JP2010111765A - 粒子含有樹脂及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 粒子の添加量が少なくても十分な特性を発揮し得る粒子含有樹脂を得ることができる粒子含有樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の粒子含有樹脂の製造方法は、互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と樹脂又は樹脂前駆体とを含有する原料混合物を配置する第1工程と、一対の電極間に電圧を印加して、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる第2工程と、一対の電極間に電圧を印加しながら、樹脂又は樹脂前駆体を固化させる第3工程とを有する。そして、第2工程の間に、一対の電極間の距離を第1工程における距離よりも広げる。
【選択図】 図4

Description

本発明は、粒子含有樹脂及びその製造方法に関する。
導電性を有するような微細な粒子等を樹脂中に分散させて得られるフィルムには、導電性フィルム、熱拡散フィルム等といった多様な用途がある。
例えば、近年、ナノテクノロジーの中核として、カーボンナノチューブ(以下、必要に応じて、カーボンナノチューブ一本を示す場合は「CNT」、複数本又は集合体を示す場合は「CNTs」と記載する。)が脚光を浴びている。CNTsは、一般に、直径0.5〜100nm程度、長さが50nm〜数mm程度の細長い繊維状(柱状)の粒子形状を有する炭素材料である。このCNTsは、電子ペーパー、フレキシブル表示板、フラットパネルディスプレイ等の画像表示装置の透明電極等に用いることができる導電性フィルムへの応用が検討されている。
このようなCNTsを用いた導電性フィルムとしては、例えば、熱可塑性ポリイミド樹脂等の樹脂にCNTsを加え、これを押出成形することによりフィルム状としたものが知られている(特許文献1参照)。
特開2004−346143号公報
上述したCNTsを用いた導電性フィルムは、例えば、透明導電性フィルムとして適用する場合、十分な導電性を得るためにある程度以上の量のCNTsを加える必要がある。ところが、CNTsは黒色であり可視光を吸収してしまうため、多く添加し過ぎるとフィルムの十分な透明性が得られない。そのため、CNTsを透明導電性フィルムとして適用する場合、CNTsの添加量をできるだけ小さくして十分な透明性を確保しつつ、同時に十分な導電性が得られるようにする必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1のような従来の方法は、単に樹脂とCNTsとを混ぜてフィルム状に成形しているだけである。そのため、例えば、透明導電性フィルムを製造する場合、確実に導電性を得るためにはCNTsを多く添加する必要がある一方、CNTsの添加量を少なくすると十分な導電性が得られなくなる等、未だに十分な透明性と導電率とを両立させるのは困難な傾向にあった。また、この場合、部分的にCNTsの比率が高くなるなどCNTsの分散も不均一となり易く、フィルムの導電性が全面にわたって一様でなくなるため、例えば、画像表示装置に適用した場合、むらのある画像が表示され易くなってしまう不都合もあった。
このように、粒子を樹脂に分散させて得られたフィルムでは、従来、粒子の添加量を少なくしながら、十分なフィルムの特性を得ることは困難な傾向にあった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、粒子の添加量が少なくても十分な特性を発揮し得る粒子含有樹脂を得ることができる粒子含有樹脂の製造方法、及びこれにより得られる粒子含有樹脂を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の粒子含有樹脂の製造方法は、互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体とを含有する原料混合物を配置する第1工程と、一対の電極間に電圧を印加して、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる第2工程と、一対の電極間に電圧を印加しながら、樹脂又は樹脂前駆体を固化させる第3工程とを有しており、第2工程の間に、一対の電極間の距離を第1工程における距離よりも広げることを特徴とする。
また、本発明の粒子含有樹脂の製造方法は、互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体とを含有する原料混合物を配置する第1工程と、一対の電極間に電圧を印加して、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる第2工程と、一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない樹脂又は樹脂前駆体のうち、一対の電極のうちの一方の電極付近のものを固化させるとともに他方の電極付近のものを固化させない状態とし、一対の電極間の距離を広げる第3工程と、一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない樹脂又は樹脂前駆体をすべて固化させる第4工程とを有することを特徴としてもよい。
上記本発明の粒子含有樹脂の製造方法では、一対の電極間の距離を、当該電極間の電流値を測定しながら広げることが好ましい。このように一対の電極間の距離を広げる際には、当該電極間の距離を広げた後の前記電流値が、当該距離を広げる前の値よりも小さくならないようにするとより好ましい。
また、第2工程においては、原料混合物中の粒子を、電界が強い方向に移動させることにより配向させることが好ましい。
さらに、原料混合物に含有させる粒子としては、繊維状粒子が好ましい。ここで、繊維状粒子とは、短軸に対する長軸の比(アスペクト比)が10を超えるものと定義する。また、粒子としては、繊維状粒子及び球状粒子を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明はまた、上記本発明の製造方法により得られた粒子含有樹脂を提供するものである。
本発明によれば、粒子の添加量が少なくても十分な特性を発揮し得る粒子含有樹脂を得ることができる粒子含有樹脂の製造方法、及びこれにより得られる粒子含有樹脂を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略することとする。
[第1実施形態]
まず、本発明の粒子含有樹脂の製造方法の第1実施形態について説明する。第1実施形態に係る粒子含有樹脂の製造方法においては、互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体とを含有する原料混合物を配置する第1工程、一対の電極間に電圧を印加して、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる第2工程、及び、一対の電極間に電圧を印加しながら、樹脂又は樹脂前駆体を固化させる第3工程をこの順に実施する。
(第1工程)
まず、第1工程について説明する。図1は、本実施形態の粒子含有樹脂の製造方法に用いる製造装置の断面構成を模式的に示す図である。図1に示す製造装置100では、一対の電極101が対向配置されており、上側の電極101は、支持壁102によって支持され、下側の電極101はステージ105によって支持されている。
また、製造装置100において、電極101は、それぞれ基板201上に面電極202が設けられた構成を有しており、一対の電極101は、互いの面電極202同士が向きあうように対向して配置されている。これらの電極101における面電極202には、リード線103を介して電源104が接続されており、これによって対向する面電極202間に電圧を印加できるようになっている。
電極101の外形は特に限定されず、四角形状、円形状等、適宜選択される。電極101における基板201としては、例えば、ガラス基板が適用される。また、面電極202は、電極等に通常用いられる導電材料から構成されるものであれば特に制限されず、例えば、金が好ましい。なお、電極101は、必ずしもこのような積層構造を有している必要はなく、電極として機能し得る単一の層からなるものであってもよい。
製造装置100においては、一対の電極101間に原料混合物Rを収容できるようになっている。なお、図示しないが、一対の電極101間の領域の側方は、内部の原料混合物が漏出しないようにスペーサー等によって塞がれていてもよい。また、支持壁102がこのスペーサーを兼ねてもよい。さらに、製造装置100には、後述する第2工程において一対の電極101同士を離す際に、当該電極間の領域の広がりに合わせて樹脂成分や原料混合物を供給できるような供給装置が設けられていると好ましい。
ステージ105は、支柱105aを上下方向(図中の矢印方向)に出し入れできるようになっている。これによって、支柱105aに支持された下側の電極101を上下させることができ、対向する一対の電極101間の距離を調整することができる。
電源104は、一対の電極101(面電極202)間に交流を印加することができる電源である。電源104としては、このような機能を有する電源であれば特に制限なく公知のものを適用できるが、後述する誘電泳動を良好に生じさせる観点からは、1GHzから1kHzの範囲の周波数の交流を印加できる高周波電源であると好ましい。
第1工程では、このような製造装置100における一対の電極101間に、粒子含有樹脂の原料混合物Rを供給して配置させる。原料混合物Rは、粒子と、液状の樹脂又は液状の樹脂前駆体を含むものである。
粒子は、粒子含有樹脂の用途に必要な特性に応じて適宜選択することができ、例えば、導電性フィルムとして用いる場合、導電性粒子を用いる。このような粒子としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノツイスト、カーボンナノコイル、カーボンマイクロコイル、炭素繊維、金属や半導体のナノファイバー又はナノロッド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いてもよい。また、これらのような繊維状粒子以外に、上記の材料等からなる球状粒子を用いることもできる。
粒子としては、少なくとも繊維状粒子を用いることが好ましく、繊維状粒子と球状粒子とを組み合わせて用いることも好適である。例えば、粒子含有樹脂を導電性フィルム、特に透明導電性フィルムに適用する場合は、高い導電性が得られるカーボンナノチューブ又はカーボンナノファイバーが好ましい。
カーボンナノチューブ(CNTs)としては、単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)、2層カーボンナノチューブ(DWCNTs)、3層カーボンナノチューブ(3WCNTs)、その他の多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)を特に制限なく用いることができる。カーボンナノファイバーとしては、直径の太い(100〜300nm程度)カーボンナノファイバーやらせん状の形態を有するカーボンナノファイバーを適用できる。これらのカーボンナノチューブやカーボンナノファイバーは、樹脂又は樹脂前駆体中での分散性をよくするため、表面がカルボキシル基やニトロ基等の所定の官能基によって修飾されていてもよい。粒子としてCNTsを用いる場合、その大きさは、例えば、直径が1nm〜数十nm程度、長さが1μm程度であると好適である。
一方、樹脂又は樹脂前駆体も、粒子含有樹脂の用途に必要な特性に応じて適宜選択することができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで、樹脂前駆体とは、後述する固化後に樹脂を形成することができる前駆体化合物であり、固化の際に重合して樹脂を形成し得るモノマーやオリゴマー等が挙げられる。樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂等を特に制限なく適用できる。例えば、粒子含有樹脂を透明導電性フィルムとして用いる場合には、固化状態で可視光に対して透明となる樹脂を適用でき、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシ樹脂等が好適である。
また、樹脂又は樹脂前駆体は、原料混合物Rが液状となるような性質を有するものが好ましい。原料混合物Rを液状とすることによって、電極101間に配置した後、電圧を印加する際に、原料混合物R中の粒子を良好に配向させることができる。このような樹脂又は樹脂前駆体としては、それ自体が液状であるものや、溶媒に溶解して液状となり得るものが挙げられる。
原料混合物Rは、上述した粒子及び樹脂又は樹脂前駆体のほか、必要に応じて、原料混合物を液状とするための溶媒や、粒子含有樹脂の用途に求められる特性が得られる各種成分を更に含んでいてもよい。例えば、粒子同士のバインダーとしての機能を有するAuコロイド粒子やポリアニリン等の導電性微粒子を更に含んでいてもよい。
原料混合物R中の各成分の配合割合は特に制限されず、粒子含有樹脂に求められる特性に応じて適宜選択することができる。例えば、粒子としてカーボンナノチューブを用い、粒子含有樹脂を透明導電性フィルムに適用する場合は、樹脂又は樹脂前駆体及び粒子の総量中、粒子の含有率が0.001〜10質量%となるようにすることが好ましく、0.01〜0.1質量%となるようにすることがより好ましい。
このような割合とすれば、本実施形態の製造方法により、粒子の含有量が少ないため十分な透明性が得られるとともに、十分な導電性も得られるようになる。本実施形態によれば、少ない粒子の添加量で十分な特性を有する粒子含有樹脂が得られることから、このような粒子の含有率は、従来の製造方法による場合で必要とされる値と比べて大幅に小さいものである。
上述した原料混合物Rは、樹脂又は樹脂前駆体、粒子及びその他の必要成分を混合することによって得ることができる。混合は、例えば、粒子の分散を良好にするために、超音波攪拌によって行うことができる。
第1工程において、上述した製造装置100における一対の電極101間の領域に原料混合物Rを供給する方法としては、例えば、一対の電極101間に原料化合物を注入する方法が挙げられる。原料混合物Rは、電極101に挟まれている領域を満たすように充填することが好ましく、この領域からはみ出すようにしてもよい。少なくとも対向する電極101(面電極202)の両方と接触するように原料混合物を電極101間に配置することで、後述する誘電泳動を確実に生じさせることができる。
(第2工程)
次に、第2工程について説明する。第2工程では、原料混合物Rを間に挟んだ状態の一対の電極101間に、電源104により電圧を印加して、原料混合物R中の粒子を電界方向に配向させる(第2工程)。また、この第2工程の間には、かかる配向を生じさせながら、一対の電極101同士の距離を広げる。
図2は、第2工程における電極及び原料混合物の状態を示す模式断面図である。なお、図2では、説明の容易化のため、一対の電極101及び原料混合物Rを示し、製造装置100の具体的な構成については省略してある。図2に示す第2工程では、対向する面電極202間に電圧を印加する。印加する電圧は、例えば、1〜100Vppの範囲内で設定する。印加する電圧が高い方が、粒子に対する誘電泳動の力が大きくなり、配向を速く完了させることができる。ただし、電圧が高く、電界強度が強くなりすぎると、電気分解等によって気泡が発生し、得られる粒子含有樹脂の特性を低下させるおそれがあるので、この気泡が発生しない程度に高い電圧を印加することが好ましい。印加する電圧は、交流、特に、1GHzから1kHzの範囲の周波数を有する高周波交流であることが好ましい。
電極101(面電極202)間に電圧、好ましくは高周波交流を印加することによって、電極101間に電界が発生する。これにより、図2に示すように、原料混合物における樹脂又は樹脂前駆体(以下、まとめて「樹脂成分203」という)中に分散した粒子204が誘電泳動して配向する。
ここで、誘電泳動の原理について説明する。
通常、粒子を溶媒に分散してなる分散液に電場を与えると、溶媒と粒子との分極率の相違によって誘起双極子モーメントが発生する。そして、粒子の両側に形成される電場強度の差が、誘起双極子が及ぼす力の差となり、これに起因して粒子に力が作用し、この力の方向に粒子が移動するようになる。このときに働く誘電泳動力FDEPは、次式(1)で表されることが知られている。
DEP=2πεRe[(ε ε )/(ε +2ε )]∇E …(1)
かかる式(1)中のaは粒子の半径[m]、εは誘電率[F/m]、添え字p及びmはそれぞれ粒子及び溶媒のいずれの値であるかを示している。Eは電界(V/m)、Re[f(x)]は複素数f(x)の実数部分だけを取り出す演算子である。εは、下式(2)で定義される複素誘電率である。
ε=ε−(σ/ω)j …(2)
また、σは導電率[S/m]、ω(=2πf)は角周波数[Hz]、fは印加周波数[Hz]を表しており、jは虚数単位である。式(1)中のRe[(ε ε )/(ε +2ε )]で表される大括弧内の式は、下式(3)で表されるように、Clausius−Mossotti因子(CM因子:K(ω))と呼ばれ、分極の程度を表している。
(ω)=(ε ε )/(ε +2ε ) …(3)
このCM因子は、上記式(2)及び(3)より、溶媒及び粒子の導電率、誘電率、更に印加する周波数に依存し、−0.5〜1.0の値をとる。そして、上記式(1)より、誘電泳動力の方向は、CM因子に依存する。すなわち、CM因子の実部が正の場合には誘電泳動力は正となり、電場強度の大きい方に粒子を誘導する正の誘電泳動が作用する。一方、負の場合には誘電泳動力は負となり、電場強度の弱い方に粒子を誘導する負の誘電泳動力が作用する。
電極101間に電圧を印加してこのような誘電泳動を生じさせることで、原料混合物R中の粒子204は次のような挙動を示すことになる。ここでは、粒子204として、主に正の誘電泳動力が作用するSWCNTsを用いた場合を例に挙げて説明する。すなわち、原料混合物Rにおいて、樹脂成分203は固化前であるため、粒子204はこの樹脂成分203中をある程度自由に移動できるようになっている。そのため、上記のような誘電泳動力が作用すると、粒子204はまず、誘電泳動力が作用する方向に向かって移動し始め、最も電界強度が大きい面電極202まで移動することになる。この際、SWCNTsは、繊維状粒子であり長軸方向に分極されているため、その長軸方向の一端が面電極202に接するとともに、その長軸方向が電界方向に沿うように配置される。
この粒子204の移動がある程度生じると、面電極202に先に付着した粒子204(図2中、粒子204a)の部分の電界強度が大きいため、原料混合物中に分散している他の粒子204(図2中、204b)は、この面電極202に付着している粒子204aに向かって移動するようになる。SWCNTsのような繊維状粒子の場合、長軸方向の端部付近が最も電界強度が大きくなるため、粒子204aと粒子204bとは、これらの端部付近で互いに接するように近づくことになる。さらに、粒子204aへの粒子204bの付着がある程度生じると、原料混合物中に分散している他の粒子204bが、粒子204aに付着した粒子204bに向かって移動するようになり、これらの端部同士で接するように付着する。そして、このような誘電泳動による粒子204の移動が順次生じると、やがて、図2に示すように、粒子204は、その長軸方向の端部同士で互いに接するように連続して配置され、電界方向に沿って略直線状に並べられる。そして、粒子204は、このように配向されることにより、最終的には面電極202同士を架橋するようにつながることとなる。
粒子として、SWCNTsからなる粒子204のような繊維状粒子を用いることで、上記のように、第2工程において、当該粒子の長軸方向が電界方向に沿うように連続して並べることができる。したがって、かかる繊維状粒子によれば、より少ない粒子の添加量でも後述するような良好な導電性や熱伝導性を得ることができる。また、配向方向に垂直な方向は粒子の密度が相対的に小さくなるため、配向方向の透明性もより高められる傾向にある。ただし、粒子として、このような繊維状粒子ではなく球状粒子を用いる場合であっても、球状粒子は、電界方向に沿って連続するように配向することができるため、配向による同様の効果は十分に得ることができる。
また、繊維状粒子と球状粒子とを組み合わせて用いると、繊維状粒子が上述のような形態で配向するとともに、隣り合う繊維状粒子の間を球状粒子が介在するような配向状態となる場合もある。そして、このような配向状態が形成されると、繊維状粒子がその端部同士で直接接する場合よりも粒子同士の接触性が良好となる傾向にある。これによって、後述するような導電性や熱伝導性の効果が更に良好に得られる場合がある。
なお、上述したような配向は、一対の電極101間に、固化後にそのまま粒子含有樹脂となる原料混合物を配置していることにより、電極付近の電界強度を最も高くし、この電界強度に対応した配向を生じさせることができるために可能となる。したがって、例えば、電極間に所定の膜等を配置し、これに向かって原料を移動させる方法等では、電界強度の分布が全く異なるようになるため、本発明のような配向は全く生じ得ない。
ここで、図3を参照して、本実施形態における電界強度の分布について説明する。図3は、一対の電極間に原料化合物を配置した構成とした場合に得られる電界強度の分布の一例を示す図である。
図3において、上下に配置されたEは一対の電極を示しており、この電極E間に原料化合物が満たされた状態となっている。そして、図3における原料化合物の領域に付した線は、この領域を電界強度の程度に応じて区画するものであり、この線に区画された領域に付された数字が小さいほど、その領域の電界強度が大きいことを示す。図3に示すように、本発明のように一対の電極間に原料化合物のみを配置する例では、電極に近づくほど電界強度が大きい分布となる。そのため、原料化合物中の粒子は、上述したような配向を生じることができる。これに対し、原料化合物中に多孔質膜等の膜を配置したりすると、膜部分の電界強度が大きくなるため、この場合、原料化合物中の粒子は、電極ではなく多孔質膜の孔に向かって移動することとなり、本発明のような配向を生じることはできない。
また、第2工程では、上述した誘電泳動による配向とともに、当該工程の間に一対の電極101間の距離を広げる操作を行う。図4は、第2工程において電極間の距離を広げる操作を模式的に示す断面図である。図4に示すように、第2工程では、ステージ105の支柱105aを下降させる(図中の矢印方向に動かす)ことにより、下側の電極101を低い位置に移動させ、これによって一対の電極101間の距離を広げる。この際、電極101間の領域には、当該領域の広がりにあわせて樹脂成分や原料混合物を供給するようにしてもよい。
このようにして第2工程の間に電極101間の距離を広げることによって、誘電泳動による粒子の配向を生じさせながら、電極101間に配置された原料混合物Rの厚みを大きくすることができる。その結果、厚みの大きい粒子含有樹脂を製造することが可能となる。これは、上述したように、誘電泳動による粒子の配向が生じると、電極101(面電極202)から延びるように粒子がつながって形成された構造の先端部分で電界強度が大きくなるためである。この場合、通常では電界が形成されないような電極101間の距離であっても、対向する電極101からそれぞれ延びた上記構造の先端部分の間で電界が形成され、これによって、配向せずに樹脂成分中に分散した状態のままの粒子204に誘電泳動を十分に生じさせることができる。これに対し、第2工程のはじめから、すなわち、誘電泳動が開始する前から電極101間の距離を過度に大きくしてしまうと、そもそも電極101間の電界が形成されなくなるため、電極101間で粒子を配向させることができない。
第2工程において誘電泳動を生じさせるためには、少なくとも第2工程の開始時点で電極101間の距離が1000μm以下であることが望ましい。これを超えると、誘電泳動が十分に生じず、粒子を配向させることができなくなる場合がある。例えば、第1工程において、電極101間の距離を好ましくは1000μm以下、より好ましくは1〜1000μmとしておき、第2工程において、この電極101間の距離で誘電泳動を開始し、その後、これよりも大きくなるように電極101間の距離を広げることが好ましい。これにより、最終的に電極101間の距離が1000μmを超えても、誘電泳動による配向を十分に生じさせることができる。
第2工程では、一対の電極101間の距離を徐々に広げてもよく、複数回にわたって段階的に広げてもよい。また、この際、電極101間の距離は、例えば、対向する電極101から粒子がつながってなる構造同士が一旦接触した後、これらが切断されるように広げてもよく、これらの構造同士が接触する前に広げてもよい。
ただし、電極101間の距離を急激に広げすぎると、誘電泳動による粒子の配向が十分に生じる前に電極101同士が離れてしまい、電極101から粒子がつながってなる構造同士による電界が十分に形成されなくなり、その結果、それ以上の誘電泳動を生じることができなくなる場合がある。そこで、このような不都合が生じないように、第2工程では、電極101間の距離を次のような条件を満たすように広げることが好ましい。
例えば、まず、第2工程においては、誘電泳動による粒子の配向により形成された構造を観察し、対向する電極101から延びるこれらの構造の先端間の距離が、好ましくは100μm以上、より好ましくは10μm以上とならないように電極101間の距離を広げる方法が挙げられる。こうすれば、上記構造の先端付近で十分な電界強度が得られるようになり、誘電泳動による配向を十分に生じさせることができる。
また、上記観察が困難な場合は、例えば、対向する電極101間の電流値を測定しながら電極101間の距離を広げることもできる。誘電泳動が生じていれば、電極101同士をつなぐように粒子が配向するため、電極101間の距離を広げた後の電流値は、一度小さくなっても、誘電泳動によって粒子が配向するため再び大きくなる。したがって、このように電流値を確認しながら電極101間の距離を広げることによって、誘電泳動による配向を確実に生じさせることが可能となる。すなわち、電極101間の距離を広げた直後には、配向した粒子がつながった架橋構造が切断されて一時的に電流値が小さくなることがあるが、この場合、誘電泳動が生じていれば粒子の配向が生じるため、電流値は再び大きくなる。したがって、このようにいったん電流値が下がる場合であっても、電流値が再び上昇することを確認しながら電極101間の距離を広げればよい。
第2工程では、対向する電極101間の距離を、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲で広げることが可能となる。なお、第2工程においては、最終的に電極101間の距離が第1工程と比べて広がっていればよく、例えば、途中で誘電泳動が十分に生じなくなった場合等は、いったん電極101間の距離を縮め、誘電泳動が十分に生じるようにしてから、再び電極101間の距離を広げてもよい。
(第3工程)
このようにして第2工程で粒子204を配向させつつ、所望の電極101間の距離とした後には、電極101間に電圧を印加しながら、樹脂成分203(樹脂又は樹脂前駆体)を固化させる(第3工程)。これにより、粒子204は、第2工程で生じさせた配向を維持したまま、樹脂成分203の固化物中で固定される。
この第3工程において、樹脂成分203の固化は、例えば、熱又は光硬化性樹脂を用いた場合、加熱又は光照射によって硬化させることにより実施する。また、樹脂成分203が熱可塑性樹脂の前駆体である場合は、適宜加熱等を行うことにより前駆体(モノマーやオリゴマー等)の重合を進行させ、固化状態の熱可塑性樹脂を生じさせればよい。さらに、硬化性樹脂の前駆体であるモノマーやオリゴマーを用い、固化の際に重合及び硬化をまとめて生じさせてもよい。
このようにして、原料混合物中の樹脂成分203を固化させた後、必要に応じて電極101を取り外すことによって、固化した樹脂成分203中に粒子204が分散して含まれる粒子含有樹脂が得られる。なお、電極101は、必ずしも粒子含有樹脂から取り外す必要はなく、用途によっては電極101を残しておいてもよく、また、基板201だけを取り除いて面電極202を残すようにしてもよい。
上述した第1〜第3工程を有する本実施形態の粒子含有樹脂の製造方法では、まず、第2工程において、樹脂(又は前駆体)及び粒子を含む原料混合物に電界が加わることから、樹脂中において粒子に誘電泳動の力が働き、粒子が電界の方向に沿って配向し、例えば、この方向に連なるように連続して配置されるようになる。そして、第3工程において、電圧を印加したまま樹脂(又は前駆体)を固化させることから、上記の粒子の配向が維持されたまま、粒子含有樹脂が形成される。
したがって、上記の製造方法によれば、配向によって上述したような特定方向に粒子が並べられた粒子含有樹脂が得られるため、この粒子含有樹脂は、粒子の配向方向に沿う方向の導電性や熱伝導性が高められ、粒子が少量であってもこれらの特性に十分に優れるものとなる。その結果、粒子含有樹脂を導電性フィルムに適用する場合は、粒子を少なくして良好な透明性が得られるようにしても、上記の配向によって十分な導電性をも得られるようになる。また、熱伝導性フィルムとする場合は、粒子を少なくしながらも十分な熱伝導性が得られるようになる。
また、本実施形態の製造方法では、第2工程において、誘電泳動による粒子の配向を生じさせながら、電極間の距離を広げている。そのため、従来では誘電泳動を生じさせることができなかったような電極間の距離としても、粒子の配向を継続して生じさせることができる。その結果、電極間の距離を広げることで厚い粒子含有樹脂を形成しても、粒子による特定方向の配向が良好に得られ、上述のような少ない粒子の量で優れた特性を得るという効果を十分に得ることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の粒子含有樹脂の製造方法の第2実施形態について説明する。
本実施形態では、上述した第1実施形態における第2工程での電極間距離を広げる操作、及び第3工程での樹脂又は樹脂前駆体の固化を並行して行う。すなわち、互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体と、を含有する原料混合物を配置する第1工程、一対の電極間に電圧を印加して、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる第2工程、一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない樹脂又は樹脂前駆体のうち、一対の電極のうちの一方の電極付近のものを固化させるとともに他方の電極付近のものを固化させない状態とし、一対の電極間の距離を広げる第3工程、及び、一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない樹脂又は樹脂前駆体をすべて固化させる第4工程をこの順に実施する。
このような第2実施形態は、上述した第1実施形態と同様の材料及び製造装置100を用いて行うことができるため、これらの説明については省略する。第2実施形態では、第1工程において原料混合物を配置し、第2工程において、原料混合物中の粒子を電界方向に配向させる。これらは、第1実施形態と同様にして行うことができる。
次に、第3工程において、まず、一対の電極間に電圧を印加し、第2工程で生じさせた粒子204の配向を維持しながら、一対の電極のうちの一方の電極付近の樹脂成分203(樹脂又は樹脂前駆体)を固化させる。すなわち、第2実施形態における第3工程では、原料混合物R中の全ての樹脂成分203を固化させるのではなく、一方の電極付近でのみ固化を生じさせ、他方の電極付近では固化を生じさせないようにする。こうすることで、樹脂成分203を部分的に固化させながら、後述する電極間距離を広げる操作を行うことができる。
樹脂成分203の固化は、第1実施形態と同様にして行うことができるが、本実施形態では、例えば、固化させない領域を遮蔽することによって、固化のための熱又は光が固化させるべき領域だけに到達するように行う。第2実施形態においては、特に、樹脂成分203として光硬化性樹脂を用い、光の照射によって固化を行うことで、上述した遮蔽による固化領域と未固化領域との分離を良好に行うことができる。
原料混合物Rにおいて、樹脂成分203を固化させる領域は、まず、製造装置100のように、一方(下側)の電極101のみが移動可能となっている場合は、移動しない側の電極101付近の領域とすることが好ましい。こうすれば、移動する電極101付近の原料混合物Rは固化していないため、この電極101の移動に伴って形状変形しやすく、後述する電極101間の距離を広げる操作を良好に行うことが可能となる。
第3工程においては、このように原料混合物Rにおける樹脂成分203の部分的な固化を行った後、一対の電極101間の距離を広げる操作を行う。かかる操作は、第1実施形態と同様にして行うことができる。この際、原料混合物Rにおける固化した領域は、固化した形状のまま維持される一方、固化していない領域は、電極101間の領域の広がりに合わせて、誘電泳動による粒子の配向を生じながら、そのまま又は別途供給された樹脂成分や原料混合物と混合されて引き延ばされることになる。
このような第3工程における一連の操作は、一度のみ行ってもよく、繰り返し行ってもよい。すなわち、第3工程においては、第2工程後の原料混合物R中の樹脂成分203を部分的に固化させ、次いで電極101間の距離を広げる操作を行うと、原料混合物R中に固化していない領域が残ることになる。そこで、このような未固化の領域において、部分的な固化、及び電極101間距離を広げる操作を繰り返し実施して、電極101間の距離を広げつつ、固化した領域を徐々に増やすようにしてもよい。
第3工程において、上記の一連の操作を繰り返し行う場合、一回ごとの操作で原料混合物Rに固化を生じさせる領域は、当初(第2工程終了時点)の電極101間の距離に対し、できるだけ小さくすると、樹脂成分203中の粒子204の配向を良好に維持しながら、電極101間の距離を広げることが可能となる。
そして、第2実施形態においては、第3工程後、原料混合物Rにおける未だ固化していない状態の樹脂又は樹脂前駆体を全て固化させる(第4工程)。その後、必要に応じて電極101を取り外すことによって、粒子含有樹脂が得られる。
このような第2実施形態においても、第2工程で誘電泳動による粒子の配向を生じさせた後、第3工程において、この配向を維持しながら部分的な固化を進めるとともに電極間距離を広げていることから、従来では誘電泳動を生じさせることができなかったような電極間の距離としても、粒子の配向を継続して生じさせることができる。その結果、電極間の距離を広げることで厚い粒子含有樹脂を形成しても、粒子による特定方向の配向が良好に得られ、少ない粒子の量で優れた特性を得るという効果を十分に得ることができる。
[粒子含有樹脂]
次に、上述したような本発明の製造方法で得られる粒子含有樹脂の構成の一例について説明する。図2は、正の誘電泳動を受ける繊維状粒子であるSWCNTs等を用いた場合の第2工程の断面構成を示す図であるが、これによって得られた粒子含有樹脂も、図2に示す断面構成をそのまま維持したものとなる。
すなわち、この例で得られる粒子含有樹脂においては、粒子204は、隣接するもの同士がその長軸方向の端部付近で順次接するようにして連続して配置される。この粒子204が連続している方向(すなわち配向方向)は、上記第2工程において印加した電界方向と一致する。したがって、粒子含有樹脂において、粒子204は、第2工程において電極と接していた両面間をつなぐように連続して配置される。また、この電極と接していた面付近では、粒子204は、一方の端部が当該面と接するとともに、その長軸方向がこの面から略垂直に立ち上がるようになっている。
このように構成された粒子含有樹脂は、粒子204を配向させた方向に導電性を有するとともに、これと垂直な方向には絶縁性を有する、いわゆる異方導電性を有するものとなり得る。また、粒子204の配向方向に高い熱伝導性を有し、これと垂直な方向には配向方向よりも低い熱伝導性を有するようにもなる。さらに、粒子204は、不規則に配向するのではなく、一方向に連続して並ぶように配向することから、配向方向に高い透明性を有することもできる。すなわち、図2に示した第2工程を経て得られた粒子含有樹脂は、その膜厚方向への導電性、熱伝導性及び透明性が高いものとなる。なお、粒子として、繊維状粒子でないものを用いた場合であっても、配向により同様の効果は十分に得られるようになる。
そして、上記のようにして製造された粒子含有樹脂は、例えば、粒子として導電性粒子を用いた場合、導電性フィルムとして用いることができ、特に、硬化後に透明である樹脂または樹脂前駆体を用いた場合、透明導電性フィルムとして適用することができる。このような導電性フィルム等は、上記の製造により得られた膜状の粒子含有樹脂をそのまま、またはこれを適宜加工することによって得ることができる。また、所定の基板(透明基板等)上に、粒子含有樹脂の層を設けた構成であってもよい。
このような透明導電性フィルムは、例えば、電子ペーパー、フレキシブルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ等の透明電極として好適に用いることができる。そして、透明導電性フィルムを構成する粒子含有樹脂は、上述したような製造方法によって得られたものであるから、少ない粒子の添加量であり十分な透明性を有するとともに、十分な導電性も得られるものとなる。
また、粒子含有樹脂は、熱伝導性を有する熱拡散フィルムに適用することができる。熱拡散フィルムに適用する場合、透明性が要求されることは少ないため、粒子の含有量を多くすることもできるが、上述した実施形態の製造方法によれば、従来と同じ粒子含有量であっても優れた熱伝導性を有する粒子含有樹脂が得られるため、熱拡散フィルムに好適な粒子含有樹脂を提供することが容易となる。
このような熱拡散フィルムは、種々の用途に適用でき、例えば、高周波高出力増幅器に適用するのに好適である。次世帯以降の無線通信システムに向けた高性能な高周波出力増幅器の実現のためには、例えば、フェイスアップの構造の増幅器においては、トランジスタチップの電極と、パッケージの電極とを電機接続する金属ワイヤーのインダクタンスが問題となっている。その解決策としては、トランジスタチップを裏返し、このチップの電極とパッケージの電極とを金等の短い金属バンプ(突起電極)で接続するフリップチップ構造が提案されている。しかしながら、高周波高出力増幅器で用いられる高出力トランジスタで発生した大量の熱を逃がすには、従来の金属バンプでは未だ放熱性の点で不十分であった。
そこで、金属バンプに代えてCNTsを用いることで、放熱性と高い増幅率とを同時に実現することが試みられている。この技術では、従来、電極に垂直に配向するようにCNTsを成長させて、CNTsバンプとフリップチップとの接合を行っている。しかし、このように電極にCNTsを直接成長させると配向は統一できるものの、電極の性質によって形成できるCNTsの形状が制限される可能性があった。また、この場合、電極が高温の炭素析出条件下に曝されるため、電極の材質が劣化してしまうという問題もある。
これに対し、本発明により得られる粒子含有樹脂を適用した熱拡散フィルムによれば、粒子としてCNTsを用い、その含有量を適度の範囲とすることにより、上述した異方導電性とともに配向方向に高い熱伝導性を得ることができる。また、フィルムの厚さを厚くしても、十分に良好な効果が得られる。そこで、かかる熱拡散フィルムを高周波高出力増幅器に適用し、この熱拡散フィルムを介してパッケージの電極上にフリップチップを支持するようにすれば、優れた放熱性とともに、高い増幅率を得ることも可能となる。
以上、本発明の粒子含有樹脂及びその製造方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上述した第1及び第2実施形態では、第1工程において、一対の電極を互いに離間して対向配置させてから、その間に原料混合物を導入するようにしたが、これに限定されず、あらかじめ一方の電極に原料混合物を塗布した後、これに他方の電極を張り合わせるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、第2工程を行った後、第3工程において樹脂又は樹脂前駆体の固化を行ったが、第2工程と第3工程とは重複していてもよい。すなわち、一対の電極間に電圧を印加して粒子を配向させるとともに、電極間の距離を広げつつ(第2工程)、樹脂又は樹脂前駆体の固化を進める(第3工程)ようにしてもよい。ただし、粒子の十分な配向を生じさせる観点からは、第2工程において所望の電極間距離が得られた後に、第3工程による固化を生じさせることが好ましい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)25mg及び3Mの硝酸を混合して、これを20分間超音波攪拌した。次に、得られた混合物を多量の純水で希釈した後、110℃に加熱して水分を蒸発させ、乾燥させた。この処理により、表面がニトロ基等によって修飾されたSWCNTsを得た。
上記修飾処理後のSWCNTsを、0.025重量%の濃度となるようにウレタンアクリレート系のUV硬化樹脂(重合開始剤としてイルガキュア184を3重量%含む)中に混ぜて、一時間超音波攪拌した。次いで、10,000rpmで30分間の遠心分離を行い、樹脂中にSWCNTsが分散された原料混合物を得た。
この原料混合物を用い、図1に示すような製造装置100を用いて粒子含有樹脂を製造した。すなわち、まず、原料混合物を一方の電極101に塗布し、これに他方の電極101を重ねた後、原料混合物が100μm(すなわち、電極101間の距離が100μm)となるまで加圧し、これにより原料混合物を電極101間に押し広げた。
次いで、これらの電極101間に10kHz、20Vppの高周波交流を印加して誘電泳動を生じさせることにより、SWCNTsを配向させた。この際、対向する電極101間の電流値をモニタし、その値が殆ど変化しなくなるまで待った。その後、高周波交流を印加しつつ、ステージ105における支柱105aを徐々に下げて、電極101間の距離を徐々に広げた。電極101間の距離は10μmずつ広げ、その都度、モニタしている電極101間の電流値が殆ど変化しなくなるまで待った。これを繰り返し、最終的に電極101間の距離を1030μmとした。なお、電極101間の距離を広げると、挟まれている原料混合物の径が小さくなるため、SWCNTsの配向を乱さないように適宜原料混合物を加えた。
その後、電極101間に電圧を印加した状態のまま、原料混合物にUV光(280〜380nmの波長域)を、10mJ/cmで200秒間照射し、UV硬化樹脂を硬化させて、フィルム状の粒子含有樹脂(粒子含有樹脂フィルム)を形成した。
それから、電極101間に粒子含有樹脂フィルムが挟まれた積層体に対し、電極101間にくさび状のものを挿入して一方の電極101から粒子含有樹脂フィルムを剥離した。続いて、もう一方の電極と粒子含有樹脂フィルムとの間にカミソリを挿入して、粒子含有樹脂フィルムをゆっくりと剥がした。これにより、図2に示すような、膜厚方向にSWCNTsが配向した粒子含有樹脂フィルムを得た。そして、このフィルムの両面にスパッタにより金属電極を形成したところ、これらの電極間(すなわち、フィルムの膜厚方向)に通電させることが可能であった。
[実施例2]
原料混合物における修飾処理後のSWCNTsの濃度を、0.05重量%に変えたこと以外は、実施例1と同様にして粒子含有樹脂フィルムを形成した。
得られた粒子含有樹脂フィルムの両面に金をスパッタして50nmの金電極を設けたところ、これらの電極間(すなわち、フィルムの膜厚方向)に通電させることが可能であった。
粒子含有樹脂の製造方法に用いる製造装置の断面構成を模式的に示す図である。 第2工程における電極及び原料混合物の状態を示す模式断面図である。 一対の電極間に原料化合物を配置した構成とした場合に得られる電界強度の分布の一例を示す図である。 第2工程において電極間の距離を広げる操作を模式的に示す断面図である。
符号の説明
100…製造装置、101…電極、102…支持壁、103…リード線、104…電源、105…ステージ、105a…支柱、201…基板、202…面電極、203…樹脂成分、204…粒子。

Claims (8)

  1. 互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体と、を含有する原料混合物を配置する第1工程と、
    前記一対の電極間に電圧を印加して、前記原料混合物中の前記粒子を電界方向に配向させる第2工程と、
    前記一対の電極間に電圧を印加しながら、前記樹脂又は樹脂前駆体を固化させる第3工程と、を有しており、
    少なくとも前記第2工程の間に、前記一対の電極間の距離を前記第1工程における距離よりも広げる、
    ことを特徴とする粒子含有樹脂の製造方法。
  2. 互いに対向して配置された一対の電極間に、粒子と、樹脂又は樹脂前駆体と、を含有する原料混合物を配置する第1工程と、
    前記一対の電極間に電圧を印加して、前記原料混合物中の前記粒子を電界方向に配向させる第2工程と、
    前記一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない前記樹脂又は樹脂前駆体のうち、前記一対の電極のうちの一方の前記電極付近のものを固化させるとともに、他方の前記電極付近のものを固化させない状態とし、前記一対の電極間の距離を広げる第3工程と、
    前記一対の電極間に電圧を印加しながら、固化していない前記樹脂又は樹脂前駆体をすべて固化させる第4工程と、
    を有することを特徴とする粒子含有樹脂の製造方法。
  3. 前記一対の電極間の距離を、当該電極間の電流値を測定しながら広げる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の粒子含有樹脂の製造方法。
  4. 前記一対の電極間の距離を広げる際には、当該電極間の距離を広げた後の前記電流値が、この距離を広げる前の値よりも小さくならないようにする、ことを特徴とする請求項3記載の粒子含有樹脂の製造方法。
  5. 前記第2工程において、前記原料混合物中の前記粒子を、電界が強い方向に移動させることにより配向させる、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒子含有樹脂の製造方法。
  6. 前記粒子として、繊維状粒子を含む、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子含有樹脂の製造方法。
  7. 前記粒子として、繊維状粒子及び球状粒子を含む、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子含有樹脂の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の粒子含有樹脂の製造方法により得られたことを特徴とする粒子含有樹脂。
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