JP2006244994A - 固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
【選択図】 なし
Description
一般に、プロトン伝導材料としてナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられているが、この材料は、イオン伝導度は高いものの、メタノールのような高極性有機溶媒も透過するため、ダイレクトメタノール型燃料電池では低出力となってしまう。また、メタノールの透過を抑制するため、燃料として数%程度の低い濃度のメタノール水溶液しか使用することができず、単位重量あるいは単位体積当たりのエネルギー密度が低くなってしまい、小型携帯機器用途に適用できないなど課題があった。また、膜電極接合体を作製する過程に適した強度、燃料電池として使用した場合の充分な耐久性も希求されている。特に燃料電池では発電時に過酸化水素が発生するために、過酸化水素に対する耐性は重要である。
(1)酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
(2)前記固体電解質はナノ相分離構造である、(1)に記載の固体電解質。
(3)一般式(1−1)で表される繰り返し単位と、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含む、(1)または(2)に記載の固体電解質。
一般式(1−1)
(4)前記L11および/またはL12が、酸素または芳香環を含む2価の連結基である、(3)に記載の固体電解質。
(5)膜状である、(1)〜(4)のいずれかに記載の固体電解質。
(6)一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を重合する工程を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(2)
一般式(3)
(7)一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることを含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(4−1)
本発明でいうメタノール拡散係数とは、特に述べない限り、固体電解質の一方を50重量%のメタノール水溶液に、他方を空気に接触させたときのメタノール拡散係数をいう。
また、本発明における「膜」には、板状や平板状のもの等を含む趣旨である。
また、アルコール類、水およびこれらの混合溶媒に対し、溶解度は実質的に無視できる程度であることが好ましい。また上記溶媒に浸漬した時の重量減少、形態変化も実質的に無視できる程度であることが好ましい。
本発明の固体電解質の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上がさらに好ましく、300℃以上が特に好ましい。耐熱温度は、例えば1℃/分の測度で加熱したときの重量減少5%に達した時間として定義できる。この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
以下、これらについて詳細に説明する。
一般式(1−1)中、R11は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖または環状アルキル基(炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がさらに好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。R11は、水素原子が好ましい。
L11は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、少なくともアルキレン基を含む2価の連結基がより好ましい。アルキレン基としては、直鎖または分岐鎖のアルキレン基(例えば、炭素数2〜12のもの)が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、イソブチレン基、n−デシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、炭素数6〜20の置換または無置換のフェニレン基、炭素数12〜28の置換または無置換のナフタレン基が挙げられる。L11は、特に、アルキレン基と−O−および/または−S−との組み合わせ、アルキレン基とアリーレン基と−O−および/または−S−との組み合わせからなるものが特に好ましい。また、これらと、後述するメソゲンを含んでいるものも好ましい。
L11は、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−O−(CH2)n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2−Ph−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−ならびに、これらと−O−、−S−の1つ以上との組み合わせが挙げられる。
1.アルキル基
アルキル基は置換基を有していてもよく、より好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。
アリール基は置換基を有していても縮環していてもよく、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等である。
複素環基は置換基を有していても縮環していてもよく、含窒素複素環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。より好ましくは炭素数2〜24の複素環基であり、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、1−オクチルピリジニウム−4−イル基、2−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−チアゾリル基等である。
より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基等である。
より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等である。
より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等である。
8.フルオロ基
9.アルコキシカルボニル基
一般式(1−2)中、R12は、水素原子またはアルキル基を表し、R11と同義であり、好ましい範囲も同義である。R13は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基としては、炭素数1〜5(より好ましくは炭素数1〜3)の直鎖、分岐、環状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。L12は、単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(2)中、R21は水素原子またはアルキル基を表す。R21は、R11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
L21は単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
酸残基の塩としては、アルカリ金属原子、アルキルアンモニウムが挙げられ、Li、Na、K、Cs、NMe4、MeBu4が好ましく、Li、Na、NMe4がより好ましい。
一般式(3)中、R31は水素原子またはアルキル基を表す。R31は、R21と同義であり、好ましい範囲も同義である。
L31は単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。L31は、L12と同義であり、好ましい範囲も同義である。
R32は炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表し、環状アルキレンオキシド基が好ましく、炭素数1〜6の環状アルキレンオキシド基がより好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がさらに好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、R13と同義であり、好ましい範囲も同義である。
また、一般式(3)で表される化合物の重量平均分子量は、100〜1000が好ましい。
以下に、一般式(3)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに限定されない。
本発明では、一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることが好ましい。特に本発明では、上記重合、スルホン酸への誘導、重合性基への誘導を行った結果、該重合性化合物を中間体として経由することが好ましい。
A41は酸残基を表し、A11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(4−2)中、R42は、水素原子またはアルキル基を表し、R12と同義であり好ましい範囲も同義である。R43は、炭素−酸素結合を生成できる重合性基を表し、R32と同義であり好ましい範囲も同義である。L42は、単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L12と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(4−1)で表される繰り返し単位および(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物の重量平均分子量は、3000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000〜80,000がさらに好ましく、3,500〜7,800が特に好ましい。このような重量平均分子量のものを採用することにより、成膜性が良好となる。また、水に浸した時の重量増加が少なくなり、膨潤、溶解度が下がりメタノール水溶液の耐性が上がるという利点がある。
本発明の固体電解質には、膜特性を向上させるため、必要に応じて、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等を添加してもよい。これら添加剤の含有量は固体電解質の全体量に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
(1)機械的強度を高める目的には、重量平均分子量10,000〜1,000,000程度で本発明の固体電解質と相溶性のよい高分子化合物が適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらの2以上の重合体が好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上のものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。具体的には、後述する固体電解質の製造方法の第一の反応工程の溶媒で説明するものを好ましく用いることができる。
(2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などのプトロン酸部位を有する高分子化合物などが好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
本発明の固体電解質は、例えば、第一の反応工程、製膜工程、第二の反応(架橋)工程、イオン交換工程の四段階を経て作製できる。
第一の反応工程では、例えば、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を重合反応によって高分子化する。重合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等いずれの反応様式を採用してもよい。好ましくは、ラジカル重合である。各々の重合法の詳細は一般的な方法(「新実験科学講座」19−1巻、p.27−115、(1978)丸善株式会社)を適用することができる。
ラジカル重合であれば、熱重合開始剤の好ましい例として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が挙げられ、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)、ベンゾイルパーオキシドが好ましく、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、または1,1−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)がより好ましい。 光重合開始剤の好ましい例としては、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ、アクリジン化合物、フェナジン化合物およびオキサジアゾール化合物が挙げられる。
カチオン重合であれば、プロトン酸(好ましくは過塩素酸、フロオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リンモリブデン酸、タングストリン酸等)、超強酸エステル(トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、フルオロ硫酸メチルエステル等)、超強酸無水物(トリフルオロメタンスルホン酸無水物、フルオロ硫酸無水物等)、ルイス酸(三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、五フッ化アンチモン、5フッ化リン、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)、オキソニウム塩(トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート等)、ヨードニウム塩(フェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート等)、スルホニウム塩(ジフェニルメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等)等が挙げられ、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、ヨードニウム塩、オキソニウム塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、ジフェニルメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレートがより好ましい。
アニオン重合では、アルキルリチウム、ナトリウムナフタレン、グリニャール試薬、アルカリ金属アルコキシド等の有機金属化合物が好ましい。これらの中でも、アルキルリチウム、アルカリ金属アルコキシドによって重合するものが好ましい。
ラジカル重合であれば、好ましくは20℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜180℃であり、さらに好ましくは60℃〜120℃である。
カチオン重合およびアニオン重合であれば、好ましくは−200℃〜300℃であり、より好ましくは−100℃〜250℃であり、さらに好ましくは−50℃〜200℃である。
配位重合であれば、好ましくは−50℃〜200℃であり、より好ましくは0℃〜120℃であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
製膜工程では得られた反応液を流延または塗布し、溶媒を除去、乾燥する操作を含む。
反応液を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フィルム、反射板等を挙げることができる。高分子フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系高分子フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系高分子フィルム、ポリトリフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系高分子フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、フッ素系高分子フィルムが好ましい。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
第二の反応工程では、例えば、一般式(3)の置換基R32による架橋工程であり、第二の反応工程では得られた膜を必要に応じて調湿した環境での加熱処理、放射線(可視光、紫外線、γ線、電子線等)照射処理を行い、架橋反応を進行させてもよい。
放射線処理による架橋を行なう場合照射エネルギー量は大きいほうが、処理が短時間で終了し生産性の観点からの好ましいが、あまり大きいと照射設備のコストが高くなる。照射エネルギー量は好ましくは1000W/cm2〜0.1W/cm2であり、より好ましくは100W/cm2〜0.5W/cm2であり、さらに好ましくは30W/cm2〜1W/cm2である。処理時間は短時間であるほうが生産性の観点から好ましいが、あまり短時間であると架橋反応が不充分となってしまう。このため、処理時間は0.01分〜10時間が好ましく、0.1分〜5時間がさらに好ましく、1分〜2時間が特に好ましい。
架橋工程では第一の反応工程で説明した重合反応、光二量化反応、熱反応のいずれの反応様式を用いてもよい。容易に高密度架橋が可能な熱反応が好ましいが、熱反応としては以下の原子団(水酸基、マレイミド誘導体、ディールス−アルダー反応に用いることができるジエンおよびジエノファイルの組み合わせ等)を用いることができる。特に水酸基の縮合を用いる方法は水酸基前駆体の導入容易性、耐薬品性の観点から特に好ましい。
架橋工程の後に不要な成分を除去することを目的に、水、有機溶媒等による洗浄工程および乾燥工程を追加しても良い。
一般式(CA)
nは0〜3の整数である。
一般式(CB)
以下に、これらの例挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
架橋工程の後に不要な成分を除去することを目的に、水、有機溶媒等による洗浄工程および乾燥工程を追加しても良い。
イオン交換工程では、得られた膜を酸性水溶液に浸し、必要に応じて加熱することで酸残基A11のイオン交換反応を行う。
イオン交換工程では、例えば、一般式(2)のA21の酸残基を含む基への誘導を行なう。イオン交換反応では、強酸が好ましく、希釈された濃塩酸または濃硫酸がより好ましい。具体的には、1N〜12Nの塩酸水溶液または1N〜12Nの硫酸水溶液である。この処理液には有機溶媒等が添加されていても良い。
本発明の膜状の固体電解質(固体電解質膜)は、電極膜接合体(Membrane and Electrode Assembly)(以下「MEA」という)および、該電極膜接合体を用いた燃料電池に用いることができる。
図1は本発明の電極膜接合体の断面概略図の一例を示したものである。MEA10は、固体電解質膜11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。
アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bを固体電解質膜11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒ペースト(インク)を固体電解質膜の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒ペーストを多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクを固体電解質膜、多孔質導電シートあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該固体電解質膜に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。
[化合物A−3の合成]
4−ビニルベンジルクロライド15.3g、亜硫酸ナトリウム25.2gを50%エタノール水溶液60mlに混合した。80℃で12時間攪拌後、室温に冷却し、析出した結晶をろ過し、化合物A−3を15.4g得た。
水酸化リチウム5.20gをエタノール200mlに溶解し、酢酸スチレン35.6gを加えた。室温で1時間撹拌した後、1,3プロパンサルトン26.8gのエタノール40ml溶液を加え室温で2時間撹拌した。析出した固体をろ過し、アセトにトリルで再結晶し化合物A−7を23.2g得た。
3−エチル−3−オキセタンメタノール13.9gをジメチルホルムアミド120mlに溶解し、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(60%、インオイル)5.0gを少しずつ添加すると発泡した。発泡が収まった後、4−ビニルクロライド18.3gを滴下した。反応混合物を室温にて3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−2を19.0g得た。
50%水酸化ナトリウム水溶液600mlにヘキサン920mlとテトラブチルアンモニウムブロマイド12.3gを加え、3−エチル−3−オキセタンメタノール76.1gと1,6−ヘキサンジブロマイド500gを加えた。反応液を100℃で5時間撹拌し室温に戻した後、反応液を水に注ぎヘキサンで抽出した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、6−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)−1−ヘキシルブロマイドを141g得た。
ナトリウム60.0gをエタノール1.5lに溶解し、酢酸スチレン24.3gを加えた。室温で1時間撹拌した後、得られた6−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)−1−ヘキシルブロマイド40.1gを加え6時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−9を25.1g得た。
4,4'−ジヒドロキシナフタレン23.5gをDMF9mlに溶解し、炭酸カリウム11.5gとヨウ化カリウム7.0gを加えたところに、6−クロロヘキサノール68.8gを添加した。反応液を110℃で9時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水に注ぎ析出した結晶をろ過した。得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、15.3gの4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−ヒドロキシビフェニルを得た。
得られた4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−ヒドロキシビフェニル10gをジメチルホルムアミド50mlに溶解し、炭酸カリウム10.0g添加し、50℃で攪拌しながら3−エチル−3−ヨードメチルオキセタン9.5gを滴下した。100℃で4時間反応を行った後、反応混合物を水に注ぎ、得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、4.0gの4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシビフェニルを得た。
4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシビフェニル3.6gを脱水テトラヒドロフランに溶解し、60℃に加温し攪拌しながら水素化ナトリウム(60%、インオイル)0.55gを少しずつ添加すると発泡した。発泡が収まった後、4−ビニルベンジルクロライド1.57gを滴下した。反応混合物を60℃で3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−12を3.6g得た。
[固体電解質 E−1の作製]
化合物A−1(東京化成製)2.06gおよび化合物B−2 2.32gをDMF30mlに溶解し、2,2’―アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)43.8mgを加え、80℃に加熱し6時間攪拌した。反応混合物にアセト二トリル50ml加え懸濁溶液とした後、上澄み液を除去した。さらにアセト二トリル30mlを加えろ過し、ポリマーを3.56g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は52000であった。
得られたポリマー200mgおよび化合物C−1を50%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液600μlに溶解し、テフロンベース(テフロン:登録商標)上に、180μm厚のテフロンテープで作製した3cm×3cmの正方形の枠内に流し込んだ。70℃で約2時間溶媒を蒸発、乾燥させた後、160℃で2時間オキセタンの開環重合を行い膜状に固化した塗布物を剥離した。得られた膜を、3規定塩酸に浸し12時間100℃で加熱しイオン交換させた後、イオン交換水にて洗浄、乾燥して、不透明、微褐色で厚さ74μmの固体電解質を得た。
上記固体電解質E−1の作製において、化合物A−1の代わりに化合物A−3を2.18g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、化合物A−1の代わりに化合物A−7を2.48g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、化合物A−1の代わりに化合物A−7を2.48g、化合物B−2の代わりに化合物B−9を3.14g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)化合物を用い、また、化合物A−1の代わりに2.48gの化合物A−7を用い、さらに、化合物B−2の代わりに4.87gの化合物B−12を添加し、他は同様に行い、膜を作製した。
このサンプルの薄膜切片を作製し、偏光顕微鏡で観察したところ、光学異方性のある微細なドメインが確認できた。これによりメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)化合物を用い、また、化合物A−1の代わりに2.48gの化合物A−7を用い、さらに、化合物B−2の代わりに4.87gの化合物B−12を添加し、さらにまた、化合物C−1の代わりに化合物C―24を用いた他は同様に行い、固体電解質を作製した。
これらのサンプルの薄膜切片を作製し、偏光顕微鏡で観察したところ、光学異方性のある微細なドメインが確認できた。これによりメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。
上記固体電解質E−1の作製において、化合物A−1の代わり化合物A−7を2.48g、化合物B−2の代わりにジビニルベンゼン4.87gを添加した他は同様に行い、膜を作製した。
[イオン伝導度]
上記で得られた本発明の固体電解質E−1〜E−6、比較固体電解質R−1およびナフィオン117(デュポン社製)を直径13nmの円形に打ち抜き固体電解質を直径5mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、交流インピーダンス法により、25℃、相対湿度95%におけるイオン伝導度を測定した。この値は大きいほどよい。
サンプルを1cmx1cmに切り抜き、図3に示すようなセルにセットした。図3中、31は固体電解質を、32はテフロンテープ補強材を、33はメタノール水溶液注入部分を、4はキャリアガス導入口を、5は検出口をそれぞれ示している。また、図中の矢印はキャリアガスの流れを示す。そして、メタノール水溶液として50重量%メタノール水溶液を注入し、キャリアガス中に含まれるメタノールをガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC−14B)にて検出した。この検出値から、以下の式を用いて拡散係数DMeOHを計算した。メタノール拡散性をナフィオン117(DuPont製)での検出値に対する相対値として計算した。この値は小さいほど良い。
拡散係数:DMeOH(cm2/s)
透過検出量:N(mol/s)
膜厚:T(cm)
サンプルがメタノール水溶液に接触している面積:A(cm2)
メタノール濃度:CMeOH(mol/s)
サンプルを2.5cm×1cmに切り抜き、JIS K−7127に準じて引っ張りによる強度試験を行った。サンプルが破断したときの張力を強度として記録した。この値は大きいほど好ましい。
固体電解質E−1〜E−6、比較用の固体電解質R−1を直径13mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、手動式膜圧測定器により燃料電池用MEA(電極膜接合体)作製時に生じる550MPaまでの圧力を印加し、破断しているか確認した。尚、圧力強度は、限界値(破断する値)が600を越えるものは測定できなかったため、「>600」として表記した。
(1)触媒膜の作製
(1−1) 触媒膜Aの作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50質量%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子サイズは約500nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き、触媒膜Aを作製した。
水0.3mlで湿らせた白金/ルテニウム担持カーボン(ケッチェンブラックに白金20質量%、ルテニウム20質量%が担持)300mgに、ナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で10分間分散させた。得られたペーストをカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き触媒膜Bを作製した。
実施例1で作製した固体電解質E−1〜E−6、比較用の固体電解質R−1およびナフィオン117の両面に上記で得られた触媒膜Aを塗布面が固体電解質に接するように張り合わせ、80℃、3MPa、2分間で熱圧着し、MEA−1−1〜1−6、2−1〜2−2を作製した。
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時カソード側開口部16は大気と接するようにした。アノード電極12とカソード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。
ナフィオン膜を用いた燃料電池の初期電圧は高いものの、経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、アノード電極側に供給された燃料のメタノールが、ナフィオン膜を通過してカソード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対して、本発明の固体電解質を用いたMEA−1−1〜MEA−1−5により作製した電池は、MEA−2−1A〜MEA−2−2により作製した電池より電圧が安定しており、より高い電圧を維持できることがわかった。また、同程度の膜厚のナフィオン112および1135で作製したMEA4−1および4−2は、メタノール濃度は10質量%の時に劇的に電圧が低下した。これは、メタノール濃度が大きくなることで、メタノールクロスオーバーが顕著に現れたものと考えられる。それに対して、本発明の固体電解質膜を用いたMEA3−1および3−2はMEA4−1および4−2に比べて電圧を安定に保っておりより高い電圧であることが認められた。
図4に、MEA3−1(三角)、MEA3−2(ひし形)、MEA4−1(四角)、MEA4−2(丸)のメタノール濃度と出力密度の関係を示した。
11・・・固体電解質膜
12・・・アノード電極
12a・・アノード極多孔質導電シート
12b・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・カソード極多孔質導電シート
13b・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21・・・アノード極側のセパレータ
22・・・カソード極側のセパレータ
31・・・固体電解質
32・・・テフロンテープ補強材
33・・・メタノール水溶液注入部分
34・・・キャリアガス導入口
35・・・検出口(ガスクロマトグラフィーに接続)
36ゴムパッキン
Claims (10)
- 酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
- 前記固体電解質はナノ相分離構造である、請求項1に記載の固体電解質。
- 前記L11および/またはL12が、酸素または芳香環を含む2価の連結基である、請求項3に記載の固体電解質。
- 膜状である、請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解質。
- 一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(4−1)
一般式(4−2)
- 前記重合性化合物の重量平均分子量が3000以上である、請求項7に記載の固体電解質の製造方法。
- 一対の電極と、該電極間に設けられた請求項5に記載の固体電解質を有する、電極膜接合体。
- 請求項9に記載の電極膜接合体を有する、燃料電池。
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