JP2004123814A - 導電性熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法 - Google Patents

導電性熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少量の導電性材料でも、優れた導電性を有する熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。
【解決手段】熱可塑性樹脂に、繊維径が0.001〜0.5μm、繊維長が0.1〜100μmである微細な炭素繊維を混合してなる導電性熱可塑性樹脂フィルムであって、上記熱可塑性樹脂と微細な炭素繊維との混合体積比が、熱可塑性樹脂/微細な炭素繊維=50/50のときの体積抵抗値が0.01〜0.03Ωcmであるとともに、混合体積比が90/10のときの体積抵抗値が0.1〜0.5Ωcmの範囲であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂フィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、導電性に優れた熱可塑性樹脂フィルムに関するものであり、更には、耐熱性と耐蝕性に優れた微細な炭素繊維を含有してなる熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス分野において、高分子材料に求められる主要特性は製品や用途によって様々であるが、成形性、耐熱性、耐久性、高導電性、耐蝕性、リサイクル性、電磁波遮蔽性であり、これらの要求を箇々に満足させる樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等に代表される熱硬化性樹脂や、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート等に代表されるエンジニアリングプラスチック等が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記に挙げた各機能を総合的に具備した材料に対する要望は強いものがあるが、技術的に困難であり、価格面で不利となることが多いという問題があった。そのような技術課題のひとつに導電性があり、更に耐熱性と耐蝕性を兼ね備えた高分子材料の開発が求められている。
【0004】
特に、水系電解液を用いる電気二重層コンデンサーにおいては、より高い出力電圧を得る目的で、複数のコンデンサーを、直列や並列にて接続し使用する場合がある。しかし、これらコンデンサーの複合体全体が有する内部抵抗が大きくなってしまい、低い出力電流しか得られない場合がある。このようなことから、個々のコンデンサーが有する内部抵抗を出来るだけ小さくすることが望まれている。
尚、個々のコンデンサーが有する内部抵抗は、水系電解液、分極性電極、集電体やこれらの界面などによって生じることが知られており、従来、例えば、集電体が有する体積抵抗値を小さくすることで、コンデンサーが有する内部抵抗を小さくすることなどが行われてきた。
また、水系電解液を用いる電気二重層コンデンサーは、電解液として25〜50%程度の硫酸水溶液を使用するため、集電体に対しては同時に耐酸性も要求されている。
【0005】
上記集電体のような導電性樹脂のフィルム中に含まれる導電性材料に金属を用いたものは、酸性環境下では導電性が不安定であるという欠点があり、耐食性の良い貴金属を用いると極めて高価になるという問題がある。また、炭素系の導電材料は金属に比べて導電性が低く、充分な導電性が得られないという欠点がある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1等において、導電性に優れた微細な炭素繊維が導電性材料として示されている。しかしながら、このような微細な炭素繊維を樹脂に混合した場合、樹脂への分散性に劣り、充分な導電性が得られないという問題があった。
【0007】
具体的には、特許文献2に示されている通り、樹脂80%(重量比)に対して微細な炭素繊維20%(重量比)を、ドライブレンドで混合した後、押出機にて成形したものは、体積抵抗が1Ωcm程度と大きく充分な導電性が得られないという問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特公平3−77288号
【特許文献2】
特開平7−102112号
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、導電性材料の混合比率が少なくても、優れた導電性を有する熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の問題点を解消できる熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法を見出したものであり、その要旨とするところは、
熱可塑性樹脂に、繊維径が0.001〜0.5μm、繊維長が0.1〜100μmである微細な炭素繊維を混合してなる導電性熱可塑性樹脂フィルムであって、上記熱可塑性樹脂と微細な炭素繊維との混合体積比が、熱可塑性樹脂/微細な炭素繊維=50/50のときの体積抵抗値が0.01〜0.03Ωcmであるとともに、混合体積比が90/10のときの体積抵抗値が0.1〜0.5Ωcmの範囲であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂フィルムにある。
【0011】
また、微細な炭素繊維と熱可塑性樹脂を溶媒中に溶解、分散させてなる液状組成物を、支持体の平滑面に塗工し、乾燥又は硬化した後、被膜を支持体から剥離することによりフィルムを製造することを特徴とする導電性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法にある。
上記熱可塑性樹脂フィルムは、電気二重層コンデンサー用集電体に好適に使用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに使用する熱可塑性樹脂としては特に制限はない。例えば、エチレンを含む単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン(PO)系樹脂又はポリオレフィン系エラストマー、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、共重合アクリル等のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド(PA)系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリサルホン(PS)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(THV)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、等のフッ素系樹脂又はエラストマー、(メタ)アクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0013】
上記熱可塑性樹脂の中では、耐熱性、耐酸性に優れるポリオレフィン(PO)系樹脂又はポリオレフィン系エラストマー、フッ素系樹脂又はフッ素系エラストマーの使用が好ましい。
【0014】
上記熱可塑性樹脂に混合する微細な炭素繊維は、繊維径が0.001〜0.5μm、好ましくは0.005〜0.3μmであり、繊維長が0.1〜100μm、好ましくは0.5〜30μmのものが導電性が向上できて好ましい。また、導電材として他の炭素系導電材と混合して用いることもできる。他の炭素系導電材としては、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、膨張黒鉛、カーボンファイバー、カーボン短繊維等及を用いることができる。
【0015】
また、本発明のフィルムでは、上記熱可塑性樹脂と微細な炭素繊維との混合体積比が、熱可塑性樹脂/微細な炭素繊維=50/50のときの体積抵抗値が0.01〜0.03Ωcmであるとともに、混合体積比が90/10のときの体積抵抗値が0.1〜0.5Ωcmの範囲であることに特徴があり、このようなフィルムを製造する手段としては、種々の方法が考えられるが、液状にした樹脂組成物をダイコーティング法等の手法により、剥離可能な支持体の平滑面に、連続的に塗工し、乾燥又は硬化した後、被膜を支持体から剥離することによりフィルムを製造する方法が好ましい。
【0016】
前述した方法で製造したフィルムは、ドライブレンドで混合した後、押出機にて製造したフィルムに比べ、微細な炭素繊維がフィルム中に均一に分散するため、微細な炭素繊維の混合体積比が少なくても、電気が通りやすくなり、フィルムの内部抵抗を小さくすることができる。更には、ドライブレンドで混合した後、押出機にて製造したフィルムはフィルム表面に樹脂スキン層が存在するために、電極等の被接触体との接触抵抗が大きいが、前述した方法で製造したフィルムは、微細な炭素繊維の一部がフィルム表面に露出するため、電極等の被接触体との接触抵抗を格段に小さくすることができる。
【0017】
前述した方法で製造したフィルムの厚み範囲は、10〜200μmの範囲が良く、厚みが10μm未満では、フィルムが薄過ぎるため、破れ易く、取り扱いにくいという問題があり、またフィルム厚みが200μmを越えると、厚み方向の体積抵抗値が大きくなるという問題が生じやすい。
【0018】
本発明のフィルムの用途は、導電性に優れるため、蓄電デバイスや発電機等の部材として使用した場合、その内部抵抗を格段に小さくすることができる。また、耐酸性にも優れるため、特に水系電解液を用いる電気二重層コンデンサーの集電体として使用できる。
【0019】
以下、実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
(実施例)
フッ素樹脂(「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2)と微細な炭素繊維(「昭和電工(株)」製 気相法炭素繊維<VGCF> 比重2)を体積比で50/50,60/40、70/30、80/20、90/10の割合で、固形分濃度20重量%になるように、それぞれMIBK(メチルイソブチルケトン)に溶解し、5種類の溶液を作製した。
使用した微細な炭素繊維は、繊維径150nm、繊維長10〜20μm、嵩比重0.035g/cc、真比重2.0g/ccのものを使用した。
これら5種類の溶液をダイコーティング法により厚さ200μmのポリエステルフィルム上に、それぞれ塗工し、乾燥炉で残留溶剤濃度が0.1重量%以下になるまで乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離し、5種類の導電性フィルムを得た。
得られた導電性フィルムの厚みは5種類とも100μmであった。
【0020】
(比較例)
比較例として、フッ素樹脂(「住友スリーエム(株)」製 THV220G 比重2)と微細な炭素繊維(「昭和電工(株)」製 気相法炭素繊維<VGCF> 比重2)を体積比で、50/50、60/40、70/30、80/20、90/10の配合で、それぞれ二軸押出機(混合温度250℃)にて混合し、口金から押出し、導電性フィルムの作成を試みたが、フッ素樹脂/微細な炭素繊維の体積比が50/50及び60/40は微細な炭素繊維量が多く、樹脂中に混合できなかったため、同体積比70/30、80/20、90/10のみ3種類の導電性フィルムを得た。
得られた3種類の導電性フィルムの厚みはいずれも100μmであった。
【0021】
実施例及び比較例で得られた導電性フィルムの体積抵抗値を測定した。測定方法はJIS K 7194に準じて、以下のように行った。
1. 測定装置
Loresta HP (三菱化学(株)製)
2. 測定方式
四端子四探針法(ASPタイププローブ)
3. 測定印可電流
100mA
【0022】
上記方式にて測定した体積抵抗値を表1に示した。
【表1】
Figure 2004123814
【0023】
表1に示す通り、本発明の方法にて作製した微細な炭素繊維を含む導電性フィルムは、本発明の体積抵抗値の範囲に入り、また、押出法で作製した同配合の導電性フィルムに比べ、格段に体積抵抗値が小さく、導電性に優れることが分かる。
【0024】
【発明の効果】
上述したように、本発明の導電性樹脂フィルムは、微細な炭素繊維の含有量が比較的少量でも、優れた導電性が発現する導電性熱可塑性樹脂フィルム及びその製造方法である。特に、体積抵抗値が小さく、耐食性に優れ、比較的低コストで生産可能なことから、電気二重層コンデンサー用集電体などへの利用性が大きい。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂に、繊維径が0.001〜0.5μm、繊維長が0.1〜100μmである微細な炭素繊維を混合してなる導電性熱可塑性樹脂フィルムであって、上記熱可塑性樹脂と微細な炭素繊維との混合体積比が、熱可塑性樹脂/微細な炭素繊維=50/50のときの体積抵抗値が0.01〜0.03Ωcmであるとともに、混合体積比が90/10のときの体積抵抗値が0.1〜0.5Ωcmの範囲であることを特徴とする導電性熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 前記導電性熱可塑性樹脂フィルムの厚みが10〜200μmであることを特徴とする請求項1記載の導電性熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 電気二重層コンデンサー用集電体に用いることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 微細な炭素繊維と熱可塑性樹脂を溶媒中に溶解、分散させてなる液状組成物を、支持体の平滑面に塗工し、乾燥又は硬化した後、被膜を支持体から剥離することによりフィルムを製造することを特徴とする導電性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
  5. 電気二重層コンデンサー用集電体に用いることを特徴とする請求項4記載の導電性熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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