JP2006284855A - 薄膜及び光学部材の製造方法 - Google Patents

薄膜及び光学部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の撥水膜に対し、滑り性を向上させ、かつ耐久性の特性を向上させた薄膜の製造方法、及びこれを用いた光学部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(I)で示されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む溶液を減圧下、加熱して、基材上に該有機ケイ素化合物を蒸着させる薄膜の製造方法であって、該有機ケイ素化合物は、電子銃にて加熱され、加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの温度範囲であり、該有機ケイ素化合物の蒸発開始後、蒸着完了まで、該有機ケイ素化合物の温度が分解温度を超えることがなく、かつ、該有機ケイ素化合物の加熱開始から90秒以内に該有機ケイ素化合物の加熱蒸発を完結させることを特徴とする薄膜の製造方法。
Figure 2006284855

【選択図】なし

Description

薄膜、特に撥水膜の製造方法に関し、詳しくは、撥水膜の滑り性を向上させ、付着した汚れを容易に拭き取れるようにし、かつ耐久性の特性を向上させた撥水膜及び該撥水膜を施した光学部材の製造方法に関する。
レンズ等の光学部材上に施された反射防止膜は、一般にZrO2,SiO2などの無機酸化物により形成されている。そのため、汗、指紋などによる汚れが付着しやすく、かつこれらの汚れを除去することが困難であった。こうした問題を解決するために、反射防止膜上に撥水膜を施すことはよく知られている。しかしながら指紋、皮脂などが付着した場合、拭き取るにはかなりの時間と繰り返しの作業が必要であり、もっと容易に拭き取れることが望まれていた。また、かかる撥水膜において、近年、撥水性が時間とともに、できるだけ低下しない性能が求められている。その性能を得る方法として、真空下、特定の有機ケイ素化合物を加熱蒸着させて反射防止膜上に撥水膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に開示される方法による撥水膜に対して更なる性能の向上が望まれていた。
特開2005-3817号公報
本発明の目的は、従来の撥水膜に対し、滑り性を向上させ、かつ耐久性の特性を向上させた薄膜の製造方法、及びこれを用いた光学部材の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を、電子銃にて加熱し、特定の加熱条件を選択した薄膜の製造方法によって、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で示されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む溶液を減圧下、加熱して、基材上に該有機ケイ素化合物を蒸着させる薄膜の製造方法であって、該有機ケイ素化合物は、電子銃にて加熱され、加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの温度範囲であり、該有機ケイ素化合物の蒸発開始後、蒸着完了まで、該有機ケイ素化合物の温度が分解温度を超えることがなく、かつ、該有機ケイ素化合物の加熱開始から90秒以内に該有機ケイ素化合物の加熱蒸発を完結させることを特徴とする薄膜の製造方法を提供するものである。
Figure 2006284855
(式中、Rfは、式:−(Ck2kO)−(kは1〜6の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する二価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基又はハロゲン原子であり、n及びn’はそれぞれ0〜2の整数であり、m及びm’はそれぞれ1〜5の整数であり、a及びbはそれぞれ2又は3である。)
本発明によれば、動摩擦係数が低く、滑り感に優れ、耐久性特性が高い光学部材を製造することができる。
本発明の製造方法により得られる薄膜は、下記一般式(I)で表わされるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの加水分解縮合物を含んでなるものである。この加水分解縮合物は、後に詳述するXの加水分解及び縮合反応によって生じる3次元構造の硬化物である。
Figure 2006284855
ここで、Rf基は、式:−(Ck2kO)−(式中、kは1〜6、好ましくは1〜4の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する二価の基である。なお、前記一般式(I)中のn及びn’がいずれも0である場合、前記一般式(I)中の酸素原子(O)に結合する前記Rf基の末端は、酸素原子ではない。このRf基としては、例えば、下記一般式で示されるものが挙げられる。但し、下記例示に限定されるものではない。
−CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2
(式中、lは1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数である。)
−CF2(OC24p−(OCF2q
(式中、p及びqは、それぞれ、1以上、好ましくは1〜50、より好ましくは10〜40の整数であり、かつp+qの和は、10〜100、好ましくは20〜90、より好ましくは40〜80の整数であり、該一般式中の繰り返し単位 (OC24) 及び (OCF2) の配列はランダムである。)
上記式(I)において、Xは加水分解性基又はハロゲン原子である。上記Xが加水分解性基である場合としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシアルコキシ基;アリロキシ基、イソプロペノキシ等のアルケニルオキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基;N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基;N,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基等を挙げることができる。
また、上記Xがハロゲン原子である場合としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
これらの中で、メトキシ基、エトキシ基、イソプロペノキシ基及び塩素原子が好適である。
上記式(I)において、Rは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Rが複数存在する場合には、Rは互いに同一でも異なってもよい。Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられる。これらの中でも炭素原子数1〜3の一価炭化水素基が好ましく、特にメチル基が好適である。
上記式(I)において、n及びn’はそれぞれ0〜2の整数であり、好ましくは1である。nとn’は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、m及びm’はそれぞれ1〜5の整数であり、3であることが好ましい。mとm’は互いに同一であっても異なっていてもよい。
次に、a及びbは各々2又は3であり、加水分解及び縮合反応性、及び被膜の密着性の観点から、3であることが好ましい。
上記式(I)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの分子量は、特に制限されないが、安定性、取扱い易さ等の点から、数平均分子量で500〜20,000、好ましくは1000〜10,000のものが適当である。
上記式(I)で表されるパーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランの具体例としては、例えば、下記構造式で示されるものが挙げられる。但し、下記例示に限定されるものではない。
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2CF2O(CF2CF2CF2O)lCF2CF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2SiCH3(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(C25O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OC253
(上記各式中、lは1〜50、pは1〜50、qは1〜50、p+qは10〜100の整数であり、下4式中の繰り返し単位(OC24)及び(OCF2)の配列はランダムである。)これらは1種単独でも2種以上を組合わせても使用することができる。また、場合により、上記パーフルオロポリアルキレンエーテル変性シランと該変性シランの部分加水分解縮合物とを組み合わせて使用することができる。
上記フッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物は、溶液状態で又は必要に応じて添加される溶媒やケイ素非含有のパ−フルオロポリエ−テルを混合した溶液の形態で用いられ、基材に蒸着される。これらの溶液はそのまま容器に入れて加熱しても良いが、均一した蒸着膜を多く得られるとの観点から、多孔性材料に含浸させることがより好ましく、多孔性材料としては、銅やステンレスなどの熱伝導性の高い金属粉末を焼結した焼結フィルターを用いることが好ましい。又、多孔性材料は、適度な蒸着速度を得るという観点からそのメッシュを40〜200ミクロン、好ましくは、80〜120ミクロンとすることが適当である。
本発明において、一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物は、加熱蒸着によって反射防止膜を有する基材上に蒸着されるが、かかる場合に減圧下、電子銃を用いて加熱して蒸着する。その場合の真空蒸着装置内の真空度としては、特に限定はないが、均質の撥水膜を得るとの観点から、好ましくは、1.33×10-1Pa〜1.33×10-6Pa(10-3〜10-8Torr)、特に好ましくは、6.66×10-1Pa〜8.00×10-4Pa(5.0×10-3〜6.0×10-6Torr)である。
一般式(I)のフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を加熱する際の具体的温度は、有機ケイ素化合物の種類、蒸着する真空条件により異なるが、所望の真空度における該有機ケイ素化合物の蒸着開始温度以上から該有機ケイ素化合物の分解温度を超えない範囲で行うことが好ましい。ここで蒸着開始温度とは該有機ケイ素化合物を含む溶液の蒸気圧が真空度と等しくなったときの温度をいい、また有機ケイ素化合物の分解温度とは1分間の間に該化合物の50重量%が分解する温度(窒素雰囲気下、該化合物と反応性のある物質が存在しない条件で)をいう。
蒸着速度は、上記温度範囲に保つことを条件に、前記有機ケイ素化合物加熱開始から蒸着を完結させるまでの時間を90秒以内とすることが好ましく、さらには50秒以内、40秒以内、30秒以内、20秒以内、10秒以内と短くするほど好ましく、特には5秒以内とすることが好ましい。上記加熱温度範囲で、且つ短時間で蒸着を完結させること、即ち、前記有機ケイ素化合物に短時間で高エネルギ−を与えることにより、耐久性に優れた撥水膜を有する光学部材を提供することができる。また、蒸着開始温度が多少異なる2成分の撥水剤を用いても、蒸発開始温度の高い原料の蒸発開始温度から分解温度の低い原料の分解温度の範囲で蒸着温度を選択することにより、ほぼ同時に蒸着でき、均一な膜を得ることができる。
前記蒸着速度を達成する方法としては、前記有機ケイ素化合物に電子ビ−ムを照射する方法が好ましく挙げられる。電子ビ−ムを発生する方法は、従来、蒸着装置で用いられている電子銃を用いることができる。電子銃を用いれば、前記有機ケイ素化合物全体に、均一のエネルギ−を照射することができ均一な撥水膜を施しやすくなる。電子銃のパワーについては、使用物質、蒸着装置、真空度、照射面積によって異なるが、好ましい条件は、加速電圧が6kV前後で、印加電流5〜80mA程度である。
なお、本発明において光学部材とは、眼鏡レンズのみならず、カメラレンズ、ワードプロセッサーのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等に用いられる広義の光学部材を意味する。
本発明に用いる基材としては、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチック製光学基板、あるいは無機ガラス製光学基板などが挙げられる。尚、上記基板は基板上にハードコート層を有するものであってもよい。ハードコート層としては、有機ケイ素化合物、アクリル化合物等を含んだ硬化膜を例示できる。
また、反射防止膜(蒸着膜)とは、例えばレンズ等の光学基板表面の反射を減少させるために設けられた ZrO2、SiO2、TiO2、Ta25、Y23、MgF2、Al23などから形成される単層または多層膜(但し、最外層にSiO2膜を有することが好ましい)またCrO2などの着色膜(但し、最外層にSiO2膜を有することが好ましい)を言う。本発明においては、反射防止膜の最外層に二酸化ケイ素を主成分とする層が用いられることが好ましい。ここで二酸化ケイ素を主成分とするとは、実質的に二酸化ケイ素からなる層、あるいは二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び有機化合物からなるハイブリッド層をいう。なお、反射防止膜は真空蒸着法によって作成されることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.反射防止膜付プラスチックレンズの作成
プラスチックレンズとして、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト重合体系レンズ(HOYA(株)製Hi−Lux(商品名)、屈折率1.499、度数0.00)を用い、かかるプラスチックレンズ基材上に、特開昭63−10640号公報に開示されている硬化膜を施した。具体的には、SiO2濃度40%のコロイダルシリカ(スノーテックス−40、水分散シリカ、日産化学(株)製)240質量部に、0.5N塩酸2.0質量部、酢酸20質量部を加えた溶液を、35℃にして攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3官能有機ケイ素化合物)95質量部を滴下し、室温にて8時間攪拌し、室温にて16時間放置した。この加水分解溶液に、メチルセロソルブ80質量部、イソプロピルアルコール120質量部、ブチルアルコール40質量部、アルミニウムアセチルアセトン16質量部、シリコーン系界面活性剤(NUCシルウェットY−7006(商品名)、日本ウニカ(株)製)0.2質量部、紫外線吸収剤(チヌビンP(商品名)、チバガイギー製)0.1質量部を加えて、8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコーティング組成物を得た。該組成物を、引き上げ速度15cm/minで浸漬法により塗布、室温にて15分放置後、120℃で2時間加熱硬化して硬化膜を施した。
次に、前記硬化膜上に真空蒸着法(真空度2.67×10‐3Pa(2×10-5Torr))により、二酸化ケイ素からなる下地層〔屈折率1.46、膜厚0.5λ(λは550nmである)〕を形成し、該下地層の上に、プラスチックレンズに酸素イオンビームを照射するイオンビームアシスト法で得られる二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)、真空蒸着法で得られる二酸化ケイ素からなる層(膜厚0.12λ)、さらにイオンビームアシスト法で得られる二酸化チタンからなる層(膜厚0.06λ)よりなる3層等価膜である第1層〔屈折率1.70、膜厚0.24λ〕を形成した。この第1層の上に、イオンビームアシスト法により二酸化チタンからなる第2層(屈折率2.40、膜厚0.5λ)を形成し、該第2層の上に、真空蒸着法(真空度2.67×10‐3Pa(2×10-5Torr))により二酸化ケイ素からなる第3層〔屈折率1.46、膜厚0.25λ〕を形成して、反射防止膜付きプラスチックレンズを得た。このレンズの視感反射率は0.4%であった。
2.使用撥水剤
(1)撥水処理剤-1
撥水処理剤-1として、以下の構造を有する有機ケイ素化合物を用いた。
(CH3O)3SiCH2CH2CH2OCH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2OCH2CH2CH2Si(OCH33
(式中、p=22、q=22、繰り返し単位(OC24)及び(OCF2)の配列はランダムである。)
得られる薄膜は、上記撥水処理剤の加水分解縮合物であり、一般式(I)におけるX(CH3O)の加水分解及び縮合反応によって生じる3次元構造の硬化物である。
(2)撥水処理剤-2
単位式C817CH2CH2Si(NH23で表されるフッ素含有有機ケイ素化合物をm−キシレンヘキサクロライドで3重量%に希釈した溶液(商品名:KP−801,信越化学工業(株)製)を撥水処理剤-2とした。
3.物性評価
本実施例及び比較例で得られたプラスチックレンズは以下に示す評価方法により諸物性を評価した。
(1)水に対する静止接触角
接触角計(協和界面科学(株)製品、CA−D型)を使用し、25℃において直径2mmの水滴を針先に作り、これをレンズの凸面の最上部に触れさせて、液滴を作った。この時に生ずる液滴と面との角度を測定し静止接触角とした。静止接触角θは水滴の半径(水滴がレンズ表面に接触している部分の半径)をrとし、水滴の高さをhとしたときに、以下の式で求められる。
θ=2×tan‐1(h/r)
なお、静止接触角の測定は水の蒸発による測定誤差を最小限にするために水滴をレンズに触れさせた後10秒以内に行った。
(2)外観
目視にて干渉色の色ムラ及び干渉色変化があるかどうかを調べ、眼鏡レンズとして使用できる外観かどうか評価した。
(3)耐久性
レンズクリーニング布(商品名:HOYA Clearcloth)で500gの荷重をかけて撥水膜を有するプラスチックレンズ表面を3600回、前後に擦り(25℃、相対湿度50〜60%)、その後(1)に記載した方法で水に対する静止接触角を測定した。
(4)動摩擦係数
新東科学(株)製の連続加重式表面性測定機TYPE:22Hを使用し、移動距離20mmの平均動摩擦係数を各々3回測定し、平均値を出した。
実施例1
撥水処理剤-1を0.30mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、以下の条件で電子銃を用いて該焼結フィルター全体を加熱して、上記反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。評価結果を表1に示す。
(1)真空度:3.1×10-4 〜 8.0×10-4Pa(2.3×10-6 〜 6.0×10-6Torr)
(2)電子銃の条件
加速電圧:6kV、印加電流:15mA、照射面積:3.5×3.5cm2、蒸着時間:30秒
比較例1
撥水処理剤-1を0.30mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルター(細孔径80〜100μm、直径18mmφ、厚さ3mm)を真空蒸着装置内にセットし、ハロゲンヒーターにて550℃まで1.5分で上昇させ、さらに550℃から650℃まで5分で上昇させ、上記反射防止膜付プラスチックレンズに撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。評価結果を表1に示す。
比較例2
撥水処理剤-1をフッ素系溶媒にて重量ハ゜ーセント 0.2重量%となるように希釈し、上記反射防止膜付プラスチックレンズをこの希釈溶液中に1分間浸し、その後 200mm/分の速度で引き上げ、該レンズ表面に塗布した。塗布後、室温にて1時間乾燥させた。評価結果を表1に示す。
比較例3
撥水処理剤-2を0.2mlしみ込ませたステンレス製焼結フィルターの加熱方法としてハロゲンヒ−タを用い、蒸着時間を360秒としたこと以外は実施例1と同様に撥水膜を形成した。このレンズの視感反射率は0.4%であった。評価結果を表1に示す。
Figure 2006284855
本発明によれば、撥水膜の滑り性を向上させ、かつ耐久性の特性を向上させた光学部材の製造方法を提供することができ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ワードプロセッサーのディスプレー等に付設する光学フィルター、自動車の窓ガラス等の光学部材の製造方法に適用することができる。
本発明における耐久性試験を行う装置を示す概略図である。
符号の説明
1:レンズ
2:レンズクリーニング布
3:六面体板

Claims (3)

  1. 下記一般式(I)で示されるフッ素置換アルキル基含有有機ケイ素化合物を含む溶液を減圧下、加熱して、基材上に該有機ケイ素化合物を蒸着させる薄膜の製造方法であって、該有機ケイ素化合物は、電子銃にて加熱され、加熱温度が、該有機ケイ素化合物の蒸発開始温度から該有機ケイ素化合物の分解温度までの温度範囲であり、該有機ケイ素化合物の蒸発開始後、蒸着完了まで、該有機ケイ素化合物の温度が分解温度を超えることがなく、かつ、該有機ケイ素化合物の加熱開始から90秒以内に該有機ケイ素化合物の加熱蒸発を完結させることを特徴とする薄膜の製造方法。
    一般式(I)
    Figure 2006284855
    (式中、Rfは、式:−(Ck2kO)−(kは1〜6の整数である)で表わされる単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロポリアルキレンエーテル構造を有する二価の基であり、Rは独立に炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、Xは独立に加水分解性基又はハロゲン原子であり、n及びn’はそれぞれ0〜2の整数であり、m及びm’はそれぞれ1〜5の整数であり、a及びbはそれぞれ2又は3である)
  2. 請求項1に記載の方法で得られた薄膜を、プラスチック基材上に真空蒸着法によって作製された多層反射防止膜上に施す光学部材の製造方法。
  3. 前記多層反射防止膜の基材からみた最外層は二酸化ケイ素を主成分とする層である請求項2記載の光学部材の製造方法。

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