JP4149950B2 - 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池 - Google Patents

化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池 Download PDF

Info

Publication number
JP4149950B2
JP4149950B2 JP2004086053A JP2004086053A JP4149950B2 JP 4149950 B2 JP4149950 B2 JP 4149950B2 JP 2004086053 A JP2004086053 A JP 2004086053A JP 2004086053 A JP2004086053 A JP 2004086053A JP 4149950 B2 JP4149950 B2 JP 4149950B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
compound
general formula
proton conductor
represent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004086053A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005272556A (ja
Inventor
幸司 割石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2004086053A priority Critical patent/JP4149950B2/ja
Publication of JP2005272556A publication Critical patent/JP2005272556A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4149950B2 publication Critical patent/JP4149950B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Silicon Polymers (AREA)
  • Conductive Materials (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池に関する。
技術背景
固体高分子型燃料電池用電解質膜(プロトン伝導膜)の重要な機能は、正極触媒電極に供給される燃料(水素、メタノール水溶液等)と負極に供給される酸化剤ガス(酸素等)を物理的に絶縁すること、正極と負極を電気的に絶縁すること、および正極上で生じるプロトンを負極に伝達することである。これらの機能を満たすためには、ある程度の機械的強度と高いプロトン伝導性が要求される。
固体高分子型燃料電池電解質膜には、一般にナフィオン(登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられている。これらの電解質膜はイオン伝導度に優れ、機械的強度も比較的高いものであるが、以下のような改善すべき点がある。すなわち、これらの電解質膜では膜に含まれる水とスルホン酸基により生成したクラスターチャンネルの中で水を介してプロトンが伝導するため、イオン伝導度が電池使用環境の湿度による膜含水率に大きく依存する。固体高分子型燃料電池は、COによる触媒電極の被毒低減と触媒電極の高活性化の観点から、100〜150℃の温度領域で作動させるのが好ましい。しかし、このような中温度領域では電解質膜の含水率の低下とともにイオン伝導度が低下するため、期待した電池特性が得られない。また、電解質膜の軟化点が120℃付近にあり、この温度域で作動させた場合には電解質膜の機械的強度に乏しい。一方、これらの電解質膜を直接メタノール型燃料電池(DMFC)に用いた場合には、本質的に含水し易いこれらの膜は、燃料のメタノールに対するバリヤ性が低いため、正極に供給したメタノールが電解質膜を透過し負極に到達してしまう。これが原因となり電池出力が低下する、いわゆるメタノールクロスオーバー現象が起こり、DMFC実用化のための解決すべき重要な課題の一つとなっている。
ナフィオン(登録商標)に代わるプロトン伝導材料を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。例えば、無機材料の特性を活かしながら製膜を容易にするための方策として、例えば、有機ケイ素化合物を前駆体とし、プロトン酸存在下のゾル−ゲル反応により生成する有機−無機ナノハイブリッド型のプロトン伝導材料が提案されている(特許文献1〜2および非特許文献1および2)。これらのハイブリッド型プロトン伝導材料は、ケイ酸とプロトン酸からなりプロトン伝導部位である無機成分と材料に柔軟性を付与する有機成分とにより構成されるが、膜のプロトン伝導度を高めるために無機成分を増やすと膜の機械的強度が低下し、柔軟性を得るために有機成分を増やすとプロトン伝導度が低下するため、2つの特性を満足する材料を得ることが困難である。さらに、DMFC用途として重要な特性であるメタノール透過性に関しては、十分な記載がない。
特許第3103888号公報 ドイツ特許 DE 10061920A1公報 「エレクトロキミカ アクタ(Electrochimica Acta)」,1998年,第43巻,10−11号、p.1301 「ソリッド ステート イオニクス(Solid State Ionics)」,2001年,第145号,p.1277
本発明の目的は、DMFC用として好適な、環境湿度の変化によるイオン伝導度の変動が小さく、メタノールクロスオーバーが小さいイオン交換体およびプロトン伝導体に用いる化合物、および該化合物を用いた固体電解質およびプロトン伝導体(例えば、プロトン伝導膜)、当該プロトン伝導体を有する電極膜接合体、当該電極膜接合体を有する燃料電池を提供する。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、分子内に環状アセタール部を有する有機ケイ素化合物からなるゾル−ゲル反応前駆体とプロトン供与性基を有するゾル−ゲル反応前駆体を複合化することにより、イオン伝導度の高い有機−無機ハイブリッド膜が構築できることを見出した。さらに、メソゲン基を有する自己組織化力を付与した有機ケイ素化合物からなるゾル−ゲル反応前駆体を含む溶液を組み合わせたゾル−ゲル反応により得られる有機−無機ハイブリッド材料は、有機分子鎖とプロトン伝導経路となるプロトン供与性基が結合したケイ素−酸素マトリックス部がナノサイズで相分離し、好ましくは有機分子鎖が膜面に対して水平に配向することにより、プロトン伝導経路が膜面を横切る方向で形成された有機−無機ナノハイブリッド材料が構築でき、また得られる膜は柔軟で機械的強度も高いことを発見し、本発明に想到した。特に、一般式(I)で表される有機ケイ素化合物、一般式(II)または(III)で表される有機ケイ素化合物を含む溶液を酸化処理して得られるスルホン酸ゾル、および一般式(IV)および/または (V)のいずれか1つ以上で表される有機ケイ素化合物を組み合わせたゾル−ゲル反応により得られる有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導体は、有機分子鎖が配向してなる集合体を形成することが偏光顕微鏡観察により判明した。この場合、プロトン伝導経路となるプロトン供与性基が結合したケイ素−酸素ネットワークは、必然的に有機分子集合体の配向方向と直交する方向に形成される。従って、有機分子鎖の配向方向を膜面に対して水平方向制御にすることにより、膜を横断するプロトン伝導経路が構築できる。
具体的には、本発明の目的は下記の構成により達成することができる。
(1)下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)および(III)で表される化合物の少なくとも1種とをゾル−ゲル反応してなる化合物。
Figure 0004149950
(一般式(I)中、R 1 およびR 2 は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。R 31 、R 32 、R 33 およびR 34 は、水素原子を表し、R 4 は、水素原子またはアルキル基を表し、R 5 は、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R 6 は、水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m1は1〜3の整数を表し、n11およびn12は、それぞれ、0〜4の整数を表す。L 1 は単結合、あるいは、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−もしくは−NR'−(R'は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)またはこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。s1およびt1は、1である。)
Figure 0004149950
(一般式(II)および(III)中、A 1 およびA 2 はそれぞれ脂肪族基および/または芳香族基を含む連結基を表し、R 7 およびR 9 はそれぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R 8 およびR 10 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m2およびm3はそれぞれ1〜3の整数を表し、n2およびn3は1を表す。)
(2)前記ゾルゲル反応において、下記一般式(IV)および(V)で表される化合物の少なくとも1種をさらに添加することにより得られうる(1)に記載の化合物。
Figure 0004149950
(一般式(IV)および(V)中、A 3 およびA 4 は、それぞれ、下記一般式(VI)で表される基であり、R 11 およびR 13 は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R 12 およびR 14 は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、Y 1 はアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エチニル基またはアルキレンオキシド基を表し、m4およびm5はそれぞれ1〜3の整数を表し、n41およびn5は1であり、n42は1である。)
一般式(VI)
Figure 0004149950
(一般式(VI)中、Q 1 は、A 3 の場合、単結合または2価の基を表し、A 4 の場合、1価の基を表し、Q 2 は、単結合または2価の連結基を表す。Q 1 とQ 2 のうち、Q 2 がSiと結合する。Y 11 は2価の4〜7員環の置換基、またはそれらから構成される縮合環の置換基を表し、m31は1以上の整数である。)
(3)(1)または(2)に記載の化合物を含有する固体電解質。
(4)(1)または(2)に記載の化合物を含有するプロトン伝導体。
(5)少なくとも2つの電極からなり、該2つの電極の間に(4)に記載のプロトン伝導体が含まれている電極膜接合体。
(6)(5)に記載の電極膜接合体を有する燃料電池。
本発明のプロトン伝導体は、環状アセタール部分が分解して生成する複数の水酸基およびプロトン供与性基を有する化合物、特にスルホ基がケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合しており、また、分子内にメソゲンを有しているため有機分子鎖の少なくとも一部が配向してなる集合体が形成され、室温でのイオン伝導度が高く、かつメタノール水溶液に対する耐性が高くメタノールクロスオーバーが低減されている。そのため、直接メタノール型燃料電池に用いた場合には、電圧低下の割合が小さく従来のプロトン伝導体より高い出力を得ることが可能である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
[1]有機ケイ素化合物およびスルホン酸基含有前駆体
本発明のプロトン伝導体は、環状アセタール部分から由来する2つ以上の水酸基、プロトン供与性基、特にスルホ基およびメソゲン基を含む有機分子鎖がケイ素酸素3次元架橋マトリックスに共有結合した構造を有しており、一般式(I)で表される環状アセタール部分を含む有機ケイ素化合物、一般式(II)または(III)で表される化合物を酸化処理して得られるスルホン酸ゾルと一般式(IV)または(V)で表される有機分子鎖の配向を促すメソゲン基を有する有機ケイ素化合物を前駆体としたゾル−ゲル反応により形成することができる。以下これらを形成するための前駆体について詳しく説明する。
[1−1] 環状アセタール部含有有機ケイ素化合物前駆体
一般式(I)において、CR3132およびCR3334で表される基の炭素原子(R31〜R34が有する炭素原子を除く)は、それぞれ、環状アセタールの一部を形成する。すなわち、(n11+n12+4)員環の環状アセタールが形成される。
一般式(I)で表される有機ケイ素化合物において、R 4、R5およびR6で表されるアルキル基の好ましい例としては、直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基、好ましくはメチル基やエチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられ、R1、R2 、R 4 、R5およびR6で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換または無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、R1、R2 、R 5で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換または無置換のへテロ6員環(ピリジル、モルホリノ基、テトラヒドロピラニル等)、置換または無置換のヘテロ5員環(フリル、チオフェン基、1,3−ジオキソラン−2−イル基等)等が挙げられる。
1とR2は互いに連結して環を形成してもよい。連結して形成される環は3〜8員環が好ましく、5〜6員環がさらに好ましい
また、R6で表されるシリル基の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルキル基から選ばれた3つのアルキル基で置換されたシリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)、またはポリシロキサン基(−(Me2SiO)nH(n=10〜100)等)が挙げられる。
また、m1は、好ましくは、2または3、より好ましくは3ある。n11およびn12は、それぞれ、好ましくは、0〜2であり、より好ましくは0または1である。s1およびt1は、1である。
1は、より好ましくは、単結合、あるいは、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−もしくは−NR'−(R'は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)またはこれらの基を組み合わせた価の連結基である。L1の連結基のうち、好ましくは、アルキレン基と−O−の組み合わせ、ならびに、該組み合わせにさらに、アルキレン基、アリーレン基、−CO−の1つ以上を組み合わせてなる価の連結基である。アルキレン基は、炭素数2〜12のものが好ましい
以下に一般式(I)で表される有機ケイ素化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
Figure 0004149950
Figure 0004149950
一般式(I)の合成法

一般式(I)で表される化合物は、対応するアセタール環を含有するオレフィン化合物のヒドロシリル化反応によって容易に得ることができる。ヒドロシリル化反応は、例えば、「第4版 実験化学講座」(日本化学会編、丸善株式会社)、24巻、125ページに記載されている方法を用いることができる。
(I−1)の合成
Figure 0004149950
化合物(B)の合成
化合物(A)26.4g(東京化成工業(株)製)およびテトラブチルアンモニウムブロミド1gを50重量%水酸化ナトリウム水溶液50gと混合、撹拌した。反応液を氷冷し、臭化アリル48.4gを滴下した。このとき、液温が10℃以下になるように滴下速度を調整した。2日後、水100mlを加え、塩化メチレンで抽出した。有機相を100mlの水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相の溶媒を留去後、残渣を蒸留し、化合物(B)27.4gを得た。沸点86〜87℃/20mmHgであった。
(I―1)の合成
窒素気流下、化合物(B)15.5gおよびトリエトキシシラン11.8gをトルエン10mlに溶解した。反応液を80℃に加熱後、塩化白金酸6水和物の0.05Mベンゾニトリル溶液10μlを添加した。その後、さらに2時間加熱撹拌を続けた。反応終了後、減圧蒸留により(I−1)19gを得た。143℃/3mmHgであった。
[1−2]プロトン供与性基を有する化合物
本発明の化合物には、プロトン伝導性を付与するためにプロトン供与性の化合物が添加される
本発明では、一般式(II)および/または(III)で表されるスルフィドまたはジスルフィド化合物を含む溶液を使用時に酸化処理し、本発明の化合物作製のための前駆体ゾルとして用いる。
一般式(II)および(III)におけるR7およびR9は、一般式(I)のR5と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(II)および(III)におけるR8およびR10は、一般式(I)のR6と同義であり、好ましい範囲も同義である。
一般式(II)および(III)におけるA1およびA2は、脂肪族基および/または芳香族基を含む有機原子団で構成され、それらの例としては炭素数1〜12のアルキレン基、アリーレン基等、これらを組み合わせた基等が挙げられ、これらの基の間に一般式(I)中のL1で挙げた連結基を含んでいてもよい。さらに置換基を有していてもよい。特に好ましい連結基は、プロピレン基、メチレン基およびフェニレン基である。また、少なくとも一つのR8および少なくとも一つのR10が炭素数2以上であるのが好ましい。
m2およびm3はそれぞれ2または3が好ましく、m2またはm3が2以上のとき、それぞれの単位内は同一であっても良いし、異なっていてもよい。以下に、一般式(II)および(III)で表される好ましい化合物を例示するが、これらに限定されない。この中でも好ましくは、II-1〜II-9および、III-1〜III-4である。
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
一般式(II)の合成方法
一般式(II)で表される化合物は、市販品(東京化成工業(株)、信越化学工業(株)、アルドリッチ社(米国)、ゲレスト社(米国)など)として入手可能であったり、例えば、J.Org.Chem.,33巻、2918頁(1968年)、J.Org.Chem.,43巻、1687頁(1978年)に記載された方法で合成できる。
一般式(III)の合成方法
一般式(III)で表される化合物は、例えば、Chem.Lett.,454頁(2002年)、Dokl.Chem.(Engl.Trans.),339巻205頁(1994年)に記載された方法で合成できる。
[1−3]メソゲン含有有機ケイ素化合物前駆体
さらに、上記ケイ素3次元架橋マトリックスには、メソゲン基を含む有機分子鎖が共有結合していることが好ましい。メソゲン基を含む有機分子鎖は、例えば、一般式(IV)または(V)で表される有機ケイ素化合物を前駆体としたゾル−ゲル反応により形成することができる。以下前駆体について詳しく説明する。
一般式(IV)および(V)で表されるメソゲンを含む有機ケイ素化合物において、R11〜R14で表されるアルキル基の好ましい例としては、それぞれ、直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基(例えば炭素数1〜20のアルキル基であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等)が挙げられ、R11〜R14で表されるアリール基の好ましい例としては、炭素数6〜20の置換または無置換のフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、R11およびR13で表されるヘテロ環基の好ましい例としては、置換または無置換のへテロ6員環(ピリジル基、モルホリノ基等)、置換または無置換のヘテロ5員環(フリル基、チオフェン基等)等が挙げられる。また、R12およびR14で表されるシリル基の好ましい例としては、炭素数1〜10のアルキル基から選ばれた3つのアルキル基で置換されたシリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)、またはポリシロキサン基(−(Me2SiO)nH(n=10〜100)等)が挙げられる。m4およびm5は、好ましくはm4および/またはm5が2または3の場合であり、より好ましくはm4および/またはm5が3の場合である。尚、m4、m5、3−m4、3−m5が2以上の場合、それぞれのカッコ内は、同一であっても良いし、異なっていてもよい。
上述した置換基はさらに以下に示す置換基で置換されていてもよい。
1.アルキル基
アルキル基はさらに、置換基を有していてもよく、より好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシルメチル基、オクチルシクロヘキシル基等である。
2.アリール基
アリール基は置換基を有していても縮環していてもよく、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基であり、例えばフェニル基、4−メチルフェニル基、3−シアノフェニル基、2−クロロフェニル基、2−ナフチル基等である。
3.ヘテロ環基
ヘテロ環基は置換基を有していても縮環していてもよく、含窒素ヘテロ環基のときは環中の窒素が4級化していてもよい。より好ましくは炭素数2〜24のヘテロ環基であり、例えば4−ピリジル基、2−ピリジル基、1−オクチルピリジニウム−4−イル基、2−ピリミジル基、2−イミダゾリル基、2−チアゾリル基等である。
4.アルコキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシペンタ(エチルオキシ)基、アクリロイルオキシエトキシ基、ペンタフルオロプロポキシ基等である。
5.アシルオキシ基
より好ましくは炭素数1〜24のアシルオキシ基であり、例えばアセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等である。
6.アルコキシカルボニル基
より好ましくは炭素数2〜24のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等である。
7.カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基
例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等である。
8.アリールオキシカルボニルオキシ基
例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基、
アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N-メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基)、
アシルアミノ基(例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基)等である。
9.アミノカルボニルアミノ基
例えば、カルバモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基等である。
10.アルコキシカルボニルアミノ基
例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等である。
11.アリールオキシカルボニルアミノ基
例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等である。
12.スルファモイルアミノ基
例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等である。
13.アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基
例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。
14.スルファモイル基
例えば、N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。
15.アルキルおよびアリールスルフィニル基
例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p−メチルフェニルスルフィニル基等である。
16.アルキルおよびアリールスルホニル基
例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−メチルフェニルスルホニル基等である。
17.アシル基
例えば、アセチル基、ピバロイル基、2−クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル基、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基、o−クロロフェノキシカルボニル基、m−ニトロフェノキシカルボニル基、p−tert−ブチルフェノキシカルボニル基)等である。
18.カルバモイル基
例えば、カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。
19.シリル基
炭素数3〜30のシリル基が好ましく、例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジメトキシメチルシリル、ジエトキシメチルシリル、トリアセトキシシリル等である。
20.シアノ基
21.フルオロ基
22.メルカプト基
23.水酸基
3およびA4は、下記一般式(VI)で表される基である。
一般式(VI)
Figure 0004149950
一般式(VI)中、Q1は、 3 の場合、単結合または2価の基を表し、A 4 の場合、1価の基を表し、Q 2 は、単結合または2価の連結基を表す。また、Q1とQ2のうち、Q2がSiと結合するm31は、m31は、1以上の整数を表し、m31が2以上の場合、カッコ内は同一でも異なっていても良い。
2価の連結基としては、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、−N(O)=N−、−COO−、−COS−、−CONH−、−COCH2−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2NH−、−CH2−、−CO−、−O−、−S−、−NH−、−(CH2111−、−CH=CH−COO−、−CH=CH−CO−、−(C≡C)13−、これらの組合せ等が好ましく、−CH2−、−CO−、−O−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=N−、これらの組合せ等がより好ましい。これらの2価の連結基は水素原子が他の置換基で置換された基であってもよい。Q11およびQ12は単結合であるのが特に好ましい。これらを組み合わせる場合、同じ連結基、異なった連結基、その両方のいずれの組み合わせであってもよく、その組み合わせの数は、特に定めるものではない。
11は2価の4〜7員環の置換基、またはそれらから構成される縮合環の置換基を表す。11は好ましくは6員環の芳香族基、4〜6員環の飽和または不飽和脂肪族基、5または6員環のヘテロ環基、またはそれらの縮合環である。Y11の好ましい具体例としては、以下に示す(Y−1)〜(Y−30)で表される置換基、およびこれらの組合せが挙げられる。これらの置換基の中でより好ましくは(Y−1)、(Y−2)、(Y−18)、(Y−19)、(Y−21)、(Y−22)および(Y−29)であり、さらに好ましくは(Y−1)、(Y−2)、(Y−21)および(Y−29)である。
Figure 0004149950
Figure 0004149950
1、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エチニル基、アルキレンオキシド基(エチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等)であり、中でもアクリロイル基、メタクリロイル基、エチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基が好ましい。
以下にメソゲン含有有機ケイ素化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
Figure 0004149950
[2] プロトン伝導体の作製法
[2−1] ゾル−ゲル法
本発明では、一般にゾル−ゲル法と呼ばれる金属アルコキシドの加水分解、縮合、乾燥、(場合によっては焼成)等によって固体を得る方法を用いる。例としては、特許文献1〜2、非特許文献1または2に記載されている方法を用いることができる。一般には、縮合のために酸触媒を用いるが、本発明では、[1−2]で述べた前駆体自身が酸触媒となるため、別途酸を添加しなくてもよい。
本発明のプロトン伝導体の典型的な作製方法は、一般式(II)または(III)で表される化合物を任意の溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール等)に溶解し、酸化剤として過酸化水素水を添加し、−SH基またはS−S−を−SO3Hに変換しスルホン酸ゾルを得る。このとき、[1−1]および/または[1−3]に記載の有機ケイ素化合物が共存していてもよい。得られたゾルに、任意の溶媒に溶解した[1−1]および/または[1−3]に記載の有機ケイ素化合物を混合し、アルコキシシリル基の加水分解と縮重合(以後「ゾル−ゲル反応」と呼ぶ)を進行させる。その際必要に応じ加熱してもよい。反応混合液(ゾル)の粘度は徐々に増し、溶媒を留去、乾燥すると固体(ゲル)が得られる。流動性がある段階でゾルを所望の容器に流し込むか、塗布した後、溶媒留去、乾燥することにより膜状の個体を得ることができる。生成するシリカのネットワークをより緻密にするため、必要に応じ乾燥後さらに加熱することも可能である。
ゾル−ゲル反応に用いる溶媒は、前駆体の有機ケイ素化合物を溶解するものであれば特に制限はないが、好ましくはカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ヘテロ環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン、N−メチルピロリドン等)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、鎖状エーテル類(ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン極性物質(ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、非極性溶媒(トルエン、キシレン等)、塩素系溶媒(メチレンクロリド、エチレンクロリド等)、水等を用いることができる。中でも、エタノール、イソプロパノール、フッ素置換アルコール等のアルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。また乾燥速度を制御する目的で、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジオキサン等の沸点100℃以上の溶媒を上記溶媒に添加しても良い。全溶媒量は、前駆体化合物1gに対し好ましくは0.1〜100gであり、より好ましくは1〜10gである。
ゾル−ゲル反応の進行を速める目的で酸触媒を用いてもよい。酸触媒としては[1−2]で述べたプロトン供与性化合物を兼用して好ましく用いることができる。
ゾル−ゲル反応の反応温度は反応速度に関連し、前駆体の反応性と選択した酸の種類および量に応じて選択することができる。好ましくは−20℃〜150℃であり、より好ましくは0℃〜80℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。
[2−2] 重合性基Y1による重合
重合性基Y1が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エチニル基である場合、大津隆行・木下雅悦共著,「高分子合成の実験法」,化学同人や大津隆行著,「講座重合反応論1ラジカル重合(I)」,化学同人に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合法を用いることができる。
ラジカル重合法として、熱重合開始剤を用いる熱重合法と光重合開始剤を用いる光重合法を使用することができる。熱重合開始剤の好ましい例としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が挙げられ、光重合開始剤の好ましい例としては、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号および同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許244828号明細書)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許35493676号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報および米国特許4239850号明細書)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書)が挙げられる。
重合開始剤は、上記[2−1]のゾル−ゲル反応前に反応液に添加しても、ゾル−ゲル反応後反応液を塗布する直前に添加しても良い。重合開始剤の添加量はモノマー総量に対し好ましくは0.01〜20質量%であり、より好ましくは0.1〜10質量%である。
1で表される重合性基がエチレンオキシド基、トリメチレンオキシド基等のアルキレンオキシド基の場合、重合触媒としてはプロトン酸(上記[2−1]で挙げたプロトン酸)やルイス酸(好ましくは三フッ化ホウ素(エーテル錯体を含む)、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等)を好ましく用いることができる。プロトン酸としてゾル−ゲル反応のプロトン酸を用いる場合には、重合性気Y2の重合用に特に添加する必要はない。重合触媒を添加する場合には、塗布する直前に反応液に添加するのが好ましい。通常、重合は塗布後に加熱または光照射により膜中で進行させる。これにより分子の配向状態が固定され、また、膜の強度も向上する。
[2−3] 他のケイ素化合物との併用
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて、上記[1−1]〜[1−3]に記載した2種以上の前駆体を混合して用いてもよい。これらの前駆体にさらに他のケイ素化合物を添加してもよい。他のケイ素化合物の例としては、下記一般式(VII)で表される有機ケイ素化合物またはそれらをモノマーとするポリマーが挙げられる。
Figure 0004149950
一般式(VII)中、R15は置換または無置換のアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R16は水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m7は0〜4の整数を表し、m7または4−m7が2以上のとき、R15またはR16はそれぞれ同一でも異なってもよく、R15同士またはR16同士で結合して環を形成しても良い。また、該化合物同士は、R15またはR16の置換基により互いに連結し、多量体を形成してもよい。
一般式(VII)のm7は0〜2が好ましくR16はアルキル基、特に置換アルキル基が好ましい。さらにm7が0のときの好ましい化合物の例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)等が挙げられ、m7が1または2のときの好ましい化合物の例としては以下の化合物が挙げられる。ここでいう置換基とは、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではなく、さらに置換基を有していても良い。置換基の例としては、上記[1−3]メソゲン含有有機ケイ素化合物前駆体の所で述べた置換基が挙げられる。
Figure 0004149950
Figure 0004149950
一般式(VII)で表される化合物を併用する場合、前記前駆体の有機ケイ素化合物に対して1〜50モル%の範囲で用いるのが好ましく、1〜20モル%の範囲で用いるのがより好ましい。
[2−4] 高分子化合物の添加
本発明のプロトン伝導体には、(1)膜の機械的強度を高める目的、および(2)膜中の酸濃度を高める目的で種々の高分子化合物を含有させてもよい。(1)機械的強度を高める目的には、分子量10,000〜1,000,000程度で本発明のプロトン伝導材料と相溶性のよい高分子化合物が適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリなど、およびこれらの共重合体が好ましく、含有量としては1〜30質量%の範囲が好ましい。(2)酸濃度を高める目的には、ナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子のスルホン化物などのプトロン酸部位を有する高分子化合物などが好ましく、含有量としては1〜30質量%の範囲が好ましい。
有機ケイ素化合物前駆体を用いたゾル−ゲル反応は、ゾル−ゲル反応混合物を塗布した後、有機ケイ素化合物の有機部位が配向しながら進行する。ゾル−ゲル組成物の配向を促進させるために、様々な手法を採用することができる。例えば、前述の支持体等に事前に配向処理を施すことができる。配向処理としては種々の一般的な方法を採用できるが、好ましくは各種ポリイミド系配向膜、ポリビニルアルコール系配向膜等の液晶配向層を支持体等の上に設け、ラビング等の配向処理行う方法、支持体上のゾル−ゲル組成物に磁場や電場等を印加する方法、加熱する方法等を用いることができる。
有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導体の配向状態は、偏光顕微鏡により光学異方性を観察することにより確認することができる。観察方向は任意でよいが、クロスニコル下でサンプルを回転させ、明暗が切り替わる部分があれば異方性があるといえる。配向状態は異方性を示す状態であれば特に制限はない。液晶相と認識できるテクスチャーが観察される場合は相を特定することができ、リオトロピック液晶相でもサーモトロピック液晶相でもよい。配向状態はリオトロピック液晶相の場合はヘキサゴナル相、キュービック相、ラメラ相、スポンジ相、ミセル相が好ましく、特に室温でラメラ相もしくはスポンジ相を示すことが好ましい。サーモトロピック液晶相ではネマチック相、スメクチック相、クリスタル相、カラムナー相およびコレステリック相が好ましく、特に室温でスメクチック相、クリスタル相を示すことが好ましい。また、これらの相における配向が固体状態で保持されている配向状態も好ましい。ここでいう異方性とは分子の方向ベクトルが等方的ではない状態をいう。
支持体より剥離して得られる有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導体の厚さは、10〜500μmが好ましく、25〜100μmが特に好ましい。
[2−5] 製膜方法
本発明において、ゾル−ゲル反応混合物を塗布する際の支持体は特に限定されないが、好ましい例としてはガラス基板、金属基板、高分子フィルム、反射板等を挙げることができる。高分子フィルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系高分子フィルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のエステル系高分子フィルム、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)等のフッ素系高分子フィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。塗布方式は公知の方法でよく、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を用いることができる。
[2−6] 細孔膜への充填
本発明のプロトン伝導材料を、多孔質基材の細孔に含浸させて膜を形成することが可能である。細孔を有する基材上に本発明のゾル−ゲル反応液を塗布含浸させるか、基材をゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内にプロトン伝導材料を満たして膜を形成してもよい。細孔を有する基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミドなどが挙げられる。
[2−7]プロトン伝導体への触媒金属の添加
本発明のプロトン伝導体には、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒を添加してもよい。これにより、プロトン伝導体中に浸透した燃料が他方極に到達すること無くプロトン伝導体中で消費され、クロスオーバーを防ぐことができる。用いられる活性金属種は、電極触媒として機能するものであれば制限は無いが、白金または白金を基にした合金が適している。
[3] 燃料電池
[3−1]電池の構成
本発明の有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導体を用いた燃料電池について説明する。図1は燃料電池電極膜複合体(以下「MEA」;Membrane and Electrode Assemblyという)10の構成を示す。MEA10は、プロトン伝導体11と、それを挟んで対向するアノード電極12及カソード電極13を備える。
アノード電極12とカソード電極13は、多孔質導電シート(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層12b、13bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bをプロトン伝導体11に密着させるために、多孔質導電シート12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものを、プロトン伝導体11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものを、プロトン伝導体11に転写しながら圧着した後、多孔質導電シート12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
図2は燃料電池単セルの一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17およびパッキン14とを有する。アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口16設けられている。アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
[3−2]触媒材料
アノード電極およびカソード電極には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子を担持した触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲であり、粒子サイズが小さい程単位質量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが、小さすぎると凝集させずに分散させることが難しくなり、2nm程度が限度といわれている。
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極(水素極)に比べ、カソード極(空気極)が大きい。これは、アノード極に比べ、カソード極の反応(酸素の還元)が遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制することが重要である。この目的のために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を用いることができる。
活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
[3−3]触媒層の構成と材料
触媒層の機能は、(1)燃料を活性金属に輸送すること(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンをプロトン伝導体に輸送すること、である。(1)のために触媒層は、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性であることが必要である。(2)は[3−2]で述べた活性金属触媒が、(3)は同じく[3−2]で述べたカーボン材料が担う。(4)の機能を果たすために、触媒層にプロトン伝導材料を混在させる。
触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、プロトン伝導体に用いられる酸残基を有する高分子化合物(例えばナフィオンに代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物など)、酸が固定された有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料(例えば、前述特許文献1〜2、非特許文献1または2に記載のプロトン伝導材料)などが好ましく用いられる。本発明のプロトン伝導体に用いる前駆体(一般式(I)で表される化合物)をゾル−ゲル反応して得られるプロトン伝導材料を触媒層に用いることも可能である。この場合、プロトン伝導体と同種の材料であるため、プロトン伝導体と触媒層との密着性が高まり有利である。
活性金属の使用量は、0.03〜10mg/cm2の範囲が電池出力と経済性の観点から適している。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の質量に対して、1〜10倍が適している。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの質量に対して、0.1〜0.7倍が適している。
[3−4] 多孔質導電シート(電極基材)
電極基材、拡散層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの拡散が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにPTFE処理を施したものを使用することもできる。
[3−5] MEA(電極膜複合体)の作製
MEAの作製には、次の4つの方法が好ましい。
プロトン伝導体塗布法:活性金属担持カーボン、プトロン伝導材料、溶媒を基本要素とする触媒ペースト(インク)をプロトン伝導体の両側に直接塗布し、多孔質導電シートを(熱)圧着して5層構成のMEAを作製する。
多孔質導電シート塗布法:触媒ペーストを多孔質導電シート表面に塗布し、触媒層を形成させた後、プロトン伝導体と圧着し、5層構成のMEAを作製する。
Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層を形成させた後、プロトン伝導体に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクをプロトン伝導体、多孔質導電シートあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを当該膜に含浸させ、白金粒子を膜中で還元析出させて触媒層を形成させる。触媒層を形成させた後は、プロトン伝導体に触媒層のみを転写させ3層のMEAを形成させ、多孔質導電シートを圧着し、5層構成のMEAを作製する。
[3−6] 燃料および供給方法
固体高分子膜を用いる燃料電池の燃料として用いることのできるのは、アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64質量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CH3OH+H2O→CO2+6H++6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64質量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の質量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールがプロトン伝導体を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象、が顕著となり、出力が低下するため、用いるプロトン伝導体のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2O2+6H++6e→H2O)であり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
上記、アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層に供給する方法には、(1)ポンプ等の補機を用いて強制循環させる方法(アクティブ型)と、(2)補機を用いない方法(例えば、液体の場合には毛管現象や自然落下により、気体の場合には大気に触媒層を晒し供給するパッシブ型)の2通りがあり、アノードおよびカソードに対し、これらを組み合わせることも可能である。前者は、カソードで生成する水を循環させることにより燃料として高濃度のメタノールが使用可能、空気供給による高出力化が可能であるなどの利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。後者は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
[3−7] セルのスタッキング
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレータを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
[4]燃料電池のアプリケーション
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能である、充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例1−1 プロトン伝導体の作製
(1)プロトン伝導体(E−1−1)の作製
II−4(0.48g)をメタノール(1.5g)に溶解し、30%過酸化水素水(1.4g)を添加した。混合物を室温で24時間攪拌した後、NMRによりII−4の−SH基の消失と−SO3H基の生成を確認した。このようにして調製したゾル(SOL−1)は無色透明であり、冷暗所(5℃)で5日間安定であった。
I−1(0.08g)およびVII−5(0.59g)を溶解した2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(1.5ml)の溶液に、上記SOL−1およびキシレン(0.6ml)を添加し、50℃で5時間加熱攪拌した。当該混合物をポリイミド膜(ユーピレックス-75S、宇部興産(株)製)上に流延し、室温で24時間放置した後、固化した塗布物をポリイミド膜より剥離し、水洗した。乾燥後、厚さ130μmの膜を得た。
(2)プロトン伝導体(E−1−2)の作製
I−1(0.11g)、II−4(0.48g)およびVII−13(0.32g)をイソプロパノール(2ml)/キシレン(0.8ml)の混合溶媒に溶解し、30%過酸化水素水(1.5 g)を添加した。混合物を65℃5時間加熱した。当該混合物をポリイミド膜(ユーピレックス−75S、宇部興産(株)製)上に流延し、室温で69時間放置した後、固化した塗布物をポリイミド膜より剥離し、水洗、乾燥後に厚さ125μmの膜を得た。
(3) プロトン伝導体(E−1−3)の作製
I−1(0.11g)をI−9(0.08g)に代えた以外、(2)と同様の方法により厚さ130μmの膜を得た。
(4)プロトン伝導体(R−1−1)の作製(比較例)
I−1を除いた以外、(2)と同様の方法により厚さ128μmの膜を得た。
実施例2 メタノール水溶液に対する耐性
上記実施例1で得られたプロトン伝導体(E−1−1〜E−1−3)およびナフィオン117(デュポン社製)を、ぞれぞれ、直径13mmの円形に打ち抜いてサンプルとした。これらのサンプルを、それぞれ10質量%メタノール水溶液5mlに、48時間浸漬した。本発明のプロトン伝導体(E−1−1〜E−1−3)は、ほとんど膨潤が見られず、浸漬前と形状および強度の変化が見られなかった。それに対してナフィオン117では、約70質量%の膨潤が見られ、膜の形状変化も観察された。
以上から本発明のプロトン伝導体は、直接メタノール型燃料電池に使用する燃料のメタノール水溶液に対して、十分な耐性を有することがわかった。
実施例3 メタノール透過性の測定
得られたプロトン伝導体(E−1−1〜E−1−3)、およびナフィオン117(デュポン社製)を、 図3に示すように、直径13mmの円形に打ち抜いたサンプル(プロトン伝導体31)を、円形の穴(直径5mm)が空いたテフロンテープで補強した(32)。当該補強膜を図3で示すステンレス製のセルに備え付け、上部にメタノール水溶液を注入し(33)、下部ガス導入口より一定流速で水素ガスを流し(34)、膜を透過するメタノール量を下部検出口(35)に接続したガスクロマトグラフィーにより測定した。その結果を表1に示す。ここで、メタノール濃度の各数値は、ナフィオン117の検出量を1としたときの相対値を示す。尚、図3において、36は、ゴムパッキンを示す。
ここで、メタノール濃度の各数値は、ナフィオン117の検出量を1としたときの相対値を示す。
Figure 0004149950
表1より、本発明のプロトン伝導体のメタノール透過性は、ナフィオン117の1/5以下であることがわかる。メソゲン基を含む有機分子鎖を含むプロトン伝導体においては、そのメタノール透過性は、ナフィオン117の1/7以下であることがわかる。
実施例4 イオン伝導の測定
1で得られた本発明のプロトン伝導体(E−1−1〜E−1−3)、および比較用のプロトン伝導体(R−1−1)、およびナフィオン117(デュポン社製)を直径13mmの円形に打ち抜き、さらに、これを2枚のステンレス板に挟み、交流インピーダンス法により、25℃、相対湿度95%におけるイオン伝導度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004149950
本発明のプロトン伝導体は、ナフィオン117には及ばないものの、比較例(R−1−1)のハイブリッド膜に比べ、高いイオン伝導度を示すことがわかる。
実施例5 燃料電池の作製
(1)触媒層の作製
(1−1) 触媒層Aの作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50質量%が担持)2gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15gを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子サイズは約500nmであった。得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き、触媒層Aを作製した。
(1−2)触媒層Bの作製
水0.3mlで湿らせた白金/ルテニウム担持カーボン(ケッチェンブラックに白金20質量%、ルテニウム20質量%が担持)300mgに、実施例1の(1)で調製したSOL−1(0.8ml)を添加した後、超音波分散器で10分間分散させた。得られたペーストをカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜き触媒層Bを作製した。
(1−3)触媒層Cの作製
上記(1−2)の白金/ルテニウム担持カーボンを(1−1)で用いた白金担持カーボンに変えた他は同様にして触媒層Cを作製した。
(2)MEAの作製
実施例1で作製したプロトン伝導体(E−1−1〜E−1−3)およびナフィオン117の両面に上記で得られた触媒層Aを塗布面がプロトン伝導体に接するように張り合わせ、80℃、3MPa、2分間で熱圧着し、順に、MEA−1−1〜MEA−1−3MEA−R1を作製した。
(3)燃料電池特性
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時カソード側開口部16は大気と接するようにした。アノード電極12とカソード電極13間に、ガルバノスタットで5mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。結果を表3に示す。
Figure 0004149950
(結果)
ナフィオン膜を用いたMEA−R1により作製した電池C−R1の初期電圧は高いものの、経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、アノード電極側に供給された燃料のメタノールが、ナフィオン膜を通過してカソード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対して、本発明のプロトン伝導体を用いたMEA−1−1〜MEA−1−3により作製した電池C−1−1〜C−1−3は電圧が安定しており、より高い電圧を維持できることがわかった。
本発明のプロトン伝導体を用いた触媒電極接合膜の構成を示す概略断面図である。 本発明の燃料電池の構造の一例を示す概略断面図である。 本発明のメタノール透過性の測定に採用するステンレス製のセルの概略図を示す。
符号の説明
10・・・燃料電池電極膜複合体(MEA)
11・・・プロトン伝導体
12・・・アノード電極
12a・・・アノード極多孔質導電シート
12b・・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・・カソード極多孔質導電シート
13b・・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ
31 ・ ・ ・ プロトン伝導体
32 ・ ・ ・ テフロンテープ補強材
33 ・ ・ ・ メタノール水溶液注入部分
34 ・ ・ ・ キャリアガス導入口
35 ・ ・ ・ 検出口(ガスクロマトグラフィーに接続)
36 ・ ・ ・ ゴムパッキン

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)で表される化合物と、下記一般式(II)および(III)で表される化合物の少なくとも1種とをゾル−ゲル反応してなる化合物。
    Figure 0004149950
    (一般式(I)中、R1およびR2は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。R31、R32、R33 および34 は、水素原子を表し、R 4 は、水素原子またはアルキル基を表し、R5は、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R6は、水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m1は1〜3の整数を表し、n11およびn12は、それぞれ、0〜4の整数を表す。L1は単結合、あるいは、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−CO−もしくは−NR'−(R'は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)またはこれらの基を組み合わせた2価の連結基を表す。s1およびt1は、1である。
    Figure 0004149950
    (一般式(II)および(III)中、A1およびA2はそれぞれ脂肪族基および/または芳香族基を含む連結基を表し、R7およびR9はそれぞれアルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R8およびR10はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、m2およびm3はそれぞれ1〜3の整数を表し、n2およびn3はを表す。)
  2. 前記ゾルゲル反応において、下記一般式(IV)および(V)で表される化合物の少なくとも1種をさらに添加することにより得られうる請求項1に記載の化合物。
    Figure 0004149950
    (一般式(IV)および(V)中、A 3 およびA 4 は、それぞれ、下記一般式(VI)で表される基であり、R 11 およびR 13 は、それぞれ、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表し、R 12 およびR 14 は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基またはシリル基を表し、Y 1 はアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エチニル基またはアルキレンオキシド基を表し、m4およびm5はそれぞれ1〜3の整数を表し、n41およびn5は1であり、n42は1である。)
    一般式(VI)
    Figure 0004149950
    (一般式(VI)中、Q 1 は、A 3 の場合、単結合または2価の基を表し、A 4 の場合、1価の基を表し、Q 2 は、単結合または2価の連結基を表す。Q 1 とQ 2 のうち、Q 2 がSiと結合する。Y 11 は2価の4〜7員環の置換基、またはそれらから構成される縮合環の置換基を表し、m31は1以上の整数である。)
  3. 請求項1または2に記載の化合物を含有する固体電解質。
  4. 請求項1または2に記載の化合物を含有するプロトン伝導体。
  5. 少なくとも2つの電極からなり、該2つの電極の間に請求項に記載のプロトン伝導体が含まれている電極膜接合体。
  6. 請求項に記載の電極膜接合体を有する燃料電池。
JP2004086053A 2004-03-24 2004-03-24 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池 Expired - Fee Related JP4149950B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004086053A JP4149950B2 (ja) 2004-03-24 2004-03-24 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004086053A JP4149950B2 (ja) 2004-03-24 2004-03-24 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005272556A JP2005272556A (ja) 2005-10-06
JP4149950B2 true JP4149950B2 (ja) 2008-09-17

Family

ID=35172576

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004086053A Expired - Fee Related JP4149950B2 (ja) 2004-03-24 2004-03-24 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4149950B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4597835B2 (ja) * 2005-10-18 2010-12-15 三星エスディアイ株式会社 燃料電池用のプロトン伝導性電解質膜及びその製造方法並びに燃料電池
CN113501838A (zh) * 2021-07-09 2021-10-15 大连海关技术中心 一种有机硅磺酸及其盐类的制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005272556A (ja) 2005-10-06

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4317005B2 (ja) シリカゲル組成物、プロトン交換膜電極膜複合体、及び燃料電池
US10411283B2 (en) Polymer electrolyte membrane
JP2006236837A (ja) 固体電解質およびその製造方法、電極膜接合体、ならびに、燃料電池
US20060178500A1 (en) Solid electrolyte, method for producing solid electrolyte, membrane and electrode assembly, and fuel cell
JP2004288582A (ja) 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導膜及び燃料電池
JP2006310159A (ja) 固体電解質、電極膜接合体、燃料電池、および固体電解質の製造方法。
JP2007220370A (ja) 触媒材料、燃料電池用触媒膜、電極膜接合体および燃料電池
JP2006244994A (ja) 固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池
JP4149950B2 (ja) 化合物、並びにこれを用いた、固体電解質、プロトン伝導体、電極膜接合体および燃料電池
Inoue et al. Performance of H2/O2 fuel cell using membrane electrolyte of phosphotungstic acid-modified 3-glycidoxypropyl-trimethoxysilanes
JP4316973B2 (ja) 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池
EP3228613B1 (en) Halogenated compound, polymer comprising same, and polymer electrolyte membrane comprising same
US20060008691A1 (en) Compound, and solid electrolyte, proton conductor, membrane electrode assembly and fuel cell comprising the compound
JP2005146264A (ja) 化合物、イオン交換体、プロトン伝導体および燃料電池
JP2006199827A (ja) プロトン伝導体、プロトン伝導体の製造方法、電極膜接合体および燃料電池
JP2006216261A (ja) 固体電解質、固体電解質の製造方法、電極膜接合体および燃料電池
JP4094924B2 (ja) 有機−無機ハイブリッド型プロトン伝導材料及び燃料電池
JP2005248152A (ja) 化合物、ならびにこれを用いた固体電解質、電極膜接合体および燃料電池
Atiqur Rahman et al. High Proton Conductivity of 3D Graphene Oxide Intercalated with Aromatic Sulfonic Acids
JP4043919B2 (ja) プロトン伝導材料及び燃料電池
JP2006310158A (ja) 固体電解質、電極膜接合体、燃料電池および固体電解質の製造方法。
JP2005272780A (ja) 高分子電解質およびそれを用いた電極膜接合体、燃料電池、並びに高分子電解質の製造方法
Itoh et al. Synthesis and characteristics of hyperbranched polymer with phosphonic acid groups for high-temperature fuel cells
JP2005129290A (ja) イオン交換体の製造方法、イオン交換体、電極膜複合体、および燃料電池
JP2006104232A (ja) 固体電解質、固体電解質の製造方法および電極膜接合体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060419

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20061213

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20071112

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20071120

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071228

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080624

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080626

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110704

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110704

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120704

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120704

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130704

Year of fee payment: 5

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees