JP2018158888A - ゼオライト含有硬化体の製造方法 - Google Patents

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Takeshi Yamamoto
武志 山本
誠治 井野場
Seiji Inoba
誠治 井野場
佳子 日恵井
Yoshiko Hiei
佳子 日恵井
拓 大塚
Taku Otsuka
拓 大塚
友明 杉山
Tomoaki Sugiyama
友明 杉山
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Abstract

【課題】石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することのできる条件を決定する。石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造する。【解決手段】石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、(b)石炭灰の粒径、及び(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握し、(a)〜(c)のパラメータについて、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定するようにした。そして、決定した条件を利用してゼオライト含有硬化体を製造するようにした。【選択図】図6

Description

本発明は、ゼオライト含有硬化体の製造条件決定方法及びゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、石炭灰を原料として高強度のゼオライト含有硬化体を製造するのに好適な条件を決定する方法、及び、この方法を利用したゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。
我が国の石炭灰発生量は、年間で約1000万トンにも達している。石炭灰は主にセメント原材料として有効利用が図られている。しかし、近年、セメント生産量が減少傾向にある。そこで、これに代わる石炭灰の新たな有効利用法の開発が望まれている。
かかる要望の下、本件出願人は、非特許文献1において、石炭灰の新たな有効利用法として、石炭灰を原料としたゼオライト含有硬化体の製造方法を提案している。具体的には、アルカリ金属の水酸化物である水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液を練混ぜ水として石炭灰を混練し、得られた混練物を排水処理することなく(つまり、余剰水を発生させることなく)型枠内に収容し、ばねによる拘束圧力を与えた状態で水熱合成を行うことにより、高強度のゼオライト含有硬化体を製造することを提案している。
電力中央研究所報告 N08068
ところで、石炭灰の品質は、発電所の設備(例えば、炉の種類や運転条件等)や炭種によって異なることが知られている。しかしながら、非特許文献1では、石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体の強度発現性等に与える影響については検討されていなかった。石炭灰を原料としたゼオライト含有硬化体の製造を工業的規模で実施するに際しては、石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体の強度発現性等に与える影響について十分に把握した上で、高強度のゼオライト含有硬化体を安定して製造することのできる条件を決定することが重要になると考えられる。
また、非特許文献1に記載されているゼオライト含有硬化体の製造方法においては、混練物に対してばねによる拘束圧力を与えることのできる特殊な型枠の使用や、型枠ごと水熱合成に供するといった特殊な工程の実施が必要であったことから、汎用性が低いという問題があった。石炭灰を原料としたゼオライト含有硬化体の製造を工業的規模で実施するに際しては、非特許文献1に記載されているような特殊な型枠を使用することなく、二次コンクリート製品の製造方法のように、混練物を成形した後に水熱合成を行う汎用的な方法を採用することが望ましいと考えられる。
そこで、本発明は、石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することのできる条件を決定する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することのできる方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本発明者は、非特許文献1に記載されているような特殊な型枠を使用することなく、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するという汎用的な方法でゼオライト含有硬化体を製造することについて、種々検討を行った。その結果、石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、石炭灰の粒径、及び石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合を指標とすることによって、圧縮強度及び曲げ強度が一定値以上となる高強度のゼオライト含有硬化体を安定して製造することが可能であることを知見するに至り、さらに種々検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明のゼオライト含有硬化体の製造条件決定方法は、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、
(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
(b)石炭灰の粒径、及び
(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合
に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握し、(a)〜(c)のパラメータについて、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定するようにしている。
次に、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、
(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
(b)石炭灰の粒径、及び
(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合
に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握し、(a)〜(c)のパラメータについて、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定し、この決定した条件を用いるようにしている。
例えば、アルカリ金属の水酸化物を水酸化ナトリウムとした場合、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法は、ガラス質中のSi/Alモル比が2.96未満であるか又はメディアン径が18.2μm未満である石炭灰、水酸化ナトリウム、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成する工程を含み、石炭灰に対する水酸化ナトリウムの配合割合を重量百分率で6.3〜12.6%とするようにしている。
本発明のゼオライト含有硬化体の製造条件決定方法によれば、石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することのできる条件を決定することが可能となる。
また、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することが可能となる。
実施例1で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュ(重量百分率)に対する圧縮強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュ(重量百分率)に対する曲げ強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=6.3mass%のものについて、ゼオライト含有硬化体について、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する圧縮強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=6.3mass%のものについて、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する曲げ強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについて、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する圧縮強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについて、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する曲げ強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=12.6mass%のものについて、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する圧縮強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=12.6mass%のものについて、フライアッシュのSi/Alモル比及びメディアン径に対する曲げ強度を表示したグラフである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについてのXRD(X線回折)パターンである。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについての細孔径分布を示す図である。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについてのFAの反応率を示す図である。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについての陽イオン交換容量を示す図である。 実施例1で製造したゼオライト含有硬化体のうち水酸化ナトリウム/フライアッシュ=8.2mass%のものについてのセシウムに対する分配係数を示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体の圧縮強度を示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体の曲げ強度を示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体のXRDパターンを示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体の細孔径分布を示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体の破断面の電子顕微鏡画像である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体のうち180℃で水熱合成したものについて、EPMAにより分析した反射電子像とNa、Si、及びAlの元素マッピングである。 図19の分析データ上のセル単位のSi/Alモル比の発生頻度を示す図である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体のセシウムに対する吸着等温線である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体のカドミウムに対する吸着等温線である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体の鉛に対する吸着等温線である。 実施例6で製造したゼオライト含有硬化体と各種ゼオライトの陽イオン交換容量を比較検討した結果を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュの変化に対するXRDパターンを示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュの変化に対するフライアッシュの反応率を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュの変化に対する細孔径分布を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水酸化ナトリウム/フライアッシュの変化に対する寸法変化を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体の二次電子像である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水/フライアッシュの変化に対する圧縮強度を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水/フライアッシュの変化に対する曲げ強度を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水/フライアッシュの変化に対するXRDパターンを示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水/フライアッシュの変化に対するフライアッシュの反応率を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体について、水/フライアッシュの変化に対する細孔径分布を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体の陽イオン交換容量を示す図である。 実施例7で製造したゼオライト含有硬化体のセシウムに対する分配係数を示す図である。 実施例8で製造したゼオライト含有硬化体の圧縮強度を示す図である。 実施例8で製造したゼオライト含有硬化体の曲げ強度を示す図である。 実施例8で製造したゼオライト含有硬化体のXRDパターンを示す図である。 実施例8で製造したゼオライト含有硬化体の細孔径分布を示す図である。 実施例9で製造したゼオライト含有硬化体の深さ方向の生成鉱物種を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明のゼオライト含有硬化体の製造条件決定方法は、大まかには、強度把握工程と条件決定工程とにより構成される。
強度把握工程では、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、
(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
(b)石炭灰の粒径、及び
(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合
に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握する。
強度把握工程では、品質の異なる複数種の石炭灰、具体的には、(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、及び(b)石炭灰の粒径の異なる複数種の石炭灰を原料とし、(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合を変動させ、他の製造条件を実質的に揃えて、ゼオライト含有硬化体を製造する。
本発明では、アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを単独で、又は双方を混合して使用することができる。また、高純度品を使用することができるのは勿論のこと、工業用の安価な試薬を用いることもできる。
ここで、本発明では、アルカリ金属の水酸化物として、水酸化ナトリウムを単独で使用することが好適であり、工業用の水酸化ナトリウムを単独で使用することがより好適である。これにより、ゼオライト含有硬化体の製造コストを抑えることができる。
石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水は、例えば石炭灰にアルカリ金属の水酸化物の水溶液を加え、ミキサー等で適宜練混ぜることで、混練物とされる。尚、練混ぜは、例えば遊星運動をする攪拌翼を有するミキサー等で適宜の時間(例えば、5分間程度)攪拌するようにすればよい。
石炭灰に対するアルカリ金属の水酸化物の配合割合については、少ないと、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度が低くなる傾向がある。逆に、多いと、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度が向上し易くなると共にゼオライト生成量も多くなり易いが、その一方で、過剰になると、強度発現性が不安定となる。換言すると、得られる製品の品質ばらつきが大きくなる。これは、アルカリ金属の水酸化物の過剰配合によって、製造過程での体積の膨張及び収縮が大きくなることに起因しているものと推定される。
アルカリ金属の水酸化物を水酸化ナトリウムとした場合を例に挙げて説明すると、石炭灰に対する水酸化ナトリウムの配合割合(水酸化ナトリウム/石炭灰)を、重量百分率で6.3%〜12.6%とすることが好適である。本発明者の実験によると、この範囲において、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度の双方を向上させ易い。また、ゼオライト生成量も十分なものとし易い。さらに、製品の品質ばらつきも抑え易い。
石炭灰に対する水の配合割合については、少ない方がゼオライト含有硬化体の圧縮強度を向上させ易い反面、混練物のフロー値を良好なものとし難くなる。逆に、多いと、ゼオライト含有硬化体の細孔量及び細孔径が増加し、圧縮強度が低下し易くなる。また、曲げ強度も低下し易くなる。
石炭灰に対する水の配合割合(水/石炭灰)の具体例を挙げると、重量百分率で20%〜50%とすればよく、30%〜40%とすることが好適であり、33%〜35%とすることがより好適である。
混練物は、圧縮強度及び曲げ強度を測定するために必要な形状に成形するための型枠に流し込んだ後、蒸気養生を施すことによって凝結させる。蒸気養生の条件は、例えば常圧で、温度0℃超〜80℃、湿度20%〜90%である。処理時間については、蒸気養生における温度条件及び湿度条件に応じて適宜設定される。即ち、温度及び湿度が高い程、混練物を凝結させるのに要する時間は短くなる。逆に、温度及び湿度が低い程、混練物を凝結させるのに要する時間は長くなる。例えば、温度80℃で湿度95%以上の常圧蒸気養生(湿潤養生)を行う場合には、30分〜時間程度実施すれば混練物は凝結し得る。
凝結させた混練物は、型枠に収容した状態で、あるいは脱型した後に、水熱合成に供される。ここで、水熱合成は、混練物を脱型した後に実施することが望ましい。ゼオライト含有硬化体の実際の製造に鑑みた場合、水熱合成前に脱型することによって、型枠の使用サイクルが向上し、作業効率が向上するからである。尚、本発明で決定される条件を選択することで、水熱合成前に脱型しても、十分な圧縮強度及び曲げ強度を確保できることが本発明者の実験により確認されている。脱型した後は、必要に応じて蒸気養生を施してから、水熱合成に供するようにしてもよい。
水熱合成は、例えば、水蒸気オートクレーブ装置にて、圧力0.6〜2.3MPa程度の飽和蒸気圧下で、養生温度を160℃〜220℃、好適には160℃〜200℃、より好適には170℃〜190℃とし、養生時間を6〜24時間、好適には6〜12時間として実施される。養生温度が低すぎたり、養生時間が短すぎたりすると、石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の反応量が低下してしまう。その結果、細孔構造が緻密化せず、圧縮強度が低下してしまう。また、ゼオライトも十分に生成されなくなる。養生温度を高めることで、また養生時間を長くすることで、これらの問題は解決される反面、曲げ強度が低下し易くなる。但し、本発明で決定される条件を選択することで、曲げ強度の低下リスクを回避できる。
以上の手順により製造されたゼオライト含有硬化体について、圧縮強度及び曲げ強度を測定し、
(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
(b)石炭灰の粒径、及び
(c)石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合
に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握する。
次に、条件決定工程により、(a)〜(c)のパラメータについて、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定する。
「圧縮強度が一定値以上となる」とは、例えば、圧縮強度が20N/mm以上、好適には30N/mm以上、より好適には40N/mm以上となるという意味である。
また、「曲げ強度が一定値以上となる」とは、例えば、曲げ強度が4N/mm以上、好適には6N/mm以上、より好適には8N/mm以上となるという意味である。
そして、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法においては、上記により決定された条件に基づき、(a)及び/又は(b)の条件を満たす石炭灰を選択すると共に、(c)の条件を満たすように石炭灰とアルカリ金属の水酸化物の配合割合を調整し、ゼオライト含有硬化体を製造する。
本発明者の実験によると、アルカリ金属の水酸化物を水酸化ナトリウムとした場合には、(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比が、Si/Alモル比で2.96未満であるか、又は(b)石炭灰の粒径が、メディアン径で18.2μm未満である石炭灰、水酸化ナトリウム、及び水を少なくとも配合してなる混練物成形した後に水熱合成する工程を含み、石炭灰に対する水酸化ナトリウムの配合割合(水酸化ナトリウム/石炭灰)を重量百分率で6.3〜12.6%とすることで、高強度のゼオライト含有硬化体が安定して製造され得ることが確認されている。
尚、「メディアン径」とは、50%粒子径のことである。具体的には、粒度分布において粒子量の積算値が50%になったときの粒子径のことである。
従来、石炭灰の有効利用例として、セメント混和材としての利用が知られていたが、セメント混和材として利用できるフライアッシュはフライアッシュII種(JIS−A6201−2008)に限られていた。一方で、フライアッシュII種以外(規格外)の品質のフライアッシュについては殆ど有効利用されていなかった。本発明では、フライアッシュII種以外のフライアッシュ(例えばIII種、IV種相当品)であっても、上記条件さえ満たせば、選定して使用することができる。したがって、本発明によれば、フライアッシュII種以外(規格外)の石炭灰の有効利用の拡大に大きく貢献し得る。
また、従来、合成ゼオライトや人工ゼオライトは、粉末の状態で製造されていたため、浄化材等として利用する場合には、セメントへの混和等といった造粒工程が必要であった。また、天然ゼオライトは安価である反面、成形性が低く、形状の統一が困難であった。これに対し、本発明では、二次コンクリート製品の製造方法のように汎用的な方法で、十分な強度(圧縮強度及び曲げ強度)と陽イオン交換容量(CEC)、さらにはセシウム、カドミウム等の陽イオンに対する吸着能とを兼ね備えた高付加価値のバルクゼオライトを製造することができる。このような高付加価値のバルクゼオライトを汎用的な方法で製造することを可能とする本発明の製造方法は、従来にはない画期的な発明であると言える。
ここで、本発明のゼオライト含有硬化体の製造方法においては、ゼオライト含有硬化体を水洗する工程を含むことが望ましい。水洗工程を経ることによって、ゼオライト含有硬化体から砒素及びホウ素を予め溶出させておくことができ、砒素及びホウ素の溶出量が少ないゼオライト含有硬化体を提供することが可能となる。水洗工程の詳細な条件としては、水を室温(例えば20℃程度)とし、ゼオライト含有硬化体を24時間程度浸漬しておけば、ゼオライト含有硬化体から砒素及びホウ素を予め溶出させておく効果が十分に発揮されるが、浸漬時間を24時間よりも短時間としても一定の効果は奏され得る。また、水の温度を高めることで、より短時間でゼオライト含有硬化体から砒素及びホウ素を予め溶出させ得る。特に、ゼオライト含有硬化体を煮沸処理することで高い溶出効果が奏され得る。さらに、ゼオライト含有硬化体を水に浸漬した状態で真空引きすることでも、より短時間でゼオライト含有硬化体から砒素及びホウ素を予め溶出させ得る。尚、クロムについては、水洗工程を行わずともゼオライト含有硬化体からは殆ど溶出されないことが本発明者の実験により確認されている。
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を配合した混練物を例に挙げて説明したが、本発明における「石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合した混練物」には、石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水だけでなく、ゼオライト含有硬化体自体に何らかの性能を付与するための添加剤等を含む混練物も包含される。例えば、曲げ強度を向上させるための補強繊維、例えばポリプロピレン等の高分子繊維等を配合したもの等も包含される。この場合、水熱合成温度を、高分子繊維等が劣化しない温度まで低下させて本発明を実施するようにしてもよい。また、添加剤は一種のみならず二種以上配合するようにしても構わない。
また、上記条件を満たしていない複数種の石炭灰を混合することで、上記条件を満たす石炭灰を調製し得る。また、石炭灰にシリカ及びアルミナの少なくともいずれかを含む非晶質粉体を混合したり、複数種混合した石炭灰にシリカ及びアルミナの少なくともいずれかを含む非晶質粉体を混合したりすることでも、上記条件を満たす石炭灰を調製し得る。このようにして調製した石炭灰を上記条件を満たす石炭灰として用いるようにしてもよい。これにより、利用可能な石炭灰の範囲をさらに拡大することができる。
尚、水熱合成を施すことなく、蒸気養生のみを施すことで、ゼオライトは含有しないものの、高強度の硬化体を製造することができる。特に、石炭灰にシリカ及びアルミナの少なくともいずれかを含む非晶質粉体を混合した粉体を原料とすることで、ゼオライトを含まない高強度の硬化体を製造することができる。このような硬化体は、例えばコンクリート二次製品の代替材料として好適である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
(実施例1)
石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体の強度発現性に及ぼす影響について検討した。
(1)石炭灰
国内複数個所の火力発電所にて発生した計14種のフライアッシュ(以下、「FA」と呼ぶこともある)A〜N灰を用いた。A〜N灰の化学組成を表1に示す。また、A〜N灰の鉱物組成(ムライト(Mullite)、α−石英(α−Quartz)、マグネタイト(Magnetite)、ガラス化率、及びガラス質のSi/Alモル比を表2に示す。さらに、A〜N灰の物理的特性(密度(Density)、比表面積(Specific area)、メディアン径(Median size))を表3に示す。
表2中の鉱物組成とガラス化率は、XRD(X線回折法)によって鉱物相を同定し、内部標準法により各鉱物を定量することにより求めたものである。また、表3中のメディアン径は、島津製作所製レーザー回折法粒度分布測定装置SLAD-3000で屈折率を1.80-0.00iとして測定した。
尚、A〜N灰は、いずれもフライアッシュI〜IV種として品質管理されない原粉フライアッシュである。
(2)水及びアルカリ金属の水酸化物
水はイオン交換水とした。アルカリ金属の水酸化物は水酸化ナトリウム(以下、「NaOH」と呼ぶこともある)とし、特級試薬を使用した。本実施例では、イオン交換水に水酸化ナトリウム特級試薬を溶解させた水酸化ナトリウム水溶液(以下、「NaOH水溶液」と呼ぶこともある)を使用した。尚、NaOH水溶液は、室温まで冷ましてから使用した。
(3)配合割合
FAとNaOH水溶液を、NaOH/FA=4.1〜17.6mass%、水/FA=33.8mass%となるように配合した。
(4)練混ぜ
FAにNaOH水溶液を加え、遊星運動をする1本の攪拌翼を有するミキサーで5分間練混ぜた。
(5)打設
練混ぜた試料を、テーブルバイブレータで振動を与えながら40mm×40mm×160mmの鉄製の型枠に流し込み、合計で4分間の振動を与えた。
(6)養生
80℃湿潤養生(湿度95%以上、常圧)開始から1時間後に脱型し、80℃湿潤養生を継続して材齢24時間まで行った。次に、オートクレーブにて水熱合成(圧力1MPa、180℃、6時間)を行った。オートクレーブによる水熱合成後は、室温まで冷却を行った後、60℃の恒温室で7日間乾燥させた。なお、60℃乾燥は、試験における再現性確保のために一義的に設定したが、乾燥条件の有無、乾燥温度は、この限りではない。
(7)強度測定
製造したゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度は、JIS R5201に準じて測定した。
(8)測定結果1
A,D,E,F,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体について、NaOH/FAに対する圧縮強度を表示したグラフを図1に示し、NaOH/FAに対する曲げ強度を表示したグラフを図2に示す。尚、図1及び図2中において、D灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体の「乾燥時の破損数/製造数」を併記した。
以下、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となるNaOH/FAについて検討する。
A灰については、NaOH/FA=6.3mass%、及び8.2mass%の場合に、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となった。
D灰については、NaOH/FA=8.2mass%、10.1mass%、12.6mass%、15.1mass%、及び17.6mass%の場合に、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となった。但し、NaOH/FA=12.6mass%、15.1mass%、及び17.6mass%の場合には、曲げ強度の強度発現ばらつきが大きくなることや製品の破損が起こり易い等の不具合が出やすい傾向が見られた。
E灰については、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となるNaOH/FAは存在しなかった。
F灰については、NaOH/FA=6.3mass%、8.2mass%、10.1mass%、及び12.6mass%の場合に、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となった。但し、NaOH/FA=12.6mass%の場合には、曲げ強度の強度発現ばらつきが大きくなる傾向が見られた。
N灰については、NaOH/FA=6.3mass%、及び10.1mass%の場合に、圧縮強度が20N/mm以上で且つ曲げ強度が4N/mm以上となった。
全体的には、NaOH/FA=12.6mass%以上の高濃度では、ゼオライト含有硬化体の圧縮強度が高くなる傾向が見られたが、NaOH/FAを高め過ぎても圧縮強度の増加量は向上せず、逆に曲げ強度の低下や曲げ強度の強度発現ばらつきの拡大(即ち、曲げ強度発現性の不安定化)を招きやすい傾向があること、試料破損数が多くなる傾向があることが明らかとなった。
以上の結果から、A,D,F,及びN灰に関しては、NaOH/FA=6.3〜12.6mass%の範囲内、好適には6.3〜10.1mass%の範囲内に、圧縮強度と曲げ強度の双方が安定して高強度となる最適値が存在することが明らかとなった。
(9)測定結果2
次に、A〜N灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体について、FAのSi/Alモル比及びメディアン径に対する圧縮強度及び曲げ強度を表示したグラフを図3〜図8に示す。図3はNaOH/FA=6.3mass%の場合の圧縮強度であり、図4はNaOH/FA=6.3mass%の場合の曲げ強度であり、図5はNaOH/FA=8.2mass%の場合の圧縮強度であり、図6はNaOH/FA=8.2mass%の場合の曲げ強度であり、図7はNaOH/FA=12.6mass%の場合の圧縮強度であり、図8はNaOH/FA=12.6mass%の場合の曲げ強度である。
図7に示すように、NaOH/FA=12.6mass%では、ほとんどのFAで高い圧縮強度を有していることが判明した。しかし、図8に示すように、曲げ強度に優れたFAが少ない傾向が得られた。また、高曲げ強度であっても、図2に示すD灰及びF灰のように強度ばらつきの大きいものは、製品の破損率が高くなり得ると考えられた。
また、図5及び図6に示すように、NaOH/FA=8.2mass%では、12.6mass%よりも圧縮強度は劣るものの、曲げ強度が大きく改善される傾向が見られた。特に、A,B,D,I,K,及びL灰は優れた強度を有し、これらの灰は本配合が最適であると考えられた。
さらに、図3及び図4に示すように、NaOH/FA=6.3mass%の場合には、ほとんどの灰で圧縮強度が減少したが、F灰とJ灰については、8.2mass%の場合よりも圧縮強度及び曲げ強度ともに優れた値を示した。L灰も優れた曲げ強度を示した。
尚、E灰及びH灰は、いずれのNaOH/FAにおいても良好な圧縮強度及び曲げ強度を示さなかった。そして、E灰及びH灰は、ガラス質中のSi/Alモル比が2.96以上で且つメディアン径が18.2μm以上であるという点で共通していた。E灰及びH灰以外の他の灰については、この条件を満たさなかった。
(10)まとめ
以上の結果から、Si/Alモル比が2.96未満であるか又はメディアン径が18.2μm未満である石炭灰を使用し、NaOH/FA=6.3〜12.6mass%とすることで、好ましくは6.3〜8.2mass%とすることで、高圧縮強度及び高曲げ強度のゼオライト含有硬化体を安定して製造し得るものと考えられた。
(実施例2)
石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体中に生成するゼオライト鉱物種に及ぼす影響について検討した。
検討には、実施例1にて製造したゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)を用いた。
ゼオライト含有硬化体中の生成鉱物種は、XRDにより測定した。
A,D,E,F,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体のXRDパターンを図9に示す。また、A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体中で検出された生成物を表4に示す。
生成量に多寡はあるものの、殆どの灰に共通する主要生成物はグメリン沸石(Gmelinite)であった。ゼオライトNaP1、ヒドロキシソーダライト(Hydroxysodalite)、及び9〜10°のブロードピークの有無については、灰毎に異なっていた。E灰についてはグメリン沸石の生成が確認されず、ゼオライトNaP1と推測される極微小なピークが確認された。尚、ゼオライトNaP1は、灰中のガラス質のSi/Alモル比がおよそ2.6の灰を用いた場合に生成しやすい傾向にあった。ヒドロキシソーダライトはA、I及びN灰で生成していた。ヒドロキシソーダライトは80℃蒸気養生後の主要生成物であることから、ヒドロキシソーダライトが水熱反応せずに残存したものと考えられた。
(実施例3)
石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体の微細構造に及ぼす影響について検討した。
検討には、実施例1で製造したゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)のうち、A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用したものを用いた。
ゼオライト含有硬化体の微細構造は、水銀ポロシメーターにより細孔径分布を測定することにより評価した。
A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体の細孔径分布を図10に示す。尚、図10では、高圧縮強度のゼオライト含有硬化体を左から順に並べた。
強度の低減に伴い、総細孔量が微増する傾向が見られた。また、強度の低減に伴い、細孔径については、0.01−0.1μmの細孔量が減少し、1−10μmの細孔量が増加する傾向が見られた。これらの結果から、ゼオライト含有硬化体の強度は、細孔量だけでなく、細孔径にも影響を受けると考えられた。
(実施例4)
石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体のFAの反応率に及ぼす影響について検討した。
検討には、実施例1で製造したゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)のうち、A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用したものを用いた。
FAの反応率は、セメント及びジオポリマー中のFAやメタカオリンの反応率測定方法を参考にして、選択溶解法により求めた(文献1:S. Osawa, E. Sakai, M. Daimon, “Reaction ratio of fly ash in the hydration of fly ash-cement system”, Cement Science and Concrete Technology, No. 52, pp. 96-100 (1999).、文献2:Granizo ML, Alonso S, Blanco-Varela MT, Palomo A, “Alkaline activation of metakaolin: effect of calcium hydroxide in the products of reaction”, Journal of american ceramic society, bol. 85, no. 1, pp. 225-231 (2002).、文献3:Palomo A, Alonso S, Fernandez-Jimenez A, Sobrados I, Sanz J, “Alkaline activation of fly ashes. A 29Si NMR study of the reaction products”, Journal of american ceramic society, vol. 87, no. 6, 1141-1145, (2004).)。具体的には、粉砕した試料を60℃の塩酸水溶液(4N)に15分間、80℃のNaCO水溶液(5mass%)に20分間浸漬させた状態で撹拌し、サンプルの固形残分量(R)を測定した。また、粉砕した試料を原料FAに代えて同様の処理を行い、原料FAの固形残分量(RFA)を測定した。また、110℃〜950℃にかけての強熱減量(I)と、XRFによる試料中のNa含有率(MNa)の定量を行い、以下の数式1により反応率を算出した。
A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体のFAの反応率を図11に示す。尚、図11では、高圧縮強度のゼオライト含有硬化体を左から順に並べた。
図11に示す結果から、大まかには、圧縮強度の高いゼオライト含有硬化体の方がFAの反応率が大きい傾向が見られた。但し、細かく検討すると、F灰を用いたゼオライト含有硬化体において高い反応率を示しながら強度が低い点や、高強度群のゼオライト含有硬化体でも反応率は同程度だが圧縮強度に10N/mm以上の差がある等、圧縮強度と反応率の相関性はそれほど高いものとはいえなかった。
(実施例5)
石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体の陽イオン交換容量に及ぼす影響について検討した。また、石炭灰の品質がゼオライト含有硬化体のセシウム吸着挙動に及ぼす影響について検討した。
検討には、実施例1で製造したゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)のうち、A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用したものを用いた。
製造したゼオライト含有硬化体を粉砕し、脱イオン水で水洗した後、40℃で風乾させた。そして、0.425mm篩を通過したものと試料として用いた。陽イオン交換容量(CEC:Cation exchange capacity)は、和田・原田の方法(K. wada, “Cation-and anion-exchange capacity measurements for clays”, Journal of the clay science society of Japan, vol. 21, pp. 160-163 (1981).)に準拠し、JIS K 1478の振とう・カリウム法(pH10)を用いて測定した。
セシウムの吸着挙動は、以下の方法により評価した。即ち、製造したゼオライト含有硬化体の試料1gを1.0mgCs/Lのセシウムイオン溶液100mLに浸漬させ、120rpmで24時間振とう処理した後、24時間静置し、上澄液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。次に、得られたろ液10mLに対し、濃硝酸を2mL添加して検液とし、ICP−MSを用いて検液のCs濃度を測定して試料へのCsの吸着量を算出し、この吸着量から分配係数を1点法により算出することで評価した。
A,B,D,E,F,H,I,J,K,L,M,及びN灰を使用して製造したゼオライト含有硬化体の陽イオン交換容量を図12に示す。また、セシウムに対する分配係数を図13に示す。尚、図12及び図13では、高圧縮強度のゼオライト含有硬化体を左から順に並べた。
陽イオン交換容量は80〜150cmol/kgであり、FAの反応率と高い相関性を有している傾向が見られ、D灰およびF灰を含めたFAの反応率が高いほど陽イオン交換容量が大きかった。これは、FAの反応率の増加により、陽イオンの吸着サイトの形成数が増加したためだと考えられた。
セシウムに対する分配係数は、灰の種類によって、33〜71L/gと倍以上の差があったが、分配係数の最も低いE灰でも99.7%以上のセシウムを吸着しており、石炭灰の品質によらず、優れた吸着性を有していた。
(実施例6)
水熱合成温度を140℃とした場合、又は水熱合成を行わなかった場合について、実施例1〜5と同様の試験を実施した。
G灰を原料とし、水熱合成温度を140℃とした以外は実施例1と同じ条件でゼオライト含有硬化体を製造した。また、G灰を原料とし、水熱合成を行うことなく、実施例1と同じ条件でゼオライト含有硬化体を製造した。尚、いずれのゼオライト含有硬化体も、NaOH/FA=12.6mass%として製造した。
尚、実施例6における以下の測定結果は、特にことわりのない限り、上記実施例と同様の方法で実施して得られたものである。
(1)強度
水熱合成温度を上記の通り異ならせて製造したゼオライト含有硬化体の圧縮強度を図14に示し、曲げ強度を図15に示す。180℃の水熱合成を施したゼオライト含有硬化体は、圧縮強度が48.6N/mmで曲げ強度が8.42N/mmであり、優れた強度を示した。140℃の水熱合成を施した場合、圧縮強度が24.4N/mmで曲げ強度が7.09N/mmとなり、180℃で水熱合成を施した場合と比較して圧縮強度が半減したが、圧縮強度24.4N/mmは、普通コンクリートの圧縮強度と同程度であり、構造材料として十分な強度を有していることがわかった。
(2)生成物
水熱合成前後のゼオライト含有硬化体のXRDパターンを図16に示す。80℃蒸気養生を施したゼオライト含有硬化体(以下、without−HRと表記する)からは、ヒドロキシソーダライトの生成が確認された。しかし、結晶性生成物が少なかったことから、ゲル状物質の生成により硬化しているものと考えられた。140℃で水熱合成を施したゼオライト含有硬化体は、ヒドロキシソーダライトに加え、グメリン沸石の微小なピークも確認された。但し、without−HRと比較して大きな変化はなく、ゲル状物質が主体となって構成されているものと考えられた。180℃の場合は、主要生成物としてグメリン沸石が生成していた。ゼオライトNaP1、及び方沸石(Analcime)も生成し、ヒドロキシドーダライトは減少していた。尚、FA中の鉱物について、ムライト(Mullite)は水熱合成による増減が極めて少なかったが、石英(Quartz)は180℃で水熱合成を施した場合に限り、残存量が大きく減少していた。
(3)細孔構造
水熱合成前後のゼオライト含有硬化体の細孔径分布を図17に示す。without−HRと比較して、140℃ではゼオライト含有硬化体の細孔径分布がほとんど変化せず、水熱合成による緻密化は見られなかった。水熱合成前後で主要生成物が同じであることから、細孔構造の変化が小さかったと考えられる。180℃のゼオライト含有硬化体は、総細孔量はほとんど変化しないが、細孔径が低減していた。これは水熱合成により主要生成物として結晶質のグメリン沸石が生成したためであると考えられる。また、生成物の変化と細孔構造の緻密化により180℃のゼオライト含有硬化体は特に優れた圧縮強度を有していると考えられた。
(4)微細構造
図18に水熱合成前後のゼオライト含有硬化体の破断面の電子顕微鏡画像を示す。図18(a)及び(b)に示すように、水熱合成前と140℃で水熱合成した後の破断面は非常に類似しており、FAの表面に生成したゲル状物質が粒子同士を結合し、粒子間に多量の空隙が残存していた。また、140℃では、図18(c)のように気泡と推測される箇所に櫛状の結晶が多量に生成していた。180℃のゼオライト含有硬化体の場合には、図18(d)のようにゲル状ないし平滑な生成物が増加して粒子間をよく充填しており、図18(e)のようなグメリン沸石と推測される六角板状の結晶も確認された。図18(f)のような気泡内では六角板状の生成物が多数見られた。また、図18(g)のようにFAが溶けた跡には柱状の結晶がまとまって残存している箇所があり、これらはFAのガラス質が溶解することで析出したムライトだと推定された。
次に、180℃で水熱合成したゼオライト含有硬化体について、EPMAにより分析した反射電子像とNa、Si、及びAlの元素マッピングを図19に示す。また、この分析データ上のセル単位のSi/Alモル比の発生頻度を図20に示す。FAは非常によく反応し、Naと共にSi及びAlが粒子間に拡散・分布している様子が伺えた。また、Si/Alモル比が3となるセルの頻度が最も高いことから、生成物相のSi/Alモル比は3であると推測された。
(5)陽イオン交換能
製造したゼオライト含有硬化体を粉砕し、脱イオン水で水洗した後、40℃で風乾させた。そして、0.425mm篩を通過したものと試料として用いた。そして、表5の初期濃度でpH5〜6としたセシウム、カドミウム、鉛、及びアンモニアのイオン溶液を調製し、試料1gを各イオン溶液100mLに浸漬させ、120rpmで24時間振とう処理した後、24時間静置し、上澄液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過した。次に、得られたろ液10mLに対し、濃硝酸を2mL添加して検液とし、セシウム、カドミウム、及び鉛については、ICP−MSを用いて検液のセシウム、カドミウム、及び鉛の濃度を測定し、この測定結果からセシウム、カドミウム、及び鉛の吸着量を算出した。アンモニアについては、インドフェノール青法による吸光光度法を用いて検液のアンモニア濃度を測定し、この測定結果からアンモニアの吸着量を算出した。そして、算出した吸着量から、ヘンリー式により分配係数を算出した。また、陽イオン交換容量も測定した。
ゼオライト含有硬化体のセシウムに対する吸着等温線を図21に示し、カドミウムに対する吸着等温線を図22に示し、鉛に対する吸着等温線を図23に示す。また、セシウム、カドミウム、及び鉛の平衡定数がそれぞれ0.06mgCs/L、0.04mgCd/L、0.02Pbmg/L以下の場合にヘンリー式で近似した分配係数を表6に示す。140℃及び180℃ともに各陽イオンの吸着率が95%を超え、陽イオンに対する優れた吸着性を有していた。180℃のゼオライト含有硬化体はセシウム及びカドミウムに対し、分配係数含め吸着性能に優れており、これはグメリン沸石等の結晶性のゼオライトが多量に生成することで構造に起因した陽イオン選択性が発揮されたためと考えられる。特にセシウムに対する吸着性能が高く、初期濃度が3.0mgCs/Lの高濃度溶液に対して99%が吸着し、吸着等温線がヘンリー式で近似できた。一方で、鉛の吸着能力は140℃が180℃よりも優れており、これはヒドロキシソーダライトが鉛の吸着に適しているためと考えられた。各種ゼオライトと比較した陽イオン交換容量を図24に示す。陽イオン交換容量は180℃の場合が128cmol/kg、140℃の場合が94cmol/kgとなった。ゼオライト含有硬化体の陽イオン交換容量は天然ゼオライトと同程度で、人工ゼオライトの半分程度の値となった。これはイオン交換能を有していないムライトやα−石英等のフライアッシュ中の未反応成分を含めた数値であるためと考えられた。
(実施例7)
NaOH/FA又は水/FAがゼオライト含有硬化体に及ぼす影響について検討した。
D灰を原料とし、NaOH/FA又は水/FA比を表7の条件とした以外は、実施例1と同じ条件でゼオライト含有硬化体を製造した。
尚、実施例7における以下の測定結果は、特にことわりのない限り、上記実施例と同様の方法で実施して得られたものである。尚、実施例7に示す図中において、6.3−33.8のように記載されている場合には、最初の数値がNaOH/FAで、後の数値が水/FAを表している。
XRDパターンを図25に示す。また表8に生成物をまとめた。アルカリ添加量により生成物が異なり、配合AではゼオライトNaP1が主要生成物で、NaOH/FA=8.2mass%よりアルカリ添加量の多い配合B、D、及びFのゼオライト含有硬化体ではグメリン沸石が主要生成物となっていた。主要生成物以外にも、配合Bには9〜10°にかけてブロードなピークが見られ、NaOH/FA=12.6mass%、NaOH/FA=17.6mass%では方沸石及びモンテナイト(Mountenite)が生成していると推測された。また、FA中の鉱物であるα−石英がアルカリ添加量の増加に伴い減少し、アルカリを最も多く添加した配合Fではピークが消滅していた。
FAの反応率を図26に示す。アルカリ添加量の増加に伴い反応率が上昇していた。また、アルカリ添加量に対する反応率の上昇幅は徐々に減少していることから、反応率は60%近傍で漸近すると考えられる。しかしながら、反応率と強度発現性には相関性が見られなかった。
細孔径分布を図27に示す。配合Bの細孔径は最も小さく、これが高強度化に影響していると考えられた。主要な生成物が配合Bと同じである配合Dと配合Fは、細孔量は配合Bと同程度かもしくは若干小さい程度であり、アルカリ添加量及び反応率の増大に伴う緻密化は見られなかった。これは反応率が漸近傾向にあることが影響していると推測された。一方で、配合Aは1μmと大きい細孔を中心に構成される粗大な細孔構造を有していた。これは、配合Aの反応率が低いことに起因していると考えられた。また、配合Aは、ゼオライト含有硬化体の強度も低かった。強度に関するこの傾向は、細孔構造の傾向と一致していた。
ゼオライト含有硬化体の水熱合成および60℃乾燥による寸法変化を図28に示す。アルカリ添加量の大きく高反応率のサンプルほど水熱合成時の膨張および乾燥時の大きくなっており、これが強度発現性を不安定にする要因であると考えられた。一方で、配合Bは水熱合成時の膨張がなく、乾燥時の収縮も相対的に減少しているため、圧縮強度及び曲げ強度に優れた高強度のゼオライト含有硬化体が安定して製造できたと考えられた。
図29にアルカリ添加量の異なるゼオライト含有硬化体の二次電子像を示す。配合Aでは生成物が粒子表面のみに見られるのみで粗大な組織が観察された(図29(a))。配合BとCは類似した破断面を形成しており、平滑な生成物が多量に生成し、粒子間を十分に緻密化していた。FA粒子の跡には柱状結晶であるムライトも観察された(図29(b、c))。配合Fは平滑な生成物が煩雑に生成している様子が見られ、粗大なFA粒子もガラス質が溶解し、柱状のムライトと板状の生成物が織り交ざった状態となっていた(図29(d))。
次に、水量の異なるゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)の圧縮強度を図30に示し、曲げ強度を図31に示す。水量の増加とともに、圧縮強度及び曲げ強度の双方が顕著に減少した。
水量の異なるゼオライト含有硬化体(NaOH/FA=8.2mass%)のXRDパターンを図32に示す。生成物は表8にまとめた。水量が増加することで主要生成物が変化し、グメリン沸石が減少、ゼオライト NaP1が増加しており、配合Iでグメリン沸石のピークが確認されなくなった。9〜10°のブロードピークは配合Bおよび配合Gにのみ確認され、水量の多い配合H及び配合Iには確認されなかった。また、配合Hは配合Aとグメリン沸石及びゼオライトNaP1の生成割合が類似していた。配合B、G、A、及びHはそれぞれアルカリ溶液のmol濃度が比較的近いことから、生成物はアルカリ濃度に影響を受けて変化していると推測された。
FAの反応率を図33に示す。FAに対するアルカリ添加量が一定にもかかわらず、水量の増加に伴い反応率が低下しており、アルカリ溶液の濃度低減により反応性が低下したと考えられた。また、細孔径分布を図34に示す。尚、配合Iは測定中に試料が圧潰したため、圧潰以前のデータのみを掲載した。水量の増加に伴い細孔径および細孔量が増加する傾向が見られた。これは、水量の増加に伴い、生成物が変化したこと、反応性が低下したこと、及びFA粒子間距離が増大したことによるものと考えられた。特に、配合Iは測定中に試料が圧潰するほど脆く、圧潰時の静水圧はwashburnの式より約1.88N/mm(0.82μmの細孔測定時)であった。
各硬化体の陽イオン交換容量を図35に示す。水量を固定した配合A〜Fに対し、CECはNaOH量の増加に伴い値が大きくなった。また、NaOH量を固定した配合B及び配合G〜Iに対し、水量の増加に伴い若干の減少が見られた。この傾向はFAの反応率と全く同じ傾向であり、生成物による違いが見られなかった。FAとアルカリの反応により形成された陽イオンの吸着サイト数がそのまま陽イオン交換容量値となっていると考えられた。但し、反応率は60%程度で漸近することから、アルカリ量はFAの反応性と要求される陽イオン交換容量のバランスをもって配合を調整する必要があることがわかった。
各硬化体のセシウムに対する分配係数を図36に示す。水量を固定した配合A〜Fについては、NaOH量の増加に伴い値が減少しており、分配係数は陽イオン交換容量と正反対の挙動を示した。NaOH量を固定した配合B及び配合G〜Iについては、配合Bよりも配合G,H及びIの方が分配係数が大きくなった。ここで、セシウムの吸着能はゼオライト毎に異なり、例えば芝田らは,Na系人工ゼオライトのゼオライトNaP1が良好なセシウム吸着能を有すると報告している(文献4:J. Shibata, N. Murayama, S. Tanaka, H. Koyanaka and S. Koyanaka, “Dynamic adsorption behavior for remobal of Cs from polluted solution”, Kagaku Kogaku Ronbun-shu,, Vol. 39, No. 2, pp. 53-59 (2013).)。表8と図36を比較した場合、XRD上においてゼオライトNaP1及び9〜10°のブロードピークを有しているゼオライト含有硬化体がセシウムをよく吸着していた。逆に、これらの生成物が確認されていない配合D及びFは分配係数が低く、両試験体の主要生成物であるグメリン沸石はゼオライトNaP1や9〜10°のブロードピークを持つ生成物よりもセシウムの吸着性が低いと推定された。
以上の結果から、陽イオン交換容量の向上には濃度上限の範囲内でアルカリ添加量を増やすことが有効であることが分かった。但し、セシウム吸着能については、NaOH/FA=12.6mass%以上とすると低下する傾向が見られたことから、アルカリ添加量がある値を超えると、セシウム吸着能が低下し始めるものと考えられた。これは、アルカリ添加量が多くなることで、生成ゼオライト種が変化したためと考えられた。
(実施例8)
A,B,D,E,及びF灰を原料とし、アルカリ金属の水酸化物を水酸化カリウムとして、実施例1と同様の方法でゼオライト含有硬化体を製造し、強度試験とXRD測定を行った。
実施例8においては、FAに対するKOHの配合割合(KOH/FA)を5.3mass%〜17.6mass%とし、水/FAを33.8mass%として、ゼオライト含有硬化体を製造した。但し、A灰については、水/FAを21.8mass%としてゼオライト含有硬化体を製造した。
尚、実施例8における以下の測定結果は、特にことわりのない限り、上記実施例と同様の方法で実施して得られたものである。尚、実施例8に示す図中において、17.6−33.8のように記載されている場合には、最初の数値がKOH/FAで、後の数値が水/FAを表している。
KOH配合量に対するゼオライト含有硬化体の圧縮強度を図37に示し、曲げ強度を図38に示す。尚、A,B,及びE灰を用い、KOH/FA=17.6mass%とした場合には、表面にひび割れが多数発生し、強度測定ができなかった。
圧縮強度については、アルカリ量の増加に伴い、増加する傾向が見られた。また、E灰については、上記実施例と同様、圧縮強度が他の灰よりも低い傾向が見られた。
曲げ強度については、実施例1と同様、FA毎に異なる傾向が見られた。
次に、D灰を原料とし、KOH/FA=8.8mass%又は17.6mass%としたゼオライト含有硬化体について、XRD測定した結果を図39に示す。KOH/FA=17.6mass%としたゼオライト含有硬化体からは、ペルリアライト(Perlialite)やフィリップサイトK(Phillipsite-K)等のゼオライトの生成が確認された。KOH/FA=8.8mass%としたゼオライト含有硬化体からは、ゼオライトの生成はほとんど確認できなかった。
次に、D灰を原料とし、KOH/FA=8.8mass%又は17.6mass%としたゼオライト含有硬化体について、細孔径分布を図40に示す。尚、図40中には、D灰を原料とし、NaOH/FA=12.6mass%としたゼオライト含有硬化体の細孔径分布を破線で示した。KOH/FA=8.8mass%の場合には、KOH/FA=17.6mass%の場合よりも0.1μm〜1μmの粗大な空隙が多く、アルカリ量の減少に伴って総細孔量が大きくなり、空隙が粗大化していた。ゼオライトの生成及び生成量が細孔構造の緻密化に影響を与えていると考えられ、アルカリ量の減少により粗大な空隙が増加する点において、アルカリ金属の水酸化物をNaOHとした場合と同様の傾向が見られた。
以上の結果を総合的に勘案すると、E灰以外については、KOH/FA=8.8mass%〜17.6mass%の間に高圧縮強度及び高曲げ強度となる最適値が存在し得るものと考えられた。但し、KOH/FA=8.8mass%ではゼオライトが十分に生成しないこと、空隙の粗大化が見られることから、KOH/FA=8.8mass%超となるようにアルカリ量を調整すること、あるいは水熱合成温度を高めたり水熱合成処理時間を長くしたりすることが望ましいと考えられた。
(実施例9)
製造したゼオライト含有硬化体について、深さ方向に対する生成鉱物種の分布について検討した。
G灰を原料とし、NaOH/FA=12.6mass%、水/FA=30.8mass%とした以外は、実施例1と同様の方法でゼオライト含有硬化体を製造した。
製造したゼオライト含有硬化体について、表面から0〜5mmを約1mm間隔でサンプリングした試料のXRDパターンを測定し、深さ方向に対する生成鉱物種の分布について検討した。
結果を図41に示す。表面から内部にかけて全区間でグメリン沸石が生成し、表面側の深さ0〜3mm間ではゼオライトNaP1が生成していた。ゼオライトNaP1は深さによって生成量が異なり、表面に近い箇所で生成量が増加していた。一方で、FA中に含まれる鉱物の石英は深さが増すほどピークが減少していた。
尚、非特許文献1のように、混練物を型枠に入れたまま水熱合成を施した場合、表面から内部にかけて全区間でグメリン沸石が生成する一方で、表面側では方沸石が生成されることが本発明者の実験により確かめられている。このように、本発明により得られるゼオライト含有硬化体は、ゼオライト鉱物種の分布が、従来のゼオライト含有硬化体とは異なっている。
本発明は、ゼオライト含有硬化体の製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、石炭灰を原料として高強度のゼオライト含有硬化体を製造する方法に関する。
即ち、本発明は、石炭灰、水酸化ナトリウム、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法において、
(a)石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比が、Si/Alモル比で2.96未満であるか、又は
(b)石炭灰の粒径が、メディアン径で18.2μm未満であり、
(c)石炭灰に対する水酸化ナトリウムの配合割合(水酸化ナトリウム/石炭灰)を重量百分率で6.3〜12.6%とする
ようにしている。
発明のゼオライト含有硬化体の製造方法によれば、石炭灰を原料とする高強度のゼオライト含有硬化体を汎用的な方法で安定して製造することが可能となる。

Claims (3)

  1. 石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、
    (a)前記石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
    (b)前記石炭灰の粒径、及び
    (c)前記石炭灰と前記アルカリ金属の水酸化物の配合割合
    に対する前記ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握し、前記(a)〜(c)のパラメータについて、前記ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定することを特徴とするゼオライト含有硬化体の製造条件決定方法。
  2. 石炭灰、アルカリ金属の水酸化物、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成するゼオライト含有硬化体の製造方法について、
    (a)前記石炭灰のガラス質中のAlとSiの存在比、
    (b)前記石炭灰の粒径、及び
    (c)前記石炭灰と前記アルカリ金属の水酸化物の配合割合
    に対する前記ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度を把握し、前記(a)〜(c)のパラメータについて、前記ゼオライト含有硬化体の圧縮強度及び曲げ強度がそれぞれ一定値以上となる条件を決定し、前記決定した条件を用いることを特徴とするゼオライト含有硬化体の製造方法。
  3. ガラス質中のSi/Alモル比が2.96未満であるか又はメディアン径が18.2μm未満である石炭灰、水酸化ナトリウム、及び水を少なくとも配合してなる混練物を成形した後に水熱合成する工程を含み、前記石炭灰に対する前記水酸化ナトリウムの配合割合を重量百分率で6.3〜12.6%とする、ゼオライト含有硬化体の製造方法。
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