JP4043919B2 - プロトン伝導材料及び燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な架橋重合体及びそれを用いた燃料電池に関し、特にエネルギーデバイスや電気化学センサーに利用されるプロトン伝導材料及びそれを用いた燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子型燃料電池は地球環境にやさしいクリーンな発電装置として、家庭用電源、車載用電源等への実用化が期待されている。これらの固体高分子型燃料電池では水素と酸素を燃料として使用するものが主流となっている。また、最近では燃料として水素の代わりにメタノールを用いる直接メタノール型燃料電池(DMFC)が提案され、リチウム2次電池に代わる携帯機器用高容量電池として期待され、活発に研究されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池用電解質膜(プロトン伝導膜)の重要な機能は、正極触媒電極に供給される燃料(水素、メタノール水溶液等)と負極に供給される酸化剤ガス(酸素等)を物理的に絶縁すること、正極と負極を電気的に絶縁すること、及び正極上で生じるプロトンを負極に伝達することである。これらの機能を満たすためには、ある程度の機械的強度と高いプロトン伝導性が要求される。
【0004】
固体高分子型燃料電池電解質膜には、一般的にナフィオン(NAFION:登録商標)に代表されるスルホン酸基含有パーフルオロカーボン重合体が用いられている。これらの電解質膜はイオン伝導度に優れ、機械的強度も比較的高いものであるが、以下のような改善すべき点がある。すなわち、これらの電解質膜では膜に含まれる水とスルホン酸基により生成したクラスターチャンネルの中で水を介してプロトンが伝導するため、イオン伝導度が電池使用環境の湿度による膜含水率に大きく依存する。固体高分子燃料電池は、COによる触媒電極の被毒低減と触媒電極の高活性化の観点から、100〜150℃の温度領域で作動させるのが好ましい。しかし、このような中温度領域では電解質膜の含水率の低下とともにイオン伝導度が低下するため、期待した電池特性が得られないことが問題となっている。また、電解質膜の軟化点が120℃付近にあり、この温度域で作動させた場合には電解質膜の機械的強度も問題となる。一方、これらの電解質膜をDMFCに用いた場合には以下のような問題が生じる。すなわち、本質的に含水し易いこれらの膜は、燃料のメタノールに対するバリヤ性が低いため、正極に供給したメタノールが電解質膜を透過し負極に到達してしまう。これが原因となり電池出力が低下する、いわゆるメタノールクロスオーバー現象が大きな問題となっており、DMFC実用化のための解決すべき重要な課題の一つとなっている。
【0005】
このような状況下、ナフィオンに代わるプロトン伝導材料を開発する機運が高まり、幾つかの有望な電解質材料が提案されている。例えば、無機プロトン伝導材料としては、特許文献1〜4、非特許文献1〜2等にプロトン伝導性ガラスが開示されている。これらは、テトラアルコキシシランを酸の存在下、ゾル−ゲル法により重合して得られるものであり、高温域での湿度依存性が小さいことが知られている。しかし、柔軟性が無く、極めて脆い材料であるため、大きな面積の膜を作製するのが困難であり、燃料電池用電解質としては適当でない。
【0006】
有機材料としては、側鎖末端にリン酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類を重合して得られるリン酸基含有共重合体(例えば、特許文献5参照。)、ポリアニリンを含有するプロトン伝導性ポリマー(例えば、特許文献6参照。)、スルホン酸基を有する脂肪族炭化水素重合体多孔質膜の空孔にプロトン酸を含有する多孔質膜(例えば、特許文献7参照。)、リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を側鎖に有するポリマーを多孔質膜の空孔内に担持するプロトン伝導性膜(例えば、特許文献8参照。)等が提案されている。しかしながら、DMFC用途に重要な特性であるメタノール透過性に関しては十分な記載がない。
【0007】
【特許文献1】
特開2000-272932号公報
【特許文献2】
特開2000-256007号公報
【特許文献3】
特開2000-357524号公報
【特許文献4】
特開2001-93543号公報
【特許文献5】
特開2001-114834号公報
【特許文献6】
特開2001-160407号公報
【特許文献7】
特開2001-294706号公報
【特許文献8】
特開2002-83514号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリー B(Journal of Physical Chemistry B)」, 1999年, 第103巻, p.9468
【非特許文献2】
「フィジカル・レビュー B(Physical Review B)」, 1997年, 第55巻, p.12108
【非特許文献3】
第4版実験化学講座, 丸善出版株式会社, 第22巻, p.371-392
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、DMFC用として好適なメタノール透過性の低いプロトン伝導材料、及びそれを用いた燃料電池を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、主鎖にリン酸を含む高分子化合物を用いることにより、プロトン伝導性が高く、メタノール透過性が低い燃料電池用のプロトン伝導膜が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明のプロトン伝導材料は、下記一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物を含むことを特徴とする。
【化2】
(一般式(1)中、L1は連結基を表し、nは5〜1000の整数を表す。)
【0011】
前記連結基は炭素数3以上のアルキレン基又はアリーレン基を含むのが好ましく、メソゲンを含む原子団であるのがさらに好ましい。かかるプロトン伝導材料を燃料電池のプロトン伝導膜として用いることにより高いプロトン伝導性と低いメタノール透過性を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
[1] プロトン伝導材料
本発明のプロトン伝導材料は、下記一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物を含む。
【化3】
【0013】
一般式(1)中、連結基L1はアルキレン基又はアリーレン基を含むのが好ましい。アルキレン基又はアリーレン基は連結基L2によってさらに連結されていても良い。この場合、L1は好ましくは-(R1-L2)m-R1-で表される構造を有する(R1はアルキレン基又はアリーレン基を表す。)。
【0014】
R1で表されるアルキレン基は炭素数3〜40のアルキレン基が好ましく、炭素数3〜10のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基は、直鎖でも分岐があってもよく、さらに置換基を有していてもよい。アルキレン基の好ましい例としては、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ウンデシレン基等が挙げられ、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基及びデシレン基がより好ましい。
【0015】
R1で表されるアリーレン基は炭素数6〜40のアリーレン基が好ましく、炭素数6〜20のアリーレン基がより好ましい。アリーレン基はさらに置換基を有していてもよい。アリーレン基は、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、キシリレン基等が好ましく、以下の基がより好ましい。
【0016】
【化4】
【0017】
L2で表される連結基は、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-、-N(O)=N-、-COO-、-COS-、-CONH-、-COCH2-、-CH2CH2-、-OCH2-、-CH2NH-、-CH2-、-CO-、-O-、-S-、-NH-、-(CH2)1〜3-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-CO-、-(C≡C)1〜3-、これらの組合せ等が好ましく、-CH2-、-CO-、-O-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=N-、これらの組合せ等がより好ましい。これらの連結基の水素原子は置換基で置換されていてもよい。mは0〜20の整数が好ましく、0〜10の整数がより好ましい。
【0018】
L1で表される連結基はメソゲンを含むのがより好ましい。メソゲンの好ましい例としては、Dietrich Demus 及び Horst Zaschkeによる 「Flussige Kristalle in Tabellen II」, 1984年, p.7-18に記載されているものが挙げられる。この場合、L1は-R2-L2-R3-で表される構造を有するのがさらに好ましい。R2及びR3はアルキレン基又はアリーレン基を表し、好ましい具体例は上記R1におけるアルキレン基又はアリーレン基の場合と同様である。R2及びR3は同じでも異なっていても良いが、少なくとも1つがアリーレン基であるのが好ましい。L2の好ましい具体例は上記の場合と同様である。
【0019】
nは5〜1000の整数を表し、10〜100の整数が好ましい。一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物の分子量は、重合条件により任意であってよいが、数平均分子量が500〜500,000が好ましく、1000〜50,000がより好ましい。
【0020】
以下に一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
【化7】
【0024】
[2] プロトン伝導膜材料の合成法
本発明のプロトン伝導膜材料は、主鎖の構築にリン酸ハロゲン化物(又はリン酸と縮合剤とによる反応物)と、多価アルコールとの反応を利用して合成できる。リン酸ハロゲン化物としてはオキシ塩化リン、メチルホスホロジクロリデート等が好ましい。リン酸と共に使用する縮合剤としては非特許文献3に記載の縮合剤が好ましい。
【0025】
反応には必要に応じて塩基を使用するのが好ましい。塩基としてはトリエチルアミン、トリプロビルアミン、N,N-ジメチルアニリン等のアミン類、ピリジン、ピコリン、N-メチルモルホリン、キノリン等の含窒素ヘテロ環類、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化カリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩基類等を用いるのが好ましい。
【0026】
反応に用いる溶媒は、アプロティックであり、リン酸ハロゲン化物、縮合剤、又はリン酸と縮合剤との反応物と反応を起こさない溶媒が好ましい。好ましい溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン、N-メチルピロリドン等の複素環化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン極性溶媒、トルエン、キシレン等の非極性溶媒、メチレンクロリド、エチレンクロリド等の塩素系溶媒等が挙げられる。中でも、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の非プロトン極性溶媒等が特に好ましい。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。全溶媒量は、前駆体化合物1gに対し好ましくは0.1〜100 g、より好ましくは1〜10 gの範囲で任意に選択できる。反応温度で原料が完全に溶解する溶媒種及び量が好ましく、溶媒は使用前に乾燥しても良い。
【0027】
反応温度は反応速度に関連し、原料の反応性に応じて選択することができる。好ましくは−20〜150℃、より好ましくは−10〜60℃、さらに好ましくは0〜60℃である。
【0028】
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて添加剤を加えても良い。例えば、膜の強度を上げるため、架橋剤として機能する多価アルコール、多価フェノール等を使用しても良い。多価アルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等が挙げられ、多価フェノールとしてはトリヒドロキシベンゼン類、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0029】
添加剤を併用する場合、添加剤の量は一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物に対して、1〜300質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
【0030】
本発明のプロトン伝導材料を添加物として使用することもできる。添加される材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、アクリル系ポリマー、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフォスファート等が挙げられる。この場合、本発明のプロトン伝導材料は1〜70質量%の範囲で用いるのが好ましく、20〜50質量%の範囲で用いるのが更に好ましい。
【0031】
[3] プロトン伝導材料の製膜法
本発明のプロトン伝導材料は、適当な溶媒に溶解し、支持体等に塗布して製膜するか、あるいはプロトン伝導膜材料を加熱し、軟らかくなった状態でスリットから押し出すことにより製膜することができる。プロトン伝導膜材料を溶媒に溶解して塗布する場合、溶媒としては上記の反応に用いることができる溶媒に加え、アルコール類、水、カルボン酸類等を使用できる。アルコール類としてはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メトキシプロパノール等が挙げられ、カルボン酸類としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶媒量はプロトン伝導膜材料1gに対し、好ましくは0.1〜100 g、より好ましくは1〜10 gの範囲で任意に選択できる。
【0032】
材料の膜特性を向上させるため、必要に応じて添加剤を加えても良い。例えば、膜の強度を高めるために固体添加物を加えても良いし、膜の強度又は膜の柔軟性を高めるためにポリマーを加えても良い。固体添加物としてはシリカゲル微粉末、アルミナ微粉末、タングストリン酸、シリコタングステン酸等が挙げられ、ポリマーとしてはポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。
【0033】
添加剤を併用する場合、添加剤の量は一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物に対して、1〜300質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。
【0034】
得られた塗液を支持体上に塗布し、溶媒を蒸発させることによりプロトン伝導膜を得ることができる。支持体は特に限定されないが、好ましい例としては、ガラス基板、金属基板、高分子フイルム、反射板等が挙げられる。高分子フイルムとしては、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系高分子フイルム、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のエステル系高分子フイルム、PTFE(ポリトリフルオロエチレン)等のフッ素系高分子フイルム等が挙げられる。塗布方式としては、公知の方法、例えばカーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法等を採用することができる。
【0035】
細孔を有する基材上に塗液を塗布するか、基材を塗液に浸漬することにより、細孔内にプロトン伝導材料を満たした膜を形成することも可能である。細孔を有する基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミド膜等が挙げられる。
【0036】
支持体より剥離して得られるプロトン伝導膜の厚さは、10〜500μmが好ましく、25〜100μmが特に好ましい。
【0037】
プロトン伝導材料は熱履歴によってその性能が変化することがある。このため、得られたプロトン伝導膜を適宜、加熱処理して用いても良い。
【0038】
[4] 燃料電池
本発明のプロトン伝導膜を用いた燃料電池について説明する。図1は燃料電池で使用する触媒電極接合体(以下「MEA」と呼ぶ)を示す。MEA10はプロトン伝導膜11と、それを挟んで対向するカソード側電極12及びアノード側電極13を有する。
【0039】
アノード側電極12とカソード側電極13は、多孔質導電材料(例えばカーボンペーパー)12a、13aと触媒層12b、13bからなる。触媒層は、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子(例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等)をプロトン伝導材料(例えばナフィオン等)に分散させた分散物からなる。触媒層12b、13bをプロトン伝導膜11に密着させるために、多孔質導電材料12a、13aに触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11にホットプレス法(好ましくは120〜130℃、2〜100 kg/cm2)で圧着するか、適当な支持体に触媒層12b、13bを塗設したものをプロトン伝導膜11に転写しながら圧着した後、多孔質導電材料12a、13aで挟み込む方法を一般に用いる。
【0040】
図2は燃料電池単セルの一例を示す。燃料電池はMEA10と、MEA10を挟持する一対のセパレータ21、22と、セパレータ21、22に取り付けられたステンレスネットからなる集電体17及びパッキン14とを有する。アノード極側のセパレータ21にはアノード極側開口部15が設けられ、カソード極側のセパレータ22にはカソード極側開口部16が設けられている。アノード極側開口部15からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料又はアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部16からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
【0041】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0042】
合成例1
一般式(1)で表される構造を有する高分子化合物A-4、A-5、A-11及びA-23を以下の通り合成した。
【0043】
(1) A-4の合成
ピリジン25mlにメチルホスホロジクロリデート7.6gを室温でゆっくり滴下した。白色結晶が析出し、そのまま室温で0.5時間攪拌した。次に1,6-ヘキサンジオール6.0 gを反応液に滴下した。反応液は透明なゲル状となった。そのまま室温で4時間放置し、水100 mlを加えた後、反応液のpHがほぼ1になるまで塩酸を加えた。生成した沈殿の上澄み液をデカンテーションで除いた。残渣をメタノールに溶解し、新たな沈殿が生じなくなるまで水を加えて沈殿を生成させた。得られた沈殿を濾過、水洗、乾燥し、これにトルエン100 mlを加え、加熱還流下で共沸により脱水した。水分の蒸発が終了した後トルエンを減圧下で留去し、4.8 gの化合物A-4(無色ガラス状固体)を得た。1H-NMRにより測定した重合度は約14であった。
【0044】
(2) A-5の合成
1,6-ヘキサンジオール6.0gの代わりに1,8-オクタンジオール7.4gを使用した以外、(1)とほぼ同様にして5.8 gの化合物A-5(無色ガラス状固体)を得た。1H-NMRより測定した重合度は約16であった。
【0045】
(3) A-11の合成
1,6-ヘキサンジオール6.0 gのかわりに4,4'-ジヒドロキシビフェニル9.5 gを最小量のアセトニトリルに溶解した溶液を使用し、メタノールの代わりにN,N-ジメチルホルムアミドを用いた以外、(1)とほぼ同様にして8.7gの化合物A-11(白色固体)を得た。1H-NMRより測定した重合度は約20であった。
【0046】
(4) A-23の合成
ピリジン20mlにメチルホスホロジクロリデート5.0gを室温でゆっくり滴下した。白色結晶が析出し、そのまま室温で0.5時間攪拌した。次に4-ヒドロキシ-4'-(8-ヒドロキシオクチルオキシ)ビフェニル10.0 gをN,N'-ジメチルホルムアミド20mlに加熱溶解したものを反応液に滴下した。そのまま室温で4時間放置し、水約100 mlを加えた後、反応液のpHがほぼ1になるまで塩酸を加えた。生成した沈殿を濾過し、得られた固体を希塩酸50ml、次いで少量の水で洗浄し、減圧下で乾燥した。これにトルエン100 mlを加え、加熱還流下で共沸により脱水した。水分の蒸発が終了した後トルエンを減圧下で留去し、8.2 gの化合物A-23(微黄色固体)を得た。1H-NMRより測定した重合度は約16であった。
【0047】
実施例1
化合物A-4 400 mgにN,N-ジメチルホルムアミド5 mlを加え、加熱溶解した。この溶液をテフロンシャーレ上に流し、真空下、50℃で1時間加熱し、さらに100℃で1時間加熱した。次いでテフロンシャーレから剥がし、厚さ約0.1 mmのプロトン伝導膜(白色平板状固体)B-1を得た。化合物A-4の代わりに化合物A-5及びA-11を使用し、同様にプロトン伝導膜(平板状固体)B-2及びB-3を得た。化合物A-4の代わりに化合物A-23を使用し、同様にして得られた平板状固体にさらに150℃3分の加熱処理を行ってプロトン伝導膜B-4を得た。
【0048】
実施例2
実施例1で得られたプロトン伝導膜B-1〜B-4とナフィオン117(デュポン社製)を直径13 mmの円形に打ち抜き、2枚のステンレス板で挟み、交流インピーダンス法により25℃、相対湿度55%の時のイオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(結果)
本発明のプロトン伝導材料からなるプロトン伝導膜B-1〜B-4は、ナフィオン117には及ばないものの、比較的高いイオン伝導度を示すことがわかる。
【0051】
比較例1
プロトン伝導膜の作製
窒素気流下、メチルエチルケトン20 mlを加熱還流した。これにユニケミカル(株)製PhosmerM 5g及びAIBN100 mgをメチルエチルケトン10 gに溶かした溶液を滴下した。滴下終了後、1晩加熱攪拌し、重合体溶液を得た。このものを1,2-ジクロロエタン中に注加し、デカンテーションにより上澄み液を除去した。得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、約10倍量の1,2-ジクロロエタン中に注加し、重合体を得た。この重合体を実施例1と同様に処理し、プロトン伝導膜R-1 (シート状固体)を得た。この膜は吸湿し易く、経時で表面が粘調になってしまうため燃料電池用の膜としては不適当なものであった。
【0052】
【化8】
【0053】
実施例3
燃料電池の特性
(1) 触媒膜の作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50wt%を担持)1.8 gとナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)15 gを混合し、超音波分散器により白金担持カーボンを30分間分散させた。得られた分散物の平均粒子径は約500 nmであった。このようにして得られた分散物をカーボンペーパー(厚さ350μm)上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜いた。
【0054】
(2) MEAの作製
実施例1で作製したプロトン伝導膜(B-1,B-2,B-3,B-4)、及びナフィオン117の両面に、(1)で得られた触媒膜を、塗布面がプロトン伝導膜に接するように張り合わせ、50℃、50 kg/cm2でホットプレスし、MEA-1〜MEA-5を作製した。
【0055】
(3) 燃料電池特性
(2)で得られたMEAを図2に示す燃料電池にセットし、アノード側の開口部15に50質量%のメタノール水溶液を注入した。この時カソード側開口部16は大気と接するようにした。アノード電極12とカソード電極13の間に、ガルバノスタットで4.5 mA/cm2の定電流を通電し、この時のセル電圧を測定した。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
(結果)
ナフィオン膜を用いたMEA-5により作製した電池C-5の初期電圧は高いものの、経時的に電圧が低下した。この経時的な電圧低下は、カソード電極側に供給された燃料のメタノールがナフィオン膜を通過してアノード電極側に漏れる、いわゆるメタノールクロスオーバー現象による。それに対し、本発明のプロトン伝導材料を用いたMEA-1〜4により作製した電池C-1〜4は電圧が安定していた。
【0058】
【発明の効果】
上記の通り、本発明のプロトン伝導材料は、室温下でのイオン伝導度が比較的高く、メタノールクロスオーバーを低減することができる。そのため、直接メタノール型燃料電池のプロトン伝導膜に用いた場合には、従来のプロトン伝導膜より高い出力を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプロトン伝導材料を用いた触媒電極接合体(MEA)を示す概略断面図である。
【図2】 本発明の燃料電池の構造の一例を示す分解断面図である。
【符号の説明】
10・・・触媒電極接合体(MEA)
11・・・プロトン伝導膜
12・・・アノード電極
12a・・・アノード極多孔質導電シート
12b・・・アノード極触媒層
13・・・カソード電極
13a・・・カソード極多孔質導電シート
13b・・・カソード極触媒層
14・・・パッキン
15・・・アノード極側開口部
16・・・カソード極側開口部
17・・・集電体
21,22・・・セパレータ
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