以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。図1は、本実施例に係るインクジェット記録装置におけるインク粒子への帯電信号のレベルを示す図であり、図2は、本実施例に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概観図である。
まず、本実施例の構成について図2を用いて説明する。1はインクジェット記録装置全体を制御する制御部となるMPU(マイクロプロセッシングユニット)、2はインクジェット記録装置内で一時的にデータを記憶しておくRAM(ランダムアクセスメモリー)、3はプログラムなどをあらかじめ記憶するROM(リードオンリーメモリー)、4は印字する内容等を表示する表示装置、5はパネルインターフェース、6は印字内容等を入力する入力手段であり、本実施例において装置使用者がインクジェット記録装置を操作又は制御するためのパネル、7は被印字物検出回路、8はインクジェット記憶装置の印字動作を制御する印字制御回路、9はインク粒子に帯電させるビデオデータを記憶しておくビデオRAM、10はビデオデータを帯電信号にする文字信号発生回路、11はインクを噴出するノズル、12はノズルより噴出したインクが粒子になりそのインク粒子に電荷を加える帯電電極、13は帯電したインク粒子を偏向する偏向電極、14は印字に使用しないインクを回収するガター、15はガターより回収されたインクを再びノズルへ供給するポンプ、16は被印字物を検出するセンサー、17は被印字物を搬送するコンベア、18は印字の対象となる被印字物、19はANDゲート、20は分周カウンター、21はデータ等を送るバスラインである。
装置使用者は印字情報等を入力部であるパネル6から入力し、この入力情報はRAM2等に一時的に記憶され、ROM3内に格納されたプログラムが実行されることによって印字パターンが生成される。ここで、生成された印字パターンに基づいて、帯電電極12が制御されるため、帯電電極12におけるインク粒子への帯電の有無及び帯電量によって偏向電極13における偏向の有無及び偏向量が異なり、コンベア17を搬送される被印字物18に対して文字が印字される。
この際、文字信号発生回路10から発生される文字信号は、分周カウンター20でクロック周波数を2分周、3分周、……となるように周波数を遅らせることによって、帯電電極12に送信される文字信号の周波数が1/2、1/3、……となり、このときは後述するようにインク粒子間の電気的影響を低減することが可能となる。
次に、インク粒子使用率の設定と印字の関係について説明する。パネル6より希望するインク粒子使用率の設定値を入力すると、MPU1は、ROM3に記憶されているプログラムにより、インク粒子へ帯電させるビデオデータを印字する総縦ドット数分作成し、バスライン21を介してビデオRAM9へ格納する。また、MPU1はRAM2に一時記憶されているインク粒子使用率の設定値をバスライン21を介して分周カウンター20へ送る。分周カウンター20はインク粒子使用率の設定値に従い分周波形を作成する。被印字物センサー16が被印字物18を検知すると、被印字物検知回路7を通じて、MPU1へ印字開始の指令が届く。MPU1はビデオRAM9に記憶しているビデオデータを、バスライン21を介して文字信号発生回路10へ送る。文字信号発生回路10は送られてきたビデオデータを帯電信号に変更する。
この帯電信号はANDゲート19で分周カウンター20から出力される分周波形により分周され、実際に帯電電極12において出力される帯電信号レベルが決定される。印字制御回路8はバスライン21を介してこの分周された帯電信号を帯電電極12へ送出するタイミングをコントロールする。ノズル11より噴出されたインクは帯電電極12内で粒子化し電荷を受け偏向電極13により偏向され、被印字物18へインク粒子が飛行、付着し印字される。その際、帯電量の大きいインク粒子は偏向量も大きく、本実施例では、帯電量の小さなインク粒子よりも上方に印字される。印字に使用されなかったインク、すなわち、帯電されなかったインク粒子はガター14より回収され、ポンプ15によって再びノズル11へ供給される。
次に、本実施例の印字方式を説明する上で、図1、図3、図4、図5、図6、図7、図8の見方について説明する。これらの図において、●は電荷を付与した荷電粒子を、△は文字情報のドットマトリクスを形成する上で必要としない無荷電粒子を、○は分周により印字に使用することのできない無荷電粒子を、□はROM3に格納されるプログラム等のソフトウェアにより意図的に挿入した無荷電粒子をそれぞれ示している。円で囲んだ数字はノズル11から噴出されるインク粒子の飛行順番を示す。グラフの縦軸は階段波形の帯電信号レベルを示し、また、黒で塗潰した縦棒は荷電粒子●の帯電レベルを示している。帯電信号レベルの高いインク粒子が上方の位置に印字される構成となっている。なお、これらの図においては、実際に帯電されない無荷電粒子△の帯電量を擬似的に斜線縦棒で示している。
つまり、●で示された各々の粒子はその帯電信号レベルに応じて偏向されて飛翔し、被印字物18上に印字され文字を形成し、印字に使用しない無荷電粒子○□△については、全て図1のガター14に回収される。
次に、図3及び図4を用いて、段間走査と順走査の一般的な相違について説明を加える。図3の(A)は5×5ドットマトリクスの2段印字を列毎に細分化した状態を示す。図3の(B)は図1の(A)の縦第5列目のドットマトリクスを抜粋し、順走査で印字したときの階段波形のイメージと縦1列のドットマトリクスを形成する様子を示す。図3の(C)は同様なドットマトリクスを段間走査で印字したときの階段波形のイメージと縦1列のドットマトリクスを形成する様子を示す。
このように、順走査を用いて多段印字を行うと、上段になるにつれ帯電信号レベルの大きい荷電粒子が隣合う為、クーロン反発により印字品質への影響も大きくなる。すなわち、インク粒子の帯電量が大きくなるにしたがって荷電粒子間に生じるクーロン反発力が大きくなるため、上段に印字される荷電インク粒子同士の間ではクーロン反発力が大きくなってしまい、飛翔軌跡に相互に影響を与え、印字位置がずれやすくなってしまう。このクーロン反発力は、インク粒子の距離が遠い程小さくなるため(距離の2乗に反比例するため)、隣り合う荷電粒子●の距離が遠くなる程印字品質が良くなる。
そこで、前掲の特許文献1のように順走査に無荷電粒子を挿入し印字品質の安定化を図る必要が生ずる。一方、下で説明するように、段間走査では順走査と比べ隣合う帯電粒子の帯電信号レベルが小さくなため、多段印字を行う場合は順走査よりも段間走査を用いた方が、印字品質の維持という面では有利であるといえる。
次に、段間走査について説明する。図4は図3の(A)の第5列を抜粋し、従来の段間走査で印字したときの階段波形のイメージと縦1列のドットマトリクスを形成する様子を示す。図4の(A)は生成されたインク粒子に同期した帯電信号を分周カウンター20で分周せず、全ての粒子を使用し縦1列のドットマトリクスを形成する様子を示すもので、図3(C)と同一の制御を行うものである。このように、段間走査を用いれば、隣り合って印字されるインク粒子間の距離が遠くなり、クーロン反発力の影響による印字品質の悪化を防ぐことができる。
このような段間走査を行っても印字品質が安定しない場合には、図4の(B)に示しように、生成されたインク粒子に同期した帯電信号を分周カウンター20で分周して周波数を倍化し、縦1列のドットマトリクスを形成することが可能である。しかし、分周せずに段間走査によって印字を行った場合には、1列の印字に際し、10個のインク粒子を飛翔させれば印字が完了するのに対し(図4(A))、分周させた場合には1列の印字に20個のインク粒子を飛翔させねばならず、印字速度の大幅低下を招いていた。
このように、従来の段間走査では、生成されたインク粒子に同期した帯電信号をn倍しか分周できず、荷電粒子間にある無荷電粒子の数は常に一定であった。図4の(A)は生成された全てのインク粒子を印字に用いたため印字速度は速いが、荷電粒子●の距離が狭く印字品質が悪い。また、図4の(B)は図4の(A)と比べ荷電粒子●間の距離が大きく印字品質は良いが、印字に使用できるインク粒子の数が1/2となるため印字速度が遅い。
以下、本発明の実施例における段間走査について説明する。図1の(A)は下段から上段の段間方向にのみ無荷電粒子を挿入しドットマトリクスを形成する様子を示したものであり、図1の(B)は任意の位置に任意の個数分の無荷電粒子を挿入しドットマトリクスを形成する様子を示したものである。すなわち、複数段の文字を印字する場合において、ノズル11から噴出されたインク粒子が順々に段を変えて飛翔させる帯電信号が生成され、この帯電信号に基づいて帯電電極12でインク粒子に電荷が付与されてこのインク粒子が偏向し、複数段の文字の印字がなされるようにMPU1によって制御され、MPU1は、印字されるドットに対応するインク粒子と印字されないドットに対応するインク粒子との総和よりも少ない数の印字に使用しない無荷電粒子が、段を変えながら偏向されるインク粒子の間を飛翔するように制御している。
図1(A)による段間走査について詳細に説明する。図1(A)は、下段に印字されるインク粒子を噴出後、無荷電粒子を噴出し、その後に、上段に印字されるインク粒子を噴出し、再び下段に印字されるインク粒子を噴出する制御を行うものである。すなわち、図中、丸文字の中に示された数字の順番にインク粒子を噴出し、上下段を併せて10のドットに印字を行うに際して、15個のインク粒子を噴出させている。
具体的には、丸文字内に「1」が記載されたインク粒子●(以下、丸文字内に記載された数字nを示すものとして、本明細書において(n)と表記する。)を所定の帯電信号レベルに帯電させてノズル11から噴出させ、無荷電のインク粒子□(2)を噴出し、その後、インク粒子△(3)を噴出させる。
なお、インク粒子△(3)は、本来、上段に印字されるインク粒子であるが、印字される文字のドットパターンによって印字されない場合があり(例えば、図3(A)の縦書きの「ON」の印字に際し、上段文字「O」における第5列目の第1行目及び第5行目等)、図1に示す例では無荷電となっている。図3(A)の上段文字「O」第4列目の場合には、インク粒子(3)に相当するインク粒子は荷電粒子●となり、(6)に相当するインク粒子が無荷電のインク粒子△となる。以下、これらのようなドットに対応づけられたインク粒子●及び△を合わせて、「印字可能インク粒子」と称する場合がある。
以下、印字される位置が上方へ推移していくにしたがって、帯電信号レベルが順次増大してゆきながら、これらの(1)〜(3)のインク粒子と同様に(4)から(15)に至るまで15個のインク粒子が噴出され、1列分となる10ドット分の印字がなされる。したがって、帯電信号レベルの高い荷電粒子(12)と(15)の間には、帯電量の小さい下段に印字されるインク粒子(14)だけではなく、無荷電のインク粒子(13)も挿入されるため、印字品質が向上し、また、無荷電粒子□の数が、ドットに対応付けられた印字可能インク粒子の総和よりも少ないために、印字時間も無荷電粒子を挿入しない場合の1.5倍に抑えられる。
なお、この例では、下段から上段の段間方向にのみ無荷電粒子□を挿入した例を示したが、これに限られるものではなく、他の例については後述する。
次に、図1(B)の段間走査について説明する。図1(B)は、任意の位置に任意の個数分の無荷電粒子を挿入しドットマトリクスを形成する例であり、一例として示した本図では、13個のインク粒子の噴出によって、1列分の印字を可能としている。図1(B)に示した例では、インク粒子相互間の電気的影響が生じやすいインク粒子●(9)及び●(13)の間に、優先的に無荷電粒子を挿入して印字品質の確保を図っている。また、挿入する無荷電粒子の個数も1つに限られず、この例のようにインク粒子□(10)及び□(11)の2つの無荷電インク粒子を挿入しても良い。
このように本実施例の段間走査によれば、各々の段間方向やインク粒子間に無荷電粒子の挿入が可能となる。また、挿入する無荷電粒子の数でクーロン反発影響の大きい粒子間の距離を広げ反発力を軽減することができる。
次に、図5及び図10を用いて任意のインク粒子間に無荷電粒子を挿入する段間走査方式の実施例について説明する。図5の(A)は図3の(A)の縦第5列目を抜粋し、縦1列のドットマトリクスを形成する階段波形のイメージを示す。
本実施例においては、図10のフローチャートのような無荷電粒子をインク粒子間に挿入可能とする処理を行うソフトウェアを備えており、そのソフトウェアのプログラムはROM3に書き込まれている。このソフトウェアには、無荷電粒子の挿入するインク粒子間と挿入個数の情報が予め盛り込まれている。
一例として、図5の(A)に記載する飛行粒子(5)と(6)の間に1つの無荷電粒子が挿入され、(8)と(9)の間に2つの無荷電粒子が挿入されるという情報が書き込まれているソフトウェアを使用した場合について説明する。本例の場合、図5の(A)に示す階段波形はソフトウェアの指示に従って、図5の(C)に示すようなイメージの階段波形が作成される。
この例の概要としては、まず階段波形の帯電信号は分周されないために、装置使用者によってパネル6から、インク粒子使用率が1/1と設定される。ただし、これに限られるものではなく、階段波形の帯電信号を分周しない機能をもソフトウェアに予め追加しておき、パネル6でのインク粒子使用率の設定作業を不要としてもよい。すなわち、ROM3に格納されたソフトウェアには、図5(A)に記載する飛行粒子(5)と(6)の間に1つの無荷電粒子、(8)と(9)の間に2つの無荷電粒子を挿入するプログラムが内蔵されており、装置操作者が文字情報を入力すると、ソフトウェアの処理によって、(5)と(6)の間に1つの無電荷粒子を、(8)と(9)の間に2つの無電荷粒子を挿入しながら印字を行うように設定される制御とすればよい。
次に図10を用いながら、本例の制御について説明する。図10は、本実施例のソフトウェアの中において、一列分の印字を行うにあたっての制御フローを示しているものである。
まず、印字する複数段の文字データ、印字段数、ドットマトリクス等が装置の使用者によって入力される。ROM3に書込んだソフトウェアの機能としては、まずパネル6で入力したドットマトリクスと印字段数により縦1列の縦ドット数を算出する。ドットカウンターを初期化し、印字する縦1列の文字情報も取得する。図3(A)の「ON」の印字を例に取ると、文字データは「ON」であり、この文字を印字するにあたって、装置使用者は、印字段数を入力する(STEP1)。この場合、「O」と「N」の上下2段の印字を行うため、装置使用者によって印字段数として「2段」が入力される。また、文字サイズ情報として、ドットマトリクスのサイズが入力される(STEP2)。本例では、5×5のドットマトリクスであるため、「5×5」と入力される。なお、この文字サイズが入力されることによって、一列に印字される縦ドットの数も同時に入力されており、この例では、縦ドット数は「5」となる。
装置操作者によって、これらの情報がパネル6から入力されると、一列で印字される印字ドット数が算出され(STEP3)、この例では、上下2段が縦にそれぞれ5ドットで印字されることから、印字ドット数DPは10である。ここでドット数カウンタを初期化し(STEP4)、ドットパターンを作成する。なお、ドット数カウンタとは、印字される各ドットに対応付けられる番号であり、図5(A)のように、無荷電粒子を挿入しない場合には図中の丸数字の番号と対応する。STEP4でドット数カウンタが初期化されると、ドット数DNは“1”となり、以下、ドット数DN“1”のインク粒子に関する情報が設定される。
また、縦1列の文字データを取得し(STEP5)、この文字データどおりに印字されるようにインク粒子に関する情報が設定される。この文字データの取得は、上記の各ステップ(STEP1〜STEP4)の前や同時に行ってもよい。
次に、縦1列の最下位に位置する粒子(1)のドット数DN“1”とSTEP3で算出された印字ドット数DPと比較する(STEP6)。ここでは、ドット数DN“1”に対して、印字ドット数DPが10であることから、DN≦DPとなりSTEP7へと進む。
STEP7では、文字情報ドットマトリクスを形成する上で、このドット数のインク粒子が印字に必要とされるか否かを判定する。ドット数“1”のインク粒子の例では、印字に使用されるか否かを文字データを参照して判断される。必要とされる粒子●である場合は偏向位置に応じて荷電量を算出するためのステップ(STEP8)へと進み、また必要とされない粒子△である場合はこのインク粒子を無荷電粒子と見なして無荷電粒子設定がなされる(STEP8’)。これらの情報は、バスライン21を介してビデオRAM9に書き込まれる。本例では、文字データ「ON」の最左列の最下位の位置は印字されるドットであるため、ドット数“1”のインク粒子についてはSTEP8へと進むことになる。
STEP8では、文字データ「ON」の最左列の最下位の位置に印字されるインク粒子への帯電電荷量を計算する。この電荷量は、既述のように、印字の位置によって異なり、下段の最下位置が最も電荷量が小さく、上段の最上位置へと印字されるインク粒子の電荷量が最も大きくなる。STEP8で電荷量が計算されると、ビデオRAM9にドット数“1”の粒子の情報が格納される(STEP9)。
その後、ドット数カウンタに1を加え(STEP10)、ドット数“2”のインク粒子についても同様のフローによって情報が与えられる。このように、最下位粒子から最上位粒子になるまで順番にカウントされるように縦ドット数と比較する仕掛けが設けてあり、ビデオRAM9にビデオデータを書き込むごとにドットカウンターに1が足されることとなっている。そして、最上位粒子まで情報が付与され、ビデオRAM9に格納されると、STEP6から右のフローへと進み、処理が終了する。なお、下で述べるように、本実施例では、さらにSTEP11〜STEP13を備えているが、STEP10とSTEP11〜13との関係は本実施例の順序に限られるものではなく、最下位粒子から最上位粒子になるまで順番にカウントされるものであればよい。
本実施例のSTEP11〜STEP13の各ステップは、無荷電粒子を挿入するステップであり、具体的には、ROM3に格納されるプログラムには、荷電粒子●又は印字データから帯電不要とされた粒子△の間に無荷電粒子□を挿入するステップが備けられている。以下、この各ステップについて説明する。
この最下位粒子とその次に印字する粒子との間はROM3に書き込まれたソフトウェアによる無電荷粒子の挿入のタイミングであるか否かを判定する(STEP11)。ここで、無荷電粒子の挿入インク粒子間に該当する場合は無荷電粒子を設定し(STEP12)、バスライン21を介し無荷電粒子のビデオデータをビデオRAM9に格納する(STEP13)。このような処理を繰返すことで各粒子のビデオデータとインク粒子間毎に挿入する無荷電粒子のビデオデータを順番にビデオRAM9に書き込む。
最下位粒子(ドット数“1”の粒子)の場合には、無電荷粒子の挿入のタイミングではないため、STEP11からSTEP6へと戻り、再び上記処理を繰り返す。
図5の例の場合には、ドット数“5”の処理時に無荷電粒子が挿入される。この場合、STEP7で「ドットあり」とされ、帯電電荷量が計算されて(STEP8)、ビデオRAM9に書き込まれた後(STEP9)、ドット数カウンタが繰り上がってドット数“6”となる。この位置に無荷電粒子△が挿入されることから、STEP11からSTEP12へと進み、無荷電粒子の挿入情報が設定されて、ビデオRAM9に当該情報が格納される(STEP13)。
上述のような処理をドット数“10”まで繰り返すことによって、図5(C)に示すようなイメージの階段波形が作成される。この例では、縦ドット数が10であるため、印字可能インク粒子数は10であるが、STEP11〜STEP13を備えたプログラムをROM3に格納したことによって、無荷電粒子□が3つ挿入され、一列を印字する際に噴出される実際のインク粒子数は13となる。したがって、図5(C)には(1)から(13)までのインク粒子に対応した帯電信号レベルが並んで階段波形が生成される。
このように生成されたビデオRAM9に格納されたビデオデータは、バスライン21を介して文字信号発生回路10へと送られる。文字信号発生回路10は、このビデオデータを帯電信号の階段波形に変換する。本実施例では、粒子使用率を1/1に設定したため、あるいは、粒子使用率の設定を予め1/1となるようにROM3にプログラムが可能されているため、帯電信号の階段波形は分周カウンター20によって分周されず、そのまま帯電信号として用いられる。
以上のようなソフトウェアにインク粒子間毎に挿入する無荷電粒子の情報を予め盛込むことにより、インク粒子間毎に無荷電粒子の挿入が可能となる。更に製品化するにはこのソフトウェアにある無荷電粒子の挿入情報に応じて歪補正という帯電信号を微調整する作業が必要となる。上記ソフトウェアと歪補正した帯電信号のデータを備えることにより製品化することが可能となる。また、無荷電粒子の挿入位置について、上段最上位に位置する粒子の帯電信号レベルが最も大きく、この上段の最上位粒子と隣合う粒子との粒子間に大きなクーロン反発力が働いている。そこに無荷電粒子を挿入することでクーロン反発力を低減し、高品質な多段印字を実現することができる。
なお、印字可能インク粒子の間に、2つ連続して無荷電粒子□を挿入する場合には、挿入される無荷電粒子の数の情報をソフトウェア内に組み込んでおいて、STEP12で無荷電粒子を2つ設定する、あるいは、STEP11〜STEP13にループを設ける、等によって行えばよい。
ここでは、縦一列分の帯電信号の階段波形の作成について示したが、上記の処理を5列分繰り返すことによって、5×5のマトリクスで示される文字データの階段波形が作成され、ビデオRAM9には該文字データの階段波形が格納される。この格納された文字データは上述のように文字信号発生回路10に送られ、分周カウンタ20からの分周信号と掛け合わされ(ただし、この例の場合には文字信号発生回路10からの出力波形と同波形がANDゲート19から出力される)、帯電電極12へと出力される。
上記の実施例は、ROM3内に格納されたソフトウェア内に、予め無電荷粒子□の挿入位置が定められた例を示したが、「無荷電粒子を挿入する位置」と「無荷電粒子の挿入個数」の各情報を装置操作者に質問し、これらの情報がパネル6から入力されると、この入力情報に基づいて処理を行うソフトウェアをROM3に格納するようにしてもよい。この場合、装置操作者によって入力された「無荷電粒子を挿入する位置」及び「無荷電粒子の挿入個数」の各情報は、RAM2に記憶され、ROM3に格納されたソフトウェアがこれらの情報をRAM2から読み取って、無電荷粒子□が挿入された帯電波形を作成する制御となる。なお、RAM2とは別に書換可能な記憶部を設けて、この記憶部に「無荷電粒子を挿入する位置」及び「無荷電粒子の挿入個数」を記憶してもよい。この例については後述する。
次に、上述の例と異なる実施例として、複数段印字を行う際において、段を替えるごとに無電荷粒子を挿入する場合について説明する。このような段間毎に無荷電粒子を挿入する段間走査の実施例として、図6を用いて説明する。図6の(A)は図3の(A)の縦第5列目を抜粋し、縦1列のドットマトリクスを形成する階段波形のイメージを示すものであり、図3(C)、図4(A)、図5(A)と同様の波形を形状をしたものである。
図10のフローチャートのようなソフトウェアを設け、このソフトウェアには無荷電粒子の挿入する位置及び個数が予め指示されており、この実施例では段間に1つの無荷電粒子□が挿入される制御としている。また、段間のうち、先に噴出される下段の印字可能インク粒子と後に噴出される上段の印字可能インク粒子との間には1つの無荷電粒子□が挿入され、この「後に噴出される上段の印字可能インク粒子」と、その後に噴出される下段の印字可能インク粒子との間には無荷電粒子を挿入しない制御としている。すなわち、この例は、下段から上段の段間方向には1つの無荷電粒子を挿入し、その逆の段間方向、すなわち、上段から下段の段間方向には無荷電粒子を挿入しないものとしている。
換言すれば、ROM3に格納されるソフトウェアには、段間方向として「下段から上段」の情報が書き込まれ、挿入個数として「1」の情報が書き込まれている。この場合は図6の(A)に記載する階段波形の下段から上段の段間方向に無荷電粒子を1つ挿入することを指示し、図6の(A)の階段波形はこの指示により図6の(C)に示される階段波形として作成され、ビデオRAM9に格納される。
具体的な制御フローは、先に説明した実施例とほぼ同様であり、図10のフローにおいて、STEP1〜STEP10までは、既述のように、まず階段波形の帯電信号を分周しないためにパネル6よりインク粒子使用率を1/1に設定する。もしくは階段波形の帯電信号を分周しない機能を予めこのソフトウェアに追加することで、パネル6でのインク粒子使用率の設定作業が不要とする方法もある。
次に印字する複数段の文字情報、印字段数、ドットマトリクス等を入力する。ROM3に書込んだソフトウェアの機能としては、まず図1のパネル6で入力したドットマトリクスと印字段数により縦1列の縦ドット数を算出する。ドットカウンターを初期化し、印字する縦1列の文字情報も取得する。次に、縦1列の最下位粒子をカウント“1”とし縦ドット数と比較する。ここでは最下位粒子から最上位粒子になるまで順番にカウントされるように縦ドット数と比較する仕掛けが設けてある。
次に、この最下位粒子は文字情報ドットマトリクスを形成する上で必要とされるか否かを判定する。必要とされる粒子である場合は偏向位置に応じて荷電量を算出し、また必要とされない粒子である場合はこのインク粒子を無荷電粒子と見なしバスライン21を介してこれらのビデオデータを図1のビデオRAM9に書き込む、ビデオRAM9にビデオデータを書き込むごとにドットカウンターに1が足される。
次に、この最下位粒子とその次に印字する粒子との段間は予めROM3に書き込んだ無荷電粒子の挿入段間方向に該当するか否かを判定する(STEP11)。該当する場合はバスライン21を介し無荷電粒子のビデオデータを図1のビデオRAM9に格納する。このような処理を繰返しすることで各粒子のビデオデータと段間方向毎に挿入する無荷電粒子のビデオデータを順番にビデオRAM9に書き込む。この実施例では、下段から上段の段間方向に対して無荷電粒子□を1つ挿入するプログラムとなっているため、STEP12へと進み、無荷電粒子が設定され、ビデオRAM9に格納される(STEP13)。
ビデオRAM9に格納された印字の情報を用いて実際に印字を行う制御については先に説明した実施例と同様であり、ビデオRAM9に格納されたビデオデータをバスライン21を介して文字信号発生回路10へ送る。文字信号発生回路10でこのビデオデータを帯電信号の階段波形に変換する。また、粒子使用率を1/1に設定したため、帯電信号の階段波形は分周カウンター20によって分周されず、そのまま帯電信号として用いられる。
以上のようなソフトウェアに段間方向毎に挿入する無荷電粒子の情報を予め盛込むことにより、段間方向毎に無荷電粒子の挿入が可能となる。
更に無荷電粒子の挿入情報に応じて歪補正として、帯電信号の帯電信号レベルを微調整する作業が必要となる。この挿入情報を有するソフトウェアと挿入情報に基づいて歪補正された帯電信号のデータを備えることにより、印字品質が確保されたインクジェット記録装置を提供することが可能となる。
次に、この段間に無電荷粒子を挿入する実施例において、段間方向との関係について図7を用いて説明する。図7の(A)は下段から上段の段間方向にだけ無荷電粒子を1つ挿入し縦5ドットの2段ドットマトリクスを形成する様子を示す。図7の(B)は上段から下段の段間方向にだけ無荷電粒子1つを挿入し縦5ドットの2段ドットマトリクスを形成する様子を示す。
段間方向に無荷電粒子を挿入する段間走査の2段印字において、無荷電粒子を1つだけ挿入する場合、挿入パターンとしては図7の(A)と図7の(B)に示す2種類が挙げられる。そこで、この2つの挿入パターンが受けるクーロン影響について比較する。
まず上段最上位粒子が受けるクーロン影響について考える。図7の(A)パターンを用いた場合、上段最上位粒子と隣合う荷電粒子がなくクーロン反発力による影響が小さい。また、図7の(B)パターンを用いた場合、上段最上位粒子と隣合う粒子は下段最上位粒子であり、図7の(A)のパターンと比べ大きな影響を受ける。このように上段最上位粒子の受けるクーロン影響を考慮した場合、図7の(A)パターンを用いた方が印字品質的に有利である。
次に、上段上から2番目にある粒子が受けるクーロン影響について考える。図7の(A)パターンを用いた場合、この上段上から2番目にある粒子と隣り合う粒子は下段最上位粒子である。図7の(B)パターンを用いた場合、この上段上から2番目にある粒子と隣り合う粒子は下段上から2番目の粒子であり、この場合、図7の(B)パターンは図7の(A)パターンと比べクーロン反発による影響が小さい。このように上段最上位粒子以外のインク粒子はパターン(B)を用いた方が印字品質的に有利である。
これらの両パターンを比較した場合、いずれのパターンを用いるかの選択に際しては、上段の最上位のドットに印字されるインク粒子が、他の帯電されたインク粒子から受ける電気的影響の大小によって決定される。ただし、いずれの場合であっても、無荷電粒子を挿入しない場合と比較すると印字品質は大きく向上しており、かつ、分周カウンタ20を用いて文字信号発生回路10から出力される文字信号を1/2に分周して印字した場合よりも印字速度は向上する。
本実施例では、上段最上位粒子の荷電量が最も大きく特にクーロン反発影響を受けやすいので、図7の(A)パターンを採用した。この上段の最上位に印字されるインク粒子の帯電量は、ノズル11、帯電電極12、偏向電極13及び被印字物18の位置関係によって定まり、偏向距離を大きくする場合には帯電量を大きくする必要がある。したがって、上段最上位に印字されるインク粒子の帯電量が小さい場合には、(B)パターンを採用して印字を行っても構わない。
なお、図7(B)に示すパターンは、(A)に示すパターンと比較すると、上段最上位粒子を除けば電気的影響を小さくすることが可能である。この図7(B)中において(13)と(14)で示されるインク粒子間のクーロン反発力が最も大きくなることから、これらのインク粒子に対しては、帯電信号を予め調整しておき、これらの歪補正が行われた信号を帯電電極に与えることによって、印字位置の微小な調整が可能である。
次に、複数段印字として、3段の印字を行う場合について図8を用いて説明する。この場合、上段、中段、下段の3段の印字を行うものとし、図2に示したようなインクジェット記録装置の全体構成については上記の実施例と同様である。3段の印字を段間走査を用いて行う場合、下段、中段、上段の順に段を移動して印字する例、上段、中段、下段の順に段を移動して印字する例、あるいは下段、上段、中段の順に段を移動して印字する例、等々の様々な段間走査の例が挙げられるが、本実施例では、下段、中段、上段の順に段を替えて印字する例を用いて説明する。
図8は、いずれも下側の段から、それよりも上側の段へと、段を移動する場合に無荷電粒子を挿入する例を示しており、印字可能インク粒子は全て印字に使用されるインク粒子●とした例である。図8の(A)は中段から上段の段間方向に1つの無荷電粒子を挿入し縦5ドットの3段ドットマトリクスを形成する様子を示し、図8の(B)は、下段から中段の段間方向と中段から上段の段間方向にそれぞれ1つの無荷電粒子を挿入し縦5ドットの3段ドットマトリクスを形成する様子を示す。
段間方向に無荷電粒子を1つだけ挿入する場合、第一に、クーロン反発力のより大きい中段から上段の段間方向に無荷電粒子を挿入することが有効的であり、図8(A)に示すように、中段から上段の段間方向に無荷電粒子□を1つ挿入した。すなわち、印字可能インク粒子15個に対して、5個の無荷電粒子を挿入した例を示している。この図8(A)のパターンによれば、印字速度は全ての段間に無荷電粒子を挿入する場合と比較して向上するとともに、印字品質が大きく改善されたことを確認した。特に、最上位に印字されるインク粒子●(図8(A)に示す(20)のインク粒子)は、その直前に飛翔するインク粒子●(18)との間に無荷電粒子□が挿入されるため、最も電気的影響を受けやすいインク粒子●(20)の飛翔軌跡が安定化し、印字品質の改善が図られる。
また、図8(A)のパターンによる印字よりも更に印字品質を良くするために、図8の(B)に示すように下段のインク粒子から中段のインク粒子の段間方向にも無荷電粒子を挿入した例を示す。この例は、印字可能インク粒子15個に対して、10個の無荷電粒子を挿入した例であり、本例によれば、印字可能インク粒子間の電気的な影響がより低減されるため、印字品質がさらに安定化する。この図8(B)のパターンであっても、印字速度は、全ての段間に無荷電粒子を挿入する場合と比較して向上している。
図8(A)(B)の両パターンは、下段側から上段側へと段間を移動する方向において、無荷電粒子を挿入した例を示したものであるが、これに限られるものではない。例えば、図8(B)のパターンのように10個の無荷電粒子を挿入する例においては、中段から上段への段間方向及び上段から下段への段間方向にそれぞれ1つの無荷電粒子を挿入してもよく、この場合には、最も帯電信号レベルの高い上段に印字されるインク粒子の飛翔軌跡がより安定化し、印字品質が効果的に改善可能となる。
次に、クーロン反発力を大きく低減できる無荷電粒子の挿入位置について説明する。上記に無荷電粒子を挿入する例を記載したが、高速かつ高品質の多段印字を実現するためには、無荷電粒子の挿入個数を減らすことが高速化に必要であり、したがって、クーロン反発影響の大きいインク粒子間に優先的に無荷電粒子を挿入することが求められる。例えば、クーロン力による反発力が大きいインク粒子間のだけ無荷電粒子を挿入し、他のインク粒子間には無荷電粒子を挿入せずに印字を行えば、高速かつ高品質の多段印字には最も効果的となる。
挿入する位置としては、まず帯電信号レベルの大きい2つのインク粒子が隣合う場合、この2つのインク粒子間に大きなクーロン反発力が働いている。このインク粒子間に無荷電粒子を挿入することが有効である。また、ある荷電粒子の両側に荷電粒子が1個しか存在しない場合、前後両側に荷電粒子がある場合のようにクーロン反発力の相殺がされないことから、このインク粒子間にも無荷電粒子を挿入することが有効である。無荷電粒子はこれら2つの位置に優先的に挿入することが望ましい。
図9は、3段の印字を行う場合について図8とは異なる例を示す図である。図9に示す例も、図8と同様に、いずれも下側の段から、それよりも上側の段へと、段を移動する場合に無荷電粒子を挿入する例であり、印字可能インク粒子は全て印字に使用されるインク粒子●とした例である。図9の(A)は上段から下段の段間方向に1つの無荷電粒子を挿入し縦5ドットの3段ドットマトリクスを形成する様子を示し、図9の(B)は、中段から上段の段間方向と上段から下段の段間方向にそれぞれ1つの無荷電粒子を挿入し縦5ドットの3段ドットマトリクスを形成する様子を示す。
まず図9(A)に示した例ついて、図8(A)の場合と比較しながら説明する。図9(A)は図8(A)と同様に、下段、中段、上段の順に印字され再び下段に戻る1サイクル内に1つの無荷電粒子□を挿入する例を示すもので、印字速度は無荷電粒子を挿入しない場合の約1/1.3倍となる例を示している。この印字のパターンによれば、下段の最下位粒子は、その直前に噴出される上段最上位粒子との間の距離が確保されるため、最もクーロン反発力の大きい最上位粒子の影響を低減できる。したがって、下段に印字される文字・記号の印字品質を良好なものとすることができる。この例は、中段に印字されるインク粒子と上段に印字されるインク粒子の間の電気的影響が低減できないため、下段と比較すると印字品質に劣ることになるが、下段の印字品質の確保が最優先される場合には、この無荷電粒子の挿入パターンであれば、印字速度の低下も1/1.3倍程度と小さく、有利である。
次に、図9(B)に示した例について、図8(B)の場合と比較しながら説明する。図9(B)は図8(B)と同様に下段、中段、上段の順に印字され再び下段に戻る1サイクル内に2つの無荷電粒子□を挿入する例を示すもので、印字速度は無荷電粒子を挿入しない場合の約1/1.7倍となる例を示している。この挿入パターンは、下段最下位粒子と上段最上位粒子のクーロン反発力を低減できるため、下段最上位粒子の印字品質が良くなり、結果として、下段に印字される文字・記号等の印字品質を良好にすることができる。また、上段に印字されるインク粒子(例えば、図中のインク粒子(4))は、直前を飛翔する中段に印字されるインク粒子(2)との間に無荷電粒子□(3)が挿入され、直後を飛翔する下段に印字されるインク粒子(6)との間に無荷電粒子□(5)が挿入されるため、上段に印字されるインク粒子も他の段に印字されるインク粒子からの電気的影響を小さくでき、また、中段に印字されるインク粒子も上段に印字されるインク粒子からの電気的影響を小さくできるので、印字品質の向上に効果的である。
印字速度は図8(B)の例とほぼ同様であり、全体的な印字品質もほぼ同等程度であるが、特に下段に印字される文字・記号等の印字品質を確保したい場合にはこの挿入パターンによる方が有利である。
次に、既述の実施例とは異なる実施例について説明する。既述の実施例は、無荷電粒子の挿入位置と個数が予め定められており、その情報がソフトウェアに予め設定されてROM3に書き込まれているため、このROM3に格納されたソフトウェアによって制御されることにより無荷電粒子を挿入している。その際、装置の使用者は、印字品質及び印字速度を考慮し、予め定められたパターンの中から所望の印字パターンを選択、入力することによって、入力された情報に基づいて印字がなされる。
ここで述べる実施例では、装置の使用者に対して無荷電粒子の挿入位置を選択するために、図5(B)あるいは図6(B)のような画面を設けている。これらのような画面を表示装置4に表示することによって、装置の使用者はパネル6から無荷電粒子の挿入位置と挿入個数を操作できることが可能となる。
例えば、図5(A)の階段波形に対し、先に述べた実施例と同様に図5(C)のような階段波形を生成する場合には、装置使用者は、以下のように操作することによって実現が可能となる。
このとき、図5(B)に示すような画面が表示装置4に表示され、使用者はパネル6から操作する。装置使用者が操作しやすいように、図5(B)の表示とともに、図5(A)の階段波形をも同時に表示装置4に表示しても構わない。装置使用者は、図5(B)に示すように、図5(A)の階段波形の飛行粒子(5)と(6)の間に1つの無荷電粒子の挿入を、(8)と(9)の間に2つの無荷電粒子の挿入をそれぞれ指示することにより、図5の(C)のような階段波形が作成される。図5(C)のような階段波形の作成については、図10に示すフローを有するソフトウェアが動作することによって可能である。その際は、パネル6から入力される無荷電粒子の挿入位置及び挿入個数の情報をRAM2又はRAM2とは別に設けた記憶手段に記憶し、図10のSTEP11の前に、このRAM又は記憶手段に記憶した上記の情報を読み出すステップを新たに備えればよい。
また、図6(A)の階段波形に対し、先に述べた実施例と同様に図6(C)のような階段波形を生成する場合にも同様であり、図6(B)に示すような画面が表示されると、どの段間に無荷電粒子を挿入するか選択することで実現することができる。具体的には、図6の(B)の画面で図6(A)の階段波形の下段粒子から上段粒子の段間方向に1つの無荷電粒子の挿入を指示することにより、図6の(C)のような階段波形が作成される。
なお、表示装置4に表示される図5(B)、図6(B)の画面では、推奨される無荷電粒子の挿入位置及び個数を予め表示すれば、装置使用者がこれらの情報を入力するに当たって選択を容易にすることができる。例えば、印字可能インク粒子であっても、文字データによっては、図5(A)のインク粒子△(10)のように実際には帯電されないインク粒子△があり、この図5(A)の場合には、最もクーロン反発力が大きなインク粒子は●(8)及び●(9)の間に働く反発力となる。したがって、この両インク粒子の間に無荷電粒子□を挿入することが有効である。そこで、これらのインク粒子の間に無荷電粒子を挿入することを推奨する場合には、図5(B)画面において、予めその旨を表示することによって、装置使用者はこの推奨情報を基にしてインク挿入位置及び個数を選択することができる。このように使用者によって挿入位置等が入力される場合であっても、階段波形を生成するソフトウェアが、ROM3に書込まれていれば上記機能が実現される。
このようにクーロン反発影響の大きい粒子間距離にだけ無荷電粒子を挿入することにより、帯電する粒子間の距離が広がりクーロン反発力を軽減し、印字歪を低減することができる。
以上の各実施例によれば、高速かつ高品質な多段印字を行うインクジェット記録装置を提供することができる。
1…MPU、2…RAM、3…ROM、4…表示装置、5…パネルインタフェース、6…パネル、7…被印字物検知回路、8…印字制御回路、9…ビデオRAM、10…文字信号発生回路、11…ノズル、12…帯電電極、13…偏向電極、14…ガター、15…ポンプ、16…被印字物検知センサー、17…コンベア、18…被印字物、19…ANDゲート、20…分周カウンター、21…バスライン。