JP2006257408A - 導電性接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電子部品実装において、安定した低抵抗接合を実現する導電性接着剤を提供する。
【解決手段】 導電性接着剤は、Sn及びBi及び/又はInを基本組成とする金属フィラー成分並びに樹脂成分を含む。更に、Cu、Ag及びNiの群から選ばれる金属を含むことができる。樹脂成分は、第1の成分としてエポキシ系樹脂を含む。更に、第2の樹脂成分として還元性を有する樹脂を含むことができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、電子回路基板の部品実装または配線形成に用いるための導電性接着剤に関するものである。
従来、電子部品を実装するための接合材料には、Sn−Pb系はんだ材料、特に63Sn−37Pb共晶組成(Sn63重量%及びPb37重量%の組成)を有するSn−Pb共晶はんだ材料が一般的に用いられていた。
図1に、Sn−Pb系はんだ材料を用いた接合構造の構成を示す概要図を示す。図1において、電子部品電極2と電子回路基板のランド3とは、Sn−Pb系はんだ1によって接合されている。ランド3の構成成分はCuである。Sn−Pb系はんだ1とランド3との接合界面にCu−Sn化合物層4が形成されて、電子部品電極2の電子回路基板への実装が行われている。
しかし、近年、電子部品実装において、はんだ付け部の機械的強度向上や熱衝撃強度等の信頼性特性向上への要求が高まってきている。
一方、地球環境保護の関心が高まる中、電子回路基板などの産業廃棄物の処理についての法規制も進みつつあり、鉛も世界的に法規制の対象となりつつある。
そこで、接合材料も、Sn−Pb系はんだ材料から、鉛を含まないはんだ材料、いわゆる鉛フリーはんだ材料への移行が図られつつある。2種の金属を主成分とする鉛フリーはんだの例には、共晶型合金材料である材料として、Sn−Ag系はんだがある(特許文献1、特許文献2)。
但し、Sn−Ag系はんだの融点は、Sn−Pb系はんだの融点(約183℃)と比べて30〜40℃程度高く、それに伴って、はんだ付け温度もSn−Pb系はんだを用いる場合よりも高くなる。そのため、Sn−Ag系はんだを用いると、電子部品を実装する際の実装温度が電子部品の耐熱温度以上になる事態が生じることがあり、そのような場合には電子部品を損傷させ得るという問題点を有していた。
そこで、電子部品の熱損傷を軽減又は防止するために、はんだに代わる材料として、硬化温度が鉛フリーはんだの融点より比較的低い導電性接着剤が注目されるようになった(特許文献3)。
特許第3027441号明細書 米国特許第5520752号明細書 特開平10-163605号公報
一般的な導電性接着剤は、熱硬化性樹脂の中に導電性フィラーとしてのAgフィラー粒子を分散させて含んでいる。そのような導電性接着剤を用いて電子部品の接合又は配線形成を行った場合に、導電性接着剤が硬化して形成した接合部又は配線の部分は、体積抵抗率にばらつきが生じる傾向があった。また、その体積抵抗率は、バルク金属やSn−Pb系はんだの体積抵抗率よりも高くなる傾向があった。
そのような体積抵抗率のばらつきや上昇は、硬化した導電性接着剤中で導通経路を形成するAgフィラー粒子の形状及び向きに起因すると考えられる。Agフィラー粒子は、一般に、微小な寸法のフレーク状ないしロッド状の形状を有している。1つのフィラーの3次元的な形状について、最も大きな寸法の長さ(以下、「最大長さ」とも称する)を有する方向を長軸方向(例えば、z軸方向と仮定する)とすると、その長軸方向に対して直交するいずれかの方向(前記z軸に直交するx−y平面内のいずれかの方向)については、前記最大長さよりも遙かに小さい寸法、例えば、最大長さの1重量%以下、0.1重量%以下又は0.01重量%以下の寸法の長さ(以下、「最小長さ」とも称する)を有している、即ち非常に大きなアスペクト比を有している。
図2に、電子部品の電極2と電子回路基板のランド3とを、従来の導電性接着剤によって接合した場合の接合部の顕微鏡観察による断面図を模式的に示す。硬化後の導電性接着剤の中で、Agフィラー粒子は、基本的にその長軸方向が3次元のあらゆる方向を向くように分散されている。電極2とランド3との間の導通経路は、隣り合うAgフィラー粒子が互いに接触し、その接触し合うAgフィラー粒子が更に接触点を延ばして、電極2とランド3との間を架橋し電気的に連絡することによって形成される。
この場合に、Agフィラー粒子どうしは点又は比較的小さい面積の面で接触しており、安定した接触面積を確保することは困難であるので、Agフィラー粒子どうしの電気的導通は、Sn−Ag系はんだやバルク金属で接合部を形成する場合の電気的導通と比べて、あまり良好ではない。
また、接合部を形成する導電性接着剤におけるAgフィラー粒子全体の中で、導通経路の形成への寄与が低いものの割合が相対的に大きい場合には、その接合部の体積抵抗率はバルク金属やSn−Pb系はんだを用いた場合の体積抵抗率に比べてより高くなり得る。そのために、導電性接着剤によって形成した接合部又は配線部の体積抵抗率にばらつきが生じたり、体積抵抗率が上昇したりすることになると考えられる。
このように接合部又は配線部の体積抵抗率がばらついたり上昇したりする傾向があるため、導電性接着剤の用途は限定されていた。
本発明は、このような課題を解決した導電性接着剤を提供することを目的とする。
本願の第1の発明は、Sn及びBi及び/又はInを基本組成とする金属フィラー成分並びに樹脂成分を含んでなることを特長とする。この発明は、金属フィラー成分がAgフィラー粒子を含まず、比較的低融点の金属を用いる点で従来の導電性接着剤とは異なっている。
樹脂成分としては、当業者に既知の種々の硬化性樹脂、例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、種々の波長の電磁波による硬化性樹脂等を用いることができる。尤も、金属フィラー成分を溶融させることから、熱硬化性樹脂が好ましい。本発明では、熱硬化性樹脂として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いることができるが、好ましい熱硬化性樹脂はエポキシ系樹脂である。エポキシ系樹脂は一液硬化型、二液硬化型など種々のものを用いることができるが、一液硬化型のものが好ましい。また、本願の第1の発明に用いる樹脂成分が硬化性樹脂である場合には、基本的に当業者に既知の硬化性樹脂の系(特定の硬化性樹脂及びその硬化に必要とされる特定の種類の硬化剤等を必要な量で含む系)を樹脂成分に含めて用いる。
本願の第1の発明に関して、金属フィラー成分は、Sn―Bi系、Sn−In系又はSn―Bi−In系合金を基本組成とする。Bi及びInは、合金の低融点化を目的に配合している。
金属フィラー成分中のBiの含有量は、10〜70重量%の範囲が好ましく、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上であって、より好ましくは57重量%以下、更に好ましくは65重量%以下の範囲がより好適である。金属フィラー成分中のBi含有量を10〜70重量%にしたのは、Biの含有量が10重量%より少ないと低融点化の効果が十分に得られず、70重量%を超える場合にも同様に低融点化の効果が得られないためである。
金属フィラー成分中のInの含有量は、10〜90重量%の範囲が好ましく、より好ましくは15重量%以上、更に好ましくは20重量%以上であって、より好ましくは52重量%以下、更に好ましくは60重量%以下若しくは70重量%以下若しくは80重量%以下範囲がより好適である。金属フィラー成分中のInの含有量を10〜90重量%にしたのは、Inの含有量が10重量%より少ないと低融点化の効果が十分に得られず、90重量%を超える場合にも同様に低融点化の効果が得られないためである。
本発明の金属フィラー成分は、上記の基本組成に加えて、Cu、Ag及びNiの群から選ばれる少なくとも1種の金属を更に含むことができる。CuとAgとは、合金の機械的特性向上を目的に添加している。
金属フィラー成分中のCuの含有量は、0.1〜1.0重量%の範囲が好ましく、0.5〜0.7重量%のCu含有量がより好適である。金属フィラー成分中のCu含有量を0.1〜1.0重量%としたのは、0.1重量%よりも少量であれば、その機械的特性に対する効果は得られないためであり、1.0重量%を超えると合金がより脆くなる傾向を示して機械的特性に関して逆効果となるためである。
金属フィラー成分中のAgの含有量は、0.1〜5.0重量%の範囲が好ましく、3〜5重量%のAg含有量がより好適である。金属フィラー成分中のAg含有量を0.1〜5.0重量%としたのは、0.1重量%よりも少量であれば、機械的特性に対する効果は得られず、5重量%を超えると合金の融点が急激に上昇するためである。
金属フィラー成分へのNiの添加は、Snの酸化抑制を目的としている。金属フィラー成分中のNiの含有量は、0.001〜0.1重量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、更により好ましくは0.05重量%以上であって、0.1重量%以下の範囲が好適である。金属フィラー成分中のNi含有量を0.001〜0.1重量%としたのは、0.01重量%よりも少量であれば、Sn酸化抑制の効果は得られず、1.0重量%を超えると強固なNi酸化膜が形成されて融点が上昇し、Sn酸化抑制の効果は得られないためである。
これらの低融点金属成分は粒子状の形態で導電性接着剤組成物中に分散されている。その金属成分の平均粒子径は、5〜30μmである。
本願第1の発明において、導電性接着剤組成物全体に対する金属フィラー成分の重量の割合は、導電性接着剤の用途、金属フィラー成分の種類、樹脂成分の種類などに適合させて適切な範囲から選択することができる。但し、導電性接着剤組成物全体に対して、金属フィラー成分が70〜90重量%、特に80〜85重量%であることが好ましい。金属フィラー成分の割合が70重量%未満では、硬化後に十分な導電性が得られず、90重量%を超えると、導通経路のまわりを樹脂によって十分に包囲できなくなり得るためである。
第1の発明の導電性接着剤を用いて電子部品の接合又は配線形成を行う場合には、使用する金属フィラー成分中に、実装温度にて溶融しないAgフィラー粒子等の金属成分を含まないため、溶融しない金属成分の粒子の寸法、形状及び向きによって接合部の体積抵抗率が変動する可能性を実質的に排除することができる。
更に、この金属フィラー成分が溶融して得られる合金は、鉛フリーはんだ材料やSn-Pb系はんだ材料よりも低い融点を示すので、より低い実装温度を達成することができる。
図3に、本願第1の発明の導電性接着剤を用いて、電極2とランド3とを接合した場合の接合部の顕微鏡観察による断面図を模式的に示す。硬化した導電性接着剤中での金属フィラー成分は、使用前の粒子状の形態を残しておらず、電極2とランド3との間で、例えばランド3側から電極2へ向かって電極2に達するまで、ブロック状の塊を不規則的に積み重ねたように連絡して延びる導通経路を形成している。この導通経路は、樹脂の中に分散されていた金属フィラー成分の粒子が熱によって溶融して液状となり、液状化した金属フィラー成分どうしが互いに合一化及び連絡し合い、流体が流通し得る流路の形状を保持したまま固化することによって、樹脂媒体中で金属フィラー成分がその流路の形状に基づく3次元的ネットワークを形成したものであると考えることができる。従って、この導通経路は、ブロック状の塊どうしが点や比較的小さい面積の面で接触するのではなく、液状化した金属フィラー成分の流路の形状に基づく3次元的ネットワークによって形成されているので、電極2とランド3との間には金属成分の充填密度が非常に高い導通経路が多数形成されている。
このように本願第1の発明の導電性接着剤は、その金属フィラー成分に低融点金属を用いることにより、導電性接着剤の加熱硬化過程において、比較的低い温度にて金属フィラー成分自体を溶融させることができる。本願第1の発明の導電性接着剤は、例えば図3に示すように、所定のランド3と電極2との間に所定量で適用された場合に、樹脂中に分散された状態で溶融した金属フィラー成分どうしは集まり合って一体化し、実質的に金属接合又は金属結合を形成して、ランド3と電極2との間を連絡することができる。その後、接着剤を硬化させると、金属フィラー成分は金属フィラー成分の金属から形成される合金の金属塊(インゴット)によって形成された導通経路を得ることができる。このように導通経路がランド3と電極2との間を実質的に切れ目のない金属塊によって形成されているので、本発明の導電性接着剤を用いることによって、バルク金属並みでかつ安定した体積抵抗率を提供することができる。
尚、本願第1の発明の導電性接着剤を用いて、電子回路基板の配線を形成する場合には、図3における電極2は存在しないが、基板上に未硬化の導電性接着剤組成物を所定のパターンにて塗布して加熱硬化させることによって、溶融した状態の金属フィラー成分がそのパターンに従って合一化及び連絡し合い、その形状を保持したまま固化するので、図3に示す例と同様に、実質的に切れ目のない金属塊の配線パターンが基板上に形成される。従って、この場合にも、本発明の導電性接着剤を用いることによって、バルク金属並みでかつ安定した体積抵抗率を提供することができる。
本願の第2の発明は、樹脂成分が、第1の成分として硬化性樹脂を含み、第2の成分として還元性を有する樹脂を含むことを特長としている。尚、この発明の導電性接着剤としては、樹脂成分が還元性を有する樹脂である態様、場合によっては樹脂成分が還元性を有する樹脂のみである態様も含むことができる。硬化性樹脂及び金属フィラー成分については上述した本願の第1の発明と同様のものを用いることができる。
例えば、導電性接着剤を用いて電子部品を実装する場合に、加熱硬化過程において金属フィラー成分の粒子(金属フィラー粒子)が加熱されると、場合によって、金属フィラー粒子が溶融するよりも先に、金属フィラー粒子表面が酸化されてしまい、その結果、金属フィラー粒子の表面に酸化膜が形成されることがある。金属フィラー粒子の表面に生じた酸化膜は、金属フィラー粒子の溶融を妨害する1種の保護膜となって、導電性接着剤の加熱硬化過程における所定の温度で金属フィラー成分が溶融することを妨害し得る。その結果、加熱硬化過程を経た後に、十分に溶融し得なかった金属フィラー粒子が残り得る。
このような場合に、本願の第2の発明に係る導電性接着剤を用いると、導電性接着剤中に還元性のある樹脂成分が存在しているので、加熱硬化過程中でも導電性接着剤組成物内をある程度還元性雰囲気に保つことができる。そのため、加熱硬化過程において金属フィラー粒子の表面に酸化膜が生じることを実質的に防止することができる。加熱硬化過程中における金属フィラー粒子表面の酸化を防止することによって、加熱硬化過程における金属フィラー成分の溶融不良を防止することができる。
1つの形態において、還元性のある樹脂はカルボキシル基を有する化合物、例えばカルボン酸を含むことが好ましい。樹脂中にそのような化合物を加えることによって、低融点金属の酸化膜を除去し(低融点金属の表面に酸化膜が生成することを防止し)、溶融し易くするため還元剤としての作用を発現させることができる。尚、そのような化合物には、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、脂環式カルボン酸等の種々のカルボン酸を用いることができる。そのような化合物の例として、アジピン酸、アビチエン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、クエン酸、ポリアクリル酸、リンゴ酸、ピメリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、セバシン酸、スベリン酸、マレイン酸、コハク酸、アゼライン酸、フマル酸、グルタル酸、マロン酸等を挙げることができる。また、そのカルボン酸は、Na、Ag、Cu、K等の金属塩の形態であることが好ましい。
もう1つの形態において、第2の樹脂成分として、金属を含む有機化合物を含有することが好ましい。常温では、金属は遊離することなく安定に有機化合物と化合又は結合しているが、加熱されると金属が有機化合物から遊離又は遊離過程となり、遊離した金属が樹脂の硬化反応を促進するようになる。その結果、短時間硬化及び保存安定性を両立させる硬化剤としての作用を果たすことができる。尚、そのような金属は、Na、Ag、Cu及びKの群の少なくとも1種であることが好ましい。
もう1つの形態において、金属を含む有機化合物がカルボキシル基やアミノ基を含むことが好ましい。この場合には、カルボキシル基やアミノ基に由来する還元剤としての作用と、金属を含む有機化合物に由来する硬化剤としての作用とが、加熱硬化過程において相乗的に発揮され、良好な還元剤として作用させることができる。
本願第2の発明に関して、導電性接着剤組成物全体の重量に対する金属フィラー成分の重量の割合は、第1の発明の場合と同様であってよい。樹脂成分中において、第1の樹脂成分と第2の樹脂成分との重量の割合は、90:10〜10:90の範囲、特に50:50〜80:20の範囲が好ましい。但し、上述したように、本発明の範囲には、第1の樹脂成分を用いない態様も含むことができる。また、金属フィラー成分に対する樹脂成分の割合は、20重量%以下が好適である。20重量%を超えると、還元剤及び/又は硬化剤としての作用にそれ以上の変化は認められないためである。尚、上記の第2の発明の効果が認められるためには、樹脂成分の割合は10重量%以上であることが好ましい。尚、第2の樹脂成分が硬化剤として作用する場合には、第1の樹脂成分に用いる硬化剤の使用量を減らすこともできる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の形態において、表2に示すように、実施例1〜25としてそれぞれ対応する組成を有する金属フィラー成分を配合して、得られる配合物(従って、対応する組成の合金)の融点及び体積抵抗率を測定した。
融点は、示差熱分析装置を用いて測定した。
体積抵抗率(ρ)の測定値は、試料について抵抗値R、配線長L及び断面積Sを求めた後、式:ρ=R・L/Sに基づいて求めた。
また、上記の各実施例に対応する組成の金属フィラー成分を用いて、導電性接着剤を作製した。いずれの実施例についても、樹脂として、熱硬化性エポキシ樹脂を使用した。本発明に用いるのに好ましいエポキシ樹脂として、例えば、エピコート828、エピコート807(ジャパンエポキシレジン(JER)製)を、硬化剤として2PHZ(四国化成製)を挙げることができる。また、金属フィラー成分には、工業的に一般的に入手できる粉末ないしフレーク形態の金属微粒子を用いることができる。この樹脂成分15重量%に金属フィラー成分85重量%を配合して、導電性接着剤組成物を調製した。
(導電性接着剤の体積抵抗率の測定)
各実施例に対応する導電性接着剤組成物を直方体の型の中に入れ、その型を温度150℃に保たれた加熱チャンバー内で5分間加熱して、導電性接着剤組成物を硬化させた。その後、室温まで放冷して、体積抵抗率を測定した。
(繰り返し曲げ強度の測定)
また、繰り返し曲げ強度は、以下のようにして測定した。図4左図に示すように、相互に対応する接点を有する2枚のフレキ基板(厚さ0.08mm、長さ30mm、幅20mm)を用意し、フレキ基板の重ね代(接合部の長さ)を5mmとして、一方のフレキ基板の接点部分に本発明の導電性接着剤組成物を適量で塗布した。それから、対応する接点どうしを対向させて重ね合わせた後、上記の導電性接着剤の体積抵抗率の測定で行った加熱硬化過程に従って加熱処理を行い、導電性接着剤を十分に硬化させて、2枚のフレキ基板の接合を行った。
2枚のフレキ基板の接合部の上にR(半径)=1.0mmのステンレス棒を置いて、接合部を上方から押さえて固定した後、図4左図に示すように、上側の基板を、下側の基板の端部を延長した方向に延びる水平な姿勢から、その棒で押さえた部分を支点としてほぼ垂直上向きの姿勢(図4右図)へ曲げた後、再度水平な姿勢へ戻すという曲げ延ばしを繰り返した。曲げて延ばす1往復の動作を1回とカウントした。接合部に破断が生じるまで曲げ延ばしを繰り返し、破断が認められるに至るまでの回数を表1に示している。
表1から判るように、SnにBi及び/又はInを添加することにより、導電性接着剤の体積抵抗率はAgのみを用いた比較例よりも比較的大きく低下し、はんだ合金並となっている。また、Cu、Agを添加することにより、繰り返し曲げ強度は向上している。Niを添加することにより溶融温度はやや低下し、機械的強度も向上している。
(表1)フィラー組成と導電性接着剤特性(フィラー:樹脂=85wt%:15 wt%)
Figure 2006257408
(表2)金属組成と金属物性
Figure 2006257408
(第2の実施形態)
本発明の第2の形態では、上記実施例1で用いた組成に、表3において実施例26〜30として示す還元性を有する第2の樹脂成分を更に配合して導電性接着剤組成物を調製した。樹脂成分と金属フィラー成分との重量比を15:85とし、樹脂成分中での第1の樹脂成分と第2の樹脂成分との重量比は80:20とした。
第2の成分の還元性を有する樹脂として、アジピン酸、アビチエン酸、アスコルビン酸、アクリル酸、クエン酸、ポリアクリル酸等を用いると、Snを含む合金フィラーの溶融性が向上し、体積抵抗率が低下することが確認された。また、硬化後のフィラーを観察すると、Sn含有フィラーが十分に溶融し、金属的な結合が得られていることが確認できた。
Figure 2006257408
(発明の効果)
本発明の導電性接着剤は、金属フィラー成分として比較的低融点の合金を用いるので、鉛フリーはんだ材料やSn-Pb系はんだ材料よりも低い硬化温度を達成することができる。
また、金属フィラー成分に低融点金属を用いることにより、導電性接着剤の加熱硬化過程において、低融点金属フィラーを十分に溶融させた後に硬化させるので、実質的に切れ目のない金属塊によって導通経路を形成することができる。従って、本発明の導電性接着剤を用いた接合部はバルク金属並みでかつ安定した体積抵抗率を実現することができる。
本発明の導電性接着剤は、導電性接着剤中に還元性のある樹脂または硬化剤成分(第2の樹脂成分)を配合することにより、加熱硬化過程で低融点金属が酸化されることによる溶融不良を防止することができる。更に、第2の樹脂成分を加えることによって、低融点の合金をその融点にて十分に溶融させることができるので、この導電性接着剤は比較的低い実装温度で使用することができる。
本発明の導電性接着剤は、電子部品の接合の用途及び配線形成の用途に有用である。
本発明の導電性接着剤は、硬化温度が鉛フリーはんだの融点よりも比較的低い温度にて実装に用いることができ、硬化後において、バルク金属並みでかつ安定した体積抵抗率を示すことができるので、許容耐熱温度が比較的低い電子部品の実装を、熱損傷を与える可能性を最小限度に小さくして、又は実質的に防止して、行う用途に特に有用である。
また、本発明の導電性接着剤は、CCD素子、フォログラム素子、チップ部品等の電子部品の接続用及びそれらを接合する基板の配線形成に用いることができる。その結果、これらの素子、部品及び/又は基板を内蔵する製品、例えば、DVD、携帯電話、ポータブルAV機器、ノートPC、デジタルカメラ等に使用することができる。
従来の電子部品電極の構成を示す概要図。 従来の導電性接着剤硬化後のフィラーの構造を示す模式図。 本発明の導電性接着剤硬化後のフィラー構造を示す模式図。 繰り返し曲げ強度試験の説明図。
符号の説明
1:Sn−Pb系はんだ、 2:部品電極、 3:電子回路基板のランド、4:CuSn化合物層、 5:Agフィラー、 6:溶融及び固化した後の金属フィラー。

Claims (12)

  1. Sn及びBi及び/又はInを基本組成とする金属フィラー成分並びに樹脂成分を含んでなることを特長とする導電性接着剤。
  2. 金属フィラー成分は、10〜70重量%のBi及び残部のSnを含んでなる請求項1記載の導電性接着剤。
  3. 金属フィラー成分は、10〜90重量%のIn及び残部のSnを含んでなる請求項1記載の導電性接着剤。
  4. 金属フィラー成分は、10〜70重量%のBi、10〜90重量%のIn及び残部のSnを含んでなる請求項1記載の導電性接着剤。
  5. 金属フィラー成分は、Cu、Ag及びNiの群から選ばれる少なくとも1種の金属を更に含むことを特長とする請求項1〜4のいずれかに記載の導電性接着剤。
  6. 樹脂成分は、第1の成分として硬化性樹脂を含むことを特長とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性接着剤。
  7. 樹脂成分は、第2の成分として還元性を有する樹脂を含むことを特長とする請求項6記載の導電性接着剤。
  8. 第2の樹脂成分はカルボキシル基を有することを特長とする請求項7記載の導電性接着剤。
  9. 第2の樹脂成分は、金属を含む有機化合物を含有することを特長とする請求項7または8記載の導電性接着剤。
  10. 前記金属は、Na、Ag、Cu及びKの群から選ばれることを特長とする請求項9記載の導電性接着剤。
  11. 樹脂成分は、還元性を有する樹脂を含むことを特長とする請求項1〜5のいずれかに記載の導電性接着剤。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の導電性接着剤を用いて部品が接着されていることを特長とする回路基板。
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