JP2006244994A - 固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池 - Google Patents

固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池 Download PDF

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渉 菊池
Kimiatsu Nomura
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Abstract

【課題】高いイオン伝導性能および低いメタノール透過性を両立し、且つ充分な強度を有する固体電解質を提供する。
【解決手段】酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高分子固体電解質、特にプロトン伝導能を持つ高分子固体電解質、アルコール類を燃料とする燃料電池用膜電極接合体、燃料電池ならびにその製造方法に関する。
近年、携帯機器等の電源として利用できるリチウムイオン電池、燃料電池が活発に研究されており、その部材であるリチウムイオン伝導材料、プロトン伝導材料等の固体電解質についても活発な研究が行われている。
また、携帯機器電源は同一出力であれば小型であることが極めて好ましい。中でもダイレクトメタノール型燃料電池は、改質型燃料電池における改質機、水素燃料の燃料電池における高圧水素タンク等の補機が不要なため、小型化が容易であり、リチウムイオン電池を上回る小型化の可能性があることから、活発に検討されている。
一般に、プロトン伝導材料としてナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられているが、この材料は、イオン伝導度は高いものの、メタノールのような高極性有機溶媒も透過するため、ダイレクトメタノール型燃料電池では低出力となってしまう。また、メタノールの透過を抑制するため、燃料として数%程度の低い濃度のメタノール水溶液しか使用することができず、単位重量あるいは単位体積当たりのエネルギー密度が低くなってしまい、小型携帯機器用途に適用できないなど課題があった。また、膜電極接合体を作製する過程に適した強度、燃料電池として使用した場合の充分な耐久性も希求されている。特に燃料電池では発電時に過酸化水素が発生するために、過酸化水素に対する耐性は重要である。
ナフィオン(登録商標)に代わるプロトン伝導材料を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。例えば、液晶型モノマーやエチレンオキサイドモノマーからなる炭化水素系高分子によるプロトン伝導性高分子電解質がある(特許文献1、2)。また、一般的な高分子電解質として、スチレン系樹脂にイオン交換基を導入することで製造される電解質材料がある(特許文献3)。これらの高分子伝導材料は、高分子主鎖にプロトン伝導部位である酸残基を導入した構成であるが、単位モノマーへの酸成分導入は限られている。また、膜のプロトン伝導度を高めるために酸残基を多く導入しようとすると膜の機械的強度が著しく低下する。一方、架橋性基であるジビニルモノマーは架橋剤として作用するが、その割合が多くなれば強度や脆さが増し、水分含有率や膨潤度が下がりプロトン伝導度が低下するため、2つの特性を満足する材料を得ることが困難である。また、DMFC用途として重要な特性であるメタノール透過性に関しては、十分な記載がない。
特開2003−55337号公報 特開2001−29461号公報 特開2000−281609号公報
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、高いイオン伝導性能および低いメタノール透過性を両立し、かつ、充分な強度を有する固体電解質を提供することである。また、この固体電解質を使用した膜電極接合体、燃料電池を供給することである。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
(1)酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
(2)前記固体電解質はナノ相分離構造である、(1)に記載の固体電解質。
(3)一般式(1−1)で表される繰り返し単位と、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含む、(1)または(2)に記載の固体電解質。
一般式(1−1)
Figure 2006244994
(一般式(1−1)中、R11は、水素原子またはアルキル基を表し、L11は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A11は酸残基を表す。)
一般式(1−2)
Figure 2006244994
(一般式(1−2)中、R12は、水素原子またはアルキル基を表し、R13は、アルキル基またはアリール基を表し、L12は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。)
(4)前記L11および/またはL12が、酸素または芳香環を含む2価の連結基である、(3)に記載の固体電解質。
(5)膜状である、(1)〜(4)のいずれかに記載の固体電解質。
(6)一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を重合する工程を含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(2)
Figure 2006244994
(一般式(2)中、R21は水素原子またはアルキル基を表し、L21は単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A21は酸残基に誘導できる基を含む基を表す。)
一般式(3)
Figure 2006244994
(一般式(3)中、R31は水素原子またはアルキル基を表し、L31は単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、R32は炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表す。)
(7)一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることを含む、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
一般式(4−1)
Figure 2006244994
(一般式(4−1)中、R41は、水素原子またはアルキル基を表し、L41は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A41は酸残基を表す。)
一般式(4−2)
Figure 2006244994
(一般式(4−2)中、R42は、水素原子またはアルキル基を表し、R43は、炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表し、L42は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。)
(8)前記重合性化合物の重量平均分子量が3000以上である、(7)に記載の固体電解質の製造方法。
(9)一対の電極と、該電極間に設けられた(5)に記載の固体電解質を有する、電極膜接合体。
(10)(9)に記載の電極膜接合体を有する、燃料電池。
本発明では、固体電解質を採用することにより、高いイオン伝導性、低いメタノール透過性を満たすことができ、例えば、電極膜接合体の作製が容易になった。特に、一般式(1−1)および(1−2)で表される繰り返し単位を含む固体電解質を採用することにより、結合強度が増強されることとなり、膜面に対して水平および垂直方向に対する強度が増した。その結果、強度および耐久性が高まり、燃料電池作製工程への高い適合性が期待できる。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。なお、本発明における各種物性値は、特に述べない限り室温(例えば、25℃)における状態のものを示している。また、本発明における重合には、いわゆる共重合も含む趣旨である。従って、本発明でいう重合体には、共重合体も含む趣旨である。さらに、本願明細書において、アセチル基をAc、エチル基をEt、メチル基をMe、ブチル基をBu、フェニル基またはフェニレン基をPhと示すことがある。
本発明でいうメタノール拡散係数とは、特に述べない限り、固体電解質の一方を50重量%のメタノール水溶液に、他方を空気に接触させたときのメタノール拡散係数をいう。
また、本発明における「膜」には、板状や平板状のもの等を含む趣旨である。
本発明の固体電解質のイオン伝導度は、大きいほど電池の内部抵抗が小さくなり好ましい。具体的には、25℃、95%RHにおけるイオン伝導度(以下、特に述べない限り、本明細書におけるイオン伝導度とは、該条件におけるイオン伝導度をいう)は、0.010S/cm以上であり、0.015S/cm以上が好ましく、0.017S/cm以上がさらに好ましい。本発明の固体電解質のメタノール拡散係数は小さいほど電池の出力損失が小さくなり好ましい。ダイレクトメタノール型燃料電池では、固体電解質の片側が、燃料がメタノール水溶液、もう片側が空気に接触しているが、この状態で、25℃におけるメタノール拡散係数は、4×10-7cm2/s以下であり、3×10-7cm2/s以下が好ましく、2×10-7cm2/s以下がより好ましく、1×10-7cm2/s以下がさらに好ましい。本発明の固体電解質の強度は大きいほど電池製造工程での自由度が大きく、耐久性が高くなるので好ましい。JIS K−7127に準拠して行えばよいが、サンプルサイズは適宜変更してもよい。25℃における引張強度は40MPa以上であり、43MPa以上が好ましく、45MPa以上がさらに好ましい。圧力強度は、500kgf/cm2以上であり、550kgf/cm2以上が好ましい。
本発明の固体電解質は酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが高次構造を形成しているものがさらに好ましい。3次元架橋構造とは、重合主鎖に対しアルキル基を含む原子団を介して主鎖と異なる重合性基により3次元のマトリックスを形成する構造を表し、中でも重合主鎖が炭素−炭素結合で他方の重合性基が酸素−炭素共有結合である構造が好ましい。高次構造としては、ナノ相分離構造、ミクロ相分離構造、ラメラ相、ヘキサゴナル相およびこれらの混合、中間の状態が好ましい例として挙げられ、さらに好ましくはナノ相分離構造である。ナノ相分離構造とは非相溶性によりナノサイズのドメインを形成する構造を表し、中でも、親水性部と疎水性部による新疎水性ドメインが連続で互いに貫入した三次元網目構造や親水性部がクラスターチャンネルを形成する構造などが好ましい。これらは、材料の工学顕微鏡観察、X線光散乱測定法等によって確認できる。
さらに、本発明の固体電解質は安定した吸水率および含水率を持つものが好ましい。
また、アルコール類、水およびこれらの混合溶媒に対し、溶解度は実質的に無視できる程度であることが好ましい。また上記溶媒に浸漬した時の重量減少、形態変化も実質的に無視できる程度であることが好ましい。
膜状に形成した場合のイオン伝導方向は表面から裏面への方向が、それ以外の方向に対し高い方が好ましい。もちろん、本質的にはメタノール透過性との比で決まるため、ランダムであっても良い。
本発明の固体電解質の耐熱温度は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上がさらに好ましく、300℃以上が特に好ましい。耐熱温度は、例えば1℃/分の測度で加熱したときの重量減少5%に達した時間として定義できる。この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
本発明の固体電解質は、特に、一般式(1−1)で表される繰り返し単位と、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。このような固体電解質は、例えば、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物の高分子化、製膜、架橋、イオン交換反応等の実施により製造できる。特に、一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を、例えば、中間体として用いることにより、より好ましく製造することができる。
以下、これらについて詳細に説明する。
一般式(1−1)で表される繰り返し単位
一般式(1−1)中、R11は、水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖または環状アルキル基(炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がさらに好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられる。R11は、水素原子が好ましい。
11は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、少なくともアルキレン基を含む2価の連結基がより好ましい。アルキレン基としては、直鎖または分岐鎖のアルキレン基(例えば、炭素数2〜12のもの)が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、イソブチレン基、n−デシレン基等が挙げられる。アリーレン基としては、炭素数6〜20の置換または無置換のフェニレン基、炭素数12〜28の置換または無置換のナフタレン基が挙げられる。L11は、特に、アルキレン基と−O−および/または−S−との組み合わせ、アルキレン基とアリーレン基と−O−および/または−S−との組み合わせからなるものが特に好ましい。また、これらと、後述するメソゲンを含んでいるものも好ましい。
11は、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、フェニレン(−Ph−)基、−O−(CH2n−(nは、整数であり、好ましくは、1〜6の整数である)、−CH2−Ph−、−CH2CH2OCH2CH2−、−(CH2CH2O)2CH2CH2−ならびに、これらと−O−、−S−の1つ以上との組み合わせが挙げられる。
11はメソゲンを含む有機原子団であってもよく、メソゲンの好ましい例としては、Dietrich Demus および Horst Zaschkeによる 「Flussige Kristalle in Tabellen II」, 1984年, p.7−18に記載されているものが挙げられる。中でも、一般式(5)で表されるものが好ましい。
一般式(5)
Figure 2006244994
一般式(5)中、D1およびD2はそれぞれ単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−COO−、−COS−、−CONH−、−COCH2−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2NH−、−CH2−、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−(CH213−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−CO−、−(C≡C)13−、ならびに、これらの組合せが好ましく、−CH2−、−CO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、ならびに、これらの組合せがより好ましい。上記2価の連結基が水素原子を含む場合、該水素原子は他の置換基で置換されていてもよい。この場合の置換基としては、下記置換基群Tに挙げるものが好ましい。
置換基群T
1.アルキル基
アルキル基は置換基を有していてもよく、より好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。
2.アリール基
アリール基は置換基を有していても縮環していてもよく、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等である。
3.複素環基
複素環基は置換基を有していても縮環していてもよく、含窒素複素環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。より好ましくは炭素数2〜24の複素環基であり、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、1−オクチルピリジニウム−4−イル基、2−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−チアゾリル基等である。
4.アルコキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基等である。
5.アシルオキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等である。
6.アルコキシカルボニル基
より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等である。
7.シアノ基
8.フルオロ基
9.アルコキシカルボニル基
Eは1または2以上の4〜7員環からなる2価の基、または2以上の4〜7員環が縮合した縮合環からなる2価の基、ならびに、これらの組み合わせからなる2価の基を表し、nは1〜3の整数を表す。好ましくは、Eは、1または2以上の6員環からなる2価の芳香族基、1または2以上の4〜6員環からなる2価の飽和または不飽和脂肪族基、5員環または6員環からなる2価の複素環基、またはこれらが縮合した縮合環からなる2価の基、ならびに、これらの組み合わせからなる2価の基である。具体的には、以下に示す(Y−1)〜(Y−28)で表される基、およびこれらの組合せ(縮環したものを含む)が挙げられる。これらの置換基の中でより好ましくは(Y−1)、(Y−2)、(Y−18)、(Y−19)、(Y−21)および(Y−22)ならびに、これらの組み合わせであり(縮環したものを含む)、さらに好ましくは(Y−1)、(Y−2)および(Y−19)ならびに、これらの組み合わせである。
Figure 2006244994
11は酸残基を表し、酸残基としてはpKaが5以下の酸残基が好ましく、pkaが2以下であるものがさらに好ましい。具体的には、スルホン酸残基、ホスホン酸残基、カルボン酸残基が好ましく、スルホン酸残基がさらに好ましい。
一般式(1−1)で表される繰り返し単位が2以上含まれる場合、それぞれの、R11、L11およびA11は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(1−2)で表される繰り返し単位
一般式(1−2)中、R12は、水素原子またはアルキル基を表し、R11と同義であり、好ましい範囲も同義である。R13は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基としては、炭素数1〜5(より好ましくは炭素数1〜3)の直鎖、分岐、環状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。L12は、単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(1−2)で表される繰り返し単位が2以上含まれる場合、それぞれの、R12、L12およびR13は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(1−1)で表される繰り返し単位と、一般式(1−2)で表される繰り返し単位は、例えば、下記で述べる一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物が重合し、置換基R32が本発明の固体電解質の炭素−酸素結合構造を形成する。本発明では、一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物を用いて固体電解質を製造することが好ましい。一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物が共重合する場合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでも良いが、ランダム共重合が好ましい。
一般式(2)で表される化合物
一般式(2)中、R21は水素原子またはアルキル基を表す。R21は、R11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
21は単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
21は酸残基に誘導できる基を含む基を表す。酸残基に誘導できる基を含む基は、酸性水溶液による反応によって酸残基に誘導できるものが好ましい。pKaが5以下の酸残基が好ましく、pkaが2以下の酸残基がさらに好ましい。具体的には、スルホン酸残基(スルホ基)、ホスホン酸残基、カルボン酸残基が好ましく、スルホン酸残基等が挙げられる。
酸残基の塩としては、アルカリ金属原子、アルキルアンモニウムが挙げられ、Li、Na、K、Cs、NMe4、MeBu4が好ましく、Li、Na、NMe4がより好ましい。
一般式(2)で表される化合物の総炭素数は、5〜100が好ましく、8〜80がより好ましく、8〜30がさらに好ましい。また、一般式(2)で表される化合物の重量平均分子量は、100〜800が好ましい。
以下に、一般式(2)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
一般式(3)で表される化合物
一般式(3)中、R31は水素原子またはアルキル基を表す。R31は、R21と同義であり、好ましい範囲も同義である。
31は単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。L31は、L12と同義であり、好ましい範囲も同義である。
32は炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表し、環状アルキレンオキシド基が好ましく、炭素数1〜6の環状アルキレンオキシド基がより好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がさらに好ましい。これらの基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、R13と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(3)で表される化合物の総炭素数は、5〜100が好ましく、8〜80がより好ましく、8〜50がさらに好ましい。
また、一般式(3)で表される化合物の重量平均分子量は、100〜1000が好ましい。
以下に、一般式(3)で表される化合物を例示するが、本発明はこれに限定されない。
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
尚、一般式(2)で表される化合物と、一般式(3)で表される化合物の比は、モル比で、0.5〜3:3〜0.5が好ましく、1〜2.5:1がより好ましい。
一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物
本発明では、一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることが好ましい。特に本発明では、上記重合、スルホン酸への誘導、重合性基への誘導を行った結果、該重合性化合物を中間体として経由することが好ましい。
一般式(4−1)中、R41は、水素原子またはアルキル基を表し、R11と同義であり好ましい範囲も同義である。L41は、単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
41は酸残基を表し、A11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(4−2)中、R42は、水素原子またはアルキル基を表し、R12と同義であり好ましい範囲も同義である。R43は、炭素−酸素結合を生成できる重合性基を表し、R32と同義であり好ましい範囲も同義である。L42は、単結合またはアルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、L12と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(4−1)で表される繰り返し単位および(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物の重量平均分子量は、3000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000〜80,000がさらに好ましく、3,500〜7,800が特に好ましい。このような重量平均分子量のものを採用することにより、成膜性が良好となる。また、水に浸した時の重量増加が少なくなり、膨潤、溶解度が下がりメタノール水溶液の耐性が上がるという利点がある。
固体電解質の他の成分
本発明の固体電解質には、膜特性を向上させるため、必要に応じて、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等を添加してもよい。これら添加剤の含有量は固体電解質の全体量に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
酸化防止剤としては、(ヒンダード)フェノール系、一価ないし二価のイオウ系、三価のリン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、サリチレート系、オキザリックアシッドアニリド系の各化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には特開平8−53614号公報、特開平10−101873号公報、特開平11−114430号公報、特開2003−151346号公報に記載の化合物が挙げられる。
繊維としては、パーフルオロカーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平10−312815号公報、特開2000−231928号公報、特開2001−307545号公報、特開2003−317748号公報、特開2004−63430号公報、特開2004−107461号公報に記載の繊維が挙げられる。
微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等からなる微粒子が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平6−111834号公報、特開2003−178777号公報、特開2004−217921号公報に記載の微粒子が挙げられる。
吸水剤(親水性物質)としては、架橋ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩、ポバール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールジアルキルエーテル、ポリグリコールジアルキルエステル、シリカゲル、合成ゼオライト、アルミナゲル、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルが好ましい例として挙げられ、具体的には特開平7−135003号公報、特開平8−20716号公報、特開平9−251857号公報に記載の吸水剤が挙げられる。
可塑剤としては、リン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、脂肪族一塩基酸エステル系化合物、脂肪族二塩基酸エステル系化合物、二価アルコールエステル系化合物、オキシ酸エステル系化合物、塩素化パラフィン、アルキルナフタレン系化合物、スルホンアルキルアミド系化合物、オリゴエーテル類、カーボネート類、芳香族ニトリル類が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−197030号公報、特開2003−288916号公報、特開2003−317539号公報に記載の可塑剤が挙げられる。
さらに本発明の固体電解質には、(1)膜の機械的強度を高める目的、および(2)膜中の酸濃度を高める目的で種々の高分子化合物を含有させてもよい。
(1)機械的強度を高める目的には、重量平均分子量10,000〜1,000,000程度で本発明の固体電解質と相溶性のよい高分子化合物が適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらの2以上の重合体が好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上のものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。具体的には、後述する固体電解質の製造方法の第一の反応工程の溶媒で説明するものを好ましく用いることができる。
(2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などのプトロン酸部位を有する高分子化合物などが好ましく、含有量としては全体に対し1〜30質量%の範囲が好ましい。
さらに、本発明の固体電解質を燃料電池に用いる場合、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒を添加してもよい。これにより、固体電解質中に浸透した燃料が他方極に到達すること無く固体電解質中で消費され、クロスオーバーを防ぐことができる。用いられる活性金属種は、電極触媒として機能するものであれば制限は無いが、白金または白金を基にした合金が適している。
固体電解質の製造方法
本発明の固体電解質は、例えば、第一の反応工程、製膜工程、第二の反応(架橋)工程、イオン交換工程の四段階を経て作製できる。
(第一の反応工程)
第一の反応工程では、例えば、一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を重合反応によって高分子化する。重合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等いずれの反応様式を採用してもよい。好ましくは、ラジカル重合である。各々の重合法の詳細は一般的な方法(「新実験科学講座」19−1巻、p.27−115、(1978)丸善株式会社)を適用することができる。
第一の反応工程における重合開始剤は重合様式によって適宜選択できる。
ラジカル重合であれば、熱重合開始剤の好ましい例として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が挙げられ、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオアミド)、ベンゾイルパーオキシドが好ましく、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、または1,1−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)がより好ましい。 光重合開始剤の好ましい例としては、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、多核キノン化合物、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ、アクリジン化合物、フェナジン化合物およびオキサジアゾール化合物が挙げられる。
カチオン重合であれば、プロトン酸(好ましくは過塩素酸、フロオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、リンモリブデン酸、タングストリン酸等)、超強酸エステル(トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、フルオロ硫酸メチルエステル等)、超強酸無水物(トリフルオロメタンスルホン酸無水物、フルオロ硫酸無水物等)、ルイス酸(三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、五フッ化アンチモン、5フッ化リン、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)、オキソニウム塩(トリエチルオキソニウムテトラフルオロボレート等)、ヨードニウム塩(フェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート等)、スルホニウム塩(ジフェニルメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等)等が挙げられ、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、ヨードニウム塩、オキソニウム塩が好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、ジフェニルメチルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレートがより好ましい。
アニオン重合では、アルキルリチウム、ナトリウムナフタレン、グリニャール試薬、アルカリ金属アルコキシド等の有機金属化合物が好ましい。これらの中でも、アルキルリチウム、アルカリ金属アルコキシドによって重合するものが好ましい。
第一の反応工程における溶媒としては、本発明の趣旨を逸脱しない限り、特に制限はないが、好ましくはカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性溶媒(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、水等を用いることができる。中でも、環状エーテル類、アルコール類、ニトリル化合物および非プロトン極性溶媒が好ましく、エタノール、イソプロパノール、フッ素置換アルコール、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、DMFが特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
第一の反応工程の反応温度は重合反応に応じて適切な温度を選択することが好ましい。
ラジカル重合であれば、好ましくは20℃〜200℃であり、より好ましくは40℃〜180℃であり、さらに好ましくは60℃〜120℃である。
カチオン重合およびアニオン重合であれば、好ましくは−200℃〜300℃であり、より好ましくは−100℃〜250℃であり、さらに好ましくは−50℃〜200℃である。
配位重合であれば、好ましくは−50℃〜200℃であり、より好ましくは0℃〜120℃であり、さらに好ましくは20℃〜80℃である。
第一の反応工程では停止操作を行なうことが好ましく、これは冷却、希釈、重合禁止剤(フェノール類、アルコール類、水、酸素、アミン類、塩基性化合物、酸性化合物)の添加によって行なうことができる。第一の反応工程の後に生成した高分子を取り出してもよく、さらに精製工程を追加してもよい。
(製膜工程)
製膜工程では得られた反応液を流延または塗布し、溶媒を除去、乾燥する操作を含む。
反応液を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フィルム、反射板等を挙げることができる。高分子フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系高分子フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系高分子フィルム、ポリトリフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系高分子フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられ、フッ素系高分子フィルムが好ましい。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
塗布工程の乾燥温度は乾燥速度に関連し、材料の性質に応じて選択することができる。好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは20℃〜120℃であり、さらに好ましくは50℃〜100℃である。乾燥時間は短時間であるほうが生産性の観点から好ましいが、あまり短時間であると気泡、表面の凹凸等の欠陥が発生しやすい傾向にある。このため、乾燥時間は1分〜48時間が好ましく、5分〜10時間がさらに好ましく、10分〜5時間が特に好ましい。
塗布工程後に得られる架橋処理を行なっていない固体電解質の形状は、板状、膜状が好ましく、厚さは10〜500μmが好ましく、25〜150μmが特に好ましい。成形した時点で板状、膜状であっても良いし、バルク体に成形した後に、切断して板状、膜状に加工することもできる。
本発明では、架橋工程の前に、メソゲンの配向工程を追加しても良い。配向を促進させるために、様々な手法を採用することができる。例えば、前述の支持体等に事前に配向処理を施すことができる。配向処理としては種々の一般的な方法を採用できるが、好ましくは各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等の液晶配向層を支持体等の上に設け、ラビング等の配向処理行う方法、支持体上のゾル−ゲル組成物に磁場や電場等を印加する方法、加熱する方法等を用いることができる。
本発明の材料の配向状態は、偏光顕微鏡により光学異方性を観察することにより確認することができる。観察方向は任意でよいが、クロスニコル下でサンプルを回転させ、明暗が切り替わる部分があれば異方性があるといえる。配向状態は異方性を示す状態であれば特に制限はない。液晶相と認識できるテクスチャーが観察される場合は相を特定することができ、リオトロピック液晶相でもサーモトロピック液晶相でもよい。配向状態はリオトロピック液晶相の場合はヘキサゴナル相、キュービック相、ラメラ相、スポンジ相、ミセル相が好ましく、特に室温でラメラ相もしくはスポンジ相を示すことが好ましい。サーモトロピック液晶相ではネマチック相、スメクチック相、クリスタル相、カラムナー相およびコレステリック相が好ましく、特に室温でスメクチック相、クリスタル相を示すことが好ましい。また、これらの相における配向が固体状態で保持されている配向状態も好ましい。ここでいう異方性とは分子の方向ベクトルが等方的ではない状態をいう。
さらに架橋工程を経た後に表面処理を行なっても良い。表面処理としては、粗面処理、表面切削、除去、コーティング処理を行なってもよく、これらは電極との密着を改良できることがある。
(第ニの反応工程)
第二の反応工程では、例えば、一般式(3)の置換基R32による架橋工程であり、第二の反応工程では得られた膜を必要に応じて調湿した環境での加熱処理、放射線(可視光、紫外線、γ線、電子線等)照射処理を行い、架橋反応を進行させてもよい。
加熱処理による架橋を行なう場合は高温であるほうが、処理が短時間で終了し生産性の観点から好ましい。また、あまり高温であると材料の分解を伴う場合がある。処理温度は材料の性質に応じて選択することができる。好ましくは40℃〜300℃であり、より好ましくは80℃〜250℃であり、さらに好ましくは100℃〜200℃である。処理時間は短時間であるほうが生産性の観点から好ましいが、架橋反応をより効果的に行なうためには、処理時間を一定以上確保した方が好ましい。このため、処理時間は1分〜24時間が好ましく、5分〜10時間がさらに好ましく、10分〜5時間が特に好ましい。
放射線処理による架橋を行なう場合照射エネルギー量は大きいほうが、処理が短時間で終了し生産性の観点からの好ましいが、あまり大きいと照射設備のコストが高くなる。照射エネルギー量は好ましくは1000W/cm2〜0.1W/cm2であり、より好ましくは100W/cm2〜0.5W/cm2であり、さらに好ましくは30W/cm2〜1W/cm2である。処理時間は短時間であるほうが生産性の観点から好ましいが、あまり短時間であると架橋反応が不充分となってしまう。このため、処理時間は0.01分〜10時間が好ましく、0.1分〜5時間がさらに好ましく、1分〜2時間が特に好ましい。
架橋工程では第一の反応工程で説明した重合反応、光二量化反応、熱反応のいずれの反応様式を用いてもよい。容易に高密度架橋が可能な熱反応が好ましいが、熱反応としては以下の原子団(水酸基、マレイミド誘導体、ディールス−アルダー反応に用いることができるジエンおよびジエノファイルの組み合わせ等)を用いることができる。特に水酸基の縮合を用いる方法は水酸基前駆体の導入容易性、耐薬品性の観点から特に好ましい。
架橋工程の後に不要な成分を除去することを目的に、水、有機溶媒等による洗浄工程および乾燥工程を追加しても良い。
炭素−酸素結合を形成できる重合性基がエチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等のアルキレンオキシド基である場合、重合触媒としてはカチオン重合開始剤が好ましい。重合触媒としては、第一の反応工程に記載のカチオン重合開始剤と同様のものが好ましい例として挙げられる。加えて、酸発生剤、光カチオン重合の光開始剤等が挙げられる。具体的には、特開2002−29162号公報、特開2002−46361号公報、特開2002−137562号公報などに記載の光分解してスルホン酸を発生する化合物やオニウム塩が挙げられる。またこれらの酸を発生する基または化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物を用いることもできる。例えば、一般式(CA)または一般式(CB)で表される化合物である。
一般式(CA)
Figure 2006244994
一般式(CA)中、E11はアルキル基を表し、好ましくは直鎖または分岐の炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基またはヘキシル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基またはイソプロピル基である。E12は、水素原子、アルキル基またはハロゲン基であり、アルキル基の好ましい範囲はE11と同義である。複数のE11および/またはE12が存在するとき、それぞれのE11および/またはE12は同一であってもよいし、異なっていてもよい。X11は強酸の対アニオンであり、好ましくは、テトラブチルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ベンゼンスルホネート、4−メチルベンゼンスルホネート、アセテート、メタンスルホネート、トリフルオロスルホネート、パークロレート、ベンゾエート、ぺンタフルオロベンゾエートまたはスルフェートである。
nは0〜3の整数である。
一般式(CB)
Figure 2006244994
11は、水素原子、アルキル基またはハロゲン基を表し、上記一般式(CA)におけるE12と同義であり、好ましい範囲も同義である。mは1または2である。Iは、ヨウ素原子を表す。X12は強酸の対アニオンであり、上記一般式(CA)におけるX11と同義であり、好ましい範囲も同義である。
以下に、これらの例挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2006244994
Figure 2006244994
Figure 2006244994
第二の反応工程の反応温度は重合反応に応じて適切な温度を選択することが好ましい。カチオン重合であれば、好ましくは50℃〜300℃であり、より好ましくは100℃〜250℃であり、さらに好ましくは120℃〜200℃である。
架橋工程の後に不要な成分を除去することを目的に、水、有機溶媒等による洗浄工程および乾燥工程を追加しても良い。
(イオン交換工程)
イオン交換工程では、得られた膜を酸性水溶液に浸し、必要に応じて加熱することで酸残基A11のイオン交換反応を行う。
イオン交換工程では、例えば、一般式(2)のA21の酸残基を含む基への誘導を行なう。イオン交換反応では、強酸が好ましく、希釈された濃塩酸または濃硫酸がより好ましい。具体的には、1N〜12Nの塩酸水溶液または1N〜12Nの硫酸水溶液である。この処理液には有機溶媒等が添加されていても良い。
上記反応工程は、上記順序に行なうことは必須の要件ではなく、例えば、上記第1の反応工程、第2の反応工程、製膜工程およびイオン交換工程の順に行なってもよい。
上記製膜工程においては、原料となる高分子化合物を融点より高い温度に保持した液体、あるいは溶媒を用いて溶解した液体を用いて、押し出し成型によって製膜してもよいし、これらの液体をキャスト、あるいは塗布して製膜してもよい。これらの操作はカレンダーロール、キャストロール等のロール或いはTダイを用いたフィルム成形機で行なうことができ、プレス機器を用いたプレス成形とすることもできる。さらに延伸工程を追加し、膜厚制御、膜特性改良を行ってもよい。
燃料電池
本発明の膜状の固体電解質(固体電解質膜)は、電極膜接合体(Membrane and Electrode Assembly)(以下「MEA」という)および、該電極膜接合体を用いた燃料電池に用いることができる。
図1は本発明の電極膜接合体の断面概略図の一例を示したものである。MEA10は、固体電解質膜11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。
アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bを固体電解質膜11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、固体電解質膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
図2は燃料電池構造の一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17およびパッキン14とを有する。アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口16設けられている。アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
アノード電極およびカソード電極には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子を担持した触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲であり、粒子サイズが小さい程単位質量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが、小さすぎると凝集させずに分散させることが難しくなり、2nm程度が限度と言われている。
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極(水素極)に比べ、カソード極(空気極)が大きい。これは、アノード極に比べ、カソード極の反応(酸素の還元)が遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制することが重要である。この目的のために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を用いることができる。
活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
触媒層の機能は、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを固体電解質膜に輸送すること、である。(1)のために触媒層は、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性であることが必要である。(2)は上記で述べた活性金属触媒が、(3)は同じく上記で述べたカーボン材料が担う。(4)の機能を果たすために、触媒層にプロトン伝導材料を混在させる。
触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、固体電解質膜に用いられる酸残基を有する高分子化合物(例えばナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物など)が好ましく用いられる。本発明の固体電解質を触媒層に用いると、固体電解質膜と同種の材料となるため、固体電解質膜と触媒層との電気化学的密着性が高まりより有利である。
活性金属の使用量は、0.03〜10mg/cm2の範囲が電池出力と経済性の観点から適している。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の質量に対して、1〜10倍が適している。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの質量に対して、0.1〜0.7倍が適している。
電極基材、透過層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理を施したものを使用することもできる。
MEAの作製には、次の4つの方法が好ましい。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒ペースト(インク)を固体電解質膜の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒ペーストを多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、固体電解質膜に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクを固体電解質膜、多孔質導電シートあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該固体電解質膜に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEAを作製する。
本発明の固体電解質膜を用いる燃料電池の燃料として用いることのできるのは、アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64質量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CH3OH+H2O→CO2+6H++6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64質量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の質量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールが固体電解質膜を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が顕著となり、出力が低下する傾向にある。そこで、用いる固体電解質膜のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2O2+6H++6e→H2O)であり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層に供給する方法には、(1)ポンプ等の補機を用いて強制循環させる方法(アクティブ型)と、(2)補機を用いない方法(例えば、液体の場合には毛管現象や自然落下により、気体の場合には大気に触媒層を晒し供給するパッシブ型)の2通りがあり、これらを組み合わせることも可能である。前者は、カソード側で生成する水を循環させることにより燃料として高濃度のメタノールが使用することができ、空気供給による高出力化ができる等の利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。後者は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレーターを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能であり充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
1.モノマーの合成
[化合物A−3の合成]
4−ビニルベンジルクロライド15.3g、亜硫酸ナトリウム25.2gを50%エタノール水溶液60mlに混合した。80℃で12時間攪拌後、室温に冷却し、析出した結晶をろ過し、化合物A−3を15.4g得た。
[化合物A−7の合成]
水酸化リチウム5.20gをエタノール200mlに溶解し、酢酸スチレン35.6gを加えた。室温で1時間撹拌した後、1,3プロパンサルトン26.8gのエタノール40ml溶液を加え室温で2時間撹拌した。析出した固体をろ過し、アセトにトリルで再結晶し化合物A−7を23.2g得た。
[化合物B−2の合成]
3−エチル−3−オキセタンメタノール13.9gをジメチルホルムアミド120mlに溶解し、室温で攪拌しながら水素化ナトリウム(60%、インオイル)5.0gを少しずつ添加すると発泡した。発泡が収まった後、4−ビニルクロライド18.3gを滴下した。反応混合物を室温にて3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−2を19.0g得た。
[化合物B−9の合成]
50%水酸化ナトリウム水溶液600mlにヘキサン920mlとテトラブチルアンモニウムブロマイド12.3gを加え、3−エチル−3−オキセタンメタノール76.1gと1,6−ヘキサンジブロマイド500gを加えた。反応液を100℃で5時間撹拌し室温に戻した後、反応液を水に注ぎヘキサンで抽出した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、6−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)−1−ヘキシルブロマイドを141g得た。
ナトリウム60.0gをエタノール1.5lに溶解し、酢酸スチレン24.3gを加えた。室温で1時間撹拌した後、得られた6−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)−1−ヘキシルブロマイド40.1gを加え6時間撹拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−9を25.1g得た。
[化合物B−12の合成]
4,4'−ジヒドロキシナフタレン23.5gをDMF9mlに溶解し、炭酸カリウム11.5gとヨウ化カリウム7.0gを加えたところに、6−クロロヘキサノール68.8gを添加した。反応液を110℃で9時間攪拌し室温に戻した後、反応液を水に注ぎ析出した結晶をろ過した。得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、15.3gの4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−ヒドロキシビフェニルを得た。
得られた4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−ヒドロキシビフェニル10gをジメチルホルムアミド50mlに溶解し、炭酸カリウム10.0g添加し、50℃で攪拌しながら3−エチル−3−ヨードメチルオキセタン9.5gを滴下した。100℃で4時間反応を行った後、反応混合物を水に注ぎ、得られた粗結晶をアセトニトリルで再結晶し、4.0gの4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシビフェニルを得た。
4−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)−4'−(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシビフェニル3.6gを脱水テトラヒドロフランに溶解し、60℃に加温し攪拌しながら水素化ナトリウム(60%、インオイル)0.55gを少しずつ添加すると発泡した。発泡が収まった後、4−ビニルベンジルクロライド1.57gを滴下した。反応混合物を60℃で3時間攪拌した後、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物B−12を3.6g得た。
2.固体電解質の作製
[固体電解質 E−1の作製]
化合物A−1(東京化成製)2.06gおよび化合物B−2 2.32gをDMF30mlに溶解し、2,2’―アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)43.8mgを加え、80℃に加熱し6時間攪拌した。反応混合物にアセト二トリル50ml加え懸濁溶液とした後、上澄み液を除去した。さらにアセト二トリル30mlを加えろ過し、ポリマーを3.56g得た。得られたポリマーの重量平均分子量は52000であった。
得られたポリマー200mgおよび化合物C−1を50%イソプロピルアルコール(IPA)水溶液600μlに溶解し、テフロンベース(テフロン:登録商標)上に、180μm厚のテフロンテープで作製した3cm×3cmの正方形の枠内に流し込んだ。70℃で約2時間溶媒を蒸発、乾燥させた後、160℃で2時間オキセタンの開環重合を行い膜状に固化した塗布物を剥離した。得られた膜を、3規定塩酸に浸し12時間100℃で加熱しイオン交換させた後、イオン交換水にて洗浄、乾燥して、不透明、微褐色で厚さ74μmの固体電解質を得た。
[固体電解質 E−2の作製]
上記固体電解質E−1の作製において、化合物A−1の代わりに化合物A−3を2.18g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
[固体電解質 E−3の作製]
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、化合物A−1の代わりに化合物A−7を2.48g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
[固体電解質 E−4の作製]
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)、化合物A−1の代わりに化合物A−7を2.48g、化合物B−2の代わりに化合物B−9を3.14g添加した他は同様に行い、膜を作製した。
[固体電解質 E−5の作製]
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)化合物を用い、また、化合物A−1の代わりに2.48gの化合物A−7を用い、さらに、化合物B−2の代わりに4.87gの化合物B−12を添加し、他は同様に行い、膜を作製した。
このサンプルの薄膜切片を作製し、偏光顕微鏡で観察したところ、光学異方性のある微細なドメインが確認できた。これによりメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。
[固体電解質 E−6の作製]
上記固体電解質E−1の作製において、AIBNの代わりに1,1’−アゾビス(シクロヘキセン−1−カルボニトリル)化合物を用い、また、化合物A−1の代わりに2.48gの化合物A−7を用い、さらに、化合物B−2の代わりに4.87gの化合物B−12を添加し、さらにまた、化合物C−1の代わりに化合物C―24を用いた他は同様に行い、固体電解質を作製した。
これらのサンプルの薄膜切片を作製し、偏光顕微鏡で観察したところ、光学異方性のある微細なドメインが確認できた。これによりメソゲン部が一定方向に集積した集合体の集まりにより膜が構成されていることがわかった。
[固体電解質(R−1)の作製例]
上記固体電解質E−1の作製において、化合物A−1の代わり化合物A−7を2.48g、化合物B−2の代わりにジビニルベンゼン4.87gを添加した他は同様に行い、膜を作製した。
上記により得られた中間体ポリマーの重量平均分子量および膜厚を示す。
Figure 2006244994
Figure 2006244994
3.試験
[イオン伝導度]
上記で得られた本発明の固体電解質E−1〜E−6、比較固体電解質R−1およびナフィオン117(デュポン社製)を直径13nmの円形に打ち抜き固体電解質を直径5mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、交流インピーダンス法により、25℃、相対湿度95%におけるイオン伝導度を測定した。この値は大きいほどよい。
[メタノール拡散性]
サンプルを1cmx1cmに切り抜き、図3に示すようなセルにセットした。図3中、31は固体電解質を、32はテフロンテープ補強材を、33はメタノール水溶液注入部分を、4はキャリアガス導入口を、5は検出口をそれぞれ示している。また、図中の矢印はキャリアガスの流れを示す。そして、メタノール水溶液として50重量%メタノール水溶液を注入し、キャリアガス中に含まれるメタノールをガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製、GC−14B)にて検出した。この検出値から、以下の式を用いて拡散係数DMeOHを計算した。メタノール拡散性をナフィオン117(DuPont製)での検出値に対する相対値として計算した。この値は小さいほど良い。
MeOH=(N×T)/(A×CMeOH
拡散係数:DMeOH(cm2/s)
透過検出量:N(mol/s)
膜厚:T(cm)
サンプルがメタノール水溶液に接触している面積:A(cm2
メタノール濃度:CMeOH(mol/s)
[引張強度]
サンプルを2.5cm×1cmに切り抜き、JIS K−7127に準じて引っ張りによる強度試験を行った。サンプルが破断したときの張力を強度として記録した。この値は大きいほど好ましい。
[圧力強度]
固体電解質E−1〜E−6、比較用の固体電解質R−1を直径13mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板に挟み、手動式膜圧測定器により燃料電池用MEA(電極膜接合体)作製時に生じる550MPaまでの圧力を印加し、破断しているか確認した。尚、圧力強度は、限界値(破断する値)が600を越えるものは測定できなかったため、「>600」として表記した。
Figure 2006244994
本発明の固体電解質では、イオン伝導度、強度および耐久性がいずれも高く、その中でも特にメタノール拡散性が低いことが認められた。メソゲンを含むE−5およびE−6は、非常に低かった。このような固体電解質は、例えば、燃料電池のプロトン伝導膜(固体電解質膜)として好ましく使用できる。
[実施例5] 燃料電池の作製
(1)触媒膜の作製
(1−1) 触媒膜Aの作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50質量%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子サイズは約500nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き、触媒膜Aを作製した。
(1−2)触媒膜Bの作製
水0.3mlで湿らせた白金/ルテニウム担持カーボン(ケッチェンブラックに白金20質量%、ルテニウム20質量%が担持)300mgに、ナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で10分間分散させた。得られたペーストをカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き触媒膜Bを作製した。
(2)MEAの作製
実施例1で作製した固体電解質E−1〜E−6、比較用の固体電解質R−1およびナフィオン117の両面に上記で得られた触媒膜Aを塗布面が固体電解質に接するように張り合わせ、80℃、3MPa、2分間で熱圧着し、MEA−1−1〜1−6、2−1〜2−2を作製した。
(3)燃料電池特性
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時カソード側開口部16は大気と接するようにした。アノード電極12とカソード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。
Figure 2006244994
さらに、E−6の固体電解質の膜厚を100μmにして上記と同様に作製し、メタノール濃度による出力変化を測定した。このとき、熱圧着するときの圧力は3Mpaで温度は125℃および145℃にして、上記実施例5の(1)および(2)に従いMEA3−1および3−2を作製した。比較用として、ほとんど同じ膜厚になるナフィオン112(膜厚:90μm)と1135(膜厚:120μm)を120℃、3Mpaで同様に行い、MEA4−1およびMEA4−2を作製した。
Figure 2006244994
(結果)
ナフィオン膜を用いた燃料電池の初期電圧は高いものの、経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、アノード電極側に供給された燃料のメタノールが、ナフィオン膜を通過してカソード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対して、本発明の固体電解質を用いたMEA−1−1〜MEA−1−5により作製した電池は、MEA−2−1A〜MEA−2−2により作製した電池より電圧が安定しており、より高い電圧を維持できることがわかった。また、同程度の膜厚のナフィオン112および1135で作製したMEA4−1および4−2は、メタノール濃度は10質量%の時に劇的に電圧が低下した。これは、メタノール濃度が大きくなることで、メタノールクロスオーバーが顕著に現れたものと考えられる。それに対して、本発明の固体電解質膜を用いたMEA3−1および3−2はMEA4−1および4−2に比べて電圧を安定に保っておりより高い電圧であることが認められた。
図4に、MEA3−1(三角)、MEA3−2(ひし形)、MEA4−1(四角)、MEA4−2(丸)のメタノール濃度と出力密度の関係を示した。
本発明の固体電解質膜を用いた電極膜接合体の構成を示す概略断面図である。 本発明の燃料電池の構造の一例を示す概略断面図である。 本発明のメタノール拡散性の測定に採用するステンレス製のセルの概略図を示す。 本発明の実施例で作製した燃料電池(MEA3−1、MEA3−2、MEA4−1、MEA4−2)のメタノール濃度と出力密度の関係を示す図である。
符号の説明
10・・・電極膜接合体(MEA)
11・・・固体電解質膜
12・・・アノード電極
12a・・アノード極多孔質導電シート
12b・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・カソード極多孔質導電シート
13b・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21・・・アノード極側のセパレータ
22・・・カソード極側のセパレータ
31・・・固体電解質
32・・・テフロンテープ補強材
33・・・メタノール水溶液注入部分
34・・・キャリアガス導入口
35・・・検出口(ガスクロマトグラフィーに接続)
36ゴムパッキン

Claims (10)

  1. 酸残基を含むドメインとマトリックスドメインが、重合主鎖の炭素−炭素結合および架橋性基のポリエーテルにより3次元架橋構造を形成しており、イオン伝導度が0.010S/cm以上、メタノール拡散係数が4×10-7cm2/s以下、引張強度が40MPa以上、かつ、圧力強度が500kgf/cm2以上である、固体電解質。
  2. 前記固体電解質はナノ相分離構造である、請求項1に記載の固体電解質。
  3. 一般式(1−1)で表される繰り返し単位と、一般式(1−2)で表される繰り返し単位を含む、請求項1または2に記載の固体電解質。
    一般式(1−1)
    Figure 2006244994
    (一般式(1−1)中、R11は、水素原子またはアルキル基を表し、L11は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A11は酸残基を表す。)
    一般式(1−2)
    Figure 2006244994
    (一般式(1−2)中、R12は、水素原子またはアルキル基を表し、R13は、アルキル基またはアリール基を表し、L12は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。)
  4. 前記L11および/またはL12が、酸素または芳香環を含む2価の連結基である、請求項3に記載の固体電解質。
  5. 膜状である、請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解質。
  6. 一般式(2)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を重合する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
    一般式(2)
    Figure 2006244994
    (一般式(2)中、R21は水素原子またはアルキル基を表し、L21は単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A21は酸残基に誘導できる基を含む基を表す。)
    一般式(3)
    Figure 2006244994
    (一般式(3)中、R31は水素原子またはアルキル基を表し、L31は単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、R32は炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表す。)
  7. 一般式(4−1)で表される繰り返し単位と、一般式(4−2)で表される繰り返し単位を含む重合性化合物を用いることを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質の製造方法。
    一般式(4−1)
    Figure 2006244994
    (一般式(4−1)中、R41は、水素原子またはアルキル基を表し、L41は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表し、A41は酸残基を表す。)
    一般式(4−2)
    Figure 2006244994
    (一般式(4−2)中、R42は、水素原子またはアルキル基を表し、R43は、炭素−酸素結合を形成できる重合性基を表し、L42は、単結合または、アルキレン基および/もしくはアリーレン基を含む2価の連結基を表す。)
  8. 前記重合性化合物の重量平均分子量が3000以上である、請求項7に記載の固体電解質の製造方法。
  9. 一対の電極と、該電極間に設けられた請求項5に記載の固体電解質を有する、電極膜接合体。
  10. 請求項9に記載の電極膜接合体を有する、燃料電池。
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