以下、本発明について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与して説明し、場合によっては説明を省略する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る現像装置を示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係る現像装置を示す側断面図であり、図2のA−Aの線断面図である。図4は、第1実施形態に係る現像装置を示す上断面図であり、図3のB−B線断面図である。
また、以下、説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向又は示す側をそれぞれ、前方、後方、左方、右方、上方、下方、又は、前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
図1に示すように、本実施形態に係る画像形成装置Uは、自動原稿搬送装置U1と前記自動原稿搬送装置U1を支持するプラテンガラスPGを有する複写機U2とを有している。
自動原稿搬送装置U1は、複写しようとする複数の原稿Giが重ねて載置される原稿給紙トレイTG1を有している。原稿給紙トレイTG1に載置された複数の各原稿Giは順次複写機U2のプラテンガラスPG上の複写位置を通過して原稿排紙トレイTG2に排出されるように構成されている。前記自動原稿搬送装置U1は、その後端部(−X端部)に設けた左右方向に延びるヒンジ軸(図示せず)により複写機U2に対して回動可能であり、原稿Giを作業者が手でプラテンガラスPG上に置く場合に上方に回動される。
複写機U2は、イメージスキャナU2a及びトナー補給装置U2bを上面に支持するプリンタU2cを有している。
イメージスキャナU2aの上面にはプラテンガラスPGが設けられており、プラテンガラスPG上面には自動原稿搬送装置U1が支持されている。イメージスキャナU2aでは、プラテンガラスPG上の複写位置を通過する原稿Giが露光光学系Aの露光光源により照明され、照明された原稿Giからの反射光は、露光光学系Aのミラー等を介して、CCD(固体撮像素子)でR(赤)、G(緑)、B(青)の電気信号に変換される。RGBの電気信号はIPS(イメージプロセッシングシステム)でK(黒)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の画像データに変換され、濃度補正、拡大、縮小等の画像処理が行われた後、所定のタイミングでプリンタU2cに入力される。なお、イメージスキャナU2aには図示しないUI(ユーザインタフェース)が設けられている。UIにはコピースタートキー、テンキー、表示器等が設けられている。
トナー補給装置U2bは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の各色のトナーを収容したトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に装着されるカートリッジ装着部を有し、各トナーカートリッジKy,Km,Kc,Kk内のトナーをプリンタU2cの各色の現像装置Gk,Gy,Gm,Gcに補給する。このトナー補給装置U2bの詳細は、特開平8−171248号公報等に記載されている。
プリンタU2cのレーザ駆動回路DLは、イメージスキャナU2aから入力されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の画像データに応じたレーザ駆動信号を所定のタイミングで、各色のトナー像形成装置UY,UM,UC,UKの潜像形成装置(画像書込装置)ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。K(黒)のトナー像形成装置UKは、回転駆動される感光体ドラム(像担持体)Pkを有しており、回転する感光体ドラムPkの表面は帯電器CCkにより帯電され、ROSk(黒用潜像形成装置)の出射するレーザビームLkにより照射されて静電潜像が形成され、現像装置Gkにより静電潜像がトナー像に現像され、トナー像は1次転写ロールT1kにより中間転写ベルトBに一次転写され、転写残トナーはクリーナCLkによりクリーニングされる。そして、他のトナー像形成装置UY,UM,UCの感光体ドラム(像担持体)Py,Pm,Pcの周囲にもそれぞれ感光体ドラムPkの周囲と同様に、帯電器CCk,CCy,CCm,CCc、現像装置Gy,Gm,Gc、1次転写ロールT1y,T1m,T1c及びクリーナCLy,CLm,CLc等が配置されている。
したがって、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkは、それぞれ各帯電器CCk、CCy,CCm,CCcにより一様に帯電された後、潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力するレーザビームLy,Lm,Lc,Lkによりその表面に静電潜像が形成される。感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面の静電潜像は、現像装置Gy,Gm,Gc,GkによりY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の色のトナー像に現像される。感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより中間転写ベルト(転写材)B上に順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上にカラー画像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラートナー像は、2次転写領域Q4に搬送される。なお、黒画像データのみの場合はK(黒)の感光体ドラムPk及び現像装置Gkを有するトナー像形成装置UKのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
各色の感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkの下方には左右一対のスライドレールSR,スライドレールSRによりスライドフレームF1が前後(紙面に垂直な方向)にスライド移動可能に支持されている。スライドフレームF1にはベルトモジュールBMのベルトフレームF2が上昇した動作位置と下方に移動したメンテナンス位置との間で昇降可能に支持されている。スライドフレームF1を前後移動させる構成及びベルトモジュールBMを昇降させる構成は、従来公知(例えば、特開平8−171248号公報参照)であり、従来公知の種々の構成を採用することが可能である。ベルトモジュールBMは、中間転写ベルトBと、ベルト駆動ロールRd、テンションロールRt、ウォーキングロールRw、複数のアイドラロール(フリーロール)Rf及びバックアップロールT2aを含むベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)と、1次転写ロールT1k,T1y,T1m,T1cとを有している。そして、中間転写ベルトBはベルト支持ロール(Rd,Rt,Rw,Rf,T2a)により矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
バックアップロールT2aの下方には2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtはスライドフレームFsにより上方に回動した上昇位置と下方に回動した下降位置との間で、ヒンジ軸Uta回りに回動可能に支持されている。2次転写ユニットUtの2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBを挟んでバックアップロールT2aに離接(離隔及び圧接)可能に配置されており、2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと圧接する領域(ニップ)により2次転写領域Q4が形成されている。また、バックアップロールT2aにはコンタクトロールT2cが当接しており、各ロールT2a〜T2cにより2次転写ロールT2が構成されている。コントクトロールT2cにはコントローラCにより制御される電源回路Eから所定のタイミングでトナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
ベルトモジュールBM下方にはシートSを収容した給紙トレイTR1及びシート搬送路SHが設けられている。給紙トレイTR1に収容されたシートSは、所定のタイミングでピックアップロールRpにより取り出され、さばきロールRsで1枚づつ分離されて、レジロールRrに搬送される。レジロールRrに搬送された記録シートSは、1次転写された多重トナー像又は単色トナー像が2次転写領域Q4に移動するのにタイミングを合わせて、レジ側シートガイドSGr、転写前シートガイドSG1から2次転写領域Q4に搬送される。2次転写領域Q4を記録シートSが通過する際、2次転写ロールT2のコンタクトロールT2cに2次転写電圧が印加されるので、中間転写ベルトBに重ねて1次転写されたカラートナー像は、2次転写領域Q4において一括して記録シートSに2次転写される。2次転写後の中間転写ベルトBはベルトクリーナCLBにより残留トナーが除去される。また、2次転写ロールT2bは2次転写ロールクリーナCLtにより表面付着トナーが回収される。
なお、2次転写ロールT2b及びベルトクリーナCLBは、中間転写ベルトBと離接(離隔及び圧接)自在に配設されており、カラー画像が形成される場合には最終色の未定着トナー像が中間転写ベルトBに1次転写されるまで、中間転写ベルトBから離隔している。なお、2次転写ロールクリーナCLtは、2次転写ロールT2bと一緒に離接移動を行う。トナー像が2次転写された記録シートSは、転写後シートガイドSG2、シート搬送ベルトBHにより定着領域Q5に搬送され、定着領域Q5を通過する際に加熱ロールFh及び加圧ロールFpにより構成される一対の定着ロールFh,Fpを有する定着装置Fにより加熱定着される。トナー像が定着された記録シートSは、排出ロールRhを経て、記録シート排出トレイTR2に排出される。符号Rp,Rs,Rr,SG1,SG2,BHで示された要素によりシート搬送路SHが構成されている。
各現像装置Gk,Gy,Gm,Gcは同様に構成されているので、以下黒色用現像装置Gkについて説明を行い、他の現像装置Gy,Gm,Gcに着いての詳細な説明は省略する。
現像装置Gkは、図2〜4に示すように、現像領域Q2(図3、図4参照)で感光体ドラム(像担持体)Pkに対向して配置された現像装置Gkは、負(−)極性に帯電するトナー及び正(+)極性に帯電するキャリアからなる2成分現像剤を収容する現像容器GVを有している。現像容器GVは、現像容器本体1とその上端を塞ぐ現像容器カバー2と現像容器本体1の前端に連結された前側接続部材3とを有している(図2参照)。
現像容器本体1はその内側に、現像ロールR0を収容する現像ロール室4を有しており、現像ロール室4に隣接して、第1撹拌室6及び第1撹拌室6に隣接する第2撹拌室7とを有している。現像容器カバー2は現像ロール室4を形成するロール収容壁2aと、第2撹拌室7上に配置される上壁2bと、上壁2bの右側(+Y側)から下方に伸びて現像容器本体1の側壁に当接する被係止壁2cとを有している。ロール収容壁2aは頂壁2a1及び側壁2a2を有しており、頂壁2a1の内面側の現像ロール室4内には、現像容器カバー2が現像容器本体1に装着された時に現像ロールR0表面の現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材8が設けられている。現像容器カバー2が現像容器本体1に装着された際には、被係止壁2cに形成された係止口2c1が現像容器本体1の外側面に形成された係止爪(図示せず)により係止される。
第1撹拌室6は現像容器本体1側の第1主撹拌室6aと前側接続部材3の左部(−Y部)3a側の排出室6b(図4参照)とを有している。また、第2撹拌室7は現像容器本体1側の第2主撹拌室7aと前側接続部材3の右部(+Y部)3b側の補給室7bとを有している。現像容器本体1の内側で第1撹拌室6と第2撹拌室7との間には、第1主撹拌室6a及び第2主撹拌室7aの両端部以外の部分に仕切壁9が形成されている。仕切壁9の上端は、ロール収容壁2a(図3参照)の側壁2a2の下端(−Z側)に当接し、第1撹拌室6と第2撹拌室7との間を仕切っている。そして、第1主撹拌室6a及び第2主撹拌室7aはその前後方向(X軸方向)両端部の前側連通部E1及び後側連通部E2において連通するように構成されている(図4参照)。第1撹拌室6及び第2撹拌室7とによって循環撹拌室(6+7)が構成されている。
現像ロールR0は磁性を有する磁性ロール(固定磁石)の外側にスリーブを設けたものである。第1主撹拌室6aの現像剤は導電性ロールの磁力によって現像ロールR0の表面上に吸着されて、現像領域Q2に搬送される。また、現像ロールR0のロール軸R0aは現像容器本体1の前面壁と後面壁によって回転自由に支持されており、ロール軸R0aの後端(−X側端)にはギアG0(図4参照)が固定されている。ここで、現像ロールR0と感光体ドラムPkとは、同方向に回転し、対向部において、現像ロールR0の表面上に吸着された現像剤は、感光体ドラムPkの進行方向とは逆方向から現像領域Q2に搬送するようにしている。
また、現像ロールR0のスリーブには、不図示のバイアス電源が接続され、所定の現像バイアスが印加されるようになっている(本実施の形態では、現像領域Q2に交番電界が印加されるように、直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳したバイアスを印加)。
第1撹拌室6及び第2撹拌室7には現像剤を撹拌しながら搬送する第1撹拌部材R1(攪拌・搬送部材)及び第2撹拌部材R2(攪拌・搬送部材)が配置されている。第1撹拌部材R1は、現像ロールR0の軸方向に伸びる第1回転軸R1aと、回転軸R1aの外周に螺旋状に固定された撹拌搬送羽根R1b(突起部)とを有している。また、第2撹拌部材R2も、同様に、第2回転軸R2a及び撹拌搬送羽根R2b(突起部)とを有している。回転軸R1aは前側接続部材3の左部3aの前面壁と現像容器本体1の後面壁によって回転自由に支持されており、回転軸R1aの後端部(−X側端部)にはギアG1が固定されている。第2回転軸R2aも前側接続部材3の右部3bの前面壁(+X面壁)と現像容器本体1の後面壁(−X面壁)によって回転自由に支持され、後端部にギアG2が固定されている(図4参照)。前側連通部E1では、第1撹拌部材R1の撹拌搬送羽根R1bは省略されており(図4参照)、連通部E1では、第1撹拌部材R1によって現像剤は搬送されないよう構成されている。また、後側連通部E2では、第2撹拌部材R2の撹拌搬送羽根R2b(図4参照)は現像剤を逆方向に搬送する力を作用させるように構成されている。
そして、第1撹拌室6及び第2撹拌室7には、それぞれ第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2に当接するように線状部材10(摺擦部材)が設けられている。線状部材10は、その両端が第1撹拌室6、第2撹拌室7、仕切壁9などの内壁に固定され、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の軸方向(X軸方向)に対して交差するように張架して設けられている。このように、線状部材10は、その中央部が第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2に当接するように設けられている。
また、線状部材10は、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の軸方向(X軸方向)の両端側には密に設けられ、中央部側にいくに従って疎に設けられている。例えば、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の軸方向(X軸方向)の両端側では、撹拌搬送羽根R1b及び攪拌搬送羽根R2bのピッチ間に3本の線状部材10を設け、中央部側にいくに従って2本、1本と線状部材10を設けている。
線状部材10の構成材料としては、弾性部材を適用することがよい。例えば、弾性部材としては、クロロプレン、ブタジエンゴム、EPDM、ニトリルゴムなどが好適に挙げられる。また、線状部材10の太さとしては0.5mm〜2mmが適用できる。また、線状部材10は、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の表面形状に追随できる程度に緩めて張架して設けるのであれば(遊びを持たせて両端を固定する)、弾性を持たない材料(例えば、ピアノ線に代表される金属線、粒状AL部材を金属線で結合したものなど)で構成してもよい。なお、本実施形態では、太さ直径1mmのクロロプレンゴム材で構成された線状部材10を適用している。
ロール軸R0aのギアG0は第1回転軸R1aのギアG1と噛合っており、ギアG1は第2回転軸R2aのギアG2と噛合っている(図4参照)。ギアG0は現像装置用モータ(図示せず)の回転力が伝達するよう構成されており、モータによってギアG0が回転すると、ギアG1はギアG0と逆方向に回転し、ギアG1とギアG2は互いに逆方向に回転する。即ち、ギアG1及びギアG2と一体に回転する第1撹拌部材R1及び第2撹拌部材R2は互いに逆方向に回転する。したがって、第1撹拌部材R1及び第2撹拌部材R2の回転によって、第1撹拌室6及び第2撹拌室7の中の現像剤は互いに逆方向に搬送されている。あるいは、ロール軸R0aのギアG0は第1回転軸R1aのギアG1と図示しないアイドラーギアを介して噛合っており、互いに如何方向に回っている。撹拌部材による現像剤の搬送方向は羽根の巻き方向によって変化させることができるため、現像剤の搬送方向と撹拌部材の回転方向を選ぶことができる。いずれにしても、第1撹拌室6及び第2撹拌室7の中の現像剤は互いに逆方向に搬送されている。
前側接続部材3の左部(−Y部)3aの下方には現像剤排出口3a1(図4参照)が設けられており、前側接続部材3の右部(Y部)3bの右上部にはトナー補給口3b1(図4参照)が設けられている。トナー補給口3b1から補給された新しいトナーが補給後すぐに排出される割合を少なくするため、現像剤排出口3a1の位置より現像剤搬送方向下流側にトナー補給口3b1が設けられている。
以上説明した本実施形態では、電子写真プロセスが開始され、現像装置Gk内のトナー量が減少すると、随時、トナー補給装置U2bからトナー補給路(図示せず)内を通じて、現像装置Gkの第2攪拌室7へトナーが供給され、現像剤と攪拌・混合される。
補給されたトナーと混合された現像剤は、第2攪拌部材R2により攪拌搬送されて第2攪拌室7から第1攪拌室6に移動し、第1攪拌部材R1により攪拌・攪拌されつつ、トナーが現像ロールR0表面に磁気力により付着される。そして、感光体ドラムPkの回転方向とは逆方向から、現像ロールR0により現像剤を現像領域Q2に搬送して、感光体ドラム(像担持体)Pkの静電潜像を現像する。ここで、現像領域Q2には交番電界を印加する(直流成分(AC)に交流成分(DC)を重畳したバイアスを印加する)、所謂、AC(+DC)現像(以下、単にAC現像と称する)を行う。
そして、この際、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2は、その回転に伴い、回転軸R1a,R2a及び撹拌搬送羽根R1b,R2bの表面が線状部材10により摺擦されるととなる。
このように、本実施形態では、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2が現像剤の攪拌・搬送するために回転すると、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2に当接するように配設された線状部材10によって、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2が摺擦される。これにより第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2(回転軸R1a,R2a及び撹拌搬送羽根R1b,R2b)の表面に付着するトナーが掻き取られるため、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の効率の良い攪拌・搬送を実現できる共に、当該部材へのトナー固着を防止することができる。結果、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2へ固着したトナーが脱落することで生じる凝集トナーの発生を防止し、画像欠陥が防止される。
また、線状部材10として、弾性部材を適用しているので、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の表面形状(撹拌搬送羽根R1b,R2b形状)に追随して線状部材10が摺擦し、摺擦面積が増え良好にトナーを掻き取ることができる。
また、線状部材10は、トナーが固着され易い第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の軸方向(X軸方向)の両端側には密に設けられ、トナーが固着され難い中央部側にいくに従って疎に設けられているので、現像剤搬送を阻害することなく、トナー固着を防止することができる。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る現像装置に適用する線状部材を示す概略構成図である。
本実施形態は、第1実施形態における線状部材10として、図5に示すように、複数の球状体10Aを有する線状部材10を適用する形態である。球状体10Aは、その貫通孔に線状部材10を通すことで、複数連なって線状部材10に配設されている。具体的には、例えば、線状部材10として、太さ0.1mmのピアノ線に球状体10Aとして直径1mmのAl2O3を配設している。そして、線状部材10を、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の表面形状に追随できるように緩めて張架して設けている。
なお、球状体10Aとしては、上記に限られず、例えば、AL、プラスチック、ステンレスなどの材料で構成され直径0.5mm〜3mmの球状体が挙げられる。
これ以外の形態は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
本実施形態では、球状体10Aを有する線状部材10を適用することで、球状体10Aが自重でランダムに動き、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2(回転軸R1a,R2a及び撹拌搬送羽根R1b,R2b)の表面に付着するトナーが良好に掻き取られる。
(第2実施形態)
図6は、第3実施形態に係る現像装置を示す側断面図である。図7は、第3実施形態に係る現像装置を示す上断面図であり、図3のB’−B’線断面図である。なお、図6は、図2のA−Aの線断面図に相当する。
本実施形態は、第1実施形態における線状部材10に代わりに、図6〜図7に示すようにブラシ状部材11を設けた形態である。ブラシ状部材11は、それぞれ第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2に先端が当接するように設けられている。ブラシ状部材11は、その図示しないブラシ支持基材が第1撹拌室6、第2撹拌室7の内壁に固定して設けられている。また、ブラシ状部材11は、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の軸方向(X軸方向)に沿って、帯状に設けられている。
ここで、ブラシ状部材11のブラシ部は、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、ポリエステル等の樹脂繊維などの材料で構成できる。また、ブラシ部の好適な特性としては、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の表面形状に追随できるように、2デニール〜20デニール程度の太さとすることがよい。特に、ブラシ部のブラシ材質としては、2d〜10d程度の太さのナイロンが適用することがよい。
これ以外の構成は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
このように、本実施形態でも、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2が現像剤の攪拌・搬送するために回転すると、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2に当接するように帯状に配設されたブラシ状部材11によって、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2がその軸方向全域に渡って摺擦される。これにより第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2(回転軸R1a,R2a及び撹拌搬送羽根R1b,R2b)の表面に付着するトナーが掻き取られるため、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の効率の良い攪拌・搬送を実現できる共に、当該部材へのトナー固着を防止することができる。結果、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2へ固着したトナーが脱落することで生じる凝集トナーの発生を防止し、画像欠陥が防止される。
また、ブラシ状部材11のブラシ部を、第1攪拌部材R1及び第2攪拌部材R2の表面形状(撹拌搬送羽根R1b,R2b形状)に追随できるように、との特性を適宜選択することで、ブラシ状部材11による摺擦面積が増え良好にトナーを掻き取ることができる。また、このような柔らかいブラシ状部材11を適用することで、現像剤搬送を阻害することなく、トナー固着を防止することができる。
(第4実施形態)
本実施形態は、第3実施形態におけるブラシ状部材11の表面に微粒子を付着させた形態である。
ブラシ状部材11表面に付着させる微粒子としては、ガラスビーズ、アルミ粉、プラスチック粒子等が挙げられる。また、微粒子の大きさとしては、0.1mm〜1mmとすることがよい。また、微粒子の付着量としては、できるだけ多いほうがよく、一本の繊維に対して一粒子間隔とすることがよい。本実施形態では、大きさ0.2mm径のプラスチックからなる微粒子を付着させた。
これ以外は、第3実施形態と同様なので説明を省略する。
本実施形態では、ブラシ状部材11の表面(ブラシ部の表面)に微粒子を付着させることで、ブラシ状部材11のトナー掻き取り能が向上し、第3実施形態に比べ、より効果的なトナー固着防止が実現できる。
以上説明した第1〜4実施形態で使用する現像剤としては、トナーとキャリアとを含む公知の現像剤を適用することができるが、特に、壊れやすくトナー固着が生じやすい、結晶性ポリエステルを含むトナーを適用することができる。以下、このトナー(以下、本発明のトナーと称する)と共に、このトナー含む現像剤について説明する。
本発明のトナーは、例えば、着色剤と、結晶性ポリエステル樹脂を主成分とする結着樹脂とを含有する。
(結晶性ポリエステル)
結着樹脂の主成分が結晶性ポリエステル樹脂であるが、ここで主成分とは、全結着樹脂中の含有量が50重量%以上であることを言う。
「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
ポリエステル樹脂が結晶性でない場合、即ち非晶性である場合には、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができない。
結着樹脂の主成分である結晶性ポリエステル樹脂の融点は、50〜100℃の範囲であることが必要であり、55〜95℃の範囲であることが好ましく、60〜90℃の範囲であることがより好ましい。融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる。また、100℃より高いと、従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めたものをいう。なお、結晶性の樹脂においては、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピーク温度をもって融点とみなす。
結晶性ポリエステル樹脂は、下記式で示されるエステル濃度Mが、0.05以上0.11以下であるものが好ましい。
式:M=K/A
上記「エステル濃度M」とは、結晶性ポリエステル樹脂のポリマーにおけるエステル基の含有割合を示す一つの指標である。式中、Kは「ポリマー中のエステル基数」を示し、これは言い換えればポリマー全体に含まれるエステル結合の数を指す。
式中のAは「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数」を示し、これはポリマーの高分子鎖を構成する原子の合計であり、エステル結合に関与する原子数は全て含むが、その他の構成部位における枝分かれした部分の原子数は含まない。すなわち、エステル結合に関与するカルボキシル基やアルコール基に由来する炭素原子及び酸素原子(1つのエステル結合中酸素原子は2個)や、高分子鎖を構成する、例えば芳香環における6つの炭素は、前記原子数の計算に含まれるが、高分子鎖を構成する、例えば芳香環やアルキル基における水素原子、その置換体の原子ないし原子群は、前記原子数の計算に含まれない。
具体例を挙げて説明すれば、高分子鎖を構成するアリーレン基における、炭素原子6つと水素原子4つとの計10個の原子のうち、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれるものは、炭素原子の6つのみであり、また、前記水素が如何なる置換基に置換されたとしても、当該置換基を構成する原子は、上記「ポリマーの高分子鎖を構成する原子数A」に含まれない。
結晶性ポリエステル樹脂が、1の繰り返し単位(例えば、高分子がH−[OCOR1COOR2O−]n−H(ここで、R1、R2は所望の有機基)で表される場合、1の繰り返し単位は、[ ]内で表される。)のみからなる単重合体の場合には、1の繰り返し単位内には、エステル結合は2個存在する(すなわち、当該繰り返し単位内におけるエステル基数K’=2)ので、エステル濃度Mは、下記式により、求めることができる。
式:M=2/A’
(上記式中、Mはエステル濃度を、A’は1の繰り返し単位における高分子鎖を構成する原子数を示す。)
また、結晶性ポリエステル樹脂が、複数の共重合単位からなる共重合体の場合には、共重合単位ごとに、エステル基数KX及び高分子鎖を構成する原子数AXを求め、これらに共重合割合を乗じた上で、それぞれ合計し、前記式に代入することで、求めることができる。例えば、共重合単位がXa、Xb及びXcの3つであり、これらの共重合割合がa:b:c(ただし、a+b+c=1)である化合物[(Xa)a(Xb)b(Xc)c]についてのエステル濃度Mは、下記式により、求めることができる。
式:M={KXa×a+KXb×b+KXc×c}/{AXa×a+AXb×b+AXc×c}
(上記式中、Mはエステル濃度を表し、KXaは共重合単位Xa、KXbは共重合単位Xb、KXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれのエステル基数を表し、AXaは共重合単位Xa、AXbは共重合単位Xb、AXcは共重合単位Xcにおけるそれぞれの高分子鎖を構成する原子数を表す。)
結晶性ポリエステル樹脂のエステル濃度Mは、これを用いて作製したトナーの帯電性に大きな影響を与える。これはエステル濃度Mにより樹脂抵抗が変化するのが主要因であり、エステル濃度Mが大きくなると樹脂抵抗が低下し、帯電性が低下してしまう。このエステル濃度を0.05以上0.11以下にすることで、十分な帯電性や帯電安定性が得られるとともに、安定してトナーを作製することが可能となる。
前記エステル濃度Mが0.05未満では、樹脂の融点が高くなり、紙への接着性も低下する。またスルホン酸成分を含有しても、疎水性が強く、かつ溶剤への溶解性も低下することから安定してトナーを作製することが困難となる。さらに、モノマー自身も高価になるためコスト的にも好ましくない。エステル濃度の下限としては0.055が好ましく、0.06がより好ましい。
一方エステル濃度が0.11を超えると、樹脂抵抗が低下し、トナーの帯電性が低下してしまう。また融点も低くなりすぎるため、粉体や定着画像の安定性も低下してしまう。エステル濃度の上限としては0.105が好ましく、0.102がより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸が望ましい。
例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性を考慮すると、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸が好ましい。
また必要に応じて芳香族ジカルボン酸を少量共重合してもよい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。
ここで、結着樹脂には、酸由来構成成分としては前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分や芳香族ジカルボン酸由来成分のほかに、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含んでもよい。結晶性樹脂を結着樹脂の主成分にした場合、従来の粉砕法によるトナー作製は困難となる。その為スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分を含有することで、溶剤及び水への溶解性が向上し、湿式造粒性が格段に向上することができる。また使用する界面活性剤の量を低減又は使用しないで造粒することが可能となるため、後の洗浄工程が簡易化できる。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
スルホン酸基を持つジカルボン酸由来成分の全酸由来構成成分における含有量としては、0.1〜6.0構成モル%が好ましく、0.5〜5.0構成モル%がより好ましい。
この含有量が6.0構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、トナーの機械的強度が低下したりしてしまう。また樹脂抵抗が著しく低下し、かつ水分が吸着しやすくなるため、帯電量、特に高湿下での帯電量が低下してしまう。0.1構成モル%より下回ると特にエステル濃度が低い場合に溶剤や水への溶解性が悪くなることがある。
なお、「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における酸由来構成成分全体中の当該酸由来構成成分、又は、アルコール由来構成成分全体中の当該アルコール構成成分を、各1単位(モル)としたときの百分率を指す。
−アルコール由来構成成分−
アルコール構成成分である脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9―ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコストを考慮すると1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、高分子量化するためには通常1/1程度が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
結晶性ポリエステル樹脂は、三官能以上のカルボン酸成分を含有し、前記結着樹脂のTHF不溶分が0.5重量%以下である。なお、三官能以上のカルボン酸成分を「含有し」をしたのは、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂の主鎖に三官能以上のカルボン酸成分を有する場合を除外するためである。
ここで用いる三官能以上のカルボン酸成分としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、トリメシン酸、トリカルバリル酸、クエン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、この内 トリメリット酸、無水トリメリット酸が好ましい。また、三官能以上のカルボン酸成分は、樹脂の分子量にもよるが、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂中に、0.1〜5.0重量%含有することが好ましく、特に0.2〜3.0重量%含有することが好ましい。
また、結着樹脂のTHF不溶分が0.5重量%以下ということは、樹脂中のゲル分が0.5重量%未満いうことである。つまり結晶性ポリエステル樹脂に含有される三官能以上のカルボン酸成分のほとんどは樹脂の末端に結合していることを示している。樹脂中にゲル分を含有した場合、トナーの粘弾性が著しく高くなり、定着画像の画像光沢が低下するため、特にフルカラー画像に必要な高光沢画像を得る事ができない。
また樹脂作製時に架橋を施し、ゲル分を含有する場合は、乳化性が低下してしまう。またトナー作製時に架橋を施し、ゲル分を含有させる場合には、安定した架橋成分導入が困難であり、トナー品質にバラツキが生じ易くなる。
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は、定着時の耐オフセット性やトナーの機械的強度、及び得られた定着画像の画像強度の観点から、15000〜35000が好ましく、20000〜35000がさらに好ましい。15000より小さい場合は定着時の耐オフセット性や得られた定着画像の画像強度が十分でなく、35000を越える場合は安定した樹脂製造が困難となる。
樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−8120、東ソー製カラム・TSKgel SuperHMーM(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
一方、通常の結晶性ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、樹脂分子量の増加に伴い減少してしまう。そこで樹脂の末端に三官能以上のカルボン酸成分を結合することで樹脂の酸価を増加ことができる。そのため通常分子量の増加に伴い必然的に減少してしまう酸価を後述する適性な範囲に調節することができる。
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は10〜30mgKOH/gの範囲が必要で、12〜25mgKOH/gの範囲がより好ましい。脂肪族結晶性ポリエステル樹脂は芳香族結晶性樹脂に比べ親水性に乏しく、後述する乳化工程における水系媒体への微分散が難しい。さらに樹脂抵抗を満たすために樹脂のエステル濃度を上記範囲に設定することでさらに乳化が困難となる。そのため酸価が10mgKOH/gよりも低いと後述する乳化工程における樹脂乳化粒子の粒径が大きくなり、粒度分布も悪化する。分子量が増加して樹脂粘度が増加した場合はこの傾向がより顕著となる。さらに凝集工程における樹脂微粒子としての安定性に乏しくなるため、結果として小粒径のトナーを作製するのが困難となり、またトナーの粒度分布が悪化する。さらに顔料の分散が悪化するため、発色性や透明性が悪化する。さらに帯電性が低下し十分な帯電量が得られなくなる。30mgKOH/gを超えるとトナーの吸湿性が増してしまい、トナーとしての環境影響を受けやすくなり好ましくない。
(無定形高分子)
本発明のトナーは、その表面が無定形高分子を含む表面層(以下、「表面層」と略す場合がある)で被覆されたものでもよい。表面層で被覆することで、帯電性を向上させることができる。また離型剤のトナー表面への露出を抑制することができるため、流動性や保存性も向上する。この場合、この表面層の平均厚みは、0.01μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.04μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。
上記表面層の平均厚みは、TEM写真を画像解析装置LUZEX FT(ニレコ株式会社製)で二値化し、トナー外周及び結晶性樹脂層の外周から其々の円相当径を算出し、その半径の差分を、トナーにおける表面層の平均厚みとした。
表面層の平均厚みが0.5μmを超える場合には、定着時にトナーが加熱された際に、表面層の内側に多く存在する結晶性樹脂がトナーの表面に染み出しにくくなるために、結晶性樹脂に起因するシャープメルト性が発揮できず低温定着できなくなる。また、このようなトナーを用いて形成された画像ではドキュメントオフセット性が悪化する場合がある。
低温定着の観点から、表面層の平均厚みは薄ければ薄い方が好ましいが、0.01μm以下の場合には、均一に被覆することが難しくなり、またトナー製造に際して、トナーの内部から最表面へ結晶性樹脂の染み出しが容易に起こりやすくなるなど、帯電性向上の寄与が小さい場合がある。従って、表面層の平均厚みは0.04μm以上であることが好ましく、0.08μm以上であることがより好ましい。
本発明のトナーの表面層に使用される無定形高分子樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性結着樹脂などが挙げられ、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体又は共重合体(スチレン系樹脂);アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂);エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類の単独重合体又は共重合体(オレフィン系樹脂);エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等の非ビニル縮合系樹脂、及びこれらの非ビニル縮合系樹脂とビニル系モノマーとのグラフト重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂の中でもビニル系樹脂やポリエステル樹脂が特に好ましい。
ビニル系樹脂の場合、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合やシード重合により樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。前記ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルフォン酸、エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミンなどのビニル系高分子酸やビニル系高分子塩基の原料となるモノマー挙げられる。
本発明においては、前記樹脂粒子が、前記ビニル系モノマーをモノマー成分として含有していることが好ましい。本発明においては、これらのビニル系モノマーの中でも、ビニル系樹脂の形成反応の容易性等の点でビニル系高分子酸がより好ましく、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸などのカルボキシル基を解離基として有する解離性ビニル系モノマーが、重合度やガラス転移点の制御の点で特に好ましい。
なお、前記解離性ビニル系モノマーにおける解離基の濃度は、例えば、高分子ラテックスの化学(高分子刊行会)に記載されているような、トナー粒子等の粒子を表面から溶解して定量する方法などにより決定することができる。なお、前記方法等により、粒子の表面から内部にかけての樹脂の分子量やガラス転移点を決定することもできる。
一方、無定形高分子としてポリエステル樹脂を用いる場合には、前記結晶性ポリエステル樹脂と同様に乳化分散することにより、樹脂粒子分散液を調製することができる。乳化分散に用いる無定形のポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールとを脱水縮合して合成される。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
ポリエステル樹脂は上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1重量%とすることが好ましい。
本発明のトナーに使用される無定形高分子は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフイー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000〜1000000であることが好ましく、更に好ましくは7000〜500000であり、数平均分子量(Mn)は2000〜100000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5〜100であることが好ましく、更に好ましくは2〜60である。
重量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、低温定着性には効果的ではある一方で、耐ホットオフセット性が著しく悪くなるばかりでなく、トナーのガラス転移点を低下させる為、トナーのブロッキング等保存性にも悪影響を及ぼす。一方、上記範囲より分子量が大きい場合には、耐ホットオフセット性は充分付与できるものの、低温定着性は低下する他、トナー中に存在する結晶性ポリエステル相の染み出しを阻害する為、ドキュメント保存性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上述の条件を満たすことによって低温定着性と耐ホットオフセット性、ドキュメント保存性を両立し得ることが容易となる。
本発明に使用される無定形高分子のガラス転移温度は、45〜100℃であることが好ましく、貯蔵安定性とトナーの定着性のバランスの点から、50〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が45℃未満であると、トナーが貯蔵中又は現像機中でブロッキング(トナーの粒子が凝集して塊になる現象)を起こしやすい傾向にある。一方、ガラス転移温度が100℃を超えると、トナーの定着温度が高くなってしまい好ましくない。
(着色剤)
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が好ましい。
好ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用できる。
本発明のトナーにおける、前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部が好ましいが、また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用することも有効である。前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等を得ることができる。
本発明のトナーは、必要に応じて、離型剤等の他の成分を含んでいてもよい。また、本発明トナーの製造方法は特に限定されるものではないが湿式法を用いることが好ましい。
(離型剤)
離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、 オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル、ペンタエリスリトール、高級アルコールエステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。
離型剤の融点としては、少なくとも1つの離型剤の融点と結晶性ポリエステル樹脂の融点との差が10℃以下であることが好ましい。融点の差が10℃より大きい場合は十分な離型効果が発現する温度領域が小さくなる場合がある。
離型剤の種類としてはパラフィンワックス等の鉱物・石油系ワックスやペンタエリスリトールワックス、ポリオレフィンワックスが結晶性樹脂と相溶しにくいため、ワックスの定着画像表面への染み出しが十分にしやすく、また融点的にも好ましい。また2種以上の離型剤を併用してもよい。
離型剤の融点は、保存性の観点から、50℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましい。また、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
離型剤の総含有量としては、トナー原料100質量部に対し4〜25質量部の範囲が好ましく、6〜20質量部の範囲がより好ましい。4質量部未満であると、離型剤添加の効果がない場合がある。25質量部以上であると、帯電性への悪影響が現れやすくなり、また現像器内部においてトナーが破壊されやすくなるため離型剤やトナー樹脂のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れるばかりでなく、著しく造粒制御性が悪化し所望の粒度/分布のトナーを作製することが困難となってしまう。
(その他の添加剤)
本発明のトナーには、上記したような成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機微粒子)、有機微粒子等の種々の成分を添加することができる。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
無機微粒子としては、種々の目的のために添加されるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機微粒子を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粒子が好ましく用いられる。また、シリカ微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
(トナーの製造方法)
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は特に限定されるものではないが、結着樹脂の主成分が結晶性樹脂であるため粉砕法によるトナー作製は困難であり、湿式造粒法により作製されることが好ましい。湿式造粒法としては、公知の溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の方法が挙げられるが、本発明のトナーにおいては、これらの中でも乳化凝集法が粒度分布やトナー形状制御、さらには環境の観点から好適に用いられる。
乳化凝集法
乳化凝集法を用いる場合、本発明のトナーの製造方法は、少なくとも結晶性ポリエステルを水系媒体中に分散して結晶性ポリエステル粒子を得る乳化工程と、結晶性ポリエステル粒子や着色剤粒子等を含む原料分散液中で、前記結晶性ポリエステルを含む凝集粒子を形成する凝集工程と、凝集粒子を加熱することにより融合させる融合工程を、少なくとも含むことがより好ましい。さらに無定形高分子で被覆する場合、前記凝集工程の後に無定形高分子粒子を付着させる付着工程を設けても良く、また前記融合工程の後に無定形高分子微粒子を付着させる付着工程と被覆させる被覆工程を設けても良い。以下、各工程について詳細に説明する。
−乳化工程−
前記乳化粒子は塩基性物質が存在する水系媒体中で結晶性ポリエステルを乳化する乳化工程により得られる。乳化工程において結晶性ポリエステル樹脂の乳化粒子は、水系媒体と、結晶性ポリエステル樹脂を含む液(ポリマー液)とを混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。また、水系媒体中に塩基性物質が存在せしめる事でpHが上昇し、樹脂末端のカルボキシル基が解離することで、水への分散性が格段に向上し、かつ安定した水分散体を形成することができる。また樹脂にスルホン酸成分を共重合した場合も同様に自己水分散性の官能基として効果があるが、樹脂の抵抗低下や帯電の環境依存性悪化のためにできる限り共重合量は少ない事が好ましい。そこで樹脂酸価を調節することで乳化性を向上させ、結果としてスルホン酸成分量を減少することができ、抵抗低下等を抑制することができる。
本発明の乳化液の調製する際のpHは、4.5〜10.5が好ましく、5〜9.5がより好ましいが、結晶性ポリエステルの加水分解が発生しない範囲が好ましい。
ここで、塩基性物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の有機塩基類が挙げられ、この中でも無機塩基類が好ましく、特にアンモニアが加水分解抑制という観点からも好ましい。その際、樹脂融点以上の温度に加熱するか、或いは、有機溶剤にポリエステル樹脂を溶解させることにより、ポリマー液の粘性を下げて乳化粒子を形成することができるが、有機溶剤は環境汚染の観点から有機溶剤を用いないで乳化粒子を形成することが好ましい。また、乳化粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、0.01μm〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.02〜0.8μmの範囲がより好ましい。体積平均粒径が1μmを越えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、小粒径トナーの作製が困難であり、また遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点で有利である。なお、体積平均粒径は、例えばマイクロトラックなどのレーザー回折式粒度測定機を用いて測定することができる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられるが環境への観点から蒸留水、イオン交換水等の水のみであることが好ましい。
また、水系媒体に界面活性剤を添加混合しておいてもよい。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤が好ましい。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤と併用されるのが好ましい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤の水性媒体中における濃度は、0.5〜5重量%程度になるようにするのが好ましい。
なお、アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
無定形高分子でトナーを被覆する場合、被覆する樹脂がビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液が調製することができる。
被覆する樹脂がポリエステル樹脂である場合には、前記脂肪族結晶性ポリエステル樹脂と同様に、塩基性物質の存在下で乳化して、分散液を調整することができる。
前記樹脂粒子が、上記以外の樹脂である場合、その樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、その樹脂を油性溶剤に溶解させ、この溶液を、ホモジナイザー等の分散機を用いてイオン性界面活性剤や高分子電解質と共に水中に微粒子分散し、その後、加熱又は減圧して油性溶剤を蒸散させることにより、樹脂粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液を調製することができる。
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される着色剤としては、既述した着色剤を用いることができる。着色剤の分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用してこれら着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用してこれら着色剤の有機溶剤分散液を調製したりすることもできる。以下、かかる着色剤の分散液のことを、「着色粒子分散液」という場合がある。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、前記結着樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いることができる。
着色剤の添加量としては、ポリマーの総量に対して1〜30重量%の範囲とすることが好ましく、1〜20重量%の範囲とすることがより好ましく、2〜1.0重量%の範囲とすることがさらに好ましく、2〜10重量%の範囲とすることが特に好ましく、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲でできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止の点で有利である。
また、これらの着色剤は、その他の微粒子成分と共に混合溶媒中に一度に添加してもよいし、分割して多段回で添加してもよい。
前記乳化工程で、樹脂分散液と混合される離型剤としては、既述した離型剤を用いることができる。離型剤は、水中にイオン性界面活性剤等と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザや圧力吐出型分散機を用いて、1μm以下の分散微粒子径に調整される。離型剤分散液における分散媒としては、結着樹脂の分散媒と同様のものを用いることができる。
本発明のトナーにおいて、前記結着樹脂や離型剤を水性媒体と混合して、乳化分散させる装置としては、例えばホモミキサ(特殊機化工業株式会社)、あるいはスラッシャ(三井鉱山株式会社)、キャビトロン(株式会社ユーロテック)、マイクロフルイダイザ(みずほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホミジナイザ(ゴーリン社)、ナノマイザ(ナノマイザー株式会社)、スタティックミキサ(ノリタケカンパニー)などの連続式乳化分散機等が挙げられる。
前記乳化工程における結着樹脂分散液に含まれる樹脂粒子の含有量及び、着色剤及び離型剤の分散液における、着色剤、離型剤それぞれの含有量は通常、5〜50重量%の範囲であり、好ましくは8〜40重量%の範囲である。前記含有量が前記範囲外にあると、5重量%より少ないと粒度分布が広がり、特性が悪化場合がある。また50重量%を超えると均一な撹拌が困難となり、均一な粒度分布、及び均一なトナー特性を得る事が困難となる。
なお、本発明のトナーにおいて、目的に応じて、前記結着樹脂分散液に、既述したような内添剤、帯電制御剤、無機粉体等のその他の成分が分散させておいても良い。
なお、本発明のトナーにおいて、帯電制御剤としては、凝集工程や融合工程の安定性に影響するイオン強度の制御と廃水汚染減少の点で、水に溶解しにくい素材のものが好ましい。
上記その他の成分の体積平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01μm〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.02μm〜0.8μmの範囲がより好ましい。体積平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招きやすい。一方、前記体積平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり性能や信頼性のばらつきが小さくなる点で有利である。
−凝集工程−
凝集工程においては、乳化工程で得られた樹脂粒子、及び着色剤、離型剤の分散液を混合し(以下この混合液を「原料分散液」という)、前記結着樹脂の融点付近の温度で、かつ融点以下の温度にて加熱してそれぞれの分散粒子を凝集させた凝集粒子を形成する。
凝集粒子の形成は、回転せん断型ホモジナイザで攪拌下、室温で凝集剤を添加し、原料分散液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては凝集剤の種類にもよるが、2〜6の範囲にあることが好ましく、3〜5の範囲にあることがより好ましく、3.5〜5の範囲が加水分解の影響を受けにくい為もっとも好ましい。
前記凝集工程に用いる凝集剤は、2価以上の価数を取りうる金属塩である。本発明における2価以上の価数を取りうる金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、塩化亜鉛、硫酸銅、塩化鉄等の2価の金属塩、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化鉄、等の3価の金属塩、塩化スズ、等の4価の金属塩等の金属塩;及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられ、これらのうち2種以上を併用してもよい。
前記凝集剤のうち、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、が凝集性や安全性、コストの観点から好ましい。さらに、加水分解の影響を受けにくい上記pH範囲での凝集安定性を考慮した場合、塩化カルシウム、塩化マグネシウムがもっとも好ましい。
凝集力をもたらす2価以上の価数を取りうる金属塩においては、金属塩の価数にもよるが、用いる量が0.02重量%未満では凝集粒子が成長しない場合があり、1.2重量%を超えると凝集粒子が著しく不安定化してしまいトナーとして不適な粒径となる急凝集を起こしやすくなる場合がある。
また、凝集工程においては、加熱による急凝集を抑える為に、室温で攪拌混合している段階でpH調整を行い、必要に応じて分散安定剤を添加しても良い。(以下、この段階を「プレ凝集工程」という)。分散安定剤はプレ凝集工程と加熱凝集工程との両方に分けて添加しても効果的である。
−付着工程−
無定形高分子で表面を被覆する場合は以下の付着工程を経る事で被覆することができる。付着工程では、上記した凝集工程を経て形成された結晶性ポリエステルを含む凝集粒子(以下、「コア凝集粒子」と略す)の表面に無定形高分子粒子を付着させることにより被覆層を形成する(以下、コア凝集粒子表面に被覆層を設けたものを「付着凝集粒子」と略す)。なお、この被覆層は、後述する融合工程を経て形成される本発明のトナーの表面層に相当するものである。
被覆層の形成は、凝集工程においてコア凝集粒子を形成した分散液中に、無定形高分子粒子を含む分散液を追添加することにより行うことができ、必要に応じて凝集剤等他の成分も同時に追添加してもよい。付着工程においても、用いる無定形高分子に応じて凝集工程と同様にpH等を選択し、凝集粒子中に含まれる、最も融点の低い結着樹脂の融点以下の温度にて加熱し付着凝集粒子を得ることができる。また、この付着工程は、プレ凝集の段階で凝集粒子に取り込まれなかった原料微粒子を凝集に導くことにおいても有効である。
なお付着工程は下記融合工程の後の設けてもよい。つまりコア粒子が融合した後、コアの表面に無定型高分子粒子を付着させ、再度加熱することで被覆層を形成してもよい。
−融合工程−
融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集粒子の懸濁液のpHを6.0〜10.0の範囲に、好ましくは6.5〜9.5の範囲にすることにより、凝集の進行を止めた後、結着樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより凝集粒子、及び付着凝集粒子を融合させる。なお、凝集粒子を含む分散液の液性にもよるが、凝集を停止するpHが適性なpHでないと、融合させる為の昇温過程で、凝集粒子や付着凝集粒子が分解してしまったり、急凝集したりして収率が悪くなる。同様に樹脂の酸価が十分でない場合も粒子の安定性が低下するため急凝集しやすくなり、収率が悪化する。
融合時の加熱の温度としては、凝集粒子中に含まれる結着樹脂の融点以上であれば問題無い。トナーの形状は樹脂酸価と活性剤と融合時のpHと温度により制御することができる。樹脂酸価が前記範囲内にあれば粒子表面の水中での安定性が向上するため、形状の変化速度が緩和されるため形状の制御性が向上し、また形状の分布も良化する。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、目標の形状によって0.5〜6.5時間程度行えばよい。それ以上時間を掛けるとコア凝集粒子に含まれる結晶性樹脂がトナー表面ヘ露出し易くなってしまう。したがって、定着性、ドキュメント保存性には効果的であるが、帯電性に悪影響を及ぼすため、長時間加熱するのは好ましくない。
融合時に金属塩中の金属元素が樹脂末端のカルボン酸成分とイオン架橋を形成し、適性な粘弾性を得る事ができる。これにより、樹脂酸価と金属塩による凝集力のバランスから凝集・造粒安定性に優れ、また金属元素によるイオン架橋により所望のトナーの粘弾性調整を行うことが可能となり、溶融特性を生かした均一でムラのない高画質を提供することができる。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナーの粒子とすることができる。この場合、トナーとして十分な帯電特性、信頼性を確保するために、洗浄工程において、十分に洗浄することが好ましい。
乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法を採用することができる。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を1.0%以下、好ましくは0.5%以下に調整することが望ましい。
(外添剤)
本発明においては、トナー粒子表面に流動化剤や助剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用し、該外添剤の少なくとも1種は、30nm〜200nmの範囲、さらには30nm〜180nmの範囲の体積平均粒子径を有することが好ましい。
トナーが小粒径化することによって、感光体との非静電的付着力が増大するため、転写不良やホローキャラクターと呼ばれる画像抜けが引き起こされ、重ね合わせ画像等の転写ムラを生じさせる原因となるため、体積平均粒子径が30nm〜200nmの大径の外添剤を添加することにより、転写性を改善させることができる。
体積平均粒子径が30nmより小さいと、初期的なトナーの流動性は良好であるが、トナーと感光体との非静電的付着力を十分に低減できず、転写効率が低下し画像のぬけが発生したり、画像の均一性を悪化させてしまったりする。また、経時による現像機内でのストレスによって微粒子がトナー表面に埋め込まれ、帯電性が変化し、コピー濃度の低下や背景部へのカブリ等の問題を引き起こす。体積平均粒子径が200nmより大きいと、トナー表面から脱離しやすく、また流動性悪化の原因ともなり、本願発明の効果が得られない場合がある。
(トナーの特性)
本発明のトナーの体積平均粒子径は、3.0〜9.0μmの範囲が好ましく、4.0〜8.0μmの範囲がより好ましい。体積平均粒子径が3.0μmより小さいと、流動性が低下し各粒子の帯電性が不十分になりやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる。体積平均粒子径が9.0μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなる。
前記体積平均粒子径の測定は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で行うことができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
本発明のトナーで使用される結晶性樹脂の粘弾性特性は以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、角周波数1rad/sec、30℃における貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa以上であることが好ましく、1×107Pa以上がさらに好ましい。
この貯蔵弾性率GL(30)が1×106Pa未満の場合には、例えば二成分現像方式を例に取れば、現像機内でキャリアと混合された時に、キャリアから受ける圧力や剪断力によりトナー粒子が変形し、安定な帯電現像特性を維持することができず、また、静電潜像担持体上のトナーがクリーニングされる際に、クリーニングブレードから受ける剪断力によって変形し、クリーニング不良が発生する。
本発明のトナーは、貯蔵弾性率GL及び損失弾性率GNが、それぞれ10℃の温度範囲における変化量が2桁以上であることが好ましく、2.5桁以上の変化であることがより好ましい。この変化量が2桁未満であると、低温で定着できない場合がある。このような場合、エネルギー消費を低減効果が十分に得られなかったり、定着ラチチュードが十分に得られないことがある。
トナーの溶融特性として、角周波数1rad/sec、100℃における動的複素粘度(η)が1.0×102〜4.0×104(Pa・s)であり、Tm+20℃における動的複素粘度をη1、Tm+50℃における動的複素粘度をη2としたときに、次式を満たすことが好ましい。
式:1.0<(η1/η2)<7.0
本発明のトナーが、上記式を満たすことにより、オフセットの発生を防ぐことができ、粘弾性の温度依存がゆるやかであり、結晶の融解に伴い温度とともに低下する粘弾性が変極点を持ち、粘弾性の温度依存性がより低くなる。また、上記式の粘度を満たしつつ、貯蔵弾性率GLと損失弾性率GNの比である損失正接(tanδ=GN/GL)は融点Tm+20℃以上において、下記式を満たすことが好ましい。これにより、溶融ムラなどがなくなり均一で高品位な画像を得ることが可能である。
式:0.5<tanδ<3.5
この融点Tm+20℃以上における損失正接tanδが、0.5を超え3.5未満の範囲内である場合には、紙などの記録媒体に対する過度の染み込みを防止することができ、また離型剤などを含有した際には離型剤の滲み出し及び離型効果を発揮させやすい。これにより定着ラチチュードが広く、安定した画像を得ることができる。
本発明のトナーは2価以上の価数を取りうる金属元素を0.01〜1.0重量%の範囲で含有している事が必要であり、0.02〜0.8重量%がより好ましい。前述のように凝集工程で添加される金属塩の金属元素は融合時にイオン架橋を形成するためトナーの粘弾性を適正な範囲に調整することができる。凝集剤として1価の凝集剤(Na等)を用いた場合はイオン架橋が形成されず、直鎖の結晶性樹脂を用いた場合は著しく分子量を上げても適性な粘弾性にすることが難しい。また化学架橋を有する樹脂を用いた場合は前述したように精密な粘弾性の制御が困難となる。
含有する2価以上の価数を取りうる金属元素が0.01重量%より少ない場合は、適正な粘弾性が得られず、また凝集工程において十分な凝集力が得られないため、粒度/分布を制御したトナーを作製することが困難になる。2価以上の価数を取りうる金属元素が1.0重量%より多い場合はトナー粘度が高すぎ、高画像光沢な画像を得る事が困難となる。また凝集工程において凝集力が過剰となり、粒度/分布を制御したトナーを作製することが困難になる。
また、本発明のトナーの体積電気抵抗値としては、1.0×1011〜1.0×1016Ω・cmの範囲内であることが好ましく、1.0×1012〜1.0×1015Ω・cmの範囲であることがより好ましい。体積電気抵抗が1.0×1011Ω・cm未満の場合には、本発明のトナーとキャリアとが摩擦帯電した場合において、十分な帯電量を確保することが困難となる場合がある。前述したように、脂肪族結晶性ポリエステル樹脂を乳化する際、スルホン酸成分を共重合することで乳化性を向上させることができるが、樹脂抵抗が著しく低下してしまう。そこで樹脂末端に三官能以上のカルボン酸成分を結合することで樹脂抵抗を低下させることなく乳化性を向上させることができる。
一方、体積電気抵抗が1.0×1016Ω・cmより大きい場合には、本発明のトナーをキャリアと混合させた時に、現像剤としての抵抗が高くなりやすくなり、コピー画質の粒状性やハーフトーン階調性が制御しにくくなってしまう場合がある。そのため、十分な帯電性と良好なコピー画質とを永続的に確保する為には、本発明のトナーの体積電気抵抗を上述の範囲にすることが好ましい。
(現像剤)
本発明のトナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいは二成分現像剤として用いられる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用される。
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜500μmの範囲にあり、好ましくは30〜100μmの範囲にある。
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
二成分現像剤における本発明のトナートナーと上記キャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
(試験例)
上記第1〜第4実施形態に係る画像形成装置を用い、以下の試験条件でプリントを行って評価した。また、比較のために、第1実施形態において、摺擦部材としての線状部材10を除いた画像形成装置についても、同様の条件でプリントを行って評価した。なお、用いた現像剤は以下の通りである。結果を表1に示す。
−試験条件−
・感光体ドラム帯電電位=−650V
・画像部電位=−200V、
・DC現像:DCバイアス=−500V
・AC(+DC)現像:DCバイアス成分=−500V、ACバイアスVpp=1.5kV、ACバイアス周波数=9kHz
・現像ロール;径=φ18mm、表面粗さRz=24μm、
・感光体ドラム/現像ロール間隙=0.4mm
・現像ロール/感光体周速比:1.0(現像ロールと感光体ドラムの回転方向は逆方向)
・形成画像:全面30%ハーフトーン
―評価方法―
5000枚プリント後(5kpv)、10000枚プリント後(10kpv)、50000枚プリント後(50kpv)、100000枚プリント後(100kpv)の画像をそれぞれ観察し、白抜け画像欠陥の有無を調べた。評価基準は、白抜け画像欠陥が観察されなかった場合を「○」とし、白抜け画像欠陥が観察されたが実用上問題ない場合を「△」とし、白抜け画像欠陥が目立って観察され実用上問題ある場合を「×」とした。
−現像剤−
・結晶性ポリエステル樹脂の合成
加熱乾燥した5Lのフラスコに、セバシン酸1939g(9.6mol)、1,6−ヘキサンジオール1180g(10mol)、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム118.4g(0.4mol)、及びジブチルスズオキシド0.7gを入れ、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、180℃で6時間還流を行った。続いて、減圧下220℃まで徐々に昇温を行い4時間攪拌し、粘稠な状態となったところでGPCにて分子量を確認し、重量平均分子量30000になったところで、減圧蒸留を停止し、空冷して樹脂を得た。得られた樹脂の酸価は7.8mgKOH/gであり、THF不溶分はなかった。また、得られた樹脂の融点(DSCのピークトップ)は70℃、NMRによるイソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウムの含有量の測定結果は2モル%(対全構成モノマー)、エステル濃度は0.11であった。
そして、得られた樹脂に1,2,4−トリメリット酸を50g添加し、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、200℃で2時間撹拌を行った。続いて減圧下220℃まで昇温を行い10分間攪拌して減圧蒸留を停止し、空冷して結晶性ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の酸価は20.4mgKOH/gであり、重量平均分子量は28000であり、THF不溶分はなかった。また、得られた樹脂の融点(DSCのピークトップ)は69℃、NMRによるイソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウムの含有量の測定結果は2モル%(対全構成モノマー)、エステル濃度は0.11であった。
・結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製
得られた結晶性ポリエステル樹脂を溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した5重量%濃度の希アンモニア水を入れ、pHを8.2に調節した後熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記ポリエステル樹脂溶融体と同時に上記キャビトロンに移送した。この状態で、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5Kg/cm2の条件でキャビトロンを運転し、体積平均粒径が0.18μmの結晶性ポリエステル樹脂分散液(樹脂粒子濃度:20重量%)を得た。
・離型剤分散液の調製
パラフィンワックス(日本精蝋(株)性:HNP9,融点77℃):50重量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):5重量部
イオン交換水:200重量部
・着色剤分散液の調製
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン)):1000重量部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR):150重量部
イオン交換水:9000重量部
以上を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散して着色剤(シアン顔料)を分散させてなる着色剤分散液を調製した。着色剤分散液における着色剤(シアン顔料)の体積平均粒径は、0.15μm、着色剤粒子濃度は23重量%であった。
・着色粒子の作製
結晶性ポリエステル樹脂分散液:500重量部
イオン交換水;333.3重量部
着色剤分散液:25.58重量部(着色剤;5%)
離型剤分散液:58.82重量部(離型剤;10%)
ノニオン性界面活性剤(IGEPAL CA897/S.C;70%):1.68重量部(活性剤;1%)
上記原料を5Lの円筒ステンレス容器に入れ、Ultraturraxにより3500rpmで撹拌しながら、0.3Nの硝酸水溶液を滴下し、pHを4.0に調整した。ついで凝集剤として塩化カルシウム1.67重量部を徐々に滴下し、その後Ultraturraxにより6000rpmでせん断力を加えながら5分間分散混合した。原料混合液の粘度が均一になったところで、重合釜にセットした。
マントルヒーターで30℃に昇温させ、攪拌速度を400rpmに調整して30分間撹拌した。次に+1℃/分の昇温速度で60℃まで昇温した。この際、昇温とともに攪拌速度を400rpmから250rpmまで調整した。この際コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm;コールター社製)を用いて測定した凝集粒子の体積平均粒子径は約6.3μmであった。
次いで、この凝集粒子を融合させるとともに、凝集粒子がばらけるのを防ぐ為に、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHを7.6とした。攪拌速度を250rpmから200rpmに落としてから、+1℃/分の昇温速度で80℃に昇温させた。顕微鏡で粒子の形状を確認しながら、80℃で60分間保持した後、−3℃/分の降温速度で20℃まで冷却した。
その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥した。以上のように造粒した着色粒子の体積平均粒子径は6.6μmであった。また粒度分布を表すGSDの値は体積分布GSD(以下GSD(v)と表す)が1.25、個数分布GSD(以下GSD(p)と表す)が1.26であった。
・現像剤の作製
得られた着色粒子に外添剤として、表面疎水化処理した、体積平均粒子径40nmのシリカ微粒子(日本アエロジル社製疎水性シリカ:RX50)1.0wt%と、メタチタン酸100重量部にイソブチルトリメトキシシラン40重量部、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン10重量部で処理した反応生成物である体積平均粒子径20nmのメタチタン酸化合物微粒子1.0wt%とを添加し、ヘンシェルミキサーで30m/sの周速で5分間混合してトナーを得た。
得られたトナー:36重量部と下記キャリア:414重量部を2LのVブレンダーに入れ、20分間撹拌し、その後212μmで篩分して現像剤を作製した。
・キャリアの作製
フェライト粒子(体積平均粒径;35μm) 100重量部
トルエン 14重量部
パーフルオロアクリレート共重合体(臨界表面張力24dyn/cm) 1.6重量部
カーボンブラック(商品名;VXC−72、キャボット社製)抵抗100Ωcm以下0.12重量部
架橋メラミン樹脂粒子(体積平均粒径;0.3μm、トルエン不溶) 0.3重量部
フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで分散し、被膜層形成液を調合した。さらにこの被膜層形成液とフェライト粒子を真空脱気型ニーダーにいれ、温度60℃において30分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去して、樹脂被膜層を形成してキャリアを得た。(ただし、キャリア樹脂であるパーフルオロアクリレート共重合体にカーボンブラックをトルエンに希釈してサンドミルで分散しておいた。)
これらの結果から、本実施形態では、長期に渡り、白抜け画像欠陥が良好に防止されることがわかる。これにより、現像装置内において、摺擦部材により攪拌・搬送部材が付着したトナーが掻き取られて、トナー固着が防止されていることがわかる。また、壊れやすく、固着が生じやすい結晶性ポリエステルを含むトナーを使用しても、トナー固着が防止されることがわかる。これに比べ、比較例では、プリント枚数が増えると、現像装置において、攪拌・搬送部材に固着したトナーが現像され、白抜け画像欠陥が生じてしまうことがわかる。