JP2006299333A - 極細管内壁面のコーティング方法およびコーティング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 真空容器1内に、内壁面にコーティングがなされる極細管4を配置し、この極細管1内に、同軸的にスパッタターゲット5を配置した状態で、スパッタターゲット5側を負側とする電圧を印加し、極細管4の内壁面とスパッタターゲットとの間のギャップ内に、プラズマソースガスを導入するとともに、マイクロ波導入と磁場印加により、2nd Harmonic ECRによるプラズマ生成によるスパッタリングを行って、低電圧、低気圧で膜質に優れたコーティングを行う。
【選択図】 図1
Description
一方、この医療関係等に用いるチューブ、カテーテルにあっては、その内壁面に、化学的安定化変質防止、血液凝固防止、血液等の流通性向上等の目的をもって、Au、Ag等の金属、あるいはプラスティック等の各種材料を強固に、かつ均質、均一厚さに成膜することが望まれる。
しかしながら、その内径が数mmないしは1mm以下の極細管において、その内壁面に目的とする材料をコーティングするコーティング方法は、未だ確立されていない。
このために、細管に対する成膜は、ウェットコーティングによることが主流となっていた。しかしながら、この方法による場合、コーティング材の選定の自由度が小さく、また、この場合においても極細管への適用はできない。
これは、上述したECR法による場合、電子の軌跡、すなわち電子の閉じ込めを十分狭小にすることができないことから、狭隘な極細管の中心軸上に配置されたターゲットと極細管の内壁面との間の狭間隔(狭ギャップ)において、電子がプラズマソースガスの原子に衝突することによってプラズマ発生に寄与すべき電子が、空間の壁に衝突して消失してしまうこと、また強い電界による加速によってプラズマソースガスとの衝突確率が小さくなることにより、極細管内でのプラズマ生成ができなくなることに因る。
he(=ωce/νe)≦1 (1)
かつ、ωce/ω=0.5 (2)
ここで、heは、電子のホールパラメータ
ωceは、電子のサイクロトロン周波数
νeは、電子の平均衝突時間
ωは、マイクロ波周波数
の条件下でのプラズマ生成を行って、上記極細管の内壁面に上記スパッタターゲット材をスパッタリングして上記極細管内にコーティングを施すことを特徴とする。
なお、このスパッタリングは、前述した先に本発明者らが提案したECR、つまりωce/ω=1によるプラズマ生成に対して、上記(2)式のωce/ω=0.5という条件に設定されることから、2nd Harmonic (第2高調波)ECRによるプラズマ生成と呼称する。
この2nd Harmonic ECRによれば、低気圧、低電力でのプラズマ生成を行うことができること、また、電子の閉じ込めを良好に行うことができるものである。
また、本発明によるコーティング法は、上述した極細管内壁面へのコーティング方法にあって、上記プラズマガスソースとしてAr、Xe、Neのいずれかのガスを用いることを特徴とする。
he(=ωce/νe)≦1 (1)
かつ、ωce/ω=0.5 (2)
ここで、heは、電子のホールパラメータ、
ωceは、電子のサイクロトロン周波数
νeは、電子の平均衝突時間
ωは、マイクロ波周波数
の条件下でのプラズマ生成を行って、上記極細管の内壁面に上記スパッタリングターゲット材をスパッタリングして上記極細管内にコーティングを施すことを特徴とする。
また、本発明は、上述した極細管内壁面のコーティング装置にあって、上記極細管と上記スパッタターゲットとの間に、所要の電圧を印加する上記電源部が、上記スパッタターゲット側に負電圧パルスバイアスを印加する電源部であることを特徴とする。
したがって、極細管内のせまい空間中で、良好にプラズマ生成がなされ、極細管、例えば数mmないしは1mm以下に及ぶ内径を有するカテーテル等の極細管の内壁面に、良質のコーティングをスパッタリングによって形成することができるものである。
また、低電力化がなされることから、消費電力の低減化を図ることができるものである。
これは、ターゲット側に負の直流電圧を印加しつづける場合、イオンシースが拡大していき、これによってプラズマが消滅し、ターゲットへのイオン電流密度が低下し、スパッタリングが低下ないしは停止する現象を、負のパルスバイアス電圧を印加する方法をとることによって負の電圧のオフ時においてイオンシースの縮小がなされ、これによりプラズマの回復を図ることができるようにするものである。
また、電子の閉じ込めを良好に行うことができることから、極細管内でのプラズマ生成が良好になされ、スパッタターゲットへのイオン電流の増大化、これに伴う極細管内壁面のスパッタリング成膜を良好に行うことができる。
図1AおよびBは、本発明によるコーティング方法およびコーティング装置の基本的動作の説明に供するコーティング装置の要部の縦断面図およびそのB−B線上の断面図である。
外側電極2内には、目的とする内壁面にコーティングを行う例えばプラスチック、セラミック等の絶縁体あるいは金属管による極細管4が挿入配置される。
中心電極3には、スパッタターゲット5が配置される。このスパッタターゲット5が例えばAu,Ag等の金属などの導電性材である場合には、図1で示すように、このスパッタターゲット5を中心電極3の先端に電気的機械的に結合して配置するか、あるいはこのスパッタターゲット5自体によって中心電極を構成する。
いずれの場合においても、極細管4の全長に渡ってスパッタターゲット5が対向するように配置する。
また、中心電極3あるいはスパッタターゲット5に、例えば2.45GHzのマイクロ波を同軸モード(TEMモード)で供給し、同時に所要の磁場印加を行う。
この場合、νeの平均衝突時間は、磁束密度Bと気圧Pとの比B/Pに比例することからこれら、磁束密度Bと気圧Pの選定によってνeの選定を行うことができる。
このようにして、極細管4の内壁面に目的とするターゲット材をコーティングする。
このコーティング装置は、例えば円筒状の真空容器1を有し、真空容器1内には、目的とする内壁面にコーティングを行う極細管4を配置する極細管の配置部と、その中心軸上に棒状もしくは線状のスパッタターゲット5を配置するターゲットの配置部が設けられる。
真空容器1には、その排気を行う例えば拡散ポンプ9Dとロータリーポンプ9Rとによる排気手段9が結合される。
更に、真空容器1に、上述したプラズマソースガスを供給するプラズマソースガス供給源10がマスフローコントローラ11を介して連結される。
また、磁場発生装置12の電磁コイルC(C1,C2,C3・・・Cn)の励磁電流源13が設けられる。
この励磁電流源13は、各電磁コイルC1,C2,C3・・・Cnに、その配列の例えば一端から、他端へと通電もしくは通電量を切り換えて磁場の主たる印加位置を、真空容器21の軸方向に沿って移動させるようになされる。
また、外側電極2および中心電極3間、すなわち極細管4とスパッタターゲット5との間に、上述した所要の電圧を印加する電源部6例えば上述したパルスバイアス供給源が設けられる。
図3は、プラズマ発生の説明に供する電極間の間隔、すなわちギャップ長とその配置空間のプラズマソースガス気圧との関係を示す図である。通常のプラズマが発生しやすい領域は、パッシェンの法則による、P(気圧)×d(ギャップ長)がPd=1からPd=10間の領域である。
そして、PDP(Plasma Display Panel)、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)、プラズマエッチングは、通常、図3中に図示した領域によるプラズマが用いられている。
本発明方法によってプラズマソースガスとして、Xeを用いたマイクプラズマ生成は、ギャップ長が500μm、気圧が10−2Torrとなり、P・d積に換算するとP・d=5×10−4、したがって、図3に点aでプロットして示した通常のプラズマ発生による例えばPDPに比して、4桁低い気圧でプラズマ生成がなされるものである。
図4AおよびBは2nd Harmonic ECR(ωce/ω=0.5)と、ECR(ωce/ω=1)とによる場合の電子の軌跡を示す図であり、図4AとBとを比較して明らかなように、2nd Harmonic ECRによるときは、電子の閉じ込めが強くなされているものであり、これによって、狭ギャップにおいて有効に電子がプラズマソースガスの原子と衝突してイオン化することができることがわかる。
これによっても明らかなように、2nd Harmonic ECR(ωce/ω=0.5)において、低電界で共鳴的に強い電子の閉じ込めを生じることがわかる。
Arを用いた場合、電極2および3間の印加電圧すなわちターゲットバイアス電圧=45.9Vにおいて、最小ギャップ長dmin=486μmとなった。
Xeを用いた場合、同様のバイアスVb=35.2Vにおいて、最小ギャップ長dmin=425μmとなった。すなわち、Xeガスによることによって、プラズマ生成が可能なギャップ長の狭小化を図ることができる。
磁場発生装置12は、図2におけるように、その同軸配置による外側電極および中心電極と、同軸心上に、電磁コイルが配置された構成とした。
そして、2.45GHzのマイクロ波(TEM)をパワー10Wで供給した。そして、被コーティング管としてのセラミックチューブを外側電極内に挿入配置した。
また、図10は、プラズマガスとしてXeを用いた場合の、ギャップ長500μmにおけるプラズマ発生領域を示すブレークダウン磁界と、最大捕捉磁界の気圧との関係の測定結果を示すものであり、気圧0.01Torrでプラズマが生成される。
図9および図10のそれぞれプロット点による曲線91および92間、101および102間において、プラズマ発生が生じることになる。
すなわち図14に示すように、aで示すtoffにおけるイオンシースが消滅している状態から、負のパルスの立ち上がり区間triseで bを経て負パルスバイアスの印加区間tonの状態とする。このときc〜dの時点tiからtchildでチャイルド則によるイオンシースが発達し、プラズマを抑圧してくる。そして、負のパルスのオフがなされると、ターゲットへの印加電圧が区間tfallで低下し、イオンシースが消滅してきてプラズマの抑圧が緩和し、イオンターゲット電流が生じ、スパッタリング可能な状態を経て、バイアスがオフのtoffとする。そして、この動作が繰り返される。
つまり、tonによってプラズマ生成を行うものであるが、これと同時にイオンシースがチャイルド則によって生じてくることによるプラズマの消滅を回避することができる。
そして、この場合のtriseおよびtfallの傾きは、図2で示した電源部6と各電極間に挿入された抵抗R1およびR2の抵抗値の選定によって任意に選定できるものである。
また、図16は、ギャップ長が3.5mmのときのターゲットパルスバイアス電圧Vbを、−500V、300V、−100Vとしたときの、イオン電流密度を曲線16a、16b、16cで示したものである。
これによってわかるように、印加電圧の増加に伴って、イオン電流密度が減少し、プラズマ密度の復元によってパルス立下り時にイオン電流が増加することから、スパッタリングがなされるものである。
このようにして、イオンシースによるスパッタリングの阻害を回避することができ、有効にスパッタリングを行うことができ、極細管4内の内壁に成膜がなされる。
投入マイクロ波パワー 30W
動作気圧 40mTorr
使用プラズマソースガス Ar
印加磁場 437gauss
ターゲット材料 Ag
極細管材料 パイレックスガラス
印加電圧 −300V
パルス幅 5μs
堆積速度(パルス周波数2kHz) 8.33Å/s
堆積速度(パルス周波数4kHz) 16.66Å/s
が得られた。
そして、このコーティングすなわちスパッタリングにおいて、ターゲットに負の電圧パルスによるターゲットバイアス電圧を繰り返し印加する方法および装置とすることによって、イオンシースによってプラズマが消滅してスパッタリングを阻害することを有効に回避でき、優れた成膜を行うことができるものである。
Claims (6)
- 真空空間内に、極細管を配置し、
該極細管内に、該極細管の軸心に沿ってスパッタターゲットを配置した状態で、上記極細管と上記スパッタターゲットとの間に、上記スパッタターゲット側を負側とする電圧を印加し、上記極細管の内壁面と、上記スパッタターゲットとの間のギャップ内に、プラズマソースガスを導入するとともに、マイクロ波導入と磁場印加により、
he(=ωce/νe)≦1、
かつ、ωce/ω=0.5
ここで、heは、電子のホールパラメータ、
ωceは、電子のサイクロトロン周波数
νeは、電子の平均衝突時間
ωは、マイクロ波周波数
の条件下でのプラズマ生成を行って、上記極細管の内壁面に上記スパッタターゲット材をスパッタリングして上記極細管内壁にコーティングを施すことを特徴とする極細管内壁面のコーティング方法。 - 上記スパッタターゲット側に繰り返し負電圧パルスバイアスを印加することを特徴とする請求項1に記載の極細管内壁面へのコーティング方法。
- 上記プラズマガスソースとしてAr、Xe、Neのいずれかのガスを用いることを特徴とする請求項1に記載の極細管内壁面のコーティング方法。
- 真空容器と、
該真空容器の外周に配置された磁場発生装置と、
プラズマソースガス供給源と、
マイクロ波発生装置と、
上記真空容器の排気手段と、
上記真空容器内に、内壁面にコーティングを行う極細管を配置する極細管の配置部と、
上記極細管内に該極細管と同心的にスパッタターゲットを配置するスパッタターゲットの配置部と、
上記極細管と上記スパッタターゲットとの間に、所要の電圧を印加する電源部とを有し、
上記排気手段によって上記真空容器内を所要の気圧に排気し、
上記極細管の内壁面と、上記スパッタターゲットとの間のギャップ内に、上記プラズマソースガス供給源から、プラズマソースガスを導入するとともに、上記マイクロ波発生装置からマイクロ波導入と上記磁場発生装置によって磁場印加して、
he(=ωce/νe)≦1、
かつ、ωce/ω=0.5
ここで、heは、電子のホールパラメータ
ωceは、電子のサイクロトロン周波数
νeは、電子の平均衝突時間
ωは、マイクロ波周波数
の条件下でのプラズマ生成を行って、上記極細管の内壁面に上記スパッタリングターゲット材をスパッタリングして上記極細管内にコーティングを施すことを特徴とする極細管内壁面のコーティング装置。 - 上記磁場発生装置は、上記真空容器の外周に、上記極細管の軸心方向に沿って、複数の電磁コイルが配置されて成り、該複数の電磁コイルに対する通電もしくは通電量を切換えて主たる磁場印加位置を上記極細管の軸心方向に沿って移動するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の極細管内壁面のコーティング装置。
- 上記極細管と上記スパッタターゲットとの間に、所要の電圧を印加する上記電源部が、上記スパッタターゲット側に負電圧パルスバイアスを印加する電源部であることを特徴とする請求項4に記載の極細管内壁面のコーティング装置。
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