JP2006286144A - マスターディスクの製造方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】欠陥がなく、良好な精度のマスターディスクが得られるマスターディスクの製造方法、このマスターディスクの磁気情報パターンを転写した磁気記録媒体、及び該磁気記録媒体を備える磁気記録装置を提供する。
【解決手段】表面に反転凹凸パターンを有するマスター型17の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、初期電導層の表面に金属18を鍍金して、初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板11を形成する工程と、マスター基板をマスター型より剥離する工程とを備える。
【選択図】 図4
【解決手段】表面に反転凹凸パターンを有するマスター型17の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、初期電導層の表面に金属18を鍍金して、初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板11を形成する工程と、マスター基板をマスター型より剥離する工程とを備える。
【選択図】 図4
Description
本発明は、マスターディスクの製造方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置に係り、特に、ハードディスク装置等に用いられる磁気ディスクに、マスターディスクからフォーマット情報等の磁気情報パターンを転写するのに好適なマスターディスクの製造方法、このマスターディスクの磁気情報パターンを転写した磁気記録媒体、及び該磁気記録媒体を備える磁気記録装置に関する。
近年、急速に普及しているハードディスクドライブに使用される磁気ディスク(ハードディスク)は、磁気ディスクメーカーよりドライブメーカーに納入された後、ドライブに組み込まれる前に、フォーマット情報やアドレス情報が書き込まれるのが一般的である。この書き込みは、磁気ヘッドにより行うこともできるが、これらのフォーマット情報やアドレス情報が書き込まれているマスターディスクより一括転写する方法が効率的であり、好ましい。
この磁気転写技術は、マスターディスクと被転写ディスク(スレーブディスク)とを密着させた状態で、片側又は両側に電磁石装置、永久磁石装置等の磁界生成手段を配設して転写用磁界を印加し、マスターディスクの有する情報(たとえばサーボ信号)に対応する磁化パターンの転写を行うものである。
従来より、この種の磁気転写に使用されるマスターディスクのサブストレート形成は、電鋳法により行うのが一般的であった(たとえば、特許文献1等。)。また、類似の技術分野(光ディスク、ビデオディスク等)においても、スタンパの形成は、電鋳法により行われている(たとえば、特許文献2等。)。具体的には、図10(A)〜(E)に断面図で示されるような工程によっている。
図10(A)において、基板1(ガラス板等)の表面にフォトレジスト2を塗布し、フォトマスク等を使用したフォトファブリケーション(露光、現像、ベーク等)により、この上にトラッキング用溝、情報用ピット等の凹凸の微細パターン3を形成し、原盤4を得る(図10(B))。
次に、図10(C)において、原盤4の表面に導電化膜5を形成し、図10(D)において、電鋳法により金属膜6を形成し、図10(E)において、これらの導電化膜5及び金属膜6を一体として同時に原盤4から剥離して情報記録媒体成型用スタンパー7(マスターディスクのサブストレート又はこの為のスタンパー)を得ている。
このスタンパー7を、電鋳用のマスター型として使用し、このスタンパー7上に金属膜を形成して複数枚のマスターディスクを製造することができる。また、このスタンパー7をプレス型として使用し、樹脂板のホットプレス加工により複数枚のマスターディスクを製造することもできる。更に、このスタンパー7上に磁性膜を形成し、磁気転写用のマスターディスクとして使用することもできる。
特開平5−132793号公報
特開昭58−50635号公報
しかしながら、上記のような電鋳法によりマスターディスクのサブストレートを形成する場合、電鋳の際に導電化膜5より放電を生じ、電鋳により形成する形状の型崩れになり易いという問題点を生じていた。また、スタンパー7を磁気転写用のマスターディスクとして使用している際や、スタンパー7をプレス型としてホットプレス加工に使用している際に、導電化膜5と金属膜6との境界より導電化膜5が剥離し易いという問題点をも生じていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、磁気転写等の用途に使用されるマスターディスクの製造において、上記の問題点を解決し、欠陥がなく、良好な精度のマスターディスクが得られるマスターディスクの製造方法、このマスターディスクの磁気情報パターンを転写した磁気記録媒体、及び該磁気記録媒体を備える磁気記録装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、表面に反転凹凸パターンを有するマスター型の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、該初期電導層の表面に金属を鍍金して、該初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板を形成する工程と、該マスター基板を前記マスター型より剥離する工程と、を備えることを特徴とするマスターディスクの製造方法を提供する。
また、本発明は、表面に反転凹凸パターンを有するマスター型の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、該初期電導層の表面に金属を鍍金して、該初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板を形成する工程と、該マスター基板を前記マスター型より剥離する工程と、該マスター基板の前記初期電導層の表面に磁性層を形成する工程と、を備えることを特徴とするマスターディスクの製造方法を提供する。
本発明者らは、初期電導層を形成した後に、鍍金(電鋳)を行うまでの間に初期電導層の全体が酸化されて酸化層を形成し、この酸化層により電鋳の際に酸化層より放電を生じたり、この酸化層により界面剥離を生じたりすることを発見した。
すなわち、初期電導層は、スパッタ法のような真空成膜法により形成されるのが一般的であるが、このような成膜法では、膜密度が小さく、また、初期電導層と鍍金層との間に大きな内部応力を発生すると考えられる。
したがって、初期電導層の表面に人為的に酸化層を形成し、酸化層の厚さを適切にコントロールすることにより、上記の問題点を解決できることを見出した。これにより、本発明によれば、欠陥がなく、良好な精度のマスターディスクが得られる。
本発明のマスターディスクの製造方法において、前記初期電導層の線電気抵抗が2Ω/cm未満であることが好ましい。このような線電気抵抗の初期電導層であれば、上記の問題点の解決により有効である。
また、本発明のマスターディスクの製造方法において、前記初期電導層がニッケルを主成分とすることが好ましい。
また、本発明は、前記のマスターディスクの製造方法によって製造された磁気転写用のマスターディスクの前記磁性層側の表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
このような製造方法によって製造された磁気転写用のマスターディスクであれば、欠陥がなく、良好な精度で磁気転写が行え、C/N比の良好な磁気記録媒体(スレーブディスク)が得られる。
また、本発明は、前記の磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置を提供する。このような磁気記録媒体を使用すれば、C/N比の良好な磁気記録装置(ハードディスクドライブ等)が得られる。
以上説明したように、本発明によれば、欠陥がなく、良好な精度のマスターディスクが得られる。
以下、添付図面に従って、本発明に係るマスターディスクの製造方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は本発明の磁気転写用マスターディスク10(以下、マスターディスク10という)の部分斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿った断面図であり、被転写用ディスク(スレーブディスク14)を想像線で示したものである。
図1及び図2に示されるように、マスターディスク10は、金属製のマスター基板11と磁性層12とで構成され、マスター基板11の表面に転写情報に対応する微細な凹凸パターンP(たとえばサーボ情報パターン)を有するとともに、その凹凸パターンPに磁性層12が被覆されている。
これにより、マスター基板11の片面に磁性層12が被覆された微細な凹凸パターンPを有する情報担持面13が形成される。図1から解るように、この微細な凹凸パターンPは、平面視で長方形であり、磁性層12が形成された状態でトラック方向(図の矢印方向)の長さpと、半径方向の長さLとよりなる。
この長さpと長さLとの最適値は、記録密度や記録信号波形により異なるが、たとえば長さpを80nm、長さLを200nmにできる。この微細な凹凸パターンPはサーボ信号の場合は、半径方向に長く形成される。この場合、たとえば半径方向の長さLが0.05〜20μm、トラック方向(円周方向)の長さpが0.01〜5μmであることが好ましい。
この範囲で半径方向の方が長い凹凸パターンPを選ぶことがサーボ信号を担持するパターンとして好ましい。凹凸パターンPの深さt(突起の高さ)は、30〜800nmの範囲が好ましく、50〜300nmの範囲がより好ましい。
マスター基板11は、電鋳により作製され、図3に示されるように、中心孔11Gを有する円盤状に形成され、片面の(情報担持面13)の内周部11D及び外周部11Eを除く円環状領域11Fに凹凸パターンPが形成される。このマスター基板11の製造の詳細は後述するが、主に、情報を凹凸パターンPで形成した原版上に電鋳を施して、電鋳層から成る金属盤を原版上に形成して、この金属盤に凹凸パターンPを転写する電鋳工程と、金属盤を原版上から剥離する剥離工程とにより製造される。
本発明において、電鋳層としては各種金属や合金類を使用できるが、本実施の形態では好ましい一例として、Ni電鋳層の例で以下に説明する。このNi電鋳層は柔軟性をもたせるため、規定された結晶構造を有するように、電鋳時の電流密度を制御しながら電鋳する。電鋳時の電流密度については、後述する。
次に、上記の如く構成される本発明のマスターディスク10の製造方法を詳細に説明する。
図4はマスターディスク10を製造するステップを示す工程図である。先ず、図4(a)に示されるように、表面が平滑且つ清浄なシリコーンウエハーによる原板15(ガラス板、石英板でもよい)の上に、密着層形成等の前処理を行い、電子線レジスト液をスピンコート等で塗布してレジスト膜16を形成し、ベーキングする。
そして、高精度な回転ステージ又はX−Yステージを備えた電子ビーム露光装置(図示せず)にて、そのステージに搭載した原板15にサーボ信号等に対応して変調した電子ビームBを照射し、レジスト膜16に所望の凹凸パターンP' を描画露光する。
次に、図4(b)に示されるように、レジスト膜16を現像処理し、露光部分を除去して残ったレジスト膜16によって所望の凹凸パターンP' を形成する。この凹凸パターンP' 上にたとえばスパッタリングにより初期電導層であるNi導電膜(薄いので図示せず)を付与し(初期電導層形成工程)、電鋳可能な原版17を作製する。
この初期電導層形成工程において、Ni導電膜の表面の酸化層の厚さが10nm以下となるように、スパッタリング条件及びスパッタリング後の保存条件を適正に管理することが求められる。このようなスパッタリング条件としては、スパッタ圧力、投入電力(成膜レート)、成膜時のプロセスガス中の酸素含有量の調整等が挙げられる。
すなわち、本発明者らは、Ni導電膜(初期電導層)を形成した後に、鍍金(電鋳)を行うまでの間にNi導電膜の表面が酸化されて酸化層を形成し、この酸化層により電鋳の際に酸化層より放電を生じたり、この酸化層により界面剥離を生じたりすることを発見した。
Ni導電膜は、スパッタ法のような真空成膜法により形成されるのが一般的であるが、このような成膜法では、膜密度が小さく、また、Ni導電膜と鍍金層との間に大きな内部応力を発生すると考えられる。
したがって、Ni導電膜の酸化層の厚さを適切にコントロールすることにより、上記の問題点を解決できることを見出した。これにより、本発明によれば、欠陥がなく、良好な精度のマスターディスクが得られる。
特に、このNi導電膜の線電気抵抗が2Ω/cm未満であることが好ましく、0.1Ω/cm以下であることがより好ましく、0.07Ω/cm以下であることが更に好ましい。このような線電気抵抗のNi導電膜であれば、上記の問題点の解決により有効である。
また、Ni導電膜(初期電導層)表面の膜厚を20〜50nmとするのが好ましく、25〜45nmとするのがより好ましい。これは全体膜厚に対する酸化層の厚さ割合に対応し、酸素含有量を調整することにより設定できる。
次に、図4(c)に示されるように、原版17の全面に電鋳装置で電鋳処理を施し、Ni金属による所望厚さの金属盤18(Ni電鋳層)を積層する。Niは面心立方格子の結晶構造を有しており、電鋳時の電流密度を制御して規定の結晶構造となるように電鋳する。
図5は、電鋳装置60の断面図である。この電鋳装置60は、鍍金液(浴)62を貯留する鍍金槽64と、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるドレーン槽66と、陽極となるNiペレット68、68…が充填され、鍍金槽64よりオーバーフローした鍍金液62を受けるアノード室70と、原版17を保持する陰極72等より構成される。
鍍金槽64には鍍金液供給配管74より鍍金液62が供給されるようになっている。また、鍍金槽64よりドレーン槽66にオーバーフローした鍍金液62は、ドレーン槽排水配管76より回収されるようになっている。また、鍍金槽64よりアノード室70にオーバーフローした鍍金液62は、アノード室排水配管78より回収されるようになっている。
鍍金槽64とアノード室70とは、隔壁板80により区切られている。また、鍍金槽64側の隔壁板80の表面には、電極遮蔽板82が陰極72と対向するように固定されている。この電極遮蔽板82は、電鋳した膜厚が面内で均一になるように、電極の所定部分を覆うように形成されているものである。
以上の構成からなる電鋳装置60において、陰極72に原版17を保持させ、陰極72に負電極を接続し、アノード室70の正電極を接続して通電することにより、マスター基板11の電鋳が行われる。
電鋳において、本実施の形態では、電鋳時の電流密度を図6に示されるパターンで制御する。すなわち、電鋳工程を3以上の時間帯に分割し、スタート時よりの所定時間、全電鋳工程の平均電流密度の65%以下の電流密度で電鋳を行う初期電鋳工程50と、初期電鋳工程の後に所定時間行う電鋳工程であって、全電鋳工程の平均電流密度の140%以上の電流密度で電鋳を行う本電鋳工程52と、終了時までの所定時間、全電鋳工程の平均電流密度の50%以下の電流密度で電鋳を行う終期電鋳工程54と、を含ませる。
この図6は、横軸に時間を、縦軸に電流密度をとったX−Yグラフである。そして、初期電鋳工程50の時間50T、本電鋳工程52の時間52T、及び終期電鋳工程54の時間54Tがそれぞれ示されている。
この初期電鋳工程50の時間50Tは、全電鋳工程の30〜75%の時間とすることが好ましく、終期電鋳工程54の時間54Tは、全電鋳工程の5〜10%の時間とすることが好ましい。また、全電鋳工程の平均電流密度を5〜15A/dm2 とすることが好ましい。
このように、電鋳工程の電流密度と時間を制御することにより、電鋳層に内部応力を生じにくく、電鋳後のディスクの平坦度を非常に高精度に(平坦度を小さく)維持できる。また、電鋳後のディスクの表面粗さを非常に高精度に(表面粗さを小さく)維持できる。更に、電鋳速度は従来と同様に維持でき、生産性に劣ることもない。
なお、初期電鋳工程50における電流密度を全電鋳工程の平均電流密度の65%超とした場合には、電鋳層に内部応力を生じるので好ましくなく、終期電鋳工程54における電流密度を全電鋳工程の平均電流密度の50%超とした場合には、電鋳後のディスクの表面粗さが劣るので好ましくない。
また、初期電鋳工程50の時間50Tを全電鋳工程の30%の時間未満とした場合には、電鋳層に内部応力を生じるので好ましくなく、時間50Tを全電鋳工程の75%の時間超とした場合には、生産性に劣るので好ましくない。
同様に、終期電鋳工程54の時間54Tを全電鋳工程の5%の時間未満とした場合には、電鋳後のディスクの表面粗さが劣るので好ましくなく、時間54Tを全電鋳工程の10%の時間超とした場合には、生産性に劣るので好ましくない。
なお、「全電鋳工程の平均電流密度」とは、全電鋳工程の積算した電流密度を全電鋳工程の時間で除した値であり、図6のグラフの面積を全電鋳工程の時間で除した値でもある。
図4に戻り、次に、前述のように規定した結晶構造を有する金属盤18を原版17から剥離し、残留するレジスト膜16を除去・洗浄する。これにより、図4(d)に示されるように、反転した凹凸パターンPを有し、且つ所定サイズに打ち抜く前の外径Dを有するマスター基板11の原盤11' が得られる。
この原盤11' を打ち抜いて、図4(e)に示される外径dの所定サイズのマスター基板11が得られる。このマスター基板11の凹凸パターン面に磁性層12を成膜することでマスターディスク10を製造することができる。
なお、マスターディスク10の他の製造工程としては、原版17に電鋳を施して第2原版を作製する。そして、この第2原版を使用して電鋳を行い、反転した凹凸パターンを有する金属盤を作製し、所定サイズに打ち抜いてマスター基板としてもよい。
更には、第2原版に電鋳を行うか、樹脂液を押しつけて硬化を行って第3原版を作製し、この第3原版に電鋳を行って金属盤を作製し、更に反転した凹凸パターンを有する金属盤を剥離してマスター基板としてもよい。第2原版又は第3原版を繰り返し使用し、複数の金属盤18を作製することができる。
また、原版の作製において、レジスト膜を露光・現像処理した後、エッチング処理を行って、原版の表面にエッチングによる凹凸パターンを形成してからレジスト膜を除去してもよい。
磁性層12の形成は、磁性材料を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜手段、又はメッキ法、塗布法等により成膜する。磁性層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。特にFeCo、FeCoNiを好ましく使用することができる。磁性層12の厚さは50〜500nmの範囲が好ましく、100〜400nmの範囲が更に好ましい。
なお、磁性層12の上に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、スパッタカーボン等の保護膜を設けることが好ましく、保護膜の上に更に潤滑剤層を設けても良い。この場合、保護膜として厚さが3〜30nmのDLC膜と潤滑剤層とする構成が好ましい。
また、磁性層と保護膜との間に、Si等の密着強化層を設けるようにしても良い。潤滑剤はスレーブディスク14との接触過程で生じるずれを補正する際の、摩擦による傷の発生などの耐久性の劣化を改善する効果を有する。
本発明では、電鋳処理による金属盤18の積層において、電流密度と時間を制御して、残留応力の非常に小さいNi電鋳層が形成されるようにした。
通常、マスターディスク10に使用される金属はニッケル(Ni)であるが、マスターディスク10を電鋳で製造する場合には、応力の小さなマスター基板11が得られ易いスルファミン酸ニッケル浴を使用することが好ましい。
スルファミン酸ニッケル浴は、たとえば、スルファミン酸ニッケルを400〜800g/L、ホウ酸を20〜50g/L(過飽和)をベースとして界面活性剤(たとえばラウリル硫酸ナトリウム)等の添加物を必要に応じて添加したものである。メッキ浴の浴温度は40〜60°Cが好適である。電鋳時の対極にはチタンケースに入れたニッケルボールを使用することが好ましい。
次に、上記の如く製造したマスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する磁気転写方法について説明する。図7は本発明のマスターディスク10を使用して磁気転写を行うための磁気転写装置20の要部斜視図である。
磁気転写時には図9(a)に示される後述する初期直流磁化を行った後のスレーブディスク14のスレーブ面(磁気記録面)を、マスターディスク10の情報担持面13に接触させ、所定の押圧力で密着させる。そして、このスレーブディスク14とマスターディスク10との密着状態で、磁界生成手段30により転写用磁界を印加して、マスターディスク10の凹凸パターンPをスレーブディスク14に転写する。
スレーブディスク14は、両面又は片面に磁気記録層が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状記録媒体であり、マスターディスク10に密着させる以前に、グライドヘッド、研磨体などにより表面の微小突起及び付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシィング等)が必要に応じて施される。
スレーブディスク14の磁気記録層には、塗布型磁気記録層、メッキ型磁気記録層、又は金属薄膜型磁気記録層を採用できる。金属薄膜型磁気記録層の磁性材料としては、Co、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)、Ni、Ni合金(NiFe等)、を用いることができる。
これらは磁束密度が大きいこと、磁界印加方向と同じ方向(面内記録なら面内方向)の磁界異方性を有していることにより、明瞭な転写を行えるため好ましい。そして、磁性材料の下(支持体側)に必要な磁気異方性を付与するために、非磁性の下地層を設けることが好ましい。この下地層には、結晶構造と格子定数を磁性層12に合わすことが必要である。その為には、Cr、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru等を用いることが好ましい。
マスターディスク10による磁気転写は、スレーブディスク14の片面にマスターディスク10を密着させて片面に転写を行う場合と、図示しないが、スレーブディスク14の両面に一対のマスターディスク10を密着させて両面で同時転写を行う場合とがある。
転写用磁界を印加する磁界生成手段30は、密着保持されたスレーブディスク14とマスターディスク10の半径方向に延びるギャップ31を有するコア32にコイル33が巻き付けられた電磁石装置34、34が上下両側に配設されており、上下で同じ方向にトラック方向と平行な磁力線G(図8参照)を有する転写用磁界を印加する。図8は、円周トラック14A、14A…と磁力線Gとの関係を示したものである。
磁界印加時には、スレーブディスク14とマスターディスク10とを一体的に回転させつつ磁界生成手段30によって転写用磁界を印加させ、マスターディスク10の凹凸パターンをスレーブディスク14のスレーブ面に磁気的に転写する。なお、この構成以外に磁界生成手段の方を回転移動させるようにしてもよい。
転写用磁界は、最適転写磁界強度範囲(スレーブディスク14の保磁力Hcの0.6〜1.3倍)の最大値を超える磁界強度がトラック方向のいずれにも存在せず、最適転写磁界強度範囲内の磁界強度となる部分が1つのトラック方向で少なくとも1カ所以上存在し、これと逆向きのトラック方向の磁界強度が何れのトラック方向位置においても最適転写磁界強度範囲内の最小値未満である磁界強度分布の磁界をトラック方向の一部分で発生させている。
図9は、面内記録による磁気転写方法の基本工程を説明する説明図である。先ず、図9(a)に示されるように、予めスレーブディスク14に初期磁界Hi をトラック方向の一方向に印加して初期磁化(直流消磁)を施しておく。
次に、図9(b)に示されるように、このスレーブディスク14の記録面(磁気記録部)とマスターディスク10の凹凸パターンPが形成された情報担持面13とを密着させ、スレーブディスク14のトラック方向に初期磁界Hi とは逆方向に転写用磁界Hd を印加して磁気転写を行う。転写用磁界Hd が凹凸パターンPの凸部の磁性層12に吸い込まれてこの部分の磁化は反転せず、その他の部分の磁界が反転する結果、図9(c)に示されるように、スレーブディスク14の磁気記録面にはマスターディスク10の凹凸パターンPが磁気的に転写記録される。
このような磁気転写において、スレーブディスク14とマスターディスク10とを良好に密着させることが高精度な転写を行う上で重要であるが、本発明の高平坦なマスターディスク10を使用することにより、良好な密着を行うことができる。
このスレーブディスク14は、磁気記録装置(ハードディスクドライブ)に組み込んで好適に使用できる。これに使用されるハードディスクドライブとしては、各ドライブメーカーより販売されている公知の各種装置を使用すればよい。
以上、本発明に係るマスターディスクの製造方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態において、磁気転写用のマスターディスクの製造方法が取り上げられているが、本発明は、これ以外のマスターディスク、たとえば、光ディスク、ビデオディスク等のマスターディスク(スタンパ)の製造にも適用できる。
また、本実施形態において、全電鋳工程を、初期電鋳工程50と、本電鋳工程52と、終期電鋳工程54との3の時間帯に分割しているが、これ以上の時間帯に分割する方法をも採用できる。このように、多数の時間帯に分割し、よりきめの細かい制御を行うことも好ましく採用できる。
また、本実施形態において、マスターディスク10の裏面の加工は行っていないが、マスターディスク10の裏面に機械加工等を施して、板厚偏差を無くすようにする態様も採用できる。
更に、本実施形態のマスターディスク10は、内径を有する円環状(ドーナツ状)のものであるが、内径を有しない円盤状のものであってもよい。
次に本発明の実施例と比較例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
マスター基板11として、2.5インチサイズ(内径:ID=28mm、外径:OD=63mm)のものを作成した。初期電導層形成工程において、スパッタリングによりNi導電膜の表面の酸化層の厚さが異なるように、後述するように条件を変えてスパッタリングを行い、6種類の試料を得た(実施例1〜3及び比較例1〜3)。
次いで、図5に示される既述の電鋳装置60を使用して、マスター基板11の電鋳を行った。電鋳装置60の鍍金液(浴)62の組成は、以下の通りである。
・スルファミン酸ニッケル :600g/L
・ホウ酸 :40g/L
・界面活性剤(ラウリル酸Na):0.15g/L
鍍金液(浴)62の温度は55°Cに制御した。
・ホウ酸 :40g/L
・界面活性剤(ラウリル酸Na):0.15g/L
鍍金液(浴)62の温度は55°Cに制御した。
次いで、マスター基板11の表面にArプラズマによってドライクリーニングを実施(25.6W/cm2 )した。クリーニング後のマスター基板11の表面にFeCoからなる磁性層12を形成し、マスターディスク10を得た。この磁性層12は、FeCo35at%(厚さ200nm)であり、成膜条件は15.24W/cm2 であった。
成膜後の磁性層12の膜剥れ評価を行った。評価方法は以下の通りである。磁性層12(FeCo膜)の表面に対し、ステンレス球を用いた硬球スクラッチ試験を実施した(75、100gf荷重、1mm長、0.1mm間隔、10パス)。
スクラッチ試験箇所に、日東電工社製ポリエチレンナフタレートテープ(No.31B)を18mm×20mmのサイズにして接着させ、500gf/cm2 (4.9N/cm2 )以上の力で3回以上こすりつけて完全に密着させた。そして、その後一気に引き剥がした。
この作業を5回異なった試験箇所に対して実施した。100gf(0.98N)で剥離しない場合を○と、75gf(0.74N)で剥離がなく、100gf(0.98N)で剥離が発生した場合を△と、75gf(0.74N)で剥離が発生した場合を×とランク分けした。
以下、スパッタリング(初期電導層形成工程)における初期電導層の形成条件と、成膜後の磁性層12の膜剥れ評価結果を各試料(実施例1〜3及び比較例1〜3)について述べる。
[実施例1]
初期電導層の厚さを30nmに設定した。成膜時のスパッタ圧を0.1Pa(初期酸素分圧:0.01Pa)とした。初期酸化層の厚さは5nmであり、初期電導層の線抵抗は0.05Ω/cmであった。
初期電導層の厚さを30nmに設定した。成膜時のスパッタ圧を0.1Pa(初期酸素分圧:0.01Pa)とした。初期酸化層の厚さは5nmであり、初期電導層の線抵抗は0.05Ω/cmであった。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、○であった。
[実施例2]
成膜時のスパッタ圧を0.2Pa(初期酸素分圧:0.02Pa)とした以外は、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは5nmであり、初期電導層の線抵抗は0.09Ω/cmであった。
成膜時のスパッタ圧を0.2Pa(初期酸素分圧:0.02Pa)とした以外は、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは5nmであり、初期電導層の線抵抗は0.09Ω/cmであった。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、○であった。
[実施例3]
初期酸化層の厚さを10nmに変更した点を除き、実施例1と同一とした。初期電導層の線抵抗は0.10Ω/cmであった。
初期酸化層の厚さを10nmに変更した点を除き、実施例1と同一とした。初期電導層の線抵抗は0.10Ω/cmであった。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、○であった。
[比較例1]
スパッタプロセス中に酸素ガスを導入せず作成した点を除き、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは20nmであり、初期電導層の線抵抗は0.22Ω/cmであった。
スパッタプロセス中に酸素ガスを導入せず作成した点を除き、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは20nmであり、初期電導層の線抵抗は0.22Ω/cmであった。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、×であった。
[比較例2]
初期酸素分圧を0.04Paに変更した点を除き、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは15nmであり、初期電導層の線抵抗は0.18Ω/cmであった。
初期酸素分圧を0.04Paに変更した点を除き、実施例1と同一とした。初期酸化層の厚さは15nmであり、初期電導層の線抵抗は0.18Ω/cmであった。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、×であった。
[比較例3]
初期酸化層厚を15nmに変更した点を除き、実施例1と同一とした。
初期酸化層厚を15nmに変更した点を除き、実施例1と同一とした。
磁性層12の膜剥れ評価結果は、×であった。
10…マスターディスク(磁気転写用マスターディスク)、11…マスター基板、12…磁性層、14…スレーブディスク、20…磁気転写装置、50…初期電鋳工程、52…本電鋳工程、54…終期電鋳工程、P…凹凸パターン
Claims (6)
- 表面に反転凹凸パターンを有するマスター型の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、
該初期電導層の表面に金属を鍍金して、該初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板を形成する工程と、
該マスター基板を前記マスター型より剥離する工程と、
を備えることを特徴とするマスターディスクの製造方法。 - 表面に反転凹凸パターンを有するマスター型の表面に酸化層の厚さが1nm以上、10nm以下の初期電導層を形成する工程と、
該初期電導層の表面に金属を鍍金して、該初期電導層と鍍金層よりなるマスター基板を形成する工程と、
該マスター基板を前記マスター型より剥離する工程と、
該マスター基板の前記初期電導層の表面に磁性層を形成する工程と、
を備えることを特徴とするマスターディスクの製造方法。 - 前記初期電導層の線電気抵抗が2Ω/cm未満である請求項1又は2に記載のマスターディスクの製造方法。
- 前記初期電導層がニッケルを主成分とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のマスターディスクの製造方法。
- 請求項2〜4のいずれか1項に記載のマスターディスクの製造方法によって製造された磁気転写用のマスターディスクの前記磁性層側の表面に被転写用磁気記録媒体を密着させる密着工程と、
磁界生成手段を設け、前記被転写用磁気記録媒体と前記マスターディスクの円周方向に磁界を加え、前記マスターディスクの磁気パターンを前記被転写用磁気記録媒体に転写させる磁気転写工程と、
を経て磁気記録されたことを特徴とする磁気記録媒体。 - 請求項5に記載の磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
Priority Applications (1)
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JP2005107907A JP2006286144A (ja) | 2005-04-04 | 2005-04-04 | マスターディスクの製造方法、磁気記録媒体、及び磁気記録装置 |
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- 2005-04-04 JP JP2005107907A patent/JP2006286144A/ja active Pending
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