JP2006273902A - ポリエステル樹脂製シートならびにそれよりなる成形品 - Google Patents

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雅之 川辺
Yukiyasu Ogura
幸康 小倉
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妙子 中嶋
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Abstract

【課題】耐熱性に優れたポリエステル樹脂製シート成形品を提供すること。
【解決手段】テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とするポリエステル樹脂に平均粒径50nm以下のシリカ粉末を含むポリエステル樹脂組成物からなるシートにおいて、ポリエステル樹脂組成物中のシリカ粉末の含有量が0.5〜3.0wt%であり、示差走査熱量測定(DSC)における融点と再結晶化温度の差が60℃以内であることを特徴とするポリエステル樹脂製シート。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル樹脂製シートに関し、より詳しくは、結晶化速度が速く耐熱性に優れたポリエステル製品を得ることが可能なポリエステル樹脂製シートに関するものである。
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す)製品は、優れた物理的、化学的特性を有することから、繊維、シート、フィルム、成形品として広く用いられている。
近年、熱成形により適度に結晶化させたPET製品を耐熱性容器として使用する試みがなされている。この場合、延伸および熱処理工程によってPETを十分結晶化させることにより高温条件下でも形状安定性に優れた製品としている。例えば耐熱性容器をシート、フィルム、成形品などから製造する場合、非晶状態のPET成形品(シート、フィルム、成形品)を二次加工工程で熱的に結晶化させて寸法安定性および耐熱性を高める手法がとられている。この際、二次加工温度はPETの結晶化温度(通常130℃以上)で行う必要があるが、経済的に見ると結晶化速度が速く、短い成形サイクル内で成形品が十分結晶化することが望まれている。
従来、PETの結晶化速度を高める方法として、タルクやカオリン、炭酸カルシウムなどの無機粒子を結晶核剤としてPETに添加する方法が提案されている。しかしながら、これらの無機粒子を添加する方法では、得られるPET成形品は機械的強度の低下を防ぐことができず。また、無機粒子はPET成形品中で凝集を起こしやすく、この凝集物が原因となってポリエステル成形品の外観が著しく低下するという欠点がある。
一方、PETにポリオレフィンなどの高分子材料を添加することにより、結晶化速度を高める方法も提案されているが、PETとポリオレフィンは分散性が悪くPET成形品中のポリオレフィンの含有量はバラツキが大きくなるために成形品の結晶化度が一定ではなく耐熱性および外観にむらが生じ易い。
特開2000−17158号公報 特開2001−181492号公報 特開2002−80573号公報 特開2002−121270号公報 特開2000−169132号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、耐熱性に優れたポリエステル樹脂製シート成形品を提供することにある。
上記目的は、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とするポリエステル樹脂に平均粒径50nm以下のシリカ粉末を含むポリエステル樹脂組成物からなるシートにおいて、ポリエステル樹脂組成物中のシリカ粉末の含有量が0.5〜3.0wt%であり、示差走査熱量測定(DSC)における融点と再結晶化温度の差が60℃以内であることを特徴とするポリエステル樹脂製シートによって達成される。
本発明のポリエステル樹脂製シートからなるポリエステル成形品はシリカ粒子の凝集が少なく、優れた結晶性と耐熱性を有するポリエステル製品として幅広い分野で使用することができる。
本発明に用いるポリエステル樹脂の酸成分は主としてテレフタル酸を用いるが、第3成分として他のジカルボン酸を用いる事もできる。具体的には、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、酸成分全体の5モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いるポリエステル樹脂は主として、エチレングリコールをジオール成分として用いるが、第3成分として他のジオールを用いる事もできる。具体的には、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジオール成分全体の5モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いるポリエステル樹脂組成物は、平均粒径が50nm以下のシリカ粉末を0.5〜3.0wt%含有するものである。シリカの平均粒径は、好ましくは4〜20nmであり、シリカ粉末の含有量は、好ましくはポリエステル樹脂組成物中0.5〜1.0wt%である。シリカ粉末の平均粒径が50nmを超える場合、得られるポリエステル樹脂の結晶化速度の向上が見られず耐熱性も向上しない。ポリエステル樹脂組成物中の平均粒径が50nm以下のシリカ粉末が0.5wt%未満の場合、ポリエステル樹脂製シートの結晶化速度の向上が見られず耐熱性も向上しない。一方、ポリエステル樹脂組成物中の平均粒径が50nm以下のシリカ粉末が5.0wt%を超える場合は、ポリエステル製シートの結晶化速度が速く、シートの熱成形性が著しく悪くなる。
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、これに平均粒径が50nm以下のシリカ粒子を分散させた水分散液を加えた原料を、エステル化反応により水を除去した後、アンチモン化合物を触媒として添加し重縮合反応を行うことにより製造する。必要に応じて、ゲルマニウム化合物やチタン化合物などを触媒として併用しても良い。エステル化反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを250〜280℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル化反応によって生成した水のみ系外に放出される。
また、本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸のエステル形成性誘導体(テレフタル酸ジメチルなど)と、エチレングリコールを主成分とし、これに平均粒径が50nm以下のシリカ粒子の水分散液を加えた原料を、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応によりメタノールを除去した後、アンチモン化合物を触媒として添加し重縮合反応を行
うことにより製造することもできる。必要に応じて、ゲルマニウム化合物やチタン化合物などを触媒として併用しても良い。エステル交換反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを230〜250℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル交換反応によって生成したメタノールのみ系外に放出される。エステル交換触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、チタンテトラアルコキシドなどの有機酸金属塩が用いられる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の極限粘度は、0.50〜0.90dl/gであることが好ましく、0.60〜0.80dl/gであることがより好ましい。極限粘度が極端に低すぎると、得られるポリエステル樹脂成形品の機械的強度が著しく低下する。また、極限粘度が極端に高くなる場合は、樹脂の溶融が困難となり樹脂未溶融物に由来する異物が成形品中に発生し易い。
本発明に用いられるポリエステル樹脂の製造に使用されるシリカ粒子の水分散液は、文献5に記載された方法により製造された平均粒径が50nm以下のシリカ粉末を水100重量部に対して10〜50重量部の割合で均一に分散させたものである。シリカ粉末の濃度がこの範囲にある水分散液は調整が容易である。平均粒径が50nm以下のシリカ粒子の水分散液を使用することで結晶化速度の改善されたポリエステル樹脂が得られる。
本発明のポリエステル製シートは、示差走査熱量測定(DSC)における融点と再結晶化温度の差が60℃以内の結晶性ポリエステル樹脂製シートであり、好ましくは示差走査熱量測定(DSC)における融点と再結晶化温度の差が50℃以内である。融点と再結晶化温度の差がこの範囲にあることで、結晶化速度が高く耐熱性に優れたポリエステルシート成形品が得られる。
本発明のポリエステル製シートは、公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の製造法により得られる樹脂を押出機に供給し、樹脂の溶融温度においてTダイより押出し、冷却ロール上で冷却固化することによりフラットシートを得る。このようにして得られるポリエステル樹脂製シートの厚みは通常100〜1000μmである。
本発明のポリエステル製シートは、常用の熱成形機を用いて容器等に熱成形することができる。例えば、シートをそれが軟化するまで予熱した後、所定の金型に押し当て、金型と発泡シートの空隙を排除しながら大気圧により成形する真空成形方法、あるいは大気圧以上の圧縮空気によりシートを金型に密着させて成形する圧空成形方法、および真空と圧空を併用する成形方法などがあげられる。使用する金型は、成型品の外観および厚みむらを良くするためにはおす型とめす型の両方を有する勘合金型が好適に用いられる。このようにして得られるシート成形品の厚みは、耐熱性に密接な関係があるため、100〜500μmの範囲にあることが好ましく、150〜500μmの範囲にあることがより好ましく、150〜300μmの範囲にあることが特に好ましい。成形品の厚みが100μmより薄い場合は、上述のポリエステル樹脂組成物を使用しても耐熱性の改善効果が期待できなくなる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。各物性の測定方法および評価は、下記の方法に従った。
(1)極限粘度(IV)
本発明のポリエステル樹脂をフェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶液に溶かし、20℃にて株式会社柴山科学機器製作所製 自動粘度測定装置SS−270LCを用い測定した。
(2)融点(Tm)、再結晶化温度(Tc2)
本発明のポリエステル樹脂製シートを、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、JIS K 7122に準じて試料約10mg、昇温速度10℃/分にて融点(Tm)および再結晶化温度(Tc2)を測定した。
(3)結晶化速度
本発明のポリエステル樹脂製シートから切片を切り出し、所定温度のオイルバス中に所定時間放置し、得られたサンプルを密度勾配管中、25℃で24時間放置した後、密度を測定して下記式(1)から結晶化度を計算した。
結晶化度(%)=d×(d−d)/d×(d−d)×100 (1)
d:サンプルの密度
:完全結晶相の密度
1.501:シリカ濃度0重量%の場合
1.536:シリカ濃度5重量%の場合
:非晶相の密度
1.335 シリカ濃度0重量%の場合
1.358:シリカ濃度5重量%の場合
(4)熱成形性
本発明のポリエステル樹脂製シートを真空成形機にて、加熱部温度200℃の条件で所定時間加熱し、外径100mm、高さ50mmの円筒形容器に成形した。得られた容器の外観から成形性を評価した。
○:しわ、白化なく所定形状に成形
×:しわまたは白化が見られる。
(5)耐熱性
本発明のポリエステル樹脂製シートを真空成形機にて、外径100mm、高さ50mmの円筒形容器に成形した。得られた容器に95℃の熱水を充填し、室温になるまで放置した時の容器の変形を観察した。
○:変形なし
×:変形
(ポリエステル樹脂の製造)
所定量のテレフタル酸とエチレングリコール、および、表1に示したシリカ20%含有水分散液をPET樹脂中のシリカ濃度が0.1〜5.0重量%となるようにステンレス製オートクレーブに仕込み、250℃、200kPaの条件下でエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、所定量の三酸化アンチモン触媒とリン酸トリメチルを加え、280℃、66Paの減圧下にて重縮合反応を行った。
(シートの製造)
実施例1〜5、比較例1〜5
得られたポリエステル樹脂を乾燥後、東洋精機(株)製ラボプラストミルを使用して成形温度280℃にて厚み500μmのフラットシートを製膜した。このフラットシートを用いて、熱分析(DSC)、結晶化速度の測定を行った結果を表2および表3に示す。
(熱成形)
得られたポリエステル樹脂製シートを、真空成形機にて、シート表面温度140℃、加熱時間10〜40秒の条件で、外径100mm、高さ50mmの円筒形容器に成形した。得られた容器を用いて熱変形温度を測定した。成形性と耐熱性の評価結果を表4に示す。
本発明のポリエステル樹脂からなるポリエステル成形品はシリカ粒子の凝集を抑制して外観に優れ、結晶化速度が速く耐熱性に優れたポリエステル成形品として幅広い分野で使用することができる。

Claims (2)

  1. テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とするポリエステル樹脂に平均粒径50nm以下のシリカ粉末を含むポリエステル樹脂組成物からなるシートにおいて、ポリエステル樹脂組成物中のシリカ粉末の含有量が0.5〜3.0wt%であり、示差走査熱量測定(DSC)における融点と再結晶化温度の差が60℃以内であることを特徴とするポリエステル樹脂製シート。
  2. 請求項1に記載のポリエステル樹脂製シートを熱成形してなるポリエステル成形品。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH04136063A (ja) * 1990-09-27 1992-05-11 Denki Kagaku Kogyo Kk ポリエステル樹脂組成物、そのシート及び成形品

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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