JP4331030B2 - ポリエステル樹脂の製造方法ならびにそれよりなる成形品 - Google Patents

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本発明は、ポリエステル樹脂の製造方法に関し、より詳しくは、シリカ粉末の凝集を抑制でき透明性と耐熱性に優れたポリエステル樹脂の製造方法とその製造方法により得られる成形品に関するものである。
ポリエステル製品は、優れた物理的、化学的特性を有することから、シート、フィルム、成形品として広く用いられている。このポリエステル製品は、ポリエステル樹脂と各種添加剤を組み合わせて各々の用途に用いられるのが一般的である。
例えば、ポリエステルシートおよびポリエステルフィルムにおいては、シリカなどの無機粒子をポリエステル樹脂に配合することで表面凹凸を形成して表面易滑性を得る手法がとられる。また、ポリエステル成形品においては、線膨張係数を抑制するためにシリカなどの無機粒子を配合させる手法がとられる。しかしながら、これらのポリエステル樹脂に無機粒子を配合させる方法は、表面易滑性および線膨張係数の改善には効果が見られるものの、無機粒子はポリエステル樹脂中で凝集を起こしやすく、この凝集物が原因となってポリエステル製品の透明性が著しく低下するという欠点がある。
無機粒子の凝集を改善する方法として、特定の粒子径を有するシリカ粉末をグリコール成分中に均一に分散させたポリエステル製造用原料分散液を使用したポリエステル樹脂が提案されている。しかしながら、提案されているポリエステル樹脂は全て結晶性を有するものであり、成形加工時に無機粒子が結晶核となって結晶化による成形品の透明性低下が起こりやすいという問題がある。
さらには、このようなポリエステル製造用原料分散液を使用したポリエステル樹脂は無機粒子の凝集は防止できるものの副反応物として生成するジエチレングリコール(以下DEGと記す)が増加しポリエステル樹脂の耐熱性が低下するという新たな問題点が発生した。
特開2000−17158号公報 特開2001−181492号公報 特開2002−80573号公報 特開2002−121270号公報 特開2000−169132号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、特定の粒子径を持つシリカのグリコール分散液を共重合ポリエステル樹脂重合工程の任意の段階で添加することによりシリカ粒子の凝集と結晶化による透明性低下を同時に抑制し、さらには、第4級アンモニウム塩の添加によりDEGの副生成反応を抑制して、透明性と耐熱性に優れたポリエステル樹脂を提供することにある。
上記目的は、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とし前記成分以外の第3成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって示差走査熱量測定(DSC)における結晶化熱が10J/g以下である共重合ポリエステル樹脂を製造するに際し、テレフタル酸と、エチレングリコールと、前記成分以外の第3成分と、平均粒径5〜50nmのシリカ粉末をグリコール100重量部に対して1〜60重量部の割合で均一に分散させたシリカ粉末グリコール分散液と、構造式(1)で表される第4級アンモニウム塩、予めいずれ同士を混合することなくエステル化反応時に混合してエステル化反応を行った後、合反応を行うことを特徴とする共重合ポリエステル樹脂の製造方法によって達成される。
−NOH (1)
(Rはアルキル基)
本発明のポリエステル樹脂からなるポリエステル成形品はシリカ粒子の凝集および結晶化による透明性低下が起こりにくく、さらには、DEG含有量が少ないため、優れた透明性と耐熱性を有するポリエステル製品として幅広い分野で使用することができる。
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とし前記成分以外の第3成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって示差走査熱量測定(DSC)における結晶化熱が10J/g以下の共重合ポリエステル樹脂である。ここでいう結晶化熱とは、JIS K 7122「プラスチックの転移熱測定方法」に記載された方法で測定されたものである。結晶化熱が10J/gを超える共重合ポリエステル樹脂は結晶性を有しており、無機粒子を配合した場合に成形加工時に結晶化による透明性の低下が起こりやすい。結晶化熱が10J/g以下の共重合ポリエステル樹脂は実質的に非晶質の状態にあり無機粒子を配合させた場合でも結晶化による成形品の透明性低下が起こりにくくなる。
本発明のポリエステル樹脂の酸成分は主としてテレフタル酸を用いる。第3成分として他のジカルボン酸成分を用いる場合は次のような化合物が利用可能である。具体的には、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、ダイマー酸などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジカルボン酸成分全体の50モル%以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は主として、エチレングリコールをジオール成分として用いる。第3成分として他のジオール成分を用いる場合は次のような化合物が利用可能である。具体的には、スピログリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリアルキレングリコール、ビスフェノールAまたはビスフェノールSのジエトキシ化合物などが挙げられる。これらは単独でも2種以上を使用することもできるが、ジオール成分全体の50モル%以下であることが好ましい。これらのジオール成分の中でもスピログリコールは、ポリエステル樹脂の耐熱性を向上させる効果が大きく特に好ましい。
また、酸成分にテレフタル酸以外の成分を添加し、ジオール成分にもエチレングリコール以外の成分を添加することも可能である。
本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールを主成分とし、第3成分としてテレフタル酸とエチレングリコール以外の成分を加え、これにシリカ粒子を分散させたエチレングリコール分散液と第4級アンモニウム塩を加えた原料を、エステル化反応により水を除去した後、アンチモン金属化合物を触媒として添加し重縮合反応を行うことにより製造する。必要に応じて、ゲルマニウム金属化合物やチタン金属化合物などを触媒として併用しても良い。エステル化反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを250〜280℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル化反応によって生成した水のみ系外に放出される。
また、本発明のポリエステル樹脂は、テレフタル酸のエステル形成性誘導体(テレフタル酸ジメチルなど)と、エチレングリコールを主成分とし、第3成分としてテレフタル酸とエチレングリコール以外の成分を加え、これにシリカ粒子を分散させたエチレングリコール分散液と第4級アンモニウム塩を加えた原料を、エステル交換触媒の存在下でエステル交換反応によりメタノールを除去した後、アンチモン金属化合物を触媒として添加し重縮合反応を行うことにより製造することもできる。必要に応じて、ゲルマニウム金属化合物やチタン金属化合物などを触媒として併用しても良い。エステル交換反応工程は、ジカルボン酸とグリコールを230〜250℃の温度で、20〜300kPaの圧力において行われる。この際、グリコールは還流され、エステル交換反応によって生成したメタノールのみ系外に放出される。エステル交換触媒としては、酢酸カルシウム、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、チタンテトラアルコキシドなどの有機酸金属塩が用いられる。
本発明に用いるシリカ粒子を分散させたグリコール分散液は、グリコールにシリカ粉末を均一に分散して作られる。グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、テトラメチレングリコール(1,4−ブタンジオール)、ヘキサメチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどがあげられる。シリカ粉末としては、平均粒径が5〜50nmのものである。シリカ粉末の平均粒径が5nm未満では分散液の粘度が高くなるためポリエステル樹脂中での均一なシリカ粒子の分散が得られなくなる。また、ポリエステル成形体における表面易滑性や線膨張係数の改善効果が得られない。一方、シリカ粉末の平均粒径が50nmを超えるとポリステル製品の透明性が低下する。シリカの粒径は、10〜30nmが好ましく、より好ましくは10〜20nmである。
本発明のシリカ粒子を分散させたグリコール分散液中のシリカ粒子の濃度はグリコール100重量部に対して1〜60重量部である。好ましくは、グリコール100重量部に対して、10〜40重量部であり、より好ましくは20〜30重量部である。シリカ濃度が1重量部未満の場合は、ポリエステル成形体における表面易滑性や線膨張係数の改善効果を得ようとした場合、グリコール分散液の添加量が多くなりDEGの発生量が増加してポリエステル成形体の耐熱性が低下する。一方、シリカ濃度が60重量部を超えるグリコール分散液の流動性が著しく低下し、ポリエステル樹脂製造工程において添加することが困難となる。
平均粒径が5〜50nmとなるシリカ粉末は、文献5に記載されている方法により製造することができる。
本発明の第4級アンモニウム塩は構造式(1)で示されるものである。具体的な例として、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどがあげられる。第4級アンモニウム塩の添加量は、ポリエステル樹脂に対して50〜1000ppmの範囲にあることが好ましい。より好ましくは、100〜200ppmである。この範囲の添加量であると、優れたDEG抑制効果を発揮し、樹脂の色調にも優れ
る。
−NOH (1)
(Rはアルキル基)
本発明の製造法により得られるポリエステル樹脂は、公知の方法により成形品を製造することができる。例えば、射出成形品は、本発明の製造法により得られる樹脂を乾燥により水分率を100ppm以下とした後射出成形機に供給し、樹脂の溶融温度において所定形状の金型に射出成形し、金型内で冷却固化することにより得られる。このようにして得られる成形品の厚みは、耐熱性に密接な関係があるため、0.1〜100mmの範囲にあることが好ましく、0.5〜50mmの範囲にあることがより好ましく、0.5〜20mmの範囲にあることが特に好ましい。成形品の厚みが0.1mmより薄い場合は、本発明の製造法により得られるポリエステル樹脂を使用しても耐熱性の改善効果が期待できなくなる。
また、本発明に言う成形品にはシートやフィルムの類が含まれる。具体的には、本発明の製造法により得られる樹脂を押出機に供給し、樹脂の溶融温度においてTダイより押出し、冷却ロール上で冷却固化することによりフラットフィルムやシートを得る。または、本発明の製造法により得られる樹脂を押出機に供給し、樹脂の溶融温度において丸ダイから押出し、空冷にて冷却固化することで円筒状のフィルムを得る。このようにして得られるシートまたはフィルムの厚みは、通常10μm〜10mmの範囲のものである。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。各物性の測定方法および評価は、下記の方法に従った。
(1)極限粘度(IV)
共重合ポリエステル樹脂をフェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶液に溶かし、20℃にて株式会社柴山科学機器製作所製 自動粘度測定装置SS−270LCを用い測定した。
(2)DEG含有量
共重合ポリエステル樹脂を、トリフルオロ酢酸−dと重クロロホルムの混合溶液(1:1)で溶解し、テトラメチルシランを標品として混合して、FT−NMR(バリアン社製300MG型)を用いて測定した。
(3)結晶化熱
本発明のポリエステル樹脂を乾燥後、住友重機工業(株)社製射出成形機を使用して成形温度280℃にて厚み3mmの平板プレートを成形、示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製DSC−7型)を用いて、JIS K 7122に準じて試料約10mg、昇温速度10℃/分にて結晶化熱を測定した。
(4)透明性評価(ヘーズ)
本発明のポリエステル樹脂を乾燥後、住友重機工業(株)社製射出成形機を使用して成形温度280℃にて厚み3mmの平板プレートを成形し、ヘーズメーター(日本電色製 ヘーズメーター300A)により、JIS K 7105に準じて測定した。
(共重合ポリエステル樹脂の製造1)
所定量のテレフタル酸とエチレングリコール、および、表1に示した比率にてシリカ含有エチレングリコール分散液をステンレス製オートクレーブに仕込み、250℃、200kPaの条件下でエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、所定量の三酸化アン
チモン触媒とリン酸トリメチルを加え、280℃、66Paの減圧下にて重縮合反応を行った。得られたポリエステル樹脂に関し、IV、DEG含有量を評価した結果を表1に合わせて示した。
(共重合ポリエステル樹脂の製造2)
所定量のテレフタル酸とエチレングリコール、水酸化テトラエチルアンモニウム、および、表2に示した比率にてシリカ含有エチレングリコール分散液をステンレス製オートクレーブに仕込み、250℃、200kPaの条件下でエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、所定量の三酸化アンチモン触媒とリン酸トリメチルを加え、280℃、66Paの減圧下にて重縮合反応を行った。得られたポリエステル樹脂に関し、IV、DEG含有量を評価した結果を表1に合わせて示した
(成形品の製造)
参考例1〜5、実施例1〜、比較例1〜8
得られたポリエステル樹脂を乾燥後、住友重機工業(株)社製射出成形機を使用して成形温度280℃にて厚み3mmの平板プレートを成形した。この平板プレートを用いて、透明性(ヘーズ)、耐熱性(Tg)の測定を行った結果を表3および表4に示す。
本発明のポリエステル樹脂からなるポリエステルシート、ポリエステルフィルム、ポリエステル成形品はシリカ粒子の凝集および透明性の低下が少なく、さらにはDEG含有量が少なく、優れた透明性と耐熱性を有するポリエステル成形品として幅広い分野で使用することができる

Claims (2)

  1. テレフタル酸とエチレングリコールを主たる成分とし前記成分以外の第3成分を含む共重合ポリエステル樹脂であって示差走査熱量測定(DSC)における結晶化熱が10J/g以下である共重合ポリエステル樹脂を製造するに際し、テレフタル酸と、エチレングリコールと、前記成分以外の第3成分と、平均粒径5〜50nmのシリカ粉末をグリコール100重量部に対して1〜60重量部の割合で分散させたシリカ粉末グリコール分散液構造式(1)で表される第4級アンモニウム塩、予めいずれ同士を混合することなくエステル化反応時に混合してエステル化反応を行った後、合反応を行うことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
    −NOH (1)
    (Rはアルキル基)
  2. 請求項記載の方法により製造されたポリエステル樹脂からなるポリエステル成形品。
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