JP2006282509A - 抑うつ気分の改善用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 黄体期の女性に現れる抑うつ気分などを簡易かつ安全に改善する手段を提供する。
【解決手段】 酢酸リナリルを有効成分として含有することを特徴とする抑うつ気分の改善用組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】 酢酸リナリルを有効成分として含有することを特徴とする抑うつ気分の改善用組成物。
【選択図】 なし
Description
本発明は、抑うつ気分を改善するための組成物、及び抑うつ気分の改善方法に関する。この組成物等を利用することにより、黄体期の女性などに現れる抑うつ気分を改善することができる。
PMS(premenstrual syndrome :PMS)は月経前緊張症ともよばれ、月経開始3〜10日前から始まる精神的、身体的症状である。精神的症状として、いらいら、憂鬱、怒りやすい、集中力低下、不安、疲労感、不眠傾向があり、身体症状として乳房緊満感、乳房痛、乳頭過敏、腹部膨満感、便秘、嘔気、浮腫み、尿量減少があり、月経のある20〜40%女性にみられると報告されている。PMSは黄体期に出現することから、内分泌環境の変化(プロゲステロンの不足、エストロゲンとプロゲステロンの比高値説など)が病因と考えられているが、その本体症状、原因は究明されておらず、ホルモン療法以外の治療法がないのが現状である。また、これらの症状は一定期間が過ぎれば症状が消失すること、副作用を心配しホルモン療法を敬遠する傾向などから、多数の女性がそれらの症状に対し、特別な手だてを持っていない。
最近、代替療法として、アロマセラピーなど、匂い物質による健康改善法が広まりつつある。用いられる精油は古くから医薬品、香水、香料として用いられており、人体に危険のないオイルとして紹介されている。匂い物質として用いた場合、嗅覚情報が大脳新皮質を介さず、直接情動の中枢である大脳辺縁系や本能(摂食や睡眠)やホルモン中枢である視床下部に入力されることを考慮すると、経口、経静脈、経皮的ルートを介さないため、リスクの少ない緩和ケア法として位置づけられている。
ラベンダーオイルは、アロマセラピーに用いられる代表的な精油であり、鎮静・鎮痛効果、リラックス効果があることが知られている。しかし、ラベンダーオイル中には30種類以上の化学成分が含まれており、どの成分がその効果を表しているかを明確にした研究は皆無に等しい。さらに精油そのものが植物から抽出しているため、収穫年、気候、場所、抽出方法により成分が異なり、一定の質を保つのは難しい。最近、ガスクロマトグラフィーによる、精油の化学物質の分析が可能になり、精油に含まれる単一物質の検討の必要性が指摘されている。
酢酸リナリルは、ラベンダーオイルの主成分の一つであり、ラベンダーオイルと同様に鎮静効果(特許文献1)やストレス緩和効果(特許文献2)があることが報告されている。
上述のようにPMSは様々な不快症状をもたらすにもかかわらず、有効な対処法がないのが現状である。本発明の目的は、PMSの不快症状を安全かつ手軽に改善する手段を提供することにある。
本発明者は、ラベンダーオイル中に含まれる酢酸リナリルに注目し、PMSの症状が現れる黄体期の女性を対象として、酢酸リナリルの与える心理的効果について調べた。その結果、酢酸リナリルが抑うつ気分の改善に効果があることを見出した。前述したように、酢酸リナリルに鎮静効果やストレス緩和効果があることは知られていたが、抑うつ気分を改善することは本発明者によって初めて明らかにされたことである。
本発明は、以上のような知見に基づき完成されたものである。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供するものである。
(1)酢酸リナリルを有効成分として含有することを特徴とする抑うつ気分の改善用組成物。
(2)酢酸リナリルを唯一の芳香物質として含有することを特徴とする(1)記載の抑うつ気分の改善用組成物。
(3)抑うつ気分が、黄体期の女性に現れる抑うつ気分であることを特徴とする(1)又は(2)記載の抑うつ気分の改善用組成物。
(4)抑うつ気分を呈する者に対して、酢酸リナリルを投与することを特徴とする抑うつ気分の改善方法。
(5)抑うつ気分を呈する者が、黄体期の女性であることを特徴とする(4)記載の抑うつ気分の改善方法。
(6)酢酸リナリルを投与する手段が、酢酸リナリルによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達される手段であることを特徴とする(5)記載の抑うつ気分の改善方法。
(7)酢酸リナリルによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達される手段が、酢酸リナリルを含む空気を抑うつ気分を呈する者に鼻から吸入させる手段、又は酢酸リナリルを含む空気中に抑うつ気分を呈する者を曝露する手段であることを特徴とする(6)記載の抑うつ気分の改善方法。
本発明の組成物中に含まれる酢酸リナリルは、ラベンダーオイル等のエッセンシャルオイルに含まれ、人体に害の少ない安全性の高い物質である。従って、本発明の組成物は、副作用を心配することなく、手軽に抑うつ気分の改善のために使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の抑うつ気分の改善用組成物は、酢酸リナリルを有効成分として含有することを特徴とするものである。
使用する酢酸リナリルは、天然物(例えば、ラベンダー、ベルガモット、プチグレン、クラリセージ、ネロリ、ジャスミンなど)から抽出されたものでもよく、人工的に合成されたものであってもよい。本発明の抑うつ気分の改善用組成物中には、酢酸リナリル以外の他の芳香物質が含まれていてもよいが、酢酸リナリルが唯一の芳香物質として含まれていることが好ましい。ここでいう「酢酸リナリル以外の他の芳香物質」とは、アロマセラピーに用いられるエッセンシャルオイル中に含まれる酢酸リナリル以外の芳香物質をいい、特にラベンダーオイル中に含まれる芳香物質(例えば、リナロール、ラバンデュロール、リモネン)をいう。
改善対象とする抑うつ気分としては、黄体期の女性に現れる抑うつ気分(PMSによる抑うつ気分)、出産直後に女性に現れる抑うつ気分(マタニティーブルーによる抑うつ気分)、更年期の女性に現れる抑うつ気分などの女性特有の抑うつ気分を例示できるが、これらに限定されない。
本発明の抑うつ気分の改善用組成物は酢酸リナリルのみからなっていてもよく、また、酢酸リナリルを適当な溶媒に希釈して調製してもよい。溶媒としては、例えば、ジプロピレングリコール、ミネラルオイル、クエン酸トリエチル、エタノール、ベンジルベンゾエイトなどを使用することができ、希釈時の酢酸リナリル濃度は1〜10%程度とすることができる。
本発明の抑うつ気分の改善用組成物の使用方法は、抑うつ気分の改善効果が発揮できるような方法であれば特に限定されず、例えば、本発明の抑うつ気分の改善用組成物を少量染み込ませた布などを、鼻のあたりに近づけ、酢酸リナリルを含む空気を鼻から吸入する方法を示すことができる。このとき吸入させる時間は特に限定されないが、10分〜1時間程度が適当である。また、本発明の抑うつ気分の改善用組成物中の酢酸リナリルをディフューザーなどによって空気中に揮発させ、この空気中に使用者が一定時間曝露されるような使用方法も例示できる。曝露時間は特に限定されないが、10分〜1時間程度が適当である。
本発明の抑うつ気分の改善方法は、抑うつ気分を呈する者に対して、酢酸リナリルを投与することを特徴とするものである。
酢酸リナリルの投与方法は特に限定されず、通常の医薬等と同様に経口的、経静脈的、経皮的に投与してもよいが、好ましくは、酢酸リナリルによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達されるような手段で投与する。このような投与方法としては、例えば、酢酸リナリルを含む溶液を少量染み込ませた布などを、抑うつ気分を呈する者の鼻のあたりに近づけ、酢酸リナリルを含む空気を鼻から吸入させる方法などが考えられる。このとき吸入させる時間は特に限定されないが、10分〜1時間程度が適当である。また、ディフューザー等によって酢酸リナリルを空気中に揮発させ、この空気中に抑うつ気分を呈する者を一定時間曝露することによって酢酸リナリルを投与してもよい。曝露する時間は特に限定されないが、10分〜1時間程度が適当である。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
喫煙歴のない健常な女性15名を被験者として、PMSに対する酢酸リナリルの効果を調べた。
被験者には、排卵のあった日の次の日から次回の排卵日まで、朝夕の1日2回、所定の物質の香りを吸引してもらい、排卵日の1〜14日前にPOMSによる心理テストを受けてもらった。
被験者をA群とB群の5名ずつの2群に分け、試験1ヶ月目は両群とも香りの吸引はさせず、基礎体温の記録、月経に関する記録をつけてもらい、2ヶ月目にA群の被験者には酢酸リナリルを吸引させ、B群の被験者にはラベンダーオイルを吸引させた。(以下、A群を「酢酸リナリル群」、B群を「ラベンダーオイル群」という。)。香りの吸引は、指定の芳香ファンを用いて行い、各物質0.01mlをファン内のフィルターに滴下し、芳香ファンから15cm離れた位置で15分間被験者に香りを嗅いでもらった。
POMSは、「緊張−不安」、「抑うつ−落ち込み」、「怒り−敵意」、「活気」、「疲労」、「混乱」の6つの因子について測定できる。これらの因子について、各被験者の香り吸引した時(実験2ヶ月目)と香りを吸引しなかった時(実験1ヶ月目)の得点を算出し、この得点をPOMS質問票に添付されているT得点表に沿って置き換えた。この置き換えた得点を各群(酢酸リナリル群、ラベンダーオイル群)ごとに集計し、各因子ごとの平均値を求めた。更に、酢酸リナリル群の香りを吸引させた時期と吸引させなかった時期の平均値との差、及びラベンダーオイル群の香りを吸引させた時期と吸引させなかった時期の差を求めた。図1に、各因子ごとのこれらの差の値を示す。
図1に示すように、「抑うつ−落ち込み」及び「怒り−敵意」において、酢酸リナリル群はラベンダーオイル群よりも著しく高い値を示した。特に、「抑うつ−落ち込み」については、香りを吸引させなかった場合との差も大きかった。このことから、酢酸リナリルは、黄体期における抑うつ気分の改善に効果があると考えられる。また、「怒り−敵意」においても、「抑うつ−落ち込み」ほどではないが、香りを吸引させなかった場合との差がみられた。従って、酢酸リナリルは、「怒り−敵意」の改善、具体的には易怒性の改善やイライラの改善などにも効果があると考えられる。
Claims (7)
- 酢酸リナリルを有効成分として含有することを特徴とする抑うつ気分の改善用組成物。
- 酢酸リナリルを唯一の芳香物質として含有することを特徴とする請求項1記載の抑うつ気分の改善用組成物。
- 抑うつ気分が、黄体期の女性に現れる抑うつ気分であることを特徴とする請求項1又は2記載の抑うつ気分の改善用組成物。
- 抑うつ気分を呈する者に対して、酢酸リナリルを投与することを特徴とする抑うつ気分の改善方法。
- 抑うつ気分を呈する者が、黄体期の女性であることを特徴とする請求項4記載の抑うつ気分の改善方法。
- 酢酸リナリルを投与する手段が、酢酸リナリルによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達される手段であることを特徴とする請求項5記載の抑うつ気分の改善方法。
- 酢酸リナリルによる刺激が嗅覚神経を介して脳に伝達される手段が、酢酸リナリルを含む空気を抑うつ気分を呈する者に鼻から吸入させる手段、又は酢酸リナリルを含む空気中に抑うつ気分を呈する者を曝露する手段であることを特徴とする請求項6記載の抑うつ気分の改善方法。
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