物に対して、上記炭素繊維が上記混合物中で可動な状況下としながら電場をかける電場印加工程と、
    上記電場印加工程により炭素繊維がその長さ方向に連接した状態を保持する状態にて硬化する硬化工程と、
    を有することを特徴とする炭素繊維配向連接フィルムの製造方法。
  8. 前記電場印加工程は、前記混合物を加熱中あるいは加熱後に行う工程であることを特徴とする請求項7に記載の炭素繊維配向連接フィルムの製造方法。
  9. 前記電場印加工程は、前記樹脂マトリックスの厚み方向に電場を印加する工程であることを特徴とする請求項7または8に記載の炭素繊維配向連接フィルムの製造方法。
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