JP2006255319A - 生体活性インプラント材料およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 医科および歯科分野で使用される生体活性にすぐれたインプラントの製造方法の提供。
【解決手段】 チタンまたはチタン合金を酸により表面に凹凸を形成したのち、アルカリ処理し、さらにアパタイトを被覆することを特徴とするアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法および該方法により製造された、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
【選択図】 なし
【解決手段】 チタンまたはチタン合金を酸により表面に凹凸を形成したのち、アルカリ処理し、さらにアパタイトを被覆することを特徴とするアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法および該方法により製造された、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
【選択図】 なし
Description
本発明は、チタン表面を酸およびアルカリにより処理し、表面にアパタイト被膜を形成させた生体活性インプラント材料に関する。
チタンは硬組織代替用材料として整形外科、口腔外科、歯周外科領域に広く応用されており、チタンの臨床応用は年々増加傾向にある。これは生体内での耐食性がきわめて良好であることが理由の一つとしてあげられる。さらに、その表面の生体活性を高めるための各種コーティング法が開発されている。一方、チタンは濃塩酸や濃硫酸のような還元性の酸には侵されやすいことが知られている。
チタンヘのアパタイトコーティングはプラズマコーティングが最も一般的であり、市販品の多くはこの方式を取り入れている。しかし、プラズマコーティングに用いる装置は大型で騒音も大きく、高価で、歯科医療のような患者毎のオーダーメード医療をするために、個人的に購入し処理することは困難であった。
また、アパタイトのチタン表面全体への回り込みが悪く、複雑な形態の基板に対する均一なコーティングは困難であった。また、2000℃以上の高温からアパタイトが冷却されるため熱応力の残留による亀裂の発生が危倶され、実際に臨床における多くの剥離の例が報告されている。また、化学的なコーティング方法も種々報告されており、代表的なものに、チタンヘのアルカリ処理を利用したもの(特許文献1および2等を参照)、陽極酸化処理(特許文献3等を参照)がある。しかし、臨床で広く応用されているわけではない。一方、高分子へのアパタイトコーティングについても多数報告されており、リン酸イオンを含む溶液とカルシウムを含む溶液に交互に浸漬してコーティングする交互浸漬法が良く用いられている(特許文献4から7等を参照)。しかし、基材が高分子であるため応力が大きく負荷される部位には適用困難であり、硬組織基材は金属を用いる必要があった。しかし、チタンに交互浸漬法によりアパタイトコーティングした例はなかった。
本発明は、医科および歯科分野で使用される生体活性にすぐれたインプラントの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、表面にアパタイト被膜を形成させたチタンを含む、生体組織との結合性に優れたインプラント材料の製造法について鋭意検討を行った。本発明者は、チタンの高濃度酸処理を検討し、条件によっては、チタン表面がきわめて特異的に腐食されて表面に規則正しい凹凸が生じ、表層が活性皮膜で覆われることを見出した。この凹凸は細胞適合性に良いとされる孔径O.1〜10μmに制御可能であった。さらに、アルカリ処理を施すことにより疑似体液中でのアパタイトの析出効率が増大することを見出した。本発明では、高濃度酸処理によって生じた多孔質とその後のアルカリ処理を含む多段階の化学処理により生成したアパタイト皮膜を応用し、チタン製医用材料表面に機能的に活性化された改質層を付与する方法を提供するものである。この改質法により、生体活性能に優れたインプラント体の製造が可能となる。
すなわち、本発明の態様は以下の通りである。
[1] チタンまたはチタン合金を酸により表面に凹凸を形成したのち、アルカリ処理し、さらにアパタイトを被覆することを特徴とするアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
[2] 酸として高濃度の塩酸、硫酸、リン酸、フッ酸、硝酸またはこれらの混合酸を使用することを特徴とする[1]のアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
[1] チタンまたはチタン合金を酸により表面に凹凸を形成したのち、アルカリ処理し、さらにアパタイトを被覆することを特徴とするアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
[2] 酸として高濃度の塩酸、硫酸、リン酸、フッ酸、硝酸またはこれらの混合酸を使用することを特徴とする[1]のアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
[3] アパタイトの被覆がカルシウムイオンを含有する水溶液およびリン酸イオンを含有する水溶液に交互に浸漬することにより行われる[1]または[2]のアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
[4] [1]から[3]のいずれかの方法により製造された、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
[4] [1]から[3]のいずれかの方法により製造された、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
[5] チタンまたはチタン合金の表面に酸処理により、孔径0.1〜10μmの凹凸を形成させ、さらにアルカリ処理を施しアパタイトが析出し易くなるように加工したチタンまたはチタン合金をカルシウムイオンを含有する水溶液およびリン酸イオンを含有する水溶液に交互に浸漬することによりアパタイト被覆を形成させた、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
本発明の方法により、表面の凹凸と生体活性なアパタイトの作用により、生体組織との結合に優れた生体活性インプラント体を得ることができる。得られたインプラント材料により、インプラント周囲組織の早期治癒およびインプラントと生体との早期結合が実現できる。
本発明において、チタンまたはチタン合金表面にアパタイトを形成するために、チタン表面に凹凸を形成させる。
用いるチタンとして、JIS1種、JIS2種などの純チタンが例示でき、チタン合金として、JIS60(6-4合金)、JIS61種(3-2-5合金)、15-3-3-3合金、JIS11種、JIS12種等が例示できる。
チタン表面の凹凸はエッチング条件により制御可能であり、細胞接触に適する条件、レジン接着に適する条件など目的の機能により調整できる。また、化学的処理法であるため下地の形状を選ばず、複雑な形態を有する歯科修復物、例えばメッシュ、多孔体への適用が容易である。図1に本発明の生体活性インプラント体構成概念図を示すが、酸処理、アルカリ処理、アパタイトコーティングの順に処理し多層膜をチタンおよびチタン合金上に形成する。
酸処理により、チタンまたはチタン合金の表面がエッチングされる。酸処理に用いる酸として、塩酸、硫酸、リン酸、フッ酸、硝酸またはこれらの混合酸が挙げられる。この中でも、硫酸が好ましい。酸処理は、上記酸の溶液にチタンまたはチタン合金を浸漬すればよい。硫酸溶液の濃度は、10〜60%、好ましくは、20〜60%、さらに好ましくは30〜55%、特に好ましくは40〜50%である。酸溶液の濃度は、用いる酸の種類により適宜決定することができる。浸漬温度は、室温〜90℃、好ましくは30〜80℃、さらに好ましくは40〜70℃である。また、浸漬時間は、温度により異なるが、15分以上行えばよい。例えば40℃の場合、1時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上である。また、60℃の場合、30分以上、好ましくは60分以上、さらに好ましくは3時間以上である。さらに、90℃の場合は、15分以上、好ましくは30分以上、さらに好ましくは1時間以上である。
酸処理により、チタンまたはチタン合金の表面がエッチングを受け、凹凸が生じ、表面粗さが増大する。凹凸は、チタンまたはチタン合金に孔径0.1〜10μmの孔が形成されているような凹凸が望ましい。凹凸の状態は、走査型電子顕微鏡で観察することにより測定することができる。また、表面粗さは、表面粗さ計で測定することができる。表面粗さは、Ra(算術平均値)およびRz(最大深さ)で表すことができるが、酸処理を行ったチタンまたはチタン合金のRaは、0.1μm〜10μm、好ましくは0.1μm〜1μmであり、Rzは1μm〜15μm、好ましくは3μm〜10μmである。また、酸処理により水素化チタンが生成し、活性化している。
酸処理により表面に凹凸が生じたチタンまたはチタン合金をさらにアルカリ処理することにより、凹凸がさらに微細化され、アパタイト形成がされやすくなる。アルカリ処理に用いるアルカリは限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができ、好適には水酸化ナトリウムが用いられる。チタンまたはチタン合金のアルカリ処理は、チタンまたはチタン合金をアルカリ溶液に浸漬すればよい。アルカリ溶液の濃度は、1〜10M、好ましくは2〜8M、さらに好ましくは4〜6Mである。浸漬する際の温度および浸漬時間は、温度が40℃〜80℃、好ましくは50℃〜70℃、時間は1時間以上、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上である。
アルカリ処理を行ったチタンまたはチタン合金へのアパタイトによるコーティングは、カルシウムイオンとリン酸イオンをそれぞれ含有する水溶液に交互に浸漬すればよい。カルシウムイオンを含有する水溶液は、カルシウムイオンを含むがリン酸イオンを実質的に含まない、好ましくはリン酸イオンをまったく含まない水溶液である。カルシウム溶液としては、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの混合溶液等が挙げられ、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムの使用が望ましい。カルシウム溶液において、カルシウムイオン濃度は、好ましくは0.01〜10M、特に好ましくは0.1〜1Mである。カルシウムイオンを含む水溶液のpHは特に限定されないが、トリス緩衝溶液を用いる場合には、好ましくはpH6〜10、特に好ましくはpH7.4である。カルシウム水溶液は、トリスバッファー等を用いて調製すればよいし、水酸化ナトリウムや塩酸等によりpHを調整してもよい。
リン酸イオンを含む水溶液は、リン酸イオンを含むがカルシウムイオンを実質的に含まない、好ましくはカルシウムイオンをまったく含まない水溶液である。リン酸溶液としては、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの混合溶液等が挙げられるが、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムが最も望ましい。リン酸溶液において、リン酸イオン濃度は、好ましくは0.01〜10M、特に好ましくは0.1〜1Mである。リン酸イオンを含む水溶液のpHは特に限定されないが、トリス緩衝溶液を用いる場合には、好ましくはpH6〜10、特に好ましくはpH7.4である。カルシウム水溶液は、トリスバッファー等を用いて調製すればよいし、水酸化ナトリウムや塩酸等によりpHを調整してもよい。
カルシウムイオンを含む水溶液及びリン酸イオンを含む水溶液の組合せは特に限定されず、例えば、塩化カルシウム水溶液とリン酸水素ナトリウム水溶液の組合せ、酢酸カルシウム水溶液とリン酸二水素ナトリウムアンモニウム水溶液との組合せ等が挙げられる。カルシウムイオンを含む水溶液及びリン酸イオンを含む水溶液には、他のイオンが存在していてもよい。
交互浸漬は、カルシウムイオンを含有する水溶液への浸漬およびリン酸イオンを含有する水溶液への浸漬を行うことを1サイクルとした場合、2〜数百サイクル、好ましくは2〜100サイクル、さらに好ましくは2〜50サイクル、特に好ましくは5〜30サイクル行えばよい。なお、カルシウムイオンを含有する水溶液への浸漬およびリン酸イオンを含有する水溶液への浸漬の順序はどちらが先でもよく、最後の浸漬において、1サイクルを終了させる必要は必ずしもない。カルシウムイオンを含有する水溶液への浸漬から始まり、カルシウムイオンを含有する水溶液への浸漬で終了してもよいし、リン酸イオンを含有する水溶液への浸漬から始まり、リン酸イオンを含有する水溶液への浸漬で終了してもよい。また、カルシウムイオンを含有する水溶液またはリン酸イオンを含有する水溶液への浸漬の前には、チタンまたはチタン合金を精製水等で洗浄し、前の浸漬液を除去するのが好ましい。
カルシウムイオンを含有する水溶液またはリン酸イオンを含有する水溶液への浸漬時間は、1回当たり、1分〜7日間、好ましくは5分〜3日間、さらに好ましくは5分〜1日間、特に好ましくは5分〜数時間、例えば、5時間、3時間もしくは1時間である。トータルの浸漬時間は上記時間を考慮して適宜選択すればよい。
浸漬時の温度は、0〜80℃、好ましくは20〜60℃である。
浸漬時の温度は、0〜80℃、好ましくは20〜60℃である。
上記アパタイトコーティングにより、0.0001〜1mmの厚さのアパタイト層が形成される。
本発明のアパタイト被膜が形成されたチタンまたはチタン合金からできたインプラント材料は、生体活性インプラント材料として、人工骨、人工歯根、骨欠損充填剤、人工関節、血液濾過材、カテーテル、ステント等のチタン性医用材料として用いることができる。ここで、生体活性とは生体との親和性が高く、また生体との密着性が高いことをいう。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の検討により、高濃度酸処理を検討し、条件によっては、チタン表面がきわめて特異的に腐食されて表面に規則正しい凹凸が生じ、表層が活性皮膜で覆われることを見出した。
1.濃硫酸によるチタンの表面改質(酸濃度と種類の影響)
表1に示す5種の高濃度の無機酸および1種の希硫酸に、純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-I、20x15x1mm)を各条件の温度と時間で浸漬した。水洗・乾燥後、表面粗さ計(東京精密、Surfcom130A)を用いて、Ra(算術平均値)およびRz(最大深さ)を測定した。また、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により表面の二次電子像(SEM)を観察した。さらに、X線回折装置(リガク、RINT2500)により表面の結晶相を定性分析した。比較のため、サンドブラスト装置(松風、Hi-blasterII)で75μmのアルミナを用いてチタン板表面をサンドブラスト仕上げした。また、反応過程を検討するため、溶液中の沈澱物質を500℃で2時間焼成した粉末をX線回折およびフーリエ変換赤外分光分析(JASCO、FT/IR-460p1us)により定性分析した。図2に示すように、60℃に加温した濃硫酸でエッチングすると、サンドブラスト処理した場合よりも、表面粗さは大きくなった。フッ酸を用いた場合、室温で浸漬しても激しく発泡したため、1分で実験を終了したが、濃硫酸ほどの表面粗さは得られなかった。濃リン酸、濃塩酸、濃硝酸の場合は、表面粗さの増大は小さかった。図3に純チタン板を濃硫酸(48%、60℃、1時間)で処理した後の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、濃硫酸で処理した場合、粒界が大きくエッチングされ、粒内は約1〜2μmの直径の孔が生じて、多孔質の表面状態を呈した。すなわち、エッチング時間の増加に伴いエッチングされる深さが増大しているのがわかる。断面観察の結果からも、最大深さは表面粗さの測定結果と同様に約10μmであった。他の酸では、このような多孔質表面は観察されなかった。X線回折の結果から、濃硫酸、濃塩酸、濃リン酸で処理した表面にはTiH2が生成していた。濃硝酸、希硫酸では、TiH2の生成は認められなかった。フッ酸では、TiH2だけではなく、他の未知物質が生成していた。またチタンを浸漬した後の濃硫酸は紫色を呈し、その沈澱物の500℃焼成体はTiOS04と同定された。以上のことから加温した濃硫酸にチタンを浸漬すると、表面の不動態被膜が還元され、TiはTiH2を生成しながら、Ti-SO4となって溶解するものと考えられた。この溶解により純チタン表面を多孔質にすることが可能であり、また、その多孔質の制御も容易であると判断された。
表1に示す5種の高濃度の無機酸および1種の希硫酸に、純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-I、20x15x1mm)を各条件の温度と時間で浸漬した。水洗・乾燥後、表面粗さ計(東京精密、Surfcom130A)を用いて、Ra(算術平均値)およびRz(最大深さ)を測定した。また、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により表面の二次電子像(SEM)を観察した。さらに、X線回折装置(リガク、RINT2500)により表面の結晶相を定性分析した。比較のため、サンドブラスト装置(松風、Hi-blasterII)で75μmのアルミナを用いてチタン板表面をサンドブラスト仕上げした。また、反応過程を検討するため、溶液中の沈澱物質を500℃で2時間焼成した粉末をX線回折およびフーリエ変換赤外分光分析(JASCO、FT/IR-460p1us)により定性分析した。図2に示すように、60℃に加温した濃硫酸でエッチングすると、サンドブラスト処理した場合よりも、表面粗さは大きくなった。フッ酸を用いた場合、室温で浸漬しても激しく発泡したため、1分で実験を終了したが、濃硫酸ほどの表面粗さは得られなかった。濃リン酸、濃塩酸、濃硝酸の場合は、表面粗さの増大は小さかった。図3に純チタン板を濃硫酸(48%、60℃、1時間)で処理した後の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示すが、濃硫酸で処理した場合、粒界が大きくエッチングされ、粒内は約1〜2μmの直径の孔が生じて、多孔質の表面状態を呈した。すなわち、エッチング時間の増加に伴いエッチングされる深さが増大しているのがわかる。断面観察の結果からも、最大深さは表面粗さの測定結果と同様に約10μmであった。他の酸では、このような多孔質表面は観察されなかった。X線回折の結果から、濃硫酸、濃塩酸、濃リン酸で処理した表面にはTiH2が生成していた。濃硝酸、希硫酸では、TiH2の生成は認められなかった。フッ酸では、TiH2だけではなく、他の未知物質が生成していた。またチタンを浸漬した後の濃硫酸は紫色を呈し、その沈澱物の500℃焼成体はTiOS04と同定された。以上のことから加温した濃硫酸にチタンを浸漬すると、表面の不動態被膜が還元され、TiはTiH2を生成しながら、Ti-SO4となって溶解するものと考えられた。この溶解により純チタン表面を多孔質にすることが可能であり、また、その多孔質の制御も容易であると判断された。
2.濃硫酸によるチタンの表面改質(濃硫酸による温度と時間の影響)
純チタン板をアセトン中で超音波洗浄し、室温にて乾燥後、重量測定を行った。次に48%硫酸に、純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-1、20x15x1mm)を表2に示す各条件の温度と時間で浸漬後、蒸留水で水洗乾燥後、重量測定を行い、浸漬前後の重量差から重量減少量を求めた。さらにX線回折(XRD、リガクR1NT-2500)、また表面粗さ計(東京精密、Surfcom130A)を用いて、Ra(算術平均値)およびRz(最大深さ)を測定した。さらにフーリエ変換赤外分光光度計(JASCO、Ft/IR-460 plus)により定性分析を行い、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により表面の二次電子像(SEM)を観察した。
純チタン板をアセトン中で超音波洗浄し、室温にて乾燥後、重量測定を行った。次に48%硫酸に、純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-1、20x15x1mm)を表2に示す各条件の温度と時間で浸漬後、蒸留水で水洗乾燥後、重量測定を行い、浸漬前後の重量差から重量減少量を求めた。さらにX線回折(XRD、リガクR1NT-2500)、また表面粗さ計(東京精密、Surfcom130A)を用いて、Ra(算術平均値)およびRz(最大深さ)を測定した。さらにフーリエ変換赤外分光光度計(JASCO、Ft/IR-460 plus)により定性分析を行い、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により表面の二次電子像(SEM)を観察した。
図4は表2で示す各条件の温度と時間における重量減少量を示す。RT(室温)では8hrまでほとんど変化がみられず、長い誘導期間がみられる。40℃では1hrまでほとんど変化がみられず、その後3hrまで大きな重量減少を示し、その後の変化量は緩やかとなった。60℃の場合には、0.5hrから変化がみられ、1hrまでさらに大きな変化を示し、その後の変化量は緩やかとなった。90℃の場合は60℃の場合よりもさらに急激な重量減少を示した。したがって、浸漬温度の上昇に伴い誘導期間は短くなり、重量減少速度は速くなり、溶解量も増加する傾向を示した。図5は濃硫酸(48%)の温度を変えた場合の表面粗さ(Ra:算術平均粗さ、RZ:最大深さ)の変化を示す。図4に示す重量減少量と同じ傾向を示した。すなわち、重量変化量と表面粗さはそれぞれ相関を示し、温度上昇、時間経過に伴って、両値ともに変加速度及び変化量が増加した。また、温度が高い方が、短時間で表面粗さが大きくなることがわかる。また、XRDの結果より、この誘導期間はチタン表面の不動態被膜であるTiO2の溶解に要する時間であり、それ以降TiがTiH2を生成しながら溶解していくものと考えられた。さらに、SEM観察により、各温度での誘導期間が経過した後、腐食が急激に進行していることが確認された。以上の結果より、純チタンの表面は48%硫酸により著しく腐食され、その表面は多孔質となるが、浸漬温度と浸漬時間により表面状態は大きく変化した。
以上の結果より、エッチング条件により、表面の凹凸は細胞適合性に良いとされるO.1〜1Oμmに容易に制御可能である。
3.高濃度酸エッチングによるチタンの表面改質(アルカリ処理に与える影響)
純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-I、20x15x1mm)をアセトン中で10分聞超音波洗浄し、室温にて乾燥した。次に、(1)5M-NaOH水溶液に50℃、24時間浸漬(以下AA)、(2)5M-NaOH水溶液に60℃、24時間浸漬後、600℃、1O分間真空焼成(以下AV)(3)48%硫酸水溶液に6O℃、1時間浸漬後、(1)の操作を行った(以下AAA)(4)48%硫酸水溶液に60℃、1時間浸漬後、(2)の操作を行った(以下AAV)。その後、それらの試料を1週間または3週間37℃の擬似体液(SBF)中に浸漬した。それぞれの試料は室温にて水洗乾燥後、X線回折(XRD、リガクRINT-2500)、顕微フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO、Ft/IR-460 plus)、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により状態分析を行った。
純チタン板(Kobelco、KS-40、JIS-I、20x15x1mm)をアセトン中で10分聞超音波洗浄し、室温にて乾燥した。次に、(1)5M-NaOH水溶液に50℃、24時間浸漬(以下AA)、(2)5M-NaOH水溶液に60℃、24時間浸漬後、600℃、1O分間真空焼成(以下AV)(3)48%硫酸水溶液に6O℃、1時間浸漬後、(1)の操作を行った(以下AAA)(4)48%硫酸水溶液に60℃、1時間浸漬後、(2)の操作を行った(以下AAV)。その後、それらの試料を1週間または3週間37℃の擬似体液(SBF)中に浸漬した。それぞれの試料は室温にて水洗乾燥後、X線回折(XRD、リガクRINT-2500)、顕微フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO、Ft/IR-460 plus)、走査型電子顕微鏡(JEOL、JSM-5510LV)により状態分析を行った。
図6にAA、AAAおよびAAVのSBF浸漬前のXRD図形を示す。AAおよびAAAではチタン酸ナトリウムによる回折線が明確に認められ、AAAはAAよりもその生成量が多いことと推測される。また、AAAではAAで測定されなかった水素化チタンの存在が確認された。AAVでは水素化チタンは確認できなかったことから、水素化チタンは真空焼成を行うと消失すると考えられる。また、SBF浸漬後のXRD図形では全ての試料においてアパタイトの存在は確認できなかった。図7にAAAのSBF3週間浸漬後の顕微FTIRスペクトルを示す。FTIRではXRD測定できなかったアパタイトの存在が1030cm-1付近の吸収ピークが確認された。これは生成されたアパタイトが結晶性の低いアモルファスの状態であるためと考えられる。また、1400〜1500cm-1付近に炭酸に起因する吸収ピークが認められ、析出物は生体適合性の高い炭酸含有アパタイトであると考えられる。AAAにおいてはAAより、AAVにおいてはAVより多くの析出物が観察された。この析出物はアパタイトであると思われるが、また、AAAとAAVを比較するとAAAの方がより多くの析出物が観察された。以上の結果より、48%硫酸水溶液によりチタンの表面改質を行うと、水素化チタンが生成すること、この表面に5M水酸化ナトリウム水溶液で処理を施した場合、チタン酸ナトリウムの生成量が増大することが確認された。したがって、チタンをアルカリ処理する前に硫酸エッチングを行うことにより、アパタイト形成能に優れた生体活性表面層の形成を促進することが判明した。
さらに、この酸処理したチタン表面にアルカリ処理(5M NaOH、60℃、1時間)したチタンメッシュ(#120)表面およびその表面に1O回交互浸漬によりアパタイトを析出させた表面の走査型電子顕微鏡写真を図8に示す。酸処理によって作製された凹凸(図8左)がアルカリ処理によりさらに微細化された網目構造が形成されている(図8左)。この処理面を室温のリン酸水素ナトリウム水溶液(200mM)と塩化カルシウム溶液(500mM)に1O分間づつ1O回交互浸漬した場合、アパタイトが効率的に均一に生成された(図8右)。アパタイトの存在はフーリエ変換顕微赤外分光光度計により確認した。浸漬回数が多い方がアパタイト生成量は多くなった。
Claims (5)
- チタンまたはチタン合金を酸により表面に凹凸を形成したのち、アルカリ処理し、さらにアパタイトを被覆することを特徴とするアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
- 酸として高濃度の塩酸、硫酸、リン酸、フッ酸、硝酸またはこれらの混合酸を使用することを特徴とする請求項1記載のアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
- アパタイトの被覆がカルシウムイオンを含有する水溶液およびリン酸イオンを含有する水溶液に交互に浸漬することにより行われる請求項1または2に記載のアパタイト被覆生体活性インプラントの製造方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の方法により製造された、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
- チタンまたはチタン合金の表面に酸処理により、孔径0.1〜10μmの凹凸を形成させ、さらにアルカリ処理を施しアパタイトが析出し易くなるように加工したチタンまたはチタン合金をカルシウムイオンを含有する水溶液およびリン酸イオンを含有する水溶液に交互に浸漬することによりアパタイト被覆を形成させた、チタンまたはチタン合金を含むアパタイト被覆生体活性インプラント。
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