JP2006249148A - 静電結合型複合体組成物及び該組成物を用いた生体接着材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 生体適合性に優れるとともに、接着力の高い生体接着材を提供する。
【解決手段】 A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、前記A成分は、少なくとも下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)と、を重合してなる重合体であり、前記B成分は、少なくとも一般式(1)に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)と、を重合してなる重合体である、静電結合型複合体組成物を少なくとも含む生体接着材。
【解決手段】 A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、前記A成分は、少なくとも下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)と、を重合してなる重合体であり、前記B成分は、少なくとも一般式(1)に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)と、を重合してなる重合体である、静電結合型複合体組成物を少なくとも含む生体接着材。
Description
本発明は、特定の単量体と荷電性単量体とを含む単量体を重合してなる静電結合型複合体組成物、及び該組成物を用いた生体接着材に係り、特に、医療や医薬、細胞工学などの分野において生体接着材料として好適に使用することが可能な静電結合型複合体組成物、及び該組成物を用いた生体接着材に関する。
外科手術などの医療分野においては、例えば手術後に切開部を接着して修復するなど、生体組織や生体材料を接着する必要がある。このような生体組織や生体材料を接着する目的でさまざまな材料が開発され使用されてきた。
従来、各種の手術において切開部の接着、止血、縫合補助剤として、あるいは移植組織や再生医療用組織などの生体材料を生体に吻合する際の接着材や縫合補助剤として、各種生体接着材が使用されている。
従来、各種の手術において切開部の接着、止血、縫合補助剤として、あるいは移植組織や再生医療用組織などの生体材料を生体に吻合する際の接着材や縫合補助剤として、各種生体接着材が使用されている。
現在広く使用されている生体接着材としては、フィブリン糊などのフィブリノゲン製剤が挙げられる。フィブリン糊は、血漿成分中に含まれるフィブリノゲン及びトロンビン主成分とする血液製剤であり、フィブリノゲンがトロンビンの作用により分解されて生じるフィブリンの組織膠着性を生体接着材として利用したものである。通常、フィブリン糊は輸血などで提供された血液を原料として作られており、具体的には、血液に遠心分離等の各種処理を施すことにより製造される。
このように、フィブリン糊は生体由来成分であるフィブリンを主要成分としているため、生体組織により異物として認識されにくく、生体に対して害が少ないという利点がある。一方、献血などにより得られた血液を原料として製造されるため、例えばC型肝炎ウイルスやHIVなどで汚染された血液を原料として非加熱で製造された場合や加熱が不充分であった場合には、これらのウイルスが製剤中に混入する可能性があった。そして、このようなフィブリン糊を使用した場合、患者がこれらのウイルスに感染する可能性があるという不都合があった。
従って、かねてから、血液を原料として製造されるのではなく、人工的に合成され、且つ、生体適合性に優れた生体接着材が望まれていた。
従って、かねてから、血液を原料として製造されるのではなく、人工的に合成され、且つ、生体適合性に優れた生体接着材が望まれていた。
ところで、本発明の発明者らは、先にホスホリルコリン類似基を有する単量体と荷電性基を有する荷電性単量体とを重合してなる静電結合型重合体と、この荷電性単量体と反対電荷を有する荷電性化合物とからなる静電結合型複合体を開発している(例えば、特許文献1)。この文献中において、上記静電結合型複合体は、薬物などを体内に運搬する薬物運搬システム(DDS)などの分野において幅広く使用されうることが開示されている。
このような静電結合型重合体は、細胞膜の構成成分であるリン脂質が有するホスホリルコリン類似基を分子内に備えているため、生体適合性に優れていることが知られている。更に、このホスホリルコリン類似基を有する単量体と共重合する単量体の性質により、得られる共重合体はさまざまな特性を有することが知られている。
しかしながら、ホスホリルコリン類似基を有する重合体で生体接着材料として優れた性質を有するものについては、いまだに報告されていない。
しかしながら、ホスホリルコリン類似基を有する重合体で生体接着材料として優れた性質を有するものについては、いまだに報告されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、人工的に合成され、且つ接着力の優れた生体接着材料及び該生体接着材料を含む生体接着材を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1の静電結合型複合体組成物は、A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、前記A成分は、少なくとも下記一般式(1)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)と、を重合してなる重合体であり、
前記B成分は、少なくとも一般式(1)に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)と、を重合してなる重合体であることにより解決される。
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)と、を重合してなる重合体であり、
前記B成分は、少なくとも一般式(1)に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)と、を重合してなる重合体であることにより解決される。
また、請求項2の静電結合型複合体組成物のように、請求項1の要件に加えて、前記単量体(a1)又は前記単量体(b1)のうちいずれか少なくとも一方が、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートであることが好ましい。
更にまた、請求項3の静電結合型複合体組成物のように、請求項1の要件に加えて、前記荷電性単量体(a2)が、下記一般式(2)
(式中、R6は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R7,R8及びR9は同一または異なってもよく炭素数1〜10の炭化水素基、X−は1価の陰イオンである。)で示される正の電荷を有する基を含む荷電性単量体(a2)であると好適である。
(式中、R6は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R7,R8及びR9は同一または異なってもよく炭素数1〜10の炭化水素基、X−は1価の陰イオンである。)で示される正の電荷を有する基を含む荷電性単量体(a2)であると好適である。
この場合、特に、請求項4の静電結合型複合体組成物のように、前記荷電性単量体(a2)が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩であることが好ましい。
また、請求項5の静電結合型複合体組成物のように、請求項1の要件に加えて、前記荷電性単量体(b2)が、下記一般式(3)
(式中、R10は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、M+は1価の陽イオンである。)で示される負の電荷を有する基を含む荷電性単量体(b2)であると好適である。
(式中、R10は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、M+は1価の陽イオンである。)で示される負の電荷を有する基を含む荷電性単量体(b2)であると好適である。
この場合、特に、請求項6の静電結合型複合体組成物のように、前記荷電性単量体(b2)が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルスルホン酸塩であることが好ましい。
上記課題は、請求項7の静電結合型複合体組成物によれば、A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、
前記成分Aは、下記一般式(4)
(式中、R11は炭素数1または2のアルキレン基、R12は炭素数2または3のアルキレン基、R13は炭素数1〜4のアルキレン基、R14,R15は同一または異なってもよく水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)で示される重合体であり、
前記B成分は、下記一般式(5)
(式中、R16は炭素数1または2のアルキレン基、R17は炭素数2または3のアルキレン基、R18は炭素数1〜4のアルキレン基、R19,R20は同一または異なってもよく水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである。)で示される重合体であることにより解決される。
前記成分Aは、下記一般式(4)
(式中、R11は炭素数1または2のアルキレン基、R12は炭素数2または3のアルキレン基、R13は炭素数1〜4のアルキレン基、R14,R15は同一または異なってもよく水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)で示される重合体であり、
前記B成分は、下記一般式(5)
(式中、R16は炭素数1または2のアルキレン基、R17は炭素数2または3のアルキレン基、R18は炭素数1〜4のアルキレン基、R19,R20は同一または異なってもよく水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである。)で示される重合体であることにより解決される。
好ましくは、請求項8に記載の静電結合型複合体組成物のように、請求項7の要件に加えて、前記成分Aは、下記一般式(6)
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)で示される重合体であると好適である。
また、請求項9に記載の静電結合型複合体組成物のように、請求項7の要件に加えて、前記B成分は、下記一般式(7)
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである)で示される重合体であると好適である。
より好ましくは、請求項10の静電結合型複合体組成物のように、請求項7乃至9のいずれか1の要件に加えて、前記m/nが10/90から50/50の範囲であり、前記p/qが10/90から50/50の範囲であるとよい。
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)で示される重合体であると好適である。
また、請求項9に記載の静電結合型複合体組成物のように、請求項7の要件に加えて、前記B成分は、下記一般式(7)
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである)で示される重合体であると好適である。
より好ましくは、請求項10の静電結合型複合体組成物のように、請求項7乃至9のいずれか1の要件に加えて、前記m/nが10/90から50/50の範囲であり、前記p/qが10/90から50/50の範囲であるとよい。
加えて、請求項11の静電結合型複合体組成物のように、請求項1乃至10のいずれか1の要件に加えて、前記成分Aの重合体と前記成分Bの重合体の混合比率が、1:2から2:1の範囲であることが好ましい。
また、上記課題は、請求項12の静電結合型複合体組成物によれば、生体接着材として請求項1乃至11のいずれか1に記載の静電結合型複合体組成物を少なくとも含むことにより解決される。
本発明の静電結合型複合体組成物によれば、生体適合性に優れ、且つ接着性が高い生体接着材料を提供することが可能となる。
本発明の静電結合型複合体組成物は、ホスホリルコリン類似基及び正の電荷を有する荷電性基を有するA成分と、ホスホリルコリン類似基及び負の電荷を有する荷電性基を有するB成分とを混合してなる複合体組成物であって、生体接着材として特に好適に使用されるものである。
なお、ここでいう静電結合型複合体組成物とは、A成分に係る重合体中の正の電荷を有する基と、B成分に係る重合対中の負の電荷を有する基とが、主として静電引力により互いに結合して複合体を形成した状態の組成物をいう。
なお、ここでいう静電結合型複合体組成物とは、A成分に係る重合体中の正の電荷を有する基と、B成分に係る重合対中の負の電荷を有する基とが、主として静電引力により互いに結合して複合体を形成した状態の組成物をいう。
本発明のA成分は、下記一般式(1)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)とを重合してなる重合体である。
前記荷電性単量体(a2)としては、特に、下記一般式(2)
(式中、R6は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R7,R8及びR9は同一または異なってもよく炭素数1〜10の炭化水素基、X−は1価の陰イオンである。)で示される正の電荷を有する基を含む荷電性単量体(a2)であると好適である。
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)とを重合してなる重合体である。
前記荷電性単量体(a2)としては、特に、下記一般式(2)
(式中、R6は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を示し、R7,R8及びR9は同一または異なってもよく炭素数1〜10の炭化水素基、X−は1価の陰イオンである。)で示される正の電荷を有する基を含む荷電性単量体(a2)であると好適である。
本発明で用いるA成分の重合体の原料としてのホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)は、分子内に二重結合を有し、側鎖が一般式(1)で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体である。このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(スチリルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオキシカルボニル)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシカルボニル)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アクリロイルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ブテロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(クロトノイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル−(2−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート等が好ましく挙げられる。より好ましくは、入手が容易であるなどから、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(以下、MPC)}が挙げられる。
また、本発明で用いるA成分の重合体の構成成分としての正の電荷を有する荷電性単量体(a2)は、分子内に二重結合を有し、側鎖が一般式(2)で示される正の電荷を有する基を側鎖に備えた荷電性単量体である。このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム塩、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリエチルアンモニウム塩、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルトリエチルアンモニウム塩、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリプロピルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリブチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチルトリメチルアンモニウム塩、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメチルアンモニウム塩、2−(ビニルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(アリルオイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(スチリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(ビニルオキシカルボニル)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(アリルオキシカルボニル)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(アクリロイルアミノ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(アリルオキシカルボニルアミノ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(ブテロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(クロトノイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩等が好ましく挙げられる。より好ましくは、入手が容易であるなどの理由から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩(以下、MTA)が挙げられる。
この場合、X−は1価の陰イオンであることが好ましく、具体的には、Cl−、I−、Br−、CH3COO−等のイオンであることが好ましい。
この場合、X−は1価の陰イオンであることが好ましく、具体的には、Cl−、I−、Br−、CH3COO−等のイオンであることが好ましい。
ホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)の共重合体としての成分Aは、各単量体の原料の入手容易性等の理由から、具体的には下記一般式(4)で示される重合体であることが好ましい。
(式中、R11は炭素数1または2のアルキレン基、R12は炭素数2または3のアルキレン基、R13は炭素数1〜4のアルキレン基、R14,R15は同一または異なってもよく水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)
(式中、R11は炭素数1または2のアルキレン基、R12は炭素数2または3のアルキレン基、R13は炭素数1〜4のアルキレン基、R14,R15は同一または異なってもよく水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)
特に、ホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、正の電荷を有する荷電性単量体(a2)の組合せとしては、上述のように原料の入手性等の理由から、MPCとMTAの組合せが好ましい。この場合、両単量体を重合して合成される成分Aは、下記一般式(6)で示される重合体である。
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)
(式中、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)
ホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)の成分Aの重合体中での含有割合は、モル分率(すなわち、m/m+n)で0.05〜0.95であればよく、特に0.1〜0.5の範囲が好ましい。更に好ましくは、0.3程度が好適である。単量体(a1)のモル分率が0.1以下では、各種緩衝溶液、各種生理食塩水、あるいは各種培養液などの極性溶媒中での静電結合型複合体の溶解性が低くなり好ましくない。一方、ホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)のモル分率が0.5以上では、荷電性単量体(a2)の重合体中での含有割合が低くなり、静電相互作用による成分Bとの静電結合の量が少なくなるため好ましくない。
本発明に用いるA成分の重合体は、単量体組成物(a1)及び(a2)を重合してなる重合体である。重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは、10,000〜5,000,000、より好ましくは100,000〜1,000,000である。重合体の重量平均分子量が10,000より少ないと、B成分の重合体との静電結合の量が少なくなり、形成される静電結合型複合体組成物の溶媒への溶解度が大きくなるため好ましくない。一方、重量平均分子量が5,000,000より多いと、形成される静電結合型複合体の分子量が大きくなり、溶媒への溶解性が低下しすぎることがあるため好ましくない。
また、本発明のB成分は、に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)を重合してなる重合体である。
前記荷電性単量体(b2)としては、下記一般式(3)
(式中、R10は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、M+は1価の陽イオンある。)
であると好適である。
前記荷電性単量体(b2)としては、下記一般式(3)
(式中、R10は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、M+は1価の陽イオンある。)
であると好適である。
本発明で用いるB成分の重合体の原料としての単量体(b1)は、分子内に二重結合を有し、側鎖が一般式(3)で示される基を有する単量体である。このような化合物としては、単量体(a1)と同様の化合物が挙げられる。より好ましくは、単量体(a1)と同様に入手が容易などの理由から、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート{=2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンともいう(以下、MPCと略記する)}が挙げられる。
また、本発明で用いるB成分の重合体の原料としての負の電荷を有する荷電性単量体(b2)は、分子内に二重結合を有し、側鎖が一般式(3)で示される負の電荷を有する基を側鎖に備えた単量体である。このような化合物としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルスルホン酸塩、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルスルホン酸塩、5−(メタ)アクリロイルオキシペンチルスルホン酸塩、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシペンチルスルホン酸塩、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルスルホン酸塩、2−(ビニルオキシ)エチルスルホン酸塩、2−(アリルオイルオキシ)エチルスルホン酸塩、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチルスルホン酸塩、2−(スチリルオキシ)エチルスルホン酸塩、2−(ビニルオキシカルボニル)エチルスルホン酸塩、2−(アリルオキシカルボニル)エチルスルホン酸塩、2−(アクリロイルアミノ)エチルスルホン酸塩、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチルスルホン酸塩、2−(アリルオキシカルボニルアミノ)エチルスルホン酸塩、2−(ブテロイルオキシ)エチルスルホン酸塩、2−(クロトノイルオキシ)エチルスルホン酸塩等が好ましく挙げられる。より好ましくは、入手が容易などの理由から、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩(以下、MSA)が挙げられる。
この場合、M+は1価の陽イオンであることが好ましく、具体的には、Na+、K+、NH4 +等のイオンであることが好ましい。
この場合、M+は1価の陽イオンであることが好ましく、具体的には、Na+、K+、NH4 +等のイオンであることが好ましい。
ホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)の共重合体としての成分Bは、各単量体の原料の入手容易性等の理由から、具体的には下記一般式(5)で示される重合体であることが好ましい。
(式中、R16は炭素数1または2のアルキレン基、R17は炭素数2または3のアルキレン基、R18は炭素数1〜4のアルキレン基、R19,R20は同一または異なってもよく水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである。)
(式中、R16は炭素数1または2のアルキレン基、R17は炭素数2または3のアルキレン基、R18は炭素数1〜4のアルキレン基、R19,R20は同一または異なってもよく水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである。)
ホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、負の電荷を有する荷電性単量体(b2)の組合せとしては、上述のように原料の入手性などの理由から、MPCとMTAの組合せが好ましい。この場合、両単量体を重合して合成される成分Bは、下記一般式(7)で示される重合体である。
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、MはNa、KまたはNH4である。)
(式中、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が1,000から5,000,000の範囲、MはNa、KまたはNH4である。)
ホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)の成分Bの重合体中での含有割合は、モル分率(すなわち、m/m+n)で0.05〜0.95であればよく、特に0.1〜0.5の範囲が好ましい。更に好ましくは、0.3程度が好適である。ホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)のモル分率が0.1以下では、各種緩衝溶液、各種生理食塩水、あるいは各種培養液などの水溶性溶媒中での得られた静電結合型複合体の溶解性が低くなり好ましくない。一方、ホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)の単量体組成物中のモル分率が0.5以上では、荷電性単量体(b2)の含有割合が低くなり、静電相互作用による成分Aとの結合量が少なくなるため好ましくない。
本発明に用いるB成分の重合体は、単量体組成物(b1)及び(b2)を重合してなる重合体である。重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは、10,000〜5,000,000、より好ましくは10,000〜1,000,000である。重合体の重量平均分子量が10,000より少ないと、A成分の重合体との静電結合の量が少なくなり、形成される静電結合型複合体組成物の溶媒への溶解度が大きくなるため好ましくない。一方、重量平均分子量が5,000,000より多いと、形成される静電結合型複合体の分子量が大きくなり、溶媒への溶解性が低下しすぎることがあるため好ましくない。
成分Aは単量体(a1)及び(a2)を共重合して得られるものであり、また、成分Bは(b1)及び(b2)を共重合して得られる。共重合体の種類としては、成分A、成分Bともに、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体など、公知の重合体のいずれであってもよい。各単量体の重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法を用いて行われる。この際、必要に応じて重合系を、窒素、二酸化炭素、ヘリウム等の不活性ガスで置換して、あるいはこの不活性ガスの雰囲気下において重合温度0〜100℃、重合時間10分〜48時間の重合条件でラジカル重合させる方法等により調製する事ができる。
重合に際しては、通常のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−アゾビス(2−アミジノプロピル)二塩酸塩、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2 −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート等が挙げられる。特に、4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリルが好適である。
これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても混合物で用いてもよい。また、重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いても良い。重合開始剤の使用量は、単量体組成物100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。反応温度は40〜80℃、好ましくは50〜70℃である。
これらのラジカル重合開始剤は単独で用いても混合物で用いてもよい。また、重合開始剤には各種レドックス系の促進剤を用いても良い。重合開始剤の使用量は、単量体組成物100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましい。反応温度は40〜80℃、好ましくは50〜70℃である。
重合体の精製は、再沈殿法、透析法、精密濾過法、限外濾過法など一般的な精製方法により行うことができる。
本発明の静電結合型複合体は、成分Aの重合体と成分Bの重合体を混合することにより形成される。すなわち、成分Aには一般式(2)に係る正の電荷を有する基を有しており、一方、成分Bには一般式(4)に係る負の電荷を有する基を有しているため、両成分を混合した場合に、成分Aの重合体に含まれる正の電荷を有する基と、成分Bの重合体に含まれる負の電荷を有する基とが静電力の相互作用により複合体が形成される。
成分Aの重合体と成分Bの重合体を混合すると、自発的にゲル化してハイドロゲルを形成する。形成されたハイドロゲルは親水性、保水性、生体適合性が高く、且つ、高い接着能力を備えている。これは、ハイドロゲル中の静電結合型複合体の特性によるものと考えられる。
すなわち、本発明の静電結合型複合体は、生体組織に対して高い付着性を有している。これは、成分A及び成分Bの重合体に含まれる一般式(1)に係る基が負の電荷を有しており、生体組織表面に存在するコラーゲンなどの正の電荷を有する物質と相互作用するため、生体組織に対して粘着性を示すと考えられる。
また、本発明の静電結合型複合体は、成分Aと成分Bとの静電相互作用により、自己凝集性が高いという性質を備えている。
従って、本発明の静電結合型複合体は、生体組織に対して付着性が高く、且つ、成分Aと成分Bとの静電相互作用による高い自己凝集性を備えるため、生体組織に塗布した場合に、生体組織に粘着して自己凝集を起こすことにより、高い接着力で生体組織を接着すると考えられる。
更に、本発明の静電結合型複合体は、生体膜の構成成分と同じホスホリルコリン類似基を分子内に含んでいるため、生体に対する毒性が少なく、生体接着材として有利な性質を備えている。
すなわち、本発明の静電結合型複合体は、生体組織に対して高い付着性を有している。これは、成分A及び成分Bの重合体に含まれる一般式(1)に係る基が負の電荷を有しており、生体組織表面に存在するコラーゲンなどの正の電荷を有する物質と相互作用するため、生体組織に対して粘着性を示すと考えられる。
また、本発明の静電結合型複合体は、成分Aと成分Bとの静電相互作用により、自己凝集性が高いという性質を備えている。
従って、本発明の静電結合型複合体は、生体組織に対して付着性が高く、且つ、成分Aと成分Bとの静電相互作用による高い自己凝集性を備えるため、生体組織に塗布した場合に、生体組織に粘着して自己凝集を起こすことにより、高い接着力で生体組織を接着すると考えられる。
更に、本発明の静電結合型複合体は、生体膜の構成成分と同じホスホリルコリン類似基を分子内に含んでいるため、生体に対する毒性が少なく、生体接着材として有利な性質を備えている。
成分Aと成分Bの混合比率は1:2〜2:1、特に好ましくは略1:1であると、水などの溶媒に対して溶解度が低く安定した接着性を示す組成物が得られる。これは、成分Aと成分Bの混合比率が1:1に近いほど、正と負の電荷のバランスが最適となり、安定した静電結合型複合体を形成するためと考えられる。
成分Aと成分Bを混合させる際に使用する水性溶媒としては、水、各種緩衝溶液、各種生理食塩水、各種培養液、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ニトロメタンなどが挙げられ、これらは成分Aと成分Bで同一または異なっていてもよい。また、混合溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルオキシド、アセトニトリル、ジオキサン、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、n−ヘキサン、イソプロピルエーテル、四塩化炭素、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶剤と水との混合物等が挙げられる。好ましくは、細胞接着材としてそのまま使用可能である各種緩衝溶液、各種生理食塩水、各種培養液が挙げられる
本発明の静電結合型複合体組成物は、上述のように生体接着材として特に有効である。本発明の生体接着材には、静電結合型複合体組成物の生体接着材料としての性質を妨げない範囲内で、抗菌製剤、抗炎症剤、洗浄製剤、保湿製剤などの各種成分を配合することが可能である。
抗菌製剤としては、例えばペニシリン系やセファロスポリン系、ポエリン系、テトラサイクリン系、サルファ剤などの各種抗生物質が挙げられる。
抗炎症剤としては、ステロイド系及び非ステロイド系の各種抗炎症剤が挙げられる。
洗浄製剤としては、タールエキスや硫酸マグネシウム含有製剤などが挙げられる。
保湿製剤としては、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、尿素や、ヒマシ油やホホバ油などの各種植物由来成分が挙げられる。
その他、グリシン、アラニンなどの各種アミノ酸やアスコルビン酸等の各種ビタミン、ラウリン酸、ミリスチン酸などの各種高級脂肪酸、カチオン性、アニオン性及びノニオン性界面活性剤などを必要に応じて添加することも可能である。
抗菌製剤としては、例えばペニシリン系やセファロスポリン系、ポエリン系、テトラサイクリン系、サルファ剤などの各種抗生物質が挙げられる。
抗炎症剤としては、ステロイド系及び非ステロイド系の各種抗炎症剤が挙げられる。
洗浄製剤としては、タールエキスや硫酸マグネシウム含有製剤などが挙げられる。
保湿製剤としては、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、尿素や、ヒマシ油やホホバ油などの各種植物由来成分が挙げられる。
その他、グリシン、アラニンなどの各種アミノ酸やアスコルビン酸等の各種ビタミン、ラウリン酸、ミリスチン酸などの各種高級脂肪酸、カチオン性、アニオン性及びノニオン性界面活性剤などを必要に応じて添加することも可能である。
本発明の静電結合型複合体は、生体接着材としてヒトを含むあらゆる動物の組織に適用することが可能である。
特に、本発明の静電結合型複合体を含む生体接着材は、外科的手術の後に切開部を接着するための用途や、創傷の治療、密封、組織の補強の用途として、あるいは生体移植や再生医療において移植組織や生体材料を生体に接着するための接着材として好適に使用されうる。
特に、本発明の静電結合型複合体を含む生体接着材は、外科的手術の後に切開部を接着するための用途や、創傷の治療、密封、組織の補強の用途として、あるいは生体移植や再生医療において移植組織や生体材料を生体に接着するための接着材として好適に使用されうる。
外科的手術の後に切開部を接着する場合とは、例えばメスなどを用いて切開した皮膚を縫合糸で縫合する代替として、本発明の生体接着材を用いたり、あるいは縫合糸による縫合と併用するなどして、本発明の生体接着材を使用すること可能である。
また、創傷の治療、密封、組織の補強の用途とは、例えば、創傷部を保護するための薬剤を含浸したシートを貼着したり、外部からの損傷により剥がれやすくなった皮膚などを剥がれにくくするための用途が挙げられる。
更に、生体移植の際に移植組織を生体に接着する用途とは、生体組織の欠損部に自己の生体由来あるいは他の生体由来の組織を移植する際に使用されることをいう。具体的には、例えば鼓膜穿孔部に側頭筋膜などの移植片を接着するなどが挙げられる。
再生医療において生体材料を生体に接着する場合とは、自己の細胞の一部を生体外で培養して再度生体に戻す際に生体材料を生体に接着するような場合をいう。具体的には、例えば角膜再生医療において、患者の角膜の細胞を培養してシート状にして、これを患者の眼球に接着する際の接着材としての用途などが挙げられる。
再生医療において生体材料を生体に接着する場合とは、自己の細胞の一部を生体外で培養して再度生体に戻す際に生体材料を生体に接着するような場合をいう。具体的には、例えば角膜再生医療において、患者の角膜の細胞を培養してシート状にして、これを患者の眼球に接着する際の接着材としての用途などが挙げられる。
成分Aと成分Bを生体接着材として使用する場合、予め両成分を混合して接着面に塗布してもよく、また、接着面の両方に一方の成分を塗布し、その後もう一方の成分をシリンジなどを用いて注入するようにしてもよい。更に、接着面の一方の面に成分A、もう一方の面に成分Bを予め塗布して、両面を密着させることにより両成分を混合するようにしてもよい。
成分A、成分Bあるいは両成分の混合物を接着面に塗布する方法としては、シリンジなどの所定の塗布具を用いて患部に塗布したり、無菌ガス等を利用したスプレーを用いて塗布面に噴霧するなど、公知の方法を使用することができる。特に、操作が簡便であることや装置の構成が簡単であるなどの理由により、成分A、成分Bを各々収納した2つのシリンジを適当な長さの2穴ノズルに接続し、ノズルの先端で両成分を混合して塗布する塗布具を用いると好適である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下に説明する材料、部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
本実施例では、成分Aとして、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)を単量体(a1)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩(MTA)を単量体(a2)として共重合させた重合体ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩酸塩(以下、PMMN)を使用した。また、成分Bとして、MPCを単量体(b1)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩(MSA)を単量体(b2)として共重合させた重合体ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸ナトリウム塩(以下、PMMS)を使用した。
本実施例では、成分Aとして、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)を単量体(a1)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩(MTA)を単量体(a2)として共重合させた重合体ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩酸塩(以下、PMMN)を使用した。また、成分Bとして、MPCを単量体(b1)、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸塩(MSA)を単量体(b2)として共重合させた重合体ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−2−メタクリロイルオキシエチルスルホン酸ナトリウム塩(以下、PMMS)を使用した。
以下に、成分Aの重合体であるPMMNの合成手順及び合成結果を示す。
<合成例A−1>
(1)PMMNの合成
単量体(a1)としてMPC(日本油脂株式会社製)を2.7g、単量体(a2)としてMTA(Aldrich社製)の5.8gを、メタノール/蒸留水=1:1(体積比)の重合溶媒に合わせて0.3mol/lとなるように溶解して、100mlの溶液を作成した。続いて、この溶液を300mlの三口フラスコに入れ、重合開始剤として4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)(Aldrich社製)を3mmol/lとなるように溶解させたのち、溶液中にアルゴンガスを200ml/minで30分間導入してアルゴン置換を行った。続いて、溶液をオイルバス中で60℃、4時間反応させた。
(2−1)透析
上記合成反応で得られた反応溶液100mlを、阻止分子量3,500の120ml透析チューブ(PIERCE社製、SnakeSkin、Pleated Dialysis Tubing)に入れ、純水(電気抵抗率2×106Ω・cm)5000mlを入れたビーカー中に浸漬して25℃で48時間撹拌して透析を行い、反応溶液中の未反応の単量体(a1)、(a2)と重合開始剤を除去した。続いて、0.1Nの塩酸2mlを添加した純水5000mlを入れたビーカー中で、25℃で72時間撹拌して透析を行った。その後、透析チューブから試料を回収して200ml用凍結乾燥用フラスコに入れ、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−1100)で48時間真空状態にて凍結乾燥を行うことで溶媒を除去して白色の粉末を乾燥重量で1.2g得た。
<合成例A−1>
(1)PMMNの合成
単量体(a1)としてMPC(日本油脂株式会社製)を2.7g、単量体(a2)としてMTA(Aldrich社製)の5.8gを、メタノール/蒸留水=1:1(体積比)の重合溶媒に合わせて0.3mol/lとなるように溶解して、100mlの溶液を作成した。続いて、この溶液を300mlの三口フラスコに入れ、重合開始剤として4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)(Aldrich社製)を3mmol/lとなるように溶解させたのち、溶液中にアルゴンガスを200ml/minで30分間導入してアルゴン置換を行った。続いて、溶液をオイルバス中で60℃、4時間反応させた。
(2−1)透析
上記合成反応で得られた反応溶液100mlを、阻止分子量3,500の120ml透析チューブ(PIERCE社製、SnakeSkin、Pleated Dialysis Tubing)に入れ、純水(電気抵抗率2×106Ω・cm)5000mlを入れたビーカー中に浸漬して25℃で48時間撹拌して透析を行い、反応溶液中の未反応の単量体(a1)、(a2)と重合開始剤を除去した。続いて、0.1Nの塩酸2mlを添加した純水5000mlを入れたビーカー中で、25℃で72時間撹拌して透析を行った。その後、透析チューブから試料を回収して200ml用凍結乾燥用フラスコに入れ、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−1100)で48時間真空状態にて凍結乾燥を行うことで溶媒を除去して白色の粉末を乾燥重量で1.2g得た。
<合成例A−2〜A−17>
上記合成例A−1の場合と比較して、1)単量体濃度、2)重合開始剤の種類及び濃度、3)溶媒、4)反応時間、5)精製方法を様々な条件に変更して合成を行った。
1)単量体濃度は、0.1〜1.0Mの範囲で条件を変えて合成反応を行った。
2)重合開始剤の種類は4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN:関東化学株式会社製)の2種類について条件を変えて合成を行った。
重合開始剤の濃度は、単量体/重合開始剤濃度([M]/[I])が表1に示される所定の割合となるように調製して添加した。
3)溶媒は、合成例A−1で使用した純水、あるいはエタノール、もしくは50%メタノールのいずれかを使用した。
4)反応時間は、2時間から36時間の範囲で条件を変えて合成反応を行った。
5)精製方法は、合成例A−1の工程(2−1)で行った透析と、以下の条件で行う再沈殿の2種類の異なる方法で行った。
(2−2)再沈殿
(1)の合成反応で得られた反応溶液をロータリーバキュームエバポレータ(東京理化器械株式会社製、N−2)で30分間エバポレートして重合溶媒を除去し、重合溶媒と同量のエタノールを添加して再溶解させた。その後、15倍量のクロロホルムを添加して25℃で1時間再沈殿を行った。得られた試料を25℃で減圧乾燥装置(佐藤真空株式会社製、TSW−50)で48時間減圧乾燥して溶媒を除去した。
下記表に、ぞれぞれの合成例におけるPMMNの合成条件を示す。なお、理解を容易にするため、各合成例に隣接して重合体の記号を記載してある。これは、PMMNの文字と、重合体中のMPCのモル分率に応じて10、30、50のいずれかで表される数字と、分子量の大小に応じたS、M、Lのアルファベットから構成される記号である。
上記合成例A−1の場合と比較して、1)単量体濃度、2)重合開始剤の種類及び濃度、3)溶媒、4)反応時間、5)精製方法を様々な条件に変更して合成を行った。
1)単量体濃度は、0.1〜1.0Mの範囲で条件を変えて合成反応を行った。
2)重合開始剤の種類は4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN:関東化学株式会社製)の2種類について条件を変えて合成を行った。
重合開始剤の濃度は、単量体/重合開始剤濃度([M]/[I])が表1に示される所定の割合となるように調製して添加した。
3)溶媒は、合成例A−1で使用した純水、あるいはエタノール、もしくは50%メタノールのいずれかを使用した。
4)反応時間は、2時間から36時間の範囲で条件を変えて合成反応を行った。
5)精製方法は、合成例A−1の工程(2−1)で行った透析と、以下の条件で行う再沈殿の2種類の異なる方法で行った。
(2−2)再沈殿
(1)の合成反応で得られた反応溶液をロータリーバキュームエバポレータ(東京理化器械株式会社製、N−2)で30分間エバポレートして重合溶媒を除去し、重合溶媒と同量のエタノールを添加して再溶解させた。その後、15倍量のクロロホルムを添加して25℃で1時間再沈殿を行った。得られた試料を25℃で減圧乾燥装置(佐藤真空株式会社製、TSW−50)で48時間減圧乾燥して溶媒を除去した。
下記表に、ぞれぞれの合成例におけるPMMNの合成条件を示す。なお、理解を容易にするため、各合成例に隣接して重合体の記号を記載してある。これは、PMMNの文字と、重合体中のMPCのモル分率に応じて10、30、50のいずれかで表される数字と、分子量の大小に応じたS、M、Lのアルファベットから構成される記号である。
各合成例で得られた重合体について、1)MPC構造単位のモル分率、2)重量平均分子量(Mw)、3)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))、及び4)収率を求めた。
1)重合体中のMPC構造単位のモル分率については、仕込み組成中のモル分率と、合成した重合体中のモル分率の両方を算出した。重合体中のモル分率は、リンの定量試験により算出した。
2)重量平均分子量(Mw)については、得られた重合体についてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。カラムとして、AWM−H(東ソー株式会社製)、溶出溶媒として、0.15mol/lリン酸緩衝液、標準試料としてポリエチレングリコール(東ソー株式会社製、TSK Standard)を溶解した0.15mol/lのリン酸緩衝液を使用した。重量平均分子量(Mw)の計算は、日本分光社製クロマトデータ処理用プログラム JASCO−BORWINを使用した。カラムに試料50μlを充填し、溶出溶媒を流速0.5ml/minで連続導入して測定を行った。
3)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))についても、上記Mwの測定と同様に、GPCにより測定した。数平均分子量については、上述の重量平均分子量と同様にGPCより測定した。
4)収率は、(得られた試料の乾燥重量)/(仕込みのモノマー重量の合計)により算出した。
下記表に、各合成例で得られた重合体の合成結果を示す。
1)重合体中のMPC構造単位のモル分率については、仕込み組成中のモル分率と、合成した重合体中のモル分率の両方を算出した。重合体中のモル分率は、リンの定量試験により算出した。
2)重量平均分子量(Mw)については、得られた重合体についてゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。カラムとして、AWM−H(東ソー株式会社製)、溶出溶媒として、0.15mol/lリン酸緩衝液、標準試料としてポリエチレングリコール(東ソー株式会社製、TSK Standard)を溶解した0.15mol/lのリン酸緩衝液を使用した。重量平均分子量(Mw)の計算は、日本分光社製クロマトデータ処理用プログラム JASCO−BORWINを使用した。カラムに試料50μlを充填し、溶出溶媒を流速0.5ml/minで連続導入して測定を行った。
3)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))についても、上記Mwの測定と同様に、GPCにより測定した。数平均分子量については、上述の重量平均分子量と同様にGPCより測定した。
4)収率は、(得られた試料の乾燥重量)/(仕込みのモノマー重量の合計)により算出した。
下記表に、各合成例で得られた重合体の合成結果を示す。
続いて、成分Bの重合体であるPMMSの合成手順及び合成結果を示す。
<合成例B−1>
(1)PMMSの合成
単量体(b1)として、PMMSと同様にMPC2.7g、単量体(b2)としてMSA(和光純薬社製)4.5gをメタノール/蒸留水=1:1(体積比)の重合溶媒に合わせて0.3mol/lとなるように溶解して、100mlの溶液を作成した。続いて、上述したPMMNの合成の場合と同様に、この溶液を300mlの三口フラスコに入れ、重合開始剤として4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)(Aldrich社製)を3mmol/lとなるように溶解させたのち、溶液中にアルゴンガスを200ml/minで30分間導入してアルゴン置換を行った。続いて、溶液をオイルバス中で60℃、4時間反応させた。
(2−1)透析
上記合成反応で得られた反応溶液100mlを、阻止分子量3,500の120ml透析チューブ(PIERCE社製、SnakeSkin、Pleated Dialysis Tubing)に入れ、0.2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加した純水5000ml(pH8)を入れたビーカー中で、25℃で120時間撹拌して透析を行い、反応溶液中の未反応の単量体(a1)、(b2)と重合開始剤を除去した。その後、透析チューブから試料を回収して凍結乾燥用フラスコに入れ、合成例A−1と同様の凍結乾燥機で48時間、真空状態で凍結乾燥を行うことで溶媒を除去して白色の粉末を乾燥重量で1.3g得た。
<合成例B−1>
(1)PMMSの合成
単量体(b1)として、PMMSと同様にMPC2.7g、単量体(b2)としてMSA(和光純薬社製)4.5gをメタノール/蒸留水=1:1(体積比)の重合溶媒に合わせて0.3mol/lとなるように溶解して、100mlの溶液を作成した。続いて、上述したPMMNの合成の場合と同様に、この溶液を300mlの三口フラスコに入れ、重合開始剤として4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸(ACA)(Aldrich社製)を3mmol/lとなるように溶解させたのち、溶液中にアルゴンガスを200ml/minで30分間導入してアルゴン置換を行った。続いて、溶液をオイルバス中で60℃、4時間反応させた。
(2−1)透析
上記合成反応で得られた反応溶液100mlを、阻止分子量3,500の120ml透析チューブ(PIERCE社製、SnakeSkin、Pleated Dialysis Tubing)に入れ、0.2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液2mlを添加した純水5000ml(pH8)を入れたビーカー中で、25℃で120時間撹拌して透析を行い、反応溶液中の未反応の単量体(a1)、(b2)と重合開始剤を除去した。その後、透析チューブから試料を回収して凍結乾燥用フラスコに入れ、合成例A−1と同様の凍結乾燥機で48時間、真空状態で凍結乾燥を行うことで溶媒を除去して白色の粉末を乾燥重量で1.3g得た。
<合成例B−2〜B−14>
上記合成例B−1の場合と比較して、1)単量体濃度、2)重合開始剤の種類及び濃度、3)溶媒、4)反応時間、5)精製方法を様々な条件に変更して合成を行った。
1)単量体濃度は、0.1〜0.5Mの範囲で条件を変えて合成反応を行った。
2)重合開始剤の種類は4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACA)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の2種類について条件を変えて合成を行った。
重合開始剤の濃度は、単量体/重合開始剤濃度([M]/[I])が表3に示される所定の割合となるように調製して添加した。
3)溶媒は、合成例B−1で使用した純水、あるいはエタノール、もしくは50%メタノールのいずれかを使用した。
4)反応時間は、1時間から60時間の範囲で条件を変えて合成反応を行った。
5)精製方法は、合成例A−1乃至A−17の場合と異なり、合成例B−1の工程(2−1)で行った透析のみで行い、再沈殿は行わなかった。
下記表に、ぞれぞれの合成例におけるPMMSの合成条件を示す。
上記合成例B−1の場合と比較して、1)単量体濃度、2)重合開始剤の種類及び濃度、3)溶媒、4)反応時間、5)精製方法を様々な条件に変更して合成を行った。
1)単量体濃度は、0.1〜0.5Mの範囲で条件を変えて合成反応を行った。
2)重合開始剤の種類は4,4−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(ACA)あるいは2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の2種類について条件を変えて合成を行った。
重合開始剤の濃度は、単量体/重合開始剤濃度([M]/[I])が表3に示される所定の割合となるように調製して添加した。
3)溶媒は、合成例B−1で使用した純水、あるいはエタノール、もしくは50%メタノールのいずれかを使用した。
4)反応時間は、1時間から60時間の範囲で条件を変えて合成反応を行った。
5)精製方法は、合成例A−1乃至A−17の場合と異なり、合成例B−1の工程(2−1)で行った透析のみで行い、再沈殿は行わなかった。
下記表に、ぞれぞれの合成例におけるPMMSの合成条件を示す。
各合成例で得られた重合体について、1)MPC構造単位のモル分率、2)重量平均分子量(Mw)、3)分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))、及び4)収率を求めた。各測定方法については、上述のPMMNでの測定方法と同様である。
下記表に、各合成例で得られた重合体の合成結果を示す。
下記表に、各合成例で得られた重合体の合成結果を示す。
上述の表2、表4の結果から、溶媒としてエタノールあるいは50%エタノールを用いた場合よりも、純水あるいは50%メタノールを用いた場合の方が、分子量が十分に大きくなることが確認できた。特にPMMNの場合、表2に示すように、純水よりも50%メタノールを用いた場合に収率が大きく向上した。また、反応時間については、30時間以上反応させた場合と4〜6時間程度しか反応させなかった場合で、重量平均分子量、分子量分布、及び収率について大差は無かった。
続いて、得られたPMMN及びPMMSを混合して、本発明の静電結合型複合体組成物を含むハイドロゲルを形成する方法、及び形成されたハイドロゲルについて溶解性試験を行った結果について説明する。
使用したPMMNは、分子量の観点から、合成例A−13からA−17の条件で重合・精製したサンプルを使用した。同様に、PMMSについても、分子量の観点から、合成例B−10からB−14の条件で重合・精製したサンプルを使用した。
使用したPMMNは、分子量の観点から、合成例A−13からA−17の条件で重合・精製したサンプルを使用した。同様に、PMMSについても、分子量の観点から、合成例B−10からB−14の条件で重合・精製したサンプルを使用した。
<ハイドロゲルの形成>
PMMN及びPMMSを常温、常圧で400μlずつ混合して撹拌すると、直後に混合溶液が白濁し、粘度が向上した。これを30分間静置すると徐々に液体が分離してハイドロゲルが得られた。
図1は生成したハイドロゲルを指で圧縮して引き離した状態を示す写真である。図1に示すように、生成したハイドロゲルを指で圧縮して引き離すと、指に対して粘着性を示すことが確認できた。
PMMN及びPMMSを常温、常圧で400μlずつ混合して撹拌すると、直後に混合溶液が白濁し、粘度が向上した。これを30分間静置すると徐々に液体が分離してハイドロゲルが得られた。
図1は生成したハイドロゲルを指で圧縮して引き離した状態を示す写真である。図1に示すように、生成したハイドロゲルを指で圧縮して引き離すと、指に対して粘着性を示すことが確認できた。
<溶解性試験>
続いて、合成例A−13〜A−17のPMMNと、合成例B−10〜B−14のPMMSを様々に組み合わせてハイドロゲルを生成させて溶媒に対して溶解度試験を行い、(a)重合体構成単位におけるMPC単量体のモル分率、(b)重量平均分子量、(c)PMMN及びPMMSの混合比、(d)PMMN及びPMMS中の電荷のバランス、のそれぞれについて、どの条件の場合に溶媒への溶解度が低く、生体接着材として最適なハイドロゲルであるかについて評価を行った。
(実施例1)
(a):重合体構成単位におけるMPC単量体のモル分率についての結果
合成例A−13(重合体の記号:PMMN10)で合成したPMMNと合成例B−10(PMMS10)で合成したPMMSを夫々400μlずつプラスチックチューブ(エッペンチューブ)に混合して、25℃で一晩静置し、ハイドロゲルを生成した。生成したハイドロゲルをメッシュバッグ(栄研器材株式会社製、病理組織検体収納袋サンプルパック)に入れ、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−1100)で48時間凍結乾燥して乾燥重量を測定した。
同様に、合成例A−15(PMMN30M)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30M)で合成したPMMS、及び合成例A−17(PMMN50)で合成したPMMNと合成例B−14(PMMS50)で合成したPMMSについても同様に、乾燥重量を夫々測定した。
続いて、凍結乾燥した3種類の試料をメッシュバッグに入れた状態で、蒸留水又はリン酸緩衝液(0.15Mリン酸ナトリウム、pH7.1)100mlが入った110mlビーカーに25℃で12時間それぞれ浸漬した。浸漬の後、試料を取り出して上述の凍結乾燥を再度行い、乾燥重量を3種類の試料のそれぞれについて測定した。
浸漬前の乾燥重量と浸漬後の乾燥重量から、ハイドロゲルの溶解度を算出した。
続いて、合成例A−13〜A−17のPMMNと、合成例B−10〜B−14のPMMSを様々に組み合わせてハイドロゲルを生成させて溶媒に対して溶解度試験を行い、(a)重合体構成単位におけるMPC単量体のモル分率、(b)重量平均分子量、(c)PMMN及びPMMSの混合比、(d)PMMN及びPMMS中の電荷のバランス、のそれぞれについて、どの条件の場合に溶媒への溶解度が低く、生体接着材として最適なハイドロゲルであるかについて評価を行った。
(実施例1)
(a):重合体構成単位におけるMPC単量体のモル分率についての結果
合成例A−13(重合体の記号:PMMN10)で合成したPMMNと合成例B−10(PMMS10)で合成したPMMSを夫々400μlずつプラスチックチューブ(エッペンチューブ)に混合して、25℃で一晩静置し、ハイドロゲルを生成した。生成したハイドロゲルをメッシュバッグ(栄研器材株式会社製、病理組織検体収納袋サンプルパック)に入れ、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社製、FDU−1100)で48時間凍結乾燥して乾燥重量を測定した。
同様に、合成例A−15(PMMN30M)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30M)で合成したPMMS、及び合成例A−17(PMMN50)で合成したPMMNと合成例B−14(PMMS50)で合成したPMMSについても同様に、乾燥重量を夫々測定した。
続いて、凍結乾燥した3種類の試料をメッシュバッグに入れた状態で、蒸留水又はリン酸緩衝液(0.15Mリン酸ナトリウム、pH7.1)100mlが入った110mlビーカーに25℃で12時間それぞれ浸漬した。浸漬の後、試料を取り出して上述の凍結乾燥を再度行い、乾燥重量を3種類の試料のそれぞれについて測定した。
浸漬前の乾燥重量と浸漬後の乾燥重量から、ハイドロゲルの溶解度を算出した。
(実施例2)
(b):重量平均分子量についての結果
合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMS、合成例A−15(PMMN30M)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30M)で合成したPMMS、及び合成例A−16(PMMN30L)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30L)で合成したPMMSの3種類の組み合わせについて、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
(b):重量平均分子量についての結果
合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMS、合成例A−15(PMMN30M)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30M)で合成したPMMS、及び合成例A−16(PMMN30L)で合成したPMMNと合成例B−12(PMMS30L)で合成したPMMSの3種類の組み合わせについて、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
(実施例3)
(c):PMMN及びPMMSの混合比率ついての結果
合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMSについて、混合比(PMMN/PMMS)を夫々1/2、1/1及び2/1の3通りの条件にして混合し、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
(c):PMMN及びPMMSの混合比率ついての結果
合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMSについて、混合比(PMMN/PMMS)を夫々1/2、1/1及び2/1の3通りの条件にして混合し、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
(実施例4)
(d):PMMN及びPMMSの荷電性単量体の電荷のバランスについての結果
合成例A−13(PMMN10)で合成したPMMNと合成例B−14(PMMS50)で合成したPMMS、合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMS、及び合成例A−17(PMMN50)で合成したPMMNと合成例B−10(PMMS10)で合成したPMMSの3種類の組み合わせについて、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
(d):PMMN及びPMMSの荷電性単量体の電荷のバランスについての結果
合成例A−13(PMMN10)で合成したPMMNと合成例B−14(PMMS50)で合成したPMMS、合成例A−14(PMMN30S)で合成したPMMNと合成例B−11(PMMS30S)で合成したPMMS、及び合成例A−17(PMMN50)で合成したPMMNと合成例B−10(PMMS10)で合成したPMMSの3種類の組み合わせについて、実施例1と同様の条件で溶解性試験を行った。
<溶解性試験結果>
図2はPMMNとPMMSを所定の組み合わせで混合して生成したハイドロゲルの極性溶媒に対する溶解度を示すグラフであり、ハイドロゲルの溶解度に対して、(a)はMPCのモル分率が与える影響、(b)はPMMN及びPMMSの分子量が与える影響、(c)はPMMN及びPMMSの混合比が与える影響、(d)はPMMN及びPMMSの電荷のバランスが与える影響、をそれぞれ示すグラフである。
なお、各グラフは、溶解度が0%に近いほど極性溶媒に対するハイドロゲルの溶解度が低く、従って良好な生体接着材としての性質を有していることを示している。
図2はPMMNとPMMSを所定の組み合わせで混合して生成したハイドロゲルの極性溶媒に対する溶解度を示すグラフであり、ハイドロゲルの溶解度に対して、(a)はMPCのモル分率が与える影響、(b)はPMMN及びPMMSの分子量が与える影響、(c)はPMMN及びPMMSの混合比が与える影響、(d)はPMMN及びPMMSの電荷のバランスが与える影響、をそれぞれ示すグラフである。
なお、各グラフは、溶解度が0%に近いほど極性溶媒に対するハイドロゲルの溶解度が低く、従って良好な生体接着材としての性質を有していることを示している。
図2(a)からわかるように、PMMN及びPMMS中のMPC構成単位のモル分率は、0.1から0.3が好ましく、特に0.3が好適である。一方、MPC構成単位のモル分率が0.5を超えると、90%以上が溶解していることがわかる。このことは、MPC組成が高い重合体、すなわち電荷を有する単量体組成が低い重合体の場合は、静電的相互作用による架橋構造の密度が低いため、PMMNとPMMSの間の静電的相互作用による結合力が小さく、このため極性溶媒に対して容易に溶解することによるものと考えられる。
また、図2(b)では、重量平均分子量が低い組成物(PMMN30S+PMMS30S)であっても、重量平均分子量が中程度の組成物(PMMN30M+PMMS30M)であっても、また、重量平均分子量が高い組成物(PMMN30L+PMMS30L)であっても、いずれの場合でも溶解度に大差はない。従って、重合体の分子量は溶解度にそれほど影響を与えないものと考えられる。
更にまた、図2(c)から、PMMNとPMMSの混合比に偏りがある場合よりも、1:1の割合で混合したもののほうが溶解度が低いことがわかる。
また、図2(d)から、PMMN10とPMMS50を混合した場合及びPMMN50とPMMS10を混合した場合のように、電荷を有する単量体の組成に偏りがある場合よりも、PMMN30SとPMMS30Sを混合したときのように電荷のバランスが釣り合っている場合のほうが溶解度が低いことがわかる。
従って、PMMNの正の電荷を有する構成単位とPMMSの負の電荷を有する構成単位のバランスが略1:1と釣り合っている場合が最も溶解度が低く、極性溶媒中で安定していると考えられる。
また、図2(d)から、PMMN10とPMMS50を混合した場合及びPMMN50とPMMS10を混合した場合のように、電荷を有する単量体の組成に偏りがある場合よりも、PMMN30SとPMMS30Sを混合したときのように電荷のバランスが釣り合っている場合のほうが溶解度が低いことがわかる。
従って、PMMNの正の電荷を有する構成単位とPMMSの負の電荷を有する構成単位のバランスが略1:1と釣り合っている場合が最も溶解度が低く、極性溶媒中で安定していると考えられる。
<接着性試験>
上記工程にて合成したPMMN及びPMMSを用いて、生体組織との接着性を評価する接着性試験を行った。
(実施例5)
合成例A−1のPMMN30の5wt%水溶液と、合成例B−1のPMMS30の5wt%水溶液をそれぞれ500μlずつ混合したハイドロゲルを調製した。
得られたハイドロゲルの生体組織への接着性を評価するため、生体材料として真皮層を露出させて接着面とした市販の豚皮膚切片2枚(小柳商店)を準備し、ハイドロゲル1mlを表面に塗布して貼着した。貼着後25℃で1時間放置し、皮膚切片を引き剥がす際の引っ張り強度を測定した。引っ張り強度は、後述の比較例1のフィブリン糊での接着性を3として、0〜3までの4段階で評価した。
上記工程にて合成したPMMN及びPMMSを用いて、生体組織との接着性を評価する接着性試験を行った。
(実施例5)
合成例A−1のPMMN30の5wt%水溶液と、合成例B−1のPMMS30の5wt%水溶液をそれぞれ500μlずつ混合したハイドロゲルを調製した。
得られたハイドロゲルの生体組織への接着性を評価するため、生体材料として真皮層を露出させて接着面とした市販の豚皮膚切片2枚(小柳商店)を準備し、ハイドロゲル1mlを表面に塗布して貼着した。貼着後25℃で1時間放置し、皮膚切片を引き剥がす際の引っ張り強度を測定した。引っ張り強度は、後述の比較例1のフィブリン糊での接着性を3として、0〜3までの4段階で評価した。
比較例として、公知のフィブリン糊、及び疎水結合性の複合体組成物について上記評価試験を行った。
(比較例1)
市販のフィブリン糊(アベンティス ファーマ株式会社製、Beriplast)1mlを調製し、上記実施例5の接着性試験を行った。
(比較例2)
MPCの疎水結合性複合体組成物として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸の共重合体(PMA)、及びMPCとメタクリル酸ブチルの共重合体(MPB)を混合して疎水結合性の複合体組成物を調製し、これを生体接着材として上記実施例5の接着性試験を行った。
PMAにおけるMPCとメタクリル酸とのモル分率は30:70であり、PMBのおけるMPCとメタクリル酸ブチルのモル分率は80:20である。重合条件及び重合方法については、Polymer Journal.,Vol.22,No.5,p355−360、1990年)に記載されている内容に従った。
続いて、PMA5wt%水溶液とPMB5wt%水溶液をそれぞれ500μlずつ混合し、25℃で1時間静置した。その後、実施例5と同様の方法で生体材料に対する接着性試験を行った。
(比較例1)
市販のフィブリン糊(アベンティス ファーマ株式会社製、Beriplast)1mlを調製し、上記実施例5の接着性試験を行った。
(比較例2)
MPCの疎水結合性複合体組成物として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とメタクリル酸の共重合体(PMA)、及びMPCとメタクリル酸ブチルの共重合体(MPB)を混合して疎水結合性の複合体組成物を調製し、これを生体接着材として上記実施例5の接着性試験を行った。
PMAにおけるMPCとメタクリル酸とのモル分率は30:70であり、PMBのおけるMPCとメタクリル酸ブチルのモル分率は80:20である。重合条件及び重合方法については、Polymer Journal.,Vol.22,No.5,p355−360、1990年)に記載されている内容に従った。
続いて、PMA5wt%水溶液とPMB5wt%水溶液をそれぞれ500μlずつ混合し、25℃で1時間静置した。その後、実施例5と同様の方法で生体材料に対する接着性試験を行った。
実施例5及び比較例1、比較例2で接着性を評価した結果を以下の表に示す。
(引っ張り強度:0:まったく接着しない、1:わずかに接着する、2:接着するがはがれやすい、3:良好に接着してはがれにくい)
実施例5のハイドロゲルと比較例1のフィブリン糊はいずれも良好な接着性を示したが、比較例2の疎水結合性のハイドロゲルはほとんど接着力を示さなかった。従って、PMMNの正の電荷を有する基と、PMMSの負の電荷を有する基との静電結合により、生体組織に対する接着力が生じると考えられる。
上記の接着性試験の結果から、実施例5のハイドロゲルは、市販のフィブリン糊と同等の生体接着性を示すことがわかった。従って、本発明の静電結合型複合体は、生体接着材として十分使用可能な接着性を有している。
(引っ張り強度:0:まったく接着しない、1:わずかに接着する、2:接着するがはがれやすい、3:良好に接着してはがれにくい)
実施例5のハイドロゲルと比較例1のフィブリン糊はいずれも良好な接着性を示したが、比較例2の疎水結合性のハイドロゲルはほとんど接着力を示さなかった。従って、PMMNの正の電荷を有する基と、PMMSの負の電荷を有する基との静電結合により、生体組織に対する接着力が生じると考えられる。
上記の接着性試験の結果から、実施例5のハイドロゲルは、市販のフィブリン糊と同等の生体接着性を示すことがわかった。従って、本発明の静電結合型複合体は、生体接着材として十分使用可能な接着性を有している。
Claims (12)
- A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、
前記A成分は、
少なくとも下記一般式(1)
(式中、R1は炭素数1〜10の2価の炭化水素基またはオキシアルキレン基を示し、R2は炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示し、R3,R4及びR5は同一あるいは異なってもよく水素原子あるいは炭素数1〜4の炭化水素基である。)
で示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(a1)と、
正の電荷を有する荷電性単量体(a2)と、を重合してなる重合体であり、
前記B成分は、
少なくとも一般式(1)に示されるホスホリルコリン類似基を有する単量体(b1)と、
負の電荷を有する荷電性単量体(b2)と、を重合してなる重合体である、静電結合型複合体組成物。 - 前記単量体(a1)又は前記単量体(b1)のうちいずれか少なくとも一方が、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−トリメチルアンモニオエチルホスフェートであることを特徴とする請求項1記載の静電結合型複合体組成物。
- 前記荷電性単量体(a2)が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩であることを特徴とする請求項3記載の静電結合型複合体組成物。
- 前記荷電性単量体(b2)が、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルスルホン酸塩であることを特徴とする請求項5記載の静電結合型複合体組成物。
- A成分及びB成分からなる静電結合型複合体組成物であって、
前記成分Aは、下記一般式(4)
(式中、R11は炭素数1または2のアルキレン基、R12は炭素数2または3のアルキレン基、R13は炭素数1〜4のアルキレン基、R14,R15は同一または異なってもよく水素またはメチル基、mとnは各構成単位の割合を示し、m/nは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、X−は1価の陰イオンである。)
で示される重合体であり、
前記B成分は、下記一般式(5)
(式中、R16は炭素数1または2のアルキレン基、R17は炭素数2または3のアルキレン基、R18は炭素数1〜4のアルキレン基、R19,R20は同一または異なってもよく水素またはメチル基、pとqは各構成単位の割合を示し、p/qは5/95から95/5であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより標準ポリエチレングリコールを用いて換算した重量平均分子量が10,000から5,000,000の範囲、M+は1価の陽イオンである。)
で示される重合体である、静電結合型複合体組成物。 - 前記m/nが10/90から50/50の範囲であり、前記p/qが10/90から50/50の範囲であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1に記載の静電結合型複合体組成物。
- 前記成分Aの重合体と前記成分Bの重合体の混合比率が、1:2から2:1の範囲であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の静電結合型複合体組成物。
- 請求項1乃至11のいずれか1に記載の静電結合型複合体組成物を少なくとも含んでなる生体接着材。
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WO2020213524A1 (ja) * | 2019-04-15 | 2020-10-22 | 日油株式会社 | ホスホリルコリン基含有ビニル系単量体 |
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JP2003014767A (ja) * | 2001-04-26 | 2003-01-15 | Nof Corp | 非特異的ハイブリダイゼーション抑制剤、臨床検査薬及び臨床検査法 |
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2005
- 2005-03-08 JP JP2005064387A patent/JP2006249148A/ja active Pending
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