JP2006265421A - 塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄及びその製造方法 - Google Patents

塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 製造コストの安価な噴霧熱分解によって製造される塩化鉄系酸化鉄であるにも拘わらず、従来の硫酸鉄系酸化鉄と同等の鮮やかな赤色を示す塩化鉄系酸化鉄を提供すると同時にその製造方法を提供する。
【解決手段】 上記課題は、酸化鉄粒子の比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、且つ、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2 含有量が0.03質量%〜0.2質量%である塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄により解決される。また、この塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、Mnを酸化鉄換算で0.13質量%以下含有するとともに、SiO2を酸化鉄換算で0.03質量%〜0.2質量%の範囲で含有する塩化鉄溶液を、550℃〜650℃の温度範囲で噴霧熱分解し、その後、噴霧熱分解により得られた酸化鉄粒子を粉砕することにより得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、塩化鉄溶液を噴霧熱分解して製造される、鮮やかな赤色を示す塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄及びその製造方法に関するものである。
酸化鉄は安全性が高く、耐候性や耐薬品性に優れていることから、古くから無機顔料として用いられてきた。現在でも、コンクリートやアスファルト、ゴム、プラスチック、陶磁器など様々な分野で着色剤として用いられている。従来、これらの赤色顔料用酸化鉄(ヘマタイト)としては、鮮やかな赤色を示す硫酸鉄系酸化鉄が多く用いられてきた。硫酸鉄系酸化鉄は、硫酸第一鉄溶液とアルカリ溶液とを原料とし、湿式法を用いてマグネタイトやゲータイトなどを合成した後、マグネタイトやゲータイトなどを熱処理することによって造られている。
湿式法を用いて顔料用酸化鉄を製造する方法については、例えば特許文献1などで提案されている。しかし、湿式法を用いる製法では、合成がバッチ処理になること、硫酸第一鉄溶液を中和するためのアルカリ溶液を必要とすること、得られたマグネタイトやゲータイトなどを熱処理する工程を必要とすることなど、工程が多く、製造コストが高いという問題がある。
一方、塩化鉄溶液を原料として製造される塩化鉄系酸化鉄は、鉄鋼の製造工程(薄鋼板の酸洗工程)で生じる酸洗廃液を焙焼して熱分解(「噴霧焙焼法」という)することによって製造されている。同時に生成する塩酸は酸洗工程で再使用されている。塩化鉄を熱分解する方法としては、ルスナー法、ルルギ法、ケミライト法などが知られている。これらの方法は、酸化鉄を連続的に且つ大量に生産することができるため、硫酸鉄系酸化鉄に比べてコスト的には有利である。しかしながら、塩化鉄溶液を熱分解して製造される酸化鉄は、粒子サイズが大きい、粒子サイズのばらつきも大きい、凝集している、などの問題がある。また、色調も茶色や紫色がかった色をしており、鮮やかな赤色顔料用というには程遠く、顔料用途には適さないものであった。そのため、顔料用途で用いられるにしてもごく限られた色にのみ使われる程度で、用途は極めて限定されていた。このようなことから、塩化鉄系酸化鉄の多くは、精製していない酸化鉄は主にハードフェライト用として、精製して高純度化した酸化鉄は主にソフトフェライト用の原料として用いられてきた。
ところで、顔料用の硫酸系酸化鉄についても、一層のコスト低減が求められるようになってきており、それに伴い、湿式法よりも安価な、熱分解により製造される塩化鉄系酸化鉄を顔料用途へ適用することが検討されるようになってきた。また、塩化鉄系酸化鉄については、フェライト産業の海外移転に伴い、フェライト以外の新たな用途への適用が検討されていることも、塩化鉄系酸化鉄の顔料用途へ適用を図る要因になっている。
塩化鉄溶液を用いて顔料用酸化鉄を製造する方法が特許文献2に提案されている。特許文献2に提案された方法は、湿式法で製造した黄色酸化鉄や黒色酸化鉄を焼成することによって赤色顔料を製造するというものである。しかしながら、この方法では、湿式法を用いているため、噴霧焙焼法を用いる場合よりもコストが高いという問題があり、必ずしも有利な方法とはいえない。
特開昭63−117915号公報 特開平11−228144号公報
噴霧熱分解によって製造される塩化鉄系酸化鉄は、特許文献2で製造される塩化鉄系酸化鉄に比べてコスト的に極めて有利であるが、前述したように、噴霧熱分解により製造される従来の塩化鉄系酸化物は、茶色或いは紫色がかった色をしており、鮮やかな赤色の顔料には適用できないという問題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、製造コストの安価な噴霧熱分解によって製造される塩化鉄系酸化鉄であるにも拘わらず、従来の硫酸鉄系酸化鉄と同等の鮮やかな赤色を示す塩化鉄系酸化鉄を提供すると同時にその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための第1の発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、酸化鉄粒子の比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、且つ、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2 含有量が0.03質量%〜0.2質量%であることを特徴とするものである。
第2の発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、第1の発明において、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定されるD50が0.7μm以下で、且つ2μm以上の凝集粒子が5質量%以下であることを特徴とするものである。
第3の発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法は、第1または第2の発明に記載の塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法であって、Mnを酸化鉄換算で0.13質量%以下含有するとともに、SiO2 を酸化鉄換算で0.03質量%〜0.2質量%の範囲で含有する塩化鉄溶液を、550℃〜650℃の温度範囲で噴霧熱分解し、その後、噴霧熱分解により得られた酸化鉄粒子を粉砕することを特徴とするものである。
本発明の塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄によれば、その比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、且つ酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2含有量が0.03質量%〜0.2質量%であるので、鮮やかな赤色を示し、従来の硫酸鉄系酸化鉄に代わって安価な赤色顔料用酸化鉄として使用することができる。これにより、塩化鉄系酸化鉄の新たな用途が開発される、或いは赤色顔料の低コスト化が可能になるなど、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、塩化鉄溶液を噴霧熱分解することによって製造される。この方法は、連続的に且つ大量に酸化鉄を生産することに適しており、硫酸鉄系酸化鉄の製法に比べてコスト的に優れている。原料となる塩化鉄溶液は、塩化第一鉄溶液、塩化第二鉄溶液、或いは塩化第一鉄溶液と塩化第二鉄溶液との混合液を用いることができる。通常は、塩化第一鉄溶液を用いるものとする。
本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の比表面積は、6m2 /g以上14m2 /g以下を必須とする。
赤色酸化鉄の色調は、粒子径に依存することが知られており、粒子径が大きい場合には、紫色或いは茶色がかった色をしているが、粒子径が小さくなるにつれて、暗赤、赤、黄赤のように変化する。噴霧熱分解により製造される従来の一般的な酸化鉄の比表面積は3m2 /g〜4m2 /g程度で、粒径が小さい場合でも高々5m2/g程度である。従って、噴霧熱分解により製造される従来の酸化鉄は、顔料用の鮮やかな赤色の酸化鉄、例えば硫酸鉄系酸化鉄に比べると粒径が大きく、そのため、茶色或いは紫色がかった色をしていて、鮮やかな赤色顔料には程遠いものであった。
しかしながら、噴霧熱分解による製造方法を工夫することにより、一次粒子を小さくして比表面積を6m2 /g以上14m2 /g以下にすることにより、赤色顔料として使用可能な色を得ることが可能であることが分かった。比表面積が6m2/g未満では、鮮やかな赤色顔料には使用できない。一方、比表面積が14m2 /gを越えると、酸化鉄粒子の凝集が激しくなり、粉砕してもD50(50%粒径)が0.7μm以下にならない、或いは、粉砕しても2μm以上の粗粒率が5質量%以下にならないなどの問題が生じ、色調が悪くなるので好ましくない。
また、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄中のMn含有量は、0.13質量%以下であることを必須とする。これは、酸化鉄中のMnが色調に影響を及ぼすためである。
通常、世の中で使われている大半の鋼材にはMnが含まれており、鉄鋼の酸洗工程で生じる廃塩酸についても必然的にMnが含まれる。従って、これを原料として製造した塩化鉄系酸化鉄にも当然Mnが取り込まれる。一般的に、噴霧熱分解により製造される酸化鉄は、0.20質量%〜0.30質量%程度のMnを含有している。
しかし、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%を超える場合には、酸化鉄の色調は黒ずんだ赤色となり、鮮やかな赤色顔料には成り得ない。逆に、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下であれば、鮮やかな赤色となり、鮮やかな赤色顔料に適したものになる。そこで、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄では、Mn含有量を0.13質量%以下とした。この場合、Mn含有量は低いほど好ましく、より好ましいMn含有量は0.10質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以下である。
更に、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、SiO2 を0.03質量%以上0.2質量%以下の範囲で含有することを必須としている。
噴霧熱分解により製造した酸化鉄のうち、不純物を多く含む一般酸化鉄の場合でSiO2 は0.03質量%未満、不純物を低減した高純度酸化鉄の場合には0.005質量%以下になる。本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄が、これらの酸化鉄に比べてSiO2を多く含有する理由は、本発明に係る赤色顔料用酸化鉄を製造する上で、SiO2 の存在が重要な役割を果たすからである。即ち、SiO2を多く含んでいてもSiO2 自体は酸化鉄の色調に対しては特に影響を及ぼさないが、原料の塩化鉄溶液中にSiO2 が含まれることにより、塩化鉄溶液を噴霧熱分解して酸化鉄を製造する際に、酸化鉄結晶粒の成長が抑制されることにより、粗大粒子の生成が抑制され、鮮やかな赤色を示す、比表面積6m2/g以上14m2 /g以下の粒径の小さな一次粒子を得やすくなるからである。また、一次粒子が凝集してできる粗大粒子も色調を悪化させることから問題であるが、SiO2の存在によって一次粒子同士の凝集が抑制される、或いは後工程での粉砕が容易になるなど、シャープな粒度分布を得やすくなるという利点もある。このように、SiO2が存在することにより、容易に鮮やかな赤色色調の酸化鉄を得ることができるようになる。
酸化鉄中のSiO2 含有量が0.03質量%未満の場合には、粒子サイズが大きくなりやすく、また、凝集粒子も生成しやすくなるために粉砕工程での負荷も大きくなり、鮮やかな赤色を得るのも難しくなる。逆に、SiO2含有量が0.2質量%を超える場合には、一次粒子は小さくなるものの、粒子の凝集が激しく、粉砕してもD50が0.7μm以下にならない、或いは、粉砕しても2μm以上の粗粒率が5質量%以下にならない、などの問題が生じるため、色調は悪いものとなる。また、場合によっては、塩化鉄溶液を噴霧して噴霧焙焼を行う際に、噴霧ノズルのノズル詰まりが発生しやすくなり、安定的に製造することが困難になる。そこで、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄では、SiO2含有量を0.03質量%以上0.2質量%以下とした。上記のSiO2 の効果を十分に発揮させる観点から、より好ましいSiO2の含有量は0.035質量%以上0.15質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以上0.12質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以上0.10質量%以下である。
また、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、Cl(塩素)を含有することが好ましい。Clは、Mnや粒径ほどには色調に及ぼす影響が大きくないものの、Clが酸化鉄内部に取り込まれている場合には、色調に影響を及ぼす。この場合のCl含有量とは、酸化鉄内部に取り込まれ、酸化鉄を水で洗浄しても除去できないCl量のことを指している。酸化鉄内部にClが取り込まれている方が、赤色の発色がよくなる。赤色の発色を良くするために、酸化鉄中に取り込まれているCl量を、0.05質量%以上0.2質量%以下とすることが好ましい。Cl量が0.05質量%未満では、やや黒ずんだ色調となり、一方、0.2質量%を超える場合には、茶色かがった色となり好ましくない。Cl量のより好ましい範囲は0.06質量%以上0.15質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以上0.12質量%以下である。
更に、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定したD50(50%粒径)が0.7μm以下、2μm以上の凝集粒子の量は5質量%以下であることが好ましい。
塩化鉄溶液を噴霧熱分解して製造する酸化鉄は、一般に高温で焙焼して造られるため、製造時の熱により凝集が生じやすい。このため、噴霧熱分解して製造した酸化鉄は、硫酸鉄系の顔料用酸化鉄に比較すると、凝集粒を多く含み、D50が大きいという基本的な問題がある。凝集粒子は粒径が大きい一次粒子と同じように振舞うため、凝集粒子が多く存在する場合には、色調は黒ずんだものとなり、鮮やかな赤色顔料として用いるには適切ではない。従って、鮮やかな色調の赤色顔料を得るためには、大きな凝集粒子を低減し、D50を小さくすることが好ましい。D50が0.7μmを超えると色が黒ずむため好ましくない。求める色調により適切なD50は異なるが、D50が小さい方が鮮やかな赤色となることから、より好ましいD50は0.6μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。
また、2μm以上の凝集粒子の量も色調に影響する。凝集粒子量が5質量%よりも多い場合には、色調は黒ずんだものとなり、好ましくない。従って、2μm以上の凝集粒子の量は5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、一層好ましくは1質量%以下、理想的には含まれないことが望ましい。尚、レーザー回折式粒度分布測定装置は、一般に市販されているものが使用できる。
次に、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法の1例について説明する。
本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法は、Mnを酸化鉄換算で0.13質量%以下、SiO2 を酸化鉄換算で0.03質量%以上0.2質量%以下含有する塩化鉄溶液を、550℃以上650℃以下の温度で噴霧熱分解し、この噴霧熱分解により得た鉄粒子を粉砕することを特徴とする。ここで、含有量の「酸化鉄換算」の意味は、塩化鉄溶液から生成された酸化鉄における含有量という意味である。
塩化鉄溶液中のMn含有量が酸化鉄換算で0.13質量%を超える場合には、酸化鉄の色調は黒ずんだ赤色となり、鮮やかな赤色顔料には成り得ない。逆に、塩化鉄溶液中のMn含有量が酸化鉄換算で0.13質量%以下であれば、鮮やかな赤色となり、鮮やかな赤色顔料に適した酸化鉄が得られる。Mn含有量は低いほど好ましく、より好ましいMn含有量は0.10質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以下である。
一般的な鋼材にはMnが含まれており、その鋼材を酸洗することにより得られる塩化鉄溶液中にもMnが存在するため、それが酸化鉄中に取り込まれることになる。この塩化鉄溶液を原料とした酸化鉄中には0.20質量%〜0.30質量%程度のMnが含まれており、この塩化鉄溶液をそのまま用いることができない。そこで、本発明ではMn含有量が少ない塩化鉄溶液を作成し、これを0.20質量%〜0.30質量%程度のMnが含まれている酸洗廃液に混合するなどして、Mn含有量が酸化鉄換算で0.13質量%以下となる塩化鉄溶液を準備する。Mn含有量が少ない塩化鉄溶液を得る方法としては、Mn含有量が少ない鉄源を塩酸に溶解させる方法が挙げられる。低Mn量の鉄源としては、低Mnの鉄粉、工業用純鉄、低Mnの鉄鉱石などを用いることができる。また、塩化鉄溶液を高純度化して高純度酸化鉄を製造する過程で生成するβ−FeOOHやγ−FeOOHなどの水酸化鉄もMn量が少ないので、これらを溶解することにより低Mnの塩化鉄溶液を得ることができる。
原料塩化鉄溶液中に所定量のSiO2 が含まれることにより、塩化鉄を熱分解して酸化鉄を製造する際に、結晶粒の成長を抑制して粗大粒子の生成を抑制し、鮮やかな赤色を示す比表面積6m2/g以上14m2 /g以下の粒径の小さな一次粒子が得やすくなる。更に、SiO2 が含まれることにより、一次粒子同士の凝集を抑制し、後工程での粉砕が容易になるなどして、シャープな粒度分布を得やすくなる利点もある。
塩化鉄溶液中のSiO2 含有量が酸化鉄換算で0.03質量%未満の場合には、粒子サイズが大きくなりやすく、また、凝集粒子も生成しやすくなるために粉砕工程での負荷も大きくなり、鮮やかな赤色を得るのも難しくなる。逆に、SiO2含有量が0.2質量%を超える場合には、塩化鉄溶液を噴霧して噴霧焙焼を行う際に、ノズル詰まりが発生しやすくなり、安定的に製造することが困難になる。そこで、本発明では、塩化鉄溶液中のSiO2を酸化鉄換算で0.03質量%以上0.2質量%以下とした。SiO2 の効果を発揮させる観点から、より好ましいSiO2の含有量は、酸化鉄換算で0.035質量%以上0.15質量%以下、更に好ましくは0.04質量%以上0.12質量%以下、一層好ましくは0.05質量%以上0.10質量%以下である。
噴霧熱分解の温度は、550℃以上650℃以下を必須とし、従来の噴霧熱分解の温度に比べて低温度域とした。噴霧熱分解の温度が650℃よりも高い場合には、一次粒子が成長して大きくなりやすく、また熱により一次粒子同士が焼結して凝集粒を作るなどの問題が生じることから、粒径が小さい比表面積6m2 /g以上14m2 /g以下の酸化鉄が得られなくなる。このため、鮮やかな赤色の酸化鉄にはならない。逆に、噴霧熱分解の温度が550℃よりも低い場合には、熱分解が完全には起こらないため、未分解の塩化鉄が残留したり、酸化鉄中に未酸化のFe2+が存在したりするため、色調の悪い酸化鉄となる。そこで、本発明では、噴霧熱分解の温度を550℃以上650℃以下とした。
また、噴霧焙焼温度の他にも、ノズル径を小さくする、塩化鉄溶液の濃度を下げる、塩化鉄溶液の噴霧量を減らす、なども粒径の小さい酸化鉄を得るためには有効である。
更に、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法では、焙焼後に粉砕処理を行うことを必須条件とする。製法上、噴霧焙焼時に凝集粒子が生成してしまうことから、凝集粒子を砕いてシャープな粒度分布にするためには、粉砕処理が必要となる。この粉砕処理では、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定するD50が0.7μm以下で且つ2μm以上の凝集粒子が5質量%以下になるように、粉砕することが好ましい。粉砕方法としては、ジェットミル、振動ミル、アトマイザーなどの一般に良く知られている粉砕機を用いることができる。また、アトライター、ボールミル、ビーズミルなどの湿式粉砕機も用いることができる。
上記のようにして、本発明に係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄を製造する。但し、この製造方法に限るわけではなく、比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2含有量が0.03質量%〜0.2質量%である塩化鉄系酸化鉄が得られるならば、どのような製造方法であってもよい。
以上説明したように、本発明係る塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄によれば、その比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、且つ酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2含有量が0.03質量%〜0.2質量%であるので、鮮やかな赤色を示し、従来の硫酸鉄系酸化鉄に代わって安価な赤色顔料用酸化鉄として使用することが可能となる。
以下、本発明を、実施例を用いて更に詳細に説明する。
酸化鉄換算のMn量及びSiO2 をそれぞれ変更した合計19種類の、Fe濃度120g/lの塩化第一鉄溶液を、噴霧熱分解温度を変更して噴霧焙焼炉を用いて噴霧・焙焼して酸化鉄を作成した(本発明例1〜12、比較例1〜7)。塩化第一鉄溶液のMn濃度の調整は、Mn濃度の少ない塩化第一鉄溶液を準備し、通常のMn濃度(酸化鉄換算で0.2質量%〜0.3質量%)の塩化第一鉄溶液と混合して行った。Mn濃度の少ない塩化第一鉄溶液は、以下の2つの方法で作製した。1つ目の方法は、低Mn濃度の鉄粉を塩酸に溶解して塩化鉄溶液(溶液中のMn濃度は酸化鉄換算で0.03質量%)とした。2つ目の方法は、塩化鉄溶液とアルカリとを混合し、pH3以下で空気酸化を行う際に生じたβ―FeOOHを回収し、塩酸に溶解して塩化鉄溶液(溶液中のMn濃度は酸化鉄換算で0.009質量%)とした。また、溶液中のSiO2の調整については、低pHで安定に存在するコロイダルシリカを添加して調整した。噴霧焙焼して生成した酸化鉄粒子を、アトマイザー、振動ミル、ジェットミルを用いて粉砕した。また、粉砕処理を施さない酸化鉄(比較例7)も作製した。
また、比較のために、従来の噴霧熱分解法により製造された一般的な酸化鉄(従来例1)及び精製した塩化鉄を出発原料に用いた高純度酸化鉄(従来例2)、並びに、従来の赤色顔料用酸化鉄である市販の硫酸鉄系酸化鉄(従来例3)も準備した。
これらのMn含有量、SiO2 含有量、酸化鉄の比表面積、粒度分布(D50,2μ以上の粗粒率)、酸化鉄の色調を測定した。Mn含有量及びSiO2含有量はICP分析法により定量し、酸化鉄の比表面積はBET法により測定し、粒度分布(D50,2μ以上の粗粒率)はMicrotrac HRA を用いて測定し、酸化鉄粒子の色調は、酸化鉄とあまに油とをフーバーマーラーでペースト化し、ラッカーを加えてアプリケーターにて塗膜を作製し、日本電色製の色差計にてa値、b値、L値を測定し、塩化鉄系一般酸化鉄(従来例1)のa値、b値、L値を0(基準)とし、塩化鉄系一般酸化鉄(従来例1)のa値、b値、L値とのずれΔa、Δb、ΔLを求めた。この場合、Δaが大きいほど、赤みは強い。表1に測定結果を示す。表1に示すΔEは、下記の(1)式を用いてΔa、Δb、ΔLから算出した。
Figure 2006265421
Figure 2006265421
表1に示すように、噴霧焙焼温度が550℃〜650℃、比表面積が6m2 /g〜14m2 /g、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下で且つSiO2含有量が0.03質量%〜0.2質量%である本発明例1〜12では、従来の噴霧熱分解法によって製造された従来例1及び従来例2に比べてΔaが大きく、赤みが強く、Δb、ΔL、ΔEも従来例3の硫酸鉄系酸化鉄に近づき、赤色顔料として適していることが分かった。
尚、比較例1は、酸化鉄中のMn含有量が本発明の上限値を外れ、比較例2は、酸化鉄中のSiO2 含有量が本発明の下限値を外れ、比較例3は、酸化鉄中のSiO2含有量が本発明の上限値を外れ、比較例4は、塩化鉄中のSiO2 含有量が本発明の上限値を外れ、比較例5は、噴霧焙焼温度が本発明の上限値を外れ、比較例6は、噴霧焙焼温度が本発明の下限値を外れ、比較例7は、噴霧焙焼後に粉砕処理を施していないものである。

Claims (3)

  1. 酸化鉄粒子の比表面積が6m2 /g〜14m2 /gで、且つ、酸化鉄中のMn含有量が0.13質量%以下、SiO2 含有量が0.03質量%〜0.2質量%であることを特徴とする塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄。
  2. レーザー回折式粒度分布測定装置により測定されるD50が0.7μm以下で、且つ2μm以上の凝集粒子が5質量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄。
  3. 請求項1または請求項2に記載の塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法であって、Mnを酸化鉄換算で0.13質量%以下含有するとともに、SiO2 を酸化鉄換算で0.03質量%〜0.2質量%の範囲で含有する塩化鉄溶液を、550℃〜650℃の温度範囲で噴霧熱分解し、その後、噴霧熱分解により得られた酸化鉄粒子を粉砕することを特徴とする、塩化鉄系赤色顔料用酸化鉄の製造方法。
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