JP2006256936A - 金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体 - Google Patents
金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】分散性に優れた金属酸化物を量産することができる。
【解決手段】本発明の金属酸化物の製造方法は、金属イオンを含有する原料溶液から金属酸化物を製造する金属酸化物の製造方法であって、前記原料溶液と沈殿剤とを混合して、前駆体を製造する工程と、イオン交換クロマトグラフィーを用いて測定したときに、前記前駆体における陰イオン濃度が1wt%以下となるまで、該前駆体を洗浄する洗浄工程と、前記前駆体を焼成して、前記金属酸化物を得る焼成工程とを備えている。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の金属酸化物の製造方法は、金属イオンを含有する原料溶液から金属酸化物を製造する金属酸化物の製造方法であって、前記原料溶液と沈殿剤とを混合して、前駆体を製造する工程と、イオン交換クロマトグラフィーを用いて測定したときに、前記前駆体における陰イオン濃度が1wt%以下となるまで、該前駆体を洗浄する洗浄工程と、前記前駆体を焼成して、前記金属酸化物を得る焼成工程とを備えている。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体に関し、特に、固体酸化物型燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells、以下、「SOFC」と記す。)の材料や研磨剤等として用いることができる金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体に関する。
従来より、セリウム元素を含有する金属酸化物は、金属イオンと陰イオンとを含む原料溶液に沈殿剤を添加して前駆体を製造し、その前駆体を焼成することにより生成されており、主に、排気ガス浄化触媒や研磨剤として用いられてきたが、最近ではSOFCの材料としても用いられるようになってきている。
セリウム元素を含有する金属酸化物をSOFCの材料、例えば、電解質材料として用いる場合、500〜600℃の低温域での酸化物イオン伝導性を高めるため、30μm以下の薄膜化が不可欠と考えられている。このような薄膜は単体で扱うことが困難であり、通常、多孔質電極上に製膜する手法がとられている。従来使用される材料では、緻密な膜とするために1400℃以上の焼結温度が必要であり、このような高温処理を行った場合、電極の多孔性の消失や電極との化学反応による変質の問題があった。そこで、低温で緻密化が可能な材料が求められている。また、セリウム元素を含有する金属酸化物を研磨剤に用いる場合、特に超LSI(large scale integration)の多層配線形成用の研磨剤は、配線の緻密化に伴い、よりスクラッチの生じにくいものが求められている。そこで、これらの用途に用いる場合に、以下に示すような工夫がなされている。
特許文献1には、セリウム化合物水和物を350℃以上500℃以下の温度で焼成して得られた酸化セリウム化合物を、粉砕処理を施し600℃以上の温度で焼成して得られる酸化セリウム粒子を媒体に分散させたスラリーを含む酸化セリウム研磨剤が開示されている。一般に、研磨剤の結晶性が高くなってしまうと、被研磨面に傷がついてしまう。しかし、この酸化セリウム研磨剤は、結晶性が低いため、被研磨面を傷付けることなく研磨できる、と記載されている。
特許文献2には、セリウム塩を仮焼して仮焼品を得る工程1と、仮焼品を、塩化水素と酸素とを含有する雰囲気中で焼成する工程2とを備えてなる酸化第二セリウム粉末の製造方法が開示されている。これにより、多面体形状を有した粒子からなり、その形状が均一であり、分散性に優れ、平均一次粒径が100nm以下であり、0.5μm以上の粗粒が極めて少ない酸化第二セリウム粉末を得ることができる、と記載されている。
特許文献3には、セリウム化合物を常温から昇温して400〜1200℃の温度範囲まで加熱を行い酸化セリウム粒子を製造する方法であり、且つ、少なくとも2〜60℃/時間の昇温速度からなる昇温段階を経る酸化セリウム粒子の製造方法が開示されている。これにより、均一な酸化セリウム粒子を得ることができる、と記載されている。
特許文献4には、易焼結性ナノ球状セリア系化合物粉末の製造方法が記載されている。この製造方法では、2価または3価の金属(M)硝酸塩とセリウムの硝酸塩をMxCe1-xO2―δ(ただし、0.05≦x≦0.3、δはカチオンとアニオンの電荷のバランスから決定される酸素欠陥量を表す)となるように混合し、この混合溶液と沈殿剤として炭酸水素アンモニウムを、(2価または3価の金属硝酸塩水溶液濃度)/(炭酸アンモニウム水溶液濃度)のモル比が2.5から15になるように混合して、Ce1-xMx(OH)y(CO3)2・H2O(ただし、0.05≦x≦0.3、0.05≦y≦1、0.05≦z≦2)で表されるセリウムカーボネートを沈殿させた後に、熟成を50℃以上70℃以下の温度で行い、洗浄後、400℃以上750℃以下の温度で仮焼し、1000℃以下の温度で焼結する。これにより、生成物の粒径を平均して50nm以下とすることができ、且つ、生成物を理論密度の98%以上にまで緻密化することができる、と記載されている。
特開平10−106990号公報
特開2004−43261号公報
特開2004−168638号公報
特開2004−107186号公報
ところで、上記特許文献1から4などに記載の方法を用いて酸化セリウムなどの金属酸化物を量産すると、実験設備において得られるよりも一次粒子の凝集により生じた凝集体を多く含む粒度分布を有する金属酸化物の粒径と略同一の粒径を持つ金属酸化物とは別に、その粒径よりも大きな粒径を持つ金属酸化物が得られてしまうことがわかった。そのため、この金属酸化物を量産するさいには、さらなる工夫が必要であることがわかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分散性に優れた金属酸化物を量産することができる金属酸化物の製造方法、その製造方法により製造された金属酸化物及びそれを焼結した焼結体に関する。
本発明の金属酸化物の製造方法は、金属イオンを含有する原料溶液から金属酸化物を製造する金属酸化物の製造方法であって、前記原料溶液と沈殿剤とを混合して、前駆体を製造する工程と、イオン交換クロマトグラフィーを用いて測定したときに、前記前駆体における陰イオン濃度が1wt%以下となるまで、該前駆体を洗浄する洗浄工程と、前記前駆体を焼成して、前記金属酸化物を得る焼成工程とを備えている。
また、本発明の金属酸化物の製造方法では、前記金属酸化物を得る工程は、前記前駆体を200℃以上500℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保持する第1焼成工程と、前記第1焼成工程の後に、前記前駆体を500℃以上1000℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保持する第2焼成工程とを備えていることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物の製造方法において、第2焼成工程では、600℃以上900℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保持することが好ましい。
また、本発明の金属酸化物を製造する方法では、フィルタープレスを用いて前記前駆体を洗浄することが好ましい。
また、本発明の金属酸化物を製造する方法では、さらに、前記前駆体が分散されたスラリーを、大気圧下にて40℃以上100℃以下で0.5時間以上24時間以下で加熱処理する工程を備えていることが好ましい。
また、本発明の金属酸化物を製造する方法では、前記原料溶液にはセリウムイオンが含有されていることが好ましい。また、本発明の金属酸化物を製造する方法では、前記原料溶液には、ガドリニウムイオンが含有されていることが好ましい。
本発明の金属酸化物は、本発明の金属酸化物の製造方法により得られた金属酸化物である。
本発明の焼結体は、本発明の金属酸化物の製造方法により得られた金属酸化物を焼結した焼結体である。
本発明の金属酸化物の製造方法では、分散性に優れた金属酸化物を量産できる。また、本発明の金属酸化物は、本発明の製造方法を用いて量産されるため、分散性に優れている。また、本発明の焼結体は、本発明の金属酸化物の製造方法により得られた金属酸化物を用いて製造されるため、焼結性に優れている。
本実施形態を記載する前に、本発明に至るまでに、本願発明者らが考察した事項を説明する。
セリウム元素などを含む金属酸化物は、金属イオンを含有する原料溶液と沈殿剤とを混合して前駆体を製造し、その前駆体を焼成することにより生成される。そこで、本願発明者らは、この手法に従って、実験設備でCe0.9Gd0.1O1.95を製造した。具体的には、まず、反応物として硝酸セリウムと硝酸ガドリニウムとを含有する原料溶液に炭酸アンモニウムを添加してCe0.9Gd0.1O1.95の前駆体(炭酸塩)を製造した。次に、大気圧下でその前駆体が分散されたスラリーを80℃3時間加熱処理してろ過後、700℃で5時間仮焼して100gのCe0.9Gd0.1O1.95を得た。そして、この生成物の二次粒子の粒径を測定するために、粒度分布を測定した。図6に、その測定結果を示す。図6に示すように、この粒度分布には、0.2μm付近に1本の鋭いピークが表れているのみである。そのため、この方法で金属酸化物を製造すれば、分散性に優れた金属酸化物が得られることがわかった。そこで、本願発明者らは、この方法に従って金属酸化物の量産を試みた。
そして、実験設備における製造条件と全く同一の製造条件で65kgのCe0.9Gd0.1O1.95を量産し、生成物の粒度分布を測定した。すると、図7に示すように、その生成物には、粒径が0.2μm程度の粒子以外に、粒径が10μm程度の粒子(以下、「相対的に大きい凝集体」と記す。)が含まれていることがわかった。そこで、本願発明者らは、ふるいによる分別や相対的に大きい凝集体の粉砕などを試みた。
しかし、相対的に大きい凝集体の粒径は10μm程度にすぎないため、量産された金属酸化物をふるいにかけても、粒径が0.2μm程度の粒子と相対的に大きい凝集体とを分別することはできない。また、相対的に大きい凝集体を粉砕して粒径が0.2μm程度の粒子を得ることも容易ではない。そのため、相対的に大きい凝集体を製造することなく粒径が0.2μmの粒子のみを製造する製造方法を見つけださねばならないことがわかった。
この製造方法を見つけだすにあたり、本願発明者らは、相対的に大きい凝集体が得られてしまう理由を検討し、不純物が存在するために大きな粒子の凝集が発生してしまうのではないかという結論に至った。そして、不純物としては、原料溶液を調整するさいに用いられる金属塩類または溶媒に含まれるもののほか、前駆体を製造する工程で使用される沈殿剤やpH緩衝溶液、分散剤などに含有されている陰イオン(例えば、ハロゲン化物イオン・硫酸イオン・硝酸イオン・炭酸イオンなど)と、セリウムイオンなど以外の陽イオン(ナトリウムイオン・アンモニウムイオンなど)とが考えられる。
そして、本願発明者らは、前駆体の洗浄を工夫することにより、実験設備において得られた金属酸化物と同様に相対的に大きい凝集体が著しく少ない金属酸化物を製造する方法を完成させるに至った。また、洗浄方法に付け加えて、焼成条件を検討することにより、相対的に大きい凝集体が著しく少なく、且つ、比表面積の大きな金属酸化物、すなわち、一次粒子径の小さな金属酸化物を製造する方法を完成させるに至った。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態における金属酸化物の製造方法では、まず、金属イオンを含む原料溶液と沈殿剤とを混合して、前駆体を製造する。金属イオンを含有する原料溶液は、通常、金属塩を酸水溶液に溶解して調整される。例えば、金属塩としては、硫酸塩・硝酸塩・炭酸塩・塩化物・フッ化物等が挙げられ、酸としては、硫酸・硝酸・塩酸・フッ酸等が挙げられる。次に、前駆体が分散されたスラリーを、大気圧下にて40℃以上100℃以下で0.5時間以上24時間以下で加熱処理する。この加熱処理は、50℃以上90℃以下で0.5時間以上24時間以下で行うことが好ましく、60℃以上90℃以下で0.5時間以上24時間以下で行うことがさらに好ましい。そして、その後、ろ過する。なお、前駆体を製造する方法は、加熱処理工程を含む共沈法に限定されることなく、加熱処理工程を含まない共沈法であってもよい。しかし、加熱処理工程を含む共沈法を用いて前駆体を製造すれば、比表面積の大きな金属酸化物、すなわち1次粒子径の小さな金属酸化物を製造できるため、好ましい。
次に、原料溶液に含まれる陰イオンの濃度が前駆体において1wt%以下となるまで前駆体を洗浄する。このとき、この陰イオンの濃度は、イオン交換クロマトグラフィーにより測定され、好ましくは0.5wt%以下であり、さらに好ましくは0.1wt%以下である。陰イオンの濃度が0.1wt%以下となるまで前駆体を洗浄すると、多くの量の純水を用いて洗浄することとなるが、非常に分散性に優れた金属酸化物を量産できる。そのため、この金属酸化物をSOFCの電解質材料または研磨剤として用いる場合には、この洗浄条件は優れている。この洗浄工程により、前駆体には不純物となる陰イオン及び陽イオンがほとんど存在しなくなるため、一次粒子の凝集を抑制できる。よって、相対的に大きい凝集体の生成を抑制でき、その結果、分散性に優れた金属酸化物を量産できる。
なお、本願においては、イオン交換クロマトグラフィーにより陰イオンの量を測定しているが、前駆体中には測定された陰イオンの電荷とつり合う量の陽イオンが存在する。つまり、イオン交換クロマトグラフィーにより陰イオンの量を測定することにより、前駆体中の陰イオンと陽イオンとの総量を示す指標としている。前駆体における陰イオン濃度を1wt%以下とするには、例えばデカンテーションにより洗浄を行う場合は、使用する純水の量やデカンテーションの回数を変化させて、前駆体における陰イオン濃度を調べるという方法により、特定の条件下で達成できることを見いだした。また、フィルタープレスにより洗浄を行う場合は、使用する純水の量を変化させて、前駆体における陰イオン濃度を調べるという方法により、特定の条件下で達成できることを見いだした。どの洗浄方法を用いるかは、前駆体の性状と求める作業効率とによる。本願の実施例にあるような、一次粒子が数十nmから数百nm程度と、微細で、且つ凝集の少ない粒子を得ようとする場合には、デカンテーションでは前駆体が沈降するのに時間がかかり過ぎるため、フィルタープレスを用いて行われることが好ましい。
続いて、得られた前駆体を焼成して金属酸化物とする焼成工程を行う。焼成条件は、前駆体が分解・酸化されて金属酸化物となる条件であれば特に限定されない。通常、200℃以上1000℃以下で、0.5時間以上24時間以下行う。また、2段階の焼成工程を行うことができる。第1焼成工程では、前駆体を、200℃以上500℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保つ。好ましくは、前駆体を、200℃以上450℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保ち、さらに好ましくは、200℃以上400℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保つ。この工程により、前駆体の脱水反応、分解・酸化反応が進行して前駆体が酸化物となる。なお、この工程で全ての前駆体が酸化されなくてもよい。この工程において酸化されなかった前駆体は、第2焼成工程で酸化される。
第2焼成工程では、前駆体を、500℃以上1000℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保つ。好ましくは、600℃以上900℃以下の温度で0.5時間以上24時間以下保つ。この工程により、前駆体が完全に酸化される。
ここで、第1及び第2焼成工程では、焼成温度が低くなれば焼成時間は長くなると推測できる。具体的には、第1焼成工程において、200℃で焼成する場合には、500℃で焼成する場合に比べて焼成時間を長くしなければ、大部分の前駆体を脱水させたり分解・酸化させたりすることは難しい。また、第2焼成工程において、600℃で焼成する場合には、1000℃で焼成する場合に比べて焼成時間を長くしなければ、前駆体を完全に酸化させることは難しい。
以上より、洗浄工程を行うことにより、分散性に優れた金属酸化物を量産できる。また、第1焼成工程を行うことにより、前駆体の脱水反応及び分解・酸化反応が起こる。理由は定かでないが、第1焼成工程により一次粒子の成長が抑制され、第2焼成工程を行った後も比表面積が大きいものとなる。第2焼成工程を行うことにより、前駆体が完全に金属酸化物となる。そのため、第2焼成工程を行った金属酸化物を用いて焼結体を得る場合、焼結の際、前駆体が分解して、ガスが発生することがないため、割れが生じにくい。
また、原料溶液には、セリウムイオンが含まれていることが好ましく、さらに、原料溶液には、ガドリニウムイオンやサマリウムイオンが含まれていることが好ましい。なお、ガドリニウムイオンやサマリウムイオンに限定されることはなく、セリウムイオンとホタル石型結晶構造を形成する金属イオンが含まれていることが好ましく、セリウムイオンとペロブスカイト型結晶構造を形成する金属イオンが含まれていてもよい。これにより、セリウム等を含む金属酸化物を製造することができる。また、金属酸化物の比表面積を大きくするためには、ジルコニウムイオンが含まれていることが好ましい。さらには、分散性を向上させるという目的を逸脱しない限りでは、上述の金属イオン以外の金属イオンが含まれていてもよい。
本実施形態における金属酸化物は、上述の製造方法により製造された金属酸化物であるため、分散性に優れている、または、分散性に優れ、且つ、大きな比表面積を有している。そのため、SOFCの材料や研磨剤等として用いることができる。また、本実施形態における焼結体は、上記の製造方法により製造された金属酸化物を焼結して得られるため、焼結性に優れている。そのため、特に、SOFCの電解質材料として用いることができる。なお、焼結は、通常、1000℃以上1300℃以下で1時間以上24時間以下行われる。
本実施形態における金属酸化物の分散性は、粒度分布や比表面積を測定することにより推測できる。粒度分布を測定すると、二次粒子の粒度分布がわかるため、相対的に大きい凝集体が存在しているか否かがわかる。なお、粒度分布は、標準ふるいを用いる方法、顕微鏡法などの公知の方法を用いて測定可能であるが、後述の実施例では、レーザ回折散乱法により測定する。レーザ回折散乱法により粒度分布を測定する場合には、粒子に照射されたレーザ光がその粒子で散乱され、各粒子による散乱光の強度分布から粒度分布を求めることができる。
比表面積を測定すると、以下に示す式(1)を用いて金属酸化物の一次粒子の粒径(BET法換算粒子径:DBET)を概算できる。
DBET(nm)=6000/(S×ρ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
ここで、式(1)において、Sは、比表面積(m2/g)であり、ρは、密度(g/cm3)である。そして、密度ρは、X線回折の結果より求めることができ、後述の実施例で示すCe0.9Gd0.1O1.95の密度ρは7.224g/cm3である。
ここで、式(1)において、Sは、比表面積(m2/g)であり、ρは、密度(g/cm3)である。そして、密度ρは、X線回折の結果より求めることができ、後述の実施例で示すCe0.9Gd0.1O1.95の密度ρは7.224g/cm3である。
一次粒子の粒径は小さい方が好ましく、式(1)より比表面積と一次粒子の粒径とは反比例関係にあるため、比表面積が大きい方が好ましい。なお、比表面積は、例えば、BET法により測定できる。
<実施例1>
実施例1では、前駆体が分散されたスラリーを加熱処理する工程を含む共沈法を用いて、Ce0.9Gd0.1O1.95の前駆体(炭酸塩)を製造し、その前駆体に対する残留陰イオンの除去方法を検討した。
−実験−
a)前駆体の製造方法
まず、硝酸セリウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、セリウムを2.5mol/L含有)と、硝酸ガドリニウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、ガドリニウムを2.0mol/L含有)とを、Ce:Gd=90:10(mol比)となるように混合し原料用混合溶液を調整した。Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する原料用混合溶液を純水で希釈して、セリウムとガドリニウムとを合わせて0.3mol/L原料溶液を調整した。
実施例1では、前駆体が分散されたスラリーを加熱処理する工程を含む共沈法を用いて、Ce0.9Gd0.1O1.95の前駆体(炭酸塩)を製造し、その前駆体に対する残留陰イオンの除去方法を検討した。
−実験−
a)前駆体の製造方法
まず、硝酸セリウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、セリウムを2.5mol/L含有)と、硝酸ガドリニウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、ガドリニウムを2.0mol/L含有)とを、Ce:Gd=90:10(mol比)となるように混合し原料用混合溶液を調整した。Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する原料用混合溶液を純水で希釈して、セリウムとガドリニウムとを合わせて0.3mol/L原料溶液を調整した。
次に、原料溶液に、75g/L炭酸水素アンモニウム水溶液1200Lを攪拌しながら25℃で混合し、セリウムとガドリニウムとの複合塩沈殿物(前駆体)スラリーを得た。大気圧下、80℃、3時間の熱処理を行い、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する前駆体が分散されたスラリーを得た。
b)洗浄方法
濾過面積が30m2のフィルタープレスを用いて、洗浄条件を変えて前駆体を洗浄した。具体的には、フィルタープレスによる洗浄を行わない場合と、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して100gの前駆体につき純水0.25L、0.5L、1L、5Lを用いて洗浄した場合とを行った。そして、乾燥後、イオン交換クロマトグラフィ(IC-7000D型番、横河アナリティカルシステムズ社製)を用いて、洗浄後の前駆体における残留硝酸イオン濃度を測定した。
−結果と考察−
図1に残留硝酸イオン濃度の測定結果を示す。
b)洗浄方法
濾過面積が30m2のフィルタープレスを用いて、洗浄条件を変えて前駆体を洗浄した。具体的には、フィルタープレスによる洗浄を行わない場合と、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して100gの前駆体につき純水0.25L、0.5L、1L、5Lを用いて洗浄した場合とを行った。そして、乾燥後、イオン交換クロマトグラフィ(IC-7000D型番、横河アナリティカルシステムズ社製)を用いて、洗浄後の前駆体における残留硝酸イオン濃度を測定した。
−結果と考察−
図1に残留硝酸イオン濃度の測定結果を示す。
図1に示すように、硝酸イオン濃度は、フィルタープレスによる洗浄を行わなければ1.5wt%であった。また、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して100gの前駆体につき0.25L、0.5L、1L、5Lを用いて洗浄すれば、各々、1.05wt%、0.68wt%、0.06wt%、0.02wt%であることがわかった。そのため、洗浄に用いる純水の量を増加させることにより、硝酸イオンなどの残留陰イオンの濃度を低くすることができた。また、残留硝酸イオン濃度が1.05wt%以上の前駆体を焼成して得られる金属酸化物については、相対的に大きい凝集体が観測されたことを確認した。一方、残留硝酸イオン濃度が1.05wt%より低い前駆体を焼成して得られる金属酸化物については、相対的に大きい凝集体が観測されないことを確認した。以上より、残留硝酸イオンの濃度が1.05wt%よりも低くなるまで洗浄することにより、その前駆体を焼成して得られる金属酸化物においてはっっっっっっっs相対的に大きい凝集体の形成を阻止することができた。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様にして得られた残留硝酸イオン濃度0.02wt%の、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する前駆体を用いて、焼成条件を検討した。
−実験−
台車式焼成炉を用いて、以下に記載する方法に従ってその前駆体を焼成し、金属酸化物を得た。そして、得られた金属酸化物に対して、粒度分布を測定するとともに比表面積を測定した。
a)焼成工程
まず、前駆体を4等分し、第1、第2、第3及び第4の前駆体とした。
<実施例2>
実施例2では、実施例1と同様にして得られた残留硝酸イオン濃度0.02wt%の、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する前駆体を用いて、焼成条件を検討した。
−実験−
台車式焼成炉を用いて、以下に記載する方法に従ってその前駆体を焼成し、金属酸化物を得た。そして、得られた金属酸化物に対して、粒度分布を測定するとともに比表面積を測定した。
a)焼成工程
まず、前駆体を4等分し、第1、第2、第3及び第4の前駆体とした。
次に、第1の前駆体を、15時間かけて200℃にまで昇温させて200℃で10時間保ち、その後、10時間かけて700℃にまで昇温させて700℃で10時間保った。第2の前駆体を、15時間かけて300℃にまで昇温させて300℃で10時間保ち、その後、10時間かけて700℃にまで昇温させて700℃で10時間保った。第3の前駆体を、15時間かけて500℃にまで昇温させて500℃で10時間保ち、その後、10時間かけて700℃にまで温度を上げて700℃で10時間保った。第4の前駆体については、1段階焼成を行った。詳細には、第4の前駆体を、10時間かけて700℃にまで昇温させて700℃で10時間保った。
b)粒度分布の測定方法
上記焼成工程で得られた金属酸化物を水中で3分間超音波分散させた。その後、レーザ回折装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて粒度分布を測定した。
c)比表面積の測定方法
上記焼成工程で得られた金属酸化物の比表面積を、比表面積測定装置(Micro Meritics製、Flow sorb 2-2300)を用いてN2ガスによる1点BET法により測定した。その測定値から、BET法換算粒子径を概算した。
−結果と考察−
図2に粒度分布の測定結果を示す。なお、図2(a)が第1の前駆体の測定結果、図2(b)が第2の前駆体の測定結果、図2(c)が第3の前駆体の測定結果である。また、図3(a)に比表面積の測定結果を示し、図3(b)にBET法換算粒子径の概算結果を示す。なお、図3(a)及び(b)の横軸は、第1焼成工程における焼成温度を示す。また、図3(a)及び(b)の右側のポイントは、1段階焼成の結果を示す。
b)粒度分布の測定方法
上記焼成工程で得られた金属酸化物を水中で3分間超音波分散させた。その後、レーザ回折装置(堀場製作所製、LA-920)を用いて粒度分布を測定した。
c)比表面積の測定方法
上記焼成工程で得られた金属酸化物の比表面積を、比表面積測定装置(Micro Meritics製、Flow sorb 2-2300)を用いてN2ガスによる1点BET法により測定した。その測定値から、BET法換算粒子径を概算した。
−結果と考察−
図2に粒度分布の測定結果を示す。なお、図2(a)が第1の前駆体の測定結果、図2(b)が第2の前駆体の測定結果、図2(c)が第3の前駆体の測定結果である。また、図3(a)に比表面積の測定結果を示し、図3(b)にBET法換算粒子径の概算結果を示す。なお、図3(a)及び(b)の横軸は、第1焼成工程における焼成温度を示す。また、図3(a)及び(b)の右側のポイントは、1段階焼成の結果を示す。
図2に示すように、200℃で焼成した場合も、300℃で焼成した場合も、500℃で焼成した場合も、相対的に大きい凝集体は観測されなかった。なお、1段階焼成を行った場合であっても、相対的に大きい凝集体が観測されなかったことを確認している。従って、いずれの焼成条件で焼成させた場合であっても、分散性に優れた金属酸化物を得ることができた。
図3(a)に示すように、比表面積は、1段階焼成では最小となり、300℃で焼成したときには最大となることがわかった。そのため、図3(b)に示すように、一次粒子径は、1段階焼成では最大となり、300℃で焼成したときには最小となった。よって、比表面積を大きくするためには、2段階焼成を行い、且つ、第1焼成工程での焼成温度が300℃であることが好ましい。
ここで、前駆体のTG−DTAの測定結果を図4に示す。図4に示すように、300℃で質量減少が生じていることがわかる。この質量減少は、前駆体由来の水、炭酸ガスなどが前駆体から脱離されるために生じる、と考えている。そのため、300℃で10時間焼成することにより、前駆体から炭酸ガスなどが脱離されて、その結果、一次粒子の成長が抑制され、結果として、比表面積が大きくなると考えられる。
<実施例3>
実施例3では、上記実施例2に記載の第1焼成工程における昇温速度を最適化した。
−実験−
まず、実施例1と同様にして得られた残留硝酸イオン濃度0.02wt%の、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する前駆体を製造した。
<実施例3>
実施例3では、上記実施例2に記載の第1焼成工程における昇温速度を最適化した。
−実験−
まず、実施例1と同様にして得られた残留硝酸イオン濃度0.02wt%の、Ce0.9Gd0.1O1.95に換算して65kgに相当する前駆体を製造した。
次に、第1焼成工程を行った。本実施例では、前駆体を3つに分け、第1の前駆体を、常温から300℃まで1時間で昇温後300℃で10時間保った。第2の前駆体を、常温から300℃まで15時間で昇温後300℃で10時間保った。第3の前駆体を、常温から300℃まで30時間で昇温後300℃で10時間保った。
続いて、上記実施例2に記載の第2焼成工程を行って金属酸化物を生成後、比表面積を測定し、その測定値からBET法換算粒子径を概算した。
−結果と考察−
図4に結果を示す。なお、図4の左端のポイントは、1時間で昇温させた場合の結果である。
−結果と考察−
図4に結果を示す。なお、図4の左端のポイントは、1時間で昇温させた場合の結果である。
図4に示すように、昇温に要する時間が短い方が、一次粒子径が小さくなることがわかった。
<実施例4>
実施例4では、表1に示すCe1-xGdxO2-δ及び表2に示すCe1-xSmxO2-δを製造し、各金属酸化物について比表面積の測定及び粒度分布の測定を行った。
<実施例4>
実施例4では、表1に示すCe1-xGdxO2-δ及び表2に示すCe1-xSmxO2-δを製造し、各金属酸化物について比表面積の測定及び粒度分布の測定を行った。
−実験−
まず、実施例1に記載の方法と実質的に同一の方法を用いて、表1に示す金属酸化物の前駆体を製造した。また、硝酸ガドリニウム水溶液の代わりに硝酸サマリウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、サマリウムを2.0mol/L含有)を用いて、表2に示す金属酸化物の前駆体を製造した。
まず、実施例1に記載の方法と実質的に同一の方法を用いて、表1に示す金属酸化物の前駆体を製造した。また、硝酸ガドリニウム水溶液の代わりに硝酸サマリウム水溶液(Rhodia Electronics and Catalysis社製、サマリウムを2.0mol/L含有)を用いて、表2に示す金属酸化物の前駆体を製造した。
次に、フィルタープレスを用いて、金属酸化物に換算して100gの前駆体につき、5Lの純水を用いて洗浄した。
その後、10時間かけて700℃まで昇温後、700℃で10時間保った。得られた酸化物は、それぞれ65kgであった。
それから、上記実施例2に記載の粒度分布及び比表面積の測定方法に従って、粒度分布及び比表面積を測定した。
−結果と考察−
結果を表1及び2に示す。
−結果と考察−
結果を表1及び2に示す。
表1及び2に示すように、いずれの組成の金属酸化物であっても、相対的に大きい凝集体が生成されていないことがわかった。これにより、フィルタープレスによる洗浄を行えば、前駆体の組成に依存することなく分散性に優れた金属酸化物を製造することができる。
また、表1及び表2に示すように、いずれの組成の金属酸化物であっても、その比表面積は、Ce1-xGdxO1.95の比表面積の値と同程度、または、その値よりも大きいことがわかった。なお、本実施例においては、700℃のみで焼成しているが、上記実施例2に記載のように300℃で焼成後700℃で焼成すると、比表面積は1.3倍程度になると予想される。
また、上記実施例1から4における複合酸化物を合成する際には前駆体が分散されたスラリーを加熱処理する工程を含む共沈法を用いて合成したが、これに限定されることはない。なお、比表面積を大きくするという目的を達成するためには、上記実施例1から4に記載したように、前駆体が分散されたスラリーを加熱処理する工程を含む共沈法を用いて合成することが好ましい。
以上説明したように、本発明は、金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体について有用である。特に、SOFCの電解質材料や研磨剤等として利用される場合に有用である。
Claims (9)
- 金属イオンを含有する原料溶液から金属酸化物を製造する金属酸化物の製造方法であって、
前記原料溶液と沈殿剤とを混合して、前駆体を製造する工程と、
イオン交換クロマトグラフィーを用いて測定したときに、前記前駆体における陰イオン濃度が1wt%以下となるまで、該前駆体を洗浄する洗浄工程と、
前記前駆体を焼成して、前記金属酸化物を得る焼成工程と
を備えている金属酸化物の製造方法。 - 請求項1に記載の金属酸化物の製造方法において、
前記焼成工程は、
焼成温度が200℃以上500℃以下であり、焼成時間が0.5時間以上24時間以下である第 1焼成工程と、
焼成温度が500℃以上1000℃以下であり、焼成時間が0.5時間以上24時間以下である第 2焼成工程と
を備えている金属酸化物の製造方法。 - 請求項2に記載の金属酸化物の製造方法において、
前記第2焼成工程における前記焼成温度が、600℃以上900℃以下である金属酸化物の製造方法。 - 請求項1から3のいずれか一つに記載の金属酸化物の製造方法において、
前記洗浄工程では、フィルタープレスを用いて前記前駆体を洗浄する金属酸化物の製造方法。 - 請求項1から4のいずれか一つに記載の金属酸化物の製造方法において、
さらに、
前記前駆体が分散されたスラリーを、大気圧下にて40℃以上100℃以下で0.5時間以上24時間以下で加熱処理する工程を備えている金属酸化物の製造方法 - 請求項1から5のいずれか一つに記載の金属酸化物の製造方法において、
前記原料溶液には、セリウムイオンが含有されている金属酸化物の製造方法。 - 請求項6に記載の金属酸化物の製造方法において、
前記原料溶液には、ガドリニウムイオンが含有されている金属酸化物の製造方法。 - 請求項1から7のいずれか一つに記載の金属酸化物の製造方法により得られた金属酸化物。
- 請求項1から7のいずれか一つに記載の金属酸化物の製造方法により得られた金属酸化物を焼結して得られた焼結体。
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---|---|---|---|
JP2005079781A JP2006256936A (ja) | 2005-03-18 | 2005-03-18 | 金属酸化物の製造方法、金属酸化物及び焼結体 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014195787A (ja) * | 2013-03-29 | 2014-10-16 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 無機イオン吸着体、多孔性成形体及びそれらの製造方法 |
-
2005
- 2005-03-18 JP JP2005079781A patent/JP2006256936A/ja not_active Withdrawn
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