JP2006307786A - 可変動弁装置、並びにそれを備えた内燃機関の制御装置 - Google Patents

可変動弁装置、並びにそれを備えた内燃機関の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 この発明は、可変動弁装置、並びにそれを用いた内燃機関の制御装置に関し、ロストモーション手段の無駄な設定バネ力の低減による機構の低フリクションロス化と、ロストモーション手段の小型化による搭載性向上とを実現することを目的とする。
【解決手段】 メインカム14とバルブ18との間に、ロッカーアーム16を押動する揺動カムアーム22を備える。揺動カムアーム22とメインカム14との間に、中間アーム28を配置する。中間アーム28は、メインカム14と当接するカムローラ32と、揺動カムアーム22と当接するスライドローラ36とを備える。揺動カムアーム22を中間アーム28を介してメインカム14に向けて付勢する第1ロストモーションスプリング44を備える。更に、中間アーム28をメインカム14に向けて付勢する第2ロストモーションスプリング50を備える。
【選択図】 図1

Description

この発明は、可変動弁装置、並びにそれを用いた内燃機関の制御装置に係り、特に、バルブの開弁特性を機械的に変更可能な内燃機関の可変動弁装置、並びに、当該可変動弁装置を内燃機関の運転条件に応じて制御する内燃機関の制御装置に関する。
従来、例えば特許文献1には、バルブの開弁特性を機械的に変更可能な可変動弁装置が開示されている。この可変動弁装置は、バルブを開閉駆動するスイングレバー(ロッカーアーム)を備えている。また、カムとスイングレバーとの間に、カムの回転と同期して揺動し、カムの押圧力をスイングレバーに伝達するロッカーレバー(揺動部材)を備えている。そして、この装置は、偏心軸(制御軸)の回転位置に応じてロッカーレバーの揺動範囲を変更できるように構成されている。このため、上記従来の可変動弁装置によれば、偏心軸の回転位置に応じて、バルブの開弁特性を連続的に変更することができる。また、上記従来の装置は、ロッカーレバーをカムに向けて付勢するロストモーションスプリングを備えており、このロストモーションスプリングの付勢力によって、ロッカーレバーとカムとが機械的な当接状態に維持されている。
特許第3245492号
リフト量等のバルブの開弁特性を機械的に変更可能な可変動弁装置において、上述した構成以外にも、互いに関連して揺動する複数の運動部材を、カムとバルブとの間に介在させた構成を有する可変動弁装置が知られている。このような構成を有する可変動弁装置に対しても、上記従来技術と同様に、1つのロストモーション手段によって、これらの複数の運動部材をカムに向けて付勢させることにより、部品点数の増加を抑えつつ、上記複数の運動部材とカムとを機械的な当接状態に維持することが可能である。
しかしながら、カムとバルブとの間に介在する運動部材が複数であると、カムからバルブへの荷重伝達径路がバルブの開弁特性の可変範囲に応じて変化する。上記のロストモーション手段には、個々の運動部材の慣性力の合計値が作用することになるが、バルブの開弁特性が変化すると、個々の運動部材から受ける慣性力の影響が変化する。つまり、バルブの開弁特性の変化に伴って、ロストモーション手段の必要バネ力が変化してしまう。そのような必要バネ力の変化に対応させようとして、バネ力が不足したリフト領域で必要なバネ力が得られるようなバネ特性を与えると、他のリフト領域では無駄なバネ力が生じてしまい、フリクションロスの増大を招いてしまう。また、ロストモーション手段が1つであると、ロストモーション手段の大型化により、内燃機関への可変動弁装置の搭載性が悪化してしまうことがある。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、互いに関連して揺動する複数の運動部材をカムとバルブとの間に介在させる可変動弁装置において、ロストモーション手段の無駄な設定バネ力の低減による機構の低フリクションロス化と、ロストモーション手段の小型化による搭載性向上とを実現することのできる可変動弁装置、並びにそれを備えた内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、互いに関連して揺動する複数の運動部材をカムとバルブとの間に介在させ、アクチュエータにより駆動される制御手段を備え、前記制御手段によって少なくとも1つの前記運動部材の揺動基準位置を変化させることにより、他の少なくとも1つの前記運動部材の揺動範囲が変更され、前記バルブの開弁特性が機械的に変更可能となる可変動弁装置であって、
個々の前記運動部材毎に、当該運動部材をそれぞれ前記カムに向けて付勢するロストモーション手段を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記複数の運動部材は、
前記カムの回転と同期して揺動することにより当該カムの押圧力を前記バルブに伝達する揺動部材と、
前記揺動部材と前記カムとの間に配置され、前記制御手段によって前記揺動部材上における揺動基準位置が変更されることで前記揺動部材の揺動範囲を変化させる中間部材とを備え、
前記ロストモーション手段は、
前記揺動部材を前記カムに向けて付勢する第1ロストモーション手段と、
前記中間部材を前記カムに向けて付勢する第2ロストモーション手段とを備えることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記バルブの実リフト量情報を取得するリフト量情報取得手段と、
前記実リフト量情報に応じて内燃機関の運転条件を制限する運転条件制限手段と、
を備えることを特徴とする。
カムとバルブとの間に、互いに関連して揺動する複数の運動部材が介在する構成である場合に、ロストモーション手段が1つであると、バルブの開弁特性を変化させるべく、ある運動部材の揺動基準位置が変更された場合に、個々の運動部材から受ける慣性力の影響が変化する。つまり、バルブの開弁特性の変化に伴って、ロストモーション手段の必要バネ力が変化してしまう。第1の発明によれば、カムとバルブとの間に介在する複数の運動部材のうちの少なくとも1つの運動部材の慣性力が、他の運動部材に伝達されていくのを防止することができる。換言すると、上記少なくとも1つの運動部材の揺動基準位置の変更に起因してロストモーション手段に作用する慣性力が変化することに伴う無駄なバネ力の発生を防止することができる。このため、本発明によれば、ロストモーション手段の無駄な設定バネ力の低減による機構の低フリクションロス化と、ロストモーション手段の小型化による搭載性向上とを実現することができる。
第2の発明によれば、中間部材の慣性力が揺動部材に伝達するのを抑制することができる。このため、本発明によれば、中間部材の揺動基準位置の変更に起因して、第1ロストモーション手段に作用する慣性力がバルブの開弁特性の変更に伴って変化するのを防止することができる。
バルブの実リフト量が変化すると、ロストモーション手段のバネ特性が変化する。第3の発明によれば、ロストモーション手段の最大バネ荷重を考慮して、内燃機関の運転条件が制限される。このため、本発明によれば、バルブの実リフト量に応じて、エンジン回転数に制限を加えることにより、ロストモーション手段に過大な最大バネ荷重が作用しないようにすることが可能となる。
実施の形態1.
[可変動弁装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の可変動弁装置10の全体構成を説明するための断面図である。図1に示す可変動弁装置10は、吸気弁または排気弁として機能する内燃機関のバルブを駆動するための装置である。
可変動弁装置10は、図1に示すように、ロッカーアーム方式の機械式動弁機構を有している。可変動弁装置10におけるカム軸12の回転運動は、カム軸12に設けられたメインカム14によってロッカーアーム16の揺動運動に変換され、ロッカーアーム16に支持されるバルブ18のリフト運動に変換される。この可変動弁装置10では、メインカム14によってロッカーアーム16を直接駆動するのではなく、互いに関連して揺動する可変機構20および揺動カムアーム22(揺動部材)を、メインカム14とロッカーアーム16との間に介在させている。
可変機構20は、揺動カムアーム22の揺動範囲を変化させることで、メインカム14の回転運動とロッカーアーム16の揺動運動との連動状態を連続的に変化させることができる機構である。このため、本実施形態の可変動弁装置10によれば、この可変機構20を可変制御することによりロッカーアーム16の揺動量や揺動タイミングを変化させて、バルブ18のリフト量やバルブタイミングを連続的に変更することができる。
可変機構20は、以下に説明するように、制御軸24、制御アーム26、および中間アーム28(中間部材)を主たる構成部材として構成されている。制御軸24は、カム軸12と平行に配置されている。制御軸24は、図示しないアクチュエータ(例えばモータ)によって回転駆動される。また、制御アーム26は、カム軸12に回転可能に取り付けられている。制御軸24と制御アーム26とは、双方にそれぞれ設けられたギヤ(図示省略)を介して組み合わされており、制御軸24の回転に同期して制御アーム26を回転させられるように構成されている。
中間アーム28は、制御アーム26の揺動軸30に回動可能に取り付けられている。中間アーム28には、メインカム14と当接するカムローラ32と、このカムローラ32と同じローラ軸34上に配置されたスライドローラ36(図1では、カムローラ32と同軸上であって、カムローラ32の奥側に隠れている)とが組み込まれている。スライドローラ36は、揺動カムアーム22に設けられたスライド面38と当接するように構成されている。
揺動カムアーム22は、制御軸24に回転可能に保持されている。上記のスライド面38は、揺動カムアーム22上に、メインカム14と対向するように形成されている。スライド面38は、揺動カムアーム22がスライドローラ36と接するための面であり、そのスライドローラ36が揺動カムアーム22の先端側から制御軸24の軸中心側に向かって移動するほど、メインカム14との間隔が徐々に狭まるような曲面で形成されている。また、スライド面38の反対側には、ロッカーアーム16のロッカーローラ40と接する面として、揺動カム面42が形成されている。揺動カム面42は、揺動カムアーム22の揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面42aと、非作用面42aから離れた位置ほど制御軸24の軸中心からの距離が遠くなるように形成された作用面42bとで構成されている。
また、揺動カムアーム22には、第1ロストモーションスプリング44(第1ロストモーション手段)を掛けるためのバネ座46が設けられている。第1ロストモーションスプリング44は圧縮バネであり、内燃機関のシリンダヘッド48に他方の端部を固定されている。この第1ロストモーションスプリング44の付勢力は、スライド面38がスライドローラ36を付勢し、カムローラ32をメインカム14に押し当てる力として作用する。換言すると、この付勢力は、メインカム14と揺動カムアーム22との機械的接触を常に維持するための力として作用する。
制御アーム26の揺動軸30には、ねじりバネである第2ロストモーションスプリング50(第2ロストモーション手段)が組み付けられている。第2ロストモーションスプリング50の一端は、中間アーム28のローラ軸34に掛け留められており、その他端は、制御アーム26に固定されたピン52に掛け留められている。第2ロストモーションスプリング50の付勢力は、カムローラ32をメインカム14に押し当てる力として作用する。換言すると、この付勢力は、メインカム14とカムローラ32との機械的接触を常に維持するための力として作用する。
ロッカーアーム16の一端には、バルブ18を支持するバルブシャフト54が当接している。バルブシャフト54は、一端がシリンダヘッド48に固定されたバルブスプリング56によって、閉弁方向に、すなわち、ロッカーアーム16を押し上げる方向に付勢されている。メインカム14の押圧力が可変機構20および揺動カムアーム22を介してロッカーアーム16に伝達され、バルブスプリング56のバネ力に抗しながらロッカーアーム16からバルブシャフト54にメインカム14の押圧力が伝達されることによって、バルブ18の開閉動作が実現される。また、ロッカーアーム16の他端は油圧ラッシュアジャスタ58によって回動可能に支持されている。
以上のように構成された可変動弁装置10を備える内燃機関は、可変動弁装置10を制御するためのECU60(Electronic Control Unit)を備えている。ECU60は、図示しない複数のセンサによって検出される内燃機関の各種データに基づいて、内燃機関を運転するための各種機器を総合的に制御するものである。ECU60には、制御軸24を駆動するためのアクチュエータが接続されている。このため、ECU60は、そのアクチュエータを制御することによって制御軸24の回転角度を任意の角度に調整することで、可変機構20の回転角度を任意に変更させることができる。また、ECU60には、エンジン回転数を取得するためのクランク角センサ62が接続されている。尚、ECU60には、例示したクランク角センサ62以外にも複数のセンサや機器が接続されているが、ここではその説明を省略する。
[可変動弁装置の動作]
次に、図2を参照して、図1に示す可変動弁装置10の動作を説明する。
図2(A)および図2(B)は、可変動弁装置10がバルブ18に対して小さなリフトを与えるように動作している様子を示しており、図2(A)は閉弁状態を、図2(B)はバルブ18が最大リフト位置に達した状態を、それぞれ示している。また、図2(C)および図2(D)は、可変動弁装置10がバルブ18に対して大きなリフトを与えるように動作している様子を示しており、図2(C)は閉弁状態を、図2(D)はバルブ18が最大リフト位置に達した状態を、それぞれ示している。尚、図2においては、制御アーム26の図示を省略している。
(1)可変動弁装置のリフト動作
先ず、図2(A)および図2(B)を参照して、可変動弁装置10のリフト動作について説明する。
図2(A)に示す状態は、メインカム14の押圧力がカムローラ32に作用しておらず、揺動カム面42とロッカーローラ40との接触点X(以下、「ローラ接触点X」と称する)が、第1ロストモーションスプリング44の付勢力によって、非作用面42a上の所定位置に維持されている状態を示している。
上記の状態において、メインカム14の回転に伴ってカムノーズがカムローラ32を押圧すると、その力はスライドローラ36を介してスライド面38に伝達され、揺動カムアーム22には、制御軸24を中心とする図2(B)における右回り方向の回転が生ずる。この際、ローラ接触点Xが非作用面42aである間は、ロッカーアーム16にメインカム14の押圧力が伝達されることはないが、揺動カムアーム22が更に回転することにより、ローラ接触点Xが作用面42bにまでおよぶと、ロッカーアーム16が押し下げられ、バルブ18に開弁方向の動きが与えられる。
図2(B)に示す状態は、カムノーズの頂部がカムローラ32を押圧した状態を示している。この状態において揺動カムアーム22の回転量が最大となる。第1ロストモーションスプリング44に作用するバネ荷重は、図2(A)に示す閉弁状態を基準とした場合のバネ荷重に対して、たわみ量Laに相当する分だけ増大する。ロッカーアーム16の押し下げ量、すなわち、バルブスプリング56のたわみ量Vaも、この状態において最大となり、ローラ接触点Xは、揺動カムアーム22の最も先端側に位置することとなる。一方、与えられたメインカム14の押圧力が減少に転ずると、揺動カムアーム22がそれまでとは反対方向に回転することとなる。その結果、ローラ接触点Xが作用面42bから非作用面42aに向かって変化することで、ロッカーアーム16が押し戻され、その後、バルブ18が閉弁することとなる。可変動弁装置10は、以上説明したように、メインカム14の押圧力を、カムローラ32およびスライドローラ36を介してスライド面38に伝達することでバルブ18に対してリフトを与えることができる。
(2)可変動弁装置の作用角およびリフト量の変更動作
図2(C)に示す大リフト状態は、図2(A)に示す小リフト状態に比して、制御軸24を図2(C)における左回り方向により大きく回転させた状態を示している。制御軸24を図2(A)における左回り方向に回転させると、制御アーム26は、ギヤを介して、図2(C)における右回り方向に回転し、揺動軸30に支持されたスライドローラ36は、スライド面38およびメインカム14との接触を維持しながら制御軸24に近づく方向に、言い換えれば、カム軸12の回転方向に移動する。すなわち、制御軸24の回転に伴い、制御アーム26が回転することで、スライドローラ36の揺動基準位置Y0が変化する。ここでは、スライドローラ36とスライド面38との接触点を「ローラ接触点Y」と称し、閉弁状態における当該ローラ接触点Yを、特に「揺動基準位置Y0」と定義する。
揺動カムアーム22は、常に第1ロストモーションスプリング44によりスライドローラ36に向けて付勢されているため、ローラ接触点Yが変化すれば、その変化に追従して自己の回転位置も変化させられる。図2(C)に示す閉弁状態においては、スライドローラ36が制御軸24に近づく方向に移動することで、揺動カムアーム22は、ローラ接触点Xの初期位置(メインカム14の押圧力が作用していない状態におけるローラ接触点X)がより作用面42bに近づく方向に回転する。そして、その揺動カムアーム22の回転位置の変化に伴って、第1ロストモーションスプリング44には、図2(A)に示す閉弁状態を基準とするたわみ量Lbに相当するたわみが生ずる。また、ローラ接触点Xの初期位置が作用面42bにより近い位置にあると、揺動カムアーム22の揺動角度幅が同一であるとした場合に、ローラ接触点Xの最終位置(カムノーズの頂部がカムローラ32と接触した状態におけるローラ接触点X)が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することとなる。
更に、スライドローラ36が制御軸24に近づく方向に移動すると、揺動カムアーム22の揺動中心(制御軸24の軸中心)からローラ接触点Yまでの距離が短くなる。メインカム14の押圧力によってスライドローラ36を介してスライド面38に変位が与えられた場合に、上記の距離が短くなるほど、揺動カムアーム22の揺動角度幅が大きくなる。揺動カムアーム22の揺動角度幅が大きくなると、ローラ接触点Xの初期位置が同一であるとした場合に、ローラ接触点Xの最終位置が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することとなる。すなわち、図2(D)に示すカムノーズの頂部がカムローラ32を押圧した状態において、揺動カムアーム22の回転量が最大となり、第1ロストモーションスプリング44には、図2(A)に示す閉弁状態を基準とするたわみ量Lcに相当するたわみが生ずる。
既述した通り、本実施形態の揺動カムアーム22の作用面42bは、非作用面42aから離れた位置ほど制御軸24の軸中心からの距離が遠くなるように形成されている。このため、ローラ接触点Xの最終位置が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することで、図2(D)に示すように、バルブ18の押し下げ量、およびその押し下げ期間、すなわち、バルブ18のリフト量および作用角が増大する。この図2(D)に示す状態におけるバルブスプリング56のたわみ量をVcとする。以上のように、本実施形態の可変動弁装置10によれば、制御軸24を回転駆動してスライドローラ36の揺動基準位置Y0を変更することで、揺動カムアーム22の揺動範囲が変更され、その結果として、バルブ18の作用角およびリフト量を連続的に変更することができる。
[第1ロストモーションスプリング44のバネ特性]
図3は、図1に示す第1ロストモーションスプリング44のバネ特性を説明するための図であり、より具体的には、第1ロストモーションスプリング44が発するバネ力(バネ荷重)とたわみ量との関係を示している。そのバネ力は、図3中に実線で示す特性のように、たわみ量に比例する。従って、第1ロストモーションスプリング44に作用する最大バネ荷重(最大リフト位置におけるバネ荷重)は、小リフト側に制御されるほど、たわみ量が小さくなることで小さくなる。また、小リフト制御時における第1ロストモーションスプリング44に作用する初期バネ荷重(閉弁状態におけるバネ荷重)は、大リフト制御時に比してたわみ量Lb分だけ小さくなるという特性を有している。このため、小リフト制御時における最大バネ荷重は、このたわみ量Lb分に相当する分だけ小さくなってしまう。
上述した第1ロストモーションスプリング44の特性によれば、小リフト制御時に第1ロストモーションスプリング44が発生させるバネ力が不足する傾向となる。上記図3に示すバネ特性の仕様は、通常、大リフト制御時の最大バネ荷重(たわみ量Lcに対応する荷重)で決定されるものであり、その結果として、小リフト制御時の最大バネ荷重(たわみ量Laに対応する荷重)が定まる。このため、小リフト制御時の最大バネ荷重を大きくする必要が生じた場合に、必要とされる小リフト制御時の最大バネ荷重を確保したバネ特性(図3中に破線で示す特性)に設定すると、大きくする必要のないリフト開始時のバネ荷重(たわみ量ゼロおよびLbにそれぞれ対応する荷重)も増大してしまい、無駄なフリクションロスが発生してしまう。従って、フリクションロスを低減させるという観点からは、小リフト制御時の最大バネ荷重ができるだけ小さくなるようなバネ特性の設定が望ましい。
[第1ロストモーションスプリング44のみで機構の慣性力に対処する場合の問題点]
図4は、以下の図5および図6で用いられる符号を説明するための図である。図4に示すように、第1ロストモーションスプリング44とそのバネ座46との接点を、「接点Z」と定義する。当該接点Zに作用する力を、「ロストモーション力(必要バネ力)F1」と定義する。中間アーム28の慣性力が既述したローラ接触点Yに作用した際の力を、「中間アーム慣性力F2」と定義する。そして、揺動カムアーム22の回転中心Pと接点Zとの距離を、「接点距離L1」と定義し、当該回転中心Pとローラ接触点Yとの距離を、「接点距離L2」と定義する。
図5は、第1ロストモーションスプリング44のみで機構の慣性力に対処する場合における必要バネ力F1とバルブ18のリフト量との関係を示す図である。より具体的には、図5(A)は、揺動カムアーム22の動作による影響のみを考慮した場合の第1ロストモーションスプリング44の必要バネ力F1aを、図5(B)は、中間アーム28の動作による影響のみを考慮した場合の第1ロストモーションスプリング44の必要バネ力F1bを、図5(C)は、図5(A)および図5(B)のそれぞれの必要バネ力を合算した値F1を、それぞれ示している。
(揺動カムアーム22の動作による影響分)
上記接点Zには、揺動カムアーム22の慣性質量に対応する慣性力F1aが作用する。上述した可変動弁装置10の構成では、バルブ18の開弁特性が大リフト側に制御されていくほど、スライドローラ36の揺動基準位置Y0が揺動カムアーム22の回転中心Pに近づいていくが、メインカム14の押圧力を受けたスライドローラ36の揺動量はリフト量に関わらず一定である。その結果、大リフト側に制御されるほど、揺動カムアーム22のリフト動作時の角速度が大きくなる。このため、大リフト制御時の慣性力F1''aは、小リフト制御時の慣性力F1'aに比して大きくなる。従って、揺動カムアーム22の動作による影響のみを考慮した場合の必要バネ力(慣性力)F1aは、図5(A)に示すように、リフト量が大きく制御されるほど大きくなる。
(中間アーム28の動作による影響分)
次に、中間アーム28の動作が第1ロストモーションスプリング44の必要バネ力F1に与える影響について説明する。中間アーム28はリフト量の大小に関係なく常に一定のメインカム14の押圧力を受けて揺動しているため、中間アーム28の揺動角は一定である。従って、中間アーム28の慣性力F2自体はリフト量の大小に関係なく一定である。ところが、上述した可変動弁装置10の構成では、バルブ18の開弁特性が小リフト側に制御されていくほど、スライドローラ36の揺動基準位置Y0が揺動カムアーム22の回転中心Pから離れていく。
その結果、図4に示す接点距離L2は、小リフト制御時の方が長くなる。従って、中間アーム慣性力F2に関するP点回りのモーメントは小リフト制御時の方が大きくなる。つまり、中間アーム慣性力F2に基づいて接点Zに作用する力であるロストモーション力F1bは、小リフト制御時の力F1'bの方が大リフト制御時の力F1''bよりも大きくなる。従って、中間アーム28の動作による影響のみを考慮した場合の必要バネ力F1bは、図5(B)に示すように、リフト量が小さく制御されるほど大きくなる。
図5(C)に符号「A」を付して示す直線は、前記の揺動カムアーム22に対応する必要バネ力F1aおよび中間アーム28に対応する必要バネ力F1bを合計した必要バネ力F1を表している。上述したように、必要バネ力F1bはリフト量が小さいほど大きくなるため、合計の必要バネ力F1は、必要バネ力F1a単独の場合に比して、リフト量の大小に伴うバネ力の大きさの差が小さいものとなる。すなわち、小リフト制御時においても、ある程度の大きなバネ力が必要となる。一方、図3を参照して既述したように、第1ロストモーションスプリング44が実際に発生させるバネ力は、リフト量が大きくなるほど大きくなるという特性を有している。以上のように、合計の必要バネ力F1の特性は、第1ロストモーションスプリング44が実際に発生させるバネ力の特性と相反するものとなり、リフト量の制御領域によっては無駄なバネ力が発生してしまう。具体的には、可変動弁装置10の構成の場合には、小リフト制御側で無駄なバネ力が生じてしまう。
[本実施形態の可変動弁装置の利点]
図6は、本実施形態の可変動弁装置10の構成による利点を説明するための図である。図1を参照して説明したように、可変動弁装置10は、揺動カムアーム22を中間アーム28を介してメインカム14に向けて付勢する第1ロストモーションスプリング44に加え、中間アーム28をメインカム14に向けて付勢する第2ロストモーションスプリング50を備えている。このような構成によれば、メインカム14の押圧力を受けて揺動する中間アーム28の慣性力F2を第2ロストモーションスプリング50によって受け止めさせることができる。このため、中間アーム慣性力F2に基づき接点Zに作用する力であるロストモーション力F1bを、図6(A)に示すように、リフト量の可変範囲で変化せずに一定とすることができる。
従って、本実施形態の構成によれば、合計の必要バネ力F1は、図6(B)中に符号「B」を付して示す直線のようになり、第1ロストモーションスプリング44のみを備えた場合(図6(B)中に符号「A」を付して示す直線)に比して、小リフト側に制御されるに従って軽減される。図6(B)中にハッチングを付した範囲は、そのようなバネ力が軽減される範囲を示している。このため、必要バネ力F1は、より明確に、リフト量の増大に対して大きくなるという特性となり、第1ロストモーションスプリング44が実際に発生させるバネ力の特性(図3参照)に近い特性となる。これにより、無駄なバネ力の発生が低減され、低フリクションロス化を実現することができる。
また、本実施形態の構成によれば、揺動カムアーム22の慣性力F1aに対応する必要バネ力分のみを第1ロストモーションスプリング44に担わせることとし、中間アーム28の慣性力F2に対応する必要バネ力分のみを第2ロストモーションスプリング50に担わせることとすることにより、それぞれのロストモーションスプリングのバネ力を最適化させることができる。このため、それぞれのスプリングのバネ形式の自由度が向上する。これにより、ロストモーションスプリングの小型化が可能となり、内燃機関への可変動弁装置10の搭載性が向上する。
ところで、第1ロストモーションスプリング44の必要バネ力F1は、エンジン回転数Nを考慮して定められるものであるが、本実施形態の構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。図7は、そのような可変動弁装置10による利点を説明するための図である。揺動カムアーム22や中間アーム28等の運動部材の慣性力は、エンジン回転数Nの2乗に比例して大きくなる。そこで、第1ロストモーションスプリング44の必要バネ力F1は、通常、規定の最高エンジン回転数における慣性力に所定の余裕荷重を考慮した値として設定される。
図7において、符号「A」および「B」を付したそれぞれの直線は、図6と同様の直線を示している。ここで、エンジン回転数Nの増減に伴い必要バネ力F1が必要バネ力差ΔF3だけ増減するものとする。第1ロストモーションスプリング44のみで付勢を行った場合、リフト量とエンジン回転数Nの変化に応じた必要バネ力F1の範囲は、図7中に示す4点abcdにより囲まれた範囲となる。一方、本実施形態の可変動弁装置10の構成によれば、その必要バネ力F1の範囲は、図7中に示す4点ebcaにより囲まれた範囲となる。以上より、本実施形態の構成によれば、小リフト制御側で必要バネ力F1を小さくすることができ(図7中にハッチングを付して示す範囲)、当該小リフト制御側でフリクションロスを低減することができる。
尚、上述した実施の形態1においては、図示しないアクチュエータにより駆動される制御軸24、および制御アーム26が前記第1の発明における「制御手段」に、中間アーム28が前記第1の発明における「少なくとも1つの運動部材」に、揺動カムアーム22が前記第1の発明における「他の少なくとも1つの運動部材」に、それぞれ相当している。
実施の形態2.
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のシステムは、上述した実施の形態1の可変動弁装置10を備えた内燃機関において、ECU60に図9に示すルーチンの処理を実行させることにより実現されるものである。
図8は、本実施形態におけるロストモーションスプリングの必要バネ荷重の設定方法を説明するための図である。図8に示すように、本実施形態では、小リフト制御時における最高エンジン回転数N1maxを、大リフト制御時における最高エンジン回転数N2maxに比して低く設定することとしている。このような設定によれば、小リフト制御時の最高エンジン回転数に制限を設けることで、小リフト制御時に必要となる最大バネ荷重が小さくなる。また、上記設定によれば、大リフト制御時におけるエンジン回転数の使用範囲に対応する必要バネ力差ΔF3(図3参照)に比して、小リフト制御時における必要バネ力差ΔF4が小さくなる。
図9は、上記の機能を実現するために、内燃機関の運転中にECU60が実行するルーチンのフローチャートである。尚、本実施形態のシステムは、自動変速機(AT)を備える車両に適用されているものとし、ここでは、ECU60は、そのような自動変速機をも統合的に制御しているものとする。図9に示すルーチンでは、先ず、現在のエンジン回転数Nがクランク角センサ62の出力に基づいて取得される(ステップ100)。次いで、現在の実リフト量が取得される(ステップ102)。実リフト量は、例えば、ECU60に接続された角度センサから得られる制御軸24の回転角度に基づいて算出することができる。
次に、現在のエンジン回転数Nが現在の実リフト量に対応する規定の最高エンジン回転数Nmax以上か否かが判別される(ステップ104)。上記の如く、可変動弁装置10では、バルブ18のリフト量に応じて、第1ロストモーションスプリング44の最大バネ荷重が変化する。ECU60は、リフト量と最高エンジン回転数Nmaxとの関係を定めたマップを記憶している。そのマップでは、リフト量が小さいときほど最高エンジン回転数が低くなるように設定されている。このようなマップの設定によれば、最大バネ荷重を考慮して、小リフト制御時のエンジン回転数Nを制限することができる。本ステップ104では、そのようなマップによって算出される最高エンジン回転数と現在のエンジン回転数Nとが比較される。尚、上記のようなマップに限らず、実リフト量が所定値以下である場合にのみ、最高エンジン回転数を制限するようにしてもよい。
上記ステップ104において、現在のエンジン回転数Nが規定の最高エンジン回転数Nmaxより低いと判定された場合には、以後、速やかに今回の処理サイクルが終了され、一方、現在のエンジン回転数Nが規定の最高エンジン回転数Nmax以上であると判定された場合には、次いで、自動変速機のギヤが1段高いギヤに変速させられる(ステップ106)。
以上説明した通り、図9に示すルーチンによれば、リフト量が小さくなる領域ほど、エンジン回転数の上限が低くなるように制御される。すなわち、上記ルーチンの処理によれば、小リフト制御時の最大バネ荷重を考慮して、内燃機関の運転条件が制限される。
図10は、本実施形態のシステムの制御による利点を説明するための図である。リフト量の大小によって使用する最高エンジン回転数Nmaxに差を設けない場合、すなわち、全リフト領域で必要バネ力差がΔF3である場合には、リフト量とエンジン回転数の変化に応じた必要バネ力の範囲は、図10中に示す4点fghiにより囲まれた範囲となる。これに対し、上述した図9に示すルーチンの処理によれば、小リフト制御時における必要バネ力差がΔF3からΔF4となるように、ロストモーションスプリングの最大バネ荷重が制限される。このため、必要バネ力の範囲は、図10中に示す4点fghjにより囲まれた範囲となる。このように、本実施形態の制御によれば、上述した実施の形態1による2つのロストモーションスプリングを備えた構成による効果に加え、更に、小リフト制御時におけるフリクションロスの低減を実現することができる(図10中にハッチングを付した範囲)。
ところで、上述した実施の形態2においては、現在のエンジン回転数Nが規定の最高エンジン回転数以上である場合に自動変速機を増速させることにより、エンジン回転数Nを制限することとしているが、小リフト制御時における最大バネ荷重を考慮して、内燃機関の運転条件を制限する手法はこれに限定されるものではない。例えば、エンジン回転数に制限を与えるリフト領域では、アクセル要求があった場合にエンジン回転数Nが規定値を超えないように燃料噴射量を制限する手法であってもよく、或いは、そのような制限要求があった場合に電子制御式スロットルバルブを備える場合には吸入空気量を制限する手法であってもよい。更には、そのような制限要求があった場合に、制御軸24を駆動してバルブ18のリフト量をより大リフト側に制御する手法であってもよい。
尚、上述した実施の形態2においては、ECU60が、上記ステップ102の処理を実行することにより前記第3の発明における「リフト量情報取得手段」が、上記ステップ100、104、および106の処理を実行することにより前記第3の発明における「運転条件制限手段」が、それぞれ実現されている。
本発明の実施の形態1の可変動弁装置の全体構成を説明するための断面図である。 図1に示す可変動弁装置が動作を行う様子を示す図である。 図1に示す第1ロストモーションスプリングのバネ特性を説明するための図である。 図5および図6で用いられる符号を説明するための図である。 第1ロストモーションスプリングのみで機構の慣性力に対処する場合における必要バネ力F1とバルブのリフト量との関係を示す図である。 本発明の実施の形態1の可変動弁装置の構成による利点を説明するための図である。 本発明の実施の形態1の可変動弁装置の構成による利点を説明するための図である。 本発明の実施の形態2におけるロストモーションスプリングの必要バネ荷重の設定方法を説明するための図である。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。 本発明の実施の形態2のシステムの制御による利点を説明するための図である。
符号の説明
10 可変動弁装置
14 メインカム
18 バルブ
20 可変機構
22 揺動カムアーム
24 制御軸
26 制御アーム
28 中間アーム
32 カムローラ
36 スライドローラ
44 第1ロストモーションスプリング
50 第2ロストモーションスプリング
60 ECU(Electronic Control Unit)

Claims (3)

  1. 互いに関連して揺動する複数の運動部材をカムとバルブとの間に介在させ、アクチュエータにより駆動される制御手段を備え、前記制御手段によって少なくとも1つの前記運動部材の揺動基準位置を変化させることにより、他の少なくとも1つの前記運動部材の揺動範囲が変更され、前記バルブの開弁特性が機械的に変更可能となる可変動弁装置であって、
    個々の前記運動部材毎に、当該運動部材をそれぞれ前記カムに向けて付勢するロストモーション手段を備えることを特徴とする可変動弁装置。
  2. 前記複数の運動部材は、
    前記カムの回転と同期して揺動することにより当該カムの押圧力を前記バルブに伝達する揺動部材と、
    前記揺動部材と前記カムとの間に配置され、前記制御手段によって前記揺動部材上における揺動基準位置が変更されることで前記揺動部材の揺動範囲を変化させる中間部材とを備え、
    前記ロストモーション手段は、
    前記揺動部材を前記カムに向けて付勢する第1ロストモーション手段と、
    前記中間部材を前記カムに向けて付勢する第2ロストモーション手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の可変動弁装置。
  3. 前記バルブの実リフト量情報を取得するリフト量情報取得手段と、
    前記実リフト量情報に応じて内燃機関の運転条件を制限する運転条件制限手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1または2記載の可変動弁装置を備えた内燃機関の制御装置。
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