以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係るヒータ1の1例を示す断面図で、炭化珪素または窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスからなる板状体2の一方の主面を被加熱物である半導体ウェハWを載せる加熱面3とするとともに、他方の主面に抵抗発熱体5を形成し、該抵抗発熱体5に電気的に接続する給電部6を具備し、給電部6に給電端子11が接続している。これらの給電部6を囲む金属ケース19が接続部材17を介して板状体2の他方の主面の周辺部に固定されている。
また、ウェハリフトピン25は板状体2を貫通する孔を通してウェハWを上下に移動させウェハWを加熱面3に載せたり降ろしたりすることができる。そして、給電部6に給電端子11が接続し外部から電力が供給され、測温素子27で板状体2の温度を測定しながらウェハWを加熱することができる。
尚、ウェハWは、ウェハ支持ピン8により加熱面3から浮かした状態で保持され、ウェハWの片当たり等による温度バラツキを防止するようにしている。
また、図2には板状体2に配設される抵抗発熱体5の態様を示す図であり、(a)は抵抗発熱体が配される環状ゾーンを示す平面図であり、(b)は(a)で示された環状ゾーン内に対応して配設された抵抗発熱体5を示す平面図である。図2(a)に示すように、ウェハWの加熱面3に対応して中心ゾーン4aと、その周りに環状ゾーン4b〜4hを備えている。これは、円板状のウェハWの表面を均一に加熱するにはウェハW周辺の雰囲気やウェハWに対抗する壁面やガスの流れの影響を受けるが、円板状のウェハWの表面温度をばらつかせないために、ウェハWの周囲や上面の対抗面や雰囲気ガスの流れはウェハWに対し中心対称となるように設計されているからである。ウェハWを均一に加熱するにはウェハWに対し中心対称な上記環境に合わせたウェハ加熱装置1が必要で、加熱面3を中心対称に同心円状に複数の環状ゾーン4を形成することが好ましい。そして、図2(b)に示すように、中心ゾーン4a、およびゾーン4内に抵抗発熱体5をそれぞれ配設する。また、後述するが、1つのゾーン4を板状体2の周方向で分割する場合には、抵抗発熱体5もそれに対応してそれぞれ形成すればよい。
特に、300mm以上のウェハWの表面温度を均一に加熱するには、中心ゾーン4aと、その周りに同心円状の環状ゾーン4が2つ以上であることが好ましい。
次に、図3(a)に本発明のゾーン4の一例を示す。ゾーン4は、板状体2の一方の主面の中央部に円形状の中心ゾーン4aを設け、その周囲から板状体2の外周側に向かって略同心円状に環状ゾーン4a、4b、4cd、4ehのように形成される。ここで、ウェハWの均熱性を改善するために、図3(b)に示すように、1つの環状ゾーン4cdを板状体2の周方向で2分割した2個の扇型の環状ゾーン4c、4dとし、各環状ゾーン4c、4dにそれぞれ抵抗発熱体5c、5dを形成したり、また、1つの環状ゾーン4ehを、板状体2の周方向で4分割した4個の扇型の環状ゾーン4e、4f、4g、4hとし、各環状ゾーン4e、4f、4g、4hにそれぞれ独立して抵抗発熱体5e、5f、5g、5hを形成することが好ましい。
尚、環状ゾーン4cd、4ehはそれぞれ放射方向に2分割、4分割したが、これに限るものではない。
図3(b)のゾーン4が2分割された環状ゾーン4c、4dの境界線、即ち、抵抗発熱体5c、5dの境界線は直線であるが、必ずしも直線である必要はなく、波線であっても良く、環状ゾーン4c、4dが中心ゾーン4aに対して中心対称であることが好ましい。
同様に、環状ゾーンの4eと4f、4fと4g、4gと4h、4hと4eとのそれぞれの境界線も必ずしも直線である必要はなく、波線で有っても良く、同心円の発熱体ゾーンの中心に対して中心対称であることが好ましい。
そしてまた、環状ゾーン4c、4dの境界線と環状ゾーン4e、4f、4g、4hの境界線が直線状に位置しないことが好ましい。直線状に位置しないことで境界線付近の低温スポットの発生を防ぐことが可能となるからである。
そして、抵抗発熱体5を複数の環状ゾーンに分割して、それぞれの環状ゾーン4に形成された抵抗発熱体5の温度を独立に制御することにより、各給電部6の給電端子11に電力を供給し、各測温素子27の温度が各設定値となるように給電端子11に加える電力を調整し、加熱面3に載せたウェハWの表面温度が均一となるようにしている。
抵抗発熱体5には、金や銀、パラジウム、白金等の材質からなる給電部6が形成され、該給電部6に給電端子11を接触させることにより、導通が確保されている。給電端子11と給電部6とは、導通が確保できる方法で有れば、はんだ付け、ロー付け等の手法を用いてもよい。
本発明のヒータ1は、板状体2と、該板状体2の内部または一方の主面の中央部に配設した第1抵抗発熱体5aと、該第1抵抗発熱体5aと離間して周囲に設けた環状ゾーン4内に配設した第2抵抗発熱体5bとを具備するヒータであり、第1抵抗発熱体5aの抵抗値が第2抵抗発熱体5bの抵抗値よりも大きくしたことにより、各抵抗発熱体5の給電端子11に電圧を印加して昇温するとウェハW面内の温度差が小さい状態で短時間に所望の温度に加熱することができる。また、100〜200℃の定常状態に加熱した加熱面3に室温20℃のウェハWを載せると加熱面3が冷され温度が低下するが、温度の低下を各抵抗発熱体5に備えた測温素子27が検出して各抵抗発熱体5の印加電圧を大きくして、短時間でウェハWの面内温度を均一に加熱することができる。従って、室温のウェハWを加熱面3に載せてウェハWが所定の温度に達するまでの回復時間を短時間とすることができる。
ここで、第1抵抗発熱体5aの抵抗値Raが第2抵抗発熱体5bの抵抗値Rbより小さいと、冷えたウェハWを載せて急激に昇温させる場合、最大電圧を抵抗発熱体に供給しウェハWを加熱しようとするが、抵抗発熱体5bより板状体2の中央に配設されている抵抗発熱体5aの供給電力が大きくなり加熱面3の中心の温度が高くなる虞があるからである。逆に外側の温度が低くなる虞があるからである。中心部は抵抗発熱体5aで加熱され容易に温度が上昇し易いが、その外側の抵抗発熱体5bは発熱した熱が周囲に流れ易く温度が急激に過渡的な温度上昇がし難いことが原因と思われる。好ましくは、抵抗値Raは抵抗値Rbの1.05〜2.0倍である。更に好ましくは1.1〜1.6倍である。
尚、抵抗発熱体5aと抵抗発熱体5bを並列接続して、同時に制御する場合は、抵抗発熱体5aの抵抗値Raと抵抗発熱体5bの抵抗値Rbとの平均抵抗値Rabは抵抗発熱体5bが配設されている環状ゾーン4bの外側に位置する環状ゾーン4cdに配設されている抵抗発熱体5c、5dの各抵抗値Rc、Rdより大きいと上記と同様にウェハW面内温度を均一に短時間で加熱できる。
また、ゾーン4を板状体2の内面または一方の主面に対して略同心環状に複数形成し、板状体2の最も外側に形成された環状ゾーン4eh内に第3抵抗発熱体5e〜5fを配設し、該第3抵抗発熱体5e〜5fの抵抗値Re〜Rfが第2抵抗発熱体の抵抗値より大きいことが好ましい。これは、第3抵抗発熱体5e〜5fの抵抗値Re〜Rfの抵抗値が第2抵抗発熱体5c〜5dの抵抗値Rc〜Rdより大きいと、ウェハWを加熱する際にウェハWの中心と周辺で供給電力を抑え、その中間域で供給電力を大きくすることができることから、ウェハWの面内温度差が小さい状態で昇温することができる。逆に第3抵抗発熱体5e〜5fの抵抗値Re〜Rfが第2抵抗発熱体の抵抗値と同等あるいは小さいと、第2抵抗発熱体への供給電力より第3抵抗発熱体への供給電力が大きくなり昇温過渡時において第3抵抗発熱体に対応するウェハW表面の温度が高く第2抵抗発熱体に対応するウェハW表面の温度が低くなる虞があるからである。
なお、複数のゾーン4を形成する場合、第2抵抗発熱体とは、中心ゾーン4aの外側に配設された抵抗発熱体5b、または、中心ゾーン4aと環状ゾーン4eh内に配設された第3抵抗発熱体5e〜5fとの間に配設された抵抗発熱体を示すものであり、例えば、図2(b)に示された抵抗発熱体の配設態様では、抵抗発熱体5b、5c、5dが第2抵抗発熱体となり、図5に示された抵抗発熱体の配設態様では、抵抗発熱体5c、5dが第2抵抗発熱体となる。
ここで、より具体的には、第3抵抗発熱体の抵抗値Re〜Rhは第2抵抗発熱体5c、5dの抵抗値Rc、Rdの1.1〜2.5倍であることが好ましい。更に好ましくは1.5〜2倍である。
本発明の複数の抵抗発熱体のそれぞれの抵抗値が、請求項1または2に記載の条件を満足することが温度変更や変化に対応して板状体2に各抵抗発熱体から電力を供給しウェハWの面内温度差を小さく短時間で加熱できる。この点について、その理由を詳細に検討した。
通常半導体製造装置として用いられるヒータは200Vの電圧で加熱制御されている。この電圧でヒータに最大電力を供給するには、抵抗発熱体の抵抗を小さくすることが好ましいが、抵抗値が小さ過ぎると、一定の温度に達した時の定常時の供給電力を絞る際に電圧を極端に低下させる必要があり好ましくない。また、電流値が大きくなり給電部等の負荷が大きくなり信頼性が劣る等の問題が発生する虞があった。
一方、抵抗が大きすぎると供給電力が小さくなり急速に昇温できない。このため、7〜8個の抵抗発熱体に分割したウェハ加熱装置で、20℃〜160℃まで40秒以内で昇温し、定常時にウェハW面内温度差を0.5℃以下に制御するには抵抗発熱体5の抵抗値は100〜500Ω程に設定することが好ましいことが実験的にも確認されている。そして、温度の低いウェハWを加熱面に載せた直後からウェハW表面の温度差が小さい状態で加熱するには、中心と外周部の抵抗発熱体の供給電力密度を小さくして加熱するとウェハW面内温度差が小さくできることが判明した。逆に中心部や外周部の供給電力密度を大きくして加熱するとウェハW面内温度差が大きな状態で昇温することからウェハW表面のコート層を均一に加熱処理することができない虞があった。そこで、中心部の供給電力密度を抑え、その周囲の供給電力密度を大きくして加熱すると良いことが分かった。このように加熱電力を供給するには、中心部の抵抗発熱体の抵抗値をその周囲に配設される抵抗発熱体の抵抗値より大きくすることが必要である。また、板状体に配設される抵抗発熱体のうち、板状体の最も外側に配設された抵抗発熱体5e〜5hに供給する電力密度は、その内側(板状体の中心側)に位置する抵抗発熱体5b、5c、5d、より小さくすることでウェハWの面内温度差を小さくすることができることが判明した。そのためには、板状体の最も外側に配設された抵抗発熱体の抵抗値をその内側に位置する抵抗発熱体の抵抗値より大きくすることで対応できる。言い換えれば、加熱面に対向して設けられた抵抗発熱体に供給する電力密度は加熱面に対向して中心部で電力密度を小さく、外周部で電力密度を抑え、その中間部で電力密度を大きくして加熱するとウェハ面内の温度差が小さい状態で加熱することができるとともに、加熱面を室温から所望の温度に加熱する際も加熱面の温度差を小さくすることができることから本発明の構成を発明することに至った。
尚、上記電力密度は供給電圧一定として各抵抗発熱体の電力を算出し、各抵抗発熱体5が加熱する対向面積で除することで求める事ができる。対向面積は最外周の抵抗発熱体を囲む範囲内で、抵抗発熱体の境界はその中間線として求めることができる。
また、本発明のヒータは、図3(a)に示すように、中心ゾーン4aの外径、つまり、環状ゾーン4a内で円形状に配設された抵抗発熱体5の外径D1は、板状体2の最も外側に形成された環状ソーン4ehの外径Dの23〜33%であり、上記抵抗発熱体5の外側に設けた第1環状ゾーン4bの外径D2は上記外径Dの45〜55%であり、第1環状ゾーン4bの外側に設けた第2環状ゾーン4cdの外径D3は上記外径Dの63〜83%とするとウェハW加熱時の過渡時の面内温度差を更に小さくすることができるので好ましい。
尚、環状ゾーン4ehの外径Dとは、板状体2の他方の主面に平行な投影面でみて、環状ゾーン4eh内に配設される抵抗発熱体5ehを囲む外接円の直径である。また、同様に、第1環状ゾーン4bの外径D2とは、第1環状ゾーン4b内に配設される抵抗発熱体5bに外接する円の直径である。また、第2環状ゾーン4cdの外径D2とは、第2環状ゾーン4cd内に配設される抵抗発熱体5c、5dに外接する円の直径である。尚、上述した外接円は給電部6に接続する抵抗発熱体5との接続部6aを除き同心円状の円弧に沿って求めることができる。
外径D1が外径Dの23%未満では環状ゾーン4aの外径が小さ過ぎることから環状ゾーン4aの発熱量を大きくしても、環状ゾーン4aの中心部の温度が上がらず、板状体2の中心部の温度が低下する虞があるからである。また、外径D1が33%を越えると環状ゾーン4aの外径が大き過ぎることから、中心部の温度を上げた際に環状ゾーン4aの周辺部の温度も上がり、環状ゾーン4aの周辺部の温度が高くなり過ぎる虞があるからである。尚、好ましくは、外径D1は外径Dの25〜30%であり、更に好ましくは、外径D1は外径Dの26〜29%とすることでウェハWの面内温度差を更に小さくすることができる。
また、外径D2が外径Dの45%未満では、ヒータ1の周辺部が冷却され易いことから、ウェハW周辺の温度の低下を防ぐために第2環状ゾーン4cdの発熱量を増大した際に、ウェハWの中心に近い第2環状ゾーン4cdの内側の温度が高くなり、ウェハWの面内温度差が大きくなる虞があった。また、外径D2が外径Dの55%を越えると、ウェハW周辺の温度の低下を防ごうと第2環状ゾーン4cdの発熱量を大きくしても、第2環状ゾーン4cdの温度は上がるが、ウェハW周辺の温度の低下の影響が第1環状ゾーン4bに達し、第1環状ゾーン4bの外側の温度が低くなる虞があった。好ましくは、外径D2が外径Dの47%〜53%であり、更に好ましくは48〜51%とするとウェハWの面内温度差は更に小さくできた。
また、外径D3が外径Dの63%未満では、ヒータ1の周辺部が冷却され易いことから、ウェハW周辺の温度の低下を防ぐために、板状体2の最も外側に形成された環状ゾーン4ehの発熱量を増大した際に、ウェハWの中心に近い環状ゾーン4ehの内側の温度が高くなり、ウェハWの面内温度差が大きくなる虞があった。また、外径D3が外径Dの83%を越えると、ウェハW周辺の温度の低下を防ごうと環状ゾーン4ehの発熱量を大きくしても、環状ゾーン4ehの温度は上がるが、ウェハW周辺の温度の低下の影響が環状ゾーン4cdに達し、環状ゾーン4cdの外側の温度が低くなる虞があった。好ましくは、外径D3が外径Dの68%〜78%であり、更に好ましくは71〜75%とするとウェハWの面内温度差は更に小さくできた。
以上、ゾーン4の外径サイズについて詳説したが、ゾーン4からなる構成とする大きな特徴は、複数の抵抗発熱体5を互いに離間して形成することになるため、各環状ゾーン4の間に抵抗発熱体5の存在しない空白域を設けることができる点にある。このように空白域をとることで支持ピン8、貫通孔26や給電部6を空白域に形成することが可能となり、これらの支持ピン8、貫通孔26や給電部6による温度バラツキの発生を防止することができる。そして、中心のゾーン4aの中心側の内径D11は、直径Dの5〜10%とすることができることから直径D11の範囲に例えば支持ピン8を設けることができ、支持ピン8によるウェハ面内の温度低下等を防止できる。
また、環状ゾーン4bの内径D22は外径Dの34〜45%とすることが好ましい。このように設定することで環状ゾーン4aと環状ゾーン4bの間に直径の1〜22%程度の抵抗発熱体5が配設されていない環状の空白域を設けることができることからこの領域にリフトピン25等を配設してもウェハ面内の温度低下等を最小限に防止することができる。更に好ましくは内径D22が外径Dの36〜41%である。
また、環状ゾーン4cdの内径D33は、外径Dの55〜65%に設定することが好ましい。そして、環状ゾーン4bと環状ゾーン4cdの間に抵抗発熱体5が配設されていない環状の空白域を設けることができる。この環状の空白域に各抵抗発熱体5へ給電する給電部6を設けることができることから給電部6の配設によりウェハW表面のクールスポット等の発生を防ぐことができる。更に好ましくは内径D33が外径Dの58〜63%である。
更に、環状ゾーン4ehの内径D0は、直径Dの85〜95%とすることが好ましい。これにより、環状ゾーン4ehと環状ゾーン4cdの間に抵抗発熱体5が配設されていない空白域を環状に設けることができる。この環状の空白域にウェハW等の被加熱物を支持する支持ピン8や給電部6を設けることでウェハ面内の温度バラツキを大きくすることなくウェハWを加熱することが容易となる。更に好ましくは、内径D0は、直径Dの90〜92%である。
また、上記のように複数の円環状に配設された抵抗発熱体5からなるウェハ加熱装置1において、周囲の環境から生じる左右前後の微妙な非対称性や、帯状の抵抗発熱体の製法上からの制約から例えばスクリーン印刷では大型の抵抗発熱体を印刷すると左右の厚みバラツキが大きくなる虞があった。このような使用環境や製法上の制約から上記の環状のゾーン4を図3(b)に示すように、板状体2の周方向で分割するとウェハの面内温度差がより小さくなり好ましいことが分かった。
また、本発明のヒータ1は、1つの環状ゾーン4内で板状体の円周方向に分割されて、その分割数に応じて抵抗発熱体5が配設されている場合、つまり、各抵抗発熱体5の境界を挟む中心角(α1、α2)、(β1、β2)が環状ゾーン4ehと環状ゾーン4cdとで異なると、境界線付近のウェハW面内にクールスポットが発生することがなくウェハ面内の温度差を小さくすることができる。
境界を挟む中心角が異なる点について詳説する。図3(b)に示すように、環状ゾーン4cdを分割する境界Zcdは、板状体の中心を通る基準線Lsから板状体の中心角α1〜α2に挟まれた領域に存在する。一方環状ゾーン4ehの境界Zefは中心角β1〜β2に挟まれた領域に存在する。そして、これらのα1〜α2がβ1〜β2と重ならないことを意味している。つまり、図3(b)のZcdとZefが直径方向に連続して、α1〜α2とβ1〜β2が重なるとこの領域で環状ゾーン4cdと環状ゾーン4ehの間にクールスポットが発生する虞があるからである。このクールスポットが発生しやすい例として図4(b)のような抵抗発熱体5の配設態様があり、これを防ぐには図4(a)のように抵抗発熱体を配設すればよい。
また、1つの環状ゾーン4を分割して複数の抵抗発熱体5が配設されている場合、抵抗発熱体5同士の境界の周方向の間隔Lcdが、抵抗発熱体5の半径方向の間隔L6、L7より小さいことが好ましい。または、L1がL4、L5より小さいことが好ましい。このように構成することにより境界付近に発生するクールスポットの発生を防止することができるからである。
また、板状体2の最も外側に形成された環状ゾーン4ehの外径Dとした外接円の面積に対し、該外接円内に占める抵抗発熱体5の面積の比率が5〜30%であることが好ましい。
即ち、環状ゾーン4ehの外径Dの外接円Cの面積(抵抗発熱体5ehを囲む外接円の面積)に対し、外接円C内に占める抵抗発熱体5の面積の比率を5%未満とすると、抵抗発熱体5の相対向する対向領域において、対向領域の対向間隔でもあるL1、L2、・・・が大きくなり過ぎることから、抵抗発熱体5のない間隔L1に対応した加熱面3の表面温度が他の部分と比較して小さくなり、加熱面3の温度を均一にすることが難しいからであり、外接円C内に占める抵抗発熱体5の面積の比率が30%を超えると、板状体2と抵抗発熱体5との間の熱膨張差を2.0×10−6/℃以下に近似させたとしても、両者の間に作用する熱応力が大きすぎることから、板状体2は変形し難いセラミック焼結体により構成されているのでヤング率が大きく好ましいものの、その板厚tが1mm〜7mmと薄いことから抵抗発熱体5を発熱させると、加熱面3側が凹となるように板状体2に反りが発生する虞がある。その結果、ウェハWの中心部の温度が周縁よりも小さくなり、温度バラツキが大きくなる虞がある。
なお、好ましくは、抵抗発熱体5ehを囲む環状ゾーン4ehの外径Dの外接円Cの面積に対し、外接円C内に占める抵抗発熱体5の面積の比率を7%〜20%、さらには8%〜15%とすることが好ましい。
より具体的には、各抵抗発熱体5は外周部に相対向する対向領域を有し、該対向領域の間隔L1が0.5mm以上で、上記板状体2の板厚の3倍以下であることが好ましい。上記対向領域の間隔L1が0.5mm以下では抵抗発熱体5を印刷し形成する際に抵抗発熱体5の対向領域でひげ状の突起が発生しその部分が短絡する虞がある。また、上記対抗領域の間隔L1が板状体2の厚みの3倍を越えると、対向領域L1に対応するウェハWの表面にクールスポットが発生しウェハWの面内温度差を大きくする虞があるからである。
さらに、このような効果を効率良く発現させるには、抵抗発熱体5の膜厚を5〜50μmとすることが好ましい。
抵抗発熱体5の膜厚が5μmを下回ると、抵抗発熱体5をスクリーン印刷法で膜厚を均一に印刷することが困難となるからであり、また、抵抗発熱体5の厚みが50μmを越えると、外接円cに対し、抵抗発熱体5の占める面積の比率を30%以下としても抵抗発熱体5の厚みが大きく、抵抗発熱体5の剛性が大きくなり、板状体2の温度変化により抵抗発熱体5の伸び縮みによる影響で板状体2が変形する虞がある。また、スクリーン印刷で均一の厚みに印刷することが難しくウェハWの表面の温度差が大きくなったりする虞があるからである。なお、好ましい抵抗発熱体5の厚みは10〜30μmとすることが良い。
また、本発明の抵抗発熱体5は導電率の小さな銀を主成分として、30質量%以上含む組成であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上である。このように銀成分は抵抗発熱体の抵抗を小さくすることができることから、抵抗発熱体5の厚みや幅を選択する条件が広がり、板状体2の中央部に配設される第1抵抗発熱体5aやその周りの抵抗発熱体5をウェハW表面温度が小さくなるように配設することができるからである。
次に本発明のヒータのその他の構成について説明する。
上記の各抵抗発熱体5を印刷法等で作製し、抵抗発熱体5の帯は1〜5mmの巾で厚みが5〜50μmで形成することが好ましい。一度に印刷する印刷面の最長距離が大きくなると印刷面の左右や前後でスキージとスクリーンとの間の圧力の違いから印刷厚みが一定とならない虞が生じる。特に、抵抗発熱体5の大きさが大きくなると、抵抗発熱体5の左右前後の厚みが異なり設計した発熱量がバラツク虞があった。発熱量がバラツクとウェハWの面内温度差が大きくなり好ましくない。この抵抗発熱体の厚みのバラツキから生じる温度バラツキを防ぐには、一つの抵抗発熱体からなる外径の大きな個々の抵抗発熱体5を分割することが有効である事が判明した。
そこで、ウェハW加熱面3の中心部を除く同心円環状のゾーン4cdは左右に2分割し、更に大きな円環状のゾーン4ehを4分割することでゾーン4にある抵抗発熱体5の印刷する大きさを小さくすることができることから、抵抗発熱体5の各部の厚みを均一にすることができ、更にウェハWの前後左右の微妙な温度差を補正しウェハWの表面温度を均一にすることができる。また、更に各抵抗発熱体5の帯の抵抗値を微調整するためには、抵抗発熱体に沿って、レーザ等で長溝を形成し抵抗値を調整することもできる。
尚、図2(b)に示すように、抵抗発熱体5a、5b、5c、5d、5e、5f、5g、5hのパターンは夫々折り返しパターンからなる事が好ましい。
さらに、図2(b)に示すように、板状体2の最も外側に位置する抵抗発熱体5e、5f、5g、5hは板状体2の中心から遠い部位は同心円状をした弧状配線部51とこれらと連続して繋がっている連結パターンである小弧状配線部52からなることが好ましい。抵抗発熱体5に電力を供給する給電部6と、該給電部6を囲む金属ケース19とからなり、板状体2の他方の主面にウェハ加熱面を備え、他方の主面に平行な投影面でみて、板状体2の最も外側に設けた環状ゾーン4ehの外径Dが板状体2の直径DPの90〜97%であることが好ましい。
ここで、板状体2の最も外側に設けた環状ゾーン4ehの外径Dが板状体2の直径DPの90%より小さいと、ウェハWを急速に昇温したり急速に降温させる時間が大きくなりウェハWの温度応答特性が劣る。また、ウェハWの周辺部の温度を下げないようウェハWの表面温度を均一に加熱するには、直径Dは被加熱物であるウェハWの直径の1.02倍程度が好ましいことから、ウェハWの大きさに対して板状体2の直径DPが大きくなり、均一に加熱できるウェハWの大きさが板状体2の直径DPに比較して小さくなり、ウェハWを加熱する投入電力に対しウェハWを加熱する加熱効率が悪くなる。更に、板状体2が大きくなることからウェハ製造装置の設置面積が大きくなり、最小の設置面積で最大の生産を行う必要がある半導体製造装置の設置面積に対する稼働率を低下させ好ましくない。
一方、板状体2の最も外側に設けた環状ゾーン4ehの外径Dが板状体2の直径DPの97%より大きいと接触部材17と抵抗発熱体5の外周との間隔が小さく抵抗発熱体5の外周部から熱が接触部材17に不均一に流れ、特に、外周部の外接円Cに接する円弧状パターン51が存在しない部分からも熱が流れ、外周部の円弧状パターン51が板状体2の中心部へ曲がっていることから抵抗発熱体5を囲む外接円Cに沿って円弧状パターン51が欠落する部分Pの温度が低下しウェハWの面内温度差を大きくする虞がある。より好ましくは、環状ゾーン4ehの外径Dが板状体2の直径DPの92〜95%である。
また、図1に示す様に板状体2と金属ケース19の外径が略同等で板状体2を下から金属ケース19が支える場合、ウェハWの面内の温度差を小さくするには、環状ゾーン4ehの外径Dが板状体2の直径DPの91〜95%であり、更に好ましくは92〜94%である。
更に、本発明のヒータ1を用いたウェハ加熱装置において、例えば、図2(b)の抵抗発熱体5ehの外接円Cと接する円弧状パターン51と、該弧状配線部51と連続して繋がった連結パターンである小弧状配線部52とを備え、外接円Cの一部に前記円弧状のパターンのない空白域Pの間隔L1が、前記板状体の直径DPと前記外接円Cの直径Dとの差(以下、LLと略する)より小さいことが好ましい。間隔L1がLLより大きいと空白域Pの熱が板状体の周辺部へ流れ空白域Pの温度が下がる虞がある。しかし、間隔L1がLLより小さいと空白域Pの温度が下がり難く板状体2の加熱面3に載せたウェハWの周辺部の一部の温度が低下せずウェハW面内の温度差が小さくなり好ましい。
上記空白域Pの温度を下げないためには、空白域の温度を上げる必要があり、空白域を加熱する連結パターン52の抵抗を同等か或いは僅かに大きくして発熱量を増大すると、空白域Pの温度が下がる虞が小さくなり、ウェハWの面内温度が均一となり好ましい。印刷法等で作成した抵抗発熱体5が面状の場合、図4(a)に示すように、円弧状パターン51の線巾Wpより連結パターンである小弧状配線部52の線巾Wsを1〜5%小さくすることで連結パターン52の抵抗を大きくすることができ、連結パターンである小弧状配線部52の温度を円弧状パターン51の温度より高めることでウェハWの面内温度を均一とすることができる。
以下、更に詳細な構成について説明する。
図1は本発明のヒータ1を用いて作製したウェハ加熱装置の一例を示す断面図で、板厚tが1〜7mm、100〜200℃のヤング率が200〜450MPaである板状体2の一方の主面を、ウェハWを載せる加熱面3とするとともに、他方の主面に抵抗発熱体5を形成し、この抵抗発熱体5に電気的に接続する給電部6を備えたものである。
100〜200℃のヤング率が200〜450MPaである板状体2の材質としては、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、窒化アルミニウムを用いることができ、この中でも特に窒化アルミニウムは50W/(m・K)以上、さらには100W/(m・K)以上の高い熱伝導率を有するとともに、フッ素系や塩素系等の腐食性ガスに対する耐蝕性や耐プレズマ性にも優れることから、板状体2の材質として好適である。
板状体2の厚みは、2〜5mmとすると更に好ましい。板状体2の厚みが2mmより薄いと、板状体2の強度がなくなり抵抗発熱体5の発熱による加熱時、ガス噴射口24らの冷却エアーを吹き付けた際に、冷却時の熱応力に耐えきれず、板状体2にクラックが発生する虞があるからである。また、板状体2の厚みが5mmを越えると、板状体2の熱容量が大きくなるので加熱および冷却時の温度が安定するまでの時間が長くなる虞がある。
板状体2は、有底の金属ケース19開口部の外周にボルト16を貫通させ、板状体2と有底の金属ケース19が直接当たらないように、リング状の接触部材17を介在させ、有底の金属ケース19側より弾性体18を介在させてナット20を螺着することにより弾性的に固定している。これにより、板状体2の温度が変動した場合に有底の金属ケース19が変形しても、上記弾性体18によってこれを吸収し、これにより板状体2の反りを抑制し、ウェハ表面に、板状体2の反りに起因する温度ばらつきが発生することを防止できるようになる。
リング状の接触部材17の断面は多角形や円形の何れでも良いが、板状体2と接触部材17が平面で接触する場合において、板状体2と接触部材17の接する接触部の巾は0.1mm〜13mmであれば、板状体2の熱が接触部材17を介して有底の金属ケース19に流れ量を小さくすることができる。そして、ウェハWの面内の温度差が小さくウェハWを均一に加熱することができる。更に好ましくは0.1〜8mmである。接触部材17の接触部の巾が0.1mm以下では、板状体2と接触固定した際に接触部が変形し、接触部材が破損する虞がある。また、接触部材17の接触部の巾が13mmを越える場合には、板状体2の熱が接触部材に流れ、板状体2の周辺部の温度が低下しウェハWを均一に加熱することが難しくなる。好ましくは接触部材17と板状体2の接触部の巾は0.1mm〜8mmであり、更に好ましくは0.1〜2mmである。
また、接触部材17の熱伝導率は板状体2の熱伝導率より小さいことが好ましい。接触部材17の熱伝導率が板状体2の熱伝導率より小さければ板状体2に載せたウェハW面内の温度分布を均一に加熱することができると共に、板状体2の温度を上げたり下げたりする際に、接触部材17との熱の伝達量が小さく有底の金属ケース19との熱的干渉が少なく、迅速に温度を変更することが容易となる。
接触部材17の熱伝導率が板状体2の熱伝導率の10%より小さいウェハ加熱装置1では、板状体2の熱が有底の金属ケース19に流れ難く、板状体2から有底の金属ケース19に熱が、雰囲気ガス(ここでは空気)による伝熱や輻射伝熱により流れる熱が多くなり逆に効果が小さい。
接触部材17の熱伝導率が板状体2の熱伝導率より大きい場合には、板状体2の周辺部の熱が接触部材17を介して有底の金属ケース19に流れ、有底の金属ケース19を加熱すると共に、板状体2の周辺部の温度が低下しウェハW面内の温度差が大きくなり好ましくない。また、有底の金属ケース19が加熱されることからガス噴射口24からエアを噴射し板状体2を冷却しようとしても有底の金属ケース19の温度が高いことから冷却する時間が大きくなったり、一定温度に加熱する際に一定温度になるまでの時間が大きくなる虞があった。
一方、前記接触部材17を構成する材料としては、小さな接触部を保持するために、接触部材のヤング率は1GPa以上が好ましく、更に好ましくは10GPa以上である。このようなヤング率とすることで、接触部の巾が0.1mm〜8mmと小さく、板状体2を有底の金属ケース19に接触部材17を介してボルト16で固定しても、接触部材17が変形することが無く、板状体2が位置ズレしたり平行度が変化したりすることなく、精度良く保持することができる。
尚、特許文献2に記載のような、フッ素系樹脂やガラス繊維を添加した樹脂からなる接触部材では得られない精度を達成することができる。
また、接触部材17の材質としては鉄とカーボンからなる炭素鋼やニッケル、マンガン、クロムを加えた特殊鋼等の金属であれば、ヤング率が大きく好ましい。また、熱伝導率の小さな材料としては、ステンレス鋼やFe―Ni−Co系合金の所謂コバールが好ましく、板状体2の熱伝導率より小さくなるように接触部材17の材料を選択することが好ましい。
更に、接触部材17と板状体2との接触部を小さく、且つ接触部が小さくても接触部が欠損しパーティクルを発生する虞が小さく安定な接触部を保持できるために、板状体2に垂直な面で切断した接触部材17の断面は多角形より円形が好ましく、断面の直径1mm以下の円形のワイヤを接触部材17として使用すると板状体2と有底の金属ケース19の位置が変化することなくウェハWの表面温度を均一にしかも迅速に昇降温することが可能である。
次に、有底の金属ケース19は側壁部22と底面21を有し、板状体2はその有底の金属ケース19の開口部を覆うように設置してある。また、有底の金属ケース19には冷却ガスを排出するための孔23が施されており、板状体2の抵抗発熱体5に給電するための給電部6に導通するための給電端子11,板状体2を冷却するためのガス噴射口24、板状体2の温度を測定するための測温素子である熱電対27を設置してある。
なお、有底の金属ケース19の深さは10〜50mmで、底面21は、板状体2から10〜50mmの距離に設置することが望ましい。更に好ましくは20〜30mmである。これは、板状体2と有底の金属ケース19相互の輻射熱により加熱面3の均熱化が容易となると同時に、外部との断熱効果があるので、加熱面3の温度が一定で均一な温度となるまでの時間が短くなるためである。
そして、有底の金属ケース19内に昇降自在に設置されたリフトピン25により、ウェハWを加熱面3上に載せたり加熱面3より持ち上げたりといった作業がなされる。そして、ウェハWは、支持ピン8により加熱面3から浮かした状態で保持され、片当たり等による温度バラツキを防止するようにしている。
また、このウェハ加熱装置1によりウェハWを加熱するには、搬送アーム(不図示)にて加熱面3の上方まで運ばれたウェハWをリフトピン25にて支持したあと、リフトピン25を降下させてウェハWを加熱面3上に載せる。
次に、ウェハ加熱装置1をレジスト膜形成用として使用する場合は、板状体2の主成分を炭化珪素にすると、大気中の水分等と反応してガスを発生させることもないため、ウェハW上へのレジスト膜の貼付に用いたとしても、レジスト膜の組織に悪影響を与えることがなく、微細な配線を高密度に形成することが可能である。この際、焼結助剤に水と反応してアンモニアやアミンを形成する可能性のある窒化物を含まないようにすることが必要である。
なお、板状体2を形成する炭化珪素質焼結体は、主成分の炭化珪素に対し、焼結助剤として硼素(B)と炭素(C)を添加したり、もしくはアルミナ(Al2O3)イットリア(Y2O3)のような金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工したのち、1900〜2100℃で焼成することにより得られる。炭化珪素はα型を主体とするものあるいはβ型を主体とするもののいずれであっても構わない。
一方、炭化珪素質焼結体を板状体2として使用する場合、半導電性を有する板状体2と抵抗発熱体5との間の絶縁を保つ絶縁層としては、ガラス又は樹脂を用いることが可能であり、ガラスを用いる場合、その厚みが100μm未満では耐電圧が1.5kVを下回り絶縁性が保てず、逆に厚みが400μmを越えると、板状体2を形成する炭化珪素質焼結体や窒化アルミニウム質焼結体との熱膨張差が大きくなり過ぎるために、クラックが発生して絶縁層として機能しなくなる。その為、絶縁層としてガラスを用いる場合、絶縁層4の厚みは100〜400μmの範囲で形成することが好ましく、望ましくは200μm〜350μmの範囲とすることが良い。
さらに、板状体2の加熱面3と反対側の主面は、ガラスや樹脂からなる絶縁層4との密着性を高める観点から、平面度20μm以下、面粗さを中心線平均粗さ(Ra)で0.1μm〜0.5μmに研磨しておくことが好ましい。
また、板状体2を、窒化アルミニウムを主成分とする焼結体で形成する場合は、主成分の窒化アルミニウムに対し、焼結助剤としてY2O3やYb2O3等の希土類元素酸化物と必要に応じてCaO等のアルカリ土類金属酸化物を添加して十分混合し、平板状に加工した後、窒素ガス中1900〜2100℃で焼成することにより得られる。板状体2に対する抵抗発熱体5の密着性を向上させるために、ガラスからなる絶縁層を形成することもある。ただし、抵抗発熱体5の中に十分なガラスを添加し、これにより十分な密着強度が得られる場合は、省略することが可能である。
この絶縁層を形成するガラスの特性としては、結晶質又は非晶質のいずれでも良く、耐熱温度が200℃以上でかつ0℃〜200℃の温度域における熱膨張係数が板状体2を構成するセラミックスの熱膨張係数に対し−5〜+5×10−7/℃の範囲にあるものを適宜選択して用いることが好ましい。即ち、熱膨張係数が前記範囲を外れたガラスを用いると、板状体2を形成するセラミックスとの熱膨張差が大きくなりすぎるため、ガラスの焼付け後の冷却時においてクラックや剥離等の欠陥が生じ易いからである。
なお、ガラスからなる絶縁層を板状体2上に被着する手段としては、前記ガラスペーストを板状体2の中心部に適量落とし、スピンコーティング法にて伸ばして均一に塗布するか、あるいはスクリーン印刷法、ディッピング法、スプレーコーティング法等にて均一に塗布したあと、ガラスペーストを600℃以上の温度で焼き付けすれば良い。また、絶縁層としてガラスを用いる場合、予め炭化珪素質焼結体又は窒化アルミニウム質焼結体からなる板状体2を850〜1300℃程度の温度に加熱し、絶縁層を被着する表面を酸化処理しておくことで、ガラスからなる絶縁層との密着性を高めることができる。
抵抗発熱体5は、導電性の金属粒子にガラスフリットや金属酸化物を含む電極ペーストを印刷法で板状体2に印刷、焼き付けしたもので、金属粒子としては、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Rhの少なくとも一種の金属を用いることが好ましく、またガラスフリットとしては、B、Si、Znを含む酸化物からなり、板状体2の熱膨張係数より小さな4.5×10−6/℃以下の低膨張ガラスを用いることが好ましく、さらに金属酸化物としては、酸化珪素、酸化ホウ素、アルミナ、チタニアから選ばれた少なくとも一種を用いることが好ましい。
ここで、抵抗発熱体5を形成する金属粒子として、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Rhの少なくとも一種の金属を用いるのは、電気抵抗が小さいからである。
抵抗発熱体5を形成するガラスフリットとして、B、Si、Znを含む酸化物からなり、抵抗発熱体5を構成する金属粒子の熱膨張係数が板状体2の熱膨張係数より大きいことから、抵抗発熱体5の熱膨張係数を板状体2の熱膨張係数に近づけるには、板状体2の熱膨張係数より小さな4.5×10−6/℃以下の低膨張ガラスを用いることが好ましいからである。
また、抵抗発熱体5を形成する金属酸化物としては、酸化珪素、酸化ホウ素、アルミナ、チタニアから選ばれた少なくとも一種を用いるのは、抵抗発熱体5の中の金属粒子と密着性が優れ、しかも熱膨張係数が板状体2の熱膨張係数と近く、板状体2との密着性も優れるからである。
ただし、抵抗発熱体5に対し、金属酸化物の含有量が80%を超えると、板状体2との密着力は増すものの、抵抗発熱体5の抵抗値が大きくなり好ましくない。その為、金属酸化物の含有量は60%以下とすることが良い。
そして、導電性の金属粒子とガラスフリットや金属酸化物からなる抵抗発熱体5は、板状体2との熱膨張差が3.0×10−6/℃以下であるものを用いることが好ましい。
即ち、抵抗発熱体5と板状体2との熱膨張差を0.1×10−6/℃とすることは製造上難しく、逆に抵抗発熱体5と板状体2との熱膨張差が3.0×10−6/℃を超えると、抵抗発熱体5を発熱させた時、板状体2との間に作用する熱応力によって、加熱面3側が凹状に反る恐れがあるからである。
さらに、絶縁層上に被着する抵抗発熱体5材料としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)等の金属単体を、蒸着法やメッキ法にて直接被着するか、あるいは前記金属単体や酸化レニウム(Re2O3)、ランタンマンガネート(LaMnO3)等の導電性の金属酸化物や上記金属材料を樹脂ペーストやガラスペーストに分散させたペーストを用意し、所定のパターン形状にスクリーン印刷法等にて印刷したあと焼付けして、前記導電材を樹脂やガラスから成るマトリックスで結合すれば良い。マトリックスとしてガラスを用いる場合、結晶化ガラス、非晶質ガラスのいずれでも良いが、熱サイクルによる抵抗値の変化を抑えるために結晶化ガラスを用いることが好ましい。
ただし、抵抗発熱体5材料に銀(Ag)又は銅(Cu)を用いる場合、マイグレーションが発生する恐れがあるため、このような場合には、抵抗発熱体5を覆うように絶縁層と同一の材質からなるコート層を40〜400μm程度の厚みで被覆しておけば良い。
更に、抵抗発熱体5への給電方法については、有底の金属ケース19に設置した給電端子11を板状体2の表面に形成した給電部6にバネ(不図示)で押圧することにより接続を確保し給電する。これは、2〜5mmの厚みの板状体2に金属からなる端子部を埋設して形成すると、該端子部の熱容量により均熱性が悪くなるからである。そのため、本発明のように、給電端子11をバネで押圧して電気的接続を確保することにより、板状体2とその有底の金属ケース19の間の温度差による熱応力を緩和し、高い信頼性で電気的導通を維持できる。さらに、接点が点接触となるのを防止するため、弾性のある導体を中間層として挿入しても構わない。この中間層は単に箔状のシートを挿入するだけでも効果がある。そして、給電端子11の給電部6側の径は、1.5〜5mmとすることが好ましい。
また、板状体2の温度は測温素子、例えば、熱電対で測定することができ、板状体2に熱電対27の先端を埋め込むこむことにより測定する。熱電対27としては、その応答性と保持の作業性の観点から、外径0.8mm以下のシース型の熱電対27を使用することが好ましい。この熱電対27の先端部は、板状体2に孔が形成され、この中に設置された固定部材により孔の内壁面に押圧固定することが測温の信頼性を向上させるために好ましい。同様に、測温素子としては、素線の熱電対やPt等の測温抵抗体を埋設して板状体2の測温を行うことも可能である。
なお、板状体2の一方の主面には、図1に示すように、複数の支持ピン8を設け、板状体2の一方の主面より一定の距離をおいてウェハWを保持するようにしても構わない。
また、図1では板状体2の一方の主面に抵抗発熱体5を備えたウェハ加熱装置111について示したが、本発明は、板状体2の内部に抵抗発熱体5を埋設したものでもよく、さらには、板状体2の一方の主面と抵抗発熱体5との間に静電吸着用やプラズマ発生用としての電極を埋設したものであっても良いことは言うまでもない。
まず、窒化アルミニウム粉末に対し、重量換算で1.0質量%の酸化イットリウムを添加し、さらにイソプロピルアルコールとウレタンボールを用いてボールミルにより48時間混練することにより窒化アルミニウムのスラリーを製作した。
次に、窒化アルミニウムのスラリーを200メッシュに通し、ウレタンボールやボールミル壁の屑を取り除いた後、防爆乾燥機にて120℃で24時間乾燥した。
次いで、得られた窒化アルミニウム粉末にアクリル系のバインダーと溶媒を混合して窒化アルミニムのスリップを作製し、ドクターブレード法にて窒化アルミニムのグリーンシートを複数枚製作した。
そして、得られた窒化アルミニムのグリーンシートを複数枚積層熱圧着にて積層体を形成した。
しかる後、積層体を非酸化性ガス気流中にて500℃の温度で5時間脱脂を施した後、非酸化性雰囲気にて1900℃の温度で5時間の焼成を行い各種の熱伝導率を有する板状体を製作した。
そして、窒化アルミニウム焼結体に研削加工を施し、板厚3mm、直径330mmの円盤状をした板状体を複数枚製作し、更に中心から60mmの同心円上に均等に3箇所貫通孔を形成した。貫通口径は、4mmとした。
次いで板状体の上に抵抗発熱体を被着するため、導電材としてAu粉末とPd粉末と、前記同様の組成からなるバインダーを添加したガラスペーストを混練して作製した導電体ペーストをスクリーン印刷法にて所定のパターン形状に印刷したあと、150℃に加熱して有機溶剤を乾燥させ、さらに550℃で30分間脱脂処理を施したあと、700〜900℃の温度で焼き付けを行うことにより、厚みが50μmの抵抗発熱体を形成した。
ゾーンの配置は、図3や図5に示す配置とした。
そして図3のゾーンの配置では、中心部に抵抗発熱体の最大直径Dの25%の円形の1つにゾーンを形成し、その外側に外径がDの50%の円環を形成し、その外側に、外径70%のゾーンを2つのゾーンに分割し、更に最外周のゾーンの内径がDの90%の円環を4つのゾーンに分割した計8個のゾーン構成とした。そして、最外周の4つのゾーンの外接円Cの直径を305mmとして試料を作製した。
また、図5のゾーンの配置では、中心部に抵抗発熱体の最大直径Dの30%の円形の1つにゾーンを形成し、その外側に外径がDの60%の円環を2つのゾーンに分割し、更に最外周のゾーンの内径がDの70%の円環を4つのゾーンに分割した計7個のゾーン構成とした。そして、最外周の4つのゾーンの外接円Cの直径を340mmとして試料を作製した。
尚、各抵抗発熱体の抵抗値を調整するために各抵抗発熱体の線幅を変えて表1の抵抗値となるように各種の抵抗発熱体を作製した。
しかるのち、抵抗発熱体5に給電部6をロウ付けし固着させることにより、板状体2を製作した。尚、本実施例では中央部の抵抗発熱体とその外側の円環状の発熱体は並列接続し同時に加熱制御を行った。
また、有底の金属ケースの底面の厚みは2.0mmのアルミニウムと側壁部を構成する厚み1.0mmのアルミニウムからなり、底面に、ガス噴射口、熱電対、導通端子を所定の位置に取り付けた。また、底面から板状体までの距離は20mmとした。
その後、前記有底の金属ケースの開口部に、板状体を重ね、その外周部にボルトを貫通させ、板状体と有底の金属ケースが直接当たらないように、リング状の接触部材を介在させ、接触部材側より弾性体を介在させてナットを螺着することにより弾性的に固定することによりウェハ加熱装置とした。
尚、接触部材17の断面はL字形状で、環状とした。L字形状の段部上面と板状体の下面と円環状に接触し、板状体との接触面の幅は3mmとした。また、接触部材の材質は耐熱性樹脂を用いた。作製した各種のウェハ加熱装置を試料No.1〜7とした。
作製したウェハ加熱装置の評価は、測温抵抗体が29箇所に埋設された直径300mmの測温用ウェハを用いて行った。夫々のウェハ加熱装置に電源を取り付け25℃から160±0.25℃までの昇温した時間を昇温時間として求めた。また、昇温時間内のウェハW面内温度差の最大値を昇温過渡時のウェハ面内の最大温度差として求めた。
また、ウェハWの温度を160℃に設定してからウェハWを取り除き、室温の測温ウェハWを加熱面に載せ、ウェハWの平均温度が160℃±0.15℃の範囲で一定となるまでの時間を回復時間として測定した。また、回復時間に達するまでのウェハW面内の最大温度差を過渡時のウェハW面内の最大温度差として求めた。
また、30℃から200℃に昇温し5分間保持した後、10分間冷却する温度サイクルを1000サイクル繰り返した後、室温から160℃に設定し10分後のウェハ温度の最大値と最小値の差を定常時のウェハWの温度差として測定した。それぞれの結果は表1に示す通りである。
表1に示すように、試料No.9は、中央部の第1抵抗発熱体5aとその周辺に環状の3つのゾーンを備えているが、各抵抗発熱体の抵抗値Rb〜Rhが約130Ωと略同一であることから、過渡時のウェハ面内の最大温度差が8.3℃と大きく定常温度に復帰するまでの回復時間も72秒と大きく好ましくなかった。また、昇温過渡時のウェハW面内の最大温度差が6.5℃と大きく昇温時間も65秒と大きく好ましくなかった。
また、試料No.10は、中央部の第1抵抗発熱体5aとその周りに2つの環状ゾーンを備えたウェハ加熱装置で、各抵抗発熱体の抵抗値Rb〜Rhが約110Ωと略等しく過渡時のウェハ面内の最大温度差が7.9℃と大きく、定常温度に復帰するまでの時間も65秒と大きく好ましくなかった。また、昇温過渡時のウェハW面内の最大温度差が6.2℃と大きく昇温時間も61秒と大きく好ましくなかった。
一方、板状体と、該板状体の内部または一方の主面の中央部に配設した第1抵抗発熱体5aと、該第1抵抗発熱体5aと離間して周囲に設けた環状ゾーン内に配設した第2抵抗発熱体5bとを具備するヒータであって、上記第1抵抗発熱体5aの抵抗値Raが上記第2抵抗発熱体5b、または5c、5dの抵抗値Rb、またはRc、Rdよりも大きい試料No.1〜8は、過渡時のウェハW面内の最大温度差は6℃以下と小さく優れていることが分かった。
更に、環状ゾーンを略同心環状に複数形成し、上記板状体の最も外側に形成された環状ゾーン4eh内に第3抵抗発熱体5e〜5fを配設し、上記第2抵抗発熱体の抵抗値が上記第3抵抗発熱体の抵抗値より小さい試料No.5〜8は過渡時のウェハW面内の最大温度差が5.4℃以下と更に小さく優れていることが分かった。
また、試料No.1〜4のように、第1抵抗発熱体の抵抗値Raが上記第2抵抗発熱体の抵抗値Rc、Rdの1.05〜2倍であると過渡時のウェハW面内の最大温度差は6℃以下と小さく、回復時間が47秒以下で、昇温時のウェハW面内の最大温度差が4.9℃以下で、昇温時間が40秒以下と小さく優れていることが分かった。
また、試料No.2〜3のように、第1抵抗発熱体の抵抗値Raが上記第2抵抗発熱体の抵抗値Rc、Rdの1.1〜1.6倍であると過渡時のウェハW面内の最大温度差は5.3℃以下と小さく、回復時間が46秒以下で、昇温時のウェハW面内の最大温度差が4.6℃以下で、昇温時間が39秒以下と小さく優れていることが分かった。
また、試料No.5〜8の様に、第3抵抗発熱体の抵抗値Re〜Rhが第2抵抗発熱体の抵抗値Rc、Rdの1.1〜2.5倍であること過渡時のウェハW面内の最大温度差は5.4℃以下と小さく、回復時間が45秒以下で、昇温時のウェハW面内の最大温度差が4.5℃以下で、昇温時間が39秒以下と小さく優れていることが分かった。
更に、試料No.6、7の様に、第3抵抗発熱体の抵抗値Re〜Rhが第2抵抗発熱体の抵抗値Rc,Rdの1.5〜2倍であること過渡時のウェハW面内の最大温度差は4.7℃以下と小さく、回復時間が43秒以下で、昇温時のウェハW面内の最大温度差が4.2℃以下で、昇温時間が36秒以下と小さく優れていることが分かった。