以下、添付した図面を参照して、本発明に係る両面記録用インクジェット装置について詳細に説明する。なお、本発明の両面記録用インクジェット装置においては、被記録媒体として、例えば、ガラス板、鉄板、ダンボール板、木板、樹脂板等のような、硬く湾曲させることができないような剛体板状物、あるいは湾曲させると良くない媒体を想定し、その厚さとしては1mm〜30mmを想定している。また、例えばダンボール板に紙が貼り付けられた媒体のように上記剛体板状物を基材とした媒体をも含むものとする。また、使用するインクとしてはUV(紫外線)硬化型インクを想定しており、例えばヘッドに対し被記録媒体搬送方向の下流側にUV光源が配置され、インク吐出後直ちにUV光を照射して被記録媒体上にインクが定着されるようになっているものとする。
まず本発明の第1実施形態について説明する。第1実施形態は、垂直に保持されつつ搬送された被記録媒体に対して、長尺のライン型ヘッドをその長手方向を垂直方向に保持して被記録媒体を挟むようにその両側にヘッド長手方向が被記録媒体搬送方向に対し略垂直方向となるように配置して両面記録を行うようにしたものである。
図1は、本発明の第1実施形態に係る両面記録用インクジェット装置全体の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1の両面記録用インクジェット装置を上から見た様子を示す上面図であり、図3は、同じく図1の両面記録用インクジェット装置を右(前)方向から見た様子を示す側面図である。
図1、2、3に示すように、本実施形態の両面記録用インクジェット装置10は、供給部12、前搬送部14、記録部16、後搬送部18及び排出部20から構成されている。
供給部12は、厚く重く硬い、湾曲させるのが困難な剛体板状物の被記録媒体22を記録部16に供給するものである。供給部12は、多数の被記録媒体22を水平に載置する載置台24と水平に載置されていた被記録媒体22を垂直に起こして前搬送部14に渡すための挟持ローラ対26(26a、26b)を有している。
載置台24は、その上に板状の被記録媒体22を水平に積層するものであり、図1あるいは図3に示すように、その下には、バネ28が設けられており、載置台24を下から上向きに付勢して、積層された被記録媒体22を載置台24の上に設置されたローラ30に押し付けるようになっている。
このローラ30は、積層された被記録媒体22を上から1枚ずつ挟持ローラ26(26a、26b)側へ送り出すためのものである。挟持ローラ26(26a、26b)は、図に示す例では2対用意されており、被記録媒体22を両面から挟んで保持する。詳しくは後述するが挟持ローラ26は、被記録媒体22の厚さに応じて、対向するローラ26a、26b間の距離を調整可能な構成となっている。
挟持ローラ26は、被記録媒体22の両面を挟んだまま全体が、後述する回転機構によって、図1に矢印で示すように破線の位置まで回転して垂直に起き上がり、被記録媒体22を垂直に保持する。このとき、詳しくは後述するが、垂直に保持された被記録媒体22がその重みで下へずり落ちないように、被記録媒体22を下から支える下側ガイド32が設置されている。
挟持ローラ26は垂直に起き上がると、垂直に保持した被記録媒体22を前搬送部14に送り出す。前搬送部14は、被記録媒体22を両側から挟んで垂直に保持する搬送ローラ34(34a、34b)と、垂直に保持された被記録媒体22の上下端を支える端面支持ローラ36(36a、36b)とを有し、被記録媒体22を垂直に保持したまま記録部16へ搬送する。このとき上述した挟持ローラ26と同様に、搬送ローラ34も被記録媒体22の厚さに対応してローラ間距離が可変となっている。また、上側の端面支持ローラ36aは、被記録媒体22の大きさ(記録幅)によってその位置が上下に可変となっているものとする。
記録部16は、被記録媒体22に対し、両面を記録する一対の印字ヘッド(液体吐出ヘッド)38、38および両面にUV光を照射してインク(UV硬化インク)を硬化して定着させる一対のUV光源40、40を備えている。印字ヘッド38は、前搬送部14から垂直に保持されて渡された被記録媒体22を両面から挟むように、被記録媒体22の搬送経路に、ノズル面(インク吐出面)を対向させて配置された2つの印字ヘッド38、38から構成され、被記録媒体22の両面に同時に画像を記録できるようになっている。また、UV光源40は、印字ヘッド38の後段に、やはり被記録媒体22を挟むように対向して2つのUV光源40、40から構成されている。なお、印字ヘッド38とUV光源40の間には、被記録媒体22の上下端を支持する端面支持ローラ42(42a、42b)が配置されている。
なお、ここでは説明を簡単にするために、印字ヘッド38は1組のみ表示しているが、各色のインク毎に1組の印字ヘッド38が必要であり、YMCKの4色を記録する場合には、各色のインクに対応した4組の印字ヘッド38が配置されることになる。また、本実施形態の印字ヘッド38は、長尺のラインヘッドであり、垂直に保持された被記録媒体22の上下端距離よりも長い記録幅を有し、被記録媒体22の上端から下端までの全面記録が可能なように長手方向が垂直に配置されている。
印字ヘッド38は、図2に示すように上から見ると、カギ型に形成され、図2に一点鎖線で示した被記録媒体搬送路に向かって凸状に形成されたノズル面38aの部分と、これよりも凹んで形成されたパージ受けキャップ部38bとを有している。向かい合った一対の印字ヘッド38、38は、それぞれ凸状のノズル面38aと凹状のパージ受けキャップ部38bとがそれぞれ対向するように配置され、ヘッド間隔は可変移動可能に構成されている。そしてメンテナンス時には、このカギ型の印字ヘッド38、38を互いに近接させ、ノズル面38aとパージ受けキャップ部38bとが対向するようにし、ノズル面38aの各ノズルからパージ受けキャップ部38bに向けてパージが行われるようになっている。
なお、UV光源40についても、被記録媒体22の厚さに応じてその対向する距離が可変になっているものとする。また、印字ヘッド38及び搬送ローラ34、端面支持ローラ36等が一体となって移動するような構成とすることが好ましい。このときさらに、一方のローラとヘッドは固定で、他方のローラ及びヘッドが移動してその間の距離が離間するような構成とすると、より位置精度が確保されるのでより好ましい。
両面の記録、定着が行われた被記録媒体22は、後搬送部18に送られる。後搬送部18は、端面支持ローラ44(44a、44b)及び搬送ローラ46(46a、46b)を有し、記録後の被記録媒体22をそのまま垂直に保持して排出部20へ搬送するようになっている。
排出部20は、供給部12と同様の構成を有しており、丁度供給部12と逆の動きをするように構成され、後搬送部18から垂直の状態で渡された被記録媒体22を水平に置き直して、排出するために積層するようになっている。
図4に、印字ヘッド38のノズル面(インク吐出面)38aを示す。図4(a)は、印字ヘッド38の一つの構造例を示すノズル面38aの平面透視図である。
図4(a)に示す印字ヘッド38の例においては、インクを液滴として吐出するノズル51、インクを吐出する際インクに圧力を付与する圧力室52、図示を省略した共通流路から圧力室52にインクを供給するインク供給口53を含んで構成される圧力室ユニット54が千鳥状の2次元マトリクス状に配列され、ノズル51の高密度化が図られている。
また、図に示すように、各圧力室52を上方から見た場合に、その平面形状は略正方形状をしており、圧力室52には、その対角線の一方の端にノズル51が形成され、他方の端にインク供給口53が設けられている。なお、圧力室52の平面形状はこのような正方形に限定されるものではない。
また、図4(b)は印字ヘッド38の他の構造例を示すノズル面38aの平面透視図である。図に示すように、複数の短尺ヘッド38a’を2次元の千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、これらの複数の短尺ヘッド38a’全体で図4(a)のような1つの長尺のフルラインヘッドを構成するようにしてもよい。
図5は、図4(a)中の5−5線に沿った断面図であり、一つの圧力室ユニット54の側断面を示すものである。圧力室ユニット54の構造は特に限定されるものではなく、ここでは、図5(a)と図5(b)の2種類を例示する。
図5(a)に示す例は、圧力室52に関してノズル51とは反対側に共通液室を配置し、圧電素子を駆動する個別電極への配線をこの共通液室の中を貫通させて圧電素子形成面に対して垂直方向に引き出すようにして高密度化を図ったものである。
図5(a)に示すように、印字ヘッド38の各圧力室ユニット54は、ノズル51と連通する圧力室52を有して構成され、圧力室52の(図5(a)における)上面を形成する振動板56に関して圧力室52とは反対側に共通液室55を形成し、振動板56の一部に形成したインク供給口53によって共通液室55と圧力室52が直接に連通するようになっている。
また、振動板56の圧力室52に対応する位置には圧電体58及び圧電体58を駆動するための個別電極57が形成されている。そして、個別電極57に対して駆動信号を供給するための配線60が、個別電極57から引き出された電極パッド59から圧電体形成面に対して略垂直に、共通液室55を貫通するように柱状に形成され、配線60の他端は、多層フレキシブルケーブル61に電極パッド62を介して接続されている。
このように、図5(a)に示す例では、共通液室55を振動板56に関して圧力室52とは反対側(圧力室52についてノズル51とは反対側)に形成し、圧力室52と直接連通するようにしたため、従来必要であった共通液室から圧力室にインクを導くための配管等が不要となり、共通液室のサイズを大きくすることができるためインクを確実に供給することができ、ノズルの高密度化を達成することができるとともに、高密度化した場合においても高周波での駆動が可能となる。また、圧電体58を駆動するための信号を供給する配線60を圧電体形成面に対して略垂直に形成するようにしたため、駆動信号を各圧電素子に供給するための配線を高密度化することが可能となり、ノズル51の高密度配置が容易となる。
なお、共通液室55にはインクが充満するため、振動板56、個別電極57、圧電体58及び配線60、さらに多層フレキシブルケーブル61のインクに接する表面部分には絶縁・保護膜64が形成される。
また、圧力室ユニット54の構造はこのような図5(a)に示されるものに限定されるものではなく、図5(b)に示すような構造であってもよい。
図5(b)に示す例における圧力室ユニット54においては、共通液室55が、圧力室52に関してノズル51と同じ側に配置されている。圧力室52は、ノズル51と連通するとともに、供給口53を介して共通流路55と連通している。共通流路55は、インク供給源のインクタンクと連通し、インクタンクから供給されるインクは、共通流路55を介して各圧力室52に分配供給されるようになっている。圧力室52の天面は薄板の振動板56で構成され、振動板56上には圧電体58及び個別電極57が形成されている。この例では、個別電極57に対して駆動信号を供給する配線(図示省略)は、圧電体形成面に平行に形成される。
図6は、供給部12の挟持ローラ26が被記録媒体(図6では図示省略)を挟持したまま回転して垂直に起き上がる機構を拡大して示す斜視図である。
図6には、図1に実線で示したように、挟持ローラ26が水平の状態にある場合を示している。挟持ローラ26は、被記録媒体22(図6では図示省略)を両側から挟むように一対の挟持ローラ26a、26bとして構成されている。一方の挟持ローラ26aは、枠体70の内部に移動可能に配置された支持部材72にその一端が支持されている。また他方の挟持ローラ26bは、枠体70にその一端が支持されている。
支持部材72は、その中央をボールネジ74が貫通し、ローラ間距離可変モータ76によってガイドシャフト78に沿って枠体70内部を(図の)上下に移動するようになっている。この支持部材72を移動させることにより、一対の挟持ローラ26a、26b間の距離を可変にすることができ、被記録媒体22の厚さに応じてローラ間距離を調整することで、被記録媒体を確実に保持することができる。
また、このローラ間距離の調整のために、支持部材72には光学的に被記録媒体表面までの距離を検出する厚さセンサ80が設置されている。
また、支持部材72及び他方の挟持ローラ26bの一端を支持する枠体70の部分には、支持ローラ82(82a、82b)が設置されている。支持ローラ82は、挟持ローラ26が被記録媒体22を挟んで垂直に起き上がった場合に、被記録媒体22を下から支持するものであり、前述した下側ガイド32を構成している。
また、図6に示すように、枠体70には、枠体70及び挟持ローラ26を回転させる回転モータ84が取り付けられている。回転モータ84によって枠体70が回転することにより、挟持ローラ26は、水平位置と垂直位置の間を移動可能なようになっている。また、挟持ローラ26が垂直に起き上がったときに、垂直位置で確実に停止させるための垂直ストッパ86が設置されている。
図7は、前搬送部14の搬送ローラ34のローラ間距離可変機構の概略を示す斜視図である。
図7に示すように、搬送ローラ34は、駆動ローラとしての搬送ローラ34aと従動ローラとしての搬送ローラ34bとで構成され、両方の搬送ローラ34a、34bで両側から被記録媒体22(図7では図示省略)を垂直に保持しつつ搬送する。
駆動ローラである搬送ローラ34aは、固定支持部材88に一端を軸支され、その上部にタイミングプーリ92が取り付けられており、それぞれのタイミングプーリ92、92間にタイミングベルト94が掛け渡されている。そして一方の駆動用の搬送ローラ34aには、ローラ駆動モータ90が取り付けられて回転するようになっており、他方の駆動用の搬送ローラ34aには、タイミングベルト94によってローラ駆動モータ90の回転動力が伝達されるようになっている。
また、従動ローラとしての搬送ローラ34bは、可動支持部材96に一端を軸支され、ニップバネ98によってニップ圧が掛けられて回転可能に保持されている。可動支持部材96には、ボールネジ100及びガイドシャフト102が取り付けられており、ローラ間距離可変モータ104でボールネジ100を回転させることによって可動支持部材96と固定支持部材88間の距離を可変にすることができるようになっている。可動支持部材96と固定支持部材88間の距離を可変にすることで、駆動用の搬送ローラ34aと従動用の搬送ローラ34bとの間の距離を可変にすることができる。
被記録媒体22の厚さに応じて搬送ローラ34a、34b間の距離を調整して、確実に被記録媒体22を垂直に保持しつつ搬送が行われる。なお、このとき被記録媒体22の厚さは、前述したように供給部12において厚さセンサ80(図6参照)によってすでに測定されている。また、被記録媒体22の大きさ及び厚さ等の情報は、オペレータが別途入力するようにしてもよい。
また、前搬送部14は、被記録媒体22を垂直に保持して搬送するため、特に重い被記録媒体22の場合には、被記録媒体22の下端側を確実に支持する必要がある。そこで、搬送ローラ34a、34b間の距離を調整すると同時に、下側ガイド32としての支持ローラ82や端面支持ローラ36等が被記録媒体22を下から挟み込むローラ間の距離を可変にして調整する必要がある。なお、図1〜図3では省略しているが、前搬送部14から後搬送部18までの間においても、被記録媒体22の下端を支持するために、端面支持ローラ36、42、44の他に、以下説明するような下側ガイド32を搬送路の下側に設置するようにしてもよい。
前述した図6に示す例では、下側ガイド32としての支持ローラ82は、挟持ローラ26(26a、26b)のローラ間距離を調整するのと連動して被記録媒体22の下端を挟み込むそのローラ間距離が調整されるようになっていた。
図8に、ローラ間距離を可変として被記録媒体22の下端を支持する下側ガイド(端面支持手段)の例を示す。図8に示す下側ガイド110は、固定部材112に回転可能に取り付けられた支持ローラ114a、114bと、可動部材116に回転可能に取り付けられた支持ローラ118a、118bとから構成される。
各支持ローラ114a、114b、118a、118bは、外側に大きな直径、内側に小さな直径の2つの円柱状(円板状)の部材を組み合わせたような段違い形状を有し、内側の小さな直径の円柱の側面にはゴム120が貼り付けられており、このゴム120の部分で被記録媒体22の下側端面を支持するようになっている。
支持ローラ118a、118bには、それぞれタイミングプーリ122、122が取り付けられており、タイミングプーリ122、122間にはタイミングベルト124が掛け渡されている。そして、一方の、例えば支持ローラ118bにモータ126が取り付けられ、これによって支持ローラ118b及び118aが回転するようになっている。
また、可動部材116にはボールネジ128及びガイドシャフト130が取り付けられ、支持ローラ間距離可変モータ132によってボールネジ128を回転することによって、可動部材116がガイドシャフト130に沿って移動し、固定部材112と可動部材116との間の距離が可変となるようになっている。
このようにして固定部材112と可動部材116との間の距離を可変にすることによって、支持ローラ114(114a、114b)と支持ローラ118(118a、118b)との間の距離を可変にすることができ、厚さの違う被記録媒体22に対応することができる。このように支持ローラ114、118独立でローラ間距離可変機構を有していると、駆動ローラニップ間隔による搬送最適化と支持ローラ保持での被記録媒体厚さに対する最適化対応が可能となるため好ましい。
なお、図8に示したような下側ガイド110では、各支持ローラ114(114a、114b)、118(118a、118b)を取り付ける部材(例えば図8中、符号134で示す部材等)が必要なため、ローラ間距離を一定程度以上には小さくすることができない。そこで、図9に示すような、ローラ間距離dが固定された、ユニット化されたサイズの異なる下側ガイド140を複数用意して、被記録媒体22の厚さに応じてこのユニット化された下側ガイド140を交換するようにしてもよい。このようにすることで、適用可能な被記録媒体22の板厚の自由度が向上する。
図9に示す下側ガイド140は、断面がコの字状の樋形状の枠体142に糸巻き形状の支持ローラ144を回転可能に軸支し、支持ローラ144中央の凹部にゴム146を貼り付けて、この部分で被記録媒体22の下側端面を支持するようにしたものである。
各支持ローラ144、144にはタイミングプーリ148、148が取り付けられており、タイミングプーリ148、148間にはタイミングベルト150が掛け渡されている。そして、一方の支持ローラ144が、モータ152によって回転するようになっている。このようにユニット化された下側ガイド140を用いれば、厚さが1mmから10mm程度の薄いものでも対応可能であり、特にこのように薄い被記録媒体22の支持に有効である。
後搬送部18及び排出部20の構成は、それぞれ前搬送部14及び供給部12の構成と同様である。すなわち、支持ローラ及び搬送ローラの駆動ローラとが一体でローラ間隔が被記録媒体厚さに応じて可変となるような構成とし、供給部12及び排出部20と同一構造とする。また、供給系と搬送系の位置精度確保のため、固定側の支持ローラと駆動ローラは、ヘッド近傍搬送系のローラの固定側と同一側とすることが好ましい。
次に、本実施形態の両面記録用インクジェット装置10におけるインク供給系の構成について説明する。図10に、本実施形態におけるインク供給系の概略を示す。
上述したように、本実施形態における印字ヘッド38は、長尺のライン型ヘッドであり、その長手方向を縦方向に配置されている。また、図1あるいは図2に示すように、1組の印字ヘッド38、38は、被記録媒体22の搬送路を挟んで、互いにノズル面38aとパージ受けキャップ部38bとが対向するように配置されている。
すなわち、図10において、一組の印字ヘッド38、38の一方の印字ヘッド38のノズル面38aと、他方の印字ヘッド38のパージ受けキャップ部38bとが対向している。印字ヘッド38は縦置きされたライン型ヘッドであり、各圧力室52にインクを供給する共通液室55が全体で繋がって一つの共通液室として形成されている場合だと、印字ヘッド38の上方と下方で各ノズル51に与える負圧のバランスが異なってしまい均一な印字ができない。そこで、図10に示すように、共通液室55は、縦方向に複数(ここでは3つ)に分割され、第1共通液室150、第2共通液室152、第3共通液室154となっている。
各共通液室150等は、それぞれ複数の圧力室52と連通するとともに、それぞれ別個のサブタンクと連通している。第1共通液室150は、インク流路156を介して第1サブタンク160と連通し、第2共通液室152は、インク流路157を介して第2サブタンク162と連通し、第3共通液室154は、インク流路158を介して第3サブタンク164と連通している。
各サブタンク160、162、164はそれぞれ柱状で印字ヘッド38と同様に縦方向に配置され、メインタンク166と連通している。第1サブタンク160には、インク流路156との接続口160a及び第2サブタンク162にインクを排出するための第1排出口160bが設けられている。第1排出口160bは、第1サブタンク160と第2サブタンク162とを連通するものであり、印字ヘッド38が通常の吐出駆動時に第1サブタンク160内のインク水位が丁度インク流路156との接続口160aの位置となるように、接続口160aの上端の位置と第1排出口160bの下端の位置が略一致するように配置されている。
また、同様に、第2サブタンク162には、インク流路157との接続口162a及び第3サブタンク164にインクを排出するための第2排出口162bが設けられている。第2排出口162bは、第2サブタンク162と第3サブタンク164とを連通するものであり、印字ヘッド38が通常の吐出駆動時に第2サブタンク162内のインク水位が丁度インク流路157との接続口162aの位置となるように接続口162aの上端の位置と第2排出口162bの下端の位置が略一致するように配置されている。
また、同様に、第3サブタンク164には、インク流路158との接続口164a及びメインタンク166にインクを排出するための第3排出口164bが設けられている。第3排出口164bは、インク流路167を介して第3サブタンク164とメインタンク166とを連通するものであり、印字ヘッド38が通常の吐出駆動時に第3サブタンク164内のインク水位が丁度インク流路158との接続口164aの位置となるように、接続口164aの上端の位置と第3排出口164bの下端の位置が略一致するように配置されている。
ここで、最も上方にある第1共通液室150に対応する第1サブタンク160のインク流路156との接続口160aの高さが最も高く、次いで、第2共通液室152に対応する第2サブタンク162のインク流路157との接続口162aの高さが次に高く、第3共通流路154に対応する第3サブタンク164のインク流路158との接続口164aの高さが最も低く設定されている。
これにより、各サブタンク160、162、164におけるインクの水頭高さの差(水頭圧差)によって、印字ヘッド38の各ノズル51の負圧を上から下まで略均等になるように調整することができる。
第2サブタンク162及び第3サブタンク164は、それぞれその底部においてメインタンク166と連通するインク流路168と接続している。また、第1サブタンク160は、その底部においてメインタンク166と連通するインク流路169と接続している。インク流路167にはバルブ170が設けられ、インク流路168にはバルブ172が設けられ、インク流路169にはフィルタ174及びポンプ176が設けられている。
また、各サブタンク160、162、164の上部にはそれぞれ大気開放孔178が設けられ、第1サブタンク160の上部には水位センサ180が設けられている。
パージ受けキャップ部38bには、インクを受けるためのスポンジ等の多孔質部材182が設けられている。また、パージ受けキャップ部38bの底部からインクを排出するインク流路184が設けられ、インク流路184にはバルブ186及びポンプ188が設けられており、パージ受けキャップ部38bに溜まったインクをインク回収タンク190に回収するようになっている。インク回収タンク190内部にも多孔質部材を設けるようにしてもよい。また回収されたインクを再度利用するようにしてもよい。
また、このときノズル51から吐出不良防止のためのパージ(予備吐出)を行ったインク滴192をパージ受けキャップ部38bで受ける際、インク滴192はノズル51から水平に吐出されているが、重力によってしだいに下方へ落ちて行くため、印字ヘッド38の下方のノズル51から吐出されたインク滴192がパージ受けキャップ部38bで受けられないことがあると、印字ヘッド38周辺を汚すため、ノズル面38aにおけるノズル位置を上方に配置し、印字ヘッド38の下方にはノズル51を形成しないノズルなし範囲194を設定するとともにパージ受けキャップ部38bを、重力によるインク液滴落下を見越した位置まで下方側に延びて配置するようにしてもよい。
なお、詳しくは後述するが、パージ受けキャップ部38bが下方へ延びたり、下方へ移動可能な構成とした場合には、このようなノズルなし範囲194を設ける必要はない。
次に、このインク供給系におけるインク初期充填時における作用について説明する。
まず、対向する1組の印字ヘッド38、38を互いに接近させて、一方のノズル面38aと他方のパージ受けキャップ部38bとが嵌合するようにして、ノズル面38aをキャッピングする。
次に、バルブ170、172を閉じて、第2サブタンク162及び第3サブタンク164が直接メインタンク166と連通しない状態とする。そして、ポンプ176を回転して、メインタンク166からインクを汲み上げて、インク流路169を介して第1サブタンク160内にインクを充填していく。
第1サブタンク160内にインクが第1排出口160bの水位まで充填されると、第1排出口160bからインクが溢れ、第2サブタンク162内にインクが充填されていく。第2サブタンク162内のインクが第2排出口162bの水位に達すると、第2排出口162bからインクが溢れ、第3サブタンク164内に充填されていく。
第3サブタンク164内のインク水位が第3排出口164bに達した後は、(バルブ170とバルブ172が閉じられているため)第3サブタンク164のインク水位が上がり、第2排出口162bの水位を越えたら、第2、第3サブタンク162、164の水位が同時に上がり、第1排出口160bの水位を越えたら、第1〜第3サブタンク160、162、164のインク水位が同時に上がる。
このとき、各共通液室150、152、154との水位により印字ヘッド38にインクが充填され、途中でノズル51よりインクが漏れ出した場合には、パージ受けキャップ部38bでキャップを行い、ポンプ188を回転して吸引するようにする。
各サブタンク160、162、164内にインクが十分充填されたことが水位センサ180によって検出されたら、ポンプ176の回転を停止する。または、時間管理にてポンプ176の回転を停止する。
その後、バルブ170を開けることにより、第3サブタンク164内のインクの水位は第3排出口164bの位置になる。このとき、第2サブタンク162内のインクの水位は第2排出口162bの位置となり、第1サブタンク160内のインクの水位は第1排出口160bの位置となる。これにより、第1〜第3共通液室150、152、154にそれぞれ最適な負圧条件となるような水位となる。
このように、メインタンク166と印字ヘッド38との間にサブタンク160、162、164を配置したため、初期充填時にサブタンク160、162、164により気泡が吸収されるため、印字ヘッド38内に気泡が入ることなく安定した吐出が可能となる。
次に、通常の吐出駆動時の作用について説明する。吐出駆動時においては、バルブ172は閉め、バルブ170は開けたままにした状態で、ポンプ176を低速回転する。これにより、メインタンク166からインク流路169を介してインクが第1サブタンク160の底部から第1サブタンク160内へ少しずつ流入する。インクが流入すると第1サブタンク160内のインク水位は上昇するところであるが、増えた分のインクは、接続口160aからインク流路156を介して第1共通液室150へ供給されるとともに、第1排出口160bから第2サブタンク162へ排出され、第1サブタンク160内の水位は略変化しない。
このように第1サブタンク160の第1排出口160bから排出されたインクは第2サブタンク162内のインク量を増加させる。しかし第2サブタンク162においても同様に、増えた分のインクは、接続口162aからインク流路157を介して第2共通液室152へ供給されるとともに、第2排出口162bから第3サブタンク164へ排出され、第2サブタンク162内のインク水位は略変化しない。
第2サブタンク162の第2排出口162bから排出されたインクは、第3サブタンク164内のインク量を増加させるが、同様に第3サブタンク164においても、増えた分のインクは、接続口164aからインク流路158を介して第3共通液室154へ供給されるとともに、第3排出口164bからインク流路167を介して(バルブ170が開のため)メインタンク166へ排出され、第3サブタンク164内のインク水位は略変化しない。
このように、通常吐出時においては、第1サブタンク160内のインク水位は接続口160aの位置に、第2サブタンク162内のインク水位は接続口162aの位置に、また第3サブタンク164内のインク水位は接続口164aの位置に、それぞれ一定に保たれ、各共通液室150、152、154の負圧が適正に保持され、安定した吐出が可能となる。
また、メインタンク166と各サブタンク160、162、164との間にポンプ176を配置したため、ポンプ176による水圧変動等が各サブタンク160、162、164によって打ち消されるので、また特に(第1)サブタンク160の底部からインクを供給するようにしたため、(第1)サブタンク160内におけるインク水面の波立ちが小さくなり、安定吐出が可能となる。
また、各サブタンク160、162、164間でのインク液移動は、排出口160b、162bを介した水圧による液移動を利用したため、液移動のためのポンプ設置が不要となり、ポンプの数を減ずることができる。
なお、各サブタンク160、162、164の底面の位置は図10に示したもののようにそろえる必要はなく、例えば図11に示すように各サブタンク160、162、164の底面の位置を異ならせてもよい。このように各サブタンク160、162、164の形状を変えることによって、各サブタンク160、162、164内のインク液量を減少させることができる。
このように、共通液室を縦方向に複数に分割し、分割に合わせて複数のサブタンクを持ち、負圧をそれぞれの共通液室毎に設定する構成とすることにより、ノズルからの液漏れが防止されるとともに、吐出が安定化される。
また、印字ヘッド38が図4(b)に示すように、複数の短尺なヘッド(サブヘッド)を繋ぎ合わせて長尺化したライン型ヘッドの場合には、それぞれのサブヘッド毎に、同一色であっても、複数のサブタンクを持つようにして、負圧を設定するような構成としてもよい。なお、負圧のバランスが取れるならば、複数のサブヘッドに対して1つのサブタンクが対応するようにしてもよい。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、垂直に保持されつつ搬送された被記録媒体に対して、印字ヘッドが被記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッド(シリアル型ヘッド)を被記録媒体を挟むようにその両側に配置して両面記録を行うようにしたものである。
図12は、本発明の第2実施形態に係る両面記録用インクジェット装置全体の概略構成を示す斜視図である。また、図13は、図12の両面記録用インクジェット装置を上から見た様子を示す上面図であり、図14は、同じく図12の両面記録用インクジェット装置を右(前)方向から見た様子を示す側面図である。
図12、13、14に示すように、本実施形態の両面記録用インクジェット装置210は、供給部212、前搬送部214、記録部216、後搬送部218及び排出部220から構成されている。
本実施形態は、記録部216において、印字ヘッドとしてライン型ヘッドの代わりにシャトル型ヘッドを用い、UV光源もこのシャトル型印字ヘッドの中に組み込んだ点が前述した第1実施形態と大きく異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。そこで、以下、記録部216のシャトル型印字ヘッドについてのみ説明することとし、供給部212、前搬送部214、後搬送部218、排出部220については各構成要素の符号の下二桁を第1実施形態と同一にすることで、詳しい説明を省略する。
図15に、シャトル型印字ヘッドを有する記録部216を拡大して斜視図で示す。
図15に示すように、記録部216には、垂直に保持されて搬送される被記録媒体22の両面を同時に記録するように、被記録媒体22の搬送路(図中一点鎖線で表示)を挟んで、搬送方向に略垂直の方向に往復移動可能なように一組のシャトル型印字ヘッド250、250が配置されている。
シャトル型印字ヘッド250は、ノズル面252、パージ受けキャップ部254、UV光源256を有している。ノズル面252は、インクを吐出する多数のノズルが2次元マトリクス状に形成されている。図に示す例では、この2次元マトリクスの長手方向がシャトルスキャン方向と略垂直となるようにノズルが配列されている。
パージ受けキャップ部254は、ノズル面252のすぐ隣に設けられており、UV光源256は、一番外側の両端に2箇所設けられている。このノズル面252、パージ受けキャップ部254、UV光源256の並びは、対向するシャトル型印字ヘッド250、250で互いに逆の並び方となっている。すなわち、図15に示すように、一方(図の向こう側)のシャトル型印字ヘッド250においては、上からUV光源256、パージ受けキャップ部254、ノズル面252、UV光源256と並んでいるとすると、他方(図の手前側)のシャトル型印字ヘッド250においては、上からUV光源256、ノズル面252、パージ受けキャップ部254、UV光源256のように並んでいる。
また各シャトル型印字ヘッド250、250にはそれぞれボールネジ258とガイドシャフト260が設置され、モータ262によってシャトル型印字ヘッド250、250はそれぞれ図の上下方向に往復移動するようになっている。また、記録部216下部に設置されたモータ264によってシャトル型印字ヘッド250、250間の間隔を調整することができるように構成されている。
また、ノズル面252は、他の部分よりも被記録媒体搬送路側へ突き出ており、対向するシャトル型印字ヘッド250、250において、一方のノズル面252と他方のパージ受けキャップ部254とが対応するように嵌合させることができるようになっている。
このように、シャトル型印字ヘッド250において、シャトルスキャン方向の上流側及び下流側の両方にUV光源256を配置して、シャトル型印字ヘッド250が被記録媒体22の搬送方向に対し略垂直方向に往復移動して記録を行う際、ノズル面252に対し移動方向下流側のUV光源256を用いて、インク滴着弾後直ちにUV光の照射を行いUV定着させるようにしている。このようにすぐにUV定着することにより、被記録媒体22を垂直に保持して搬送しても着弾したインクが被記録媒体22表面上を流れ落ちることはない。
また、シャトル型印字ヘッド250の上下移動は被記録媒体22の端面を越える範囲まで実施し、全面記録が可能とする。このように、シャトル型印字ヘッド250を用いれば、大面積の記録に有効である。
図16に、シャトル型印字ヘッド250のインク供給系及びパージの様子を示す。
図16に示すように、一方のシャトル型印字ヘッド250例えば図の左側のシャトル型印字ヘッド250は、上からUV光源256、ノズル面252、パージ受けキャップ部254、UV光源256の順に構成されている。これに対し、他方のシャトル型印字ヘッド250例えば図の右側のシャトル型印字ヘッド250は、上からUV光源256、パージ受けキャップ部254、ノズル面252、UV光源256の順に構成されている。
なお、ノズル面252の後方にはサブタンク260が設置されている。このようにシャトル型印字ヘッド250の場合には、サブタンク260はシャトル型印字ヘッド250に組み込まれ、ヘッドが上下に移動しても負圧関係が保たれるようになっている。これにより、ノズルからのインク液漏れを防止することができ、安定的な吐出を行うことが可能となる。
サブタンク260は、インク流路268によりメインタンク266と連通しており、ポンプ270によりメインタンク266からインクが吸い上げられ、フィルタ272を介してサブタンク260にインクが供給されるようになっている。また、パージ受けキャップ部254は、インク流路274によりインク回収タンク280と連通している。インク流路274には、バルブ276及びポンプ278が設けられている。
パージを行うときは、図16に示すように、シャトル型印字ヘッド250、250を対向させて、互いにノズル面252に対向するパージ受けキャップ部254をめがけてパージを行う。パージ受けキャップ部254に溜まったインクは、バルブ276を開いて、ポンプ278を回転することにより、インク回収タンク280に回収される。
また、インク吸引時には、ノズル面252をパージ受けキャップ部254でキャップして、同様にポンプ278でノズル面252からインクを吸引する。インク回収タンク280に回収されたインクは再利用するようにしてもよい。
図17に、シャトル型印字ヘッド250におけるパージの様子を拡大して示す。
前述したように、パージ時には、一方のノズル面252と他方のパージ受けキャップ部254を対向させて、ノズル面252の各ノズル51からパージ受けキャップ部254内に形成された多孔質部材284に向けてインク滴286を吐出する。
このとき、インク滴286は、水平に吐出されるため、重力によって次第に下方へ落ちていく。従って、ノズル面252のあまり下の方までノズル251が形成されていると、下方に形成されたノズルから吐出されたインク滴はパージ受けキャップ部254で受けることができない。そこで、図に示したように、ノズル面252の下方には、ノズルを形成しないノズルなし範囲288を設定するようにする。
しかし以下説明するように、パージ受けキャップ部254が上下に移動可能とすれば、パージ受けキャップ部254を下方に移動させることによって下方のノズル251から吐出されたインク滴286も受けることが可能となる。従って、パージ受けキャップ部254を上下に移動可能とした場合には、ノズルなし範囲を設ける必要はない。
図18に、パージ受けキャップ部254を移動可能とする機構の概略を示す。
図18に示すように、シャトル型印字ヘッド250において、パージ受けキャップ部254の上下に、パージ受けキャップ部254が移動可能なように余裕を持たせて、パージ受けキャップ部254をピニオン290及びラック292によるピニオン・ラック機構で上下移動可能に構成する。
すなわち、ピニオン290を図示しないステッピングモータで駆動して、ラック292を介して、パージ受けキャップ部254をスライドガイド294に沿って上下に移動可能とする。このように、パージ受けキャップ部254を上下移動可能とすることにより、ノズルなし範囲を形成する必要はなくなる。
なお、図10に示した第1実施形態のライン型ヘッドの場合においても、パージ受けキャップ部38bを上下移動可能に構成すれば、ノズル面38aのノズルなし範囲194を設ける必要はない。
また、図18において、パージ受けキャップ部254を上下移動可能とした場合に、キャップ部の先端部に例えばゴム製のワイプブレード296を設置することにより、パージ受けキャップ部254の上下移動とともに、ノズル面252をワイピング(ブレード)するようにしてもよい。
以下、このようなパージ受けキャップ部254の変形例について説明する。
図19に、このようなパージ受けキャップ部254の変形例を示す。まず、図19(a)に示す例では、パージ受けキャップ部254は、インク回収タンク280に連通するインク流路274(図16参照)に接続するSiチューブ300に対して、凸凹形状の抜け止め302によって固定・設置されている。
パージ受けキャップ部254の下端255は、受けたインク滴の漏れを防止するために、前方側より多孔質部材284が配置される後方側の方がδだけ低くなって液溜まり空間を形成している。また、ノズル面252に対向する側にはゴム製のワイプブレード296が形成され、ノズル面252をキャップするキャップ部297もゴムで形成され、キャップして吸引する時の密着性を向上さている。
また、パージ受けキャップ部254内の多孔質部材284は、受けたインク滴を保持して、パージ受けキャップ部254が上下移動してブレード(ワイピング)動作を行う際の液漏れを防止している。また、多孔質部材284の形状は、キャップ部297の上方のA点と下方のB点とで、吸引時の吸引力を略同じにする様に設定される。これは多孔質部材284での損失を一定にするためである。なお、前述した図10に示すような第1実施形態の長尺ヘッドの場合に、パージ受けキャップ部38bの多孔質部材182をこのような形状にすることが特に有効である。
また、多孔質部材284は、図19(a)のように一体に形成する必要はなく、例えば、図19(b)に示すように、板状の多孔質部材284aを数枚積層させて形成してもよい。このようにすることにより製造が容易となる。
また、図19(c)に示すように、多孔質部材284の上方側に多孔質の孔よりも大きい直径の孔284bを開けて、多孔質部材284の上方側と下方側における吸引力を調整するようにしてもよい。このように孔284bを開けて吸引力を調整することで、図19(a)や図19(b)のように多孔質部材284の形状を複雑にする必要がなく、形状を簡略化することができ、製造が容易となる。
次に、図18のようにパージ受けキャップ部254を上下移動可能とした場合のパージ動作について図20のフローチャートに沿って説明する。
まず、図20のステップS100において、被記録媒体22の厚さ情報を取得する。厚さ情報の取得方法は特に限定されない。第1実施形態で述べたように、供給部12において厚さセンサ80(図6参照)で光学的に厚さを測定してもよいし、別途オペレータが厚さ情報を入力するようにしてもよい。
次に、ステップS110において、上で取得した被記録媒体22の厚さ情報に基づいて、対向するシャトル型印字ヘッド250、250間のヘッド間距離を算出する。さらに、算出したヘッド間距離を実現するためのステッピングモータ(モータ264、図15参照)の回転量を決定する。
次に、ステップS120において、モータ264を駆動して、上で算出されたヘッド間距離となるように対向するシャトル型印字ヘッド250、250を移動する。
次に、ステップS130において、被記録媒体22の厚さ情報に基づいて、パージ受け位置を算出する。これは、インクの吐出速度と、被記録媒体22の厚さを考慮したヘッドとキャップ間の距離及びインク液滴質量及び重力等から算出される。あるいは、このように算出するのではなく、予め被記録媒体22の厚さとパージ受け位置との対応を示すテーブルを保持しておき、このテーブルを参照することによってパージ受け位置を決定するようにしてもよい。さらに、そのパージ受け位置を実現するためのピニオン290(図18参照)を回転するステッピングモータの回転量を決定する。
なお、このパージ受け位置の算出は、実際には、上記ステップS110〜S120と並行して行うようにしてもよい。
次に、ステップS140において、上で算出されたパージ受け位置となるように両側のパージ受けキャップ部254、254を上下方向に同時に移動してその位置を調整する。
以上の準備ができたところで、ステップS150においてパージを実行する。
また、被記録媒体22がヘッド近傍になく、ヘッドワイピングの指令が入った場合には、以下のようにしてワイピング(ブレード)を実行する。ここでワイピングの指令を出すタイミングは、例えば、処理した被記録媒体の枚数をカウントするか、あるいは前回ワイピングしてからの時間をカウントすることによって決定される。
ワイピングを行うには、まず、例えば上記図20のフローチャートに示すようにして決定されたパージ受け位置を初期位置として、対向するシャトル型印字ヘッド250、250のヘッド間距離を狭めて、ワイプブレード296(図18参照)が対向するノズル面252に接触するようにする。
次に、パージ受けキャップ部254を上下に移動することによってワイプブレード296でノズル面252のワイピングを実行する。
以上、印字ヘッドがライン型ヘッドの場合と、シャトル型ヘッドの場合について説明したが、被記録媒体の記録面を略垂直に保持して水平方向に搬送し、搬送される被記録媒体を挟むように印字ヘッドを両側に配置して、略同時に両面記録を行うことができるようにしたため、重く、湾曲することのできない剛体板状物の被記録媒体に対しても、良好に両面記録を行うことが可能となる。
以上、本発明の両面記録用インクジェット装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
10…両面記録用インクジェット装置、12…供給部、14…前搬送部、16…記録部、18…後搬送部、20…排出部、22…被記録媒体、24…載置台、26…挟持ローラ、32…下側ガイド(端面支持手段)、34、46…搬送ローラ、36…端面支持ローラ、38…印字ヘッド(液体吐出ヘッド)、38a…ノズル面(インク吐出面)、38b…パージ受けキャップ部、40…UV光源、42、44…端面支持ローラ、80…厚さセンサ、104…ローラ間距離可変モータ、132…支持ローラ間距離可変モータ、150…第1共通液室、152…第2共通液室、154…第3共通液室、160…第1サブタンク、162…第2サブタンク、164…第3サブタンク、166…メインタンク、190…インク回収タンク、194…ノズルなし範囲、250…シャトル型印字ヘッド、252…ノズル面、254…パージ受けキャップ部、256…UV光源、266…メインタンク