JP2006265167A - トリアルキルガリウムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハロゲン化ガリウムのアルキル化によりトリアルキルガリウムを合成できる簡便な方法を提供する。
【解決手段】マグネシウムを真空下で加熱する第1の工程と、少なくとも1種の溶媒中で、真空加熱処理されたマグネシウムと、少なくとも1種のハロゲン化ガリウムと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程とを含むトリアルキルガリウムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法等を用いたエピタキシャル結晶成長によりGaNのような化合物半導体薄膜を形成するための材料として有用なトリアルキルガリウムの製造方法に関する。
近年の携帯電話や光通信技術の進展により、化合物半導体の需要は、携帯電話に使用される高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT: Heterojunction Bipolar Transistor)などの高速電子デバイス、光通信やDVDなどに使用される半導体レーザー、ディスプレーに使用される白色・青色の超高輝度LEDなどの光デバイス等の用途で急速に伸びている。
一般に化合物半導体の原料となる有機金属化合物(MO: Metal Organics)としては、周期律表第II族元素やIII族元素のアルキル金属化合物、特にメチル化合物やエチル化合物が多用されている。中でも周期律表第III族のアルキルガリウムは、窒素、砒素のような周期律表第V族の元素とともに化合物半導体をMOCVDで製造するための材料としての需要が大きい。
アルキルガリウムの代表的な合成方法として、ハロゲン化ガリウムとハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)との反応によりトリアルキルガリウムを合成する方法が報告されている。例えば、特許文献1(米国特許第4604473号公報)、特許文献2(特願昭59−122867公報))、非特許文献1(L.M.Dennis,W.Patnode,J.Am.Chem.Soc.,54,182(1932))、非特許文献2(C.A.Kraus,F.E.Toodner,Proc.Natl.Acad.Soc.U.S.A.,19,292(1933))、及び非特許文献3(J.Cryst.Growth,68,1(1984))には、エーテル化合物中で、三塩化ガリウムとハロゲン化アルキルマグネシウムとの反応を行うことによりトリアルキルガリウムが生成することが報告されている。
ハロゲン化アルキルとグリニャール試薬との反応を行う方法は、一般的に工業的な品質を持った高純度トリアルキルガリウムを得る方法として好ましいと考えられる。
しかし、この方法は、ハロゲン化ガリウムのアルキル化剤であるハロゲン化アルキルマグネシウムを別途合成する必要があり手間がかかる。また、ハロゲン化アルキルマグネシウムは経時的に劣化するため長期間保存することができない。従って、一般的には使用する直前に必要量のハロゲン化アルキルマグネシウムを合成することが多く、非効率的である。
本発明は、ハロゲン化ガリウムのアルキル化によりトリアルキルガリウムを合成できる簡便な方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、ハロゲン化ガリウムのメチル化剤としてハロゲン化アルキルマグネシウムを用いる従来方法に代えて、少なくとも1種の溶媒中で、少なくとも1種のハロゲン化ガリウムと、マグネシウムと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルとを直接反応させ、この際、マグネシウムとして真空加熱処理されたものを使用することにより、ハロゲン化アルキルマグネシウムを使用することなく高収率でトリアルキルガリウムを合成できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下のトリアルキルガリウムの製造方法を提供する。
項1. マグネシウムを真空下で加熱する第1の工程と、
少なくとも1種の溶媒中で、真空加熱処理されたマグネシウムと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルと、少なくとも1種のハロゲン化ガリウムとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
を含むトリアルキルガリウムの製造方法。
項2. 第1の工程において、真空下での加熱を、1000Pa以下の真空度で、60℃以上の温度で行う項1に記載の方法。
項3. 第1の工程において、真空下での加熱を1〜5時間行う項1又は2に記載の方法。
項4. 少なくとも1種のハロゲン化アルキルが、塩化アルキル、臭化アルキル、及びヨウ化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化アルキルである項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. ハロゲン化アルキルが炭素数1〜10のアルキル基を有するものである項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6. ハロゲン化ガリウムが三塩化ガリウムである項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7. ハロゲン化ガリウム1モルに対して、マグネシウムを3〜6モル使用する項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8. 少なくとも1種の溶媒が、エーテル化合物、及びアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である項1〜7のいずれかに記載の方法。
項9. 項1〜8のいずれかに記載の方法により得られるトリアルキルガリウム。
項10. 項9に記載のトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料とするエピタキシャル成長により形成されたガリウム系化合物半導体薄膜を備えるガリウム系化合物半導体素子。
本発明によれば、ハロゲン化ガリウムのアルキル化によりトリアルキルガリウムを合成する方法において、ハロゲン化アルキルマグネシウムを使用することなく、アルキル化剤としてハロゲン化アルキルマグネシウムを使用する方法と同等又はそれより高収率でトリアルキルガリウムを合成できる方法が提供された。
この方法により、ハロゲン化ガリウムのアルキル化剤であるハロゲン化アルキルマグネシウムを別途合成する必要性がなくなり、トリアルキルガリウムの製造工程を単純化でき、生産性を大きく向上させることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトリアルキルガリウムの製造方法は、マグネシウムを真空下で加熱する第1の工程と、少なくとも1種の溶媒中で、真空加熱処理されたマグネシウムと、少なくとも1種のハロゲン化ガリウムと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程とを含む方法である。
原料
<ハロゲン化ガリウム>
ハロゲン化ガリウムとしては、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、または三ヨウ化ガリウムなどを使用できる。中でも、汎用されている点で、三塩化ガリウムが好ましい。
三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、及び三ヨウ化ガリウムは、純度99.9%(3N)〜99.999%(5N)の市販品を用いることができる。
MOCVDにより製造される化合物半導体の電気的特性及び光学的特性は、原料である有機金属化合物の純度に大きく左右される。従って、本発明方法においても高純度なトリアルキルガリウムを合成することが求められる。生成するトリアルキルガリウムの純度は原料であるハロゲン化ガリウムの純度にも依存することから、ハロゲン化ガリウムは高純度であることが望ましい。
4Nを超える高純度のハロゲン化ガリウムは、市販品もあるが上記3Nあるいは4N純度の市販品を再結晶、真空昇華、帯融精製などの方法で精製することにより得ることができる。本発明においては、ハロゲン化ガリウムの純度は99.999%(5N)以上が好ましく、99.9999%(6N)以上がより好ましい。
<マグネシウム>
マグネシウムは99%(2N)〜99.9999%(6N)の純度の市販品を用いることができる。但し、5N以上の純度のマグネシウムは非常に高価であるため、2〜4Nの純度のマグネシウムを真空蒸留、真空昇華などにより精製したものを使用すればよい。本発明方法において使用するマグネシウムの純度は、3N以上が好ましい。
マグネシウムの形状は特に限定されない。例えば、グリニャール試薬合成で一般的に用いられているリボン状、削り状、チップ状(削り状より小さい削りクズ状)、粉末状、粒状などの形状のものを用いることができる。本発明において、粉末状マグネシウムは、平均粒径が500μm以下のマグネシウムをいう。本発明において、平均粒径はレーザー回折法により測定した値である。
中でも、目開き2mmの網篩(日本工業規格Z8801)を通過する削り状、チップ状、粉末状、及び粒状のものが好ましい。上記の目開き2mmの網篩を通過できないものは、本発明方法に供する前にあらかじめ粉砕、磨り潰し等の手段で上記目開き2mmの網篩を通過できるようにしてから使用すればよい。本発明において、目開き2mmの網篩を通過するマグネシウムとは、その99重量%以上がこの網篩を通過するようなマグネシウムをいう。さらに、平均粒径500μm以下の粉末状マグネシムを用いることがより好ましい。本発明において平均粒径は、レーザー回折法により測定した値である。このような大きさのマグネシウムを使用することにより、反応性が向上し、ひいては収率が向上する。
また、マグネシウムのハロゲン化アルキルに対する反応性はマグネシウムの比表面積に比例するため、比表面積が0.1m/g以上、特に1m/g以上の粉末状マグネシウムを用いることが好ましい。比表面積の下限値は、適度な反応性を有し取り扱いを容易にする上で、通常0.01m/g程度である。本発明において、比表面積は、BETの方法で測定した値である。
<溶媒>
溶媒は、活性水素を有さない有機化合物溶媒であればよく、公知のものを制限なく使用できる。中でも、汎用されており実用し易い点で、エーテル化合物溶媒、及びアミン化合物溶媒が好ましい。
使用可能なエーテル化合物は特に限定されず、トリアルキルガリウム合成に使用されている公知のエーテル化合物を用いればよい。例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル(ジイソアミルエーテル)等の脂肪族エーテル化合物;アニソール、メチルアニソール、ベンジルメチルエーテル、エチルアニソール、ジメチルアニソール、イソプロピルアニソール、フェネトール等の芳香族エーテル化合物を用いることができる。
エーテル化合物は生成物であるトリアルキルガリウム化合物と付加体を形成するため、合成工程の後、後述するように蒸留を行うことにより、トリアルキルガリウムのエーテル付加体を熱分解させて、トリアルキルガリウム化合物を単離することが好ましい。このため、エーテル化合物は、トリアルキルガリウムより高沸点の化合物を用いることが好ましい。また、トリアルキルガリウムのエーテル付加体の熱分解温度がトリアルキルガリウム化合物の熱分解温度より高い場合は、エーテル付加体の熱分解によりトリアルキルガリウム化合物の分解も進行するため、エーテル付加体の分解温度がトリアルキルガリウムの分解温度より低くなるようなエーテル化合物を選択することが好ましい。
使用可能なアミン化合物は特に限定されず、トリアルキルガリウム合成に使用されている公知のアミン化合物を用いればよい。このようなアミン化合物として、例えば3級アミン化合物を用いることができる。具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン等の脂肪族3級アミン化合物;ピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン等の複素環式3級アミン化合物を挙げることができる。
アミン化合物は生成物であるトリアルキルガリウム化合物と付加体を形成するため、合成反応後、後述するように蒸留を行うことにより、トリアルキルガリウムのアミン付加体を熱分解させてトリアルキルガリウム化合物を単離することが好ましい。このため、トリアルキルガリウムのアミン付加体の熱分解温度がトリアルキルガリウム化合物の熱分解温度より高い場合は、トリアルキルガリウム化合物の分解も進行するため、アミン付加体の分解温度がトリアルキルガリウムの分解温度より低くなるようなアミン化合物を選択することが好ましい。
溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。但し、得られるトリアルキルガリウムの精製が容易になる点で、1種のエーテル化合物あるいはアミン化合物を単独で使用することが好ましい。
<ハロゲン化アルキル>
ハロゲン化アルキルとしては、アルキル基の炭素数が、通常1〜10、好ましくは炭素数1〜4、さらにより好ましくは炭素数1〜3のものを用いればよい。上記炭素数のアルキル基を有するヨウ化アルキル及び臭化アルキルは、反応性に富み、かつこれらを使用することによりMOCVD原料として十分な揮発性を有するトリアルキルガリウムが得られる。
また、塩化アルキル、臭化アルキル、及びヨウ化アルキルのいずれを用いることもできるが、比較的反応性が高い点で、臭化アルキル、及びヨウ化アルキルが好ましく、ヨウ化アルキルがより好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基を有する具体的なハロゲン化アルキルとしては、塩化メチル、塩化エチル、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、塩化n−ブチル、塩化イソブチル、塩化sec−ブチル、塩化tert−ブチルのような塩化アルキル;臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピル、臭化イソプロピル、臭化n−ブチル、臭化イソブチル、臭化sec−ブチル、臭化tert−ブチルのような臭化アルキル;ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化n−ブチル、ヨウ化イソブチル、ヨウ化sec−ブチル、ヨウ化tert−ブチルのようなヨウ化アルキルが挙げられる。
中でも、臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピル、臭化イソプロピル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、及びヨウ化イソプロピルが好ましく、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、及びヨウ化エチルがより好ましい。
ハロゲン化アルキルは、1種を単独で使用することができ、また2種以上を組み合わせて使用できる。2種以上を組み合わせる場合は、ハロゲンの種類が異なるものを用いてもよく、アルキル基の種類が異なるものを用いてもよい。
使用比率
ハロゲン化ガリウムとマグネシウムとハロゲン化アルキルとの反応によりトリアルキルガリウムを生成する反応は、下記式(1)で示すことができる
GaX+3Mg+3RX'→GaR+3MgX'X (1)
(式中、Rはアルキル基を示し、X及びX'はハロゲン原子を示す)
式(1)の反応においては、下記式(2)に示すように、マグネシウムとハロゲン化アルキルとの反応によりハロゲン化アルキルマグネシウム(グリニャール試薬)がin situで生成し、これがハロゲン化ガリウムをアルキル化しているものと考えられる。
Mg+RX'→MgRX' (2)
(式中、Rはアルキル基を示し、X'はハロゲン原子を示す)
ガリウムとマグネシウムとの使用比率は、ガリウム1モルに対してマグネシウム3〜6モル程度が好ましく、3〜4モル程度がさらにより好ましい。式(1)によれば、ガリウム1モルに対して、マグネシウム3モルが化学量論的組成比である。従って、上記マグネシウムの使用比率の範囲であれば反応を十分効率よく進めることができる。また、マグネシウムの使用比率が大きすぎても、それ以上の効果は得られず、原料コストが高くなるだけであり、また反応終了後に残存するマグネシウムの後処理に時間を要するが、上記範囲であればこのような問題は生じない。
ハロゲン化アルキルの反応必要モル数は、式(2)に示すように、マグネシウム1モルに対して1モルであるが、通常はマグネシウムに対して0.8〜1.5倍モル程度のハロゲン化アルキルを用いればよい。
第1の工程(マグネシウムの予備活性化工程)
一般的に、マグネシウム表面は多かれ少なかれ酸化被膜で覆われていることから、その分反応の誘導期が長くなる。このため、反応性の低いハロゲン化アルキルを用いる場合には、一般に、反応前に、マグネシウムに対しして機械的攪拌、粉砕、少量のヨウ素や臭素の添加、希塩酸での洗浄などの活性化が行われている。また、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、1,2−ジブロモエタンなどを少量加えてマグネシウムを活性化する同伴法も行われている(D.E.Peason,D.Cowan,J.D.Beckler,J.Org.Chem.,24,504(1959))。
しかし、機械的攪拌、粉砕、希塩酸での洗浄による活性化では実用上十分な反応性は得られない。また、ヨウ素や1,2−ジブロモエタン等の反応促進剤を添加する方法は、反応促進には効果があるが、反応促進剤に由来する不純物が得られるトリアルキルガリウムに混入し、トリアルキルガリウムの精製度を低下させる。このため、上記の従来の予備活性化方法は、MOCVD法による化合物半導体製造の原料として使用される高純度トリアルキルガリウムを製造するためには行い難い。
本発明方法では、マグネシウムを、三塩化ガリウム及びハロゲン化アルキルと反応させる前に真空下で加熱することにより活性化する。この予備活性化は、マグネシウムの表面上の水分除去やハロゲン化アルキルマグネシウムの生成に貢献する。
マグネシウムの真空加熱時の真空条件は特に限定されないが、通常1000Pa以下、好ましくは100Pa以下、さらに好ましくは10Pa以下とすればよい。上記真空度の範囲であれば、マグネシウム表面の水分などが十分に除去され、十分に高い収率でトリアルキルガリウムが得られる。真空度の下限値は、通常10−6Pa程度である。
真空加熱時の温度は、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは110℃以上とすればよい。上記範囲であればマグネシウム表面上の水分等を十分に除去することができる。
真空加熱時間は、特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは3時間以上である。また、3時間程度も行えば十分である。
また、真空加熱を行う間、マグネシウムを静置してもよく、又は攪拌してもよい。活性化を効率良く行う上では攪拌することが好ましい。攪拌は、例えばマグネチックスタラーによる攪拌、誘導攪拌のような公知の方法で行えばよい。攪拌時に、マグネシウムに流動パラフィンやワセリンオイル等を添加することにより、攪拌を円滑に行うことができる。粉末状マグネシウム、特に比表面積の大きい粉末状マグネシウムを用いる場合は、攪拌しなくても十分に活性化することができる。
マグネシウムの真空加熱処理は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で行う。これら不活性ガスの純度は、好ましく99.99%(4N)以上、特に好ましくは99.9999%(6N)以上である。
特に、雰囲気ガス中の水分や酸素は、トリアルキルガリウムの収率を低下させるばかりでなく、純度低下の原因ともなり得るため、水分や酸素は極力除去した雰囲気ガスを使用することが望まれる。反応雰囲気ガスは好ましくは露点−80℃以下、酸素濃度100ppb以下、特に好ましくは露点−100℃以下、酸素濃度10ppb以下であることが望ましい。このような高純度の不活性ガスは、膜分離法、触媒反応法、液化精留法、PSA(Pressure Swing Adsorption)法などにより得ることができる。
第2の工程(合成反応工程)
合成反応に当たっては、前述した不活性ガス雰囲気下にした反応容器内に、三塩化ガリウム、予備活性化されたマグネシウム、ハロゲン化アルキル、及びエーテル化合物を入れ、混合して反応させる。反応を制御するために、通常は、反応容器内に三塩化ガリウム、予備活性化されたマグネシウム、及びエーテル化合物を入れ、最後にハロゲン化アルキルをこれら混合物中にゆっくりと導入していけばよい。
エーテルの使用量は、特に限定されないが、反応開始時に溶媒中のガリウム濃度及びマグネシウム濃度(それぞれ、溶媒1Lに対するモル数を意味する。以下、同様。)のいずれもが0.01〜10moL/L程度となる量が好ましく、0.1〜5moL/L程度となる量がより好ましい。上記濃度範囲であれば、反応性、ひいてはトリアルキルガリウム収率が十分高くなるとともに、容易に反応を制御でき、即ち、突然反応が進みすぎたり、生成するハロゲン化アルキルマグネシウムの析出で反応が途中で終わってしまったり、副生するハロゲン化マグネシウムにより攪拌が困難となったりすることがない。
反応温度は、用いるエーテル化合物、及びハロゲン化アルキルの種類などを考慮して、効率良く反応が進行する温度とすればよい。全ての材料を混合した後、反応液の温度を、通常0〜200℃程度、好ましくは40〜160℃程度、より好ましくは60〜120℃程度に設定して反応を行えばよい。通常3〜30時間程度の反応によりトリアルキルガリウムが生成する。
また、合成反応圧力は特に限定されず、大気圧下、減圧下、または加圧下で合成反応を行うことができる。
精製工程
反応終了後に得られるトリアルキルガリウムには、エーテル化合物やハロゲン化アルキルが付加したトリアルキルガリウム等が含まれている。従って、反応液を蒸留することにより、これらの付加体を分解してトリアルキルガリウムを分留により単離すればよい。加熱温度は、トリアルキルガリウムの分解温度より低く、かつトリアルキルガリウムのエーテル化合物やハロゲン化アルキルの付加体の分解温度より高い温度とすることが好ましい。蒸留は、常圧で行えばよいが、減圧蒸留を行ってもよい。
さらに、精密蒸留や昇華等の方法で精製することにより、MOCVD原料として使用できる純度99.999%(5N)以上のトリアルキルガリウムが得られる。
精製工程も、通常、不活性ガス雰囲気下で行う。
ガリウム系化合物半導体素子
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料として、例えばMOCVDによるエピタキシャル成長により、ガリウム系化合物半導体素子のガリウム系化合物半導体薄膜を形成することができる。ガリウム系化合物半導体薄膜の代表例としては、トリアルキルガリウムと、アンモニアのような窒素含有化合物とを原料として形成される窒化ガリウム系化合物半導体薄膜が挙げられる。
半導体の構造としては、MIS(Metal Insulator Semiconductor)接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
窒化ガリウム系化合物半導体薄膜を例に挙げて説明すれば、窒化ガリウム系化合物半導体の基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化ガリウム系化合物半導体を形成することができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファー層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成する。
窒化ガリウム系化合物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファー層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
窒化ガリウム系化合物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化ガリウム系化合物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子が得られる。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]トリメチルガリウムの合成
三塩化ガリウムと、マグネシウムと、塩化メチルとの反応
窒素置換した200mL容量のSUS316製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム4.17g(174mmoL)を導入する。オートクレーブ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
オートクレーブ内の温度を室温に戻し、三塩化ガリウム10.03g(57mmoL)とモレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル60mLを加える。次いで塩化メチル12.32g(244mmoL)をゆっくりとオートクレーブ内に導入し、120℃までオートクレーブ内温度を上げ、20時間加熱攪拌を行う。
使用する三塩化ガリウムの純度は5Nであり、マグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。また、反応開始時の溶媒中の三塩化ガリウム濃度は0.95moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.90moL/Lである(それぞれ、溶媒1Lに対するモル数。以下、同様。)。
反応終了後、ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometerによるガリウム定量により、2.31g(ガリウム換算で35.5%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例2]トリメチルガリウムの合成
三塩化ガリウムと、マグネシウムと、ヨウ化メチルとの反応
窒素置換した200mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム4.14g(173mmoL)を導入する。フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
フラスコ内の温度を室温に戻し、三塩化ガリウム10.05g(57mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル60mLを加える。次いでドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、別途秤量したヨウ化メチル25.1g(177mmoL)を約1時間かけてフラスコ内溶液中に攪拌しながら滴下する。全てのヨウ化メチルを加えた後、フラスコ内温を110℃に保持し18時間加熱攪拌する。
使用する三塩化ガリウムの純度は5Nであり、マグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。また、反応開始時の溶媒中の三塩化ガリウム濃度は0.95moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.88moL/Lである。
反応終了後、白色のヨウ化マグネシウムが大量に析出する。ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、18.4g(ガリウム換算で92.7%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例3]トリエチルガリウムの合成
三塩化ガリウムとマグネシウムとヨウ化エチルとの反応
窒素置換した200mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で平均粒径45μm(Marvern社製Mastersiser2000を用いて測定した値)の粉末マグネシウム4.21g(175mmoL)を導入する。フラスコ内を90℃に加熱攪拌しながら10Paの真空度で3時間予備活性化を行う。
フラスコ内の温度を室温に戻し、三塩化ガリウム10.06g(57mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジエチルエーテル60mLを加える。次いでドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、別途秤量したヨウ化エチル27.29g(175mmoL)をジエチルエーテルが軽く還流する程度の速度でフラスコ内溶液中に滴下する。滴下に要する時間は約1時間である。全てのヨウ化エチルを加えた後、18時間還流攪拌する。
使用する三塩化ガリウムの純度は5Nであり、マグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。また、反応開始時の溶媒中の三塩化ガリウム濃度は0.95moL/Lであり、マグネシウム濃度は2.92moL/Lである。
反応終了後、白色のヨウ化マグネシウムが大量に析出する。反応終了後、反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いてまず常圧でジエチルエーテルを分留する。次いで、100Torrの減圧下で粗トリエチルガリウムを分留する。79〜81℃でトリアルキルガリウムが留出する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、8.17g(ガリウム換算で91.5%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。
[比較例1]トリメチルガリウムの合成
(1)塩化メチルマグネシウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で削状マグネシウム4.37g(180mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル70mLを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、別途秤量した塩化メチル10.2g(200mmoL)を約8時間かけてフラスコ内溶液中にバブリングし攪拌する。この間、フラスコ内の温度は20℃になるよう調節する。滴下終了後、12時間攪拌保持する。このマグネシウムは、目開き2mmの網篩(日本工業規格Z8801)を通過しない。またマグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
反応混合物をGilman二重滴定法(H.Gilman,F.K.Cantledge,J.Organomet.Chem.,,447(1964))により分析すると、92.0%収率(165mmoL)で塩化メチルマグネシウムが生成している。
(2)三塩化ガリウムと塩化メチルマグネシウムとの反応工程
室温で三塩化ガリウム10.05g(57mmoL)をジイソアミルエーテル30mLに溶解させた溶液を塩化メチルマグネシウムのジイソアミルエーテル溶液(165mmoL)にゆっくりと滴下する。この間、フラスコ内の温度は20℃になるよう調節する。滴下終了後、110℃で18時間加熱攪拌する。三塩化ガリウムの純度は5Nである。
ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物より、ガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometerによるガリウム定量により、1.51g(ガリウム換算で23.0%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[比較例2]ヨウ化メチルマグネシウムの合成
(1)ヨウ化メチルマグネシウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で削状マグネシウム8.04g(335mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル137mLを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、ヨウ化メチル55.9g(394mmoL)を約2時間かけてフラスコ内溶液中に滴下する。この間、フラスコ内の温度は40℃を越えないように調節する。滴下終了後、室温で12時間攪拌する。このマグネシウムは、目開き2mmの網篩(日本工業規格Z8801)を通過しない。マグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
得られた反応混合物をろ過し、Gilman二重滴定法により分析すると、97%収率(325mmoL)でヨウ化メチルマグネシウムが生成している。
(2)三塩化ガリウムとヨウ化メチルマグネシウムとの反応
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコ中で、室温下、三塩化ガリウム15.51g(88mmoL)をジイソアミルエーテル58mLに溶解させた溶液をヨウ化メチルマグネシウム(325mmoL)のジイソアミルエーテル溶液にゆっくりと滴下する。この間、フラスコ内の温度は60℃になるよう調節する。滴下終了後、110℃で18時間加熱攪拌する。三塩化ガリウムの純度は5Nである。
ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物より、ガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、8.88g(ガリウム換算で87.7%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[比較例3]トリメチルガリウムの合成
(1)塩化メチルマグネシウムの合成(粉末マグネシウム使用)
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で平均粒径45μmの粉末マグネシウム(Marvern社製Mastersiser2000で測定)4.41g(181mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル70mLを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、別途秤量した塩化メチル10.2g(200mmoL)を約8時間かけてフラスコ内溶液中にバブリングし攪拌する。この間、フラスコ内の温度は20℃になるよう調節する。滴下終了後、3時間攪拌保持する。またマグネシウムの純度は3Nである。窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。
反応混合物をGilman二重滴定法(H.Gilman,F.K.Cantledge,J.Organomet.Chem.,,447(1964))により分析すると、96.1%収率(174mmoL)で塩化メチルマグネシウムが生成している。
(2)三塩化ガリウムと塩化メチルマグネシウムとの反応工程
室温で三塩化ガリウム10.03g(57mmoL)をジイソアミルエーテル30mLに溶解させた溶液を塩化メチルマグネシウムのジイソアミルエーテル溶液(174mmoL)にゆっくりと滴下する。この間、フラスコ内の温度は20℃になるよう調節する。滴下終了後、110℃で18時間加熱攪拌する。三塩化ガリウムの純度は5Nである。
ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物より、ガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometerによるガリウム定量により、1.46g(ガリウム換算で22.2%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。

トリメチルガリウムを合成するに当たって、マグネシウムと塩化メチルとを用いて三塩化ガリウムをアルキル化する実施例1では、収率35.5%であるが、塩化メチルマグネシウムを用いてアルキル化する比較例1では収率23.0%であり、粉末マグネシウムを使用した比較例3でも22.2%であり、実施例1の方が収率が高い。
またトリメチルガリウムを合成するに当たって、マグネシウムとヨウ化メチルとを用いて三塩化ガリウムをアルキル化する実施例2では、収率92.7%であるが、ヨウ化メチルマグネシウムを用いてアルキル化する比較例2では収率87.7%であり、実施例2の方が収率が高い。
以上より、三塩化ガリウムを、真空加熱処理されたマグネシウムとハロゲン化アルキルとを用いてアルキル化することにより、ハロゲン化アルキルマグネシウムを用いてアルキル化するより、収率よくトリアルキルガリウムが得られることが分かる。

[実施例4]窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造
サファイア(C面)よりなる基板をMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)の反応容器内にセットし、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。
(バッファ層)
続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアと上記の実施例1で得られ、さらに精製されるトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を約150オングストロームの膜厚で成長させる。この反応は以下の式で表される。
Ga(CH+NH→GaN+3CH
(アンドープGaN層)
バッファ層成長後、トリメチルガリウムのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を1.5μmの膜厚で成長させる。
(n側コンタクト層)
続いて1050℃で、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガス、不純物ガスにシランガスを用い、Siを4.5×1018/cmドープしたGaNよりなるn側コンタクト層を2.25μmの膜厚で成長させる。
(n側第1多層膜層)
次にシランガスのみを止め、1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を75オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同温度にてシランガスを追加しSiを4.5×1018/cmドープしたGaN層を25オングストロームの膜厚で成長させる。このようにして、75オングストロームのアンドープGaN層からなるA層と、SiドープGaN層を有する25オングストロームのB層とからなるペアを成長させる。そしてペアを25層積層して2500オングストローム厚として、超格子構造の多層膜よりなるn側第1多層膜層を成長させる。
(n側第2多層膜層)
次に、同様の温度で、アンドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長させ、次に温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用い、アンドープIn0.13Ga0.87Nよりなる第1の窒化物半導体層を20オングストローム成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第2+第1の順で交互に10層づつ積層させ、最後にGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長さた超格子構造の多層膜よりなるn側第2多層膜層を640オングストロームの膜厚で成長させる。
(活性層)
次に、アンドープGaNよりなる障壁層を200オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用いアンドープIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層を30オングストロームの膜厚で成長させる。そして障壁+井戸+障壁+井戸・・・・+障壁の順で障壁層を5層、井戸層を4層、交互に積層して、総膜厚1120オングストロームの多重量子井戸構造よりなる活性層を成長させる。
(p側多層膜クラッド層)
次に、温度1050℃でトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いMgを1×1020/cmドープしたIn0.03Ga0.97Nよりなる第4の窒化物半導体層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第3+第4の順で交互に5層ずつ積層し、最後に第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させた超格子構造の多層膜よりなるp側多層膜クラッド層を365オングストロームの膜厚で成長させる。
(p側GaNコンタクト層)
続いて1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を700オングストロームの膜厚で成長させる。
反応終了後、温度を室温まで下げ、さらに窒素雰囲気中、ウエハーを反応容器内において、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハーを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面に所定の形状のマスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置でp側コンタクト層側からエッチングを行い、n側コンタクト層の表面を露出させる。
エッチング後、最上層にあるp側コンタクト層のほぼ全面に膜厚200オングストロームのNiとAuを含む透光性のp電極10と、そのp電極の上にボンディング用のAuよりなるpパッド電極を0.5μmの膜厚で形成する。一方、エッチングにより露出させたn側コンタクト層の表面にはWとAlを含むn電極を形成して窒化ガリウム系化合物半導体素子とする。
この窒化ガリウム系化合物半導体素子は順方向電流20mAにおいて、520nmの純緑色発光を示す。
なお、別の構成を有する窒化ガリウム系化合物半導体素子にもトリメチルガリウムを使用することができる。例えば、原料ガスにアンモニアとトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を成長させる。このGaNよりなる第1のバッファ層の上に、アンドープGaNよりなる第2のバッファ層、SiドープGaNよりなるn側コンタクト層、多重量子井戸構造よりなる活性層、単一のMgドープAl0.1Ga0.9N層、MgドープGaNからなるp側コンタクト層を順に積層したものなどがある。
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムは、エピタキシャル結晶成長によりガリウム系化合物半導体薄膜を形成するための原料として好適に使用できる。

Claims (10)

  1. マグネシウムを真空下で加熱する第1の工程と、
    少なくとも1種の溶媒中で、真空加熱処理されたマグネシウムと、少なくとも1種のハロゲン化アルキルと、少なくとも1種のハロゲン化ガリウムとを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する第2の工程と
    を含むトリアルキルガリウムの製造方法。
  2. 第1の工程において、真空下での加熱を、1000Pa以下の真空度で、60℃以上の温度で行う請求項1に記載の方法。
  3. 第1の工程において、真空下での加熱を1〜5時間行う請求項1又は2に記載の方法。
  4. 少なくとも1種のハロゲン化アルキルが、塩化アルキル、臭化アルキル、及びヨウ化アルキルからなる群より選ばれる少なくとも1種のハロゲン化アルキルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. ハロゲン化アルキルが炭素数1〜10のアルキル基を有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. ハロゲン化ガリウムが三塩化ガリウムである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. ハロゲン化ガリウム1モルに対して、マグネシウムを3〜6モル使用する請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 少なくとも1種の溶媒が、エーテル化合物、及びアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法により得られるトリアルキルガリウム。
  10. 請求項9に記載のトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料とするエピタキシャル成長により形成されたガリウム系化合物半導体薄膜を備えるガリウム系化合物半導体素子。
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