JP2006233059A - エチレン共重合体樹脂の高圧重合方法 - Google Patents

エチレン共重合体樹脂の高圧重合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 エチレン共重合体樹脂の高圧重合に際して、高圧重合反応器内或いは出口付近におけるデコンポを防止し、安定的な重合反応の継続を可能にするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法を提供する。
【解決手段】 高圧重合法によるエチレン共重合体樹脂を製造する方法において、高圧重合反応器内或いは出口付近における未反応ガス及びラジカル(重合開始剤)の滞留部分を最小化すると共に、高圧重合反応器内或いは該出口部分にラジカル捕捉剤を添加することを特徴とするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法。ラジカル捕捉剤前記未反応ガスがメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニルのいずれかとエチレンを含んでいる混合ガスである場合等に有用かつ効果的である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、エチレン共重合体樹脂の高圧重合方法に関するものである。さらに詳しくは、高圧重合反応器内及びその出口付近における未反応混合ガスの急速な分解反応(以下デコンポと省略することがある)を防止し、安定的な重合反応の継続を可能にするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法に関するものである。
エチレン共重合体樹脂は、エチレンに共重合させるコモノマーの量や種類によって接着性、応力緩和性、風合い、カット性、高周波シール性、柔軟性、耐熱性、透明性、カレンダー加工性、耐寒衝撃性等種々の物性を付与することが可能であり、かつハロゲンを含有しない環境にやさしい樹脂であることから、広く接着剤、建築材料、樹脂改質剤、文具・雑貨シート等への応用が試みられている。上記のような物性を付与するために、コモノマーとしアクリル酸エステル類がよく用いられ、該原料混合ガスは少なくとも2個所に分けて供給して反応を制御することが行われている(特許文献1参照)。重合したポリマーは、高圧重合反応器の底部にある排出口から未反応ガスと溶融ポリマーの混合物として排出されるが、高圧重合反応器内或いは出口付近において、未反応混合ガスの急速な分解反応、いわゆるデコンポが頻発し、継続的な安定運転を損なうので有効な対策が求められていた。このような対策のひとつとして特許文献2には、抗酸化剤を重合反応器内等に添加することで、安定的にエチレン系共重合体を製造する方法が詳しく述べられているが、エチレンまたは他単量体全量に対する抗酸化剤濃度が比較的高く、100〜200ppmが最も効果的であり、50ppm以下では期待される効果が発現しないと記載されている(特許文献2参照)。しかし、さらに少量の抗酸化剤濃度で有効な方法が求められている。
特開2004−238426号(第1頁〜第4頁) 特開平1−156309号公報(第1頁〜第4頁)
かかる状況において、本発明が解決しようとする課題は、エチレン共重合体樹脂の高圧重合に際して、高圧重合反応器内或いは出口付近におけるデコンポを防止し、安定的な重合反応の継続を可能にするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法を提供する点にある。
すなわち本発明は、高圧重合法によるエチレン共重合体樹脂を製造する方法において、高圧重合反応器内或いは出口付近における未反応ガス及びラジカル(重合開始剤)の滞留部分を最小化すると共に、高圧重合反応器内或いは該出口部分にラジカル捕捉剤を添加することを特徴とするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法に係るものである。ラジカル捕捉剤前記未反応ガスがメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニルのいずれかとエチレンを含んでいる混合ガスである場合や、前記ラジカル捕捉剤が2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノールを含んでいるラジカル捕捉剤である場合や、前記ラジカル捕捉剤の添加量がエチレンまたは他単量体全量に対して5〜50ppmと非常に低濃度の場合にも、本発明は有用かつ効果的である。
本発明により、エチレン共重合体樹脂の高圧重合に際して、高圧重合反応器内或いは出口付近におけるデコンポを防止し、安定的な重合反応の継続を可能にするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法の提供が可能になった。
原料エチレンガス1は圧縮機2を用いて100から300MPaの圧力に昇圧され、途中ポンプ3a及び3bで昇圧されたコモノマーと合流した後、高圧反応器4へ供給される。この際、重合開始剤供給口5より重合開始剤である有機過酸化物を供給することにより、原料ガスは重合反応し、その一部がエチレン共重合体樹脂へと転化する。生成したエチレン共重合体樹脂は、未反応の原料ガスと共に高圧反応器4の下部から排出され、高圧分離器8、低圧分離器9でエチレン共重合体樹脂と未反応ガスとに分離され、押出機10を経て水中でペレット11化される。
図1に示した例において、高圧重合反応器4の内部或いは出口付近における未反応ガス及びラジカル(重合開始剤)が滞留するおそれのある部分、例えば高圧重合反応器と攪拌機ベアリングとの接続や安全弁(緊急放出弁)設置等によるデッドスペースをできるだけ最小化することが好ましい。デッドスペースをできるだけ最小化するためには、高圧重合反応器と攪拌機ベアリングとの接続方法の最適化や安全弁取り口配管の配管径、深さ、及びコーナーRの改良等によってデッドスペースを最小限にしたり、安全弁の取り口部を高圧重合反応器出口付近ではなく、原料ガス供給部分に設定して高圧重合反応器の出口付近でのデッドスペースをなくすることが有効である。このようにすることにより未反応ガス及びラジカルの滞留を少なくすることができる。
また、ラジカル捕捉剤を高圧重合反応器内或いは該出口部分へ添加することによって、上記の設備改造と合わせてより有効にデコンポを防止することができる。この場合、添加するラジカル捕捉剤はイソパラフィンオイル類に9〜20wt%程度の濃度で溶解させ、プランジャーポンプなどで高圧重合反応器内或いは該出口部分から対原料ガス濃度で5〜50ppmにて添加するのが望ましい。
ラジカル捕捉剤としては、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ステアリルβ(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシエンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3’,5’−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジドデシル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルペンタエリスリトールフォスファイト)、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4トリアゾール、トリス(3,5-ジ-t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、dl−α−トコフェロール等ポリオレフィン類の酸化防止剤として用いられるものが有効である。中でも、2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノールが有用に用いられる。
エチレンと共重合させるコモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、及び酢酸ビニルが用いられ、これらの1または2の組み合わせでエチレンと共重合させてエチレン共重合体が得られる。かくして得られるエチレン共重合体としては、エチレン−メチルアクリレート2元共重合体、エチレン−メチルメタクリレート2元共重合体、エチレン−エチルアクリレート2元共重合体、エチレン−ブチルアクリレート2元共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート2元共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メチルメタクリレート3元共重合体、エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート3元共重合体、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレート3元共重合体等が挙げられる。
重合開始剤は、通常の高圧法エチレン重合に用いられるターシャリブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ターシャリーブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート、ターシャリーブチルパーオキシピバレート、ターシャリーブチルパーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物が好適に用いられる。
実施例1
図1に示すエチレン共重合樹脂の製造設備において、デコンポを防止する観点で、排出部付近のデッドスペースを極力小さくするように安全弁(圧力放出弁)の設置部分の改造および高圧重合反応器排出部分におけるデッドスペースに滞留したフリーラジカルを捕捉し不活性化するように運転方法の変更を下記のごとく行った。
(1)高圧重合反応器出口部下流に主配管から分岐するように設置されている安全弁6aの安全弁取口配管(内径21.2mm)の深さを51mmから44mmに短縮してデッドスペースを減少するとともに、分岐部分の主配管径を32mmから21.2mmへ縮小して流速を上げることにより、滞留部分を縮小した。
(2)高圧重合反応器排出部からラジカル捕捉剤をエチレンまたは他単量体全量に対する濃度15ppmで添加した。この場合ラジカル捕捉剤は2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノールをイソパラフィンオイルに9wt%で予め溶解させたものを使用した。
これにより、エチレンとMMAとの共重合樹脂を製造する際に、頻発していたデコンポを抑制することが可能となった。
実施例2
上記エチレン共重合樹脂の製造設備において、安全弁(緊急放出弁)取り口部を高圧重合反応器出口付近(図1、6a)から高圧重合反応器への原料ガス供給部(図1、6b)に移設することにより、高圧重合反応器の排出口付近でのデッドスペースをなくし、かつ、実施例1のごとくラジカル捕捉剤を添加してエチレンとMMAとの共重合樹脂を製造したところ、頻発していたデコンポを抑制することができた。
エチレン共重合体製造プロセスの一例を示すフロー図である。
符号の説明
1…エチレン入口、2…圧縮機、3a…コモノマーポンプ、3b…コモノマーポンプ、4…高圧重合反応器、5…重合開始剤注入口、6a…実施例1における安全弁の位置、6b…実施例2における安全弁の位置、7…ラジカル捕捉剤の添加口、8…高圧分離器、9…低圧分離器、10…押出機、11…ペレット

Claims (4)

  1. 高圧重合法によるエチレン共重合体樹脂を製造する方法において、高圧重合反応器内及びその出口付近における未反応ガス及びラジカルの滞留部分をなくすと共に、反応器内及び該出口部分にラジカル捕捉剤を添加することを特徴とするエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法。
  2. 前記未反応ガスがメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニルのいずれかとエチレンを含んでいる混合ガスである請求項1記載のエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法。
  3. 前記ラジカル捕捉剤が2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−メチルフェノールを含んでいるラジカル捕捉剤である請求項1または2記載のエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法。
  4. 前記ラジカル捕捉剤の添加量がエチレンまたは他単量体全量に対して5〜50ppmである請求項1から3のいずれかに記載のエチレン共重合体樹脂の高圧重合方法。

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