以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1及び図6を参照して、本発明の第1の実施例に係る弾性表面波装置の製造方法を説明する。
図1(a)に示すように、まず、圧電性基板として、LiTaO3基板1を用意する。本実施例では、36°Y板X伝搬、オイラー角で(0°,126°,0°)のLiTaO3基板が用いられる。もっとも、圧電性基板としては、他の結晶方位のLiTaO3基板を用いてもよく、あるいは他の圧電単結晶からなるものを用いてもよい。また、絶縁性基板上に圧電性薄膜を積層してなる圧電性基板を用いてもよい。なお、オイラー角(φ,θ,ψ)のθ=カット角+90°の関係がある。
LiTaO3基板1上に、全面に第1絶縁物層2を形成する。本実施例では、第1絶縁物層2は、SiO2膜により形成されている。
第1絶縁物層2の形成方法は、印刷、蒸着、またはスパッタリングなどの適宜の方法により行われ得る。また、第1絶縁物層2の厚みは、後で形成されるIDT電極の厚みと等しくされている。
次に、図1(b)に示すように、フォトリソグラフィー技術を用いて、レジストパターン3を形成する。レジストパターン3では、IDTが形成される領域を除いてレジストが位置するようにレジストパターン3が構成されている。
次に、図1(c)に矢印で示すようにイオンビームを照射する反応性イオンエッチング法(RIE)などにより、第1絶縁物層2の内、レジスト3の下方に位置している部分を除いた残りの部分を除去する。
フッ素系のガスによるRIEによってSiO2をエッチングした場合、重合反応により残渣が生じる場合がある。この場合、RIEを行った後、BHF(バッファードフッ酸)等により処理することで対応できる。
しかる後、Cu膜とTi膜を、第1絶縁物層2と等しい厚みに成膜する。図1(d)に示すように、第1絶縁物層2が除去されている領域、すなわちIDTが形成される領域にCu膜4が付与され、同時にレジストパターン3上にもCu膜4が付与される。次に、全面保護金属膜としてTi膜5を形成する。図1(e)に示すように、Ti膜5は、IDT電極4Aの上面と、レジストパターン3上のCu膜4上に付与されることになる。従って、IDT電極4Aは、側面が第1絶縁物層2で被覆され、上面がTi膜5により被覆されている。このようにして、IDT電極4Aと保護金属膜とが形成され、IDT電極4Aの厚みと保護金属膜としてのTi膜5の厚みの合計の厚みと第1絶縁物層2の厚みとが同じ厚みを有するように構成される。
しかる後、レジスト剥離液を用い、レジストパターン3を除去する。このようにして、図1(f)に示すように、第1絶縁物層2が設けられている領域を除いた残りの領域にIDT電極4Aが形成されており、IDT電極4Aの上面がTi膜5により被覆されている構造が得られる。
しかる後、図1(g)に示すように、全面に第2絶縁物層6としてSiO2膜を形成する。
このようにして、図6に示す1ポート型の弾性表面波共振子11を得た。
なお、図1(a)〜(g)では、IDT電極4Aが形成されている部分のみが抜き出されて説明された。しかしながら、図6に示されているように、弾性表面波共振子11は、IDT電極4Aの弾性表面波伝搬方向両側に反射器12,13を備えている。反射器12,13もまた、IDT電極4Aと同じ工程により形成される。
上記実施例では、1ポート型弾性表面波共振子11が構成されているため、LiTaO3基板1上に、1個のIDT電極4Aが形成されていたが、弾性表面波装置の用途に応じて、複数のIDT電極が形成されてもよく、また上記のように反射器がIDTと同一工程により形成されてもよく、反射器が設けられずともよい。
比較のために、図109に示した従来のSiO2膜を有する弾性表面波装置の製造方法に準じて、1ポート型弾性表面波共振子を作製した。もっとも、この比較例においても、基板材料としては、36°回転Y板X伝搬(オイラー角で(0°,126°,0°))のLiTaO3基板を用い、IDT電極はCuにより形成した。図109に示した製造方法から明らかなように、IDT電極53Aが形成された後に、SiO2膜54が形成されるため、SiO2膜54の表面に凹凸が生じざるを得なかった。比較例において、CuからなるIDT電極の規格化膜厚h/λ(hはIDT電極の厚み、λは弾性表面波の波長)を0.042とし、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ(HsはSiO2膜の厚み)を、0.11、0.22及び0.33とした場合のインピーダンス特性及び位相特性を図4に示す。図4から明らかなように、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが大きくなるにつれて、反共振点におけるインピーダンスと共振点におけるインピーダンスとの比であるインピーダンス比が小さくなることがわかる。
また、図5は、比較例で製作された弾性表面波共振子のSiO2膜の規格化膜厚Hs/λと、共振子のMF(Figure of Merit)との関係を示す。図5から明らかなように、SiO2膜の膜厚が厚くなるにつれて、MFが低下することがわかる。
すなわち、図109に示した従来法に準じて、IDT電極及びSiO2膜を形成した場合、たとえCuによりIDT電極を形成したとしても、SiO2膜の膜厚が厚くなるにつれて、特性が大きく劣化した。これは、SiO2膜表面に前述した凹凸が生じざるを得ないことによると考えられる。
これに対して、本実施例の製造方法によれば、SiO2膜の膜厚を増加させた場合でも特性の劣化が生じ難いこと、図7〜9に示す。
図7は、上記実施例に従って弾性表面波共振子11を得た場合のSiO2膜の厚み、すなわち、第2絶縁物層6の厚みを変化させた場合のインピーダンス特性及び位相特性の変化示す図である。また、図8及び図9の破線は、それぞれ、実施例においてSiO2膜の膜厚Hs/λを変化させた場合の共振子のγ及びMFの変化を示す図である。
なお、図8及び図9においては、上記比較例の結果を、実線で示す。
図7を、図4と比較すれば明らかなように、上記実施例では、比較例の場合に比べて、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λを増加させても、インピーダンスの低下が生じ難いことがわかる。
また、図8及び図9の結果から明らかなように、比較例に比べて、実施例の製造方法によれば、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λの増加に伴う特性の劣化が抑制されることがわかる。
すなわち、本実施例の製造方法によれば、上記のようにSiO2膜の膜厚を増加させた場合であっても、インピーダンス比の低下が生じ難く、特性の劣化を抑制することができる。
他方、図10は、SiO2膜の膜厚と、比較例及び実施例の製造方法で得られた弾性表面波共振子の周波数温度特性TCFとの関係を示す図である。
図10において、実線が比較例、破線が実施例の結果を示す。
図10から明らかなように、実施例の製造方法によれば、SiO2膜の膜厚を増加させた場合に、周波数温度特性TCFを膜厚増に応じて理想的に改善し得ることがわかる。
従って、上記実施例の製造方法を採用することにより、特性の劣化が生じ難く、温度特性を効果的に改善し得る弾性表面波共振子を提供し得ることがわかる。
加えて、本実施例の製造方法では、IDT電極は、Alよりも高密度のCuにより構成されている。従って、IDT電極4Aは十分な反射係数を有し、共振特性上に表れる所望でないリップルを抑制することができる。これを、以下において説明する。
Cuに代えてAl膜を用いたことを除いては、上記実施例と同様にして第2の比較例の弾性表面波共振子を作製した。但し、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λは0.08とした。すなわち、第1の絶縁物層の厚みの規格化膜厚を0.08とした。このようにして得られた弾性表面波共振子のインピーダンス及び位相特性を図11に実線で示す。
また、SiO2膜を形成しなかったことを除いては、第2の比較例と同様にして構成された弾性表面波共振子のインピーダンス及び位相特性を図11に破線で示す。
図11の実線から明らかなように、上記実施例の製造方法に従ったとしても、IDT電極をAlで形成し、かつSiO2膜を形成した場合には、図11の矢印Aで示す大きなリップルが共振点と反共振点との間において表れることがわかる。また、このようなリップルは、SiO2を有しない弾性表面波共振子では表れていないことがわかる。
従って、SiO2膜の形成により周波数温度特性の改善等を図ろうとしても、AlによりIDT電極を形成した場合には、上記リップルAが表れ、特性の劣化を引き起こすことがわかる。本願発明者は、この点につきさらに検討した結果、IDT電極として、Alよりも高密度の金属を用いれば、IDT電極の反射係数を高めることができ、それによって上記リップルAを抑制し得ることを見出した。
すなわち、上記実施例と同様の製造方法に従って、但し、IDT電極4を構成する金属の密度を種々異ならせ、上記実施例と同様にして弾性表面波共振子を作製した。このようにして得られた弾性表面波共振子のインピーダンス特性を図12(a)〜(e)に示す。図12(a)〜(e)は、それぞれ、IDT電極及び保護金属膜の積層構造の平均密度ρ1の第1絶縁物層の密度ρ2に対する比ρ1/ρ2が、2.5、2.0、1.5、1.2及び1.0の場合の結果を示す。
図12(a)〜(e)から明らかなように、図12(a)〜(c)では、上記リップルAが帯域外にシフトされ、さらに図12(a)では、上記リップルAが著しく抑圧されていることがわかる。
従って、図12の結果から、IDT電極及び保護金属膜の積層構造の第1絶縁物層に対する密度比を1.5倍以上とすれば、上記リップルAを共振周波数−反共振周波数の帯域の外側にシフトさせ、良好な特性の得られることがわかる。また、より好ましくは、上記密度比を2.5倍以上とすれば、リップル自体を小さくし得ることがわかる。
図12(a)〜(e)では、上記実施例に従って、IDT電極4A上に、Ti膜が積層されていたため、上記平均密度が用いられたが、本発明においては、IDT電極4A上に、保護金属膜が設けられずともよい。その場合には、IDT電極4Aの厚みを第1の絶縁物層の厚みと同じにして、IDT電極の密度の第1絶縁物層の密度に対する比を1.5倍以上とすることが好ましく、より好ましくは2.5倍以上とすればよく、上記と同様の効果の得られることが確かめられた。
従って、SiO2膜によりIDT電極を被覆してなる弾性表面波共振子において、IDT電極の密度あるいはIDT電極と保護金属膜との積層体の平均密度を、IDT電極の側方に位置する第1絶縁物層の密度よりも大きくすれば、IDT電極の反射係数を高めることができ、それによって共振点−反共振点間に表れる特性の劣化を抑制し得ることがわかる。
なお、Alより高密度の金属もしくは合金としては、Cuの他、Ag,Auなどやこれらを主体とする合金が挙げられる。
また、好ましくは、上記実施例のように、IDT電極上に、保護金属膜を積層した構造とすれば、図1(a)〜(g)に示した製造方法から明らかなように、レジストパターン3を剥離する際に、IDT電極4Aの側面が第1絶縁物層2により覆われており、かつ上面が保護金属膜6により覆われているため、IDT電極4Aの腐食を防止することができる。よって、より一層良好な特性を有する弾性表面波共振子を提供し得ることがわかる。
さらに、SiO2以外のSiOxNyなどの他の温度特性改善効果のある絶縁性材料により第1,第2の絶縁物層を形成してもよい。また、第1,第2の絶縁物層は異なる絶縁性材料で構成されてもよく、上記のように等しい材料で構成されてもよい。
図13は、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、様々な厚みで様々な金属を用いてIDT電極を形成した場合のIDTの規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数の関係を示す図である。
図13から得られる、Alに比べて電気機械結合係数が大きくなる電極の規格化膜厚を各金属について調べたところ、図14に示す結果が得られた。すなわち、図14は、上記LiTaO3基板上に、様々な密度の金属からなるIDT電極を形成した場合に、上述したようにAlからなるIDT電極を形成した場合に比べて電気機械結合係数が大きくなる電極膜厚範囲を示す図である。
図14において、各金属からなる電極の膜厚範囲のうち上限が、Alよりも電気機械結合係数が大きくなる範囲の限界値であり、各金属の電極膜厚範囲の下限は作製限界を示す。電気機械結合係数の大きな電極膜厚の範囲をy、密度をxとして上限を二次式で近似すると、y=0.00025x2−0.01056x+0.16473となる。
従って、後述の各電極材料別の具体的な実施例の説明から明らかなように、14°〜50°回転Y板X伝搬(オイラー角で(0°,104°〜140°,0°))のLiTaO3からなる圧電基板上に電極が形成されており、さらにSiO2膜は規格化膜厚Hs/λ0.03〜0.45の範囲で形成されている構造において、電極の規格化膜厚H/λが、
0.005≦H/λ≦0.00025×ρ2−0.01056×ρ+0.16473 …式(1)
を満たす場合、図14の結果から明らかなように電気機械結合係数を高めることができる。なお、ρは電極の平均密度を示す。
本発明においては、電極は、上述したアルミニウムよりも密度の高い金属を用いて構成されていることを特徴とする。この場合、電極は、アルミニウムよりも密度の高い金属から構成されていてもよく、あるいはアルミニウムを主体とする合金で構成されていてもよい。また、アルミニウムもしくはアルミニウムを主成分とする合金からなる主たる金属膜と、該金属膜と異なる金属からなる従たる金属膜の積層構造で構成されていてもよい。積層膜により電極が構成されている場合、電極の平均密度をρ、主たる電極層の金属の密度をρ0とした場合、ρ0×0.7≦ρ≦ρ0×1.3を満足する平均密度であればよい。
また、本発明においては、上記のように第2絶縁物層の表面が平坦化されるが、この平坦化とは、電極の膜厚の30%以下の凹凸を有するものであればよい。30%を超えると、平坦化による効果が十分に得られないことがある。
さらに、上記のように第2絶縁物層の平坦化は、様々な方法で行われる。例えば、エッチバックによる平坦化方法、逆スパッタ効果による斜入射効果を利用した平坦化方法、絶縁物層表面を研磨する方法、あるいは電極を研磨する方法などが挙げられる。これらの方法は2種以上が併用されてもよい。これらの方法の詳細を、図102〜図105を説明する。
図102(a)〜(c)は、エッチバック方法により絶縁物層表面を平坦化する方法である。まず、図102(a)に示すように、圧電性基板41上に、電極42が形成され、しかる後絶縁物層43が形成される。図102(b)に示すように、絶縁物層43上にレジスト44がスピンコーティング等により形成される。レジスト44の表面は平坦である。従って、この状態から、反応性イオンエッチングによりエッチングすることにより、すなわちエッチバックにより、SiO2などからなる絶縁物層43の表面を平坦化することができる(図102(c))。
図103(a)〜(d)は、逆スパッタ法を説明するための各模式的断面図である。ここでは、圧電性基板41上に電極42が形成され、しかる後絶縁物層43が形成される。そして、アルゴンイオンなどをスパッタリングにより絶縁物層43の表面に照射する。このイオンは、基板41をスパッタするために用いられている。イオンが基板に衝突し、スパッタリングを行う場合、平坦な面に入射するよりも、斜めの面に入射する場合の方が大きなスパッタ効果が得られる。これは、斜入射効果として知られている。この効果により、絶縁物層43の表面が、図103(b)〜(d)に示すように、スパッタリングを進めるに従って平坦化される。
図104(a)及び(b)は、絶縁物層を研磨することにより平坦化する方法を説明するための模式的断面図である。図104(a)に示すように、基板41上に、電極42及び絶縁物層43を形成した後、機械的または化学的に研磨することにより、絶縁物層43の表面を平坦化することができる。
図105(a)〜(c)は、電極を研磨することにより平坦化を図る方法である。ここでは、図105(a)に示すように、基板41上に、第1絶縁物層45を形成した後、電極材料からなる金属膜42Aを全面に蒸着等により形成される。しかる後、図105(b)に示すように、金属膜42Aを機械的または化学的に研磨することにより、電極42と、電極42が設けられている領域の周囲の領域に形成された第1絶縁物層45を形成する。このようにして、第1絶縁物層45及び電極42の上面が面一とされ、平坦化される。しかる後、図105(c)に示すように、第2絶縁物46を形成することにより、表面が平坦な絶縁物層を形成することができる。
本発明は、様々な弾性表面波装置に適用することができる。このような弾性表面波装置の例を、図106(a),(b)〜図108に示す。図106(a)及び(b)は、それぞれ、1ポート型弾性表面波共振子47及び2ポート型弾性表面波共振子48の電極構造を示す模式的平面図である。また、図106(b)に示す2ポート型弾性表面波共振子48と同じ電極構造を用いて2ポート型弾性表面波共振子フィルタを構成してもよい。
さらに、図107及び図108は、それぞれ、ラダー型フィルタ及びラチス型フィルタの電極構造を示す模式的平面図である。図107及び図108に示すラダー型フィルタ49a及びラチス型フィルタ49bのような電極構造を圧電性基板上に形成することにより、本発明に従ってラダー型フィルタ及びラチス型フィルタを構成することができる。
もっとも、本発明は、図106及び図107に示した電極構造を有する弾性表面波装置に限らず、様々な弾性表面波装置に適用することができる。
また、本発明に係る弾性表面波装置では、好ましくは、漏洩弾性波を用いた弾性表面波装置が構成される。特開平6−164306号公報には、Auなどの重い金属からなる電極を有する弾性表面波装置であって、伝搬減衰がないラブ波を用いた弾性表面波装置が開示されている。ここでは、重い金属を電極として用いることにより、伝搬する弾性表面波の音速が基板の遅い横波バルク波よりも遅くされ、それによって漏洩成分がなくなり、非漏洩の弾性表面波としてのラブ波が利用されている。
しかしながら、上記ラブ波では、音速が必然的に遅くなり、それに伴ってIDTのピッチが小さくならざるを得ない。従って、加工の難易度が高くなり、加工精度が劣化する。加えて、IDTの線幅も小さくなり、抵抗による損失も増大する。従って、損失が大きくならざるを得ない。
これに対して、本発明では、上記のようなラブ波を用いた弾性表面波装置とは異なり、Alよりも重い金属からなる電極を用いているにも関わらず、音速の速い漏洩弾性表面波を好適に利用することができ、その場合であっても伝搬損失の低減を図ることができる。従って、低損失の弾性表面波装置を構成することができる。
以下、上述した結果をふまえて、電極をAlよりも密度の大きい金属で構成した場合の個々の例につき、金属材料ごとに説明を行うこととする。
なお、本発明で用いられるAlよりも密度の大きい金属とは、(1)密度15000〜23000kg/m3及びヤング率0.5×1011〜1.0×1011N/m2あるいは横波音速が1000〜2000m/sである金属、例えばAu、(2)密度5000〜15000kg/m3及びヤング率0.5×1011〜1.0×1011N/m2あるいは横波音速が1000〜2000m/sである金属、例えばAg、(3)密度5000〜15000kg/m3及びヤング率1.0×1011〜2.05×1011N/m2あるいは横波音速が2000〜2800m/sである金属、例えばCu、(4)密度15000〜23000kg/m3及びヤング率2.0×1011〜4.5×1011N/m2あるいは横波音速が2800〜3500m/sである金属、例えばタングステン、(5)密度15000〜23000kg/m3及びヤング率1.0×1011〜2.0×1011N/m2あるいは横波音速が2000〜2800m/sである金属、例えばタンタル、(6)密度15000〜23000kg/m3及びヤング率1.0×1011〜2.0×1011N/m2あるいは横波音速が1000〜2000m/sである金属、例えば白金、(7)密度5000〜15000kg/m3及びヤング率2.0×1011〜4.5×1011N/m2あるいは横波音速が2800〜3500m/sである金属、例えばNi,Moが挙げられる。
〔電極がAuを主体とする実施例〕
図15は、本発明の他の実施例に係る弾性表面波装置としての縦結合共振子フィルタを説明するための平面図である。
弾性表面波装置21は、LiTaO3基板22の上面に、IDT23a,23b及び反射器24a,24bを形成した構造を有する。また、IDT23a,23b及び反射器24a,24bを覆うようにSiO2膜15が形成されている。なお、LiTaO3基板22としては、25°〜58°回転Y板X伝搬(オイラー角(0°,115°〜148°,0°))LiTaO3基板が用いられる。この範囲外のカット角の回転Y板X伝搬LiTaO3基板では、減衰定数が大きく、TCFも悪化する。
IDT23a,23b及び反射器24a,24bは、Alに比べて密度の高い金属により構成される。このような金属としては、Au、Pt、W、Ta、Ag、Mo、Cu、Ni、Co、Cr、Fe、Mn、Zn及びTiからなる群から選択された少なくとも1種の金属または該少なくともその1種を主成分とする合金が挙げられる。
上記のように、Alに比べて密度の高い金属によりIDT23a,23b及び反射器24a,24bが構成されているため、IDT23a,23b及び反射器24a,24bの膜厚をAlを用いた場合に比べて薄くした場合であっても、図16、図17に示すように、電気機械結合係数及び反射係数を高めることができる。
そして、上記のように電極膜厚を薄くすることができる。SiO2膜25の厚みについては、後述の実験例から明らかなように、弾性表面波の波長で規格化された膜厚Hs/λが0.03〜0.45の範囲であることが好ましい。なお、Hsは第1,第2絶縁物層をSiO2で構成した場合の合計の厚み、λは弾性表面波の波長を示す。この範囲にすることで、SiO2膜がない場合より減衰定数を大幅に小さくすることができ、低ロス化が可能となる。
IDTを構成する材料によっても異なるが、例えばAu膜からなる場合、IDT23a,23bの弾性表面波の波長で規格化された膜厚は0.013〜0.030が好ましい。Au膜が薄いと、IDTが引き回り抵抗をもつので、より好ましくは0.021〜0.03が好ましい。
本発明の係る弾性表面波装置では、上記のように、LiTaO3基板22上にAlよりも密度の大きい金属によりIDT23a,23bが構成されており、該IDT23a,23bの電極膜厚を薄くすることができる。よって、良好な特性を有し、かつSiO2膜25の形成により良好な周波数温度特性が実現される。これを、具体的な例に基づき説明する。
36°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、AlからなるIDTを形成した場合、及びAu、Ta、Ag、Cr、W、Cu、Zn、Mo、NiからなるIDTの種々の膜厚で形成した場合の電気機械結合係数Ksaw及び減衰定数(α)と反射係数|ref|の変化を図16,図18及び図17にそれぞれ示す。なお、数値計算はJ.J.Champbell and W.R.Jones:IEEE Trans.Sonic&Ultrason.SU-15.p209(1968)の方法に従い、電極は全面一様として計算を行った。
図16から明らかなように、AlからなるIDTにおいて、規格化された膜厚H/λが0.10の場合、電気機械結合係数Ksawは約0.27である。なお、Hは厚み、λは弾性表面波の波長を示す。これに対して、Au、Ta、Ag、Cr、W、Cu、Zn、Mo、NiからなるIDTではH/λを0.013〜0.035の範囲とした場合、より大きな電気機械結合係数Ksawを実現することができる。しかしながら、図18から明らかなように、膜厚H/λの如何に関わらず、AlからなるIDTでは減衰定数αがほぼ0であるのに対し、Au、Ta、Ag、Cr、W、Cu、Zn、Mo、NiからなるIDTでは、減衰定数が非常に大きくなる。
図25は、オイラー角で(0°,θ,0°)のLiTaO3基板上に、AuからなるIDT及びSiO2膜を形成した構造における、θと、電気機械結合係数との関係を示す図である。ここでは、AuからなるIDTの規格化膜厚を、0.022、0.025及び0.030とした場合、並びにSiO2膜の規格化膜厚Hs/λを、0.00(SiO2膜を成膜せず)、0.10、0.20、0.30及び0.45と変化させた。
図25から明らかなように、SiO2膜が厚くなるに連れて、電気機械結合係数Ksawが小さくなることがわかる。また、後述するように、SiO2膜による特性の劣化を抑制するために、IDTの膜厚を薄くした場合を考えてみる。前述の図16から明らかなように、従来のAlからなるIDTにおいて規格化膜厚を0.04まで薄くした場合、SiO2膜が形成されていない場合でも、電気機械結合係数Ksawは0.245と小さくなる。また、AlからなるIDTの規格化膜厚を0.04とし、SiO2膜を形成した場合には、電気機械結合係数Ksawはさらに小さくなり、実用上広帯域化が困難となる。
これに対して、図25から明らかなように、AuからなるIDTを形成し、SiO2膜を形成した構造では、オイラー角のθを128.5°以下とすることにより、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λを0.45程度とした場合であっても、電気機械結合係数Ksawは0.245以上となることがわかる。また、規格化膜厚が0.30程度のSiO2膜を形成した場合には、オイラー角のθを132°以下とすることにより、電気機械結合係数Ksawを0.245以上とすることができる。なお、後述するように、オイラー角のθが115°よりも小さい場合には、減衰定数が大きくなり、実用的ではない。従って、25°〜42°回転Y板X伝搬(オイラー角で(0±3°,115°〜132°,0±3°))、より好ましくは25°〜38.5°回転Y板X伝搬(オイラー角で(0±3°,115°〜128.5°,0±3°))のLiTaO3基板を用いることが好適であることがわかる。
他方、36°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,126°,0°)のLiTaO3基板の周波数温度特性(TCF)は−30〜−40ppm/℃であり、十分ではない。この周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、36°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,126°,0°)のLiTaO3基板上に、AuからなるIDTを形成し、さらにSiO2膜を種々の膜厚で形成した場合の周波数温度特性の変化を図19に示す。なお、図19において、○は理論値を示し、×は実験値を示す。ここでは、AuからなるIDTの規格化膜厚はH/λ=0.020である。
図19から明らかなように、SiO2膜の形成により、周波数温度特性が改善されることがわかる。特に、SiO2膜の規格化された膜厚Hs/λが0.25の近傍の場合、TCFが0となり好ましいことがわかる。
また、回転Y板X伝搬LiTaO3基板として、カット角が36°(オイラー角で(0°,126°,0°))及び38°(オイラー角で(0°,128°,0°))の2種類のオイラー角のLiTaO3基板を用い、AuからなるIDTの膜厚及びSiO2膜の膜厚を種々変化させた場合の減衰定数αの変化を数値解析した。結果を図20及び図21に示す。なお、図20及び図21のAuの膜厚値はH/λである。図20及び図21から明らかなように、AuからなるIDTの膜厚の如何に関わらず、SiO2膜の膜厚を選択すれば、減衰定数αを小さくし得ることがわかる。すなわち、図20及び図21から明らかなように、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.03〜0.45、より好ましくは0.10〜0.35の範囲とすれば、いずれかのオイラー角のLiTaO3基板及びいずれの膜厚のAuからなるIDTを形成した場合においても、減衰定数αが非常に小さくされ得ることがわかる。
さらに、図17により、AuからなるIDTを用いると、薄い膜厚でもAlに比べて十分大きな反射係数が得られていることがわかる。
従って、上記図16〜図21の結果から、LiTaO3基板上に膜厚H/λが0.013〜0.030のAuからなるIDTを形成した場合、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.03〜0.45の範囲とすれば、大きな電気機械結合係数が得られるだけでなく、減衰定数αを非常に小さくし、かつ、十分な反射係数を得ることができることができる。
上述した実施例において、カット角36°(オイラー角で(0°,126°,0°))のLiTaO3基板上に、H/λ=0.020の規格化膜厚のAuからなるIDTを形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.1のSiO2膜を形成してなる実施例の弾性表面波装置11の減衰量−周波数特性を図22に破線で示す。また、比較のために、該弾性表面波フィルタにおいて、SiO2膜を形成する前の構造の減衰量周波数特性を実線で示す。
図22から明らかなように、SiO2膜の形成により電気機械結合係数が0.30から0.28に若干小さくなるにもかかわらず、挿入損失が改善されていることがわかる。従って、図22から明らかなように、SiO2膜を上記特定の範囲の厚みとすれば、減衰定数αが小さくなることが裏付けられる。
本願発明者は、上述した知見に基づき、様々なオイラー角の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、規格化膜厚が0.02であるAuからなるIDTを形成し、さらに様々な厚みのSiO2膜を形成して1ポート型弾性表面波共振子を試作した。この場合、SiO2膜の規格化膜厚は、0.10、0.20、0.30及び0.45とした。このようにして得られた各1ポート型弾性表面波共振子のQ値を測定した。結果を図26に示す。
一般に、共振子のQ値が大きい程、フィルタとして用いた場合の通過帯域から減衰域にかけてのフィルタ特性の急峻性が高められる。従って、急峻なフィルタを必要とするときには、Q値は大きい方が望ましい。図26から明らかなように、SiO2膜の膜厚の如何に関わらず、カット角が48°回転Y板、オイラー角で(0°,138°,0°)付近でQ値が最大となり、カット角42°〜58°(オイラー角で(0°,132°〜148°,0°))の範囲でQ値が比較的大きいことがわかる。
従って、図26から明らかなように、カット角42°〜58°回転Y板(オイラー角で(0°,132°〜148°,0°))のLiTaO3基板を用い、該LiTaO3基板上に、Auよりも密度の高い金属からなる少なくとも1つのIDTを形成し、さらにSiO2膜をIDTを覆うようにLiTaO3基板上に形成した構造とすることにより、大きなQ値を得ることができることがわかる。好ましくは、図26から明らかなように、カット角は46.5°〜53°回転Y板(オイラー角で(0°,136.5°〜143°,0°))とされる。
なお、本発明においては、IDTの上面に密着層が形成されてもよい。すなわち、図27(a)に示すように、LiTaO3基板32上に、IDT33が形成されており、IDT33の上面に、密着層34が作製されていてもよい。密着層34は、IDT33とSiO2膜35との間に配置されている。密着層34は、SiO2膜35のIDT33に対する密着強度を高めるために設けられている。このような密着層34を構成する材料としては、PdまたはAl、あるいはこれらの合金が好適に用いられる。また、金属に限らず、ZnOなどの圧電材料や、Ta2O3もしくはAl2O3などの他のセラミックスを用いて密着層34を構成してもよい。密着層34の形成により、Alよりも密度が高い金属からなるIDT33とSiO2膜35との密着強度が高められ、それによってSiO2膜の膜剥がれが抑制される。
密着層34の厚みは、弾性表面波全般への影響を与えないためには、弾性表面波の波長の1%程度以下の厚みとすることが望ましい。また、図27(a)では、IDT33の上面に密着層34が形成されていたが、図27(b)に示すように、LiTaO3基板上にSiO2膜35との界面にも密着層34Aを形成してもよい。さらに図27(c)に示すように、密着層34は、IDT33の上面だけでなく側面をも覆うように形成されてもよい。
また、SiO2膜の密着強度を改善する他の構成として、IDT以外のバスバーや外部との接続用パッドを含む複数の電極において、該複数の電極を、それぞれ、IDTと同じ材料からなる下地金属層と、下地金属層上に積層されており、AlもしくはAl合金からなる上層金属層からなるものを用いてもよい。すなわち、例えば図15に示した反射器24a,24bを構成する電極膜として、IDT23a,23bと同じ材料からなる下地金属層と、該下地金属層上に、Al膜を積層してもよい。このように、AlやAl合金からなる上層金属層を設けることにより、SiO2膜との密着強度が高められる。また、電極コストを低減することもでき、さらにAlウェッジボンド性を高めることもできる。
なお、上記IDT以外の電極としては、反射器、バスバー、外部との電極的接続用パッドだけでなく、必要に応じて形成される引き回し電極などが挙げられる。また、上記Al合金としては、特に限定されないが、Al−Ti合金、Al−Ni−Cr合金などが挙げられる。
なお、上述した実験例の場合以外のオイラー角の回転Y板X伝搬LiTaO3基板を用いた場合においても、AuからなるIDTを形成した場合において、減衰定数αを最小とするSiO2膜の膜厚が存在することが本願発明者等により確かめられている。すなわち、SiO2膜の膜厚Hs/λを特定の範囲とすれば、上記実験例の場合と同様に、減衰定数αを小さくすることができる。一方、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.45としたときのオイラー角とαの関係を図28〜36に示す。これらの図からSiO2膜の膜厚が厚くなるに従い、αが極小となるオイラー角のθが小さくなることも明らかとなった。従って、他のオイラー角の回転Y板X伝搬LiTaO3基板を用いた場合であっても、AuからなるIDTを形成し、SiO2膜を積層した構造において、SiO2膜の厚みを選択することにより、従来の弾性表面波装置に比べて、周波数温度特性TCFが半分以下と良好であり、電気機械結合係数が大きく、かつ反射係数が大きな弾性表面波装置を構成することができる。このような効果を発現し得るLiTaO3基板のオイラー角と、AuからなるIDTの電極膜厚と、SiO2膜の膜厚の好ましい組み合わせは、以下の表16及び表17で示される通りであることが確かめられている。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上にAuを主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行ない、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図23及び図24を参照して説明する。図23は、36°回転Y板X伝搬(オイラー角で(0°,126°,0°))LiTaO3基板上に、種々の膜厚のAuからなるIDT及び種々の膜厚のSiO2膜を形成した場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図24は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚のAuからなるIDTを形成した場合、その上に形成されるSiO2膜の規格化膜厚を変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図23と図24を比較すれば明らかなように、Auの膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも弾性表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどによりAuからなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。特に好ましくは、Auの規格化膜厚が、0.015〜0.03の範囲であれば、SiO2膜による音速の変化が小さくなり、SiO2膜のばらつきによる周波数変動を小さくすることができる。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
〔電極材料がAgの実施例〕
本実施例の弾性表面波装置は、前述した図15に示した弾性表面波装置21と同様である。もっとも、本実施例では、IDT23a,23bがAgにより構成されている。
後述するように、IDT23a,23bがAgからなる場合には、IDT23a,23bの弾性表面波の波長で規格化された膜厚H/λは0.01〜0.08が好ましい。
本発明の係る弾性表面波装置では、上記のように、LiTaO3基板22上にAgによりIDT23a,23bが構成されており、該IDT23a,23bの電極膜厚を薄くすることができる。オイラー角のLiTaO3基板を用いるため減衰定数を大幅に小さくすることができ、低ロス化が可能となる。また、SiO2膜25の形成により、良好な周波数温度特性が実現される。これを、具体的な実験例に基づき説明する。
LiTaO3基板を伝わる弾性表面波には、レイリー波の他に漏洩弾性表面波(LSAW)がある。漏洩弾性表面波は、レイリー波に比べて音速が早く、電気機械結合係数が大きいが、エネルギーを基板内に放射しつつ伝搬する。従って、漏洩弾性表面波は、伝搬ロスの原因となる減衰定数を有する。
図36は、36°回転Y板X伝搬LiTaO3基板(オイラー角で(0°,126°,0°))上に、AgからなるIDTを形成した場合のAg膜の規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数Ksawとの関係を示す。なお、λは、弾性表面波装置の中心周波数における波長を示すものとする。
図36から明らかなように、Ag膜の膜厚H/λが0.01〜0.08の範囲において、電気機械結合係数Ksawが、Ag膜が形成されていない場合(H/λ=0)に比べて1.5倍以上となることがわかる。また、Ag膜の膜厚がH/λ=0.02〜0.06の範囲では、Ag膜が形成されていない場合に比べて、電気機械結合係数Ksawは1.7倍以上の値となり、Ag膜の膜厚H/λが0.03〜0.05の範囲では、Ag膜が形成されていない場合の1.8倍以上の値となることがわかる。
Ag膜の規格化膜厚H/λが0.08を超えると、Ag膜からなるIDTの作製が困難となる。従って、大きな電気機械結合係数を得ることができ、かつIDTの作製が容易であるため、Ag膜からなるIDTの厚みは、0.01〜0.08の範囲であることが望ましく、より好ましくは0.02〜0.06、さらに好ましくは0.03〜0.05の範囲とされる。
次に、LiTaO3基板上に、SiO2膜を成膜した場合の周波数温度係数TCFの変化を図37に示す。図37は、オイラー角(0°,113°,0°)、(0°,126°,0°)及び(0°,129°,0°)の3種類のLiTaO3基板上にSiO2膜が形成されている場合のSiO2膜の規格化膜厚Hs/λとTCFとの関係を示す。なお、ここでは電極は形成されていない。
図37から明らかなように、θが113°、126°及び129°のいずれの場合においても、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが0.15〜0.45の範囲において、TCFが−20〜+20ppm/℃の範囲となることがわかる。もっとも、SiO2膜の成膜には時間を要するため、SiO2膜の膜厚Hs/λは0.15〜0.40が望ましい。
LiTaO3基板上にSiO2膜を成膜することにより、レイリー波などのTCFが改善されることは知られていたが、LiTaO3基板上に、Agからなる電極を形成し、さらにSiO2膜を積層した構造において、実際に、Agからなる電極の膜厚、SiO2の膜厚、オイラー角、及び漏洩弾性波の減衰定数を考慮して実験された報告はない。
図38は、オイラー角(0°,120°,0°)のLiTaO3基板上に規格化膜厚H/λが0.10以下のAgからなる電極と、規格化膜厚Hs/λが0〜0.5のSiO2膜を形成した場合における減衰定数αの変化を示す。図38から明らかなように、SiO2膜の膜厚Hs/λが0.2〜0.40、Ag膜の膜厚H/λが0.01〜0.10である場合に減衰定数αが小さくなっていることがわかる。
他方、図39は、(0°,140°,0°)のオイラー角のLiTaO3基板上には、規格化膜厚H/λが0〜0.10のAg膜を形成し、さらに、規格化膜厚Hs/λが0〜0.5のSiO2膜を形成した場合の減衰定数αの変化を示す。
図39から明らかなように、オイラー角でθ=140°のLiTaO3基板を用いた場合には、Ag膜の膜厚が0.06以下においてSiO2膜の膜厚を上記のように変化させたとしても、減衰定数αは大きいことがわかる。
すなわち、良好なTCF、大きな電気機械結合係数及び小さな減衰定数を実現するには、LiTaO3基板のカット角すなわちオイラー角と、SiO2膜の膜厚と、Agからなる電極の膜厚とをそれぞれ最適なように組み合わせることが必要となることがわかる。
図40〜図47は、それぞれ、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4または0.45であり、規格化膜厚H/λが0.1以下のAg膜をLiTaO3基板上に形成した場合のθと減衰定数αとの関係を示す。
図40〜図47から明らかなように、Ag膜の厚みH/λを0.01〜0.08とした場合、SiO2膜の厚みと、オイラー角のθとが、下記の表18に示すいずれかの組み合わせとなるように選択されれば、周波数温度特性TCFが良好であり、電気機械結合係数が大きく、かつ減衰定数αを効果的に抑制し得ることがわかる。望ましくは、下記の表18の右側のより好ましいオイラー角を選択することにより、より一層良好な特性を得ることができる。
また、より好ましくは、Ag膜の規格化膜厚が0.02〜0.06の場合には、SiO2膜の厚みと、オイラー角のθとが、下記の表19に示すいずれかの組み合わせとなるように選択されれば、より一層好ましく、さらに望ましくは、下記の表19の右側のより好ましいオイラー角を選択することにより、より一層良好な特性を得ることができる。
さらに好ましくは、Ag膜の規格化膜厚が0.03〜0.05のときに、SiO2膜の厚みと、オイラー角のθとが、下記の表20に示すいずれかの組み合わせとなるように選択されれば、より一層良好な特性を得ることができる。この場合においても、下記の表20の右側に示すより好ましいオイラー角を選択することにより、特性をより一層改善することができる。
なお、本発明では、IDTはAgのみから構成されてもよいが、Agを主体とする限り、Ag合金やAgと他の金属との積層体で構成されてもよい。Agを主体とするIDTとは、IDTの全体の80重量%以上がAgであればよい。従って、Agの下地にAl薄膜やTi薄膜が形成されていてもよく、この場合においても、下地の薄膜とAgとの合計のうち80重量%以上がAgで構成されていればよい。
上記実験では、オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO3基板が用いられたが、基板材料のオイラー角において、φ及びψには0±3°のばらつきが通常発生する。このようなばらつきの範囲内、すなわち(0±3°,113°〜142°,0±3°)のLiTaO3基板においても、本発明の効果は得られる。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
〔Cuを電極材料として用いた場合の実施例〕
Cuにより電極を形成したことを除いては、Auを用いた場合と同様に図15に示した弾性表面波装置を構成した。Alに比べて密度の高いCuにより電極が構成されているため、電気機械結合係数及び反射係数を高めることができる。
図58は、SiO2膜の規格化膜厚が0.20の場合のCu電極とAl電極の電極膜一本あたりの反射率と、電極膜厚との関係を示す図である。
図58に示すように、従来用いられているAlからなる電極に比べて、Cuからなる電極を用いた場合、電極指1本あたりの反射率が高められるため、反射器における電極指の本数も低減することができる。従って、反射器の小型化、ひいては弾性表面波装置の小型化を図ることができる。
後述するように、IDT23a,23bの弾性表面波の波長で規格化された膜厚H/λは0.01〜0.08が好ましい。
図48は、オイラー角(0°,120°,0°)のLiTaO3基板上に規格化膜厚H/λが0.10以下のCuからなる電極と、規格化膜厚Hs/λが0〜0.5のSiO2膜を形成した場合における減衰定数αの変化を示す。図48から明らかなように、SiO2膜の膜厚Hs/λが0.2〜0.40、Cu膜の膜厚H/λが0.01〜0.10である場合に減衰定数αが小さくなっていることがわかる。
他方、図49は、(0°,135°,0°)のオイラー角のLiTaO3基板上には、規格化膜厚H/λが0〜0.10のCu膜を形成し、さらに、規格化膜厚Hs/λが0〜0.5のSiO2膜を形成した場合の減衰定数αの変化を示す。
図49から明らかなように、θ=135°のLiTaO3基板を用いた場合には、Cu膜の膜厚及びSiO2膜の膜厚を上記のように変化させたとしても、減衰定数αは大きいことがわかる。
すなわち、良好なTCF、大きな電気機械結合係数及び小さな減衰定数を実現するには、LiTaO3基板のカット角すなわちオイラー角と、SiO2膜の膜厚と、Cuからなる電極の膜厚とをそれぞれ最適なように組み合わせることが必要となることがわかる。
図50〜図57は、それぞれ、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λが、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4または0.45であり、規格化膜厚H/λが0.08以下のCu膜をLiTaO3基板上に形成した場合のθと減衰定数αとの関係を示す。
図50〜図57から明らかなように、Cu膜の厚みH/λを0.01〜0.08とした場合、SiO2膜の厚みと、オイラー角のθとが、下記の表21に示すように選択されれば、周波数温度特性TCFが±20ppm/℃の範囲内とされて良好であり、電気機械結合係数が大きく、かつ減衰定数αを効果的に抑制し得ることがわかる。望ましくは、下記の表21の右側のより好ましいオイラー角を選択することにより、より一層良好な特性を得ることができる。
また、Auについての図25から推測されるように、オイラー角のθが125°以下になると、電気機械結合係数Ksawが著しく大きくなることがわかる。従って、より好ましくは、下記の表22に示すSiO2膜の規格化膜厚Hs/λとオイラー角との組み合わせが望ましいことがわかる。
さらに、図48〜図56に示した結果から、減衰定数が0もしくは最小となるオイラー角、すなわちθminを、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及びCu膜の規格化膜厚H/λに対して求めた結果を、図59に示す。
Cu膜の規格化膜厚H/λが、0、0.02、0.04、0.06及び0.08の場合の図59に示す各曲線を三次式で近似することにより、下記の式A〜Eが得られる。
(a)0<H/λ≦0.01のとき
θmin=−139.713×Hs3+43.07132×Hs2
−20.568011×Hs+125.8314…式A
(b)0.01<H/λ≦0.03のとき
θmin=−139.660×Hs3+46.02985×Hs2
−21.141500×hs+127.4181…式B
(c)0.03<H/λ≦0.05のとき
θmin=−139.607×Hs3+48.98838×Hs2
−21.714900×Hs+129.0048…式C
(d)0.05<H/λ≦0.07のとき
θmin=−112.068×Hs3+39.60355×Hs2
−21.186000×Hs+129.9397…式D
(e)0.07<H/λ≦0.09のとき
θmin=−126.954×Hs3+67.40488×Hs2
−29.432000×Hs+131.5686…式E
従って、好ましくは、オイラー角(0±3°,θ,0±3°)のθは、上述した式A〜式Eで示されるθminとされることが望ましいが、θmin−2°<θ≦θmin+2°であれば、減衰定数を効果的に小さくすることができる。
なお、本発明ではIDTはCuのみから構成されてもよいが、Cuを主体とする限り、Cu合金やCuと他の金属との積層体で構成されてもよい。Cuを主体とするIDTとは、電極の平均密度をρ(平均)とすると
ρ(Cu)×0.7≦ρ(平均)≦ρ(Cu)×1.3
すなわち、
6.25g/cm3≦ρ(平均)≦11.6g/cm3
を満足するものであればよい。なお、Cuの上あるいは下に電極全体のρ(平均)が上記範囲となるように、Alよりも密度の大きいW、Ta、Au、Pt、AgまたはCrなどの金属からなる電極を積層してもよい。その場合にも、Cu電極単層の場合と同様の効果が得られる。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
〔電極材料としてタングステンを用いた実施例〕
前述した実施例と同様に、図15に示した弾性表面波装置を構成した。但し、IDT及び反射器をタングステンにより構成した。IDTの規格化膜厚H/λは0.0025〜0.06の範囲とした。
また、LiTaO3基板としては、22°〜48°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,112°〜138°,0°)のLiTaO3基板を用いた。
本実施例では上記のように、22°〜48°回転Y板X伝搬LiTaO3からなる圧電基板22と、H/λ=0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDT3a,3bと、Hs/λ=0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜4とを用いているため、周波数温度係数TCFが小さく、電気機械結合係数Ksawが大きく、かつ伝搬損失が小さい弾性表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
図60及び図61は、オイラー角(0°,120°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚のタングステンからなるIDTと、種々の膜厚のSiO2膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
図60から明らかなように、θ=120°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつタングステンよりなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.10の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図61から明らかなように、θ=140°では、タングステンからなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.10の範囲では、SiO2膜の膜厚の如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
すなわち、TCFを±20ppm/℃と小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO3基板のオイラー角、SiO2膜の厚み及びタングステンからなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
図62〜図65は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及びタングステンからなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θ(度)と減衰定数との関係を示す。
図62〜図65から明らかなように、タングステンからなる電極の規格化膜厚H/λが0.012〜0.053及び0.015〜0.042において、SiO2膜の膜厚と、最適なθとの関係は、下記の表23及び表24に示す通りとなる。なお、この最適θは、タングステン電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。なお、図中、図示していない膜厚は比例配分による。
すなわち、表23及び表24から明らかなように、タングステンよりなる電極の膜厚H/λが、0.012〜0.053の場合、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaO3のオイラー角におけるθは、112°〜138°の範囲、すなわち、回転角で20°〜50°の範囲、より好ましくは、表23に示すオイラー角を選択すればよいことがわかる。
同様に、表24から明らかなように、タングステン膜からなる電極の規格化膜厚が0.015〜0.042であり、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角は112°〜138°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚に応じて表24のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
ここで、表23及び表24における「LiTaO3のオイラー角」の範囲は、減衰定数が0.05以下の範囲を規定したものである。また、表23及び表24におけるLiTaO3のオイラー角の「より好ましい」範囲は、減衰定数が0.025以下に規定したものである。また、タングステンからなる電極膜の規格化膜厚が0.012、0.015、0.042、0.053である場合のSiO2膜の膜厚Hs/λとオイラー角の関係は、図62〜図65に示すタングステンからなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めたものであり、それによって、表23及び表24のSiO2膜の膜厚とオイラー角の値を求めている。
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上にタングステンを主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図66及び図67を参照して説明する。図66は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、種々の厚みH/λのタングステンからなるIDT及び種々の膜厚Hs/λのSiO2膜を形成した場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図67は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚H/λのタングステンからなるIDTを形成した場合、その上に形成されるSiO2膜の規格化膜厚Hs/λを変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図66と図67を比較すれば明らかなように、タングステンの膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも弾性表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどによりタングステン(W)からなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。
なお、本発明は、上記のように、22°〜48°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,112°〜138°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板、H/λ=0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO2膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図15に示した弾性表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタ等に適用することができる。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
〔電極材料としてTaを用いた場合の実施例〕
図15に示した弾性表面波装置を構成した。但し、14°〜58°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜148°,0°)のLiTaO3からなる基板を圧電性基板22として用い、かつIDTはタンタル(Ta)により構成し、その規格化膜厚H/λは0.004〜0.055の範囲とした。
本実施例では上記のように、14°〜58°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜148°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板2と、H/λ=0.004〜0.055であるタンタルよりなるIDT3a,3bと、Hs/λ=0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜4とを用いているため、周波数温度係数TCFが小さく、電気機械結合係数Ksawが大きく、かつ伝搬損失が小さい弾性表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
図68及び図69は、オイラー角(0°,120°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚のタンタルからなるIDTと、種々の膜厚のSiO2膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
図68から明らかなように、θ=120°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつタンタルよりなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.10の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図69から明らかなように、θ=140°では、タンタルからなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.06の範囲では、SiO2膜の膜厚の如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
すなわち、TCFの絶対値を小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO3基板のオイラー角、SiO2膜の厚み及びタンタルからなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
図70〜図73は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及びタンタルからなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θと減衰定数との関係を示す。
図70〜図73から明らかなように、タンタルからなる電極の規格化膜厚H/λが0.01〜0.055及び0.016〜0.045において、SiO2膜の膜厚と、最適なθとの関係は、下記の表25及び表26に示す通りとなる。なお、この最適θは、タンタル電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。
すなわち、表25及び表26から明らかなように、タンタルよりなる電極の膜厚H/λが、0.01〜0.055の場合、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内とするように改善するために、SiO2膜の規格化膜厚を0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaO3のオイラー角におけるθは、104°〜148°の範囲、すなわち、回転角で14°〜58°の範囲、より好ましくは、SiO2の膜厚Hs/λに応じて表25に示すオイラー角を選択すればよいことがわかる。
同様に、表26から明らかなように、タンタル膜からなる電極の規格化膜厚が0.016〜0.045であり、周波数温度特性TCFを改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角は107°〜144°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚Hs/λに応じて表26のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
LiTaO3のオイラー角の範囲は、減衰定数が0.05以下の範囲を規定したものである。また、表25及び表26におけるLiTaO3のオイラー角のより好ましい範囲は、減衰定数が0.025以下に規定したものである。また、タンタルからなる電極膜の規格化膜厚が0.012、0.015、0.042、0.053である場合のSiO2膜の膜厚Hs/λとオイラー角の関係は、図70〜図73に示すタンタルからなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めて、表25及び表26のSiO2膜の膜厚Hs/λとオイラー角の値を求めている。
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上にタンタルを主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図74及び図75を参照して説明する。図74は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、タンタルからなるIDT及びSiO2膜を形成した場合の、タンタルの規格化膜厚H/λと、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λと、漏洩弾性表面波の音速との関係を示す。また、図75は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚のタンタルからなるIDTを形成し、その上に形成されるSiO2膜の規格化膜厚を変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図74と図75を比較すれば明らかなように、タンタルの膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも弾性表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどによりタンタルからなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。
なお、本発明は、上記のように、14°〜58°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜148°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板、H/λ=0.004〜0.055であるタンタルよりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO2膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図15に示した弾性表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタ等に適用することができる。
なお、オイラー角のθが所望の角度から−2°〜+4°ずれることがある。このずれは本願明細書における計算結果が基板の全面に金属膜を形成したものから計算されたものであるため、実際の弾性表面波装置では上記の範囲で誤差が発生することもある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
〔電極材料として白金を用いた実施例〕
図15に示した弾性表面波装置を、0°〜79°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,90°〜169°,0°)のLiTaO3基板からなる圧電基板と、H/λ=0.005〜0.054である白金よりなるIDTを用いて構成した。その他の点は前述した実施例と同様である。
本実施例においても、上記構成を備えるため、周波数温度係数TCFが小さく、電気機械結合係数Ksawが大きく、かつ伝搬損失が小さい弾性表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
図76及び図77は、オイラー角(0°,125°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚の白金からなるIDTと、種々の膜厚のSiO2膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
図76から明らかなように、θ=125°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつ白金よりなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.06の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図77から明らかなように、θ=140°では、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.06の範囲では、SiO2膜の膜厚Hs/λの如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
すなわち、TCFの絶対値を小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO3基板のオイラー角、SiO2膜の厚み及び白金からなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
図78〜図83は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及び白金からなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、オイラー角のθ(度)と減衰定数との関係を示す。
図78〜図83から明らかなように、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.005〜0.054では、θは90°〜169°の範囲とすることが望ましいことがわかる。また、白金からなる電極の規格化膜厚H/λが0.01〜0.04及び0.013〜0.033においては、SiO2膜の膜厚Hs/λと、最適なθとの関係は、減衰定数αを低下させることも考慮すると、下記の表27及び表28に示す通りとなる。ここで、表27及び表28における「LiTaO3のオイラー角」の範囲は、減衰定数が0.05dB/λ以下の範囲を規定したものである。また、表27及び表28におけるLiTaO3のオイラー角の「より好ましい」範囲は、減衰定数が0.025dB/λ以下の範囲を規定したものである。なお、この最適θは、白金電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
すなわち、表27及び表28から明らかなように、白金よりなる電極の膜厚H/λが、0.01〜0.04の場合、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaO3のオイラー角におけるθは、90°〜169°の範囲、すなわち、回転角で0°〜79°の範囲を選択すればよいことがわかる。
同様に、表27から明らかなように、白金膜からなる電極の規格化膜厚が0.01〜0.04であり、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角のθは90°〜169°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚に応じて表27のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
同様に、白金膜からなる電極の規格化膜厚が0.013〜0.033であり、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲となるように改善するために、SiO2膜の膜厚Hs/λを0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO3基板のオイラー角のθは、102°〜150°の範囲とすればよく、より好ましくは、SiO2膜の膜厚Hs/λに応じて表28のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
また、白金からなる電極膜の規格化膜厚が0.013〜0.033である場合のSiO2膜の膜厚とオイラー角の関係は、図78〜図83に示す白金からなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めたものであり、それによって、表27及び表28のSiO2膜の膜厚Hs/λとオイラー角の値を求めている。
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に白金を主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚Hs/λのSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図84及び図85を参照して説明する。図84は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、種々の厚みH/λの白金からなるIDT及び種々の膜厚Hs/λのSiO2膜を形成した場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図85は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚H/λの白金からなるIDTを形成した場合、その上に形成されるSiO2膜の規格化膜厚Hs/λを変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図84と図85を比較すれば明らかなように、白金の膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも弾性表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどにより白金からなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。
なお、本発明は、上記のように、0°〜79°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,90°〜169°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板、H/λ=0.005〜0.054である白金よりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO2膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図1に示した弾性表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタ等に適用することができる。
〔ニッケル及びモリブデンを電極材料として用いた実施例〕
図15に示した弾性表面波装置を構成した。電極材料としてニッケルまたはモリブデンを用いた。また、圧電性基板として、14°〜50°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜140°,0°)のLiTaO3基板を用いた。その他の点は同様である。
IDT23a,23b及び反射器25a,25bは、密度が8700〜10300kg〜m3、ヤング率が1.8×1011〜4×1011N/m2及び横波音速が3170〜3290m/秒である金属により構成されている。このような金属としては、ニッケルやモリブデンまたはこれらを主体とする合金が挙げられる。
IDT23a,23bの規格化膜厚H/λ(HはIDTの厚み、λは中心周波数における波長を示す)は0.008〜0.06の範囲とされている。
本実施例では上記のように、14°〜50°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜140°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板22と、H/λ=0.008〜0.06であり、上記特定の金属よりなるIDT23a,23bと、Hs/λ=0.10〜0.40の範囲にあるSiO2膜24とを用いているため、周波数温度係数TCFが±20ppm/℃の範囲内となるように小さくされており、電気機械結合係数Ksawが大きく、かつ伝搬損失が小さい弾性表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
図86及び図87は、オイラー角(0°,120°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚のNiからなるIDTと、種々の膜厚Hs/λのSiO2膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
図86から明らかなように、θ=120°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつNiよりなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.08の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図87から明らかなように、θ=140°では、Niからなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.08の範囲では、SiO2膜の膜厚の如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
図88及び図89は、オイラー角(0°,120°,0°)と(0°,140°,0°)の各LiTaO3基板上に、種々の膜厚のMoからなるIDTと、種々の膜厚Hs/λのSiO2膜とを形成した場合の減衰定数の変化を示す図である。
図88から明らかなように、θ=120°では、SiO2の膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつMoよりなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.08の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図89から明らかなように、θ=140°では、Moからなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.08の範囲では、SiO2膜の膜厚Hs/λの如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
すなわち、TCFの絶対値を小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO3基板のオイラー角、SiO2膜の厚みHs/λ及び上記特定の密度、ヤング率及び横波音速範囲の金属からなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
図90〜図93は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及びNiからなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θ(度)と減衰定数との関係を示す。
図94〜図97は、SiO2膜の規格化膜厚Hs/λ及びMoからなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θ(度)と減衰定数との関係を示す。
図90〜図97から明らかなように、NiまたはMoからなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.06、0.017〜0.06及び0.023〜0.06において、SiO2膜の膜厚と、最適なθとの関係は、下記の表29に示す通りとなる。なお、この最適θは、電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。
また、製造の際、オイラー角のφとψは0°から±3°ばらつくが、特性は0°のものとほぼ同じ特性が得られた。
また、図90〜図93で示したNiからなる電極の最適膜厚H/λ=0.008〜0.06、0.02〜0.06及び0.027〜0.06におけるSiO2膜の膜厚と最適なθとの関係は下記の表30に示す通りとなる。
また、図94〜図97に示したMoからなる電極の最適膜厚H/λ=0.008〜0.06、0.017〜0.06及び0.023〜0.06におけるSiO2膜の膜厚と、最適なθとの関係は下記の表31に示す通りとなる。
すなわち、表29から明らかなように、上記特定の密度、ヤング率及び横波音速範囲の金属からなる電極の膜厚H/λが、0.008〜0.06、0.017〜0.06及び0.023〜0.06で、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、SiO2膜の膜厚を0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaO3のオイラー角におけるθは、104°〜140°の範囲、すなわち、回転角で14°〜50°の範囲、より好ましくは、表29に示すオイラー角を選択すればよいことがわかる。
同様に、Ni膜からなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.06、0.02〜0.06及び0.027〜0.06の場合において、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、Hs/λが0.1〜0.4のSiO2膜の膜厚Hs/λに応じて、LiTaO3基板のオイラー角におけるθは104°〜140°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚Hs/λに応じて表30に示したオイラー角を選択すればよいことがわかる。
同様に、Mo膜からなる電極の規格化膜厚H/λが0.008〜0.06、0.02〜0.06及び0.027〜0.06の場合において、周波数温度特性TCFを±20ppm/℃の範囲内となるように改善するために、Hs/λが0.1〜0.4のSiO2膜の膜厚Hs/λに応じて、LiTaO3基板のオイラー角におけるθは104°〜141°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO2膜の膜厚Hs/λに応じて表31に示したオイラー角を選択すればよいことがわかる。
ここで、表29〜表31における「LiTaO3のオイラー角」の範囲は、減衰定数αが0.1dB/λ以下の範囲を規定したものである。また、表29〜表31におけるLiTaO3のオイラー角の「より好ましい」範囲は、減衰定数が0.05dB/λ以下の範囲を規定したものである。また、上記電極膜の規格化膜厚が0.095、0.017、0.023である場合のSiO2膜の膜厚Hs/λとオイラー角の関係は、図90〜図97に示すNiもしくはMoからなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めたものであり、それによって、表29〜表31のSiO2膜の膜厚とオイラー角の値を求めている。
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO3基板上にNiやMoなどの上記特定の金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO2膜を成膜することが望ましい。これを、図98〜図101を参照して説明する。図98及び図100は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO3基板上に、種々の厚みH/λのNiまたはMoからなるIDT及び種々の膜厚Hs/λのSiO2膜を形成した場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図99及び図101は、同じオイラー角のLiTaO3基板上に、種々の膜厚H/λのNiまたはMoからなるIDTを形成した場合、その上に形成されるSiO2膜の規格化膜厚Hs/λを変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図98と図99、及び図100と図101とを比較すれば明らかなように、電極の膜厚を変化させた場合の方が、SiO2膜の膜厚を変化させた場合よりも弾性表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO2膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどによりNiやMoからなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。
なお、本発明は、上記のように、14°〜50°回転Y板X伝搬、オイラー角で(0°,104°〜140°,0°)のLiTaO3からなる圧電基板、H/λ=0.008〜0.06であるNiやMoなどの上記特定の密度、ヤング率及び横波音速範囲の金属よりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO2膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図15に示した弾性表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタ等に適用することができる。