JP5043599B2 - 高分子の連続配向体の製造方法および製造装置 - Google Patents
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Description
まず、塗布された有機物は溶媒の蒸発に伴って基板上で固体になるが、塗布した領域全体が一体の単結晶や一様な多結晶状態になるとは限らない。場所によって結晶化度や多結晶のドメインサイズが異なったり、アモルファスの部分が混在すると、期待した良導体及び/または半導体の性能を発現できない可能性が出てくる。この課題は、基板が巨大になり塗布面積が大きくなればなるほど深刻になる。
例えば、配向規制力を付与した基板を用いる方法の場合、あらかじめ電極などを形成した基板上にラビング等の処理を施すのは困難である。
上述の課題点がすべて解決したとしても、外力に引っ張り力を用いる場合、実際の生産現場では無配向体を延伸・圧延して一工程で膜状または帯状の一軸配向体を作成しているが、大きな力を均一にかける大がかりな生産設備が必要となる上、あらゆる素材が破断することなく延伸できるとは限らない、という課題も生じる。
そのうち第一の発明と第二の発明は、特に、基板表面の凹凸の影響や基板上に電極を形成した電子デバイスにおいても、配向が乱されることがない高分子の連続配向体の製造方法および製造装置を提供するものである。尚、第二の発明及び第三の発明は、第一の発明に対する参考発明である。
高分子の連続配向体を製造する第一の発明は、高分子の多結晶体を粉砕して単結晶を形成する工程と、前記単結晶に外力を加えて配向方向のそろった単結晶群にする工程と、前記単結晶群を連続配向体にする工程とを備えることを特徴とする。
前記単結晶群を連続配向体にする工程が個々の単結晶表面部分を溶媒による溶解または加熱による溶融によって単結晶同士をつないで連続配向体を形成することが好ましい。
また、高分子の連続配向体を製造する第二の発明は、高分子の配向繊維を作成する工程と、前記配向繊維に電場、磁場又は振動による外力を加えて一軸方向に配列した一軸配列繊維群にする工程と、前記一軸配列繊維群を連続配向体にする工程を有することを特徴とする。
上記の課題を解決する連続配向体の製造装置は、高分子を配向繊維にする手段と、前記配向繊維を基板または液面の上に静置する手段と、前記基板または液面の上の配向繊維を一軸配列繊維群にする手段と、前記一軸配列繊維群を連続配向体にする手段を有することを特徴とする。
ひも状の分子形状をした半導体/良導体有機高分子材料である螺旋型置換ポリアセチレンが、溶液状態から溶媒の蒸発に伴って固化する際に自己組織的に結合してカラムナ構造を作って分子の方向がそろう特徴を持っている。その為に、本発明者らは、この螺旋型置換ポリアセチレンの溶液を基板上に線状の形状で塗布すると溶媒の蒸発による溶液の流動によって分子が一軸に配向するという性質を利用し、螺旋型置換ポリアセチレンの溶液を線状に塗布して溶媒の蒸発に伴って配向した螺旋型置換ポリアセチレンのパターンを作成する工程を有することを特徴とする。
この第三の発明による連続配向体の製造方法は、螺旋型置換ポリアセチレンからなる配向体の製造方法であって、基板上に螺旋型置換ポリアセチレンの溶液を線状に塗布する工程、前記溶液中の溶媒を蒸発させる工程を有することを特徴とする。
前記線状の形状が幅2mm以下、長さと幅とのアスペクト比(長さ/幅)が5以上であることが好ましい。
さらに、本発明は、線状に配置した長周期の螺旋構造を有する螺旋型置換ポリアセチレンを備えたデバイスの製造方法であって、基板を用意する工程、基板上に螺旋型置換ポリアセチレンの溶液を線状に塗布する工程、前記溶液中の溶媒を蒸発させる工程を有することを特徴とするデバイスの製造方法である。
第一の発明を詳細に説明する。
本発明に係る高分子の連続配向体の製造方法は、高分子の多結晶体を粉砕して単結晶を形成する工程と、前記単結晶に外力を加え配向方向のそろった一群の単結晶群にする工程とを有する。そして、前記単結晶群を連続配向体にする工程とを有する。
本発明による高分子の連続配向体およびこの連続配向体を配したデバイスの製造方法、は以下のA、B、C、Dの四工程より成る。以下に、各工程について説明する。
(工程A、高分子の多結晶体を作成する工程)
上記の高分子の多結晶体を作成する。ここでいう多結晶体とは、一定の配向方向を持つ直径約1μmから100μm程度の領域(単結晶)が、複数結合して全体として一体の個体を形成しているものの全体としては配向方向がそろっていないものをいう。高分子の多結晶体の形状は、高分子の性質や作成の条件によって大きく左右されるので一概には言えないが、直径が100μmから5mm程度、大半は500μmから2mm程度の粒子状のものが好適である。また、高分子の多結晶体を溶媒に溶解した溶液を、平坦な基板上に滴下し蒸発条件を整えて溶媒を蒸発さえて作成すれば、例えば直径2cm厚さ100μmの膜状でもよい。上述のものより大きな形状の場合は、後述する工程Bでの粉砕処理が困難になる場合がある。その場合は、事前に適切な大きさに切断する等の前処理を施すことが好ましい。
例えば、高分子が溶媒に溶解する場合は、溶媒蒸発法が一般的に用いられる。また逆に非溶解性のものは蒸着法が用いられる。これらは一般的には単結晶を作成する方法だが、単結晶は非常に厳しい条件でのみ作成可能で、逆に言うと条件を詰めていない系では単結晶が成長せず容易に多結晶体になる。
高分子がポリアセチレンのようなカラムナ構造を作るものは、溶媒雰囲気に曝すことにより容易に多結晶体になる。
次に、前記高分子の多結晶体から粉砕微結晶の単結晶を作成する。ここでいう粉砕微結晶とは、多結晶体を粉砕して直径約1μmから100μm程度にした単結晶をいう。
次に、前記粉砕微結晶の単結晶に配向規制力として何らかの外力を加えて一軸配向単結晶群にする。一軸配向単結晶群とは結晶方位がそろった一群の単結晶群のことである。前述の粉砕微結晶の個々の微結晶の配向方向が同一方向になり、偏光顕微鏡でステージを回転させて観察した際にある角度で一群の微結晶が同時に光を透過して全体が特有の色で光ったり、逆に暗くなったりする状態をいう。
また、必要に応じて上述の外力を複数組み合わせてもよい。
最後に、前記方法で配向方向がそろった単結晶群を配向した連続配向体にする。ここでいう連続配向体とは、一軸配向単結晶群に何らかの処理を施すことによって、単結晶が相互に結合して一体の形状になり、かつ配向体全体で一軸配向状態を保ったものをいう。その方法としては様々な方法があり、特に限定されないので、高分子の性質および作成する配向体の特徴によって最適な方法を用いればよい。
これら一連の工程で作成した連続配向体が一軸配向しているかどうかを確認する方法は様々ある。もっとも容易な方法は、作成した連続配向体を一軸配向していることが確かな偏光フィルタと重ねてそれぞれを回転させる/または連続配向体を偏光顕微鏡の回転ステージに乗せ回転させて、光の透過具合を確認する方法である。
次に工程Cで、外力として磁場を用いた場合について更に詳細に説明する。
磁場を外力とする配向体作製方法は、ひも状・棒状・板状といった二次元または三次元的に異方性を持つ化合物の分子または結晶が磁場の影響を受けて、磁力線に沿う方向または磁力線に垂直な面上に並ぶ現象を利用したものである。近年、超伝導磁石の性能が向上し、従来は不可能だった数十テスラ(以下、Tと表記)といった磁場を作り出すことが可能となり、様々な有機高分子を配向させた例が報告されている。例えばPolymer Preprint,Japan vol.47、No14(1998),4075には、水系の溶媒中に分散させたポリエチレン繊維が超伝導磁石チャンバ中で磁力線と垂直な面に配向したと報告されている。
まず、工程Bで作成した粉砕微結晶を基板上に分散させる。用いる基板は必要に応じて適切なものを用いればよい。例えば、プラスチック、ガラス、シリコンなどが好適である。
次に工程Cで、外力として電場を用いた場合について更に詳細に説明する。
電場を外力とする配向体作製方法は、ひも状・棒状・板状といった二次元または三次元的に異方性を持つ化合物の分子または結晶が電圧印加下で並ぶ現象を利用したものである。
以下に電場を用いて単結晶の配向方向をそろえる方法を具体的に説明する。
基板を電界中に静置する方法としては、図2(a)のように単結晶201を乗せた基板203を例えば空気などの絶縁物を挟んだ一対の電極204の間に設置すればよい。基板203の向きは図2(a)では電界206と平行だが、必要に応じて適切な方向にすればよい。最終的な連続配向体の配向方向によっては、基板203を電界206に対して垂直に設置してもよい。
次に工程Dで用いられる、溶解による連続配向体の作成について更に詳細に説明する。
工程Aで、高分子を溶媒に溶解して多結晶体を作成した場合、同じ溶媒を用いて工程Cで作成した一軸配向単結晶群を半溶解状態(個々の結晶の表面のみ溶解状態)にして連続配向体にすればよい。この際、配向結晶群を完全に溶かしてしまうと、結晶内の配向した分子が乱され配向体作成後の配向度が低下してしまう危険がある為、表面のみ溶解して内部には溶媒が十分に浸透せず固定状態を保ったままでいるように結晶と溶媒との接触時間を制御する必要がある。この時間は高分子の種類や溶媒によって異なるので、事前に検討して決めればよい。また、溶媒を吸収して半溶解状態になったものから急激に溶媒を蒸発させると、溶媒の発泡によって結晶と結晶が接合した部分の配向した分子が乱され配向体作成後の配向度が低下してしまう危険もある。このため、配向結晶群を数ppmオーダーの溶媒蒸気に一定時間曝して半状態にした後、1時間程度かけて徐々に溶媒蒸気を除去/大気との置換を行う配慮が重要である。具体的な濃度、時間等は高分子、溶媒の種類、単結晶の大きさや量などによって最適な値が変わってくるため、事前に検討して決定すればよい。
次に工程Dで用いられる、溶融状態にすることによる連続配向体の作成について更に詳細に説明する。
次に工程Dで用いられる、一軸配向単結晶群を固定することによる連続配向体の作成について更に詳細に説明する。
本発明による高分子の連続配向体の製造方法は、高分子の配向繊維を作成する工程と、前記配向繊維に電場、磁場又は振動による外力を加えて一軸方向に配列した一軸配列繊維群にする工程と、前記一軸配列繊維群を連続配向体にする工程を有することを特徴とする。
本発明による高分子の連続配向体およびこの連続配向体を配したデバイスの製造方法は、下記のE、F、G三工程より成る。以下に、各工程について説明する。
まず、高分子を配向した繊維形状にする。ここでいう配向繊維とは、長辺(長さ)が1μm以上、短辺(外径)が50nm以上のひも形状のもので、かつ繊維を構成する個々の分子が軸方向(長手方向)に一軸配向しているものをいう。配向繊維の作成方法としては様々な方法が考えられ特に限定されないので、高分子の性質によって最適な方法を用いればよい。
前記方法で作成した配向繊維に外力を加えて配向繊維群にする。その方法としては様々な方法があり特に限定されないので、高分子の性質および作成する連続配向体・デバイスの特徴によって最適な方法を用いればよい。
なおこの工程で、基板と配向繊維との摩擦を小さくしてより小さい外力で短時間に配列させるために配向繊維を水や空気、高分子を溶解しない媒体及び/または高分子より融点が大幅に低い媒体に懸濁させてもよい。
最後に、前記方法で一軸方向に配列させた繊維群を連続した配向体にする。
例えば、高分子が溶解または溶融するものであれば、一軸配列繊維群を個々の繊維の表面部分のみが溶解または溶融する。そして繊維の大部分は配向した半溶融状態にし、その後溶媒を除去または温度を下げ、繊維の溶解または溶融した表面部分同士を結合させ連続配向体にすればよい。溶解または溶融した部分の分子の配向は多少乱れるが、微少領域のため再度固化する際に溶解または溶融しなかった周りの配向分子の影響を受けて再度配向する。
例えば、配向繊維を一軸配列した状態で無配向の透明シートに貼り付けたり包んだりしてもよい。また、工程Fの最後で述べた基板と繊維との摩擦を小さくする為の媒体として固化可能な流動性素材を用い、配向繊維を一軸配列した状態で固化しても良い。固化可能な流動性素材としては、例えば、重合開始剤を添加したモノマー、光等の刺激で固化する流動性素材、高分子より融点が大幅に低い流動性素材がある。配向繊維が配列した後に、一定時間静置、光を照射、温度を下げる等で流動性素材ごと一軸配列繊維群を固化すればよい。
工程Eで用いられる、延伸による配向繊維作成について更に詳細に説明する。
図3は、延伸による配向繊維の製造方法を示す模式図である。
工程Eで用いられる、摩擦転写による配向繊維作成について更に詳細に説明する。
図4は、摩擦転写による配向繊維の製造方法を示す模式図である。
次に工程Fで、外力として磁場を用いた場合について更に詳細に説明する。
磁場を外力とする配向体作製方法の原理は、第一の発明の部分で詳細に記述したので省略し、磁場を用いた配向繊維の一軸配列方法を具体的に説明する。
まず、工程Eで作成した配向繊維を基板上に分散させる。用いる基板は必要に応じて適切なものを用いればよい。例えば、プラスチック、ガラス、シリコンなどが好適である。このとき図5(a)のように配向繊維2301を、高分子を溶解しない液体の媒体及び/または基板を加温しながら(加温手段は図示せず)高分子より融点が大幅に低い液体の媒体2302に懸濁させる。すると、繊維2301と基板2303との間の摩擦抵抗が弱まるためよい。次にこの基板を図5(b)のように磁場発生装置2304を設置した磁場中に静置する。基板2303の向きは図5(b)では磁力線2305と平行だが、必要に応じて適切な方向にすればよい。また基板上にあらかじめ電極等を作り込んである場合、電極の向きも考慮する必要がある。この磁場発生装置2304は、配向に必要な磁力が生成可能であれば、永久磁石、通常の電磁石、超伝導磁石等何でもよい。また、長さ5μm以上の配向繊維は0.5T程度の磁力で十分一軸配列するので、電力を必要とせず機構も単純ですむサマリウムコバルトやネオジム等の強力な永久磁石を用いたものが好適である。
次に工程Fで、外力として電場を用いた場合について更に詳細に説明する。
電場を外力とする配向体作製方法の原理は、第一の発明の部分で詳細に記述したので省略しするが、配列させたい高分子が5μm以上の繊維形状でかつ配向している場合、繊維を電場内に置いた場合に繊維の両端に電荷が生じ回転力が生じる。この為繊維は回転力が最小になる電場と平行な方向に動き、結果として一軸方向に配列すると考えられる。
図6は、電場による配向繊維の配列を示す模式図である。
まず、工程Eで作成した配向繊維を基板上に分散させる。用いる基板は特に限定されない。必要に応じて適切なものを用いればよい。例えば、プラスチック、ガラス、シリコンなどが好適である。図6(a)乃至(c)のように配向繊維2401を非導電性でかつ高分子を溶解しない液体の媒体及び/または基板を加温しながら(加温手段は図示せず)高分子より融点が大幅に低い媒体2402に懸濁させる。すると、配向繊維2401と基板2403との間の摩擦抵抗が弱まるためよい。
基板を電界中に静置する方法としては、図6(a)のように配向繊維2401を乗せた基板2403を例えば空気などの絶縁物を挟んだ一対の電極2404の間に設置すればよい。基板2403の向きは図6(a)では電界2406と平行だが、必要に応じて適切な方向にすればよい。例えば、繊維を基板に垂直に配向させる場合は、基板2403を電界406に対して垂直に設置すればよい。
次に工程Fで、外力として振動を用いた場合について更に詳細に説明する。
振動を外力とする配向繊維の一軸配列方法は、ひも状・棒状といった二次元的に異方性を持つ形状のものが無秩序に積層した状態の際にこれに一定周期または不規則的な振動を加える。すると、それらが秩序正しく一軸方向を向いて配列する現象を利用したものである。ただ、一般的にこの現象では異方性形状を持つものの配列方向は不特定になってしまうため、異方性形状を持つものを積層する基板を配列方向に平行になるように窪ませる、または基板表面に配列方向に平行な溝を掘ればよい。
図7は、振動による配向繊維の配列を示す模式図である。
まず、工程Eで作成した配向繊維を基板上に分散させる。用いる基板は特に限定されない。必要に応じて適切なものを用いればよい。このとき、図7(a)のように、工程Eで作成した配向繊維2501を振動手段2502上に固定した基板2503上に分散・積層させる。このとき基板503は図7(b)のように円筒の側面の一部を切り出したような形状や図7(c)のように基板は平坦だが表面に一軸方向に溝を切った及び/または一軸方向に線上の突起がある構造になっている必要がある。基板の形状はどちらでもよいので、必要に応じて使い分けるとよい。図7(b)の基板を用いると完成後の連続配向体の厚さが中心部分と周辺部分で若干差ができる。一方図7(c)の場合は完成後の連続配向体の裏側に筋状の突起及び/または凹みが残る。いずれにせよ、均一な厚さの配向体を得るには、配向体を研磨して厚さを一定にする/突起を除去する必要がある。なお図7(b)乃至(c)の図において、矢印504は配向繊維が配列する方向である。
図8は、水面展開による配向繊維の配列を示す模式図である。
次に工程Fで、外力として媒体の流動を用いた場合について更に詳細に説明する。
図9は、流動による配向繊維の配列を示す模式図である。
まず、工程Eで作成した配向繊維を基板上に分散させる。用いる基板は媒体に溶解しなければ特に限定されない。必要に応じて適切なものを用いればよい。図9(a)のように、工程Eで作成した配向繊維を懸濁した媒体2701を媒体循環手段2702、媒体除去手段2703とパイプ2704等で接続された基板静置槽2705に充填し、この基板静置槽内の媒体液面下に基板2706を沈めた。用いる基板は媒体に溶解しないものであれば特に限定されない。必要に応じて適切なものを用いればよい。また、媒体も特に限定されないが、配向繊維の比重と比べて同じまたは軽いものが好適である。
次に工程Gで用いられる、溶解による連続配向体作成について更に詳細に説明する。
次に工程Gで用いられる、溶融状態による連続配向体作成について更に詳細に説明する。
次に工程Gで用いられる、一軸配列繊維群を固定することによる連続配向体作成について更に詳細に説明する。
本発明による螺旋型置換ポリアセチレンからなる連続配向体の製造方法は、基板上に螺旋型置換ポリアセチレンの溶液を線状に塗布する工程、前記溶液中の溶媒を蒸発させる工程を有することを特徴とする。
前記線状の形状が幅2mm以下、長さと幅とのアスペクト比(長さ/幅)が5以上であることが好ましい。
溶液を線状に塗布する工程が、描画法、印刷法またはインクジェット法により行われることが好ましい。
ひも状・棒状の分子形状をした半導体/良導体有機高分子材料である螺旋型置換ポリアセチレンは、クロロフォルム等の溶媒に容易に溶解する。この螺旋型置換ポリアセチレンは自己組織的に結合して分子の方向がそろって密に集積した状態のカラムナ構造を作る特徴を持っている。その為、螺旋型置換ポリアセチレンの溶液から溶媒が蒸発し溶液中の濃度が上昇すると、無秩序に凝集するのではなく自然に分子同士が結合して分子の方向がそろった分子束を形成する。
まず、本発明に必須の螺旋型置換ポリアセチレンの原理を模式的に説明すると以下のようになる。
この螺旋型置換ポリアセチレンはバルク、薄膜又は分子状等の様々な構造での導電性材料として用いることが出来る。以下,本発明の導電性材料である螺旋型置換ポリアセチレンについて更に詳しく述べる。
螺旋型置換ポリアセチレンの合成は、遷移金属錯体を触媒として用いて、アセチレン化合物を周知の方法により製造する(Nanoletters,2,877から880頁、2002年)。
前述の螺旋型置換ポリアセチレンを溶解する溶媒は、螺旋型置換ポリアセチレンを溶解するもので、かつ後述するデバイス基板や液滴塗布手段を溶解及び/または変性させないものであれば特に限定されない。螺旋型置換ポリアセチレンは、置換基によって多種多様なものが作成しうるが、例えばクロロフォルムはその多くを溶解することが可能で、かつ常温での揮発性が高いので、後述する工程Iでの溶媒蒸発速度を制御する手段を簡略化するか省略出来る利点がある。蒸発速度を遅くしたい場合は、揮発性の低いトルエンやTHFなども使うことが出来る。また、メチルアルコールならば、置換基の違いによる溶解性に関してはクロロフォルムに若干劣るものの、取り扱いが容易でかつ安価な上、クロロフォルムでは溶解するがメチルアルコールでは溶解しないプラスチックが多いため基板の材質の選択範囲が広がる。更に、置換基の中に−NH+Cl-といった電離するものを組み込むことで水溶性を付与した螺旋型置換ポリアセチレンを用いるならば、純水またはその他水系の溶媒を用いても良い。この場合は、有機溶媒に比べて廃液/排気ガスの処理が容易または不要になる利点がある。また、後述するように、この溶媒を用いたポリアセチレンの溶液を意図した形状で基板上に塗布するため、溶液が基板上で一定の形状を維持する必要がある。そこで、この目的のために溶液に増粘剤等を添加し、後述の溶液塗布工程に支障が出ない範囲で粘度を上げても良い。
まず幅の絶対値であるが、前述のように液滴は軸方向に向かっても収縮するためあまり幅が広いと溶媒の蒸発に伴う液滴の軸方向への収縮により分子および分子束が軸方向に向かって(つまり、線方向と垂直に)配向する部分が無視できない大きさになる。この為、完全に溶媒が蒸発した後に得られる高分子の集合体は、線方向に一様に配向せず、周辺部は軸方向に向かって配向し、中心部は線方向に配向するという複雑な配向体になってしまい、期待通りの性能を発揮できない可能性がある。この点を考慮して、本発明者等は実験を繰り返したが、液滴の粘度や基板との相互作用などによっても左右されるが、液滴の幅は5mm以下、好ましくは2mm以下ならば、溶媒蒸発後に一様に配向した高分子の集合体が得られることがわかった。
インクジェット法について更に説明する。この方法では、図13のようにパソコン等の制御装置(不図示)で制御されたインクジェットプリンタのインクノズル3403を矢印3404方向にラスタスキャンさせる。必要に応じてポリアセチレンの溶液の微少なインク液の滴弾3405を基板上の微小ギャップ電極3401a、3401bの上に吹き付け、基板上でこの液滴がつながって一体化した液滴3402となり最終的に意図した形状の液滴になる。インクノズルから溶液を吹き付ける方法は特に限定されない、溶液を機械的に突出させる方法や小型ヒータを使って加熱して発泡させその泡による体積の増大を駆動力にする方法などが挙げられる。また、精巧な形状を描画する場合、インクノズルからの一回に突出される微少なインク液の滴弾の量を少なくする必要があるが、あまり少なすぎると単位面積あたりに必要な量のポリアセチレンを乗せることが出来なくなる。この場合は、数回同じ所に微少なインク液の滴弾を吹き付けても良い。また、この図13ではインクノズル3403をラスタスキャンさせている。作成したい液滴のパターン形状によっては、その形状をなぞるようにインクノズル3403をベクタスキャンした方がスループットが向上する場合がある。どちらを用いるかは適宜判断すればよい。
上記の様にして基板上に意図した形状の液滴を作成した後、溶媒蒸発工程で乾燥させればよい。
実施例1
本実施例は、工程Cに磁場配向法を、工程Dに溶解法を用いてポリアセチレンの連続配向体を作成した例である。
次に、内容積が約13mLのガラスシャーレを用意し、底部に0.5mLのクロロフォルムを滴下し、一片5mmの立方体のガラスを静置し、その上に前述の表面にポリアセチレンの粉末を分散した石英ガラスを乗せ、ふたをした。この状態で、石英ガラス表面の配列結晶は直接クロロフォルムの溶液に触れることはないが、およそ5ppm程度のクロロフォルム蒸気に曝される。この状態で、シャーレを室温で約1時間静置したところ、石英ガラス表面の粉末は色が黒っぽく変化していた。
実施例1と同じポリアセチレン粉末をクロロフォルムに溶解し20.0mg/mLの溶液0.5mLを作成した。この溶液を実施例1と同様にスライドグラスに滴下して、約8Tの超伝導磁石のチャンバ内に約1時間静置した。スライドグラス上のクロロフォルムはすべて蒸発しポリアセチレンの薄膜が形成された。この石英ガラスを偏光顕微鏡の回転ステージに乗せて観察したところ、一軸配向していないことが確認された。また、偏光吸光光度計で偏光吸光度を測定し320nmにおける二色比(D)を計算したところ、0.02であった。
本実施例は、工程Cに磁場配向法を、工程Dに固定法を用いてポリアセチレンの連続配向体を作成した例である。
次に、このポリアセチレンの多結晶体の粉末を、試験管に入った約0.5mLのUV硬化樹脂(ビームセットAQ−9C、荒川化学工業社製)の溶液に混合した。溶液に出力20Wの超音波ホモジナイザのホーンを挿入して1秒ON1秒OFFのサイクルで5分間粉砕して、ポリアセチレン粉砕微結晶の懸濁液とした。
本実施例は、工程Cに磁場配向法を、工程Dに固定法を用いてポリアセチレンとフィニレンビニレンが混合した連続配向体を作成した例である。
用意した。
一方、OPVダイマーは、石英ガラス上に粉末を乗せて窒素雰囲気下で260℃に加熱して融解し、ついで2℃/minの降温速度で冷却して室温に戻したところ粉末が溶融して、石英ガラス上で一体の膜状になっていた。この石英ガラスを顕微鏡で観察したところ、膜は多結晶構造であることがわかった。次にこの膜を石英ガラスから剥離し、ポリアセチレンと同様にUV硬化樹脂に混合し、超音波ホモジナイザで粉砕して粉砕微結晶の懸濁液とした。この懸濁液を石英ガラスに滴下して顕微鏡で観察したところ、膜は粉々になり個々の微粒子がそれぞれある特定のステージ角度の時に微粒子全体が黄色に光る粉砕微結晶に成っていることがわかった。
最後に、この石英ガラスを偏光顕微鏡の回転ステージに乗せて観察したところ45度ごとに固化した部分全面が明るくオレンジ色に光ったり消光して暗くなったりした。また、偏光吸光光度計でこの石英ガラスの固化した部分の透過率を測定したところ、波長約620nm(赤色)と590nm(黄色)の二つの波長の透過率が高いことがわかった。更に偏光吸光度を測定し320nmにおける二色比(D)を計算したところ、0.22であった。これらから膜は全面が一軸方向に配向し、赤色および黄色の光を選択的に透過する偏光フィルタになっていることが確認できた。
本実施例は、工程Eに延伸法を、工程Fに磁場配向法を、工程Gに表面溶解法を用いてポリアセチレンの連続配向体を作成した例である。
実施例4と同じポリアセチレンをクロロフォルムに溶解して、10mg/mLの溶液を作成した。この溶液を実施例1と同様にネオジム磁石を2cmの間隔を置いて並べたものの間に静置した一片約1.8cmのスライドグラス上に1mL滴下した。
本実施例は、工程Eに摩擦転写法を、工程Fに流動配向法を、工程Gに固化法を用いてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))の連続配向体を作成した例である。
本実施例は、ポリアセチレンとポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))の2種類を含有した連続配向体を作成した例である。複数種類の高分子を用いた例である。
最後に、このガラス基板を偏光フィルタと重ね、フィルタを回転させたところ90度ごとに膜全面が光を透過しなくなり真っ暗になった。また、偏光吸光光度計でこの石英ガラスの透過率を測定したところ、波長約460nm(青色)と610nm(オレンジ色)の二つの波長の透過率が高いことがわかった。更に偏光吸光度を測定し320nmにおける二色比(D)を計算したところ、0.22であった。これらから膜は全面が一軸方向に配向し、青色およびオレンジ色の光を選択的に透過する偏光フィルタになっていることが確認できた。
実施例4と同じポリアセチレンをクロロフォルムに溶解して10mg/mLの溶液を作成した。この溶液にポリテトラフルオロエチレンを細かく砕いた微少チップを懸濁しようとしたが、ポリテトラフルオロエチレンがクロロフォルムを弾いて液面の一ヶ所に集まってしまった。ポリアセチレンおよびポリテトラフルオロエチレンが共に溶解または懸濁した溶液を作成することはできなかった。
本実施例は、工程Hおよび工程Iを用い、ガラス基板上に直線の配線を作成したデバイスを描画法で作成した例である。
次に、このスライドグラスを互いにクロスニコルの関係になるように設置した2枚の偏光板の間に設置し、下部から光を照射し、スライドグラスを回転させながら上部から観察した。この時、ガラスのみの部分は回転角度に無関係に常に暗い一方で、直線状の膜部分は45度ごとに3本の線のほぼ全体が一度に明るく光ったり消光して暗くなったりし、3本の膜はすべてほぼ全面が一軸方向に配向している事がわかった。
実施例7と同様のポリアセチレンのクロロフォルム溶液および洗浄済みスライドガラスを用意した。これに実施例1と同様のピペットチップを付けたピペッタを用いて直径約2mmの円状の液滴を描いた。この時、液滴のアスペクト比は1.0である。
次に、このスライドグラスを実施例7と同様の2枚の偏光板の間に設置し観察した。スライドグラスを回転させたところ、膜の一部が不規則に明るく光ったり消光して暗くなったりし、膜が部分的に無秩序に配向していることがわかった。
実施例7と同様のポリアセチレンのクロロフォルム溶液および洗浄済みスライドガラスを用意した。これに、内径2mm外径4mm程度のピペットチップ(ポリプロピレン製)の付いた0から1000mL分注用ピペッタ(ギルソン社製)で、幅10mm長さ約30、50mmの直線状の液滴を描いた。この時線状の液滴のアスペクト比は3、5である。
次に、このスライドグラスを実施例7と同様の2枚の偏光板の間に設置し観察した。スライドグラスを回転させたところ、ある角度で膜の中心軸付近が一直線に明るく光ったが、その明るい直線の周辺は部分的にその直線と直交する方向に縞状に光った。これらの明るい部分は、スライドガラスの回転に応じて45度ごとにほぼ同時に明るく光ったり消光して暗くなったりし、膜の中心軸付近は線方向に配向しているものの、周辺部分は配向部分と無配向または低配向の部分が混在した状態になっていることがわかった。
本実施例は、工程Hおよび工程Iを用い、ガラス基板上に曲線の配線を形成したデバイスを印刷法で作成した例である。
次に、このスライドグラスを実施例7と同様の2枚の偏光板の間に設置し観察した。この時、ガラスのみの部分は回転角度に無関係に常に暗かった。一方で曲線状の膜部分はその曲線の接線ベクトルが同一の部分が一度に明るかった。スライドグラスを回転するに従って連続的に光る部分が移動して行き、45度回転した位置で、光っていた部分が最も暗くなった。また、曲線上で光っている部分の接線ベクトルを調べると、常に同一方向または直交方向であることがわかり、曲線の膜はほぼ全体が連続的に線方向に向いて配向している事がわかった。
本実施例は、工程Hおよび工程Iを用い、電極を作り込んだシリコン基板上の電極ギャップ間に薄膜を作成したデバイスをインクジェット法で作成した例である。
102 粉砕微結晶群を懸濁した媒体
103 基板
104 磁場発生装置
105 磁界(磁力線)方向
201 粉砕微結晶群(多結晶体を粉砕して得られた単結晶)
202 粉砕微結晶群を懸濁した媒体
203 基板
204 電極
205 電源装置
206 電界方向
207 基板上に設置した電極
208 端子
2101 軟化した状態の高分子
2102 クランプ
2103、103’ 延伸方向
2104 針
2105 延伸方向
2106 シリンダ
2107 ピストン
2108 ノズル
2201 高分子のペレット
2202 基板
2203 ペレットを加圧する方向
2204 ペレットを移動させる方向
2205 基板表面に付着した繊維状・リボン状の配向体
2301 配向繊維
2302 配向繊維を懸濁した媒体
2303 基板
2304 磁場発生装置
2401 配向繊維
2402 配向繊維を懸濁した媒体
2403 基板
2404 電極
2405 電源装置
2406 電界
2407 基板上に設置した電極
2408 端子
2501 配向繊維
2502 振動手段
2503 基板
2504 配向繊維が配列する方向
2601 配向繊維
2602 水槽
2603 基板
2604 バリア
2605 バリアが前進後退する方向
2701 配向繊維を懸濁した媒体
2702 媒体循環手段
2703 媒体除去手段
2704 パイプ
2705 基板静置槽
2706 基板
2707 媒体除去手段で徐々に除去された媒体の排出される方向
3100から3105 主鎖を構成する部分の二重結合
3106 側鎖のアルキル基
3107,3108 側鎖の芳香基
3109 主鎖方向
3201 基板
3202 線状の液滴
3203 ペン先(ピペットチップ)
3204 ペン先の移動方向
3301 アルミニウムの板から作成した凸版
3302 凸版の突起部分
3303 ポリアセチレン溶液
3304 ポリアセチレン溶液を入れた容器
3305 凸版の移動方向
3306 突起部分に付着したポリアセチレン溶液
3307 凸版の移動方向
3308 基板
3309 基板上に転写されたポリアセチレン溶液の液滴
3401a、3401b 微少ギャップを持った一対の電極
3402 形成されつつある線状の液滴
3403 インクジェットノズル
3404 インクジェットノズルがスキャンする方向
3405 インクジェットノズルから打ち出された微少なインク液の滴弾
Claims (5)
- 高分子の連続配向体の製造方法であって、高分子の多結晶体を粉砕して単結晶を形成する工程と、前記単結晶に外力を加えて配向方向のそろった単結晶群にする工程と、前記単結晶群を連続配向体にする工程とを備えることを特徴とする高分子の連続配向体の製造方法。
- 前記外力が磁場または電場であることを特徴とする請求項1に記載の高分子の連続配向体の製造方法。
- 前記単結晶群を連続配向体にする工程が個々の単結晶表面部分を溶媒による溶解または加熱による溶融によって単結晶同士をつないで連続配向体を形成することを特徴とする請求項1に記載の高分子の連続配向体の製造方法。
- 前記単結晶群を連続配向体にする工程が単結晶群を基板上に固定するか、または単結晶群を樹脂中に固定して連続配向体にすることを特徴とする請求項1記載の高分子の連続配向体の製造方法。
- 高分子の連続配向体の製造装置であって、高分子の多結晶体を粉砕して単結晶を形成する手段と、前記単結晶に外力を加えて配向方向のそろった単結晶群にする手段と、前記単結晶群を連続配向体にする手段とを備えることを特徴とする高分子の連続配向体の製造装置。
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