JP2006282752A - 感圧接着シート - Google Patents

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保武 藤木
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Abstract

【課題】 優れた表面強度を有し、フォーム印刷機で印刷する際、またはレーザープリンターで可変情報等を印字する際に発生する強い不快臭を大幅に低減させた感圧接着シートを提供する。
【解決手段】 基材シートの少なくとも一方の面に接着層を設け、かつ接着層の一方又は両方が擬似接着層であって、前記擬似接着層面を対峙させ、加圧処理することにより剥離可能に接着させることができる感圧接着シートにおいて、該接着層中に、粒子状二酸化ケイ素に無機イオン交換体を担持した平均粒子径0.1〜30μmの粒子状吸着材料、セルロース系及び/又はポリオレフィン系樹脂からなる基体に極性物質吸着能を有する官能基含有マクロモノマーを重合した液体吸着材料から選ばれた少なくとも1種を含有する感圧接着シートである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、親展性をもつハガキやカード等の各種システムに用いられる感圧接着シートに関するものである。
近年、郵便法の改正に伴い必要情報を記録したシートを二つ折り、または三つ折りに折り畳み、親展性を持つハガキシステムが実用化され普及している。このような親展性を持つハガキは、基材シートの一方の面に通常は接着性がなく、接着層同士を対向させた状態で加圧することにより接着性を示し、且つ接着後は再剥離することが可能な接着層を有する親展ハガキ用紙(感圧接着シート)が使用される。
通常、親展ハガキ用紙はハガキとして定形事項を印刷した後、個人情報などの秘密にしたい情報を接着層面に、宛先等を他の部分にプリンター等で印字し、ドライシーラー等で秘密情報を外部から見えないように加圧積層して親展ハガキとなる。親展ハガキは受取人が該接着層より剥離することにより情報を得ることができ、一旦剥離すると該接着面は接着性がないので剥離前の状態にはならないハガキである。
このような特色を持つ接着層を構成する接着剤については、例えばエチレン−酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂が挙げられるが、自着性に優れ、印刷・印字時のトラブルが少ないため合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂が用いられることが多く、特に天然ゴム系樹脂が用いられている。
また、天然ゴム系樹脂は、耐熱性・耐候性に劣るという欠点を持っているため、それらを改善した、例えば、特許文献1記載の天然ゴムラテックスと炭素数が6以上のメタクリル酸エステル化合物をグラフト重合したアクリル変性天然ゴム系樹脂が用いられることもある。
親展性を保つハガキシステムは印刷会社等により、親展ハガキ用紙にフォーム印刷機で非可変情報を印刷、レーザープリンターで可変情報を印字後、ドライシーラーで加圧処理し、発送されている。
印刷工程で用いられるフォーム印刷機は、通常オフセット印刷機が用いられることが多く、速乾性の観点から紫外線硬化型インキが用いられることが多い。近年の多色化・高速印刷化に伴い、用紙に照射される紫外線量も多くなる傾向にある。そのため紫外線照射の際に用紙から接着層の主成分である天然ゴム由来と考えられる強い不快臭が発生するため、作業環境を改善するために臭気を除去するための新たな設備が必要となる。また印刷した後、Z折り加工されて次の印字工程で使用するが、この不快臭を含んだ用紙に印字すると臭気が外部に放出され周囲の作業環境を悪化させるため問題となる。
また、印字工程で用いられるレーザープリンターには、トナー定着方式として、フラッシュ定着タイプとヒートロール定着タイプがあり、フラッシュ定着タイプでは紫外線照射時、またヒートロール定着タイプでもプレヒーター部やヒートロール部に用紙が熱せられる時に紫外線照射時と比較してそれほど強くはないが、臭気が発生するため前記と同様に臭気除去の新たな設備が必要になる。
また、親展ハガキとして圧着積層後にも臭気が放出されないまま受取人に届くこともある。その際には受取人が開封した際に臭気が放出されると不快に感じることがあるので問題となる。
天然ゴム由来の強い不快臭は、硫化水素、亜硫酸ガス、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ジメチルサルファイド、ジエチルサルファイド、ジプロピルサルファイド等の硫黄系ガスの混合臭気が主であると考えられる。
臭気抑制を目的として、シクロデキストリン、水溶性亜鉛塩、水溶性銅塩、ゼオライト、活性白土、活性炭等の臭気抑制剤が周知であるが、シクロデキストリン、水溶性亜鉛塩、水溶性銅塩はいずれも水との共存系で最も良く臭気物質を吸収する成分であるため感圧接着シートした際には所望の消臭効果が期待できない。ゼオライト、活性白土、活性炭等の物理吸着系の無機素材には、アンモニアやメチルメルカプタン、硫化水素、イソ吉草酸などの悪臭除去機能があることが知られているが、一旦吸着した分子を温度変化等により逆放出してしまい、さらに空気中の水分なども同時に吸着してしまうため、本発明においては十分な消臭効果が得られない。また、活性炭等の有色の吸着剤は感圧接着シートした際に、白色度が大きく下がるといった欠点がある。
上記臭気抑制剤の中には、該接着層中に大量に配合することにより、不快臭を低減できる場合もある。しかし、この場合、感圧接着シートの表面強度が大きく低下するため、オフセット印刷時にパイリング等の印刷不良が発生する。さらに表面摩擦係数が上がるため、印刷時や印字時における感圧接着シートの搬送性が悪くなる等の問題も生じる。また、圧着処理後に十分な接着力が得られず、親展ハガキが受取人に届く前に剥がれてしまうこともある。
不快臭を外に放出せずに吸着するタイプの消臭剤としては、特許文献2記載の粒子状吸着材料及び、特許文献3記載の液体状吸着剤が知られている。
特開2004−137362号公報 特開2000−140080号公報 特開平06−327969号公報
本発明の目的は、優れた表面強度を有し、フォーム印刷機で印刷する際、またはレーザープリンターで可変情報等を印字する際に発生する強い不快臭を大幅に低減させた感圧接着シートを提供することにある。
本発明者らは、臭気物質の吸着能に著しく優れ、基材シートから脱落しにくい消臭成分を該接着層中に配合することにより、感圧接着シートの表面強度を維持しつつ、印刷・印字時に発生する強い不快臭を大幅に低減できることを見出した。
これらの消臭成分は、表面にナノスケールの細孔や層状構造を有して空隙率を高くすることにより臭気物質の物理吸着を容易にする平均粒子径0.1〜30μmの粒子状吸着材料と、臭気物質を化学的に吸着・中和する液体吸着材料から選ばれた少なくとも1種を配合することによって得られる。
本発明は下記態様を含む。
[1] 基材シートの少なくとも一方の面に接着層を設け、かつ接着層の一方又は両方が擬似接着層であって、前記擬似接着層面を対峙させ、加圧処理することにより剥離可能に接着させることができる感圧接着シートにおいて、該接着層中に、粒子状二酸化ケイ素に無機イオン交換体を担持した平均粒子径0.1〜30μmの粒子状吸着材料、セルロース系及び/又はポリオレフィン系樹脂からなる基体に極性物質吸着能を有する官能基含有マクロモノマーを重合した液体吸着材料から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする感圧接着シートである。
[2] 前記無機イオン交換体が、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化銅、酸化銀から選ばれる1種以上の成分を含有する粒子である[1]記載の感圧接着シートである。
[3] 前記粒子状吸着材料の配合量が、接着層中の0.5〜10質量部である[1]または[2]記載の感圧接着シートである。
[4] 前記極性物質吸着能を有する官能基が、親水性基、カチオン性解離基及びアニオン性解離基の少なくとも1種以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の感圧接着シートである。
[5] 前記液体吸着材料の配合量が、接着層中の0.3〜20質量部である[1]〜[4]のいずれかに記載の感圧接着シートである。
[6] 前記接着層中に、天然ゴムラテックス100質量部当たり、炭素数が6以上のメタクリル酸エステル化合物を含んでなる単量体を1〜30質量部グラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを含む[1]〜[5]のいずれかに記載の感圧接着シートである。
ここで、「剥離可能に接着させる」とは、一度接着したシート同士を剥離する際、両接着面に印刷等された内容を十分に確認できる程度に剥離することができるように貼り合せることをいう。
本発明によれば、接着層中に、表面にナノスケールの細孔や層状構造を有して空隙率を高くすることにより臭気物質の物理吸着を容易にする平均粒子径0.1〜30μmの粒子状吸着材料、臭気物質を化学的に吸着・中和する液体吸着材料から選ばれた少なくとも1種を配合することにより、表面強度を落とすことなく、印刷・印字時に発生する強い不快臭を大幅に低減された感圧接着シートを提供することができる。
以下、それぞれの成分について説明する。
《層構成》
本発明の感圧接着シートは、基材シートの少なくとも一方の面に擬似接着層を有する実施形態(1)〜(3)が含まれる。
(1)基材シートの両面に、疑似接着層が設けられる場合。
(2)基材シートの一方の面は、疑似接着層が設けられ、他方の面は、剥離することができないように接着させることができる接着層(以後、永久接着層と称することがある。)が設けられている場合。
(3)基材シートの一方の面に、疑似接着層が設けられ、他方の面には、疑似接着層も永久接着層も設けられていない場合。
本発明において、消臭成分は、擬似接着層及び/または永久接着層中に含有されている。
ここで、消臭成分について説明する。
本発明の消臭成分は、上記接着層中に配合することにより、感圧接着シートから放出される臭気物質を吸着する作用を担う成分をいう。
消臭成分には、粒子状吸着材料、液体吸着材料、さらに消臭助剤を含有することが好ましい。
これらの消臭剤は単独で使用することもできるが、複数の種類を混合すると更に大きな効果が得られる。
[消臭助剤]
消臭助剤は多孔質粒子から成り、上記吸着剤と同時に使用すると更に消臭効果が得られるので好ましい。
多孔質粒子としては、特に限定されるものではないが、多孔質の合成珪酸マグネシウム、合成珪酸カルシウム、合成珪酸アルミニウム、合成燐酸カルシウム等が挙げられる。
多孔質粒子は、粒子径が5〜50nmの無定形化合物である一次粒子が凝結された二次粒子の形態や、花弁状結晶構造で空孔を多数有する多孔質構造により吸着性が付与される。
このような多孔質粒子は、市場において容易に入手可能である。一次粒子が凝結された二次粒子の形態の合成珪酸マグネシウムとしては、ミズカライフP−1やP−1S(水澤化学工業社製、商品名)、花弁状珪酸カルシウムとしては、フローライトRやRN(トクヤマ社製、商品名)、合成珪酸アルミニウム吸着剤としては、キョーワード700(協和化学工業社製、商品名)花弁状燐酸カルシウムとしては、HAP(丸尾カルシウム社製、商品名)などを例示することができる。なお、平均粒子径は1〜30μmが好ましい。1μm未満では接着力低下や表面強度の低下が生じる。また、30μmより大きいと、フォーム印刷やレーザープリンターの通紙時に粒子が脱落したり、表面摩擦係数が上がるため搬送性が悪くなる等の問題が生じる。
多孔質粒子の配合量は、接着層中の1〜30質量部が好ましい。1質量部未満では吸着能力が低く、また30質量部より多いと十分な接着力が得られないことがある。
<基材シート>
基材シートは、特に限定されるものではないが、上質紙、中性紙、アート紙、コート紙等の紙類、合成紙、合成樹脂フィルム、金属箔、不織布等が用いられる。これらは、積層したり、表面処理したものを用いてもよい。また、これらの基材シートに後述する消臭成分を添加したものを用いてもよい。
<疑似接着層>
本発明の疑似接着層は、通常は接着性を示さず、ドライシーラー等の加圧処理が施されることにより剥離可能な接着性を示すものである。
擬似接着層には、少なくとも接着剤が含まれる。
また、接着力コントロール剤、結着剤その他成分を含有することが好ましい。これらを適宜組み合わせて用いることにより、接着性を制御することができる。以下、それぞれの成分について説明する。
[接着剤]
接着剤は、主として、接着層同士を接着させる作用を担う成分をいう。
接着剤は、自着性に優れ、印刷・印字時のトラブルが少ない合成ゴム系樹脂、天然ゴム系樹脂が用いられ、中でも天然ゴム系樹脂が好ましく用いられる。その中でも天然ゴムラテックスがより好ましく用いられる。
天然ゴム系樹脂には、樹脂中に不飽和二重結合を多く含んでいるため、紫外線処理や加熱処理をすると不快臭気が発生する。そこで不飽和二重結合を減らした天然ゴムラテックスを用いると臭気抑制効果が得られるため好ましい。
不飽和二重結合を減らす方法としては、天然ゴムラテックスの粒子内に架橋構造を形成するため、天然ゴムラテックスに、炭素数が5以下のメタクリル酸エステル化合物単量体(例示すると、メチルメタクリレート等)や、スチレンをグラフト重合する方法が知られている。しかし、近年の印刷・印字処理の高速化が進んできている状況において、接着剤に求められる性能が上がり、上記によって得られる接着剤でもその性能が不十分となってきている。
そこで、さらなる高性能(特に、耐熱性に優れた)な接着剤として、天然ゴムラテックス100質量部当たり、炭素数が6以上のメタクリル酸エステル化合物を含む単量体を、1〜30質量部グラフト重合させる方法が知られている。
当該グラフト重合する単量体が1質量部未満では十分な臭気抑制効果が認められないことがある。また30質量部より多いとゴム弾性が低下し、ゴム同士の自着性が発現しにくくなり、十分な接着力が得にくくなる。
炭素数が6以上のメタクリル酸エステル化合物としては、特に限定するものではないが、カルボキシル基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル(コハク酸2−メタクリロイルオキシエチル等)、水酸基含有メタクリル酸エステル(ヒドロキシエチルメタクリレート及びヒドロキシプロピルメタクリレート等)及びアミノ基(塩の形態を含む)含有メタクリル酸エステル(ジエチルアミノエチルメタクリレート等)等の官能基含有メタクリル酸エステル化合物であることが好ましい。
なお、当該天然ゴムラテックスには、天然ゴムラテックス単体、天然ゴムラテックスにメチルメタクリレートをグラフト重合させて得られるメチルメタクリレート変性天然ゴムラテックス、及び天然ゴムラテックスにスチレンをグラフト重合させて得られるスチレン変性天然ゴムラテックス等を含むものとする。
[接着力コントロール剤]
接着力コントロール剤は、主として、良好に疑似接着層同士を剥離可能に接着させるために、接着力の強さを調整する作用を担う成分をいい、接着成分として好ましく用いられることができる。
接着力コントロール剤としては、特に限定されるものではないが、無機及び有機顔料が使用できる。
無機および有機顔料は、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、ゼオライト、タルク、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウム、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、シリカ、アルミナ、コロイダルシリカ、プラスチックピグメント、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素系樹脂等が用いられる。中でも、澱粉類、シリカが好ましく用いられ、その中でもシリカがより好ましく用いられる。これら接着力コントロール剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
澱粉類は、粒子自体の弾性によってスペーサー的に作用し、ブロッキング発生抑制の目的で好ましく用いられることができる。澱粉類の粒子径は、5〜30μmが好ましい。
シリカは、製法、粒子径、比重等の違いにより、接着力をコントロールすることが可能であり、またインク吸収性に優れるので、印刷適性を改善する際に好ましく用いられる。
シリカは、製法により湿式シリカと乾式シリカに大別され、湿式シリカはさらに沈降法シリカとゲル法シリカに分類できる。
沈降法シリカは、一般的に二次粒子が柔らかいため、接着層にクッション性を与え、接着力が向上する目的に好ましく用いられる。
ゲル法シリカは、一般的に比表面積が大きく吸油量も大きいので、インク受容性やシリコーンオイル吸着性に優れる。そのため印刷適性を改善、レーザープリンター印字後の接着力低下を防止等の目的に好ましく用いられる。
沈降法シリカとゲル法シリカのいずれか一方を使用しても良いが、併用しても良い。
[結着剤]
結着剤は、主として、上記接着剤や接着力コントロール剤等を基材シートへ密着させる作用を担う成分をいい、接着成分として好ましく用いることができる。
結着剤としては、特に限定されるものではないが、水溶性高分子、例えばポリビニルアルコール(PVA)、変性PVA、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、セルロース誘導体、澱粉誘導体等、水性エマルジョン型高分子ラテックス、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)ラテックス、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)ラテックス、メタクリル酸メチル/ブタジエンゴム(MBR)ラテックス、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン等が挙げられる。中でも疑似接着層用塗料の粘度調整しやすさから、ラテックス系の結着剤が好ましく用いられ、中でもスチレン/ブタジエンゴム(SBR)ラテックスがより好ましく用いられる。
[粒子状吸着材料]
粒子状吸着材料は、主として、表面にナノスケールの細孔や層状構造を有して空隙率を高くすることにより臭気物質の物理吸着を容易にする成分をいう。
粒子状吸着材料としては、表面にマイクロスケールの細孔や層状構造を有している粒子状二酸化ケイ素に無機イオン交換体を担持した化合物である。
好ましい粒子状二酸化ケイ素は粒状シリカゲル及び粒状ハイドロゲルであり、以下粒状シリカゲルを例にして説明する。粒状シリカゲル(以下、単にシリカゲルという)へは上記のような無機イオン交換体の中、少なくとも1種を担持することができる。2種類以上の無機イオン交換体を担持する時は、同一のシリカゲルに担持させても、あるいは、別々のシリカゲルに担持させた後混合してもよい。無機イオン交換体のシリカゲルへの担持方法として、通常シリカゲルに無機化合物を担持する方法はいずれも適用することができる。
無機イオン交換体は、具体的にはリン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化銅、酸化銀から選ばれる1種以上の成分を含有する化合物から選択される1種以上である。これらの物質は、単独で用いても良く、必要に応じて数種類を混合しても良い。
これらの化合物は、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄系ガスを選択的に吸着し、吸着されたガスは温度変化等により逆放出することがなく、好ましく用いられる。
粒子状吸着材料の平均粒子径としては、0.1〜30μmであることが好ましい。更に好ましくは、1〜20μmである。0.1μm未満では接着力低下や表面強度の低下が生じることがある。また、30μmより大きいとフォーム印刷やレーザープリンターの通紙時に粒子が脱落したり、表面摩擦係数が上がるため搬送性が悪くなる等の問題が生じることがある。
粒子状吸着材料の配合量は、接着層中に0.5〜10質量部であることが好ましい。配合量が0.5質量部未満では、十分な消臭効果が得られないことがある。また配合量が、10質量部より多いと感圧接着シートの表面強度の低下が生じ、さらにコスト高となり現実的ではない。
前記粒子状吸着材料を例示すると、リン酸ジルコニウム含有多層構造粒子:ケスモンNS−10、リン酸ジルコニウム−酸化銅含有粒子:ケスモンNS−10C、リン酸ジルコニウム−酸化銅含有粒子:ケスモンNS−10N、酸化ジルコニウム水和物粒子:ケスモンNS−80E、またそれらの複合体であるケスモンTNS−110(いずれも東亜合成社製)等が挙げられる。
[液体吸着材料]
液体吸着材料は、主として、臭気物質を化学的に吸着・中和することにより臭気物質を低減する成分をいう。
液体吸着材料としては、セルロース系及び/又はポリオレフィン系樹脂からなる基体に極性物質吸着能を有する官能基含有マクロモノマーを重合した臭気物質を化学的に吸着・中和する化合物である。
セルロース系基体には、典型的なものとして、パルプや木材チップ等の木材セルロース、葉繊維セルロース、茎繊維セルロース及び種子毛繊維セルロース等の植物繊維セルロース、稲藁、コーヒー豆殼、お茶殻、豆腐殼等の廃棄物中のセルロースを使用できるが、大量生産が可能であるという観点からは、パルプを用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂基体には典型的なものとして、ポリエチレンやポリプロピレンを使用できるが、必要に応じて、その一部を塩素やフッ素のようなハロゲンや水酸基等で置換して用いてもよい。官能基含有マクロモノマーと重合しやすいといった観点からは、ポリエチレンを用いることが好ましい。
基体の形状には特に制限はなく、例えば、繊維状、フィルム状、フレーク状、粉末状、板状、マット状、球状などの種々の形状を用いることができるが、吸着面積を最大とし、吸着効率を高めるという観点からは、繊維径が1〜50μmの繊維状材料を用いることが好ましい。
極性物質吸着能を有する官能基含有マクロモノマーは、極性物質の吸着能を有する官能基を含む反応性単量体を重合したものをいう。
極性物質の吸着能を有する官能基には、例えば、親水性基、カチオン性解離基及びアニオン性解離基がある。好ましくは、親水性基、カチオン性解離基及びアニオン性解離基から選ばれる少なくとも1種以上から成る。中でも、マクロモノマーは、親水性基及びカチオン性解離基の2種併用するか、親水性基及びアニオン性解離基を2種併用するか、又は、親水性基、カチオン及びアニオン性解離基を併用することが異なる臭気物質を吸着できる点で好ましい。
ここで「マクロモノマー」とは、オリゴマーの重合度と、ポリマーの重合度との中間の重合度を有する重合体をいい、好ましい重合度は10〜100である。
重合方法としては、公知の如何なる方法をも使用することができるが、放射線グラフト重合法を用いることが好ましい。
親水性基としては、例えば、水酸基、ヒドロキシアルキル基(ここで、アルキル基は、好ましくは低級アルキル基である)、及びピロリドニル基等を挙げられる。好ましい親水性基としては、水酸基、ヒドロキシアルキル基がある。マクロモノマー中に、1種又は2種以上の親水性基を導入してもよい。
カチオン性解離基として、例えば、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、スルホエチル基、ホスホメチル基、カルボメチル基等を挙げられる。好ましいカチオン性解離基にはスルホン基やカルボキシル基がある。マクロモノマー中に、1種又は2種以上のカチオン性解離基を導入してもよい。
アニオン性解離基としては、例えば、4級アンモニウム基や、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基及びジエチルアミノ基のような1級〜3級アミノ基等を挙げられる。好ましいアニオン性解離基は、4級アンモニウム基やアミノ基である。マクロモノマー中に、1種又は2種以上のアニオン性解離基を導入してもよい。
液体吸着材料の配合量は、接着層中に0.3〜20質量部であることが好ましい。配合量が0.3質量部未満では、十分な消臭効果が得られないことがある。また配合量が20質量部より多いと感圧接着シートの表面強度の低下が生じ、さらにコスト高となり現実的ではない。
前記液体吸着材料を例示すると、グラフトンSAKE、グラフトンLFBC11、グラフトンLNF、グラフトンLG、グラフトンLS(いずれも物産グラフトン社製)等が挙げられる。
(その他の成分)
疑似接着層には、上述の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を適宜添加することができる。
添加剤としては、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤等が挙げられる。
基材シートの表面に疑似接着層を塗工する方法としては、特に限定するものではないが、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーターなどが用いられる。中でも、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーターなどが好ましく用いられる。塗工量としては2〜30g/m2が好ましく、3〜15g/m2がより好ましい。
<永久接着層>
擬似接着層を設ける面と反対面に設けてもよい永久接着層は、通常は接着性を示さず、ドライシーラー等の加圧処理が施されることにより、剥離することができないように接着させることができる接着層である。
永久接着層としては、特に限定されるものではないが、中でも感圧接着剤が好ましく用いられる。例えば、上述の疑似接着層に用いた接着剤および接着力コントロール剤を適宜組み合わせることによって得られる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、水分を除いた固形分であり、それぞれ質量部及び質量%を示す。
(実施例1)
〔感圧接着シートの形成〕
坪量95g/mの上質紙の両面(ワイヤー面とフエルト面)に、以下の配合処方になるように調成した疑似接着層用塗料をエアーナイフコーターにて塗工量(固形分)7g/mになるように塗工、乾燥し、感圧接着シートを得た。
「疑似接着層用塗料配合」
<接着層>
(1)接着剤A:35質量部
天然ゴムラテックス100質量部当たり、メチルメタクリレートを25質量部グラフト重合させた変性天然ゴムラテックス(日本NSC社製、商品名:35-018A)
(2)結着剤:10質量部
スチレン/ブタジエンゴム(SBR)ラテックス(日本エイアンドエル社製、商品名:SR-100)
(3)接着力コントロール剤:澱粉A 30質量部、シリカA 5質量部、シリカB 5質量部
澱粉A:小麦澱粉(千葉澱粉社製、商品名:AS−225)
シリカA:沈降法シリカ 平均粒子径4.3μm、BET比表面積290m/g(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45)
シリカB:ゲル法シリカ 平均粒子径2.0μm、BET比表面積260m/g(東ソー・シリカ社製、商品名:ニップシールHD)
消臭成分:
(4)粒子状吸着材料A:0.5質量部
粒子状吸着材料A(東亞合成社製、商品名:ケスモンTNS−110)
(5)消臭助剤:多孔質粒子A 9.5質量部、多孔質粒子B 5質量部
多孔質粒子A:合成珪酸マグネシウム 平均粒子径6μm、BET比表面積680m/g(水澤化学工業社製、商品名:ミズカライフP−1)
多孔質粒子B:合成燐酸カルシウム 平均粒子径10μm、BET比表面積180m/g(丸尾カルシウム社製、商品名:HAP)
(実施例2)
粒子状吸着材料Aを5質量部、多孔質粒子Aを5質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例3)
粒子状吸着材料Aを10質量部、多孔質粒子Aを0質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例4)
粒子状吸着材料Aを0質量部、液体吸着材料A(物産グラフトン社製、商品名:グラフトンSAKE)を0.3質量部、多孔質粒子Aを9.7質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例5)
粒子状吸着材料Aを0質量部、液体吸着材料Aを10質量部、多孔質粒子Aを0質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例6)
粒子状吸着材料Aを0質量部、液体吸着材料Aを20質量部、多孔質粒子Aを0質量部、澱粉Aを20質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例7)
粒子状吸着材料Aを3質量部、液体吸着材料Aを5質量部、多孔質粒子Aを2質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(実施例8)
粒子状吸着材料Aを3質量部、接着剤B(天然ゴムラテックス100質量部当たり、炭素数8のコハク酸2−メタクリロイルオキシエチルを5質量部、メタクリル酸メチルを15質量部グラフト重合させた変性天然ゴムラテックス)を35質量部、多孔質粒子Aを7質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(比較例1)
粒子状吸着材料Aを0質量部、多孔質粒子Aを10質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(比較例2)
粒子状吸着材料Aを15質量部、多孔質粒子Aを0質量部、多孔質粒子Bを0質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
(比較例3)
粒子状吸着材料Aを0質量部、液体吸着材料Aを25質量部、多孔質粒子Aを0質量部、多孔質粒子Bを0質量部、澱粉Aを20質量部とした以外は実施例1と同様にして、感圧接着シートを得た。
<評価方法>
実施例および比較例で得られた感圧接着シートにおける消臭効果、表面強度、コスト、総合評価について、下記に示す方法で評価し、その結果を表1に示した。
(1)消臭効果の評価
(A)紫外線照射後の臭いセンサーによる評価
耐熱性ガラス容器(21cm×21cm×5mm)の中に、20cm×20cmの試験用感圧接着シートを1枚入れて密栓し、紫外線照射装置(ラピッドキュア、ウシオ電気社製)を用い、照射線量を200mj/cmとなるように紫外線を照射した後、23℃、50%RHの恒温室に1時間静置した。その後、容器内を臭いセンサー(新コスモス電機社製、型番:XP−329)を用いて測定した。
(B)紫外線照射後の官能評価
(A)の方法で紫外線を照射・放置した後、開栓した直後に容器内の臭いを嗅いで強弱を官能評価した。比較例1で作成した感圧接着シートを標準試料として比較評価をした。
◎:不快臭がほとんどしない。
○:不快臭が少ない。
△:不快臭が気になるが、実用上は問題ない。
×:不快臭が強い。
(2)表面強度の評価
感圧接着シートをフォーム印刷機(ミヤコシ社製 MVF18B)で、長さ5,000m分を印刷し、パイリングの状況を目視評価した。
◎:表面強度が非常に優れ、パイリングは全く起こさない。
○:表面強度が優れ、パイリングは若干発生する程度。
△:表面強度がやや悪く、パイリングが発生するが、印刷面には影響しない。
×:表面強度が弱く、パイリングが発生し、印刷面にも影響する。
(3)コストの評価
材料コストについて、下記基準にて評価した。
◎:安価。
○:普通。
△:やや高価
×:かなり高価
(4)総合評価
親展ハガキ用紙としての総合評価を行った。
◎:親展ハガキ用紙として非常に優れている。
○:親展ハガキ用紙として優れている。
△:親展ハガキ用紙として不具合が生じるおそれがあるが、実用上は問題ない。
×:親展ハガキ用紙としては適当でない。
Figure 2006282752
表1より、消臭剤を規定量配合した実施例では、紫外線照射後の消臭効果に優れ、かつ表面強度においても優れたものであった。

Claims (6)

  1. 基材シートの少なくとも一方の面に接着層を設け、かつ接着層の一方又は両方が擬似接着層であって、前記擬似接着層面を対峙させ、加圧処理することにより剥離可能に接着させることができる感圧接着シートにおいて、該接着層中に、粒子状二酸化ケイ素に無機イオン交換体を担持した平均粒子径0.1〜30μmの粒子状吸着材料、セルロース系及び/又はポリオレフィン系樹脂からなる基体に極性物質吸着能を有する官能基含有マクロモノマーを重合した液体吸着材料から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする感圧接着シート。
  2. 前記無機イオン交換体が、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化銅、酸化銀から選ばれる1種以上の成分を含有する粒子である請求項1記載の感圧接着シート。
  3. 前記粒子状吸着材料の配合量が、接着層中の0.5〜10質量部である請求項1または2記載の感圧接着シート。
  4. 前記極性物質吸着能を有する官能基が、親水性基、カチオン性解離基及びアニオン性解離基の少なくとも1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感圧接着シート。
  5. 前記液体吸着材料の配合量が、接着層中の0.3〜20質量部である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感圧接着シート。
  6. 前記接着層中に、天然ゴムラテックス100質量部当たり、炭素数が6以上のメタクリル酸エステル化合物を含んでなる単量体を1〜30質量部グラフト重合して得られる変性天然ゴムラテックスを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の感圧接着シート。

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