JP2006243416A - 回折光学素子の製造方法、回折光学素子、光ピックアップ装置及び光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子を得る。
【解決手段】光学的異方性を示す領域と光学的等方性を示す領域の周期構造を有する回折光学素子を多光束干渉光を用いて製造する際に、非重合性液晶と重合性モノマーと光重合開始剤とを混合し、光学的異方性を示す領域の異常光屈折率と光学的等方性を示す領域の屈折率との差が略最大値となる温度で混合物に多光束干渉光を照射する。これにより、高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、回折効率が高い回折光学素子を得ることができる。
【選択図】図5
【解決手段】光学的異方性を示す領域と光学的等方性を示す領域の周期構造を有する回折光学素子を多光束干渉光を用いて製造する際に、非重合性液晶と重合性モノマーと光重合開始剤とを混合し、光学的異方性を示す領域の異常光屈折率と光学的等方性を示す領域の屈折率との差が略最大値となる温度で混合物に多光束干渉光を照射する。これにより、高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、回折効率が高い回折光学素子を得ることができる。
【選択図】図5
Description
本発明は、回折光学素子の製造方法、回折光学素子、光ピックアップ装置及び光ディスク装置に係り、さらに詳しくは、光学的異方性を示す領域と光学的等方性を示す領域の周期構造を有する回折光学素子の製造方法、該製造方法で製造された回折光学素子、該回折光学素子を用いた光ピックアップ装置、及び該光ピックアップ装置を備えた光ディスク装置に関する。
光ディスク装置では、光記録媒体として、例えばCD(compact disc)、DVD(digital versatile disc)などの光ディスクが用いられ、該光ディスクのスパイラル状又は同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光の微小スポットを形成することにより情報の記録を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光ディスク装置には、光記録媒体の記録面にレーザ光を照射するとともに、記録面からの反射光を受光するために、光ピックアップ装置が設けられている。
通常、光ピックアップ装置は、対物レンズを含み、光源から出射される光束を光記録媒体の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された受光素子などを備えている。この受光素子からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズの位置制御などに必要な情報(サーボ制御情報)を含む信号が出力される。
近年、パーソナルコンピュータ(パソコン)に代表される情報機器の小型化、低価格化が進み、特にモバイル型のパソコンが急速に普及しつつある。そして、それに伴って、パソコンの周辺機器の一つである、光ディスク装置の薄型化及び低価格化への要求が高まっている。
そこで、光ディスク装置の構成要素の一つである光ピックアップ装置の小型化(薄型化)、低コスト化を促進するために、記録面で反射された戻り光束を受光位置に導く光学素子の1つにホログラム素子などの回折光学素子を用いることが提案された。また、回折光学素子の製造方法についても精力的に検討された(例えば、特許文献1〜特許文献5参照)。
光ピックアップ装置では、回折光学素子での回折角が大きくなると、回折光学素子と受光素子との間隔を小さくすることができるため、光ピックアップ装置の小型化が可能となる。回折光学素子での回折角を大きくするには、回折格子のピッチを短くする必要がある。
ところで、最近、光ディスクの記録密度を高くするため、光源から出射される光束の波長を更に短くすることが図られている。光源から出射される光束の波長が短くなると、受光素子の感度が低下するため、光利用効率を更に向上させることが必要である。
そこで、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子が必要とされる。
しかしながら、特許文献1〜特許文献5に開示されている方法では、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子を安価に製造するのは困難であった。
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子を製造することができる製造方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子を安価に提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得ることができる光ピックアップ装置を提供することにある。
また、本発明の第4の目的は、大型化及び高コスト化を招くことなく、光記録媒体への安定したアクセスを行うことができる光ディスク装置を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、光学的異方性を示す第1の領域と光学的等方性を示す第2の領域の周期構造を有する回折光学素子を多光束干渉光を用いて製造する製造方法であって、非重合性の液晶と重合性を有する高分子と光重合開始剤とを混合した混合物を作成する工程と;前記第1の領域の異常光屈折率と前記第2の領域の屈折率との差が略最大値となる露光温度に前記混合物を加熱する工程と;前記露光温度に加熱された前記混合物に多光束干渉光を照射する工程と;を含む回折光学素子の製造方法である。
これによれば、光学的異方性を示す第1の領域と光学的等方性を示す第2の領域の周期構造を有する回折光学素子を多光束干渉光を用いて製造する際に、非重合性の液晶と重合性を有する高分子と光重合開始剤とが混合され、第1の領域の異常光屈折率と第2の領域の屈折率との差が略最大値となる露光温度に加熱される。そして、露光温度に加熱された混合物に多光束干渉光が照射される。この場合には、周期構造のピッチを1μm程度とすることが容易であり、かつ高い回折効率を得るのに適切な露光温度を容易に決定することができるため、高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、回折効率が高い回折光学素子を製造することが可能となる。
この場合において、請求項2に記載の回折光学素子の製造方法の如く、前記露光温度は、前記混合物における液晶と高分子とが相分離を開始する相分離温度に基づいて決定された温度であることとすることができる。
この場合において、請求項3に記載の回折光学素子の製造方法の如く、前記露光温度は、予め取得された相分離温度と露光温度との関係を示す近似式に、前記混合物の相分離温度を代入して算出された温度であることとすることができる。
上記請求項1〜3に記載の各回折光学素子の製造方法において、請求項4に記載の回折光学素子の製造方法の如く、前記露光温度は、前記液晶の末端基の種類に応じた温度であることとすることができる。
上記請求項1〜4に記載の各回折光学素子の製造方法において、請求項5に記載の回折光学素子の製造方法の如く、前記液晶は、その末端がハロゲン基の2環あるいは多環の材料を主成分とする液晶であることとすることができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法によって製造された回折光学素子である。
これによれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法によって製造されているため、安価であり、かつピッチが短く、高い回折効率を有している。
請求項7に記載の発明は、光記録媒体に対する情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なうために用いられる光ピックアップ装置であって、光源と;前記光源から出射された光束を光記録媒体の記録面に集光する対物レンズと、前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束の光路上に配置され、前記戻り光束を回折する請求項6に記載の回折素子とを含む光学系と;前記回折素子からの回折光を受光する光検出器と;を備える光ピックアップ装置である。
これによれば、安価で、かつピッチが短く、高い回折効率を有している請求項6に記載の回折素子を有しているため、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得ることが可能となる。
請求項8に記載の発明は、光記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、請求項7に記載の光ピックアップ装置と;前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、前記情報の再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置である。
これによれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得ることができる請求項7に記載の光ピックアップ装置を備えているため、大型化及び高コスト化を招くことなく、光記録媒体への安定したアクセスを行うことが可能となる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置20の概略構成が示されている。
この図1に示される光ディスク装置20は、光ディスク15を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23をスレッジ方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、エンコーダ25、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40及びRAM41などを備えている。なお、図1における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。また、本実施形態では、一例としてDVD+RWの規格に準拠した光記録媒体が光ディスク15に用いられるものとする。
前記光ピックアップ装置23は、光ディスク15の記録面にレーザ光を集光するとともに、その記録面からの反射光を受光するための装置である。この光ピックアップ装置23は、一例として図2に示されるように、光源としての半導体レーザLD、回折光学素子としての偏光ホログラムHG、1/4波長板55、コリメートレンズ52、対物レンズ60、光検出器としての受光器PD、及び駆動系(図示省略)などを備えている。
半導体レーザLDは、波長が約660nmのレーザ光を出射する。なお、本実施形態では、半導体レーザLDから出射されるレーザ光の最大強度出射方向を+X方向とする。また、一例として半導体レーザLDから出射される光束はS偏光であるものとする。
偏光ホログラムHGは、半導体レーザLDの+X側に配置されている。この偏光ホログラムHGは、位相変調型のいわゆる厚い回折光学素子であり、一例として図3に示されるように、2枚のガラス基板105、液晶を主成分とする異方性領域101(第1の領域)、高分子を主成分とする等方性領域103(第2の領域)などから構成されている。異方性領域101及び等方性領域103は、各ガラス基板の間に挟まれ、周期構造を有している。本実施形態では、一例として周期配列方向がZ軸方向であるものとする。すなわち、φ=90度である。また、以下では、2枚のガラス基板105の間隔dを「膜厚d」ともいう。なお、ガラス基板に代えて、透明なプラスチック基板を用いても良い。
また、偏光ホログラムHGは、その回折効率が入射光束の偏光状態によって異なっている。ここでは、図4(A)に示されるようにS偏光に対しては高い透過率を有し、図4(B)に示されるようにP偏光に対しては高い回折効率を有している。すなわち、S偏光に対する異方性領域101の屈折率noは、等方性領域103の屈折率nにほぼ等しく、P偏光に対する異方性領域101の屈折率neは、等方性領域103の屈折率nと異なっている。
1/4波長板55は、偏光ホログラムHGの+X側に配置されている。この1/4波長板55は、入射した光束に1/4波長の光学的位相差を付与する。
コリメートレンズ52は、1/4波長板55の+X側に配置されている。このコリメートレンズ52は、1/4波長板55からの光束を略平行光とする。
対物レンズ60は、コリメートレンズ52の+X側に配置されている。この対物レンズ60は、コリメートレンズ52からの光束を光ディスク15の記録面に集光する。
受光器PDは、半導体レーザLDの近傍に配置され、偏光ホログラムHGで回折されたディスク15からの戻り光束を受光する。この受光器PDは、再生信号処理回路28にてRF信号、ウォブル信号及びサーボ信号などを検出するのに最適な信号(光電変換信号)を生成するための複数の受光素子(又は受光領域)を含んで構成されている。
前記駆動系(図示省略)は、対物レンズ60の光軸方向であるフォーカス方向に対物レンズ60を微少駆動するためのフォーカシングアクチュエータ、及びトラックの接線方向に直交する方向であるトラッキング方向に対物レンズ60を微少駆動するためのトラッキングアクチュエータなどから構成されている。
上記のように構成される光ピックアップ装置23の作用を簡単に説明する。
半導体レーザLDから出射された直線偏光(ここではS偏光)の光束は、偏光ホログラムHGに入射する。この光束の大部分は偏光ホログラムHGをそのまま透過し、1/4波長板55で円偏光とされ、コリメートレンズ52で略平行光となり、対物レンズ60を介して光ディスク15の記録面に微小スポットとして集光される。
光ディスク15からの反射光は、往路とは反対回りの円偏光となり、戻り光束として対物レンズ60で再び略平行光とされ、コリメートレンズ52で収束光となり、1/4波長板55で往路と直交した直線偏光(ここではP偏光)とされる。そして、この戻り光束は偏光ホログラムHGに入射し、偏光ホログラムHGで受光器PDの方向に回折される。受光器PDでは受光素子(又は受光領域)毎に光電変換され、各光電変換信号はそれぞれ再生信号処理回路28に出力される。
なお、1/4波長板55は、偏光ホログラムHGと対物レンズ60との間にあれば良い。
図1に戻り、前記再生信号処理回路28は、前記受光器PDの出力信号(複数の光電変換信号)に基づいて、従来と同様にして、サーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)、アドレス情報、同期信号、及びRF信号などを取得する。ここで得られたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力され、アドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25や駆動制御回路26などに出力される。また、再生信号処理回路28は、RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。
前記駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号に基づいて、トラッキング方向に関する対物レンズの位置ずれを補正するための前記トラッキングアクチュエータの駆動信号を生成する。また、駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのフォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズのフォーカスずれを補正するための前記フォーカシングアクチュエータの駆動信号を生成する。ここで生成された各アクチュエータの駆動信号は光ピックアップ装置23に出力される。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。さらに、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各モータの駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
前記バッファRAM34には、光ディスク15に記録するデータ(記録用データ)、及び光ディスク15から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されている記録用データをバッファマネージャ37を介して取り出し、データの変調及びエラー訂正コードの付加などを行ない、光ディスク15への書き込み信号を生成する。ここで生成された書き込み信号はレーザ制御回路24に出力される。
前記レーザ制御回路24は、前記半導体レーザLDの発光パワーを制御する。例えば記録の際には、前記書き込み信号、記録条件及び半導体レーザLDの発光特性などに基づいて、半導体レーザLDの駆動信号がレーザ制御回路24にて生成される。
前記インターフェース38は、上位装置90(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、記録パワーや記録ストラテジ情報を含む記録条件、及び半導体レーザLDの発光特性などが格納されている。
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って光ディスク装置20の全体を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
《偏光ホログラムHGの製造方法》
次に、偏光ホログラムHGの製造方法について説明する。
(1)厚さ0.7mmのガラス基板の片面に青色光に対する反射防止膜を形成する。反射防止膜を形成後、400nm〜450nmの光をガラス基板面に垂直な方向に対して±40度傾斜して照射したときの反射率は0.4%以下であった。
(2)ガラス基板の反射防止膜が形成されていない面の両端部に、ビーズが混入された接着剤を塗布する。ビーズは所定の膜厚を確保するために混入されている。なお、膜厚が確保できれば、他の手段を用いても良い。
(3)二枚のガラス基板を貼り合わせる。以下では、二枚のガラス基板が貼り合わされたものを「セル」ともいう。なお、セルの作成はクリーンルーム内にて行われる。
(4)非重合性の液晶、重合性を有するモノマー(あるいはプレポリマー)、及び光重合開始剤などを振動子とともに褐色瓶(20ml〜100ml)に入れる。振動子は褐色瓶の中を攪拌するためのものである。なお、更に熱重合禁止剤、可塑剤等を添加しても良い。
(5)褐色瓶をデジタルホットプレート上に乗せ、振動子を100rpm〜300rpmで回転させながら、等方相転移温度(Tniとする)まで加熱する。これにより、液晶、モノマー(あるいはプレポリマー)、及び光重合開始剤は分散する。
(6)ピペットチップを用いて褐色瓶中の混合物をセルのガラス基板間の隙間に塗布する。これにより、ガラス基板間の空隙は、毛細管現象により混合物に置き換わる。すなわち、セルに混合物が注入される。以下では便宜上、混合物が注入されたセルを「混合セル」ともいう。
(7)混合セルを加熱装置(ヤマキ製:サーミスタ、ペルチェ素子使用、φ20mmの開口部あり)に取り付け、予め液晶とモノマー(あるいはプレポリマー)の混合物が相分離を開始する温度(以下「相分離温度Tsp」という)に基づいて決定された露光温度に加熱する。
(8)加熱装置の温度コントローラの表示温度が一定になってから約1分経過後、二光束干渉露光系を用いて混合セルを露光する。この二光束干渉露光系は、一例として波長442nm、出力80mWのHe−Cdレーザを備えている。He−Cd レーザからの光束は2つの光束に分割され、そして拡大される。1つの光束は約10mW/cm2の平行光である。なお、2つの光束の交差角度は26度に設定されている。この波長と交差角度では2光束が交差する領域に約1μm周期の干渉縞が生成される(図5(A)参照)。また、露光量としては、0.5J/cm2から30J/cm2が好ましく、1J/cm2から15J/cm2がより好ましい。また、このとき、外気温度を25℃とした。また、露光中は塵と気流等の影響を防ぐため、混合セルの周囲をアクリル板で囲うことが好ましい。
(9)混合セルは露光されることにより、上記干渉縞の明部(図5(A)参照)に対応する部分でモノマー(あるいはプレポリマー)の光重合反応が始まる。この時、硬化収縮に伴って混合物内に密度差が生じ、隣接するモノマー(あるいはプレポリマー)が明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた液晶が暗部に向かって追い出される。このとき、液晶分子にはモノマーや重合により生成されたポリマー鎖との相互作用により液晶分子の長軸を液晶の移動方向に配向させようとする力が働く。すなわち、干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働く。
(10)モノマーの光重合反応が終了すると、図5(B)及び図5(C)に示されるように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と液晶層の周期構造が形成され、液晶層における配向ベクトルが干渉縞の間隔方向に向いた状態となる。ここでは、ポリマー層と液晶層の周期構造のピッチは、干渉縞の周期と同じ約1μmである。なお、図5(C)はガラス基板を通してみたときの図である。ここでは、露光時間は約1分とした。
(11)混合セルを冷却する。これによって、偏光ホログラムHGが得られる。すなわち、液晶層が異方性領域101であり、ポリマー層が等方性領域103である。なお、液晶層にはポリマーが若干含まれ、ポリマー層には液晶が若干含まれている。
次に、偏光ホログラムHGの製造方法について説明する。
(1)厚さ0.7mmのガラス基板の片面に青色光に対する反射防止膜を形成する。反射防止膜を形成後、400nm〜450nmの光をガラス基板面に垂直な方向に対して±40度傾斜して照射したときの反射率は0.4%以下であった。
(2)ガラス基板の反射防止膜が形成されていない面の両端部に、ビーズが混入された接着剤を塗布する。ビーズは所定の膜厚を確保するために混入されている。なお、膜厚が確保できれば、他の手段を用いても良い。
(3)二枚のガラス基板を貼り合わせる。以下では、二枚のガラス基板が貼り合わされたものを「セル」ともいう。なお、セルの作成はクリーンルーム内にて行われる。
(4)非重合性の液晶、重合性を有するモノマー(あるいはプレポリマー)、及び光重合開始剤などを振動子とともに褐色瓶(20ml〜100ml)に入れる。振動子は褐色瓶の中を攪拌するためのものである。なお、更に熱重合禁止剤、可塑剤等を添加しても良い。
(5)褐色瓶をデジタルホットプレート上に乗せ、振動子を100rpm〜300rpmで回転させながら、等方相転移温度(Tniとする)まで加熱する。これにより、液晶、モノマー(あるいはプレポリマー)、及び光重合開始剤は分散する。
(6)ピペットチップを用いて褐色瓶中の混合物をセルのガラス基板間の隙間に塗布する。これにより、ガラス基板間の空隙は、毛細管現象により混合物に置き換わる。すなわち、セルに混合物が注入される。以下では便宜上、混合物が注入されたセルを「混合セル」ともいう。
(7)混合セルを加熱装置(ヤマキ製:サーミスタ、ペルチェ素子使用、φ20mmの開口部あり)に取り付け、予め液晶とモノマー(あるいはプレポリマー)の混合物が相分離を開始する温度(以下「相分離温度Tsp」という)に基づいて決定された露光温度に加熱する。
(8)加熱装置の温度コントローラの表示温度が一定になってから約1分経過後、二光束干渉露光系を用いて混合セルを露光する。この二光束干渉露光系は、一例として波長442nm、出力80mWのHe−Cdレーザを備えている。He−Cd レーザからの光束は2つの光束に分割され、そして拡大される。1つの光束は約10mW/cm2の平行光である。なお、2つの光束の交差角度は26度に設定されている。この波長と交差角度では2光束が交差する領域に約1μm周期の干渉縞が生成される(図5(A)参照)。また、露光量としては、0.5J/cm2から30J/cm2が好ましく、1J/cm2から15J/cm2がより好ましい。また、このとき、外気温度を25℃とした。また、露光中は塵と気流等の影響を防ぐため、混合セルの周囲をアクリル板で囲うことが好ましい。
(9)混合セルは露光されることにより、上記干渉縞の明部(図5(A)参照)に対応する部分でモノマー(あるいはプレポリマー)の光重合反応が始まる。この時、硬化収縮に伴って混合物内に密度差が生じ、隣接するモノマー(あるいはプレポリマー)が明部に移動し更に重合が進行する。それと同時に明部に存在していた液晶が暗部に向かって追い出される。このとき、液晶分子にはモノマーや重合により生成されたポリマー鎖との相互作用により液晶分子の長軸を液晶の移動方向に配向させようとする力が働く。すなわち、干渉縞の間隔方向に液晶分子を配向させようとする力が働く。
(10)モノマーの光重合反応が終了すると、図5(B)及び図5(C)に示されるように、干渉縞の明暗のピッチに対応してポリマー層と液晶層の周期構造が形成され、液晶層における配向ベクトルが干渉縞の間隔方向に向いた状態となる。ここでは、ポリマー層と液晶層の周期構造のピッチは、干渉縞の周期と同じ約1μmである。なお、図5(C)はガラス基板を通してみたときの図である。ここでは、露光時間は約1分とした。
(11)混合セルを冷却する。これによって、偏光ホログラムHGが得られる。すなわち、液晶層が異方性領域101であり、ポリマー層が等方性領域103である。なお、液晶層にはポリマーが若干含まれ、ポリマー層には液晶が若干含まれている。
《非重合性の液晶》
前記非重合性の液晶としては、屈折率異方性を有する液晶であれば一般的なものを使用することができる。例えば、公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶を用いることができる。
前記非重合性の液晶としては、屈折率異方性を有する液晶であれば一般的なものを使用することができる。例えば、公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶を用いることができる。
《重合性を有するモノマー(あるいはプレポリマー)》
前記重合性を有するモノマーあるいはプレポリマーとしては、重合による硬化収縮の大きいものが好ましい。そこで、重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、あるいは光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物を用いることができる。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられ、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適である。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述した各酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
前記重合性を有するモノマーあるいはプレポリマーとしては、重合による硬化収縮の大きいものが好ましい。そこで、重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、あるいは光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物を用いることができる。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられ、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適である。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述した各酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。
《光重合開始剤》
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができる。例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α−アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを用いることができる。
光重合開始剤としては、公知の材料を用いることができる。例えばビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α−アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを用いることができる。
《露光温度の決定式》
次に、前記露光温度の決定式について説明する。ここでは、非重合性の液晶として、図6に示されるように、互いに異なる特性を有する8種類(A〜H)の液晶を用いた。
次に、前記露光温度の決定式について説明する。ここでは、非重合性の液晶として、図6に示されるように、互いに異なる特性を有する8種類(A〜H)の液晶を用いた。
1.相分離温度Tspの測定
(1)(a)A〜Hのうちの1つの液晶:25重量部、(b)フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600):75重量部、(c)ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A):10重量部、(d)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO):5重量部、の混合物を振動子とともに褐色瓶(20ml〜100ml)入れる。(b)〜(d)は、重合性を有するモノマー(あるいはプレポリマー)である。
(2)褐色瓶をデジタルホットプレート上に乗せ、振動子を100rpm〜300rpmで回転させながら、等方相転移温度Tniまで加熱する。
(3)混合セルを作成する。
(4)混合セルを温調ステージ(メトラー製)に乗せ、偏光微分顕微鏡で観察する。ここでは、検光子と偏光子をクロスニコルに設定し、セルの温度を約−0.2℃/minで低下させる。観察温度が高いときは、混合物は等方性であるため、観察像は一様に暗であるが、観察温度を下げていくと高分子と液晶とは相分離を開始し、いわゆる液晶ドロップレットが観察される。この液晶ドロップレットが観察され始める開始温度を求める。
(5)上記観察を2回行い、それらの観察で得られた開始温度の平均値を相分離温度Tspとする。ここでは、図7に示されるように、液晶AではTsp=24.4℃、液晶BではTsp=14.0℃、液晶CではTsp=49.0℃、液晶DではTsp=43.4℃、液晶EではTsp=69.1℃、液晶FではTsp=71.2℃、液晶GではTsp=67.5℃、液晶HではTsp=10.6℃であった。
(1)(a)A〜Hのうちの1つの液晶:25重量部、(b)フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学製AH600):75重量部、(c)ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学製DCP−A):10重量部、(d)2−ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学製HO):5重量部、の混合物を振動子とともに褐色瓶(20ml〜100ml)入れる。(b)〜(d)は、重合性を有するモノマー(あるいはプレポリマー)である。
(2)褐色瓶をデジタルホットプレート上に乗せ、振動子を100rpm〜300rpmで回転させながら、等方相転移温度Tniまで加熱する。
(3)混合セルを作成する。
(4)混合セルを温調ステージ(メトラー製)に乗せ、偏光微分顕微鏡で観察する。ここでは、検光子と偏光子をクロスニコルに設定し、セルの温度を約−0.2℃/minで低下させる。観察温度が高いときは、混合物は等方性であるため、観察像は一様に暗であるが、観察温度を下げていくと高分子と液晶とは相分離を開始し、いわゆる液晶ドロップレットが観察される。この液晶ドロップレットが観察され始める開始温度を求める。
(5)上記観察を2回行い、それらの観察で得られた開始温度の平均値を相分離温度Tspとする。ここでは、図7に示されるように、液晶AではTsp=24.4℃、液晶BではTsp=14.0℃、液晶CではTsp=49.0℃、液晶DではTsp=43.4℃、液晶EではTsp=69.1℃、液晶FではTsp=71.2℃、液晶GではTsp=67.5℃、液晶HではTsp=10.6℃であった。
2.テスト用回折光学素子の製造
(1)上記(a)〜(d)に、光重合開始剤として(e)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア819):1重量部、を加えた混合物を用いて、上記と同様にして混合セルを作成する。
(2)種々の露光温度で、上記と同様にして混合セルを露光し、テスト用回折光学素子を製造する。
(1)上記(a)〜(d)に、光重合開始剤として(e)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(チバガイギー製イルガキュア819):1重量部、を加えた混合物を用いて、上記と同様にして混合セルを作成する。
(2)種々の露光温度で、上記と同様にして混合セルを露光し、テスト用回折光学素子を製造する。
3.屈折率変調量ΔnHの取得
(1)入射光強度が約5mWになるようにNDフィルターを用いて調整された波長442nmの直線偏光のレーザ光をテスト用回折光学素子に照射する。
(2)回転ステージを用いて入射角を±20度の範囲で変更しつつ、入射光強度に対する+1次回折光強度を測定する。すなわち、回折効率の入射角依存性を実測する。
(3)入射角依存性の実測値と理論値(Kogelnikの結合波理論)とを比較し、光学的異方性を示す領域の異常光屈折率と光学的等方性を示す領域の屈折率との差である屈折率変調量ΔnHを求める。なお、屈折率変調量ΔnHが大きいほど回折光学素子の回折効率は大きい。
(1)入射光強度が約5mWになるようにNDフィルターを用いて調整された波長442nmの直線偏光のレーザ光をテスト用回折光学素子に照射する。
(2)回転ステージを用いて入射角を±20度の範囲で変更しつつ、入射光強度に対する+1次回折光強度を測定する。すなわち、回折効率の入射角依存性を実測する。
(3)入射角依存性の実測値と理論値(Kogelnikの結合波理論)とを比較し、光学的異方性を示す領域の異常光屈折率と光学的等方性を示す領域の屈折率との差である屈折率変調量ΔnHを求める。なお、屈折率変調量ΔnHが大きいほど回折光学素子の回折効率は大きい。
ここで得られた屈折率変調量ΔnHは、図8に示されるように、露光温度により変化し、最大値が存在していた。そこで、屈折率変調量ΔnHが最大となるときの露光温度(Toeとする)を求めると、図9に示されるように、液晶AではToe=65.0℃、液晶BではToe=70.0℃、液晶CではToe=100.0℃、液晶DではToe=90.0℃、液晶EではToe=95.0℃、液晶FではToe=95.0℃、液晶GではToe=95.0℃、液晶HではToe=60.0℃であった。この露光温度Toeが最適な露光温度である。
4.露光温度の決定式
露光温度Toeは、図10に示されるように、相分離温度Tspと相関関係があり、液晶の末端基がハロゲン系のときには、次の(1)式で示される近似式が得られた。また、液晶の末端基がシアノ系のときには、次の(2)式で示される近似式が得られた。すなわち、相分離温度Tspから適切な露光温度を決定することができる。
露光温度Toeは、図10に示されるように、相分離温度Tspと相関関係があり、液晶の末端基がハロゲン系のときには、次の(1)式で示される近似式が得られた。また、液晶の末端基がシアノ系のときには、次の(2)式で示される近似式が得られた。すなわち、相分離温度Tspから適切な露光温度を決定することができる。
Toe=0.62Tsp+51.96 ……(1)
Toe=0.80Tsp+58.33 ……(2)
Toe=0.80Tsp+58.33 ……(2)
露光温度Toeと相分離温度Tspとに相関関係があるということは、発明者によって初めて得られた知見である。また、液晶の末端基によって前記相関関係の傾向が異なるということも、発明者による新規知見である。
なお、液晶の末端基の種類を考慮しないときには、次の(3)式で示される近似式が得られた。
Toe=0.58Tsp+58.60 ……(3)
《露光温度の決定》
前述の「偏光ホログラムHGの製造方法」における「相分離温度Tspに基づいて決定された露光温度」とは、上記(1)式又は(2)式から算出された露光温度のことである。これにより、使用する液晶の相分離温度Tspを測定するだけで、適切な露光温度を求めることができ、従来の煩雑な予備実験が不要となる。
前述の「偏光ホログラムHGの製造方法」における「相分離温度Tspに基づいて決定された露光温度」とは、上記(1)式又は(2)式から算出された露光温度のことである。これにより、使用する液晶の相分離温度Tspを測定するだけで、適切な露光温度を求めることができ、従来の煩雑な予備実験が不要となる。
上記(1)式又は(2)式から算出された露光温度で製造された回折光学素子の特性が図11に示されている。いずれも、高い回折効率を有している。なお、偏光選択性とは、(S偏光の+1次回折効率)/(P偏光の+1次回折効率)であり、小さいほど良い。
特に、末端基がハロゲン基である液晶A、E、G、Hを用いた回折光学素子は、偏光選択性が1%以下であった。
前記光ピックアップ装置23では、(1)偏光ホログラムHGが高い回折効率を有しているため、半導体レーザLDから光ディスク15に向かう光束の光軸に対して基板面が垂直となるように偏光ホログラムHGを配置することができ、(2)偏光ホログラムHGでの回折角度が約26度と非常に大きいため、半導体レーザLDと受光器PDとの間隔が一定である場合には、半導体レーザLD及び受光器PDと、偏光ホログラムHGと、の間隔を従来よりも大幅に短縮することができる、ことから、光ピックアップ装置23の薄型化が可能である。
また、例えば入射光に対して20度の回折角を得るためには、波長が405nmの場合には1.1μm程度のピッチが必要となり、波長が650nmの場合には2.3μm程度のピッチが必要となる。本実施形態では、いずれの場合であっても、所望のピッチの周期構造を有する回折光学素子を容易に製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光ディスク装置20では、再生信号処理回路28と、CPU40及び該CPU40によって実行されるプログラムとによって、処理装置が構成されている。なお、CPU40によるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成することとしても良いし、あるいは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
以上説明したように、本実施形態によると、二光束干渉光を露光するときの露光温度を相分離温度Tspから決定している。これにより、ピッチが短く、高い回折効率を得るのに適切な露光温度を簡単に得ることができ、煩雑な予備実験が不要となる。すなわち、ピッチが短く、高い回折効率の回折光学素子を、安価に製造することが可能である。
また、その末端がハロゲン基で置換された2環あるいは多環の材料を主成分とする液晶を用いると良好な偏光選択性を得ることができる。
また、本実施形態に係る光ピックアップ装置23によると、安価で、ピッチが短く、高い回折効率を有する偏光ホログラムHGを用いているため、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得ることが可能となる。
また、本実施形態に係る光ディスク装置20によると、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得ることができる光ピックアップ装置23を備えているため、大型化及び高コスト化を招くことなく、サーボ信号及びRF信号を精度良く検出できる、すなわち、ディスクへの安定したアクセスを行うことが可能となる。
なお、上記実施形態では、φ=90度の場合について説明したが、一例として図12に示されるように、φ≠90度であっても良い。この場合には、周期構造の傾斜方向に応じてプラス側あるいはマイナス側の一方のみにブラック回折による回折光が出射される(図13(B)参照)。すなわち、一方向に対して回折効率を高めることができる。このときに、回折させたい偏光方向における屈折率変調量ΔnHと厚みdを最適化することにより、プラス側あるいはマイナス側の一次回折光のみが高い回折効率で出射され、二次以上の高次の回折光はほとんどゼロとなるように設定することができる。
なお、上記実施形態では、上記(1)式又は(2)式を用いて算出された露光温度で露光する場合について説明したが、例えば、液晶の末端基が不明な場合や、ハロゲン基及びシアノ基以外の場合には、上記(3)式を用いて算出された露光温度で露光しても良い。
ところで、回折光学素子の回折効率は、屈折率変調量ΔnH、及び膜厚dに依存する。入射角が0°のときに回折効率が最大となる条件は、次の(4)式で示される。例えば、λ=440nm、φ=90°の場合は、d・ΔnH=0.44μmとなる。
d・ΔnH=[λ・(−cos2φ)1/2] ……(4)
厚い回折光学素子について、Kogelnikの結合波理論に基づいて算出された回折効率の波長依存性が、図14に示されている。ここでは、屈折率が1.53、格子ピッチが1.0μm、φ=81.7度、λ=440nm、入射角が0度としている。また、d・ΔnH=0.44μmとしている。回折効率の波長依存性は、図14に示されるように、膜厚dが大きくなるにつれて大きくなっている。すなわち、膜厚dが大きくなるにつれて回折効率の低下率が増大する。一般的には、回折効率の低下率が5%以下であれば実用上問題はない。
一般に、半導体レーザは温度変化などに起因してその発振波長が変化する。例えば、光ピックアップ装置で用いられている、発振波長が405nm、780nm及び660nmの半導体レーザにおける波長変化は、±10nm〜±20nmである。そこで、波長変動の最大値を±20nmとすると、図14の場合には、膜厚dは15μm以下であることが好ましい。そして、最大の回折効率を得るには、屈折率変調量ΔnHは0.029以上であることが必要となる(図15参照)。
液晶Aを用いて、混合物における液晶の混合比率を高分子((b)〜(d))に対して20重量%〜50重量%とし、前記と同様にして、二光束干渉露光により回折光学素子を製造し、その特性を評価した。このときの露光温度は液晶Aの最適な露光温度である65℃とした(図8参照)。図16に示されるように、屈折率変調量ΔnHは液晶の混合比率によって異なり、値としては0.01〜0.09であった(重量0%での値は理論値である)。ここで、前述したように半導体レーザーの波長変化を考慮すると、屈折率変調量ΔnHは0.029以上であることが要求される。また、図17及び図18に示されるように、偏光選択性及びS偏光に対する透過率も液晶の混合比率により異なる。実用上は偏光選択性としては1.5%以内、透過率は90%以上が好ましいため、実用上好ましい回折特性を得るためには、液晶の混合比は10重量%〜30重量%の範囲であることが好ましい。
また、上記実施形態では、混合セルに照射する多光束干渉光として、二光束干渉光を用いる場合について説明したが、これに限らず、二光束よりも多くの光束を用いても良い。要するに、必要とする周期の干渉縞が生成されれば良い。
また、上記実施形態では、情報の記録及び再生が可能な光ディスク装置について説明したが、これに限らず、情報の記録、再生及び消去のうち、少なくとも情報の再生が可能な光ディスク装置であれば良い。
また、上記実施形態では、光ピックアップ装置が1つの半導体レーザを備える場合について説明したが、これに限らず、例えば互いに異なる波長の光束を発光する複数の半導体レーザを備えていても良い。この場合に、例えば波長が約405nmの光束を発光する半導体レーザ、波長が約650nmの光束を発光する半導体レーザ及び波長が約780nmの光束を発光する半導体レーザの少なくとも1つを含んでいても良い。すなわち、光ディスク装置が互いに異なる規格に準拠した複数種類の光ディスクに対応する光ディスク装置であっても良い。
以上説明したように、本発明の回折光学素子の製造方法によれば、高コスト化を招くことなく、ピッチが短く、高い回折効率を有する回折光学素子を得るのに適している。また、本発明の回折光学素子によれば、ピッチが短く、高い回折効率の回折光学素子を安価に得るに適している。また、本発明の光ピックアップ装置によれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、所望の信号を得るのに適している。また、本発明の光ディスク装置によれば、大型化及び高コスト化を招くことなく、光記録媒体への安定したアクセスを行うのに適している。
15…光ディスク(光記録媒体)、20…光ディスク装置、23…光ピックアップ装置、28…再生信号処理回路(処理装置の一部)、40…CPU(処理装置の一部)、52…コリメートレンズ(光学系の一部)、55…1/4波長板(光学系の一部)、60…対物レンズ、HG…偏光ホログラム(回折光学素子)、LD…半導体レーザ(光源)、PD…受光器(光検出器)。
Claims (8)
- 光学的異方性を示す第1の領域と光学的等方性を示す第2の領域の周期構造を有する回折光学素子を多光束干渉光を用いて製造する製造方法であって、
非重合性の液晶と重合性を有する高分子と光重合開始剤とを混合した混合物を作成する工程と;
前記第1の領域の異常光屈折率と前記第2の領域の屈折率との差が略最大となる露光温度に前記混合物を加熱する工程と;
前記露光温度に加熱された前記混合物に多光束干渉光を照射する工程と;を含む回折光学素子の製造方法。 - 前記露光温度は、前記混合物における液晶と高分子とが相分離を開始する相分離温度に基づいて決定された温度であることを特徴とする請求項1に記載の回折光学素子の製造方法。
- 前記露光温度は、予め取得された相分離温度と露光温度との関係を示す近似式に、前記混合物の相分離温度を代入して算出された温度であることを特徴とする請求項2に記載の回折光学素子の製造方法。
- 前記露光温度は、前記液晶の末端基の種類に応じた温度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法。
- 前記液晶は、その末端がハロゲン基の2環あるいは多環の材料を主成分とする液晶であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の回折光学素子の製造方法によって製造された回折光学素子。
- 光記録媒体に対する情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なうために用いられる光ピックアップ装置であって、
光源と;
前記光源から出射された光束を光記録媒体の記録面に集光する対物レンズと、前記記録面で反射され前記対物レンズを介した戻り光束の光路上に配置され、前記戻り光束を回折する請求項6に記載の回折光学素子とを含む光学系と;
前記回折光学素子からの回折光を受光する光検出器と;を備える光ピックアップ装置。 - 光記録媒体に対して、情報の記録、再生、及び消去のうち少なくとも再生を行なう光ディスク装置であって、
請求項7に記載の光ピックアップ装置と;
前記光ピックアップ装置からの出力信号を用いて、情報の再生を行なう処理装置と;を備える光ディスク装置。
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JP2008268829A (ja) * | 2007-03-27 | 2008-11-06 | Sharp Corp | ホログラム記録再生装置およびホログラム記録再生方法 |
EP2219073A1 (de) | 2009-02-17 | 2010-08-18 | Bayer MaterialScience AG | Neue holografische Medien und Photopolymere |
-
2005
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