JP2006236910A - 燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末およびその製造方法ならびに燃料電池セパレータ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂バインダで成形した場合においても、電気伝導性を大きく向上し得る燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末およびその製造方法ならびに燃料電池セパレータを提供する。
【解決手段】 前記燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末は、真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3である。 また、前記燃料電池セパレータは、前記黒鉛質粉末と、樹脂とを含有する。 また、前記燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法は、黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛質粉末を得るものである。
【選択図】なし
【解決手段】 前記燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末は、真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3である。 また、前記燃料電池セパレータは、前記黒鉛質粉末と、樹脂とを含有する。 また、前記燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法は、黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛質粉末を得るものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、燃料電池セパレータ用の材料として有用な黒鉛質粉末およびそれを利用した燃料電池セパレータに関する。
固体高分子型燃料電池は、単位セルを数十個〜数百個程度直列に積層した構造(スタック構造)からなり、各単位セルは、水素極側触媒、固体高分子膜、空気極側触媒、及び、水素ガスと空気を遮断するセパレータなどから構成されている。前記セパレータには、少なくとも片面に空気や水素ガスを導入するためのガス流路が形成されており、また、高い導電性、強度、厚み精度、空気や水素に対するガスバリアー性、及び、高分子膜の劣化に影響するイオン性不純物の溶出が少ないことなどの性能が要求される。
このような状況に対し、例えば、特開昭62−260709号公報(特許文献1)の請求項、及び、特開2004−192878号公報(特許文献2)の請求項及び段落番号[0017]には、メソカーボン小球体の黒鉛化物(一種の人造黒鉛)や黒鉛粉末(天然黒鉛、人造黒鉛など)と樹脂との混合物からなる燃料電池用セパレータが開示されている。
これらのセパレータでは、黒鉛粉末のバインダである樹脂は電気絶縁体であるため、導電性を向上させるためには、セパレータを成形する際の圧力を高くして、黒鉛粉末同士の接触効率を高くする方法が用いられる。つまり、成形する際の圧力を高くすることで、黒鉛粉末の粒子が樹脂層を突き破ってお互いに接触するようにして、電気伝導性を高めようとするものである。
特開昭62−260709号公報
特開2004−192878号公報
上述のメソカーボン小球体の黒鉛化物のような人造黒鉛を用いる場合、人造黒鉛自体の導電性を高くするために、通常は黒鉛化度を高くする方法、つまり、結晶性をアップする方法、具体的には黒鉛の理論密度である2.27g/cm3に近づける方法がとられる。一方、黒鉛化度がアップすると、黒鉛構造が発達するので、加圧した場合、粒子内の黒鉛層がずれやすくなる、つまり、見かけ上やわらかくなる。この場合、圧縮しても、単に黒鉛の粒子内の層がずれるのみなので、黒鉛粒子同士の樹脂層を突き破っての接触があまり進まず、電気伝導性の向上があまり図られない。
また、上述の天然黒鉛の場合は、天然黒鉛はリン片状の形状をしているため、圧力をかけると天然黒鉛同士が単に積層するのみで、やはり黒鉛粒子同士の樹脂層を突き破っての接触があまり進まず、電気伝導性の向上があまり図られない。
そこで、本発明は、樹脂バインダで成形した場合においても、電気伝導性を大きく向上し得る燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末およびその製造方法ならびに燃料電池セパレータを提供することを目的とする。
燃料電池のセパレータは複雑な溝付きプレートを高度な寸法精度で成形する必要があるため、できるだけバインダとなる樹脂の量を低減させず、かつ高い電気伝導性を確保する必要がある。ここで、高い電気伝導性を確保するためには、骨材となる黒鉛質粉末同士の接触性を高め、さらに、黒鉛質粉末自体の電気伝導性を高めることが有効となる。
そこで、本発明者らは、燃料電池セパレータ用として、高い電気伝導性を確保し得る骨材としての黒鉛質粉末を得るべく、種々の黒鉛質粉末を製造してその特性について鋭意検討を行った。
成形体(セパレータ)では、バインダである樹脂が電気絶縁体であるため、樹脂が介在する部分の電気伝導性は阻害されるが、骨材である黒鉛質粉末同士の接触性を高めることで電気伝導性を高めることは可能である。骨材である黒鉛質粉末の粒子を硬くすることは、樹脂層を貫通して黒鉛質粉末同士の接触性を高める点では有利になる。ここで、黒鉛質粉末の粒子の硬さは、粒子の黒鉛化度の発達が不十分なほど高まる傾向にあるが、黒鉛化度が不十分であると粒子自体の抵抗が高くなるうえ、硬いため充填性が低くなり、成形体に空隙を生じて電気伝導性を低くする方向に作用する。
つまり、黒鉛化度が十分発達しているうえ、バインダ樹脂層を貫通するに十分な硬さを有した黒鉛質粉末を骨材として用いることにより、樹脂バインダで成形した場合においても、成形体の電気伝導性を確保できることとなる。
そこで、本発明者らによる検討の結果、黒鉛質粉末の製造条件を特定することで、適度な黒鉛化度と粒子硬さを備えた黒鉛質粉末を製造できることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、以下のような特徴を有する。
[1]真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、
50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3であることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末。
[2]真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3 である黒鉛質粉末と、
樹脂とを含有することを特徴とする燃料電池セパレータ。
[3]黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
[4]黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに2500〜3200℃の温度で加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
[1]真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、
50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3であることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末。
[2]真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3 である黒鉛質粉末と、
樹脂とを含有することを特徴とする燃料電池セパレータ。
[3]黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
[4]黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに2500〜3200℃の温度で加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
本発明によれば、樹脂バインダで成形した場合においても、電気伝導性を大きく向上し得る燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末およびその製造方法ならびに燃料電池セパレータが提供される。
以下に、本発明について詳細に説明する。
燃料電池セパレータに用いられる炭素材料フィラーとしての黒鉛質粉末は高い電気伝導性が必要であるため、黒鉛化度が高い方が好ましい。具体的には、最終的な熱処理温度が2500〜3200℃の範囲で、真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下となる黒鉛質粉末が用いられる。真密度の値が2.16g/cm3以下の場合は、黒鉛質粉末自体の電気抵抗が高く、また充填密度も低いため、熱硬化性あるいは熱可塑性の樹脂バインダを用いて成形した場合、空隙が生じて緻密な成形体にならない。一方、黒鉛の理論真密度の値は2.27g/cm3であるため、真密度の値が2.27g/cm3 超であると黒鉛より密度の高い金属や灰分などの不純物を含むこととなり好ましくない。なお真密度の値は2.20〜2.27g/cm3の範囲であることがより好ましい。
このように黒鉛質粉末を、熱硬化性あるいは熱可塑性の樹脂バインダを用いて成形する場合、前記粉末を形成する粒子どうしの接触性を高めるためには、成形圧力に対して成形体(セパレータ)の密度が適度な上昇を示すようなものを用いることが好ましい。すなわち、粒子が硬すぎて圧力を高めても密度が上がり難い粉末の場合は、成形体の空隙を埋めることができず接触性が向上し難い。
一方、前記粉末を形成する粒子が、例えばリン片状の形状を有することで低い圧力で容易に配向して、高い密度に到達する高純度の天然黒鉛のような場合は、接触性を向上させようとしてより高い圧力を加えても、粒子が配向をおこすだけで樹脂バインダ層によって絶縁された箇所を粒子が貫通することができないため、やはり接触性は低い。
すなわち、上述のいずれの場合も成形体中の粉末を形成する粒子同士の接触性を十分高めることはできない。したがって、加圧成形により密度が適度に上昇し、かつ粒子が適度に硬く配向し難い場合に、圧力を高めることで粒子が樹脂バインダ層を貫通して接触性を高めることができる。
ここで、上述の粒子硬さを規定する手段として、粒径が100μm以上の大きな粒子、あるいは塊状物質の場合は、モース硬度、あるいはビッカース硬度等の指標を使うことができる。しかし、粒径が100μm未満の粉体では前記モース硬度、あるいはビッカース硬度等の測定が困難である。そこで黒鉛粉末を加圧成形した際に、軟質な粒子は加圧により形状を変えて密度が上がり易く、硬質な粒子は密度が上がり難いと考え、本発明では所定の圧力をかけて成型したときの成型体密度の値を粒子硬さの指標として用いた。また、前記所定の圧力は、種々の黒鉛質粉末で密度がほぼ上限値に達する50MPaと定めた。
ここで、黒鉛質粉末を成形した場合の電気比抵抗と成型体密度の関係を検討した結果、成型体密度が1.3〜1.7g/cm3となる黒鉛質粉末で10mΩcm以下の低い電気比抵抗を示し、より好ましい成型体密度は1.30〜1.70g/cm3 であり、さらには、成型体密度が1.4〜1.6g/cm3では7mΩcm以下と、より電気比抵抗低減の効果があり、さらに好ましいことが分かった。なお、本発明の黒鉛質粉末の寸法は1〜100μm程度である。
前記成型体密度の範囲となる粒子硬さを有する黒鉛質粉末は、芳香環を有する炭素前駆体または炭素質物質などの黒鉛前駆体粉末を、10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛化することによって得ることができる。
昇温速度を10℃/時間 以上の速い条件とすることにより、原料の黒鉛前駆体に含まれる低沸点の油成分が蒸発で消失するより前に、油成分が炭素の溶融を促進する。そのため液相炭化が進行して、黒鉛化により真密度が高く、前記成型体密度の範囲となる適切な硬さの黒鉛質粉末を製造することができる。昇温速度が10℃/時間 以下であると、炭化が始まる350℃付近では油成分が消失するため、以後は固相炭化が中心となって黒鉛質粉末の真密度、充填性が不十分となる。
また、昇温速度を10℃/時間 以上の速い条件で加熱する温度は、少なくとも550℃である。このようにすることで、溶融成分は消失または不溶な炭素に転換されるため固相炭化となり、表面に硬質な非晶質炭素が生成する。この非晶質部は黒鉛化によっても高結晶な黒鉛になり難いため、粒子表面が硬い黒鉛質粉末を得ることができる。
前記昇温速度を10℃/時間 以上の速い条件で加熱する、好ましい最高温度は1800℃である。1800℃超では黒鉛化が開始するため、目的とする硬質な非晶質炭素は生成しない。また、加熱温度が550℃未満であると、未炭化の溶融成分が残るため、これが次の黒鉛化工程で高結晶な黒鉛になって、真密度、充填性は増すものの、目的とする硬い黒鉛質粉末は得られない。
以下、前記本発明に係る黒鉛質粉末の製造方法について具体的に説明する。
本発明に係る黒鉛質粉末は、芳香環を有する炭素前駆体または炭素質物質などの黒鉛前駆体粉末を用いて製造される。
前記芳香環を有する炭素前駆体としては、例えば、コールタールピッチや石油ピッチ、あるいはそれらの一成分であるナフタレンを原料としたナフタレンピッチなどの芳香族系の重質油を用いることができる。
また、前記炭素質物質としては、例えば、バルクメソフェーズやメソカーボン小球体などを用いることができる。なお、前記のバルクメソフェーズやメソカーボン小球体は、前記炭素前駆体を液相で炭素化したときに発生する光学的異方性の高い炭素質物質である。
こうした意味で、本発明の出発原料としては、前記炭素質物質に限らず、前記炭素前駆体を直接用いることもできる。前記炭素前駆体を直接、出発原料として用いる場合は、300〜500℃の温度領域では容器を密閉するか溶融のために必要な油成分を還流するなどして液相炭化を行い、500℃以上で油成分を排出して固相炭化を進めることで、前記炭素質物質を用いた場合と同様の目的を達することができる。
前記液相炭化による炭素質物質の製造方法としては、例えばバルクメソフェーズの場合は、ピッチを密閉容器で300℃以上、より好ましくは500℃以上で熱処理して液相炭化を進行させ、発生したメソフェーズ相が凝集・沈降してバルク化したものを粉砕して得る方法がある。
また、メソカーボン小球体は、原料であるコールタールを300〜500℃で熱処理すると前述のように液相炭素化が進行して、ピッチ状のマトリックスの中にメソフェーズカーボンが生成する。前記熱処理の工程で得られたピッチ状物質を溶剤抽出することにより、マトリクッスからメソフェーズカーボン小球体を分離する。前記溶剤抽出に用いる抽出溶剤としては、通常芳香族系の溶剤が使用される。好適なものとしては、ベンゼン、トルエン、ピリジン、キノリン、タール軽油、コールタールナフサ、粗ナフタレン油、洗浄油、脱晶アントラセン油などのピッチに対して、強い抽出力を有する、沸点120〜280℃の有機溶剤を使用することが好ましい。これらの有機溶剤は、単独で用いても二種類以上を混合して用いてもよい。抽出温度は50℃から各溶剤の沸点までが好適である。この範囲より温度が低いと抽出効率が極端に低下する。
上述のようにして得られた炭素前駆体または炭素質物質などの黒鉛前駆体は、昇温速度を10℃/時間 以上、好ましくは50℃/時間 以上で、少なくとも550℃まで加熱する。なお、前記昇温速度は、大き過ぎると溶融が著しく、熱処理装置に固着したり、粗大なブロック状となって回収が困難になるため、300℃/時間 以下とすることが好ましい。また、前記加熱は、不活性ガスの流通下で行うことが好ましい。
この加熱後において塊状となったものは、必要に応じて粉砕することで適当な粒度に調整することができる。この場合、粉砕は2500℃以上の温度で行う黒鉛化の後に実施してもよい。前記粉砕に際しては、ピンミル、ジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、振動ミルなどのいかなる粉砕機を使用してもよい。また、粉砕と合わせて、分級・混合等とを組合せて行うことで、より厳密に粒度分布を調整するようにしてもよい。また、必要に応じて、加熱−粉砕−分級の工程を順不動で複数回繰り返し行ってもよい。
次に、前記10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱された後の前記黒鉛前駆体は、さらに、例えば、黒鉛化炉を用いて、好ましくは2500〜3200℃の加熱温度で黒鉛化処理を行い、前記黒鉛前駆体の黒鉛化度を進行させる。なお、本発明で目的の粒子硬さを達成するためには、前記黒鉛化処理での加熱温度は、より好ましくは2800〜3100℃、さらに好ましくは2950〜3050℃に設定するのがよい。黒鉛化処理に際しては、アチェソン式、直接通電式、タンマン管式等、いかなる形式の炉でも用いることができる。
続いて、上述の適度な硬さを有する黒鉛質粉末を燃料電池のセパレータに成形加工するに際しては、上記黒鉛質粉末に結合剤(バインダ)を添加、混合する。前記結合剤には、熱硬化性樹脂を用いることが好ましく、例えば、フェノール樹脂、フルフラール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびポリイミド樹脂などから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらの樹脂は、液体、固体のいずれであってもよい。特にフェノール樹脂は、取り扱い易く安価である他、得られるセパレータの寸法精度と機械的強度が優れているため好適である。
前記結合剤の混合量は、上述の適度な硬さを有する黒鉛質粉末100質量部に対して3〜30質量部とするのが好ましい。結合剤の混合量が3質量部未満の場合には、該混合物の流動性が不十分であるため、成形体内部に気孔が発生し易く、ガス遮断性に優れた燃料電池セパレータが得られない虞がある。また、結着力が不十分なため、強度が低い成形体となる。一方、30質量部を超える場合には、樹脂の比率が多くなるため、比抵抗が大き
くなる傾向にある。より好ましい混合量は、5〜20質量部である。
くなる傾向にある。より好ましい混合量は、5〜20質量部である。
燃料電池用セパレータの成形法としては、例えば、プレス成形法や射出成形法等のモールド成形法が有利に適合する。プレス成形法を用いる場合は、本発明に係る黒鉛質粉末に、上述した結合剤の1種または2種以上を混合した混合物をプレス成形機に供給する。この場合、結合剤を混合する際に、必要に応じて溶剤を加えたり、あるいは成形加工性をさらに改善するために、金型に供給する前に混合物を加熱し、予備硬化して流動性を調整したりすることが好ましい。プレス成形の条件は、結合剤として使用する熱硬化性樹脂によっても異なるが、加圧成形時の金型の加熱温度は130〜220℃、プレス圧力は200N/cm2(2MPa)以上であることが好ましい。
また、射出成形法を用いる場合には、本発明に係る黒鉛質粉末に、結合剤を1種または2種以上混合した混合物を射出成形機に供給する。成形条件としては、100〜140℃の温度で混合した後、射出成形を行うことが好ましく、この際の金型温度は、樹脂を硬化させるために、40〜200℃に加熱しておくことが好ましい。
なお、上記のようにして得たセバレータは、プレス成形や射出成形のままでも優れた電気伝導性(低比抵抗)を有しているため、従来技術で行っていたような成形後の焼成や黒鉛化処理を行う必要がない。
因みに本発明において、電気伝導性に優れるとは、比抵抗にして10mΩcm以下を意味し、本発明では10mΩ・cm以下の比抵抗を有するセパレータの開発を目標とした。
以上、本発明によれば、炭素質粉末、あるいは炭素前駆体を原料に黒鉛質粉末を製造する際に、炭素質粉末の焼成工程で昇温速度および最高保持温度を制御し、適度な黒鉛化度と粒子硬さを有する黒鉛質粉末を得ることにより、これを樹脂バインダで成形することにより電気比抵抗が著しく低い成形体が得られる。したがって、本発明の方法によって得た黒鉛質粉末を用いることにより、電気比抵抗が極めて低い高性能の燃料電池セパレータを製造することができる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。
・実施例1
コールタールを450℃の温度で1時間熱処理を行い、抽出、ろ過、乾燥して得たメソカーボン小球体を、昇温速度50℃/時間、最高温度750℃で1時間保持の条件で加熱(焼成)した。その後、解砕、分級によって粒度調整を行い、3000℃で黒鉛化して平均粒径30μmの黒鉛質粉末Aを製造した。この黒鉛質粉末Aについて、真密度の値を下記の方法で測定した。
コールタールを450℃の温度で1時間熱処理を行い、抽出、ろ過、乾燥して得たメソカーボン小球体を、昇温速度50℃/時間、最高温度750℃で1時間保持の条件で加熱(焼成)した。その後、解砕、分級によって粒度調整を行い、3000℃で黒鉛化して平均粒径30μmの黒鉛質粉末Aを製造した。この黒鉛質粉末Aについて、真密度の値を下記の方法で測定した。
また、この黒鉛質粉末Aを錠剤成形機にて50MPaの圧力を掛けて成型し、この成型体の密度を測定した。
つぎに、前記黒鉛質粉末Aを80質量部とフェノール樹脂20質量部を攪拌式の混合機で均一に混合した後、離型紙上に塗布して一晩放置乾燥させた。この得られた乾燥物を100℃の条件下、90分間加熱して予備成形した後、解砕し、得られた粉末を金型に供給して、金型温度160℃、圧力10MPaの条件でプレス成形して、厚さ:2mm、幅:200mm、長さ:200mmの樹脂成形体を製造した。得られた樹脂成形体について、嵩密度、電気比抵抗を下記の方法で測定した。
[真密度の値の測定方法]
JIS−R7222の方法に従い、ブタノール及びピクノメータを用いて測定した。
JIS−R7222の方法に従い、ブタノール及びピクノメータを用いて測定した。
[嵩密度の測定方法]
黒鉛質成形体の質量を黒鉛質成形体の体積で除して求めた。
黒鉛質成形体の質量を黒鉛質成形体の体積で除して求めた。
[電気比抵抗値の測定方法]
JIS−K7197の方法に従い、電気比抵抗測定装置を用いて測定した。
JIS−K7197の方法に従い、電気比抵抗測定装置を用いて測定した。
上記黒鉛質粉末Aの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値の測定結果を、製造条件とともに下表1に示す。
・実施例2
メソカーボン小球体の昇温速度を10℃/時間、最高保持温度を900℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Bの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
メソカーボン小球体の昇温速度を10℃/時間、最高保持温度を900℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Bの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
・比較例1
メソカーボン小球体の昇温速度を50℃/時間、最高保持温度を500℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Cの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
メソカーボン小球体の昇温速度を50℃/時間、最高保持温度を500℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Cの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
・比較例2
メソカーボン小球体の昇温速度を1℃/時間、最高保持温度を900℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Dの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
メソカーボン小球体の昇温速度を1℃/時間、最高保持温度を900℃とした以外は、上記実施例1と同様に黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Dの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
・実施例3
コールタールを500℃の温度で2時間熱処理して得たバルクメソフェーズを粉砕した後、昇温速度50℃/時間、最高温度750℃で1時間保持の条件で焼成し、3000℃で黒鉛化して平均粒径30μmの黒鉛質粉末Eを製造した。この黒鉛質粉末Eについて、真密度の値を上記と同様の方法で測定した。
コールタールを500℃の温度で2時間熱処理して得たバルクメソフェーズを粉砕した後、昇温速度50℃/時間、最高温度750℃で1時間保持の条件で焼成し、3000℃で黒鉛化して平均粒径30μmの黒鉛質粉末Eを製造した。この黒鉛質粉末Eについて、真密度の値を上記と同様の方法で測定した。
また、この黒鉛質粉末Eを錠剤成形機にて50MPaの圧力を掛けて成型し、この成型体の密度を測定した。
つぎに、上記と同様の方法にてフェノール樹脂を用いてプレス成形を行い、得られた樹脂成形体について、嵩密度、電気比抵抗を上記と同様の方法で測定した。
上記黒鉛質粉末Eの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値の測定結果を、製造条件とともに下表1に示す。
・比較例3
バルクメソフェーズの昇温速度を50℃/時間、最高保持温度を500℃とした以外は、上記実施例3と同様の方法で黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Fの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
バルクメソフェーズの昇温速度を50℃/時間、最高保持温度を500℃とした以外は、上記実施例3と同様の方法で黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Fの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
・比較例4
バルクメソフェーズの昇温速度を1℃/時間、最高保持温度を1000℃とした以外は、上記実施例3と同様の方法で黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Gの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
バルクメソフェーズの昇温速度を1℃/時間、最高保持温度を1000℃とした以外は、上記実施例3と同様の方法で黒鉛質粉末の製造を行った。製造された黒鉛質粉末Gの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値を上記と同様に測定し、その測定結果を、製造条件とともに同じく下表1に示した。
・比較例5
天然黒鉛粉末H(リン片状、平板部の平均粒径30μm、平均厚み3μm)を錠剤成形機にて50MPaの圧力を掛けて成型し、この成型体の密度を測定した。なお、この天然黒鉛粉末Hについて、真密度の値を上記と同様の方法で測定した。
天然黒鉛粉末H(リン片状、平板部の平均粒径30μm、平均厚み3μm)を錠剤成形機にて50MPaの圧力を掛けて成型し、この成型体の密度を測定した。なお、この天然黒鉛粉末Hについて、真密度の値を上記と同様の方法で測定した。
つぎに、この天然黒鉛粉末Hを上記と同様の方法にてフェノール樹脂を用いてプレス成形を行い、得られた樹脂成形体について、嵩密度、電気比抵抗を上記と同様の方法で測定した。
上記天然黒鉛粉末Hの真密度の値、成型体の密度、樹脂成形体の嵩密度、樹脂成形体の電気比抵抗値の測定結果を、製造条件とともに下表1に示す。
本発明に係る、成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3の黒鉛質粉末A、B、E(実施例1,2,3)を用いた樹脂成形体は、いずれも電気比抵抗が10mΩ・cm以下と低い値であった。一方、従来技術に係る比較例の成型体密度の値が1.3g/cm3未満の黒鉛質粉末D,G(比較例2,4)、及び、成型体密度の値が1.7g/cm3超の黒鉛質粉末C,F(比較例1,3)と天然黒鉛粉末H(比較例5)では電気比抵抗が10mΩ・cm以上と高い値であり、目標の性能を達成できていない。
Claims (4)
- 真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、
50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3であることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末。 - 真密度の値が2.16g/cm3超、2.27g/cm3以下であり、50MPaの圧力をかけて成型したときの成型体密度の値が1.3〜1.7g/cm3 である黒鉛質粉末と、
樹脂とを含有することを特徴とする燃料電池セパレータ。 - 黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
- 黒鉛前駆体粉末を10℃/時間 以上の昇温速度で、少なくとも550℃まで加熱した後、さらに2500〜3200℃の温度で加熱して黒鉛質粉末を得ることを特徴とする燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末の製造方法。
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JP2005053208A JP2006236910A (ja) | 2005-02-28 | 2005-02-28 | 燃料電池セパレータ用黒鉛質粉末およびその製造方法ならびに燃料電池セパレータ |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014032906A (ja) * | 2012-08-06 | 2014-02-20 | Panasonic Corp | 燃料電池セパレータ成形用組成物、燃料電池セパレータ、燃料電池セパレータの製造方法、及び燃料電池 |
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2005
- 2005-02-28 JP JP2005053208A patent/JP2006236910A/ja active Pending
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