JP2006256876A - ゼオライトの成形体およびゼオライト成形体の製造方法 - Google Patents

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泰治 松本
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栄 細井
Takashi Yamamura
隆 山村
Toshio Mitsuboshi
敏雄 三星
Yoshiaki Goto
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Abstract

【課題】 アロフェンに水酸化ナトリウム水溶液を加えて水熱処理をすることで生成するイオン交換性能、分子篩い特性、吸着特性等に優れたゼオライトAについての成形体を容易に生成する。
【解決手段】 アロフェンを一軸加圧してアロフェン成形体を形成し、該アロフェン成形体に水酸化ナトリウムを加えて室温で所定時間のあいだ熟成処理をした後、80℃の温度で水熱処理をすることで、成形体の内部まで良好にゼオライトAに変化したゼオライトAの成形体を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、イオン交換特性、分子篩い特性、固体酸性特性、吸着特性等の各種の特性を有した多機能材料であるゼオライトの成形体およびゼオライト成形体の製造方法の技術分野に属するものである。
一般に、ゼオライトは含水アルミノケイ酸塩であって、ゼオライトの構造の分類としては現在のところ約140種類くらいが知られているが、その一例であるゼオライトA(Na(AlO(SiO・4.5HO)は、天然には存在しない構造(LTA型)を有し、交換性陽イオンであるNa量が多いため、イオン交換容量が約5.5meq/gとゼオライトの中でも最も大きいという特徴を有している。また、ゼオライトAは交換性陽イオンの種類が変わることで、例えばK型では0.3nm、Na型では0.4nm、Ca型では0.5nmとミクロ孔の大きさが変化するという特徴も有しており、このためゼオライトAは0.3〜0.5nmの分子ふるいとして多用されている。
ゼオライトAの合成方法は数多く報告されており、なかには数百μmの結晶も得られているが、一般には数μmの結晶粒子からなる粉体として合成される。粉体のゼオライトAはその高いイオン交換性を利用した洗剤用ビルダー等に応用分野が制限され、ゼオライトAを分子ふるいや吸着材として利用するにあたっては成形が必要となる。その成形体の形状としては、ゼオライトAを分子ふるいとして利用する場合は緻密な薄膜やフィルム状が適しており、その作製方法が近年盛んに研究されている。一方、吸着材への応用ではマクロ孔をもつビーズ状あるいは顆粒状の多孔質成形体が適している。
現在、分子ふるいや吸着材として用いられているゼオライトAの成形方法としては主に次の2種類が試みられている。
(1)アルミナ多孔体などの基板上にゼオライトAを析出させる。
(2)ゼオライトAに可塑性粘土鉱物をバインダーとして加え、成形後ゼオライトAが分解しない温度で焼結する。
前記(1)の方法は、薄膜やフィルムの作製に適しているが、固体成形体の作製には適しない。また(2)の方法は、固体成形体の作製が可能であるが、可塑性を発現させるため含水状態で成形することから、焼結前に乾燥が必要であるうえ、バインダーを加えるため、成形体中のゼオライト含有量が減少する欠点がある。
これに対し、アロフェンはAl−SiO−HO系鉱物であり、X線回折において明瞭な回折線を示さない非晶質様物質であることから、反応性が良く、NaOH等のアルカリ金属の水溶液中で加熱する(水熱処理する)ことによって容易にゼオライトAへ変換することが知られている(例えば特許文献1〜3)。
特公昭49−17960号 特開昭53−115700号公報 特開2000−143234号公報
ところが、前記従来のものは、何れも粉末のアロフェンをアルカリ金属水溶液で処理することで粉末のゼオライトを合成するものであって、ゼオライトの成形体を得るものではなく、ここに本発明の解決すべき課題がある。
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、アロフェンを成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理することで生成されたものであることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項2の発明は、請求項1において、水熱処理をする前処理として、アルカリ性の水溶液をアロフェン成形体に加えて熟成する熟成処理が施されていることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項3の発明は、アロフェンとゼオライトとの混合体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理して生成されるものであることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一つにおいて、成形体は内部までゼオライトに変換されていることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトAであることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項6の発明は、請求項1乃至4の何れか一つにおいて、成形体はリンデFゼオライトであることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトと金属酸化物との複合体であることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項8の発明は、請求項7において、金属酸化物は酸化チタンであることを特徴とするゼオライトの成形体である。
請求項9の発明は、アロフェン粉体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理することで生成することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項10の発明は、請求項9において、水熱処理をする前処理として、アルカリ性の水溶液をアロフェン成形体に加えて熟成する熟成処理を施していることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項11の発明は、アロフェンとゼオライトとの混合体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理して生成することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項12の発明は、請求項9乃至11の何れか一つにおいて、アロフェン成形体の水熱処理の時間は、生成したゼオライトが水和ソーダライトに変換する前の安定的に存在しているまでであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項13の発明は、請求項9乃至12の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトAであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項14の発明は、請求項9乃至12の何れか一つにおいて、成形体はリンデFゼオライトであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項15の発明は、請求項9乃至14の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトと金属酸化物との複合体であることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項16の発明は、請求項15において、金属酸化物は酸化チタンであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法である。
請求項1または9の発明とすることにより、分子ふるいや吸着材として用いるのに適したゼオライトの成形体を提供できる。
請求項2または10の発明とすることにより、成形体内部まで確実にゼオライトに変換した成形体を提供できる。
請求項3または11の発明とすることにより、短時間の反応で、内部まで確実にゼオライトに変換した成形体を簡単に製造することができる。
請求項4の発明とすることで、マクロ孔とミクロ孔とを備えていて分子ふるいや吸着剤として好適なゼオライト成形体を提供できる。
請求項5または13の発明とすることにより、ゼオライトAの成形体を製造することができる。
請求項6または14の発明とすることにより、リンデFゼオライトの成形体を製造することができる。
請求項7または15とすることにより、ゼオライトと金属酸化物との複合成形体を製造することができる。
請求項8または16の発明とすることにより、光触媒機能がある酸化チタンとゼオライトとの複合成形体を製造することができる。
請求項12の発明とすることにより、ゼオライトが水和ソーダライトにまで変換して吸着性能等の特性が低下してしまうのを回避できることになる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明を実施するにあたり、アロフェンは国内外から天然に産するものを採用することができる。また成形されるゼオライト成形体としては、原料をアロフェンとするものであればよく、アルカリ水溶液を水酸化リチウムとした場合にはゼオライトLi−A(BW)やゼオライトLi−EDIの成形体を得ることができ、水酸化ナトリウムとした場合にはゼオライトAの成形体を得ることができ、水酸化カリウムとした場合にはリンデFゼオライト(ゼオライトF)、ゼオライトK−GあるいはリンデQゼオライト(ゼオライトQ)の成形体を得ることができ、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの混合液とした場合にはゼオライトXを得ることができ、水酸化バリウムとした場合にはゼオライトBa−G、ゼオライトBa−TあるいはゼオライトBa−Nの成形体を得ることができる。アルカリ金属水酸化物の水溶液の濃度であるが、これは以下に示す実験から濃度が高いほどゼオライトの生成速度が速くなる一方で、結晶粒径が小さいものとなることが確認される。
また水熱処理する場合の反応温度であるが、これについても以下に示す実験から反応温度が高いほどゼオライトの反応速度が速くなり、かつ結晶粒径も大きくなることが確認される。
また前処理として行う熟成処理は、アルカリ金属水溶液をアロフェン成形体の内部まで浸透させることを目的とするものであるため、該熟成処理中にアロフェンがゼオライトに変換することをできるだけ抑える必要があるが、室温では殆んどゼオライトに変換しないことが確認されていることから、室温での処理で充分である。
そして本発明においては、アルカリ金属水溶液による熟成処理、そして濃度や反応温度をコントロールすることで、ゼオライトの結晶粒径を調整することができ、しかも生成したゼオライト成形体のマクロ孔は、ゼオライトの結晶粒径の増大に基づいて直線的に比例して増大しており、またゼオライト成形体の細孔径分布範囲が狭くピーク的なものであることから、ゼオライト成形体について、要求される特性に対応したものを容易に提供することができる。
さらにまた、アロフェンとゼオライトとの混合物から成形体を形成し、該複合成形体をアルカリ金属の水溶液で水熱処理することによりゼオライトを製造する場合、アロフェン自体から成形体を形成し、これを水熱処理する場合のように、表面部分と中心部分とのゼオライトへの反応速度が大きく相違することにより、表面部分が水和ソーダライトに変化することの回避を、わざわざ熟成処理をするような必要がなく、しかも高純度のゼオライト成形体を短時間の水熱処理だけで簡単に製造することができる。この場合、ゼオライトのアロフェンに対する混合率は、任意に設定することができるが、アロフェンの量が多くなるほどアロフェン単体で製造する側に近づき、少なくなるほど反応時間を少なし、かつ高純度のゼオライト成形体とすることができ、これら混合率の割合は、要求されるゼオライト成形体の純度等によって任意に設定できるものであることはいうまでもない。
一方、本発明は、ゼオライト単体の成形体の製造にとどまらず、金属酸化物との複合体としての成型体の製造もできることが確認された。金属酸化物として特にアナターゼ型の酸化チタン(TiO)は良好な光触媒作用があるものとして知られており、有機物の分解機能や抗菌機能等の各種の機能があることが知られている。酸化チタンにはアナターゼ型、ルチル型、そしてブルッカイト型の3つの型の多形が存在し、そのうちアナターゼ型が光触媒活性が高いことが知られている。ところがアナターゼ型は、高温でルチル型に相転移するため、焼結が不可能であり、そこでアナターゼ型を光触媒として用いるには、粉末試料を塗布したり、ゾル−ゲル法により薄膜化して用いている。しかしながらこれらの方法は、表層のみにアナターゼが存在するため、試料が剥落しやすいという問題がある。また、光触媒は表面に接触した物質のみが分解されるため、表面の汚れ付着防止等には効果があるが、環境中の汚染物質の除去には向いていない。
これに対し、アロフェン−アナターゼ成形体から直接結晶化法により得られたゼオライト−アナターゼ複合体からなる成形体は、ゼオライト成形体中にアナターゼが分散させ複合化したものであるため、マクロ孔、ミクロ孔に吸着された有害物質をアナターゼの光触媒機能により分解できる環境浄化材料として期待できる。
次に、本発明の実施例について以下に説明する。
<アロフェン成形体の製造>
アロフェンは、栃木県真岡市で産出したものを水ひ精製して試料として用いた。この試料についてX線回折測定したところ、わずかに石英が含まれていることが確認された(図3参照)。さらに試料の化学分析値を図1の表図に示すが、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)に対しては重量法で、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)に対しては原子吸光光度法で測定した。そしてこの化学分析値から酸化ケイ素/酸化アルミニウム(SiO/Al)比は1.73であることが確認された。このアロフエンを150μm以下の粉体とした後、0.5メガパスカル(MPa)の一軸加圧により図2に示すように直径5.8mm、高さ4.4mmの円柱状のアロフェン成形体に型形成した。
<粉体アロフェンからゼオライトAの生成の確認>
150μm以下の粉体アロフェンの1.5gに、濃度3mol・dm−3に調整した水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を10ml加え、80℃で所定時間の水熱処理を行った後、水洗し、乾燥した。その生成物のXRDパターンを図3に示す。合成時間が1.67時間で粉末のゼオライトAが生成し始め、4時間でその回折線強度は最大に達する。13時間以上でゼオライトAは水和ソーダライトに変換し始め、時間とともにその回折線強度は増大する。NaO−Al−HO系においてゼオライトAは準安定相であり、反応時間の増大とともにより安定な水和ソーダライトヘ変換することが知られているが、アロフェンを出発原料とした場合でも同様の変換過程が認められた。
図4にゼオライトAの生成過程の走査型電子顕微鏡(以下「SEM」という)(日本電子株式会社製、JSM−5410)像を示す。合成時間が1.5時間の試料は粉末X線回折法(以下「XRD」という)(株式会社マック・サイエンス製MXP−3A)では非晶質であるが約500nmのゼオライトAの球状晶が観察される。合成時間とともにその粒径は大きくなり、また形状が丸みを帯びた立方体へと変化する。ゼオライトAの回折線強度が最大に達する4時間ではゼオライトAに特有の立方体の形態を示し、粒径も最大で約2μmに成長している。10時間において水和ソーダライトの結晶が凝集した球状粒子が観察され、時間とともに水和ソーダライトの粒子の数が増加し、かつ粒径が大きく成長する。このことは、この反応系においては合成時間が4時間から10時間まではゼオライトAが安定的に存在することを示している。
<アロフェン成形体からゼオライトA成形体の合成−その1>
[実験例1]
前記型形成したアロフェン成形体の10個(約1.5g)に、濃度3mol・dm−3に調整した水酸化ナトリウム水溶液を10ml加え、80℃で所定時間の水熱処理を行った後、該成形体を水洗し、乾燥した。得られた成形体は、すべての処理時間において破壊あるいは崩壌することなく、図5に示すようにその形態を保持していた。
得られた成形体生成物についてXRDで同定した。ゼオライトAの定量は、(100)、(110)、(111)、(221)の各面の回折強度の和から検量線法により求めた。成形体については、1個の成形体の全量を粉砕した試料を用いてゼオライトAの含有量を求めた。標準試料は市販の粉末試料(東ソー株式会社製:A−4)を用い、アロフェンを希釈剤として混合し検量線を作製した。回折強度の測定は、ステップスキャン法を用い、ステップ幅0.02、測定時間5秒(sec)で行った。形態観察はSEMを用いて行った。
図6に、成形体と粉体とを所定時間水熱処理後のそれぞれのゼオライトAの生成曲線を示す。粉体ではゼオライトAの最大生成量が約80%であるが、これは試料として用いた原料アロフェンには、図1に示すようにゼオライトAの成分であるAl、SiO、NaO以外にFeが含まれ、また、図3に示すように原料アロフェンに含まれる石英は反応せずにそのまま生成物に含まれているため、アロフェンのすべてがゼオライトAに変換したとしても生成量は100%には達しないことによる。
成形体では合成時間が24時間までの範囲で生成量は約70%であり、粉体の場合の最大生成量に達していない。合成時間が10時間の成形体の表面部と中心部のSEM像(図7)を見ると、成形体の表面部はゼオライトAの立方体の結晶で覆われているが、わずかながら水和ソーダライトの生成が認められる。一方、中心部ではわずかにゼオライトAの球状結晶が観察されるのみである。この結果は表面部では10時間でゼオライトAの結晶化は完了し、水和ソーダライトヘの変換が始まっているが、中心部では結晶化の初期段階であることを示している。合成時間が増大することで、中心部もゼオライトAに変換するが、表面部ではゼオライトAの水和ソーダライトヘの変換が進むため、全体がゼオライトAに変換した成形体を得ることはできなかった。そのため、図6に示すように最大生成量が粉体の場合に比べて低くなった。このことはアロフェン成形体がマクロ孔をもつ多孔質であり、成形体内部への水酸化ナトリウム水溶液の浸透に時間を要するため、表面部と中心部とではゼオライト生成時間に差が生じたと考えられる。
<アロフェン成形体からゼオライトA成形体の合成−その2>
[実験例2]
前述したようにこの反応系では粉体ゼオライトAが安定に存在できる時間は10時間までであることから、ゼオライトA成形体を作製するためには10時間までに中心部までゼオライト化を完了させる必要がある。
そこで成形体の表面と中心部のゼオライト生成開始時間の差を減少させるべく、成形体の細孔内への水酸化ナトリウム水溶液の浸透を熟成処理により行った。具体的には成形体10個に濃度3mol・dm−3に調整した水酸化ナトリウム水溶液を10ml加えた後、25℃で15時間静置し、その後、80℃で水熱処理を行った。このときのゼオライトAの生成曲線を、粉体を同様に熟成処理した場合の結果と共に図8に示す。
この結果、熟成処理をした成形体は、粉体の場合と同様、ゼオライトAの最大生成量は約80%に違した。生成速度は粉体の方が速いが、熟成処理を行わない場合で認められた(図6参照)大きな差はなく、このことは熟成処理をしたものは成形体の表面部と内部とで生成速度に大きな差がないことを示唆している。
成形体断面のSEM観察より表面部と内部のゼオライトAの生成過程を調べた結果を図9に示す。図9に示した0mm、1.5mm、2.9mmは成形体の表面からの距離であり、2.9mmは成形体の中心部である。反応時間が1時間の成形体は0mm部分付近では大部分がゼオライトAの球状晶であり、その大きさは1μm以下である。この試料のXRDパターンは非晶質であったが、SEM観察から表面ではゼオライトAが結晶化していることが確認される。1.5mm及び2.9mm部分の成形体内部においては大部分がアロフェンであるが、わずかに球状晶が観察される。結晶の数は1.5mm部分よりも2.9mm部分の方が少なく、また結晶粒径も1.5mm部分では0.5μm以下であるのに対して、2.9mm部分では0.2μm以下と小さい。2時間では、0mm部分のゼオライトAは{100}面からなる約1μmの立方体に変化し、その形態及び粒径は10時間まで変化していない。1.5mm及び2.9mm部分では合成時間の増加とともに結晶の数が多くなるとともに、粒径も合成時間が3時間のものにおいては1.5mm及び2.9mm部分のどちらにおいても約1〜1.5μmに成長し、その結晶形態は{100}面と{110}面が明瞭な結晶形態に変化している。合成時間が10時間の試料においては、1.5mmと2.9mm部分ともに、すべてゼオライトAに変換していることが確認される。
SEM観察の結果から、熟成処理を行っても成形体内部に比べて表面部分の方がゼオライトAへの結晶化が速く、内部へ向かうほど結晶化速度は遅くなることが明らかとなった。しかしながら、熟成処理を行わない場合と比較すると、表面と中心部の結晶化速度の差が小さいため、表面部が水和ソーダライトに変換する前に中心部までゼオライト化することが確認された。
<ゼオライトA成形体の生成機構の推考>
アロフェンからのゼオライトAの生成は、NaOH水溶液にアロフェンが溶解し、Si、Al成分が縮合アルミノケイ酸イオンを形成した溶液からの結晶化であるが、成形体の表面と内部ではゼオライトAの生成過程が異なると考えられる。熟成処理及び水熱処理の誘導期間においてアロフェンが溶解し、そのA1、Si成分はゼオライトAの生成に関与する縮合アルミノケイ酸イオン(ゼオライトAにおいてはTO(T=Si、A1)の4員環と考えられている)を形成し、ゼオライトAの成分であるNaとその縮合アルミノケイ酸イオンが過飽和状態となる。成形体表面ではアロフェン自体が核の生成場となって核が発生し、付着するが、その面積が少ないため核の発生数は少ない。成形体の周囲の溶液(以下、外部溶液と表す)では水酸化ナトリウム水溶液が過剰に存在するため、Na濃度は結晶化過程において一定と見なすことができ、ゼオライトAの結晶生成に関しては、縮合アルミノケイ酸イオンの過飽和度のみを考えればよい。成形体の表面では、表面積に比べて外部溶液は多量に存在し、かつ、縮合アルミノケイ酸イオンの拡散が容易であることから結晶の成長速度が速く、図9に示すように1時間でほぼゼオライトAの球状晶が表面を覆いつくす。また、この結晶化初期段階においては過飽和度が高いため各結晶面の成長速度に差がなく球状晶となる。ゼオライトAの生成にともなって、縮合アルミノケイ酸イオンの過飽和度は減少し結晶成長速度に異方性が生じ、2時間では最も生成速度の遅い{100}面からなる立方体となる。すなわち、この結晶形態は成長形であると言える。外部溶液には過剰の水酸化ナトリウムが存在するが、成形体表面がゼオライトAで覆われるため、アロフェンの溶解によるAi、Siの供給がなくなり、2時間以上では過飽和状態でなくなるため結晶化は完了する。したがって、ゼオライトAが安定的に存在可能な10時間までは結晶相及び形態に変化はない。
これに対し、成形体内部では前記熟成過程において細孔内に水酸化ナトリウム水溶液が浸入し、アロフェンを溶解している。熟成終了時においては、外部溶液と内部溶液の溶存化学種の濃度は殆んど同じであると考えられる。
その後の水熱処理によって、成形体表面と同様にゼオライトAの核が発生するが、成形体表面に比べて成形体内部の細孔壁の表面積は非常に大きいため、大量の核が生成する。しかしながら、細孔内の表面積比べて、細孔内の容積、言い換えれば溶液量がきわめて少ないため縮合アルミノケイ酸イオンの過飽和度は核発生とともに急激に減少し、ほとんど結晶成長しない。そのため、l時間におけるSEM像に見られるように、観察可能な大きさに成長したゼオライトAの結晶が表面に比べて非常に少ない。細孔内では過剰の水酸化ナトリウムが細孔壁のアロフェンを溶解して、A1、Si成分を補給しつつ結晶成長が進むが、細孔内溶液量が少ないことから、溶解・析出過程が進むにつれて、Na濃度が減少し、アロフェンが溶解しなくなる。このような結晶化過程であるため、成形体内部では縮合アルミノケイ酸イオンとともにNaも含めた過飽和度を考慮する必要がある。Naの減少によって内部溶液と外部溶液の間に濃度勾配が生じ、外部溶液からNaの細孔内への進入が起こり、それによってさらにアロフェンの溶解が進み、ゼオライトAの結晶化も進行する。すなわち、内部ではゼオライトAの結晶成長が可能な一定の低い過飽和度が、アロフェンがすべて溶解するまで持続され、そのため結晶成長速度は表面と比較すると遅くなる。
内部においては{100}と{110}面からなる結晶形態を示しているが、その理由は次の二つが考えられる。一つは細孔内溶液の低い過飽和度の条件下においては{100}と{110}面の成長速度に大きな差が無いため成長形として両方の面が現れる。もう一つは、平衡形に近い形を取るためと考えられる。結晶の平衡形は熱平衡状態の体積一定下において現れる形であり、結晶の全表面エネルギーを最小する条件で決定され、ウルフの定理からゼオライトAの場合{110}面を主とする形態を示すと推定される。成形体内部においては生成曲線(図8)とSEM像(図9)から3時間までにほぼ結晶化しており、その後の結晶体積の増大はほとんどなく、また細孔内溶液の過飽和度も一定となり、みかけ上平衡状態に近くなることから、{110}面が発現しやすくなる。
成形体の形態を保ったままゼオライト化するためには、アロフェンのNaOHへの溶解によってその形態が崩壊することなく、ゼオライトAの結晶が生成する必要がある。アロフェンすなわちSiとAlの溶解量をマクロ孔内も含めて測定することは困難なため、熟成後の成形体質量変化によって溶解量を推定した。その結果、溶解量は5.1%とわずかであり、そのため成形体は水酸化ナトリウム水溶液中でその形態が保持される。アロフェン成形体の結合力は明らかではないが、アロフェン粒子同士の結合力で成形体を維持していると考えられ、合成の初期段階ではその結合力により成形体の構造を保持している。
ゼオライト化が進行するにしたがってアロフェンの量は減少しアロフェンの結合力では成形体を維持できなくなる。しかしながら、結晶化したゼオライトAは単なる結晶の凝集体ではなく、図6に示すように結晶同士が貫入し強固に結合することで成形体の構造が保持される。また、表面では2時間でゼオライトAの結晶化が完了していることから、成形体はゼオライトAの結晶が貫入により結合した、いわば殻に覆われた状態になることも形態の保持に寄与していると考えられる。
<水酸化ナトリウム水溶液の濃度について検討>
[実験例3]
次に、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を、1.53mol・dm−3、2.03mol・dm−3、3.03mol・dm−3、4.03mol・dm−3と異ならした以外は前記実験例2と同様にしてアロフェン成形体からゼオライトA成形体を生成した。図10にゼオライトAの生成曲線を示す。また、各濃度でゼオライトAの生成量が最大に達した成形体表面のSEM像を図11に示す。
これによると、ゼオライトAの生成速度は水酸化ナトリウム水溶液の濃度、すなわちOH濃度が高いほど速くなることが確認されるが、高濃度になるにしたがって生成速度の増加量は減少し、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が3.0mo1・dm−3と4.0mo1・dm−3ではほぼ同様の生成曲線となった。また、濃度が1.5、2.0、3.0mo1・dm−3では最大生成量が約80%に達しているが、濃度が4.0mo1・dm−3では74%と低い値を示した。
図11に示されるように水酸化ナトリウムの濃度が4.0mo1・dm−3のものから得られた成形体には多数の水和ソーダライトの結晶が観察され、しかもNaO−Al−SiO−HO系においてゼオライトAは準安定相であることから、水酸化ナトリウムの濃度が高いほど安定相である水和ソーダライトに変換しやすく、アロフェンのすべてがゼオライトAに変換する前に、水和ソーダライトヘの変換が始まるために最大生成量である80%に達しないものと推考される。
さらに、図11からゼオライトAの結晶粒径が、水酸化ナトリウムの濃度が大きくなるほど小さくなっていることが観測される。これらの平均結晶粒径を図12に示すが、これによると水酸化ナトリウムの濃度の上昇とともに粒径は減少するが、粒径は、水酸化ナトリウムの濃度が3.0mo1・dm−3のもので1.6μm、4.0mo1・dm−3のものでは1.2μmと差がほぼなくなっている。 ゼオライトの生成過程は核形成過程と結晶成長過程とからなるが、水酸化ナトリウムの濃度が異なってもゼオライトAの生成量はほぼ等しいことから、核の生成数が同じであれば、結晶成長速度が異なっても平均結晶粒径は等しくなるはずである。しかしながら、水酸化ナトリウムの濃度が低いほど結晶粒径が大きくなることは核の発生数が少ないことを示している。
核の発生数は前述した縮合アルミノケイ酸イオンの濃度が高いほど多くなると考えられる。溶液中のSiとAl濃度は必ずしもゼオライトAの生成に関する縮合アルミノケイ酸イオン濃度とは一致しないが、SiとAl濃度が高いほどこれらのイオン濃度も高いと考えられることから、熟成処理後の溶液中のSiとAl濃度を測定した。その結果、図13に示すように、実験3の範囲では水酸化ナトリウムの濃度の増大とともにSiとAlともに直線的に溶存量が増大していることが確認される。アロフェンからゼオライトAへの結晶化においてもOH濃度の変化に対しては核形成速度が支配的であると考えられ、核発生数が増大することで生成速度を増大させることになり、したがって、水酸化ナトリウムの濃度が増大すると核発生数が増大することになって結晶粒径は大きくならない。
ところで、図13に示すように水酸化ナトリウムの濃度が上昇するにつれ、Si、Al成分の溶存濃度が増大することになるにもかかわらず、水酸化ナトリウムの濃度が3.0mol・dm−3と4.0mol・dm−3で結晶粒径がほぼ同じになっているが、その理由は、水酸化ナトリウムの濃度が4.0mol・dm−3においては、結晶化の初期段階である1時間反応後の生成物においてもSEM観察において水和ソーダライトが確認されたことから、この溶液中では水和ソーダライトの核形成も同時に起こり、ゼオライトAの核の生成数が抑制されたためと推察される。
<反応温度の影響についての検討>
[実験例4]
次に、水酸化ナトリウムの濃度を2.0mo1・dm−3とした反応溶液(水溶液)を用い、反応温度を、100℃、80℃、60℃と変化させた以外は前記実験例2と同様にしてアロフェン成形体からゼオライトA成形体を生成した。図14にゼオライトAの生成曲線を示す。この結果から生成速度は反応温度が高いほど速いことがわかる。また、反応温度が100℃と60℃において、最大生成量に達した試料のゼオライトAのSEM観察結果を図15に示す。この結果と図11に示した水酸化ナトリウムの濃度が2.0mol・dm−3、反応温度が80℃のSEM観察結果から、ゼオライトAの結晶粒径は反応温度が高いほど大きくなるが、結晶粒径に及ぼす影響は水酸化ナトリウム水溶液の濃度に比べて小さいことがわかる。
また、100℃で得られた試料には水和ソーダライトも観察される。これはゼオライトAの水和ソーダライトヘの変換は反応温度が高いほど速いことを意味し、水酸化ナトリウムの濃度が2.0mol・dm−3、反応温度が100℃においては成形体内部までゼオライト化する前に表面において生成したゼオライトAが水和ソーダライトヘ変換したためである。反応温度にかかわらずゼオライトAの生成量はほぼ等しく、かつ反応温度が高いほど結晶粒径が大きいことは核の発生数が少ないことを示している。また、反応温度が高いほど核の数が少ないにもかかわらず、生成速度が速いことは反応温度の上昇とともに結晶成長速度が著しく増大することを示している。これは、反応温度の上昇による生成速度の増大は核形成速度と結晶成長速度の両方の増大によるものである。
また、反応温度が高いほど結晶粒径が大きくなる理由は次のように考えられる。ゼオライトAの結晶化は自触的核形成過程であり核の数は生成過程において増加し続け、その核形成速度は反応温度が高いほど速い。しかしながら、結晶成長速度も反応温度が高いほど速いため、高温では結晶化時問が短くなり、結果として核の発生数が少なくなる。したがって、反応温度が高い方が結晶粒径は大きくなる。また、反応温度の増大は核発生数の増大、すなわち結晶粒径の減少に寄与する。しかしながら、反応温度の増大は結晶成長速度も増大するため、結晶粒径の増大を促進する効果も与える。このように反応温度の変化は結晶粒径に対して相反する効果を与えるため、図16に示すようにNaOH濃度の変化に比べて結晶粒径に大きな影響を及ぼさない。
<ゼオライトA成形体の多孔質特性についての検討>
図11に示したゼオライトA成形体の微細構造を見ると、ゼオライトAの結晶は綴密化しておらず、結晶粒間に空隙を有している。そして、アロフェンから得られたゼオライトA成形体は、ゼオライトのミクロ孔と結晶粒間のマクロ孔とからなる複合多孔体であると言える。ミクロ孔は、前述したようにゼオライトAの交換性イオンがNa型で0.4nm、K型で0.3nm、Ca型で0.5nmと陽イオン交換によって変化する一方、マクロ孔は、図11から明らかなように結晶粒子が大きいほど大きくなることが分かる。
水銀ポロシメーター(Micrometritics製、Poresizer 9310)により測定された細孔径分布を図17に示すと、結晶粒径が大きくなるにしたがって、平均細孔径も大きくなるが、その関係は図18に示したように直線的な比例関係にある。さらに図17からすべてのゼオライト成形体において細孔径分布が狭く、均一であることが分かる。図19に示す表図にはゼオライトA成形体の結晶粒子径、密度、気孔率を示す。ここで、かさ密度はすべての細孔容積を成形体の体積に含めた場合の密度とした。見かけ密度はゼオライトA結晶内のミクロ孔容積を体積に含んだものとし、水銀ポロシメーターから求めたものである。また、真密度はすべての細孔容積を成形体の体積に含まない場合であり、ミクロ孔容積はゼオライトAの結晶内に吸着可能な水の体積として求めた。いずれの密度もすべてのゼオライトA成形体においてほぼ等しく、その結果、細孔容積もほぼ等しいことを示している。すなわち、これらのゼオライトA成形体はマクロ孔径のみが異なるといえる。これらの結果から、生成するゼオライトAの結晶粒径を制御することでマクロ孔の細孔径を制御可能であることが明らかとなった。
<アロフェン−ゼオライトA複合成形体からの合成>
[実験例5]
次に、アロフェンに粉末状のゼオライトAを混合した(アロフェン−ゼオライトAの混合体)ものを、アロフェン成形体を作製する場合と同様にして成形体して得た複合成形体のゼオライト化を検討した。具体的には、アロフェン:ゼオライトA=47:53(重量%)の割合で混合した混合体から作製した複合成形体を、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を2.0mo1・dm−3、3.0mo1・dm−3として実験例1のアロフェン成形体の場合と同様に反応させた。複合成形体は合成反応過程で破損、崩壊することなく、その形態は保たれていた。図20に複合成形体及びアロフェン成形体からのゼオライトA成形体の生成曲線を示す。複合成形体からのゼオライトA成形体の生成速度はアロフェン成形体の場合と比較して著しく速く、約2時間で最大生成量に達していた。アロフェン成形体の場合は水酸化ナトリウム水溶液の濃度により反応速度に大きな違いが生じていたが、複合成形体からゼオライトA成形体を作成する場合では2.0mo1・dm−3、3.0mo1・dm−3の何れの場合でもゼオライトAの生成速度に違いは認められなかった。また、濃度3.0mo1・dm−3の水溶液で反応させた場合、7時間以上で水和ソーダライトの生成が認められたが、濃度2.0mo1・dm−3の水溶液では10時間までの範囲で水和ソーダライトは生成しなかった。
また、ゼオライトAの生成量は水溶液濃度によらず、約95%であり高純度ゼオライトA成形体が作製できた。出発原料としてもちいたゼオライトAと複合成形体から得られたゼオライトAが最大生成量に達した成形体のSEM像を図21に示す。もちいたゼオライトAは粒径が揃っており約1μmである。また、凝集及び貫入が少なく単粒子に分散している。2.0mo1・dm−3、3.0mo1・dm−3との水酸化ナトリウム水溶液から合成されたゼオライト成形体の結晶形及び粒径に違いはなく、約1μmの結晶が貫入し結合している。この約1μmの結晶は、出発原料としてもちいたゼオライトAが結晶成長し、その過程で結晶同士が貫入したものと思われる。また、約0.1μmの微細な結晶も観察されるが、これらはアロフェンが溶解した後、新たな核生成によって生じたものと考えられる。微細な粒子が少ないことは、複合成形体のゼオライト化過程はゼオライトAの結晶成長が支配的であることを示唆している。したがって、複合成形体においては核の発生までの誘導期間を必要としないことから、アロフェン成形体より非常に速くゼオライト化する。また、結晶成長速度が水酸化ナトリウム水溶液の濃度の2.0mo1・dm−3、3.0mo1・dm−3の両者間のあいだに大きな差がないため、ゼオライト化速度に差が現れなかったものと考えられる。
<リンデFゼオライト成形体の製造>
[実験例6]
前記型成形したアロフェン成形体の1個を容器に入れ、水酸化カリウム水溶液について、濃度2、4、5、6、7、8、10mo1・dm−3に調整したものをそれぞれ10mlづつ加えた後、80℃にして24時間放置した。その後、上澄み液を除去し、生成物を取り出して中性になるまで水洗し、乾燥して成形体を得た。得られた成形体について、XRDによる分析を行ったところ、濃度2mo1・dm−3で反応したものは、アロフェンと同定できない不純物との混合物であって、リンデFゼオライトの生成は確認できなかったが、濃度4mo1・dm−3以上で反応させたものはリンデFゼオライトの生成を確認できた。そして予め用意したリンデFゼオライトの標準試料のXRD結果を基に、前記生成したリンデFゼオライトの結晶化度を次式により求め、この結果を図22に示す。
結晶化度(%)=100×[生成物の結晶面{(110)(114)(222)(312)}のXRDピーク強度の合計]/[標準試料の結晶面{(110)(114)(222)(312)}のXRDピーク強度の合計]
この結果、リンデFゼオライトの結晶化度は、水酸化カリウム水溶液の濃度が5mo1・dm−3で約60%、6mo1・dm−3で約90%となっていてピークとなっており、これ以上の結晶化が行われないのは、前記ゼオライトAの成形体を製造した場合と同様、不純物の存在によるものである。図23、24に濃度4〜10mo1・dm−3で反応させたリンデFゼオライト成形体のSEM写真を示す。これらの結果から、水酸化カリウム水溶液の濃度が高いほど、高い結晶化度のリンデFゼオライト成形体を得ることができることが確認される。
[実験例7]
次に、反応時間の影響について検討した。実験例5と同じ要領にてアロフェン成形体を容器に入れ、水酸化カリウム水溶液の濃度を5および8mo1・dm−3に調整したものを添加し、5mo1・dm−3のものについては26〜40時間のあいだ、8mo1・dm−3のものについては12〜40時間のあいだ、それぞれ90℃にして放置した後、成形体を取り出して中性になるまで洗浄し、乾燥して成形体を製造した。これらについてXRD、SEMによる分析をそれぞれ行った。これらの結果から求めたリンデFゼオライトの結晶化度の変化を図25、26に、また図27には水酸化カリウム水溶液の濃度を8mo1・dm−3にしたものについて反応時間が12、24、40時間のもののSEM写真を示す。これらの結果から、反応時間が長いほど、リンデFゼオライトの生成が促進していることが確認される。
<ゼオライトA−アナターゼの複合成形体の製造>
[実験例8]
アロフェン粉末とアナターゼ粉末とを80:20重量%の割合で加え、良く混合し、前記アロフェン成形体を製造した場合と同様にして原料となる複合成形体を製造する。この複合物成形体の2gに対し、2mo1・dm−3に調整した水酸化ナトリウム水溶液を10ml加え、25℃で15時間熟成した後、80℃で24時間反応させた。得られた試料を、良く水洗し、乾燥したものについて、XRD、SEMによる分析をした。さらに生成物の元素分析をSEMに付属のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)により分析した。
得られた複合成形体の光触媒性能は、液相フイルム密着法(光触媒製品技術協議会の「光触媒製品協議会会則・諸規定および試験法」の47−49(2003))により評価した。これには前処理として、試料である反応生成物に365nmの紫外線(1.0mW/cm)の照射を行った。前記前処理を行った試料に、10mg/dmのメチレンブルー溶液を0.1ml分注し、ポリエチレン製(紫外線(365nm)透過率80%)袋内に密封した後、室温にて紫外線(1.0mW/cm)照射を1時間行った。遮光保存した試料と紫外線照射した試料の着色性を目視により確認したところ、反応生成物にはメチレンブルーの分解を確認した。
図28にアロフェン−アナターゼ複合成形体と反応した成形体のX線回折パターン図を示す。これによると出発物質はアナターゼの鋭いピークとアロフェンのブロードなピークが認められるが、生成物ではアロフェンのピークは消滅し、ゼオライトAのピークの存在が認められ、ゼオライトAが生成していることが確認される。またアナターゼについてはピークの変化は認められず、これによってゼオライトA−アナターゼの複合成型体が生成したことが確認される。
さらに図29にアロフェン−アナターゼ複合成形体のSEM写真とEDS元素分布写真図を示すが、これによると、アロフェン中にアナターゼが均一に分布していることが確認される。図30〜図33に外表面から中心部(2.9mm)までのSEM像とEDSとを示すが、これによると、全ての部分で〜3μmのゼオライトA特有の立方体の結晶が観測され、また数十μmのアナターゼと思われる微細な結晶が分散していることが確認される。またEDSからは、ゼオライトAの立方体の結晶領域にはゼオライトAの成分であるSi、Al、Naの濃度が高く、Tiの濃度は低いことが観測される。これに対し、他の領域ではTi濃度が高く、アナターゼの存在を示している。この結果から、成形体は、アナターゼがゼオライトAの結晶内には殆んど含まれていないもの、つまりゼオライトAとアナターゼの各結晶粒子が混合した複合成形体を製造に成功したことを示唆している。
アロフェンの化学分析値を示す表図である。 アロフェン成形体を示すもので、(A)は平面図、(B)は側面図である。 粉末アロフェンからゼオライトAへの生成過程を示す粉末X線回折パターン図である。 粉末アロフェンからゼオライトAへの生成過程を示す電子顕微鏡写真図である。 実験例1で生成したゼオライトA成形体の図である。 実験例1で生成したゼオライトA成形体の生成量を、粉末ゼオライトAの生成量と共に示したグラフ図である。 実験例1で生成したゼオライトA成形体の電子顕微鏡写真図である。 実験例2で生成したゼオライトAの生成量を、粉末ゼオライトAの生成量と共に示したグラフ図である。 実験例2で生成したゼオライトA成形体の表面部分、表面から1.5mmの部分、中心部分(表面から2.9mm部分)の電子顕微鏡写真図である。 実験例3で生成したゼオライトA成形体の生成量を示すグラフ図である。 実験例3で生成したゼオライトA成形体の表面部分の電子顕微鏡写真図である。 実験例3で生成したゼオライトA成形体の水酸化ナトリウム水溶液の濃度と結晶粒径との関係を示すグラフ図である。 実験例3で生成したゼオライトA成形体の水酸化ナトリウム水溶液の濃度とAl、Si濃度との関係を示すグラフ図である。 実験例4で生成したゼオライトA成形体の反応時間と生成量との関係を示すグラフ図である。 実験例4で生成したゼオライトA成形体の表面部分の電子顕微鏡写真図である。 実験例4で生成したゼオライトA成形体の表面部分の反応温度と平均結晶粒径との関係を示すグラフ図である。 実験例4で生成したゼオライトA成形体の細孔径分布を示すグラフ図である。 実験例3で生成したゼオライトA成形体の結晶粒径と細孔径との関係を示すグラフ図である。 ゼオライトA成形体の結晶粒子径、密度、気孔率を示す表図である。 実験例5で生成したゼオライトA成形体の生成量を示すグラフ図である。 実験例5で生成したゼオライトA成形体の電子顕微鏡写真図である。 実験例6で生成したリンデFゼオライトの結晶化度を示すグラフ図である。 実験例6で生成したリンデFゼオライトの一部の電子顕微鏡写真図である。 実験例6で生成したリンデFゼオライトの一部の電子顕微鏡写真図である。 実験例7の水酸化カリウム水溶液の濃度を5mo1・dm−3にしたものについてのリンデFゼオライトの結晶化度の変化を示すグラフ図である。 実験例7の水酸化カリウム水溶液の濃度を8mo1・dm−3にしたものについてのリンデFゼオライトの結晶化度の変化を示すグラフ図である。 実験例7のにおいて水酸化カリウム水溶液の濃度を8mo1・dm−3にしたもので生成したリンデFゼオライトの電子顕微鏡写真図である。 実験例8で用いたアロフェン−アナターゼ複合成形体と反応して生成したゼオライトA−アナターゼ複合成形体のX線回折パターン図を示す。 実験例8で生成したアロフェン−アナターゼ複合成形体のSEM写真とEDS元素分布写真図を示す。 実験例8で生成した複合成形体の0mmのSEM写真とEDS元素分布写真図を示す。 実験例8で生成した複合成形体の外表面のSEM写真とEDS元素分布写真図を示す。 実験例8で生成した複合成形体の1.5mmのSEM写真とEDS元素分布写真図を示す。 実験例8で生成した複合成形体の2.9mmのSEM写真とEDS元素分布写真図を示す。

Claims (16)

  1. アロフェンを成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理することで生成されたものであることを特徴とするゼオライトの成形体。
  2. 請求項1において、水熱処理をする前処理として、アルカリ性の水溶液をアロフェン成形体に加えて熟成する熟成処理が施されていることを特徴とするゼオライトの成形体。
  3. アロフェンとゼオライトとの混合体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理して生成されるものであることを特徴とするゼオライトの成形体。
  4. 請求項1乃至3の何れか一つにおいて、成形体は内部までゼオライトに変換されていることを特徴とするゼオライトの成形体。
  5. 請求項1乃至4の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトAであることを特徴とするゼオライトの成形体。
  6. 請求項1乃至4の何れか一つにおいて、成形体はリンデFゼオライトであることを特徴とするゼオライトの成形体。
  7. 請求項1乃至6の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトと金属酸化物との複合体であることを特徴とするゼオライトの成形体。
  8. 請求項7において、金属酸化物は酸化チタンであることを特徴とするゼオライトの成形体。
  9. アロフェン粉体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理することで生成することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  10. 請求項9において、水熱処理をする前処理として、アルカリ性の水溶液をアロフェン成形体に加えて熟成する熟成処理を施していることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  11. アロフェンとゼオライトとの混合体を成形体に形成した後、アルカリ性の水溶液で水熱処理して生成することを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  12. 請求項9乃至11の何れか一つにおいて、アロフェン成形体の水熱処理の時間は、生成したゼオライトが水和ソーダライトに変換する前の安定的に存在しているまでであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  13. 請求項9乃至12の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトAであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  14. 請求項9乃至12の何れか一つにおいて、成形体はリンデFゼオライトであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  15. 請求項9乃至14の何れか一つにおいて、成形体はゼオライトと金属酸化物との複合体であることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
  16. 請求項15において、金属酸化物は酸化チタンであることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法。
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