JP2006282735A - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化速度の調整により速硬化性とすることができる硬化性樹脂組成物の提供。
【解決手段】分子内のすべてのイソシアネート基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物と、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物と、下記式(1)で表されるシリルエステル基を少なくとも一つ有するシリルエステル化合物とを含有し、前記シリルエステル化合物の含有量が、前記イソシアネート化合物100質量部に対して、0.05〜10質量部である、硬化性樹脂組成物。
−Si−(OCOR1k (1)
(式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、イソシアネート化合物とケチミン化合物とを用いた硬化性樹脂組成物に関する。
イソシアネート化合物は、アミン等の硬化剤との反応により三次元架橋構造を形成し、高強度、高伸度、耐摩耗性、耐脂性などに優れたポリウレタン硬化物となるため、従来、目地材、シーラント、接着剤等として広く利用されている。
また、使用する硬化剤の活性水素を化学的にブロッキングして湿気潜在性とすれば、硬化剤をイソシアネート化合物とともに同一容器中に充填して1液型として保存し、使用することができることが知られている。このような1液型の湿気硬化性ポリウレタン組成物は、主剤と硬化剤とを作業時に混合する2液型に比べて作業性が格段に向上するため、有用性が高い。
硬化剤であるアミンの活性水素を化学的にブロッキングする技術としては、アミンをケトンでブロッキングしたケチミンが知られており、一般的にはアルキレンジアミン類と、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトンとから合成されたケチミンが知られている。ケチミンは、水の非存在下では安定化合物であり、水の存在下では容易に加水分解して活性アミンとなるため、空気中の湿気で硬化剤として作用する。
このようなイソシアネート化合物とケチミン化合物とを用いた硬化性樹脂組成物が、種々提案されている。例えば、特許文献1には、分子内の全てのイソシアネート(NCO)基に、第二級炭素または第三級炭素が結合した構造のイソシアネート化合物(A)と、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物(B)と、ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム(C)と、式−CONH−Si≡で表される官能基を有するN−シリルアミド化合物(E)とを含有する一液型湿気硬化性樹脂組成物が記載されている。
特開2004−67834号公報
一方、近年、硬化性樹脂組成物には、作業効率の向上等を目的として、速硬化性が要求されてきている。
しかしながら、特許文献1に記載されている一液型湿気硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性、接着性、物性等に優れるが、硬化性の調整が困難であり、速硬化性とすることができなかった。具体的には、常温でのタックフリータイムを、最短でも60分程度までしか短くすることができなかった。
そこで、本発明は、貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化速度の調整により速硬化性とすることができる硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者は、イソシアネート化合物とケチミン化合物とを用いた硬化性樹脂組成物において、イソシアネート化合物として、分子内のすべてのイソシアネート基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物を用い、ケチミン化合物として、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物を用い、更に、特定のシリルエステル基を有するシリルエステル化合物とを、特定量で含有させることにより、貯蔵安定性が優れたものになり、かつ、硬化速度の調整により速硬化性とすることができるようになることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(i)〜(iv)を提供する。
(i)分子内のすべてのイソシアネート基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物(A)と、
ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物(B)と、
下記式(1)で表されるシリルエステル基を有するシリルエステル化合物(C)と
を含有し、
前記シリルエステル化合物(C)の含有量が、前記イソシアネート化合物(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部である、硬化性樹脂組成物。
−Si−(OCOR1k (1)
(式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
(ii)更に、エポキシ樹脂(D)を含有する上記(i)に記載の硬化性樹脂組成物。
(iii)更に、下記式(2)で表される官能基を有するN−シリルアミド化合物(E)を含有する上記(i)または(ii)に記載の硬化性樹脂組成物。
−CONH−Si≡ (2)
(iv)更に、ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム(F)を含有する上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
本発明の硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化速度の調整により速硬化性とすることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の硬化性樹脂組成物は、分子内のすべてのイソシアネート基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物(A)と、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物(B)と、上記式(1)で表されるシリルエステル基を有するシリルエステル化合物(C)とを含有する。
<イソシアネート化合物(A)>
イソシアネート化合物(A)は、分子内のすべてのイソシアネート(NCO)基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物である。第二級炭素原子または第三級炭素原子に結合するNCO基以外の基は特に限定されず、O、S、N等のヘテロ原子を含んでいてもよい。第二級炭素原子または第三級炭素原子に結合する二つまたは三つの基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
このようなイソシアネート化合物(A)としては、具体的には、下記式(3)で表される化合物が挙げられる。2種以上の混合物であってもよい。
Figure 2006282735
式中、pは1以上の整数を表し、R4、R5およびR6は、それぞれ独立にO、S、Nを含んでいてもよい有機基を表し、R5は水素原子であってもよい。また、pが2以上の整数であるとき、複数のR4およびR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、上記有機基としては、具体的には、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基などの炭化水素基;O、SおよびNからなる群から選ばれるヘテロ原子を少なくとも一つ有する基(例えば、エーテル、カルボニル、アミド、尿素基(カルバミド基)、ウレタン結合)を含む有機基が挙げられる。これらのうち、R4およびR5で表される有機基は、それぞれ、アルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。
イソシアネート化合物(A)は、上記式(3)中のpが2以上の整数である化合物であるのが好ましい。即ち、第二級炭素原子または第三級炭素原子に結合したNCO基を、分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物であることが好ましい。具体的には、上記式(3)中、pが2であるジイソシアネート化合物、pが3であるトリイソシアネート化合物、およびこれらの混合物が好適に例示される。
また、上記式(3)中、pが1であるモノイソシアネート化合物は、通常、pが2以上の整数であるポリイソシアネート化合物と混合して用いられる。
本発明に用いられるイソシアネート化合物(A)は、上述したように、分子内のすべてのNCO基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造を有するイソシアネート化合物であればよく、いわゆるイソシアネート単量体であっても、ポリイソシアネート単量体とポリオール等の活性水素含有化合物とから合成されるウレタンプレポリマーであってもよい。
イソシアネート単量体としては、具体的には、例えば、m−またはp−イソプロペニル−α,αジメチルベンゾルイソシアネート(サイテック社製のTMI)等のモノイソシアネート化合物(上記式(3)中、pが1);m−またはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物(上記式(3)中、pが2)が挙げられる。
ウレタンプレポリマーの合成に用いられるポリイソシアネート単量体としては、具体的には、例えば、上記イソシアネート単量体として例示したもののうち、ジイソシアネート化合物が挙げられる。
また、ウレタンプレポリマーの合成に用いられる活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオールが好適に挙げられる。ポリオールは、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格等を特に限定されない。具体的には、例えば、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、炭素−炭素結合からなる主鎖を有するポリマーポリオール等の一般的にポリオールとして用いられるものを広く用いることができる。
ウレタンプレポリマーとしては、具体的には、例えば、ジイソシアネート化合物と低分子多価アルコール類との付加体、ジイソシアネート化合物とポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールとから合成されるウレタンプレポリマーが挙げられる。
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール;ソルビトールなどの糖類が挙げられる。
このような低分子多価アルコール類とジイソシアネート化合物との付加体としては、低分子多価アルコールとしてトリメチロールプロパン(TMP)を用いた付加体(上記式(3)中、pが3)が好ましく挙げられる。具体的には、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とテトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)とから合成されるTMXDI・TMP付加体が好適に例示される。
TMXDI・TMP付加体としては、サイセン3160(サイテック社)等の商品名で市販されているものを用いることができる。また、TMXDI・TMP付加体は、必ずしもOH:NCO完全付加体でなくてもよい。例えば、未反応原料を含んでいてもよい。
ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、通常、上述した低分子多価アルコール類から導かれるが、本発明では、更に芳香族ジオール類から導かれるものが好適に用いられる。この芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、ビスフェノールA構造(例えば、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(例えば、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造等のビスフェノール骨格を有するものが挙げられる。
低分子多価アルコール類および/または芳香族ジオール類から導かれるポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子多価アルコール類および芳香族ジオール類としてそれぞれ例示した化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)等のアルキレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオールが挙げられる。
ビスフェノール骨格を有するポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、ビスフェノールA(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)に、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドを付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとしては、低分子多価アルコール類および/または芳香族ジオール類と多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール)、ラクトン系ポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコールとの反応生成物などのヒドロキシカルボン酸が挙げられる。ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、プロピオンラクトン、バレロラクトン等の開環重合体が挙げられる。
ビスフェノール骨格を有するポリエステルポリオールとしては、低分子多価アルコール類に代えて、または低分子多価アルコール類とともに、ビスフェノール骨格を有するジオールを用いて得られる縮合系ポリエステルポリオールが挙げられる。縮合系ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールAとヒマシ油とから得られるポリエステルポリオール、ビスフェノールAとヒマシ油とエチレングリコールとプロピレングリコールとから得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
ウレタンプレポリマーを合成する際には、更に、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール等の炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオールも用いることができる。
上述したポリオールは2種以上併用することができる。
上記ウレタンプレポリマーとしては、具体的には、ポリオールとして、2官能もしくは3官能またはこれらを混合した多官能ポリプロピレングリコールなどを用いて得られる多官能ウレタンプレポリマーが好適に例示される。
また、ビスフェノール骨格を有するウレタンプレポリマー、特に、ビスフェノールA骨格を有するウレタンプレポリマーが好ましく用いられる。具体的には、ポリオールとして、ビスフェノールAとヒマシ油とから合成されるポリエステルポリオール、ビスフェノールAとエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとから合成されるポリエーテルポリオールなどを用いて得られるウレタンプレポリマーが好適に例示される。
このウレタンプレポリマーは、2種以上のポリオール成分を含有していてもよく、2種以上のビスフェノール骨格だけでなく、ビスフェノール骨格とともに他の構造のポリオール成分とを含有していてもよい。
また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、イソシアネート化合物(A)以外の一般的なイソシアネート化合物を少量併用することができる。
イソシアネート化合物(A)以外の一般的なイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。このような一般的なイソシアネート化合物は、貯蔵安定性を低下させるので、その使用量は、上記イソシアネート化合物(A)に対して10モル%未満とするのが好ましい。
<ケチミン化合物(B)>
本発明においては、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン(C=N)結合を有する化合物をケチミン化合物という。したがって、本発明においては、「ケチミン化合物」は、−HC=N結合を有するアルジミン化合物も含む。
ケチミン化合物(B)は、ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから合成されるケチミン(C=N)結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造を有している。即ち、ケチミン結合のα位に嵩高い基を有している。ここで、環員炭素原子は、芳香環を構成する炭素原子であっても、脂環を構成する炭素原子であってもよい。
ケチミン化合物(B)としては、具体的には、例えば、上述した嵩高い基が結合したケチミン結合を分子内に2個以上有するケチミンが好適に挙げられる。
ケチミン化合物(B)において、ケチミン炭素のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子を導入する際は、カルボニル基のα位に分岐状炭化水素基または環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒドが用いられる。このようなケトンまたはアルデヒドとしては、具体的には、例えば、ジイソプロピルケトン、下記式(4)で示される分岐状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒド;プロピオフェノン、ベンゾフェノン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサンカルボクスアルデヒド等の環状炭化水素基を有するケトンまたはアルデヒドが挙げられる。これらは2種以上を併用することができる。
Figure 2006282735
式中、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R8はメチル基またはエチル基を表し、R9は水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R10は水素原子またはメチル基を表す。
上記式(4)で示されるケトンまたはアルデヒドとしては、具体的には、例えば、メチルtert−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、ピバルアルデヒド(トリメチルアセトアルデヒド)、カルボニル基に分岐炭素原子が結合したイソブチルアルデヒド((CH3)2CHCHO)が挙げられる。
上記ケチミン化合物(B)は、上記ケトンまたはアルデヒドと、アミンとを反応させて得ることができる。アミンとしては、分子内にアミノ基を2個以上有するポリアミンが好適に用いられる。ポリアミンとしては、具体的には、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素原子にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール(PPG)(例えば、サンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400)のポリアミンを用いることができる。
また、ケチミン化合物(B)は、ケチミン炭素に嵩高い基が結合し、更にケチミン窒素にメチレンが結合しているものを用いるのが、貯蔵安定性と硬化性(硬化速度)との両方に優れた硬化性樹脂組成物が得られるという理由から好ましい。ケチミン窒素にメチレン基を導入する際は、下記式(5)で表されるポリアミンを用いることができる。
Figure 2006282735
式中、Rは有機基を表し、nは2以上の整数を表す。
上記式(5)で表されるポリアミンとしては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ポリエーテル骨格のジメチレンアミンであるH2N(CH2CH2O)2(CH22NH2(例えば、サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148)等のアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(例えば、デュポン・ジャパン社製のMPMD)、メタキシレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン(例えば、三和化学社製のX2000)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(例えば、三菱ガス化学社製の1,3BAC)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジアミンであるノルボルナンジアミン(例えば、三井化学社製のNBDA)が挙げられる。
これらのうち、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ジェファーミンEDR148、ポリアミドアミンを用いることが好ましい。
上記ケトンまたはアルデヒドと、上記ポリアミンとを反応させて得られるケチミン化合物(B)としては、具体的には、
メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチルtert−ブチルケトン(MTBK)と、ジェファーミンEDR148とから得られるもの、
メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチルtert−ブチルケトン(MTBK)と、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)とから得られるもの、
メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチルtert−ブチルケトン(MTBK)と、ノルボルナンジアミン(NBDA)とから得られるもの、
メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチルtert−ブチルケトン(MTBK)と、メタキシリレンジアミン(MXDA)とから得られるもの、
メチルイソプロピルケトン(MIPK)またはメチルtert−ブチルケトン(MTBK)と、ポリアミドアミン(X2000)とから得られるもの等が好適に例示される。
これらのうち、MIPKまたはMTBKと、NBDAとから得られるもの、MIPKと1,3BACとから得られるものが、優れた硬化性を発現する理由から好ましく、MIPKまたはMTBKと、X2000とから得られるものが、湿潤面に対し優れた接着性を発現するため好ましく用いられる。
また、アルジミンとポリアミンとの組み合わせから得られるケチミン化合物(B)としては、具体的には、ピバルアルデヒドと、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)またはジェファーミンEDR148、メタキシリレンジアミン(MXDA)との組み合わせ;イソブチルアルデヒドと、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)またはジェファーミンEDR148、メタキシリレンジアミン(MXDA)との組み合わせ;シクロヘキサンカルボクスアルデヒドと、ノルボルナンジアミン(NBDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)またはジェファーミンEDR148、メタキシリレンジアミン(MXDA)との組み合わせ等から得られるものが好適に例示される。
ケチミン化合物(B)は、例えば、上記ケトンまたはアルデヒドと上記ポリアミンとを無溶媒下、またはベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱環流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物におけるケチミン化合物(B)の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物が後述するエポキシ樹脂(D)を含有しない場合は、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基とケチミン化合物(B)のケチミン結合との量(NCO/C=N)が、当量比で、0.01〜4となる量であるのが好ましく、0.8〜2.0となる量であるのがより好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物が後述するエポキシ樹脂(D)を含有する場合は、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基およびエポキシ樹脂(D)のエポキシ基の合計とケチミン化合物(B)のケチミン結合との量((NCO+エポキシ基)/C=N)が、当量比で、0.01〜4となる量であるのが好ましく、0.8〜2.0となる量であるのがより好ましい。
上記範囲であると、貯蔵安定性および速硬化性のいずれにも良好な硬化性樹脂組成物が得られる。
メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)などの汎用ケトンと、アミノ基にメチレン基が結合したアミンとから得られるケチミン化合物では、ケチミン窒素が剥き出しになっているため、ある程度の塩基性を示す。したがってケチミンとイソシアネート化合物とを混合した組成物は、貯蔵中にゲル化が進行するなど、貯蔵安定性に問題がある。
これに対し、本発明に用いられるケチミン化合物(B)は、ケチミン窒素の近傍またはケチミン窒素に、嵩高い基を有しており、ケチミン窒素は置換基で保護されている。即ち、立体障害により、その塩基性は大幅に弱められており、優れた貯蔵安定性を発現する。
更に、本発明に用いられるケチミン化合物(B)は、使用時には、空気中の湿気と接触することにより、容易に原料のアミンとケトンまたはアルデヒドに分解され、その際、生成した活性なアミンにより、優れた硬化性を発現する。
また、従来公知のケチミンを潜在性硬化剤として用いても、TDI(トリレンジイソシアネート)、XDI(キシレンジイソシアネート)などのイソシアネート基の近くに嵩高い基を持たないイソシアネート化合物を用いた場合には、硬化速度は速いが十分な貯蔵安定性が得られず、実用性のある硬化性樹脂組成物を得ることは困難である。
これに対して、本発明においては、上記のような特定構造のケチミン化合物(B)と、イソシアネート基に嵩高い基が結合したイソシアネート化合物(A)と、後述する特定のシリルエステル化合物(C)を組み合わせることによって、硬化性と貯蔵安定性とを極めて高いレベルで両立させることが可能である。
<シリルエステル化合物(C)>
本発明に用いられるシリルエステル化合物(C)は、下記式(1)で表されるシリルエステル基を有する化合物である。
−Si−(OCOR1k (1)
式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表す。
1は炭素原子数6〜17のアルキル基であるのが好ましい。この場合、本発明の硬化性樹脂組成物は、揺変性および打ち継ぎ性に優れる。
炭素原子数1〜25のアルキル基としては、例えば、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、3−エチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1−メチルへキシル基、2−メチルへキシル基、3−メチルへキシル基、4−メチルへキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、1−エチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2,2,3−トリメチルブチル基が挙げられる。中でも、n−ヘプチル基、1−エチルペンチル基が好ましい。
式(1)で表されるシリルエステル基としては、例えば、下記の各式で表されるシリルエステル基が挙げられる。
Figure 2006282735
式(1)で表されるシリルエステル基は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリルエステル化合物(C)は、式(1)で表されるシリルエステル基のSi原子がシロキサン結合(−Si−O−)を形成して重合体を構成していてもよく、シロキサン結合を形成していない単量体であってもよい。
式(1)で表されるシリルエステル基のSi原子がシロキサン結合を形成している場合、Si原子に結合しうる基としては、炭素原子数1〜3の炭化水素基が好適に挙げられる。
式(1)で表されるシリルエステル基のSi原子がシロキサン結合を形成していない場合、Si原子に結合する(4−k)個の基としては、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3の炭化水素基が好適に挙げられる。
シリルエステル化合物(C)は、更に、下記式(6)で表されるエーテル基を有することができる。
Figure 2006282735
式(6)中のR12は、炭素原子数2または3の2価の炭化水素基を表す。具体的には、エチレン基、トリメチレン基(−CH2CH2CH2−)、プロピレン基(−CH(CH3)−CH2−)であるのが好ましく、トリメチレン基であるのがより好ましい。
13は、炭素原子数2〜4の2価の炭化水素基を表す。炭素原子数2〜4の2価の炭化水素基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基が挙げられる。中でもエチレン基、プロピレン基が好ましい。rが2以上である場合、R13は同一であっても異なっていてもよい。なお、式(6)中、−(OR13r−は、その配列について、特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。中でも、R13が、エチレン基またはプロピレン基のブロック体であることが好ましい。
14は1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の炭化水素基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
rは1以上の整数を表し、5以上であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。
式(6)で表されるエーテル基は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリルエステル化合物(C)は、式(6)で表されるエーテル基のSi原子がシロキサン結合を形成して重合体を構成していてもよい。
シリルエステル化合物(C)が式(6)で表されるエーテル基を有すると、本発明の硬化性樹脂組成物は、揺変性が優れたものになる。即ち、揺変性が大きくなる。
シリルエステル化合物(C)が式(6)で表されるエーテル基を有し、かつ、式(1)で表されるシリルエステル基のSi原子および式(6)で表されるエーテル基のSi原子がシロキサン結合がいずれもシロキサン結合を形成している場合、シリルエステル化合物(C)中の式(1)で表されるシリルエステル基と式(6)で表されるエーテル基の量とは、式(6)で表されるエーテル基1個に対して、式(1)で表されるシリルエステル基が、1〜100個であるのが好ましく、5〜50個であるのがより好ましく、20〜50個であるのがさらに好ましい。式(1)で表されるシリルエステル基と式(6)で表されるエーテル基との量がこのような範囲である場合、揺変性と打ち継ぎ性とのバランスに優れる。
シリルエステル化合物(C)は、式(1)で表されるシリルエステル基を、分子内部および分子末端の一方または両方に有することができる。また、シリルエステル化合物(C)は、式(6)で表されるエーテル基を、分子内部および分子末端の一方または両方に有することができる。
シリルエステル化合物(C)は、更に、シロキサン単位を有することができる。シロキサン単位としては、例えば、下記式(7)で表されるシロキサン単位が挙げられる。
Figure 2006282735
式(7)中、R15は、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、R16は、1価の炭化水素基を表す。1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の飽和炭化水素基;フェニル基、トリル基、ベンジル基、スチリル基等の芳香族炭化水素基;グリシジル基のようなエポキシ基含有アルキル基が挙げられる。
式(7)で表されるシロキサン単位としては、例えば、下記式(8)で表されるシロキサン単位が挙げられる。
Figure 2006282735
なお、これらのシロキサン単位は、その配列について、特に限定されず、例えば、ランダム、ブロック、ランダムとブロックとの混合による配列が挙げられる。
シリルエステル化合物(C)は、その分子末端について特に限定されない。末端基としては、例えば、−SiR17 3、式(1)で表されるシリルエステル基、式(6)で表されるエーテル基が挙げられる。
式(1)で表されるシリルエステル基がシリルエステル化合物(C)の分子末端にある場合、式(1)で表されるシリルエステル基はシリルエステル化合物(C)の片末端または両末端に結合することができる。また、式(1)で表されるシリルエステル基がシリルエステル化合物(C)の分子末端にある場合、式(1)で表されるシリルエステル基は、シリルエステル化合物(C)の主鎖および置換基と結合する。このような場合、式(1)で表されるシリルエステル基に結合する置換基は特に限定されない。式(6)で表されるエーテル基がポリシロキサンの分子末端にある場合も同様である。
上記の−SiR17 3において、R17は、メチル基、エチル基またはフェニル基を表し、同一でも異なっていてもよい。中でも、R17がすべてメチル基であるのが好ましい態様の一つとして挙げられる。また、ポリシロキサンは、その末端基として、−SiR17 3で表される基をポリシロキサンの両側に含有するのが好ましい態様の一つとして挙げられる。
式(1)で表されるシリルエステル基は、そのSi原子がシロキサン結合を形成している場合、その量が、シリルエステル化合物(C)に含有されるシロキサン単位の全量中、50〜98モル%であるのが好ましく、60〜98モル%であるのがより好ましい。
式(6)で表されるエーテル基は、そのSi原子がシロキサン結合を形成している場合、その量が、ポリシロキサンに含有されるシロキサン単位の全量中、10モル%以下であるのが好ましい。
また、シリルエステル化合物(C)は、シロキサン結合を有する重合体である場合、その重合度が、2〜1000であるのが好ましく、10〜100であるのがより好ましい。シリルエステル化合物(C)の重合度が、このような範囲である場合、揺変性に優れる。また、ポリシロキサンの扱いの点で好ましい。
シリルエステル化合物(C)は、その製造方法を特に限定されない。例えば、Si−H基含有ポリシロキサンとカルボン酸とを同時に反応させる方法が挙げられる。また、シリルエステル化合物(C)が式(6)で表されるエーテル基を含有する場合は、例えば、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとを反応させて式(6)で表されるエーテル基を形成した後、これにカルボン酸を反応させて式(1)で表されるシリルエステル基を形成してポリシロキサンを製造する方法、Si−H基含有ポリシロキサンとアルケニルエーテルとカルボン酸とを同時に反応させる方法が挙げられる。これらの製造方法には、触媒として、パラジウム、ロジウム、ニッケル、白金等の第VIII族の遷移金属を使用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物におけるシリルエステル化合物(C)の含有量は、イソシアネート化合物(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、0.1〜5質量部であるのが好ましく、0.1〜3質量部であるのがより好ましい。上記範囲であると、貯蔵安定性および速硬化性のいずれにも優れる。
<エポキシ樹脂(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、エポキシ樹脂(D)を含有するのが好適な態様の一つである。エポキシ樹脂(D)を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、モルタル、金属等に対しても優れた接着性を発現することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)を含有しても、本発明の硬化性樹脂組成物は、貯蔵安定性がよく、速硬化性に優れる。また、硬化物の強度が極めて高くなる。これは、ケチミン化合物(B)から発生したアミンの反応がイソシアネート化合物(A)とエポキシ樹脂(D)に対して同等に進行するためと考えられる。
本発明において使用することのできるエポキシ樹脂(D)は、エポキシ基を1分子中に2個以上有するポリエポキシ化合物であれば、特に限定されない。
エポキシ樹脂(D)としては、具体的には、例えば、ビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂およびその誘導体、グリセリンのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ポリアルキレンオキサイドのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラックのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち、ビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が、汎用のエポキシ樹脂であることから好適に用いられる。
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(D)の含有量は、イソシアネート化合物(A)100質量部に対し、1000質量部以下であるのが好ましく、500質量部以下であるのがより好ましい。エポキシ樹脂(D)の含有割合が上記範囲であると、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が硬化性、接着性、機械的強度等に優れるため好ましい。
また、本発明においては、エポキシ樹脂(D)とともに、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂等のポリマーを含有することができる。
<N−シリルアミド化合物(E)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、下記式(2)で表される官能基を有するN−シリルアミド化合物(E)を含有するのが好適な態様の一つである。
−CONH−Si≡ (2)
N−シリルアミド化合物(E)は、上記式(2)で表される官能基を有している。具体的には、下記式(2′)で表される構造を有していることが好ましい。
(R17−CONH)4-n−Si−R18 n (2′)
式中、nは0〜3の整数を表し、R17はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数5〜21、好ましくは11〜20の炭化水素基を表し、nが0、1または2のとき、複数のR17は同一であっても異なっていてもよい。R18は炭素原子数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基を表し、nが2または3のとき、複数のR18は同一であっても異なっていてもよい。
N−シリルアミド化合物(E)は、より具体的には、上記式(2′)で表される構造およびその部分加水分解縮合物を含む。
N−シリルアミド化合物(E)は、容易に加水分解し、アミド化合物(−CONH2基含有化合物)とシラノール化合物(HO−Si≡基含有化合物)とを生成する。そのため、N−シリルアミド化合物(E)を含有する硬化性樹脂組成物の水分を容易に除去することができ、貯蔵安定性の向上に寄与する。また、生成したアミド化合物はチクソ性を向上させる役割をする。
したがって、本発明の硬化性樹脂組成物においては、N−シリルアミド化合物(E)が含有されることにより、チクソ性が向上し、かつ、貯蔵後においても高いレベルのチクソ性が維持される。これにより、優れた作業性が得られる。
上記R17で表される炭化水素基としては、具体的には、例えば、フェニル基、ベンジル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ペンタデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられ、これらのうち、フェニル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基であることが好ましい。
2は炭素原子数1〜3のアルキル基またはアルコキシ基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、これらのうち、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基であることが好ましい。
このようなN−シリルアミド化合物(E)の合成方法は、特に限定されないが、例えば、上記R17基を含むカルボン酸アミドと、Si−R18 n4-n(nおよびR18は式(2′)と同様であり、Yはハロゲン、好ましくは塩素である。)で表されるハロゲン化シラン化合物とから合成することができる。
上記カルボン酸アミドとしては、具体的には、例えば、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの直鎖飽和脂肪酸;カプロレイン酸、オレイン酸、セトレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸;安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族カルボン酸等から選ばれるカルボン酸のアミド誘導体、またはこれらの2種以上を組み合わせたものが挙げられる。
また、上記ハロゲン化シラン化合物としては、具体的には、例えば、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、2−クロロエチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、アリルトリクロロシラン、3−ブロモプロピルトリクロロシラン、メチルビニルトリクロロシラン、エチルメチルジクロロシラン、トリメチルブロモシラン、ジビニルジクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、ペンチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、6−トリクロロシリル−2−ノルボルネン、2−トリクロロシリルノルボルナン、2−(4−シクロヘキシルニルエチル)トリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、テトラデシルトリクロロシラン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,2−ビス(ジメチルクロロシリル)エタン、1,4−ビス(ジメチルクロロシリル)ベンゼン等のクロロシラン化合物が挙げられる。これらを2種以上を組み合わせて使用してもよい。
N−シリルアミド化合物(E)は、上記カルボン酸アミドと、クロロシラン化合物とを活性水素を持たないヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、クロロホルム等を溶媒とし、トリエチルアミン、ピリジン等の第三級アミンを脱塩化水素剤として、室温から100℃までの温度で反応させて得ることができる。また、脱塩化水素剤を使用せずに、120〜180℃で生成する塩化水素ガスを除きながら合成することもできる。更に、触媒として、トリエチルアミン、ピリジン等を用いることができる。
N−シリルアミド化合物(E)の他の合成方法として、例えば、トリメチルシリル基の結合したアミド化合物は、ヘキサメチルジシラザンとアミド化合物とを、サッカリンの存在下、80〜150℃で、生成するアンモニアを溜去させながら反応させることによっても得る方法が挙げられる。
また、本発明におけるN−シリルアミド化合物(E)は、1種の化合物のみから構成されていてもよく、また2種以上の化合物の混合物から構成されていてもよい。
上記N−シリルアミド化合物(E)は、後述する炭酸カルシウム(F)を含有する硬化性樹脂組成物に含ませると、少量の添加でチクソ性を付与することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物におけるN−シリルアミド化合物(E)の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂(D)を含有しない場合は、イソシアネート化合物(A)100質量部に対して、0.5〜30質量部であるのが好ましく、1〜20質量部であるのがより好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂(D)を含有する場合は、イソシアネート化合物(A)およびエポキシ樹脂(D)の合計100質量部に対して、0.5〜30質量部であるのが好ましく、1〜20質量部であるのがより好ましい。
N−シリルアミド(E)の含有量がこの範囲であると、物性に悪影響を与えることなく貯蔵安定性を改善することができる。
<炭酸カルシウム(F)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、更にウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム(F)を含有するのが好適な態様の一つである。
従来、チクソ性付与のために、一液型硬化性組成物のウレタン一液型シーラント等に配合される炭酸カルシウムは、貯蔵安定性と濡れ性の観点から、脂肪酸や脂肪酸エステルで表面処理されることが行われていた。しかしながら、これらの表面処理された炭酸カルシウムを用いても、貯蔵安定性が良好でないという問題があった。
本発明では、ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム(F)を用いるのが好ましい。このような表面処理炭酸カルシウムを用いると、得られる本発明の硬化性樹脂組成物が貯蔵安定性に優れたものとなり、硬化性も良好となる。
上記ウレタン化合物は、ウレタン結合(−NHCOO−)を分子内に少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されず、イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られるもの、およびイソシアネート化合物とカルボン酸との反応により得られるものであってもよく、更に、ウレタン化合物とイソシアネート化合物との反応により得られるアロハネートであってもよい。
上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環系、もしくはこれらの2種以上を混合したものを用いることができる。
上記ポリオール化合物としては、第一級アルコール、第二級アルコール、フェノール等のアルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、炭素−炭素結合よりなる主鎖を有するポリマーポリオールなどの一般的にポリオールとして用いられるものを広く用いることができる。
また、上記ウレタン化合物は、下記式(9)で表されるウレタン化合物であることが好ましい。
Figure 2006282735
式中、Xはイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基、またはアミン化合物からアミノ基を除いた残基を表す。mは1〜4の整数を表し、R19は炭化水素基を表し、mが2、3または4のとき、複数のR19は同一であっても異なっていてもよい。
上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成方法としては、具体的には、例えば、イソシアネート化合物(X−(NCO)n)とアルコール(R3OH)とを反応させる方法、イソシアネート化合物とカルボン酸とを反応させる方法、塩化カルボニル(X−(OCOCl)n)とアミンとを反応させる方法等を用いることができる。
上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成に用いられるイソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を1〜4個有する化合物で、ウレタン樹脂等の合成に利用される公知のイソシアネート化合物がすべて利用可能である。
上記イソシアネート化合物としては、モノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、テトライソシアネート化合物等が以下に例示される。
モノイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、フェニルイソシアネート、ステアリルイソシアネートが挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4、4′ージフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタデシルジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート;キシレンジイソシアネート等のアリール脂肪族イソシアネート;上記各イソシアネートの変性イソシアネートが挙げられる。
トリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、上記ジイソシアネート化合物等と、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類との反応生成物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物がイソシアヌレート環を作ることにより得られる1分子に3個のイソシアネート基を持つ化合物が挙げられる。
テトライソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、上記ジイソシアネート化合物等と、ジアルコールとの反応により得られるジウレタンと、更に2分子のジイソシアネートとの反応により得られる1分子に4個のイソシアネート基を持つ化合物が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成に用いられるアルコール(R19OH)としては、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール等の低級アルコール;n−オクチルアルコール、2−エチルヘキサノール、ノニルアルコール、n−デシルアルコール、ウンデシルアルコール、n−トリデシルアルコール、ミスチルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコールが挙げられる。
上記イソシアネート化合物とアルコールの組み合わせとしては、特に、トリレンジイソシアネートとステアリルアルコールとの組み合わせが好ましい。
上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成に用いられるカルボン酸としては、具体的には、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸などの脂肪酸、樹脂酸が挙げられる。
上述のイソシアネート化合物とカルボン酸の組み合わせとしては、特に、トリレンジイソシアネートとステアリン酸との組み合わせが好ましい。
また、上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成に用いられる塩化カルボニル(X−(OCOCl)n)としては、具体的には、例えば、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸プロピル、クロロ炭酸ブチル、クロロ炭酸ベンジル、クロロ炭酸オクチル、クロロ炭酸ノニル、クロロ炭酸デシル、クロロ炭酸ウンデシル、クロロ炭酸オクダデシル、クロロ炭酸ベンジルが挙げられる。
上記式(9)で表されるウレタン化合物の合成に用いられるアミンとしては、具体的には、例えば、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンが挙げられる。
上述の塩化カルボニルとアミンの組み合わせとしては、特に、m−フェニレンジアミンとクロロ炭酸オクダデシルとの組み合わせが好ましい。
上記式(9)中のR19は、炭化水素基であるが、R3の少なくとも一つは、炭素原子数8以上の炭化水素基であるのが好ましい。1分子中に炭素原子数8以上の炭化水素基が存在すると、貯蔵安定性がよくなるため好ましい。
また、上記式(9)で表されるウレタン化合物を含め、本発明に用いられるウレタン化合物は、融点が50℃以上であることが、硬化性樹脂組成物の製造時に、ウレタン化合物が溶融しないという理由から好ましい。
上記式(9)で表されるウレタン化合物を含め、本発明に用いられるウレタン化合物の使用量は、特に制限はないが、処理前の炭酸カルシウムに対して、1〜20質量%であるのが好ましく、2〜10質量%であるのがより好ましい。ウレタン化合物の使用量がこの範囲であると、表面処理の効果が十分得られ、硬化後の組成物の物性が低下しない。
本発明に用いられる炭酸カルシウム(F)の表面処理は、上記ウレタン化合物に加えて、カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩を併用してもよい。カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩と、上記ウレタン化合物とを、炭酸カルシウム(F)の表面処理に併用することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上するため好ましい。
カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩としては、一般に炭酸カルシウムの処理剤として使用されるものがすべて利用可能であり、具体的には、例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸、樹脂酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはこれらの金属塩が挙げられる。
上記金属塩中の金属としては、具体的には、例えば、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムが挙げられる。これらのうち、特に脂肪酸の金属塩を用いることが好ましい。
カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩を用いた炭酸カルシウムの表面処理の方法としては、特に限定されず、例えば、水スラリー中、含水ケーキ中で炭酸カルシウムと、カルボン酸、スルホン酸、あるいはこれらの金属塩とをミキサー等で激しくかくはんする方法が挙げられる。
カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩の使用量は、特に制限はないが、炭酸カルシウムに対して、カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩0.5〜10質量%であるのが好ましく、1〜8質量%であるのがより好ましい。カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩の使用量がこの範囲であると、表面処理の効果が十分得られ、一液型湿気硬化性樹脂として十分な貯蔵安定性が得られるため好ましい。
処理される炭酸カルシウムは、BET法による比表面積が3m2/g以上であるのが好ましい。また、沈降炭酸カルシウムを用いることが、チクソ性が優れたものとなる理由から好ましい。
また、炭酸カルシウムを表面処理するために添加する上記ウレタン化合物、更に所望により添加するカルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩の添加する方法は特に限定されず、具体的には、例えば、炭酸カルシウムまたはすでにカルボン酸、スルホン酸もしくはこれらの金属塩で処理された炭酸カルシウムと、本発明に用いられるウレタン化合物とを混合し、そのウレタン化合物の融点以上に加熱する方法(乾式処理);炭酸カルシウムまたはすでにカルボン酸、スルホン酸もしくはこれらの金属塩で処理された炭酸カルシウムの水スラリーに、本発明に用いられるウレタン化合物を混合し、そのウレタン化合物の融点以上に加熱し、脱水、乾燥、粉砕する方法(湿式処理);通常の沈降炭酸カルシウムを製造する際に、好ましくは粒径が100μm以下の本発明に用いられるウレタン化合物を添加し、そのウレタン化合物の融点以上の温度で乾燥する方法(カルボン酸、スルホン酸またはこれらの金属塩は、この工程中、任意の段階で添加することができる。)が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物における炭酸カルシウム(F)の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂(D)を含有しない場合は、イソシアネート化合物(A)100質量部に対して、1〜500質量部であるのが好ましく、10〜300質量部であるのがより好ましい。
また、本発明の硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂(D)を含有する場合は、イソシアネート化合物(A)およびエポキシ樹脂(D)の合計100質量部に対して、1〜500質量部であるのが好ましく、10〜300質量部であるのがより好ましい。
炭酸カルシウム(F)の含有量がこの範囲であると、適切な初期チクソ性および作業性を得ることができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、その他の添加剤、具体的には、例えば、充填剤、可塑剤、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤を含有することができる。
充填剤としては、各種形状の有機または無機のものがあり、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;けいそう土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸エステル処理物等を用いることができる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等を用いることができる。
更に、連鎖移動剤を用いずに150〜350℃の重合温度で重合され、数平均分子量が500〜5000のアクリル重合体を用いることができる。
シランカップリング剤としては、具体的には、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に例示される。
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
老化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
接着性付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
上記各添加剤は適宜に組み合わせて併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されないが、上記各成分(イソシアネート化合物(A)、ケチミン化合物(B)、シリルエステル化合物(C)ならびに所望により用いられるエポキシ樹脂(D)、N−シリルアミド化合物(E)、炭酸カルシウム(F)および添加剤)を、減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、混合ミキサー等のかくはん装置を用いて十分に混練し、均一に分散させる方法が好ましい。
得られた本発明の硬化性樹脂組成物は、密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.硬化性樹脂組成物の調製
(実施例1〜6および比較例1〜3)
第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、かくはん機を用いて混合させて硬化性樹脂組成物を得た。
2.硬化性樹脂組成物の評価
得られた各硬化性樹脂組成物について、以下に示すように、貯蔵安定性、速硬化性、接着性およびシート物性の評価を行った。結果を第1表に示す。
(1)貯蔵安定性
BS型粘度計を用い、ロータ#7で、硬化性樹脂組成物の調製直後(初期)および60℃で3日間養生した後の粘度を測定し、貯蔵安定性を評価した。
(2)速硬化性
硬化性樹脂組成物を23℃、50%RHの条件下に放置し、ポリエチレンフィルムで触ってタックがなくなるまでの時間(タックフリータイム)を測定した。
(3)接着性
被着体として、モルタル、アルミニウム、ステンレスSUS304および軟質塩化ビニル(軟質PVC)をそれぞれ用いた。被着体に硬化性樹脂組成物をビード打ちし、23℃、50%RHの条件下に7日間放置した後、ナイフカットによる手はく離試験を行い、破壊の状態を目視により観察し、接着性を評価した。
表中、硬化性樹脂組成物が擬集破壊をしたものを○、界面はく離をしたものを×とした。
(4)シート物性(ダンベル物性)
JIS K6251−1993に準じて、硬化性樹脂組成物を23℃、50%RHの条件下に7日間放置した後、厚さ2mmのダンベル状試験片(ダンベル状3号形)に切り出し、引張速度200mm/minで、最大強さ(Tmax)および破断伸び(EB)を測定した。
Figure 2006282735
第1表中の各成分は、以下のとおりである。
・TMXDIプレポリマー:3官能PPG(エクセノール5030、旭硝子社製、数平均分子量5,000)および2官能PPG(エクセノール3020、旭硝子社製、数平均分子量3,000)の混合物(3官能PPG:2官能PPG=3:1(質量比))と、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI、サイテック社製)とを、NCO/OH=2.0となる量比で混合させ、スズ触媒の存在下で、80℃で8時間、かくはんしながら反応させて得られたプレポリマー(イソシアネート基含有率2.1質量%)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、YD−128、東都化成社製
・炭酸カルシウム:ViscoliteMBP、白石カルシウム社製、BET法による比表面積が18m2/gである沈降性炭酸カルシウム360gに、下記式(10)で表されるウレタン化合物を18g加え、ミキサーを用いて、室温で15分、110℃で1時間、乾式でかくはん処理して得られた、ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム
Figure 2006282735
・ケチミン化合物:HOK−01、東洋合成工業社製、下記式(11)で表される化合物
Figure 2006282735
・N−シリルアミド化合物:後述する方法で、ステアリン酸アミドとヘキサメチルジシラザンとから下記式により合成されたN−トリメチルシリルステアリン酸アミド
CH3(CH216CONH2+1/2(CH33SiNHSi(CH33
→CH3(CH216CONH−Si(CH33+1/2NH3
<N−シリルアミド化合物の合成>
ステアリン酸アミド800gに、トルエン400gおよびサッカリン0.5gを加え、100℃に加熱して溶解させた。これにヘキサメチルジシラザン260gを滴下し、滴下終了後、130℃で4時間加熱した。その後、未反応のヘキサメチルジシラザンおよびトルエンを減圧留去し、N−トリメチルシリルステアリン酸アミドを得た。
得られたN−シリルアミド化合物(E)は、下記式(12)で表される構造を有していることが、IRスペクトル、1H−NMRスペクトルおよびMSスペクトルにより確認された。
Figure 2006282735
・シリルエステル化合物1:下記式(13)で表されるシリルエステル化合物(式中、pは約30)
・シリルエステル化合物2:下記式(14)で表されるシリルエステル化合物(式中、pは約30)
・シリルエステル化合物3:下記式(15)で表されるシリルエステル化合物(SZ6075、東レダウコーニング社製)
Figure 2006282735
・ステアリン酸:ルナックS−70、花王社製
第1表から明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物(実施例1〜8)は、従来の硬化性樹脂組成物(比較例1)に比べて、貯蔵安定性、種々の被着体に対する接着性およびシート物性が同等であるが、速硬化性が格段に優れていた。
なお、シリルエステル化合物の量が多すぎる場合(比較例2)およびシリルエステル化合物の代わりに酸を用いた場合(比較例3)は、貯蔵安定性に劣っていた。

Claims (4)

  1. 分子内のすべてのイソシアネート基に第二級炭素原子または第三級炭素原子が結合した構造のイソシアネート化合物(A)と、
    ケトンまたはアルデヒドと、アミンとから導かれるケチミン結合を有し、ケチミン炭素または窒素の少なくとも一方のα位に、分岐炭素原子または環員炭素原子が結合した構造のケチミン化合物(B)と、
    下記式(1)で表されるシリルエステル基を有するシリルエステル化合物(C)と
    を含有し、
    前記シリルエステル化合物(C)の含有量が、前記イソシアネート化合物(A)100質量部に対して、0.05〜10質量部である、硬化性樹脂組成物。
    −Si−(OCOR1k (1)
    (式(1)中、R1は水素原子または炭素原子数1〜25のアルキル基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
  2. 更に、エポキシ樹脂(D)を含有する請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 更に、下記式(2)で表される官能基を有するN−シリルアミド化合物(E)を含有する請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
    −CONH−Si≡ (2)
  4. 更に、ウレタン化合物で表面処理された炭酸カルシウム(F)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
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