JP2004160532A - 熱延鋼板の冷却制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却(好ましくは、スリットラミナー冷却とパイプラミナー冷却との組み合わせ)とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記冷却工程前段のラミナー冷却後の鋼板温度が、前記冷却工程後段のスプレー冷却の冷却能力に、鋼板の巻取温度を加えた温度になるように、前記ラミナー冷却において使用する冷却ノズル本数を調整することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間仕上圧延をした鋼板をホットランテーブルで冷却する際の熱延鋼板の冷却制御方法に関する。
具体的には、熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷
却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱間仕上圧延をした鋼板をホットランテーブルで冷却する際の熱延鋼板の冷却制御方法に関しては、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特開平5−277542号公報には、鋼帯の表裏面の温度が500℃以下の温度域においては50〜300L/分・m2の水量密度で冷却することにより加工性の優れた高強度鋼板を安定して製造する冷却方法が開示されている。
また、特開平6−262240号公報には、鋼帯の表面温度が500℃以下の部分には、鋼帯から冷却水への熱伝達率が2000Kcal/h・m2℃以下となるように冷却水の水量密度を制御する方法が開示されている。
しかし、これら冷却方法は、鋼帯温度に基づいて、鋼帯の上面を冷却するラミナーノズルとスプレーノズルとを使い分ける複雑な制御が必要であった。
【0003】
さらに、特開平9−31544号公報には、熱間仕上圧延機から出た鋼板を550℃になるまでラミナー冷却により急冷却し、550℃から低温巻取温度へスプレー冷却により緩冷却する加工性に優れた高強度鋼板の製造方法が開示されている。
しかし、この方法においても、鋼板の温度に基づく複雑な制御が必要であるうえ、300〜500℃の遷移沸騰領域における温度制御性に優れたスプレー冷却で使用するノズル本数を調整することにより鋼板の巻取温度を制御するため、巻取温度の均一性が保てず、鋼板の製造歩留まりを低下させるという問題点があった。
なお、高温鋼材水冷時の特性および熱伝達率については、昭和50年8月7,8日、日本鉄鋼協会第35回西山記念技術講座、鋼材の冷却、第V章、P135図4−6、P149図4−20に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−277542号公報
【特許文献2】特開平6−262240号公報
【特許文献3】特開平9−31544号公報
【特許文献4】特開平9−31544号公報
【非特許文献1】日本鉄鋼協会第35回西山記念技術講座(第V章、P135図4−6、P149図4−20)
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、鋼板の巻取温度を均一にすることにより、鋼板の製造歩留まりを向上させることができる鋼板温度の制御性にすぐれた熱延鋼板の冷却制御方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために、鋭意検討の結果、ラミナー冷却と、スプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、冷却工程のゾーンごとに冷却方法を設定し、ラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を調整して鋼板温度の制御を行うことによって、鋼板の巻取温度を均一にすることにより、鋼板の製造歩留まりを向上させることができる鋼板温度の制御性にすぐれた熱延鋼板の冷却制御方法を提供するものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
【0006】
(1)熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記冷却工程前段のラミナー冷却後の鋼板温度が、前記冷却工程後段のスプレー冷却による鋼板の最大冷却温度に、鋼板の巻取温度を加えた温度になるように、前記ラミナー冷却において使用する冷却ノズル本数を調整することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。
【0007】
(2)前記ラミナー冷却は、スリットラミナー冷却とパイプラミナー冷却とを組み合わせることを特徴とする(1)に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
(3)前記スプレー冷却は、鋼板の上面に冷却水を噴霧することを特徴とする(1)または(2)に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
(4)熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記鋼板の種類ごとに、巻取温度、板厚、速度、および、前記冷却工程のゾーンごとの冷却方法を初期設定する工程と、
仕上温度、板厚、および、速度の実績値を測定する工程と、
前記仕上温度、板厚、および、速度の実績値に基づいて、前記冷却工程のうちラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を修正する工程とを有することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。
【0008】
(5)熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記鋼板の種類ごとに、巻取温度、板厚、速度、および、前記冷却工程のゾーンごとの冷却方法を初期設定する工程と、
巻取温度、板厚、および、速度の実績値を測定する工程と、
前記巻取温度、板厚、および、速度の実績値に基づいて、前記冷却工程のうちラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を修正する工程とを有することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。
(6)前記板厚、および、速度の実績値に代えて、板厚、および、速度の初期設定値を用いることを特徴とする(4)または(5)に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1乃至図7を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の熱延鋼板の冷却制御方法が対象とする熱延鋼板の製造ラインを示す図である。
図1において、加熱炉1にて加熱された鋼片は、粗圧延機2にて、厚さ30〜60mmのシートバーに圧延され、熱間仕上圧延機3にて数mm厚さの熱延鋼板となった後、ホットランテーブル4にて900℃前後の仕上温度(FT)から、300〜600℃の巻取温度(CT)まで冷却された後、巻取機5に巻き取られる。
【0010】
ホットランテーブル4には、ラミナー冷却およびスプレー冷却を行うための冷却装置が配置されている。
ここに、ラミナー冷却とは、図7に示すように、冷却水を冷却ノズルから鋼板表面に対して垂直に噴射することによって、鋼板を急速に冷却する方法である。
ラミナー冷却には、鋼板に対して水平に配置されたスリット状ノズルから冷却水を噴射するスリットラミナーと、パイプ状ノズルから冷却水を噴射するパイプラミナーがあり、本発明では、どちらのタイプを用いてもよいが、スリットラミナーとパイプラミナーとを組み合わせて用いることによって、冷却能力を増加させ、鋼板温度の制御性を向上させることができる。
また、スプレー冷却とは、図8に示すように、ミスト状の冷却水を冷却ノズルから鋼板表面に噴霧することによって、鋼板をゆっくりと冷却する方法である。
【0011】
図2は、本発明における熱延鋼板の冷却制御方法の装置構成を示す図である。
図2において、冷却制御装置は、ホットランテーブルを複数に分割したゾーンごとに冷却方法および使用する冷却ノズル本数を設定し、各ゾーンに設置されている図示されていないON−OFF弁によって、冷却ノズルの開閉を行う。
仕上圧延機3を出た鋼板の仕上温度(FT)および冷却後の鋼板の巻取温度(CT)、板厚、速度が必要に応じて測定されて冷却制御装置に送られ、冷却制御装置が冷却ノズルの開閉を修正することによって鋼板温度を制御することができる。
【0012】
図3は、本発明における熱延鋼板の冷却制御方法のフローを示す図である。
まず、鋼板の種類ごとに、巻取温度(CT)、板厚、速度、および、冷却工程のゾーンごとの冷却方法を初期設定する。
鋼板の種類ごとに目標とする機械特性に併せて、冷却温度パターンをあらかじめ決めるためである。
ここに、巻取温度(CT)は、冷却後の鋼板を巻取る前の温度(℃)であり、板厚(mm)は鋼板の仕様により予め設定され、速度は、ホットランテーブル上を走行する鋼板の速度(m/sec)である。
冷却工程のゾーン数は任意の数でよいが、前段および後段の2つ以上に分割し、各ゾーンにおける冷却方法および使用する冷却ノズル本数を予め設定する。
【0013】
まず、鋼板温度が500℃程度から巻取温度(CT)までについて、スプレー冷却を用いるように、冷却工程の後段において使用する冷却ノズル本数を設定する。
次に、冷却工程の前段において使用するラミナーノズルの本数を設定する。
次に、仕上温度(FT)、巻取温度(CT)、板厚、速度の実績値を測定する。
鋼板温度、板厚、速度の測定点は任意でよいが、鋼板の10m程度の間隔で測定することが好ましい。
【0014】
次に、仕上温度(FT)または巻取温度(CT)、板厚、速度の実績値に基づいて、ラミナー冷却を行うゾーンにおける冷却ノズル本数を修正する。ラミナー冷却は冷却速度が速いが、冷却工程後段の鋼板温度が300〜500℃の遷移沸騰領域においては、スプレー冷却に比べて温度制御性が劣るため、後段の冷却は温度制御性に優れたスプレー冷却を最大限使用し、スプレー冷却における冷却ノズル本数を調整することによって、温度均一性を向上させることができる。その理由は、後述する。
また、板厚、速度の実績値に代えて、初期設定値を用いてもよく、板厚、速度の初期設定値を用いることにより、より簡便な冷却制御を実現することができる。
なお、仕上温度(FT)、巻取温度(CT)はいずれの実績値を用いてもよいが、仕上温度(FT)の実績値に基づいて冷却ノズル本数の修正を行うには、フィードフォワード制御を行い、巻取温度(CT)の実績値に基づいて冷却ノズル本数の修正を行うには、フィードバック制御を行うことが好ましい。
<300〜500℃でのラミナー冷却とスプレー冷却の比較>
▲1▼ラミナー冷却条件での熱伝達率αの極大値
10mmφのノズルから8.3l/min.の流量を噴射した場合、
流速は176cm/sとなる。
前述の西山記念講座P149,図4−20(本明細書添付図9)によると、heat flux(q)の極大値は鋼板表面温度が200℃近傍であり、その値は、
q =107 kcal/m2・hrである。
q=α(Ts−Twater)だから、
α=107/(200−20)= 5.5×104 kcal/m2・hr・℃at 200℃
スプレー冷却条件での熱伝達率αの極大値
流量を、350l/min.・m2=0.035l/min.・cm2とすると、
前述の西山記念講座P135,図4−6(本明細書添付図10)によると、
極大値の熱伝達率α=7×103 kcal/m2・hr・℃ 程度である。
従って、部分的に温度が下がって極大値のαになったとしても、ラミナー冷却に比べて、スプレー冷却では温度下がりが少なく、冷却後の温度のバラツキが小さくなる。
▲2▼一方、熱流束の温度依存性を検討すると、
ラミナー冷却では、前述の西山記念講座P149,図4−20(本明細書添付図9)より、
q at 400℃ = 6×106 kcal/m2・hr
q at 200℃ =12×106 kcal/m2・hr
従って、Δq/ΔT=3×104 kcal/m2・hr・℃ となる。
スプレー冷却では、西山記念講座P135,図4−6(本明細書添付図10)によると、
q at 300℃ = 7×103×(300−20)=1.9×106 kcal/m2・hr
q at 500℃ =3×103×(500−20)=1.4×106 kcal/m2・hr
従って、Δq/ΔT=2.5×103 kcal/m2・hr・℃ となる。
従って、ラミナー冷却よりスプレー冷却の方が、温度変化に対する熱流束の変化も小さく、冷却後の温度のバラツキも小さくなる。
上記▲1▼、▲2▼から、ラミナー冷却に比べてスプレー冷却の方が温度制御性が良いと考えられる。
【0015】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の熱延鋼板の冷却制御方法における第1の実施形態を示す図である。
図4において、横軸は、ホットランテーブル上のゾーンNO.を示し、図4の左側が仕上圧延機側であり、右側が巻取機側である。
また、図4の実線の矢印は、ラミナー冷却を用いるゾーン、破線の矢印はスプレー冷却を用いるゾーン、点線の矢印は空冷を用いるゾーンを示す。
図4における一点鎖線は、鋼材の種類ごとに予め設定した冷却パターンを示し、実線はラミナー冷却に用いる冷却ノズル本数を修正した後の実績の冷却パターンを示す。
まず、仕上温度(FT)870℃、巻取温度(CT)440℃、板厚2.0mm、速度700mpm、および、冷却工程のゾーン1〜3の上下面ともラミナー冷却とし、ゾーン4〜6の上面はスプレー冷却、下面は空冷(放冷)とし、それぞれのゾーンの冷却ノズル本数を予め設定する。
このとき、少なくとも鋼板温度が500℃程度から巻取温度(CT)までについて、スプレー冷却を用いるように、冷却工程の後段において使用する冷却ノズル本数を設定した後、冷却工程の前段において使用するラミナーノズルの本数を設定する。
【0016】
次に、仕上温度(FT)、巻取温度(CT)、板厚、速度の実績値を測定し、仕上温度(FT)の設定値870℃と実績値820℃との差に基づいて、ラミナー冷却、に用いる冷却ノズルの本数を調整する。
図4においては、仕上温度の実績値が低すぎたため、ゾーン3におけるラミナー冷却に用いる冷却ノズル本数を少なくすることによって、冷却速度を低減させている。
このように、冷却工程の前段においては、ラミナー冷却を用いて急速に冷却する一方で、仕上温度の実績値が異なる場合には、ラミナー冷却に用いる冷却ノズル本数を調整することにより、鋼板温度を所定の温度まで冷却することができる。
【0017】
冷却工程の後段においては、鋼板の上面からスプレー冷却を最大限に用いることにより、鋼板をゆっくり冷却することができ、冷却工程後段の鋼板温度が300〜500℃の遷移沸騰領域においては、スプレー冷却の方がラミナー冷却に比べて温度制御性が高いので、巻取温度(CT)のバラツキを著しく低減することができる。
通常は、制御メッシュの細かい後段の冷却工程の優先順位は低くするのが常識であるが、本発明においては、制御メッシュの細かい冷却工程の後段の冷却方法をスプレー冷却を優先的に用いることによって、巻取温度の均一性を重視した点に特徴がある。
本実施形態においては、スプレー冷却は鋼板の上面のみとし、下面は空冷としたが、下面もスプレー冷却としてもよい。
なお、本実施形態においては、ホットランテーブルのゾーン1およびゾーン2を冷却工程の前段、ゾーン3を中段とし、ホットランテーブルのゾーン4乃至6を冷却工程の後段としたが、このゾーンの数および境界は適宜変更しても構わない。
【0018】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の熱延鋼板の冷却制御方法における第2の実施形態を示す図である。
図5において、横軸は、ホットランテーブル上のゾーンNO.を示し、図2の左側が仕上圧延機側であり、右側が巻取機側である。
また、図5の矢印および冷却パターンの表示は、図4と同様である。
まず、仕上温度(FT)840℃、巻取温度(CT)430℃、板厚1.4mm、速度900mpm、および、冷却工程のゾーン1およびゾーン2の上下面をラミナー冷却、ゾーン3の上下面を空冷(放冷)、ゾーン4〜6の上面はスプレー冷却、下面は空冷(放冷)とし、それぞれのゾーンの冷却ノズル本数を予め設定する。
このとき、鋼板温度が500℃程度から巻取温度(CT)までについて、スプレー冷却を用いるように、冷却工程の後段において使用する冷却ノズル本数を設定した後、冷却工程の前段において使用するラミナーノズルの本数を設定する。
【0019】
次に、仕上温度(FT)、巻取温度(CT)、板厚、速度の実績値を測定し、仕上温度(FT)の設定値840℃と実績値900℃との差に基づいて、ラミナー冷却に用いる冷却ノズルの本数を調整する。
図5においては、仕上温度の実績値が高すぎたため、ゾーン1およびゾーン2におけるラミナー冷却に用いる冷却ノズル本数を多くすることによって、冷却速度を増加させている。
この場合には、T1が低い温度に設定されており、さらに冷却速度を高める必要があるため、ラミナー冷却は、冷却能力の観点から、スリットラミナーとパイプラミナーとを併用することが好ましい。
【0020】
このように、冷却工程の前段においては、ラミナー冷却を用いて急速に冷却する一方で、巻取温度の実績値が異なる場合には、ラミナー冷却に用いる冷却ノズル本数を調整することにより、鋼板温度を所定の温度まで冷却することができる。
次に、冷却工程の後段においては、鋼板の上面からラミナー冷却を最大限に用いることにより、鋼板をゆっくり冷却することができ、冷却工程後段の鋼板温度が300〜500℃の遷移沸騰領域においては、スプレー冷却は、ラミナー冷却に比べて温度制御性が高いので、巻取温度(CT)のバラツキを著しく低減することができる。
本実施形態においては、スプレー冷却は鋼板の上面から300〜400L/分・m2の水量密度で冷却し、下面は空冷としたが、下面もスプレー冷却としてもよい。
なお、ホットランテーブルのゾーン1およびゾーン2を冷却工程の前段、ゾーン3を中段とし、ホットランテーブルのゾーン4乃至6を冷却工程の後段としたが、このゾーンの数および境界は適宜変更しても構わない。
【0021】
<比較例>
図6は、従来の熱延鋼板の冷却制御方法における比較例を示す図である。
図6において、横軸は、ホットランテーブル上のゾーンNO.を示し、図6の左側が仕上圧延機側であり、右側が巻取機側である。
また、図6の矢印の表示は、図4と同様である。
まず、仕上圧延を終了した熱延鋼板は、仕上温度(FT)から、T1およびT2まで、ラミナー冷却により、急速に冷却される。
次に、冷却工程の後段においては、鋼板の上面からラミナー冷却を用いて、鋼板を所定の温度まで冷却し、図6のように、仕上温度(FT)が低すぎた場合には、スプレー冷却で使用するノズル本数を減らすことによって鋼板温度の微調整を行っていたので、冷却工程後段の鋼板温度が300〜500℃の遷移沸騰領域において温度制御性の高いスプレーノズルを十分活用することができず、巻取温度(CT)が±50℃程度のバラツキを生じていた。
【0022】
【実施例】
本発明を実際の熱延鋼板製造ラインに、下記の条件にて適用した。
・対象鋼種:490Mpaクラス高強度熱延鋼板
・板厚:1.4〜2.0mm
・仕上温度(FT):870℃
・巻取温度(CT):410℃
・ラミナー冷却での合計水量密度:760L/分・m2
・スプレー冷却の水量密度(上下面の合計値):350L/分・m2
仕上温度(FT)の実績値に基づいて、スプレー冷却に用いる冷却ノズル本数を調整した結果、鋼板の巻取温度のバラツキは、±25℃以内に収まり、従来に比べて半減させることができ、鋼板の製造歩留まりが著しく向上した。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、冷却工程のゾーンごとに冷却方法を設定し、ラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を調整して鋼板温度の制御を行うことによって、鋼板の巻取温度を均一にすることにより、鋼板の製造歩留まりを向上させることができる鋼板温度の制御性にすぐれた熱延鋼板の冷却制御方法を提供することができ、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱延鋼板の冷却制御方法が対象とする熱延鋼板の製造ラインを示す図である。
【図2】本発明における熱延鋼板の冷却制御方法の装置構成を示す図である。
【図3】本発明における熱延鋼板の冷却制御方法のフローを示す図である。
【図4】本発明の熱延鋼板の冷却制御方法における第1の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の熱延鋼板の冷却制御方法における第2の実施形態を示す図である。
【図6】従来の熱延鋼板の冷却制御方法における比較例を示す図である。
【図7】本発明に用いるラミナー冷却装置を示す図である。
【図8】本発明に用いるスプレー冷却装置を示す図である。
【図9】鋼材の表面温度と熱流束との関係を示す図である。
【図10】鋼材の表面温度と熱伝達率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1:加熱炉、
2:粗圧延機、
3:仕上圧延機、
4:ホットランテーブル、
5:巻取機
Claims (6)
- 熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記冷却工程前段のラミナー冷却後の鋼板温度が、前記冷却工程後段のスプレー冷却による鋼板の最大冷却温度に、鋼板の巻取温度を加えた温度になるように、前記ラミナー冷却において使用する冷却ノズル本数を調整することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。 - 前記ラミナー冷却は、スリットラミナー冷却とパイプラミナー冷却とを組み合わせることを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
- 前記スプレー冷却は、鋼板の上面に冷却水を噴霧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
- 熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記鋼板の種類ごとに、巻取温度、板厚、速度、および、前記冷却工程のゾーンごとの冷却方法を初期設定する工程と、
仕上温度、板厚、および、速度の実績値を測定する工程と、
前記仕上温度、板厚、および、速度の実績値に基づいて、前記冷却工程のうちラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を修正する工程とを有することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。 - 熱間仕上圧延機から出た鋼板を、ラミナー冷却とスプレー冷却とを組み合わせた冷却工程にて冷却する熱延鋼板の冷却制御方法において、
前記鋼板の種類ごとに、巻取温度、板厚、速度、および、前記冷却工程のゾーンごとの冷却方法を初期設定する工程と、
巻取温度、板厚、および、速度の実績値を測定する工程と、
前記巻取温度、板厚、および、速度の実績値に基づいて、前記冷却工程のうちラミナー冷却を行うゾーンにおいて使用する冷却ノズル本数を修正する工程とを有することを特徴とする熱延鋼板の冷却制御方法。 - 前記板厚、および、速度の実績値に代えて、板厚、および、速度の初期設定値を用いることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の熱延鋼板の冷却制御方法。
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