JP2006277818A - 磁気転写用マスターディスクの製造方法、電鋳浴成分濃度管理システム、及び磁気記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】凹凸パターンを有した原盤に電鋳を施してマスター基板を作成するにあたり、高精度なマスター基板を安定して形成することのできる磁気転写用マスターディスクの製造方法を提供すること。
【解決手段】凹凸パターンPが形成された原盤17に電鋳により金属盤18を積層してマスター基板11を作成する磁気転写用マスターディスク10の製造方法において、電鋳に用いる電鋳浴62の成分濃度を連続的に又は所定時間間隔で監視し、電鋳浴62の成分濃度が所定の範囲を維持するように浴調整を行い、所望の物性を有する金属盤18を高精度で形成するようにした。
【選択図】 図6
【解決手段】凹凸パターンPが形成された原盤17に電鋳により金属盤18を積層してマスター基板11を作成する磁気転写用マスターディスク10の製造方法において、電鋳に用いる電鋳浴62の成分濃度を連続的に又は所定時間間隔で監視し、電鋳浴62の成分濃度が所定の範囲を維持するように浴調整を行い、所望の物性を有する金属盤18を高精度で形成するようにした。
【選択図】 図6
Description
本発明は、磁気転写用マスターディスクの製造方法、電鋳浴成分濃度管理システム、及び磁気記録媒体に係り、特にハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体にフォーマット情報等の磁気情報を転写するのに好適な磁気転写用マスターディスクの製造方法、それに用いられる電鋳浴成分濃度管理システム、及び磁気記録媒体に関する。
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気記録媒体である磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報がプリフォーマット情報として書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれたマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
この一括転写する磁気転写方法は、磁気転写用マスターディスク(以下、マスターディスクとのみ称することがある)と被転写用ディスク(以下、磁気記録媒体又はスレーブディスクと称することがある)とを密着させた状態で、片面又は両面に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加することにより、マスターディスクの有する情報(例えばサーボ信号)をスレーブディスクに磁気転写する。そして、磁気転写を精度良く行うには、マスターディスクとスレーブディスクとを均一に隙間なく密着させることが極めて重要である。
ところで、この磁気転写方法に使用されるマスターディスクとしては、マスター基板の表面に情報信号に対応する凹凸パターンを形成し、この凹凸パターンの表面に磁性層を被覆したものが通常使用されている。この磁気転写用のマスターディスクは、情報を凹凸パターンで形成した原盤上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原盤上に積層して該金属盤面に凹凸パターンを転写する電鋳工程、金属盤を原盤上から剥離する剥離工程、剥離した金属盤を所定サイズに打ち抜いてマスター基板にする打ち抜き工程を経た後、凹凸パターンの面に磁性層を被覆することにより製造されるのが一般的である(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−256644号公報
ところで、前述の情報を凹凸パターンで形成した原盤上に電鋳を施して、反転した凹凸パターンを転写させた金属盤を積層させる工程では、原盤の微細な凹凸パターンを精度よく転写させなければならない。特に、最小ビット長が100nm以下、即ち、凹凸パターンのトラック方向(円周方向)の最小寸法が100nm以下のパターンを含む原盤の場合は一層高精度な電鋳が求められる。
この金属盤を積層させる電鋳工程では、最適な電極間距離の設定や、最大電流密度の制御等によって良好な電鋳を行うように管理されるが、最も基本的な事項として電鋳浴(以後電鋳浴の液の一部を電鋳液と称する)の成分濃度を電鋳中に常に所定の値に保つ必要がある。電鋳浴の成分濃度が電鋳が進行するにつれて当然変動していくが、成分濃度が変動した場合は電鋳条件が大きく変動し、高精度な電鋳が不可能になるとともに、応力、歪み、剛性等の電鋳物の物性も変化してしまう。
このため、従来は電鋳浴の比重管理、及びpH管理によって電鋳浴の管理を行って金属盤の電鋳を行っていた。しかし、比重による大まかな濃度管理では電鋳中のさまざまな影響、例えばニッケル浴の場合、水分蒸発、水の投入、ニッケルの溶解、液の持ち出し等を受けて生ずる電鋳浴中のニッケル量の微妙な変化が認識できない。
このため、最小ビット長が100nm以下の微細な凹凸パターンを精度よく転写させるとともに、電鋳によって形成された金属盤の物性(応力、歪み、剛性等)を制御するためには、電鋳浴の比重管理、及びpH管理だけでは不十分で、電鋳浴の各成分の濃度をきめ細かく管理することが求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、情報信号に対応する凹凸パターンを有した原盤に電鋳を施して金属盤を積層させ、反転した凹凸パターンを有するマスター基板を作成する磁気転写用マスターディスクの製造方法において、微小な凹凸パターンを有する原盤に対し、高精度な金属盤を安定して形成することのできる磁気転写用マスターディスクの製造方法を提供するとともに、そのための電鋳浴成分濃度管理システムを提供し、更に、良好なプリフォーマット情報が磁気転写された磁気記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、転写情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に電鋳により所定厚さの金属盤を形成し、前記原盤より剥離した前記金属盤からマスター基板を作成し、該マスター基板の凹凸パターン上に磁性層を成膜する磁気転写用マスターディスクの製造方法において、前記電鋳に用いる電鋳浴の成分濃度を連続的に又は所定時間間隔で監視し、前記電鋳浴の成分濃度が所定の範囲を維持するように浴調整を行うことを特徴とする磁気転写用マスターディスクの製造方法を提供する。
請求項1の発明によれば、電鋳浴の成分濃度を連続的に又は所定時間間隔で監視し、電鋳浴の成分濃度が所定の範囲を維持するように浴調整を行うので、電鋳工程中の電鋳浴の成分濃度変化が少なく、所望の物性を有する金属盤を高精度で形成することができる。
また、本発明の請求項2は、請求項1の発明において、前記電鋳浴中のニッケル濃度、スルファミン酸濃度、ホウ酸濃度、硫酸濃度、炭酸濃度、アンモニア濃度、ナトリウム濃度、有機物濃度、塩素濃度のうち少なくとも1つの成分濃度を監視することを特徴とする。
請求項2の発明によれば、スルファミン酸ニッケル浴のニッケル濃度を含む成分濃度のうち少なくとも1つの成分濃度を監視して浴調整を行うので、電鋳浴中の特定の成分濃度を重点的に管理することができる。
前記請求項1又は請求項2の発明においては、前記電鋳浴の成分濃度をキャピラリー電気泳動分析法によって定量分析するのが好ましい。キャピラリー電気泳動分析法を用いることによって、短時間で正確に前記電鋳浴の成分濃度を定量分析することができる。
本発明の請求項4は、電鋳槽と、該電鋳槽に電鋳液を供給するとともに電鋳槽からオーバーフローする電鋳液を回収する調整槽と、前記電鋳液の成分濃度を調整するための濃度調整剤を前記調整槽に投入する濃度調整剤供給手段と、前記調整槽内の電鋳液の成分濃度を計測するキャピラリー電気泳動装置と、制御部とからなり、前記調整槽内の電鋳液を所定時間間隔で自動的にサンプル抽出し、サンプル抽出した前記電鋳液の成分濃度を前記キャピラリー電気泳動装置によって定量分析し、分析結果から前記制御部が前記濃度調整剤の投入量を自動決定し、前記決定された投入量分の濃度調整剤を前記濃度調整剤供給手段から前記調整槽に自動投入することによって浴調整を行い、前記電鋳液の成分濃度が所定の範囲を維持するように管理することを特徴とする電鋳浴成分濃度管理システムを提供する。
請求項4の発明によれば、電鋳液を自動的にサンプル抽出して定量分析し、濃度調整剤を自動投入して浴調整を行うので、電鋳液の成分濃度が所定の範囲を維持するように自動管理される。
本発明の請求項5は、転写情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に電鋳により所定厚さの金属盤を形成し、前記原盤より剥離した前記金属盤からマスター基板を作成し、該マスター基板の凹凸パターン上に磁性層を成膜する磁気転写用マスターディスクの製造方法において、前記電鋳に用いる電鋳浴を、請求項4に記載の電鋳浴成分濃度管理システムを用いて浴調整することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの製造方法を提供する。
請求項5の発明によれば、電鋳に用いる電鋳浴の成分濃度を自動管理するので、電鋳工程中の電鋳浴の成分濃度変化が少なく、所望の物性を有した高精度なマスター基板を得ることができる。
本発明の請求項6は、前記請求項1乃至請求項3又は請求項5のうちいずれか1項に記載の磁気転写用マスターディスクを用い、プリフォーマット情報が磁気転写されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
請求項6の発明によれば、本発明の磁気記録媒体は、情報に対応する微小な凹凸パターンが正確に形成されるとともに所望の物性を有した磁気転写用マスターディスクを用いて、情報が正確に磁気転写されているので、良好なプリフォーマット情報信号を得ることができる。
以上説明したように、本発明に係る磁気転写用マスターディスクの製造方法によれば、電鋳によって金属盤を形成する際の電鋳浴の成分濃度が所定の範囲を維持するように管理されるので、良好なマスター基板を得ることができる。また、本発明に係る電鋳浴成分濃度管理システムによれば、電鋳浴成分濃度を容易に管理することができる。
また、磁気記録媒体は、本発明の磁気転写用マスターディスクの製造方法によって製造された磁気転写用マスターディスクを用いてプリフォーマット情報が磁気記録されるので、良好なプリフォーマット情報信号が得られる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る磁気転写用マスターディスクの製造方法及び磁気記録媒体の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は磁気転写用マスターディスク10(以下、単にマスターディスク10と称する場合がある)の部分斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図であり、磁気記録媒体である被転写用ディスク(スレーブディスク14)を想像線で示したものである。
図1及び図2に示すように、マスターディスク10は、金属製のマスター基板11と磁性層12とで構成され、マスター基板11の表面に転写情報に対応する微細な凹凸パターンP(例えばサーボ情報パターン)を有すると共にその凹凸パターンPに磁性層12が被覆されている。
これにより、マスター基板11の片面に磁性層12が被覆された微細な凹凸パターンPを有する情報担持面13が形成される。図1から分かるように、この微細な凹凸パターンPは、平面視で長方形であり、磁性層12が形成された状態でトラック方向(図の矢印方向)の長さpと、半径方向の長さLとによりなる。
この長さpと長さLとの最適値は、記録密度や記録信号波形により異なるが、例えば長さpを80nm、長さLを200nmにできる。この微細な凹凸パターンPはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、例えば半径方向の長さLが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さpが0.01〜5μmであることが好ましい。
この範囲で半径方向の方が長い凹凸パターンPを選ぶことがサーボ信号を担持するパターンとして好ましい。凹凸パターンPの深さh(突起の高さ)は、30〜800nmの範囲が好ましく、50〜300nmの範囲がより好ましい。
マスター基板11は、電鋳により作製され、図3に示すように、中心孔11G及び円形外周11Hを有する円盤状に形成され、片面の(情報担持面13)の内周部11D及び外周部11Eを除く円環状領域11Fに凹凸パターンPが形成される。
このマスター基板11の製造の詳細は後述するが、主に、情報を凹凸パターンPで形成した原盤上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原盤上に形成して該金属盤に凹凸パターンPを転写する電鋳工程と、金属盤を原盤上から剥離する剥離工程と、剥離された金属盤を所定形状に打ち抜く打抜き工程とにより製造される。
本発明において、電鋳層としては各種金属や合金類を使用できるが、本実施の形態では好ましい一例として、Ni電鋳層の例で以下に説明する。このNi電鋳層は、電鋳時の電極間距離を所定の範囲に設定するとともに、電鋳時の電流密度を制御しながら電鋳する。
次に、上記の如く構成される本発明のマスターディスク10の製造方法を詳細に説明する。図4はマスターディスク10を製造するステップを示す工程図である。先ず、図4(a)に示すように、表面が平滑且つ清浄なシリコーンウエハーによる原板15(ガラス板、石英板でもよい)の上に、密着層形成等の前処理を行い、電子線レジスト液をスピンコート等で塗布してレジスト膜16を形成し、ベーキングする。
そして、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた電子ビーム露光装置(図示せず)にて、そのステージに搭載した原板15にサーボ信号等に対応して変調した電子ビームBを照射し、レジスト膜16に所望の凹凸パターンP' を描画露光する。
次に、図4(b)に示すように、レジスト膜16を現像処理し、露光部分を除去して残ったレジスト膜16によって所望の凹凸パターンP' を形成する。本発明においては、凹凸パターンP' は、最小パターンサイズが100nm以下の微小なパターンである。この凹凸パターンP' 上に例えばスタッパリングによりNi導電膜(図示せず)を付与し、電鋳可能な原盤17を作製する。
次に、この原盤17を図4(c)に示すように、原盤17の全面に電鋳装置で電鋳処理を施し、Ni金属による所望厚みの金属盤18(Ni電鋳層)を積層する。Niは面心立方格子の結晶構造を有しており、電鋳時の電流密度を制御して所定の結晶構造となるように電鋳する。
図5は電鋳装置の槽構造を表す断面図である。この電鋳装置60は、電鋳液(浴)62を貯留する電鋳槽64と、電鋳槽64よりオーバーフローした電鋳液62を受けるドレーン槽66と、陽極となるNiペレット68、68…が充填されたチタンケース69を収容し、電鋳槽64よりオーバーフローした電鋳液62を受けるアノード室70と、原盤17を保持する陰極72等より構成されている。
電鋳槽64には電鋳液供給配管74より電鋳液62が供給されるようになっている。また、電鋳槽64よりドレーン槽66にオーバーフローした電鋳液62は、ドレーン槽排水配管76より回収されるようになっている。また、電鋳槽64よりアノード室70にオーバーフローした電鋳液62は、アノード室排水配管78より回収されるようになっている。
電鋳槽64とアノード室70とは、樹脂製の隔壁板80により区分けされている。また、電鋳槽64側の隔壁板80の表面には、電流の流れをコントロールする電流遮蔽板(バッフル板)82が陰極72と対向するように固定されている。この電流遮蔽板82は、電鋳した膜厚が面内で均一になるように、電極の所定部分を覆うように形成されているものである。
以上の構成からなる電鋳装置60において、陰極72に原盤17を保持させ、陰極72に負電極を接続し、アノード室70のチタンケース69に正電極を接続し、原盤17を50〜150rpmの回転速度で回転させながら通電することにより、金属盤18の電鋳が行われる。
通常、マスターディスク10に使用される金属はニッケル(Ni)であり、マスターディスク10を電鋳で製造する場合には、応力の小さなマスター基板11が得られ易いスルファミン酸ニッケル浴を使用することが好ましい。
スルファミン酸ニッケル浴は、例えば、スルファミン酸ニッケルを400〜800g/L、ホウ酸を20〜50g/L(過飽和)をベースとして界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)等の添加物を必要に応じて添加したものである。メッキ浴の浴温度は40〜60°Cが好適である。電鋳時の対極にはチタンケース69に入れたNiペレット68、68…を使用することが好ましい。
この電鋳工程において、本発明は、電鋳液62の成分濃度を監視し、成分濃度が所定の範囲に維持されるように浴調整を行いながら電鋳する。この浴調整は以下に説明する電鋳浴成分濃度管理システムを用いて行うのが好適である。
図6は、この電鋳浴成分濃度管理システムを示す構成図である。電鋳浴成分濃度管理システム40は、電鋳装置60の電鋳槽64、電鋳槽64に電鋳液62を供給するとともに、電鋳槽64からオーバーフローする電鋳液62を回収して貯留する調整槽41、調整槽41内の電鋳液62の成分濃度を調整するための濃度調整剤を調整槽41に投入する濃度調整剤供給手段42、調整槽41内の電鋳液62の成分濃度を計測するキャピラリー電気泳動装置46、及び濃度調整剤供給手段42から調整槽41に投入する濃度調整剤投入量を算出する制御部47等で構成されている。
調整槽41内の電鋳液62は、ポンプ43によってフィルター44を介して電鋳槽64に供給される。また、電鋳槽64からオーバーフローする電鋳液62は、図示しないポンプによって同じく図示しないフィルターを経由して調整槽41に回収されて貯留される。また、調整槽41には電鋳液62の攪拌手段と温度制御手段が設けられており、調整槽41内の電鋳液62の濃度を平均化するとともに所定温度に保つようになっている。
濃度調整剤供給手段42には、濃度調整剤1、2、3、・・・が夫々独立して貯留されている。濃度調整剤は、例えば、濃度調整剤1がニッケルリッチな調整剤で、濃度調整剤2が純水リッチリッチな調整剤で、濃度調整剤3がスルファミン酸リッチな調整剤で、濃度調整剤4がホウ酸リッチな調整剤で、濃度調整剤5が界面活性剤リッチな調整剤等々である。
夫々の濃度調整剤は攪拌と温度制御がなされ、調整槽41内の電鋳液62と同一温度に調整されている。また、各濃度調整剤を貯留する容器には、濃度調整剤供給手段42全体の開閉バルブ45とは別に夫々独立した電磁バルブが設けられ、制御部47からの指示により所定量の濃度調整剤を調整槽41に投入できるようになっている。
調整槽41内の電鋳液62は、所定時間間隔(例えば30分間隔)で自動的に微量抽出され、キャピラリー電気泳動装置46によってその成分濃度が定量分析される。この分析された液濃度データは制御部47に送られ、制御部47では送られた液濃度データをCPUで解析し、電鋳液62の成分濃度が所定の範囲を維持するように濃度調整剤の投入量を算出する。
また、制御部47は算出した各濃度調整剤の投入量を基に、濃度調整剤供給手段42に投入指令を発し、濃度調整剤供給手段42は指令に基づき各濃度調整剤を指令された投入量だけ調整槽41に投入する。これにより、調整槽41内の電鋳液62は、常に所定の成分濃度の範囲を維持し、この所定の成分濃度の範囲に維持された電鋳液62が電鋳装置60の電鋳槽64に供給される。
本発明においては、Niを電鋳させるためスルファミン酸ニッケル浴を用いるので、具体的には電鋳液62中のニッケル濃度、スルファミン酸濃度、ホウ酸濃度、硫酸濃度、炭酸濃度、アンモニア濃度、ナトリウム濃度、有機物濃度、塩素濃度等を監視し、それらの濃度が所定の範囲になるように液調整を行う。
例えば、ニッケル濃度を調整するためには、塩基性炭酸ニッケルの投入やニッケルペレット68の溶解促進剤(スルファミン酸)を投入してニッケル濃度を上昇させたり、ニッケル低濃度の液を投入してニッケル濃度を低下させる。
次に、電鋳液62の成分濃度を定量分析するキャピラリー電気泳動装置46について説明する。図7は、キャピラリー電気泳動装置46の原理図である。
キャピラリー電気泳動装置46はシリカ製の中空キャピラリー(内径100μm以下、長さ約80cm)46A、高圧電源46B、電極46C、46D、光源46E、光検出器46F、及び図示しないデータ処理部等からなっている。光源46Eには可視光又はUV光の光源が用いられ、光検出器46Fにはフォトダイオード又はフォトマルが用いられている。
試料Wの定量分析を行う場合は、先ずキャピラリー46A内に泳動液としてバッファ(緩衝液)Bを満たし、キャピラリー46Aの一方端からごく少量の試料Wを注入した後、キャピラリー46Aの両端に電圧(−30KV〜+30KV)を掛け、電気泳動を行わせる。
移動速度は、試料Wの成分ごとに、荷電、大きさ、形といった違いにより多くの場合に差異があり、このため多様な試料成分を分離することができる。実際にはキャピラリー46Aの途中で、光検出器46Fによって移動してくる試料Wを吸光度測定することによって検出する。
図8は、このようにして検出された吸光度測定データの一例を示すもので、横軸に電場を掛け始めてから検出までの時間を示し、縦軸に吸光度を示している。電場を掛け始めてから検出されるまでの時間、ピークの高さ、面積、そして吸光スペクトルにより、各成分の定性・定量が可能である。キャピラリー電気泳動装置46としては、例えば大塚電子株式会社製の商品名キャピラリー電気泳動装置CAPI−3300等が用いられる。
本実施の形態では、金属盤18の電鋳工程において、電鋳浴62の体積に対する1枚の金属盤18の生成に必要なニッケル析出量の比を以下のように規定している。即ち、電鋳浴62の総量に対する単位時間当たりのニッケル析出率を、1枚の金属盤18の生成に必要な単位時間当たりのニッケル析出重量(g)を電鋳浴62の体積(L)で除した値で表記した時に、1g/L・H以下のニッケル析出率で電鋳する。
この規定は、容量75Lの電鋳槽62、又は3槽式の容量270Lの電鋳槽62、更には1000Lの大容量電鋳槽62に対しても適用する。総容量が大きいほど電鋳浴62の成分濃度変動が小さく、作成されるマスター基板11の物性の安定性が増加する。また、ニッケルの析出速度が低いほど応力低減や形状安定性が増し、この場合もマスター基板11の物性の安定性が増加する。
次に、図4に戻り、金属盤18を原盤17から剥離し、残留するレジスト膜16を除去・洗浄する。これにより、図4(d)に示すように、反転した凹凸パターンPを有し、且つ所定サイズに打ち抜く前の外径Dを有するマスター基板11の原板11' が得られる。
この原板11' は、電鋳工程において、前述したように電鋳浴62の成分濃度を管理し、また電鋳浴62の体積に対するニッケル析出量の比を規定して電鋳された金属盤18からなるため、応力、歪み、剛性等の物性が制御されるとともに、原盤17の凹凸パターンP’が精度良く再現された良好な電鋳物である。
この原板11' を打ち抜いて、図4(e)に示す外径dの所定サイズのマスター基板11が得られる。打抜きにあたっては、最初に原板11' の凹凸パターンPが形成された表面側に保護シートを貼付して、原板11' の凹凸パターンPが形成された表面を保護する。保護シートとしては、トライレイナ社製の商品名シリテクト、日東電工社製の商品名KLシート等が用いられる。
次に凹凸パターンP側に貼付されていた保護シートが剥離され、次いで凹凸パターンPに磁性層12が形成される。磁性層12の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、あるいはメッキ法、塗布法等により成膜する。
磁性層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。特にFeCo、FeCoNiを好ましく使用することができる。磁性層12の厚みは50〜500nmの範囲が好ましく、100〜400nmの範囲が更に好ましい。
尚、磁性層12の上に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、スパッタカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けても良い。この場合、保護膜として厚さが3〜30nmのDLC膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。
また、磁性層と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けるようにしても良い。潤滑剤はスレーブディスク14との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。以上の工程によって、本発明の磁気転写用マスターディスク10が製造される。
尚、マスターディスク10の他の製造工程としては、原盤17に電鋳を施して第2原盤を作製する。そして、この第2原盤を使用して電鋳を行い、反転した凹凸パターンPを有する金属盤を作製し、所定サイズに打ち抜いてマスター基板11としてもよい。
更には、第2原盤に電鋳を行うか、樹脂液を押しつけて硬化を行って第3原盤を作製し、この第3原盤に電鋳を行って金属盤18を作製し、更に反転した凹凸パターンPを有する金属盤18を剥離して所定サイズに打ち抜き、マスター基板11としてもよい。第2原盤又は第3原盤を繰り返し使用し、複数の金属盤18を作製することができる。
また、原盤の作製において、レジスト膜を露光・現像処理した後、エッチング処理を行って、原盤の表面にエッチングによる凹凸パターンP’を形成してからレジスト膜を除去してもよい。
次に、上記の如く製造したマスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する磁気転写方法について説明する。図9は本発明に係るマスターディスク10を使用して磁気転写を行うための磁気転写装置20の要部斜視図である。
磁気転写時には図10(a)に示される後記する初期直流磁化を行った後のスレーブディスク14のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク10の情報担持面13に接触させ、所定の押圧力で密着させる。そして、このスレーブディスク14とマスターディスク10との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加して、マスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する。
スレーブディスク14は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状記録媒体であり、マスターディスク10に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起及び付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。
スレーブディスク14の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層を採用できる。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。
これらは磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁界異方性を有していることにより、明瞭な転写を行えるため好ましい。そして、磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層12に合わすことが必要である。その為には、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
マスターディスク10による磁気転写は、スレーブディスク14の片面にマスターディスク10を密着させて片面に転写を行う場合と、図示しないが、スレーブディスク14の両面に一対のマスターディスク10を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着保持されたスレーブディスク14とマスターディスク10の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されており、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線を有する転写用磁界を印加する。
磁界印加時には、スレーブディスク14とマスターディスク10とを一体的に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加させ、マスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14のスレーブ面に磁気的に転写する。尚、この構成以外に磁界生成手段の方を回転移動させるようにしてもよい。
転写用磁界は、最適転写磁界強度範囲(スレーブディスク14の保磁力Hcの0.6〜1.3倍)の最大値を超える磁界強度がトラック方向のいずれにも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が1つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度が何れのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲内の最小値未満である磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させている。
図10は、面内記録による磁気転写方法の基本工程を説明する説明図である。先ず、図10(a)に示すように、予めスレーブディスク14に初期磁界Hi をトラック方向の一方向に印加して初期磁化( 直流消磁) を施しておく。
次に、図10(b)に示すように、このスレーブディスク14の記録面(磁気記録部)とマスターディスク10の凹凸パターンPが形成された情報担持面13とを密着させ、スレーブディスク14のトラック方向に初期磁界Hi とは逆方向に転写用磁界Hd を印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hd が凹凸パターンPの凸部の磁性層12に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図10(c) に示すように、スレーブディスク14の磁気記録面にはマスターディスク10の凹凸パターンPが磁気的に転写記録される。
かかる磁気転写において、マスターディスク10が正確な凹凸パターンPを有していることと、スレーブディスク14とマスターディスク10とを良好に密着させることが高精度な転写を行う上で重要であるが、本発明の磁気転写用マスターディスクの製造方法によって製造された微小な凹凸パターンPが正確に再現され、応力、歪み、剛性等の物性が制御されたマスターディスク10を使用することにより、良好な密着を行うことができ、良質な磁気記録媒体14を得ることができる。
以上説明したように、本発明の磁気転写用マスターディスクの製造方法では、電鋳浴成分濃度管理システム40を用い、電鋳浴62の成分濃度を所定の範囲内に管理して電鋳するので、原盤17に電鋳によって金属盤18を積層させてマスター基板11を作成するにあたり、原盤17の微小な凹凸パターンPを正確に転写するとともに、マスター基板11の物性を制御することができ、良好なマスター基板11を作成することができる。また、このようにして製造されるマスターディスク10によって高品質の磁気記録媒体を安価に得ることができる。
10…マスターディスク(磁気転写用マスターディスク)、11…マスター基板、11’…原板、12…磁性層、14…スレーブディスク(磁気記録媒体)、17…原盤、18…金属盤、40…電鋳浴成分濃度管理システム、41…調整槽、42…濃度調整剤供給手段、46…キャピラリー電気泳動装置、47…制御部、60…電鋳装置、62…電鋳液(電鋳浴)、64…電鋳槽、P・P’…凹凸パターン、W…試料
Claims (6)
- 転写情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に電鋳により所定厚さの金属盤を形成し、前記原盤より剥離した前記金属盤からマスター基板を作成し、該マスター基板の凹凸パターン上に磁性層を成膜する磁気転写用マスターディスクの製造方法において、
前記電鋳に用いる電鋳浴の成分濃度を連続的に又は所定時間間隔で監視し、前記電鋳浴の成分濃度が所定の範囲を維持するように浴調整を行うことを特徴とする磁気転写用マスターディスクの製造方法。 - 前記電鋳浴中のニッケル濃度、スルファミン酸濃度、ホウ酸濃度、硫酸濃度、炭酸濃度、アンモニア濃度、ナトリウム濃度、有機物濃度、塩素濃度のうち少なくとも1つの成分濃度を監視することを特徴とする請求項1に記載の磁気転写用マスターディスクの製造方法。
- 前記電鋳浴の成分濃度をキャピラリー電気泳動分析法によって定量分析することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の磁気転写用マスターディスクの製造方法。
- 電鋳槽と、該電鋳槽に電鋳液を供給するとともに電鋳槽からオーバーフローする電鋳液を回収する調整槽と、前記電鋳液の成分濃度を調整するための濃度調整剤を前記調整槽に投入する濃度調整剤供給手段と、前記調整槽内の電鋳液の成分濃度を計測するキャピラリー電気泳動装置と、制御部とからなり、
前記調整槽内の電鋳液を所定時間間隔で自動的にサンプル抽出し、サンプル抽出した前記電鋳液の成分濃度を前記キャピラリー電気泳動装置によって定量分析し、分析結果から前記制御部が前記濃度調整剤の投入量を自動決定し、前記決定された投入量分の濃度調整剤を前記濃度調整剤供給手段から前記調整槽に自動投入することによって浴調整を行い、前記電鋳液の成分濃度が所定の範囲を維持するように管理することを特徴とする電鋳浴成分濃度管理システム。 - 転写情報に応じた凹凸パターンが形成された原盤に電鋳により所定厚さの金属盤を形成し、前記原盤より剥離した前記金属盤からマスター基板を作成し、該マスター基板の凹凸パターン上に磁性層を成膜する磁気転写用マスターディスクの製造方法において、
前記電鋳に用いる電鋳浴を、請求項4に記載の電鋳浴成分濃度管理システムを用いて浴調整することを特徴とする磁気転写用マスターディスクの製造方法。 - 前記請求項1乃至請求項3又は請求項5のうちいずれか1項に記載の磁気転写用マスターディスクを用い、プリフォーマット情報が磁気転写されたことを特徴とする磁気記録媒体。
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