JP2006251365A - 反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】気泡による面状欠陥がなく、膜厚均一性が高い反射防止フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】連続走行する支持体W上に、スロットダイ12を使用して粘度が0.01Pa・s以下の塗布液14を塗布する反射防止フィルムの製造方法である。スロットダイ内部に塗布液を供給するポケット18と、ポケットと連通し塗布液をスロットダイ外に吐出させるスロット20とを設け、ポケットの入口に供給する塗布液の一部をポケットの出口より引き抜く。
【選択図】 図1
【解決手段】連続走行する支持体W上に、スロットダイ12を使用して粘度が0.01Pa・s以下の塗布液14を塗布する反射防止フィルムの製造方法である。スロットダイ内部に塗布液を供給するポケット18と、ポケットと連通し塗布液をスロットダイ外に吐出させるスロット20とを設け、ポケットの入口に供給する塗布液の一部をポケットの出口より引き抜く。
【選択図】 図1
Description
本発明は、反射防止フィルムの製造方法に係り、特に、泡による面状故障の改善に効果のある反射防止フィルムの製造方法に関する。
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置に使用されている。また、眼鏡やカメラのレンズにも、反射防止フィルムが使用されている。
このような反射防止フィルムとしては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が、従来から普通に用いられている。複数の透明薄膜を用いる理由は、可視域でなるべく広い波長領域での光の反射を防止するためである。これら金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタリング法により形成されるが、これらに代えて、塗布法により形成する場合もある。
このような塗布法により塗布膜を形成する塗布装置として、バーコーター、リバースロールコーター、グラビアロールコーター、エクストルージョンコーター等の装置がある。特に、エクストルージョンコーターは他と比較して、高速、薄層の塗布が可能であることから多用されている。
エクストルージョンコーターは、帯状可撓性の支持体(以下、「ウェブ」という)とダイとの間にビードを形成し、塗布を行う装置であるが、ダイ内部のポケット及びスロット内部に気泡が混入、残存すると、塗布液がスロット幅方向に均一に送液されず、その結果、ビードがダイの長手方向(ウェブの幅方向)に均一に形成されなくなり、面状故障(スジ故障)を引き起こす原因となる。
このような、薄層塗布による反射防止フィルムの製造では、膜厚の均一性が製品の性能を大きく左右するために、非常にシビアな条件が求められる。したがって、微小な気泡の有無も大きな問題となる。このポケット内に気泡が混入する原因は、以下の3通りが考えられる。
1)塗布の作業中に、大気中からスロットを通過して気泡が流入する。
2)塗布の作業中に、送液ライン中の塗布液から溶存気体が溶け出して気泡が発生する。
3)空の状態のポケットに塗布液を供給する際に、ダイ内部のリップ部に気泡が引っかかって残存する。
その結果、気泡がポケット内に残存することが多い。
上記問題を解決するために、ダイより上流部において溶存気体を脱泡装置によって減少させる等の方法が考えられる。しかし、エクストルージョンコーターで薄層塗布を行うためには、スロットの開口幅(スロットクリアランス)を非常に狭く(たとえば、150μm程度)設定することより、除ききれなかった気泡や、何らかの理由でポケット内に発生した気泡がスロットに引っかかると、通常塗布時の送液を行うことだけでは取り除くことが困難である。
このような気泡による面状故障を解消する方法として、特許文献1のような構成が提案されている。この提案は、ポケットの液供給口とは反対に空気排出口を設け、そこから液を排出し内部の泡を抜く方法であり、ダイ内部の各位置における圧損(圧力)を適正に制御することにより、液の脈動や気泡の発生を抑制できるとされている。
特開2002−45761号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法でポケット内の気泡を排除することは可能であるが、スロット内部にトラップされた泡を抜くことは困難である。既述したように、反射防止フィルム等の光学フィルムを製造するには、低塗布量の薄層塗布が必要であるので、スロット部に残存した気泡は通常塗布時の送液では抜くことができない。
また、泡抜き時に開放系を設けることは、エクストルージョンコーターの利点である、密閉系による有機溶剤の揮発防止、異物混入防止等を阻害する原因となりかねない。同様に、薄層塗布(たとえば、10ml/m2 以下)では、溶媒の揮発による微小な濃度変化によって膜厚偏差を生じ、反射防止フィルム等の光学フィルムの性能を低下させてしまう。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、気泡による面状欠陥がなく、膜厚均一性が高い反射防止フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、連続走行する支持体上に、スロットダイを使用して粘度が0.01Pa・s以下の塗布液を塗布する反射防止フィルムの製造方法において、前記スロットダイ内部に前記塗布液を供給するポケットと、該ポケットと連通し前記塗布液をスロットダイ外に吐出させるスロットとを設け、前記ポケットの入口に供給する前記塗布液の一部を前記ポケットの出口より引き抜くことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法を提供する。
本発明によれば、ポケットの入口に供給する粘度が0.01Pa・s以下の塗布液の一部をポケットの出口より引き抜く。すなわち、ポケット内の粘度が0.01Pa・s以下の塗布液を回流させた。このようにすることにより、ポケット内に泡が付着し残存することを防ぐことができる。また、引き抜いた塗布液を密閉したまま送液タンクに戻すことにより、密閉性を保つことが可能であり、また、塗布液もポケット内を均一な速度で流れるので、塗布面状の幅方向(ウェブの走行方向と垂直な方向)の均一性が向上する。
このような本発明によれば、気泡による面状欠陥がなく、膜厚均一性が高い反射防止フィルムを製造することができる。
本発明において、前記支持体をバックアップローラで支持した状態で塗布を行うことが好ましい。このように、支持体をバックアップローラで支持した状態で塗布を行えば、塗布膜が安定的に形成でき、良好な面状を得ることができる。
また、本発明において、前記スロットダイがエクストルージョン方式の塗布ヘッドであることが好ましい。このようなエクストルージョンコーターは、各種タイプのスロットダイコーターのなかでも、低粘度の塗布液の塗布に適しており、本発明の効果が良好に得られる。
また、本発明において、前記スロットの開口幅が300μm以下であることが好ましい。また、本発明において、前記スロットの開口幅が150μm以下であることが好ましい。このように、開口幅が小さいスロットを有するスロットダイを使用することにより、良好な反射防止フィルムが製造できる。
以上説明したように、本発明によれば、気泡による面状欠陥がなく、膜厚均一性が高い反射防止フィルムを製造することができる。
以下、添付図面に従って、本発明に係る反射防止フィルムの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、発明に係る反射防止フィルムの製造方法が適用される反射防止フィルムの製造ラインの塗布工程10を示す構成図である。この反射防止フィルムの製造ラインは、ロール状の支持体フィルム(以下、「ウェブ」と称する)Wを連続的に送り出す工程と、ウェブWを巻き取る工程との間に、塗布工程と乾燥工程(他に、塗布膜を硬化する工程)等を適宜必要な数だけ設置したものである。
図1に示される塗布工程10は、塗布位置においてウェブWを巻き掛けるバックアップローラ11に相対するように、スロットダイ12が設けられている。このスロットダイ12には塗布液14が供給されるとともに、供給された塗布液14の一部が引き抜かれるようになっている。
すなわち、スロットダイ12は塗布液14を貯留する塗布液タンク40と往き側配管42で連結されるとともに、この塗布液タンク40と戻り側配管44で連結されている。往き側配管42には、上流側より順に、送液ポンプ46、濾過フィルタ48、膜脱気装置50、流量計52が接続されている。戻り側配管44には、上流側より順に、引き抜き用ポンプ54、流量計56が接続されている。
送液ポンプ46及び引き抜き用ポンプ54としては、公知の各種タイプのポンプ(ギア ギアポンプでは、種類によっては「すり抜け」と称される現象により、塗布液14を良好に送れなくなる場合もある。また、塗布液14中の分子が大きい場合(たとえば、1μm以上)、ギアのかみ合わせによって分子のせん断、又はギアの破損を引き起こす可能性がある。
流量計52及び流量計56としては、公知の各種タイプの流量計が使用できるが、コリオリ式流量計が好ましく使用できる。
濾過フィルタ48及び膜脱気装置50は、塗布液の組成等に応じて適宜の仕様のものが採用できる。
図2は、スロットダイ(塗布ヘッド)12の一部を切断して示す斜視図であり、図3は、スロットダイ12の先端部分とウェブWとの位置関係を示す概略断面図である。
図2及び図3に示されるように、スロットダイ12には、塗布液を供給できるような下記の液供給系が設けられている。すなわち、スロットダイ12の本体16には、長手方向(ウェブWの幅方向)に延びたポケット(液溜め部)18と、ポケット18と連通するとともに、長手方向(ウェブWの幅方向)においてウェブWと対向し、開口部より塗布液を塗出するスロット20と、ポケット18へ塗布液を供給する液供給口22と、ポケット18から塗布液を引き抜く液排出口24と、を備えている。
ポケット18は、「液溜め部」又は「マニホールド」とも称され、その断面が略円形をなし、図2に示されるように、ウェブWの幅方向に略同一の断面形状をもって延長された液溜め機能を有する空洞部である。その有効長さは、通常、塗布幅と同等又は若干長く設定される。ポケット18の貫通した両端開口部は、図2に示されるように、本体16の両端部に取付けられる閉鎖板26、28により閉止されている。なお、既述の液供給口22は閉鎖板26に、液排出口24は閉鎖板28にそれぞれ設けられている。
スロット20は、ポケット18からウェブWに向け、300μm以下、好ましくは150μm以下の開口幅(スロットクリアランス)をもってスロットダイ12の本体16内部を貫通し、かつポケット18と同じようにウェブWの幅方向に延長された比較的狭隘な流路であり、ウェブWの幅方向の開口長さは塗布幅と略同等に設定される。
スロット20の、ポケット18との境界部から開口部までの距離(ウェブWに向けた流路の長さ)は、スロット20のウェブWの幅方向の開口長さ、塗布液の液組成、物性、供給流量、供給液圧、等の諸条件を考慮して適宜設定し得る。すなわち、塗布液がウェブWの幅方向に均一な流量と液圧分布をもって層流状にスロット20から供給できればよい。なお、スロット20のウェブWの幅方向の開口長さが1000〜1200mm程度の場合には30〜80mmの範囲が好ましく採用できる。
スロット20は、スロットダイ12の本体16のフロントエッジ30とバックエッジ32とにより形成される。スロットダイ12の本体16の上面(ウェブWと対向する面)には、上流側より、フロントエッジ面30a、バックエッジ面32aがそれぞれ形成されている。
図2に示されるように、フロントエッジ面30aは断面が略直線状に、バックエッジ面32aは、断面が山型に形成されている。また、フロントエッジ面30aの後端エッジ部30bとバックエッジ面32aの先端エッジ部32bとには所定の段差が設けられ、塗布液14の所定厚さの膜が形成できるようになっている。
なお、図2に示されるフロントエッジ面30a、バックエッジ面32aの断面形状は一例であり、他の断面形状、たとえば円弧状、放物線状等、各種の形状が採用できる。
次に、スロットダイ12の先端部分について、図3を参照しながら説明する。なお、図3においては、フロントエッジ面30a、バックエッジ面32aの断面形状が図2のものと異なって形成されている。
図3に示される塗布工程10において、バックアップローラ11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ12から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブW上に塗膜14bを形成できるようになっている。
このスロット20のスロット先端における、バックアップローラ11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
スロット20の開口部20aが位置するスロットダイ12のフロントエッジ30及びバックエッジ32の、フロントエッジ面30aは、平坦状に形成されており、バックエッジ面32aは、先細り状に形成されている。
次に、上記の塗布工程10による塗布方法について説明する。
反射防止フィルムに用いるウェブWとしては、透明なプラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4' −ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンが含まれる。
特に、トリアセチルセルロースが好ましく用いられる。トリアセチルセルロースフィルムとしては、TAC−TD80U(富士写真フィルム(株)製)等の公知のもの、公開技報番号2001−1745にて公開されたものが好ましく用いられる。
ウェブWの光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることが更に好ましい。ウェブWのヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。ウェブWの屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。
ウェブWの厚さは特に限定されないが、30〜150μmが好ましく、40〜130μmがより好ましく、70〜120μmが更に好ましい。
塗布液用分散媒としては、特に限定されない。単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4 −ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族又は芳香族炭化水素の混合物等が該当する。
これら溶媒の中でも、ケトン類の単独又は2種以上の混合により作成される塗布用分散媒が特に好ましい。
本発明の塗布方式は、液物性により塗布可能な上限の速度が大きく影響を受けるため、塗布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御する必要がある。
粘度については0.01Pa・s以下であることが好ましく、0.005Pa・s以下がより好ましく、0.002Pa・s以下が更に好ましい。
塗布液によっては、せん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布される瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が高くなると、乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
また、液物性ではないが、ウェブに塗布される塗布液の量も、塗布可能な上限の速度に影響を与える。ウェブに塗布される塗布液の量は2.0〜5.0ml/m2 であることが好ましい。ウェブに塗布される塗布液の量を増やすと、塗布可能な上限の速度が上がるため好ましいが、ウェブに塗布される塗布液の量を増やしすぎると、乾燥にかかる負荷が大きくなるため、液処方・工程条件によって最適なウェブに塗布される塗布液の量を決めることが好ましい。
表面張力については、15〜36mN/mの範囲にあることが好ましい。レベリング剤を添加するなどして表面張力を低下させることは、乾燥時のムラが抑止されるため好ましい。一方、表面張力が下がりすぎると、塗布可能な上限の速度が低下してしまうため、17〜32mN/mの範囲がより好まく、19〜26mN/mの範囲が更に好ましい。
光干渉による多層構成の反射防止膜製造は、以下のように行われる。
ウェブWが巻回されたロールからウェブWがクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、ウェブWに帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続きウェブW上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布工程10で塗布液がウェブW上に塗布され、塗布されたウェブWは乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有するウェブWは、乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。更に、放射線により硬化した層を有するウェブWは熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させ、硬化が完結した層を有するウェブWは巻き取られてロール状となる。
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能であるが、生産性の観点から各層の形成を連続的に行う事が好ましい。
以下、塗布液を塗布する工程について説明する。
塗布液タンク40より送液ポンプ46により圧送された塗布液14は、送液ポンプ46、濾過フィルタ48、膜脱気装置50、流量計52を経て往き側配管42によりスロットダイ12に供給される。
スロットダイ12は、塗布液14が供給されるとともに、供給された塗布液14の一部が引き抜かれるようになっている。したがって、供給された塗布液14の一部は、引き抜き用ポンプ54により引き抜かれ、流量計56を経て戻り側配管44により塗布液タンク40に戻される。
そして、バックアップローラ11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ12から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブW上に塗膜14bが形成される。
本発明のように、反射防止フィルム等の光学フィルムを製造するためには、低粘度(0.01Pa・s以下)の塗布液14を使用するために、スロットダイ12のスロット20の開口幅(スロットクリアランス)を狭くすることにより圧損を稼ぐ必要がある。同時に、スロット20の開口幅を狭くすることによってビード14aの乱れを減少させている。
一方、スロット20の開口幅を狭くすることによってスロット20からより気泡が抜けにくくなってしまう。これに対し、スロットダイ12の液供給口22の反対側に液排出口24を設け、ポケット18内の塗布液14を回流させた。これにより、ポケット18内に気泡が付着し残存することを防ぐことができる。
このように、戻り側配管44に塗布液14引きぬき用の引き抜き用ポンプ54を設け、更に下流に引き抜き量を調整するための流量計56を設けた。この引き抜き方式では、送液量と引き抜き量の差分が塗布され、引き抜かれた塗布液14は戻り側配管44で密閉されたまま塗布液タンク40に戻される。
図1に示される塗布工程10により、塗布液14を引き抜きながら塗布したところ、塗布液14を引き抜かずに塗布したものよりもスジ欠陥が少なく、幅方向の均一性も向上した。したがって、本実施の形態によれば、気泡による面状欠陥がなく、膜厚均一性が高い反射防止フィルムを製造することができる。
以上、本発明に係る反射防止フィルムの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
たとえば、本実施形態では、スロットダイ12のフロントエッジ面30a及びバックエッジ面32aの形状が2種類(図2及び図3)例示されているが、これ以外の各種の態様が採り得る。
また、本実施形態では、スロットダイ12の一端に液供給口22が設けられ、他端に液排出口24が設けられているが、これ以外の態様、たとえば、スロットダイ12の中央に液供給口22が設けられ、両端に液排出口24、24が設けられる態様が採り得る。
以下に、実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例全般において、以下の塗布液を使用した。
反射防止膜用の塗布液を調合した。屈折率が1.42である、熱架橋性含フッ素ポリマーを6重量%含むメチルエチルケトン溶液(JN−7228、JSR(株)製)93gに、MEK−ST(平均粒径10nm〜20nm、固形分濃度30重量%のSiO2 ゾルのメチルエチルケトン分散物、日産化学(株)製)を8g、メチルエチルケトンを94g、及びシクロヘキサノンを6gを添加し、攪拌した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルタ(PPE−01)で濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
塗布液の粘度及び表面張力を、それぞれ、0.001N.s/m2 、0.024N/mとした。
[実施例1]
塗布速度(ウェブWの走行速度)を10〜50m/分とし、塗布量を3.5ml/m2 とし、スロット20の開口幅(スロットクリアランス)を150μmに設定し、塗布液14の引き抜きの有り無しで比較した。引き抜きの有りの場合は、送液ポンプ46と引き抜き用ポンプ54を同時に運転し、引き抜きの有り無しの場合は、送液ポンプ46のみ運転した。
塗布速度(ウェブWの走行速度)を10〜50m/分とし、塗布量を3.5ml/m2 とし、スロット20の開口幅(スロットクリアランス)を150μmに設定し、塗布液14の引き抜きの有り無しで比較した。引き抜きの有りの場合は、送液ポンプ46と引き抜き用ポンプ54を同時に運転し、引き抜きの有り無しの場合は、送液ポンプ46のみ運転した。
塗布・乾燥後のウェブWのスジ故障、幅方向膜厚分布、及び塗布面状を評価した。以上の条件及び評価結果を図4の表に示す。
スジ故障については、「引き抜きあり」のものは、いずれも故障が0であった。これに対し、「引き抜き無し」のものは、スジ故障が5〜10箇所見られた。
幅方向膜厚分については、「引き抜きあり」のものは、1.2〜1.4%であった。これに対し、「引き抜き無し」のものは、3.1〜4.1%であった。
塗布面状については、「引き抜きあり」のものは、いずれも「良好」であった。これに対し、「引き抜き無し」のものは、いずれも「悪い」であった。
上記の結果より、エクストルージョンコーターに塗布液の引き抜き方式を組み合わせると有効なことが分かった。
[実施例2]
塗布速度(ウェブWの走行速度)を30m/分とし、塗布量を3.5ml/m2 とし、スロット20の開口幅(スロットクリアランス)を100〜500μmに設定し、塗布液14の引き抜きの有り無しで比較した。引き抜きの有りの場合は、送液ポンプ46と引き抜き用ポンプ54を同時に運転し、引き抜きの有り無しの場合は、送液ポンプ46のみ運転した。
塗布速度(ウェブWの走行速度)を30m/分とし、塗布量を3.5ml/m2 とし、スロット20の開口幅(スロットクリアランス)を100〜500μmに設定し、塗布液14の引き抜きの有り無しで比較した。引き抜きの有りの場合は、送液ポンプ46と引き抜き用ポンプ54を同時に運転し、引き抜きの有り無しの場合は、送液ポンプ46のみ運転した。
塗布・乾燥後のウェブWのスジ故障、及び塗布面状を評価した。以上の条件及び評価結果を図5の表に示す。
スジ故障については、「引き抜きあり」のものは、スロットクリアランスが100〜500μmのいずれのものも故障が0であった。これに対し、「引き抜き無し」のものは、スロットクリアランスが500μmのもののみ故障が0であり、他のものはスジ故障が4〜6箇所見られた。
塗布面状については、「引き抜きあり」のものは、いずれも「○」であった。これに対し、「引き抜き無し」のものは、スロットクリアランスが500μmのものが「○」であり、スロットクリアランスが300μmのものが「△」であり、スロットクリアランスが150、100μmのものが「×」であった。
上記の結果より、エクストルージョンコーターに塗布液の引き抜き方式を組み合わせると有効なことが分かった。
10…塗布工程、11…バックアップローラ、12…スロットダイ、14…塗布液、14a…ビード、14b…塗膜、18…ポケット、20…スロット、40…塗布液タンク、42…往き側配管、44…戻り側配管、46…送液ポンプ、48…濾過フィルタ、50…膜脱気装置、52、56…流量計、54…引き抜き用ポンプ、W…可撓性支持体(ウェブ)
Claims (5)
- 連続走行する支持体上に、スロットダイを使用して粘度が0.01Pa・s以下の塗布液を塗布する反射防止フィルムの製造方法において、
前記スロットダイ内部に前記塗布液を供給するポケットと、該ポケットと連通し前記塗布液をスロットダイ外に吐出させるスロットとを設け、前記ポケットの入口に供給する前記塗布液の一部を前記ポケットの出口より引き抜くことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。 - 前記支持体をバックアップローラで支持した状態で塗布を行う請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 前記スロットダイがエクストルージョン方式の塗布ヘッドである請求項1又は2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 前記スロットの開口幅が300μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 前記スロットの開口幅が150μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009072689A (ja) * | 2007-09-20 | 2009-04-09 | Toppan Printing Co Ltd | 塗布物の製造方法及び塗布装置 |
CN104548668A (zh) * | 2013-10-16 | 2015-04-29 | 日东电工株式会社 | 过滤单元、涂布装置以及涂布膜的制造方法 |
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2005
- 2005-03-10 JP JP2005067826A patent/JP2006251365A/ja active Pending
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