上記のようにグロースタータ(点灯管)などの紫外線放射始動素子を用いたことによりランプの始動特性はよくなってきたが、点灯経過とともに光束の低下が大きく、すなわち点灯経過に伴う光束維持特性の低下が注目されるようになってきた。
本発明者はこの光束維持特性の低下原因について種々究明した結果、
高管壁負荷と始動時の電極構成物質のスパッタリングが管壁の黒化を招き光束の早期低下を来たす原因となっていることを突き止めた。また、このスパッタリングは経時による電極の劣化につながるので、始動電圧が上昇するという不具合にもつながる。
この光束維持特性の向上手段としては、管壁負荷を低下させる方法があるが、管壁負荷を低下させるために放電路長を大きくして発光管の内表面積を大きくした場合には発光効率の低下や始動性の悪化を招く問題がある。このため管壁負荷は、相反して変化する光束維持特性と発光効率や始動性などのランプ特性を全て満足する範囲でなければならない。
また、希にではあるが電極のハロゲンとの反応による侵蝕が甚だしい場合には、黒化した部分が内部に封入したガスを吸着してガス圧の低減を来しランプの短寿命を招く不具合があった。
この現象は、定格ランプ電力が400W以下の補助電極を備えていないランプにおいては特に目立って大きく、その原因は始動時において供給される初期電子が少ないことに起因すると推定される。他に電極物質のスパッタリングを低減させる手段として封入ガス圧を高める方法もあるが始動電圧の上昇を招く問題がある。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、一対の電極を有する発光管および始動補助用のグロースタータを備えた高圧放電ランプにおいて、始動が容易であるとともに発光効率および光束維持特性の向上がはかれる高圧金属蒸気放電ランプおよび照明器具を提供することを課題としている。
本発明の請求項1に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、耐熱透光性気密容器からなる発光管バルブ内に一対の電極が対向配設され、放電媒体として5〜20kPaのアルゴンガスおよびハロゲン化物などを封入した定格ランプ電力が400W以下の発光管と、この発光管を囲続して配設された耐熱透光性部材からなる円筒状のシュラウドと、この発光管およびシュラウドを支持したサポート部材と、サポート部材に支持され、少なくとも波長200〜460nmの紫外線を放射するグロースタータを含む始動回路構成部と、上記電極および始動回路構成部に電気的に接続した給電部材と、上記発光管、シュラウドおよび始動回路構成部ならびにこれを支持するサポート部材を収容して気密雰囲気にある外管バルブとを具備していることを特徴としている。
発光管内の一対の電極と、この電極と並列的に始動器として接続した始動回路構成部の紫外線を発生するグロースタータ(点灯管)とが始動時に同時に通電され、グロースタータが蛍光ランプのグロースタータと同じ原理でバイメタルの開放時に安定器から高圧パルスを発生させるとともに、グロースタータのグロー放電によってアルゴンガスや水銀などの発光物質から発生した紫外線を発光管に向けて照射し、初期電子数を増加して放電ランプの始動を容易に行わせることができる。
本発明ではランプ電力に適応した小径の発光管バルブが用いられ、始動用の補助電極を設けることによる不具合発生の多い定格ランプ電力が400W級以下の放電ランプにおいて、発光管内に封入するアルゴンガスの封入圧を適性範囲内に規制することにより補助電極を設けなくても、ランプの始動性および光束維持特性を向上できる。
すなわち、定格ランプ電力400W以下のバルブ内径が、通常、10〜20mm程度と小径化された発光管は、バルブの一端に2本の封着導体が埋設されることは相互が近接して接触のおそれがあったり、異種部材が埋設された封止部における歪量も多くなって強度的にも弱くクラック発生などの危険度も高かった。
しかし、本発明の発光管は、発光管バルブの一端に1本の封着導体を封止するのみなので封着導体相互が短絡するおそれがなく、また封止部の歪量を低減してその強度を高めることができる。また、電極の近傍に始動用の補助電極を設けていないので、ランプの安定点灯時に管内で発生する不純物質の発生量を低減できる。
また、封入するアルゴンガス圧が高まると始動電圧の上昇を招く不具合があるが、本発明では始動時に紫外線を放射するグロースタータを外管バルブ内に収容していることにより封入圧を最大20kPaにまで可能とすることができる。
また、発光管およびこの発光管を囲続して配設されたシュラウドは、両端部が枠状のサポート部材で支持されている。このサポート部材は、発光管への給電部材と電気的に接続されていてもよいが、絶縁して支持させ電位がかからないようにしてもよく、この場合は、光電子作用によってハロゲン化ナトリウムを封入した発光管からナトリウムが抜け出るのを防ぐ作用を奏する。
また、本発明では、発光管に近接するとともに囲続して配設したシュラウドによって放熱が遮蔽されるため、発光管バルブの温度が全体的に上昇し、最冷部をなすバルブ内端部の電極の根元部をも昇温するので、バルブ内に封入した発光金属を加熱して蒸気圧を高め発光効率や演色性を高めることができる。
さらに、万一、発光管バルブが破損しガラス片などが飛散しても、シュラウドがこれを阻止ないしは衝撃を緩和して外管バルブに及ぼす応力を低減して、外管バルブの破損を防止して安全上も大いに寄与できる。
本発明でいう定格ランプ電力が400W以下のランプとは、ランプ点灯中の入力電力がほとんど400W以下であるものを意味し、ランプ点灯中に時おり入力電力が400Wを少々超えるランプにまで適用できるものである。
本発明が適用できる高圧金属蒸気放電ランプは、たとえば、メタルハライドランプ、ショートアークメタルハライドランプや高圧水銀ランプなどで発光管が外管バルブ内に封装された二重管などの多重管構造をしていているランプに適用できる
本発明の請求項2に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、発光管の管壁負荷BL(W/cm2)が14≦BL≦17の範囲であることを特徴としている。
15〜45mmの離間距離を隔て対向配設した電極を有する発光管を囲いシュラウドを設けたものにおいて適正な管壁負荷BLとすることにより、所望の発光効率、光束維持特性や始動特性を呈する発光管が得られる。
なお、発光効率と光束維持特性や始動特性との間には相反する関係にあるが、管壁負荷BL(W/cm2)が14未満であると、発光効率が低下したり始動特性が悪化するといった不具合があり、また、管壁負荷BL(W/cm2)が17を超えると光束維持特性の著しい低下を招くなどの不具合がある。
なお、管壁負荷の低下に伴う始動特性の悪化は、発光管の内径が同一の場合には発光管長を大きくして発光管内表面積を大きくする分、電極間距離が長くなることに基ずくものである。
したがって、シュラウドにより増加した発光効率の分だけ管壁負荷BLを低減させることによって、同じ発光効率を保ちながら光束維持特性を向上することができる。
なお、上記管壁負荷BL(W/cm2)を規定する管壁部分とは、発光管バルブ端部を除く電極先端部間の間隔に対応する内壁部分の面積をいう。
本発明の請求項3に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、紫外線を放射するグロースタータが、内部にバイメタル電極を有するとともにアルゴンなどを主体とする希ガスおよび必要に応じて水銀が封入されていることを特徴としている。
グロースタータは点灯管であって、バルブ内に一対のバイメタル電極あるいは少なくとも1個のバイメタル電極と固定電極とで構成されているとともにアルゴンArなどの希ガスおよび必要に応じて水銀が添加された放電媒体が封入されている。そして、上記バイメタル電極が放電熱に応動したスイッチング作用をなすとともに希ガスや水銀が波長200nm〜460nmの紫外線(200nm未満や460nmを越える波長を含んでいてもよい。)の少なくとも一部を放射して始動補助体としての作用をする。
上記グロースタータのバルブは紫外線透過性の石英ガラスやホウケイ酸ガラスなどの硬質ガラス、軟質ガラスあるいはセラミックなどの材料を用い形成することができる。
本発明の請求項4に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、紫外線放射するグロースタータの少なくとも一部がシュラウド外周面の仮想延長線内にあることを特徴としている。
シュラウド(発光管)の中心軸とグロースタータの中心とが合致しているのが紫外線の照射が多く最も好ましいが、円筒形状をなすシュラウドの外周面をサポート部材側に延長した仮想線の内側にグロースタータの少なくとも一部が存在するよう配置すれば、所定の紫外線が直線状またはシュラウドの内表面や外表面で反射して発光管に向かって効率的に放射されることから、上記請求項1に記載と同様な作用を奏する。
すなわち、本発明では紫外線を発生するグロースタータ(点灯管)の配設位置をシュラウドの仮想延長線内とすることにより、その始動の確実性を高めることができた。また、グロースタータは、エージングのときの方向によりバルブ内面に被着するエミッタの位置が異なり、このエミッタ被着部分が紫外線の透過を遮蔽していることがあるのでその取付け方向には注意を要する。
本発明の請求項5に記載の高圧金属蒸気放電ランプは、シュラウドが、少なくとも発光管バルブの内端部を覆う長さを有していることを特徴としている。
高圧金属蒸気放電ランプは、点灯時の発光管内の圧力はランプ電力や大きさにも因るが100kPa〜500kPa程度になり、不測の事態、たとえば寿命末期には発光管バルブの劣化や点灯回路の不具合に起因する異常電流などによって内圧が上昇したときなどに、その圧力に耐えきれず発光管バルブの破裂を招くことがある。
このシュラウドが長いほど発光管バルブ破裂の際のガラス片などの飛散を防ぐことができ、発光管の全長以上を覆うようにしてもよいが、最低でも発光管の内端部間を覆っていればよい。また、バルブの最冷部を形成する内端部が保温されることにより所定の作用を奏する。
本発明の請求項6に記載の照明器具は、器具本体と、この器具本体内に配設された上記請求項1ないし5のいずれか一に記載の高圧金属蒸気放電ランプと、この高圧金属蒸気放電ランプに接続した点灯回路装置とを具備していることを特徴としている。
上記請求項1ないし5に記載の発光効率(光束維持特性)の低下やランプ電圧(始動特性)の上昇を来たすことがない高圧金属蒸気放電ランプを組み込んでいるので、発光特性の向上がはかれるとともに、万一、発光管バルブが破損してもガラス片を飛散させることがない安全性の高い照明器具を提供できる。
この照明器具は、器具内に点灯回路装置を備えていても、器具外に点灯回路装置を設けランプと接続されているものであってもよい。
この照明器具は、店舗、ホール、地下街、オフィスやスポーツ施設などの照明用として、高い発光特性を呈することができる。
請求項1の発明によれば、始動時に電極構成物質のスパッタリングを低減するために発光管に封入したアルゴンガス圧を高くしても、外管バルブ内に収容したグロースタータが紫外線を放射するので、始動時の発光管内における初期電子数が増加される結果、放電の生起がし易くなりランプの始動特性の向上がはかれる。また、発光管内壁の黒化を抑制して寿命中の光束維持特性の向上がはかれるとともに短寿命の発生を防止した高圧金属蒸気放電ランプを提供することができる。
請求項2の発明によれば、シュラウドで囲った発光管の管壁負荷値BL(W/cm2)を規制することにより、高い発光効率または光束維持特性や始動特性が得られる。すなわち、発光効率および始動特性と光束維持特性との間には相反する関係にあるが、管壁負荷BL値を規制することで所望の特性を呈する高圧金属蒸気放電ランプを提供することができる。
請求項3の発明によれば、グロースタータが点灯管であって、バイメタル電極が放電熱に応動したスイッチング作用をなすとともに放電媒体による紫外線放射がなされランプの始動特性の向上がはかれる。
請求項4の発明によれば、発光管に向けグロースタータからの紫外線放射を効率よく照射させることができランプの始動を容易に、かっ、確実に行わせ始動に要する時間の短縮がはかれる高圧金属蒸気放電ランプを提供することができる。
請求項5の発明によれば、万一、発光管バルブが破損してガラスが飛散してもシュラウドを設けたことにより、この飛散を阻止ないしは衝撃を緩和して外管バルブに及ぶ応力を低減でき外管バルブの破損を防止して安全性の向上がはかれるとともに発光管バルブを保温して発光金属の蒸気圧を高め発光効率や演色性などの発光特性を向上した高圧金属蒸気放電ランプを提供できる。
請求項6の発明によれば、上記請求項1ないし5のいずれか一に記載の効果を有する高圧放電ランプを組み込んでいるので、発光特性や始動性の向上がはかれるとともに、万一、発光管バルブが破損してもガラス片を飛散させることがない安全性の高い照明器具を提供することができる。
以下,本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る高圧金属蒸気放電ランプとして、メタルハライドランプの概略を示す正面図、図2は図1に示す高圧金属蒸気放電ランプの点灯回路の概略図である。
この図1に示すメタルハライドランプL1は定格電力が200〜400Wで、一端部にステム2を封止した外管バルブ1内に配設したサポート部材7に、発光管4およびこの発光管4を囲続した透光性のシュラウド6の端部を支持させた構成となっている。
これら各部分を詳述すると、外管バルブ1はホウケイ酸ガラスなどの透光性の硬質ガラスからなり、中央部に膨出部11を有するとともに図示上部側の閉塞されたトップ部12および下部側のネック部13に小径部分を有するいわゆるBT形をなしている。このネック部13側にはステム2が封止られた封止部(図示しない。)を有する気密雰囲気をなし、この封止部を覆ってE形の口金3が取付けられている。
また、この外管バルブ1内に封装された発光管4は、ランプの定格によっても異なるが、透光性気密容器を形成する肉厚が1.0mm〜2.0mm程度で、内径10〜20mm程度、長手方向の内側端部の間隔が25〜60mm程度の直管(T)形の石英ガラスからなる発光管バルブ40の両端部に圧潰封止部4a,4bを有し、このバルブ40内には15〜45mmの間隔を隔て対向配置したタングステンWなどで構成した一対の電極5a,5bが設けられている。
上記圧潰封止部4a,4b内にはリボン状のモリブデンMoからなる金属箔41a,41bが気密に封止られていて、この金属箔41a,41bの内寄りには上記電極5a,5bが、バルブ40の外寄りにはモリブデンMo線などからなる外部導入線42a,42bがそれぞれ溶接やかしめ止めなどの手段で接続されている。
また、発光管バルブ40内には、発光および放電媒体として所定量の水銀と金属ハロゲン化物および5kPa〜20kPaのアルゴンガスが封入してある。
なお、希ガスとしてはアルゴンArガスが適しているが、分圧比で10%以下、好ましくは5%以下のネオンNeなどの他の希ガスが混入されていてもよい。また、金属ハロゲン化物としては、よう素Iや臭素Brなどのハロゲンと、ナトリウムNa、スカンジウムSc、セシウムCsやディスプロシウムDyなどの少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度などの特性向上をはかっている。
また、透光性シュラウド6は、石英ガラスなどの耐熱透光性の材料からなる上下端部が開口した円筒形状をなし、内部の発光管4と所定の間隔を隔て全体を囲緯するとともに発光管4と略同じ全長でもって配設されている。また、このシュラウド6の外面の全長に亘り、耐熱性のセラミックスなどの無機系繊維を編んだ線状の補強体63が5〜20ターン巻装してある。
外管バルブ1内における上記発光管4およびシュラウド6は、モリブデンMoやステンレスなどの線材や板状体を略長四角形状の枠状に成形したサポート部材7に上下両端部を係止する金属製の保持板60,60を介し保持されている。
このサポート部材7は、下方側72(ネック部13側)の部材が上記ステム2に支持した金属部材(図示しない。)などに締結などの手段で固定されたり、ステム2に植設した導入線21,22とは別の外部導入線を有していないサポート線(図示しない。)などに固定して支持されている。すなわちサポート部材7は、上記導入線21,22や後述する給電線などの発光管4への給電部材と相互に電気的接続はされていない。
そして、上記シュラウド6は、サポート部材7中間の所定位置にシュラウド6の端面とほぼ同形のリング状に打ち抜き複数箇所に起立片61,…、62,…を設けた保持板60,60を両端部に当て起立片61,…を起立させてシュラウド6の端部を外側から抑えたり内外面の両側から挟むようにするとともに一部の起立片62,…をサポート部材7に溶接やかしめなどの手段で接続することにより固定保持されている。
また、上記保持板60,60は、上記シュラウド6の両端を保持するとともにシュラウド6内の発光管4の封止部4a,4bを切起片(図示しない。)で挟圧することにより発光管4を保持固定している。
なお、サポート部材7の上方側の側面に金属製の羽根状の弾性(ばね)部材73,73を設け、この弾性(ばね)部材73,73をバルブ1のトップ部12の内周面に弾性当接することにより、上記発光管4およびシュラウド6が外管バルブ1の中心軸上にあるよう、また、耐振性を高めることができる。また、図示していないがサポート部材77の下方側の側面にも弾性(ばね)部材を設け外管バルブ1のネック部13の内周面に弾性当接するようにしてもよい。また、図中77,…は、サポート部材7や給電線74,75などの間を橋絡して補強する電気絶縁物からなるブリッジ部材である。
この外管バルブ1内における電気的接続は、たとえば図2に示す点線で囲った範囲内の回路構成となっている。すなわち、ステム2の一方の導入線21は給電線75、外部導入線42aを介し一方の電極5aと接続し、ステム2の他方の導入線22は給電線74、発光管バルブ40と遠ざかるよう湾曲して離した細線からなる給電線76、外部導入線42bを介し他方の電極5bと接続している。また、発光管4の上下の電極5a,5bと並列的に始動回路構成部80が接続されている。
この始動回路構成部80は、始動用のグロースタータ(点灯管)81、バイメタルを用いた熱応動スイッチ82、抵抗83を直列接続したものからなる。なお、図中、88は交流電源、89は安定器などで、これら部品で点灯回路装置を構成している。また、点線内は放電ランプL1の外管バルブ1内に封装された部品である。
なお、上記グロースタータ(点灯管)81の構成は、たとえば石英ガラスからなるバルブの一端部に一対のリード線を気密に封着した封止部が形成され、バルブ内には一対のリード線に接続され所定の放電間隔を隔て対峙して設けられた少なくとも一方がバイメタルからなる電極を有するとともにアルゴンArが所定圧力封入されている。
そして、グロースタータ81は、通電時に相互のバイメタル電極間あるいはバイメタル電極と固定電極との間にグロー放電が生起して、このグロー放電によりアルゴンArガスから発生する紫外線を放射する。
そして、本発明では紫外線の放射があるグロースタータ81の配設方向は問わないが、この実施の形態ではグロースタータ81が、発光管4の中心軸とほぼ同軸上にあって、しかも紫外線透過が最も多いバルブの封止部側を発光管4に指向して給電線74,75などに取り付けられている。
すなわち、グロースタータ81は、放電電極に形成されたエミッタ物質がエージング時に飛散して、バルブ内面の特定箇所たとえばこの場合はバルブのトップ(頂)部側にエミッタ物質などが多く被着することにより不透明となっていて紫外線の放射が阻害されるので、封止部側を発光管4に向けている。
また、この実施の形態では発光管4およびシュラウド6はサポート部材7に支持されているが、何ら電気的に接続していない電位のかからないサポート部材7であって、発光管4内の電極5a,5bへの電気的接続はステム2の導入線21,22から給電線74,75などの別の給電部材により行われる。
そして、図1に示す高圧金属蒸気放電ランプL1は、BT型の外管バルブ1内に発光管4を収容した二重管構造のメタルハライドランプとして、鉛直や水平状態あるいは傾斜状態で点灯される。
このメタルハライドランプL1の点灯は、ランプL1をソケットに装着して電源88から安定器などを有する点灯回路装置89を介し通電される。この点灯回路装置89に接続されたランプL1は、始動時、口金3の端子部(図示しない。)と電気的に接続した導入線21,22、と給電線74,75を介し発光管4内にある電極5aと電極5bおよび給電線74,75に並列的に接続したグロースタータ81などからなる始動回路構成部80の両端間に電圧が印加される。
この電圧印加によって、グロースタータ(点灯管)81、熱応動スイッチ82、抵抗83を直列接続した始動回路構成部80の抵抗が小さくインピーダンスの低いグロースタータ81内のバイメタル電極とこの電極と離間した固定電極間または離間した一対のバイメタル電極間からなる放電電極間でグロー放電が生起し、グロースタータ81のほぼ透明な封止部側から紫外線が放射され発光管4の一方の端部の電極5a,5bに向け紫外線が照射される。そして、このグロースタータ81内のバイメタル電極が放電により加熱され、熱湾曲(応動)して他極と接触することにより放電が停止する。
すなわち、発光管4の放電空間内に存在する電極5a,5bに、電極構成金属の仕事関数以上のエネルギをもつ紫外線が照射された場合、電極5a,5b表面から電子が放出され、この初期電子数が増加して電極5a,5b間に放電が生起し易くなる。
そして、グロースタータ81内のバイメタル電極が冷えてきて放電電極と離れた瞬間に、点灯回路装置89の安定器に高圧パルスが発生して両電極5a,5bにこの高圧パルスが印加されると放電が電極5a,5b間に生起して発光管4を短時間のうちに容易に始動するとともに、その後は安定した点灯を持続させることができる。
なお、両電極5a,5b間で放電が生起すれば発光管4の温度が上昇して熱応動スイッチ82が開放され、グロースタータ81を含む始動回路構成部80への電気的接続も遮断され、この点灯中はグロースタータ81に再びグロー放電が発生することがない。
このように、本発明の高圧金属蒸気ランプL1は、グロースタータ81を発光管4の電極5a,5bに向け配設したことで、始動時、発光管4内における初期電子数が増加される結果、グロー放電が生起し易くなって始動が確実となり、かつ発光管4内のアルゴンガスを5KPa〜20KPa封入したことで、始動に要する時間が短縮され始動特性の向上がはかれる。
また、始動時における電極物質のスパッタリングが低減されるため点灯経過における光束の早期低下の少ない光束維持特性の向上がはかれ、短寿命の発生を抑制した放電ランプL1を提供できる
なお、本発明では、始動時にグロースタータ81から発光管4に向けて多量の紫外線が照射されるのが好ましく、できれば両者間は空間であるのが望ましい。また、グロースタータ81の近くに配設されたサポート部材7や給電線74,75あるいは始動回路構成部品などを反射体として作用させグロースタータ81からの紫外線を発光管4に照射するよう、グロースタータ81は各サポート部材7、給電線74,75や始動回路構成部品などの間に配設されるのがより好ましい。
また、万一、発光管バルブ40が破損しガラス片が飛散しても、発光管4を囲続してシュラウド6およびこのシュラウド6の補強のため外周に巻装した線状の補強体63を設けたことにより、飛散を阻止ないしは衝撃を緩和して外管バルブ1に及ぶ応力の低減がはかれ、外管バルブ1の破損を防止して安全上も大いに寄与できる。また、上記シュラウド6および補強体63を、透光性の部材で形成してあるので光束の低下が殆どない。
また、このランプL1は発光管4に近接して配設したシュラウド6によって発光管4の放熱が遮蔽されるため、発光管バルブ40はさらに昇温する。すなわち、この温度上昇は発光管バルブ40の全体に及び最冷部を形成する内端部の電極5a,5bの根元部をも昇温するので、バルブ40内に封入された発光金属がよく蒸発して蒸気圧を高め発光効率や演色性などの特性を向上した高圧金属蒸気放電ランプL1を提供できる。
なお、鉛直点灯されるランプは、発光管バルブ40の上下封止部4a,4b間において温度差が生じ、温度が低くなる下方側封止部の近傍に発光金属が偏って溜まり所定の発光効率や演色性を得ることができない場合がある。
このようなことの生じる虞がある発光管は、予め両端封止部4a,4b近傍の成形形状を変えるとか、下方側に位置する封止部近傍の周壁にアルミナ粉末を塗布して保温膜を形成するなどの対応により発光管バルブ40上下の封止部4a,4b間に生じる温度差を解消できる。
さらに、この高圧金属蒸気放電ランプL1は、発光管4やシュラウド6を支持するサポート部材7を電気的に接続していない場合には電位がかかっておらず、発光管4他端側の電極5bへの給電は遠く離した細線からなる給電線76で行われるので、点灯時に光電子作用によって発光管バルブ40内からナトリウムイオンなどが抜け出すことを防止でき、放電ランプLの発光効率が低下したり、ランプ電圧を上昇させて短寿命に至らせるなどのことがなかった。
また、本発明者等は上記グロースタータ81を付設した上記構成の高圧放電ランプL1の、始動特性および光束維持特性について試験を行った。
試料のランプは、定格電力が400Wのメタルハライドランプで、最大外径が約116mm、長さが約290mmのBT形をなす外管バルブ1と、この外管バルブ1内に肉厚が約1.5mm、内径が約18mm、全長が約90mm、放電空間部(両内端部間)長さが約60mm、電極間距離が約40mmで形成した発光管バルブ40内に発光および放電媒体としてSc−Na−I−Brからなるハロゲン化物を約25mg、水銀を約60mgおよびアルゴンArガスを封入し、補助電極がない一対の主電極5a,5bを対向配設した石英ガラスからなる発光管4と、この発光管4を囲続して肉厚が1.5〜2.0mm、例えば約1.8mm、外径が約36mm、全長が約90mmの円筒形状をした石英ガラスからなる透光性のシュラウド6と、下記グロースタータ81を含む始動回路構成部品とがサポート部材7により支持され、窒素N2ガス雰囲気にある外管1内に収容して構成されている。
また、グロースタータ81は、紫外線透過性の軟質ガラスからなる外径が約12mm、全長が約30mmのバルブ内にバイメタル電極からなる
電極およびアルゴンArガスを封入して構成され、上記外管バルブ1内のシュラウド6外面の仮想延長線内において略平行してグロースタータ81のバルブ端部と発光管4端部との距離を約30mm、グロースタータ81のバルブ端部と電極5aとの最短距離を約50mmとした状態で配置した。
上記で発光管4に封入するアルゴンArガスの封入圧を除き同一構成とし、このアルゴンArガスの封入圧を変化させて高圧放電ランプを製造(各試料10本)し、その特性を同一装置で点灯して測定した結果を図3および図4にグラフで示す。
図3において、横軸はアルゴンガスの封入圧力kPa(キロパスカル)、縦軸は始動時間(スイッチインから発光管内のアーク放電発生までに要した時間…秒)を対比させたもので小円は平均値、縦棒線はばらつきの範囲を示す。
また、図4において横軸は点滅回数(点灯サイクルは定格電圧で10分点灯−20分消灯の繰り返し…回)、縦軸は光束維持率(点灯初期の全光束値を100%として上記点滅回数経過に伴う光束の低下率…%)を対比させたもので、経過線に付した数値はアルゴンArガスの封入圧(例…13は13kPa)を示す。
図3から明らかなように、アルゴンガスの封入圧が5〜20kPaの範囲内であれば放電ランプは「JEL208:メタルハライドランプ(低始動電圧形)日本電球工業会」に定義される始動時間を十分に満足できる短時間での始動が可能であるとともに始動時間のばらつきも小さかった。また、この封入圧が5kPa未満の場合は、スイッチイン後のグロー放電は容易に生じるが、アーク放電に移行するまでに要する時間が長く、また、封入圧が20kPaを超える場合は、グロー放電からアーク放電に移行するに要する時間は短いが、始動電圧が高くなるのでグロースタータからの紫外線照射が行なわれていてもスイッチオンからグロー放電を生じるまでの時間が長くなったり、特に低温雰囲気においてはグロー放電が生じにくい傾向にあり、好ましくは8〜17kPaの範囲内がよかった。
また、図4から明らかなように、アルゴンガスの封入圧が5〜20kPaの範囲内であれば、良好な光束維持特性を呈する高圧放電ランプが得られた。なお、上記からアルゴンArガスの封入圧は、許容される始動時間の範囲において、高い方が好ましい。
また、40mmの離間距離を隔て対向配設した電極を有する発光管を備えた上記定格ランプ電力が400Wのランプにおいて、透光性のシュラウド6を設けた場合と、設けていない場合とでは、発光管バルブ40の表面に図5に示すような温度差が生じている。図5(a)は垂直状態にある発光管バルブ40の温度測定点を、図5(b)は図5(a)に対応する測定点の温度(℃)(横軸)を示す。
図5(b)中の温度分布から明らかなようにシュラウド6の有無により発光管バルブ40の上方側では約50℃、下方側では約100℃の温度差があり、シュラウド6を設けたランプは管壁負荷BL(W/cm
2 )が高まり、表1にその初期特性を示すように発光効率(lm/W)や平均演色評価数(演色性)が向上できる。
また、図6は管壁負荷と光束維持率および始動確率との関係を対比したグラフで、横軸に管壁負荷(W/cm2 )を、縦軸に初期光束(100%)に対する定格寿命時における光束維持率(%)および定格寿命時における始動確率(定格電源電圧の90%印加で1分以内に点灯すれば合格とした。)を示す。
なお、図6に示す測定では、発光管の内径を同一とした異なる放電路長の発光管を複数本用意して、発光管の内表面積を異ならせることによって管壁負荷を変化させている。
図6から明らかなように、管壁負荷(W/cm2 )が17を超えると光束維持率は45%を下回り、また、管壁負荷(W/cm2 )が14以下であると始動確率が100%以下となって規格から外れるランプが発生するので好ましくない。
なお、上記図3ないし図6は定格ランプ電力が400Wのメタルハライドランプであるが、この400Wのランプより電極間距離を含む発光管や外管などの寸法が小さい定格200W,300Wのランプにおいても、上記アルゴンArガス封入圧が5〜20kPaの範囲内であれば400Wのランプと同様に発光効率、演色性、光束維持特性および始動時間などの発光特性の向上が得られることを確認できた。
また、図7および図8は本発明に関わる他の高圧金属蒸気放電ランプL2の実施の形態を示し、図7は正面図、図8は側面図で、図中、図1と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
この高圧金属蒸気放電ランプL2は、始動回路構成部に特長を有するもので、図1に示すランプL1に比べグロースタータ81の配設位置を発光管4に近付けるとともに、シュラウド6の仮想延長線より十分内方の発光管4中心軸近くにしてグロースタータ81から放射される紫外線の電極5aへの照射効率を高めるようにしている。また、セラミックヒータで限流抵抗83を構成することにより、発光管が始動しない場合、その熱によって始動回路構成部のバイメタルスイッチを開き、開回路とすることによって始動パルスを停止する機能を備えている。
また、図9は本発明に関わる例えば高圧金属蒸気放電ランプL1を装着したスポーツ施設照明用などの高天井用の照明器具9の実施の形態の概略を示す縦断面図である。
この図9において照明器具9は、天井面などへの取付部をなす基台91にソケット92が取着されているとともにこのソケット92を囲みガード93が設けられている。そして、このガード93の下端には金属板やほうろう製の円錐状をし内面に反射面が形成された反射笠94が固定され、上記ソケット92に放電ランプL1の口金3が装着されることにより保持と電気的な接続がなされる。
なお、この実施の形態では上記基台91、ガード93および反射笠94などで器具本体を構成している。また、ランプの点灯回路装置89および電源スイッチ(図示しない。)は器具本体とは別の所に設けられている。
このような照明器具9は、たとえばスポーツ施設の天井面に反射笠94の開口部側を下方に向けて取付けられ、電源スイッチを入れることにより電源88から点灯回路装置89、ソケット92を介して放電ランプL1に通電される。
そして、この反射笠94内で口金3側を上方(ベースアップ)にした垂直状態にあるランプL1が点灯されると、ランプL1からの可視光は反射面で反射され、あるいは直接に開口部を透過して、被照射物であるコートやグランド面を照射して所定の照度をることができる。
したがって、上記高圧金属蒸気放電ランプL1を用いた本発明の実施の形態に係わる照明器具9は、ランプL1に対応して発光効率、光束維持率や始動性などの発光特性の向上がはかられるとともに安全性が向上できる。したがって、不所望な光反射、光吸収や光遮蔽などを生じたり、経時とともに汚れ可視光の透過率を下げて器具の発光効率を低下させる要因となる強化ガラスや金網などからなる飛散防止用の保護カバー部材などの配設を省くことが可能な照明器具9を提供できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限るものではない。たとえば、発光管バルブを形成する材料としては、石英ガラスに限らずホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの酸化ケイ素を主成分とする耐熱透光性高シリカガラスあるいはアルミナ、イットリア、マグネシア、ルビーやサファイアなどからなる透光性セラミックを用いることにより、発光特性、耐熱性、耐蝕性や電気絶縁性などを満足できる。
この発光管バルブの形状は、円筒形、長円形、球形などの単一形状や複合形状をしたものからなり、端部に形成される封止部の形態はガラスの場合は圧潰封止やシュリンク(焼き絞り)封止などが、また、セラミックの場合はディスクやキャップによる封止を採用することができる。また、発光管バルブの封止部内に封止られる導入導体は金属箔に限らず、金属線であっても差支えない。
この発光管内に設けられる一対の電極は、タングステンWやモリブデンMoなどの高融点金属材料で形成された、電極軸にタングステンW線などを巻装したり、タングステンW粉末などの焼成体であったりあるいは電極軸自体が電極として構成されていてもよい。
また、対向配設された一対の電極間距離が15〜45mmの間隔を隔てたランプに適用して補助電極付きランプと同等の結果が得られた。また、電極間距離が45mmを超えた場合は始動に時間がかかったり甚しいときには始動しないなどの不具合がある。
また、この発光管バルブ内に封入される発光および放電媒体としては、水銀、発光金属のハロゲン化物や希ガスなどが用途や特性などに応じて適宜選択して用いられる。
シュラウドは、上記発光管バルブと同様な石英ガラス、硬質ガラスやセラミックスなどの耐熱透光性の材料を用いることができ、その肉厚は、1.0〜3.0mm程度の範囲のもので、形状は円筒形状をなしている。このシュラウドを二重管として耐衝撃強度を高めるようにしてもよい。
また、このシュラウドの強度を高める手段として、上記実施の形態では外周面に耐熱性のセラミックスなどの無機系繊維からなる線状の補強体を巻装したが、この補強手段として線状の補強体に限らず、シュラウドの外周面に耐熱性の材料で形成したメッシュ状などの補強体を巻装することにより対応させてもよい。
また、シュラウドの表面に蛍光体膜、光拡散膜、紫外線を反射や吸収する遮断膜などの被膜あるいは光拡散用の凹凸面などが形成してあっても差支えない。
このシュラウドのサポート部材への取り付けは、シュラウドの端面とほぼ同形のリング状の金属板の複数箇所に起立片を設けた保持板を両端部に当て起立片を起立させてシュラウドの端部を外側から抑えたり内外面の両側から挟むようにするとともに一部の起立片をサポート部材やバンド部材に溶接などの手段で接続することにより固定したり、シュラウドの端部の相対した部分に軸方向に切込みを設け、この一対の切込みを発光管を固定するバンド部材に装着するなどの手段で係止するようにしてもよい。
また、発光管およびシュラウドを支持する枠状のサポート部材は、光電子作用を回避するため電位のかからない構成としたが、ハロゲン化ナトリウムを封入しない発光管などにおいては電極への給電部材として用いられてサポート部材に電位がかかるものであってもよく、また、発光管およびシュラウドの上下端部分の支持が分離した2部品からなる構成のサポート部材であってもよい。
また、外管バルブは、石英ガラスまたはホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの硬質ガラスあるいはソーダライムガラスなどの軟質ガラスからなり、形状はA形、AP形、B形、BT形やED形などに形成されているものを用いることができる。
また、この外管の内部は、不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気あるいは真空雰囲気などの気密雰囲気としてある。すなわち、外管バルブ内に不活性ガスまたは窒素ガスを低圧封入するか真空雰囲気とすることにより、点灯時に高温となる発光管構成部材、サポート部材やステム構成部材の酸化などを防止するとともにランプの再始動時間を短縮したり、万一の外管バルブ破損時の破裂を防止できる。
さらに、本発明に係わる照明器具は、放電ランプを鉛直状態で点灯するものに限らず、水平や傾斜状態で点灯する器具にももちろん適用できる。