JP2006247887A - 表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法 - Google Patents

表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法 Download PDF

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【課題】 防食性能に優れた粉体プライマーに要求される、高温の鋼管予熱を行なった場合においても、冷却後の樹脂表面の凹凸発生を防止することが可能な表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】 上記課題は、鋼管表面に、溶融状態にあるシート状ポリオレフィン樹脂を螺旋状に巻き付けながら被覆してなるポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法において、該樹脂被覆後の冷却工程で、樹脂表面をラミナー水冷し該樹脂表面全体を連続した水膜で覆って該樹脂の融点未満の温度まで冷却し、さらに前記ラミナー水冷後も、樹脂表面温度を融点以上に上昇させることなく冷却を継続することを特徴とする、表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法によって達成される。
【選択図】 図1

Description

本発明はポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法に関するものである。より詳しくは、ポリオレフィン樹脂被覆表面に凹凸などの外観不良の発生がない、表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法に関する。
ポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法としては、鋼管の回転方向に対し斜めに配置された搬送ロール(スキューロール)により、加熱した鋼管を回転させつつ管長方向に前進させながら、鋼管の外面に溶融状態のポリオレフィン樹脂シートを連続的に螺旋状に巻き付けて、被覆する方法が知られている。
近年、長期の防食性能を重視する考えから、ポリオレフィン樹脂被覆の下地プライマーとして、従来の液状プライマーから粉体プライマーを使用する場合が増えてきている。その際には、鋼管の予熱温度を、被覆するポリオレフィン樹脂の融点をはるかに超えた、200℃以上の高温にすることが必要となる場合があり、より高温に対応した被覆技術が望まれている。
このように、高温の予熱温度の場合であっても、樹脂被覆後、搬送ロールによる被覆樹脂のつぶれを防止する目的から、樹脂を急速に冷却する必要がある。冷却方法として、通常は円周方向に配置されたノズルから噴出された水流により冷却する方法が一般的であるが、冷却後の樹脂表面に不規則な凹凸模様が形成され、外観上問題となる場合があった。
この解決手段として、樹脂被覆直後に耐熱樹脂シートで被覆鋼管を覆い、この状態で外面から水冷を行う方法が開示されている(特許文献1参照)。
また、溶融したポリオレフィン帯状体を被覆した後、被覆表面に水の微粒子を噴霧しながら、圧縮空気を吹きつけて被覆表面に付着した水滴を吹き飛ばす方法も開示されている(特許文献2参照)。
特開平6−143417号公報 特開平11−291398号公報
しかしながら、樹脂被覆直後に耐熱樹脂シートで覆う方法では耐熱樹脂シートの巻き付け工程が必要なため、被覆スピードが速い場合には適しておらず、また、連続生産には不向きである。
また、水の微粒子を噴霧しながら圧縮空気を吹き付ける方法では、水の粒子を吹き付けたのち、圧縮空気で完全に水滴を吹き飛ばす事は困難であった。さらに、水の粒子により冷却しただけでは、特に高温の鋼管予熱を必要とする場合は、冷却能力が不十分であり、その後の圧縮空気による冷却では、表面が復熱、再溶融し、再度水冷した際に凹凸が発生するなど、充分に凹凸の課題を防止することは困難であった。
従って、高温の予熱温度に対応した凹凸発生防止方法として、良好なものはこれまでなかったのが実態であった。
本発明の目的は、防食性能に優れた粉体プライマーに要求される、高温の鋼管予熱を行なった場合においても、冷却後の樹脂表面の凹凸発生を防止することが可能な表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、冷却後の樹脂表面に凹凸の生成する原因が、溶融状態の樹脂に、局部的に付着した水滴により、樹脂が局部的に冷却・結晶化することにあることを見出した。そこで、樹脂表面をラミナー水冷し該樹脂表面全体を連続した水膜で覆って融点未満の温度まで冷却し、かつ一旦冷却した後、樹脂表面が融点以上に復熱しないようにさらに連続的に冷却することで、樹脂表面の凹凸発生が顕著に軽減され、表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管が製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、鋼管表面に、溶融状態にあるシート状ポリオレフィン樹脂を螺旋状に巻き付けながら被覆してなるポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法において、該樹脂被覆後の冷却工程で、樹脂表面をラミナー水冷し該樹脂表面全体を連続した水膜で覆って該樹脂の融点未満の温度まで冷却し、さらに前記ラミナー水冷後も、樹脂表面温度を融点以上に上昇させることなく冷却を継続することを特徴とする表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法に関するものである。
本発明により、鋼管の外面に溶融状態のポリオレフィン樹脂シートを連続的に螺旋状に巻付けていくポリオレフィン樹脂被覆方法において、被覆表面に凹凸のない表面外観の優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管を得ることができる。
本発明で用いられる鋼管の種類や寸法は特に制限されないが、例えば、電縫管、スパイラル鋼管、UOE鋼管、メッキ管が挙げられる。
まず、必要により、鋼管外面にアルカリ脱脂・酸性処理またはブラスト処理などの除錆処理を施し、表面を清浄化する。次に優れた防食性を付与するために、鋼管の表面にクロメート処理、燐酸塩処理等の下地処理をほどこしてもよい。さらにその上層に、ポリオレフィン樹脂との接着性を高めるために、エポキシ樹脂等のプライマー層を設けても良い。プライマー層形成前のプライマーの形態としては、粉体プライマー、液状プライマー等があげられる。
プライマー層を形成させる場合には、通常、鋼管を100℃〜250℃程度の温度に加熱する。鋼管の加熱方式としては、高周波誘導加熱、遠赤外加熱、ガス直火加熱などの方法が挙げられる。プライマー層の形成方法としてはスプレー塗装、ロール塗布、刷毛塗り、しごき塗布などの方法が用いられる。
本発明の鋼管はポリオレフィン樹脂を被覆するものであるが、ポリオレフィン樹脂は一般に接着性が弱いため接着層を設けることが好ましい。接着層として好ましいものは変性ポリオレフィン樹脂やアイオノマー樹脂などである。変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリオレフィン樹脂層に用いられるポリオレフィン樹脂をマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物で変性したものなどを用いることができる。接着層の厚みは0.1〜2mm程度、好ましくは0.3〜1.0mm程度が適当である。
ポリオレフィン樹脂被覆に用いられるポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの公知のポリオレフィン樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂の融点は、特に制限されないが、ポリエチレンの場合102〜137℃程度、通常押出被覆で使用する範囲は110〜125℃程度、ポリプロピレンの場合130〜170℃程度、通常押出被覆で使用する範囲は140〜165℃程度、ポリブテンの場合115〜135℃程度、通常押出被覆で使用する範囲は120〜130℃程度、ポリメチルペンテンの場合220〜240℃程度である。このポリオレフィン樹脂被覆の厚みは1〜5mm程度、通常1.5〜3.5mm程度である。
本発明の方法においては、ポリオレフィン樹脂を加熱溶融してシート状に押出す。ポリオレフィン樹脂の溶融温度は融点より10〜160℃程度高く、好ましくはポリエチレン、ポリブテンの場合60〜140℃程度、ポリプロピレンの場合50〜110℃程度高くする。ポリメチルペンテンの場合は40〜70℃程度高くする。シート状に押出すダイは公知のものでよく、Tダイ等を利用できる。シートの幅は特に制限されないが350〜550mm程度である。
接着層を設ける場合には、これをポリオレフィン樹脂に先立って鋼管に被覆してもよいが、ポリオレフィン樹脂を共押出しするのが簡便である。
ダイから押出された溶融状態のポリオレフィン樹脂シートを必要により下地処理が施された鋼管の表面に螺旋状に巻回していく。
その際の鋼管の温度は、ポリオレフィン樹脂がポリエチレン樹脂の場合、樹脂の融点より0〜130℃程度高い温度であり、ポリプロピレン樹脂の場合、0〜100℃程度高い温度である。
そこで、次いでこのポリオレフィン樹脂被覆鋼管を冷却するが、本発明ではまずラミナー水冷し、その際に形成される水膜で樹脂表面全体を覆って冷却を行うところに特徴がある。
ラミナー水冷(ラミナー冷却)とは、ミスト冷却やスプレー冷却とは異なり、棒状に吐出する水流による冷却のことである。この吐出された水流が樹脂表面に接触して水膜を形成する。
本発明では樹脂表面全体を連続した水膜で覆って該樹脂の融点未満の温度まで冷却することがとくに重要である。
樹脂表面の円周方向の全周にわたって、すき間(水膜で覆われていない部分)が生じることがないよう連続した水膜で覆うことにより、樹脂の局部的な冷却、結晶化を抑制し、樹脂表面の凹凸発生を回避することが可能となる。樹脂表面の一部に水膜で覆われていない部分が生じると、その部分に凹凸模様が形成されやすくなる。
通常、樹脂被覆鋼管を水冷する際には、該鋼管を回転させ、かつ前進させながら冷却する。本発明においては、ラミナー水冷を開始してから、樹脂表面温度が該樹脂の融点未満の温度に下がるまでの間、とぎれることのない水膜で覆われた状態を維持できるように冷却できればよい。
このラミナー冷却には、通常円筒ノズルから気泡を含まないように層流の水流を吐出して行う。円筒ノズル(開口形状は円状が好ましい。)は個別に設ける他、円状の管の内側に吐出口(開口形状は円状が好ましい。)を略等間隔に設けたものであってもよい。この管を螺旋状に形成することもできる。吐出口の間隔を狭め、かつ吐出口と樹脂表面との間隔を狭めて、水膜が途切れないようにすることが重要である。
鋼管の下面側の樹脂表面においても、水膜が途切れることなく付着した状態を維持するためには、下面側にも円筒ノズルを配置するとともに、樹脂被覆鋼管の外径、回転速度、送り速度等に応じて円筒ノズルの数及び間隔、吐出口と樹脂表面の間隔、冷却水量、吐出圧等を適宜、設定すればよい。
この点で、円筒ノズルの吐出口間の間隔は鋼管外径、冷却水量等により異なるが、管周方向に200〜700mm程度、好ましくは300〜500mm程度、吐出口とポリオレフィン樹脂表面との間隔は50〜400mm程度、好ましくは50〜200mm程度とするのがよい。これによって、円筒ノズルから吐出される水が樹脂表面に均一に接触して水膜を形成し、均一な冷却を行うことができる。円筒ノズルの数は通常、円周方向に8〜12個程度になる。
吐出する水の温度は、特別の目的がなければ、使用水そのままでよく、常温〜50℃程度である。
ラミナー冷却による水冷はポリオレフィン樹脂表面温度が該樹脂の融点未満、好ましくは軟化点以下になるまで行う。このために、水膜が少なくとも15秒間、好ましくは15〜60秒間供給され続けるだけの水膜が形成される領域を確保することが好ましい。
表面の冷却速度は樹脂被覆後、最初の搬送ロールに樹脂表面が接触するまでの間に、樹脂表面の温度が確実に融点未満に下がる冷却速度であることが必須であるが、通常10〜100℃/secの範囲となる。
また、一旦ラミナー冷却を行った後、水冷を中止するとすぐに鋼管のもつ熱が樹脂表面に伝わり樹脂表面が融点以上に復熱する。この場合、再び水冷すると前記の冷却方法によらなければ凹凸が発生する。したがって、ラミナー冷却により樹脂温度を融点未満に下げたあとは、引き続き公知の冷却方法により、後に冷却を中止しても融点まで復熱しなくなるまで冷却を継続する。通常は、鋼管温度が環境温度に下がるまで冷却を継続するのがよい。
この公知の冷却方法としては、通常はノズルからの水流であり、これは表面の復熱を防止しうる方法であれば、方式やノズル配置等に制約はない。スプレー冷却による水冷でもよい。また鋼管の温度がその後に冷却を中止しても樹脂の融点以上に復熱しなくなる温度以下に下がった後は、空気等による放冷であっても問題はない。
[実施例1〜6、比較例1〜3]
JISG−3457によるSTPY40、管長12m、外径914.4mm、管厚9mmのUOE鋼管を使用し、その鋼管の外表面をグリットブラスト処理により清浄度をSa2.5以上とした。スキューロール上を回転させながら、搬送し、まず転写ロールを用いて、クロメート処理液を該鋼管表面に塗布した。塗布後、塗布面が次のスキューロールと接触するまでに、第1インダクションヒーターにより、鋼管温度を100℃に昇温し、焼付けてクロメート層を形成した。次に、230℃まで鋼管温度を第2インダクションヒーターにより昇温し、エポキシ粉体塗料(密度1.49、粒径250μm以下)を静電粉体塗装機により膜厚350〜400μmとなるように外面に塗装した。
この鋼管に、図1に示すようにしてポリオレフィン樹脂を被覆した。ポリオレフィン樹脂と変性ポリオレフィン樹脂がそれぞれの押出機からTダイを通して帯状に共押出しされ、図面右方に回転しながら進行している鋼管に螺旋状に巻付けられていく。変性ポリエチレン樹脂接着層には厚み0.2〜0.5mmの無水マレイン酸変性ポリエチレン(融点121℃、MFR1.0)を用い、ポリエチレン樹脂層には厚み3.0mmの高密度ポリエチレン(密度0.943、融点124℃、MFR0.24)を用いた。こうしてポリオレフィン樹脂が被覆された鋼管のポリオレフィン樹脂被覆の表面温度は220〜230℃であった。
次に、この鋼管を、図1に示すように、円筒ノズルを円状に配置したその内側を通過させてラミナー水冷を行った。ノズルの吐出口間の間隔は管長方向に100mm間隔で1〜3列とし、円周方向には略等間隔で4〜10個配置した。そして吐出口と樹脂表面との間隔は200mmであった。
各実施例で用いたノズルの数は表1に示した。尚、帯状溶融樹脂シートの巻付位置(サポートロールの中心)とノズル(複数列の場合は最前列)との間の距離は約250cmである。
ラミナー水冷後は表1に記載の通りスプレー冷却又は空冷を行った。
こうして得られたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の外観評価を次のようにして行った。
外観の評価
ポリオレフィン樹脂を被覆し、冷却した後の被覆樹脂表面外観を目視で確認し、凹凸の有無をしらべた。凹凸(微細なものも含む。)があるものは×、ないものは○として評価した。また、冷却が間に合わず、ロールによる圧痕による凹凸が発生したものについても×とした。
上記の実験条件及び結果をまとめて表1に示す。
Figure 2006247887
本発明の製造方法で得られたポリオレフィン樹脂被覆鋼管は、ガス管、水道管、ラインパイプ、鋼管杭など防食鋼管に使用される。
本発明の方法でポリオレフィン樹脂被覆鋼管を製造している例を示す側面図である。

Claims (1)

  1. 鋼管表面に、溶融状態にあるシート状ポリオレフィン樹脂を螺旋状に巻き付けながら被覆してなるポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法において、該樹脂被覆後の冷却工程で、樹脂表面をラミナー水冷し該樹脂表面全体を連続した水膜で覆って該樹脂の融点未満の温度まで冷却し、さらに前記ラミナー水冷後も、樹脂表面温度を融点以上に上昇させることなく冷却を継続することを特徴とする、表面外観に優れたポリオレフィン樹脂被覆鋼管の製造方法
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