JP2006232111A - 電動パワーステアリング装置用減速ギア - Google Patents

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Abstract

【課題】高面圧条件下での摩耗耐久性と寸法安定性に優れた特性を有する、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアの提供。
【解決手段】減速ギア20は、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物を含む樹脂部3を、接着剤を介して金属性芯管1の外周に接合し一体に設け、樹脂部の外周面にギア歯10を形成して構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアに関する。
自動車に組み込まれる電動パワーステアリング装置には、電動モータに比較的高回転、低トルクのものが使用されるため、電動モータとステアリングシャフトとの間に減速機構が組み込まれている。減速機構としては、従来技術では、一組で大きな減速比が得られる等の理由から、図10に示されるような、電動モータ(図示せず)の回転軸に連結するウォーム12と、ウォーム12に噛合うウォームホイール11とから構成される電動パワーステアリング装置用減速ギア20(以下、単に「減速ギア」ともいう)が使用されるのが一般的である。
このような減速ギア20では、ウォームホイール11とウォーム12の両方を金属製にすると、ハンドル操作時に歯打ち音や振動音等の不快音が発生するという不具合を生じていた。そこで、ウォームホイール11として、金属製の芯管(以下、芯金とも称する。)1の外周に、樹脂製で外周面にギア歯10を形成してなる樹脂部3を一体化させたものを使用して騒音対策を行っている。
上記樹脂部3には、例えば特許公報に記載されているような、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のべ一ス樹脂に、ガラス繊維や炭素繊維等の強化材を配合した材料の他、強化材を含有しないモノマーキャストナイロン(MCナイロン)、ポリアミド6、ポリアミド66などの材料が提案されている。ただし、実際に実用化されているのは、耐疲労性、寸法安定性、コストを考慮して、強化材を含有しないMCナイロン、ガラス繊維を含有したポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46などである。
特公平6-60674号公報
しかしながら、高排気量の自動車への電動パワーステアリング装置の搭載に伴い、ウォームに対するウォームホイールの接触面圧が大きくなってきており、上記従来のMCナイロン製やガラス繊維を含有したポリアミド樹脂製のギア歯では、摩耗発生によるバックラッシュの増大で、電動パワーステアリング装置が機能しなくなってしまうという不都合が発生する可能性が高くなってきている。
そこで、本発明は、上記課題を解決することを目的とするもので、上記の樹脂部を、耐摩耗性に極めて優れるポストキュアされたポリアミドイミド樹脂等で構成し、この樹脂部を、接着剤を介して金属製芯管に接合することで、寸法安定性に優れ、高面圧で使用してもギア部が摩耗するおそれのない信頼性の高い電動パワーステアリング装置の樹脂製歯車を提供するものである。
上記の目的は、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアにおいて、前記減速ギアが、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする(「ベース樹脂を含む」を削除。)樹脂組成物を含む樹脂部を、接着剤を介して金属製芯管の外周に接合し一体に設け、前記樹脂部の外周面にギア歯を形成して構成される樹脂製歯車を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギアにより達成される。
樹脂部を、極めて耐摩耗性と耐疲労性に優れる、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物で形成することで、高面圧の極めて過酷な条件下でも耐久性に優れた電動パワーステアリング装置用減速ギアが得られる。また、樹脂部のポリアミドイミド樹脂組成物のポストキュアを樹脂組成物単独で行い、ポストキュア後のポリアミドイミド樹脂組成物と芯管が接着剤を介して一体化されていることから、吸水等による寸法変化も抑制され、寸法安定性にも優れる。
ポリアミドイミド樹脂組成物のポストキュアには、高温長時間処理を要するため、接着剤の劣化が想定される。また、ポストキュアに起因する樹脂部の寸法変化により、接着剤に負荷がかかり接着部分がはがれる可能性があるので、本発明のポストキュアを樹脂組成物単独で行う効果が大きい。
本発明は、好ましくは、操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアにおいて、前記減速ギアが、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる樹脂部を、接着剤を介して金属製芯管の外周に接合し一体に設け、前記樹脂部の外周面にギア歯を形成して構成される樹脂製歯車を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギアにより達成される。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
図11は、本発明の実施形態の樹脂製歯車を減速機構に用いた自動車のコラム式電動パワーステアリング装置30の構成を説明する概念図である。このパワーステアリング装置30の舵輪軸31は、上部舵輪軸31aと下部舵輪軸31bとで構成され、舵輪軸ハウジング32の内部に、軸心を中心に回転自在に支承されている。また、舵輪軸ハウジング32は、下部を車両の前方に向けて傾斜した姿勢で、車両内部の所定位置に固定されている。さらに、上部舵輪軸31aの上端には、図示されない舵輪が固定されている。
さらに、上部舵輪軸31aと下部舵輪軸31bとは、図示されないトーションバーで互いに連結されている。舵輪から上部舵輪軸31aを経て下部舵輪軸31bに伝達された操舵トルクは、トーションバーにより検出され、検出された操舵トルクに基づいて、電動モータ33の出力が制御される。
図11に示すラック・ピニオン式運動変換機構40は、軸方向に移動可能なラック軸41と、ラック軸41の軸心に対して斜めに支承されてラック軸41の歯に噛み合う歯を備えたピニオンを有するピニオン軸42と、ラック軸41及びピニオン軸42を支承する筒状のラック軸ケース43と、で構成される。そして、ラック・ピニオン式運動変換機構40は、その長手方向が車両の左右方向に沿うようにして、車両の前部のエンジンルーム内にほぼ水平に配置されている。
このピニオン軸42と下部舵輪軸31bの下部とは、2個の自在継手45、46で連結されている。また、下部舵輪軸31bの中間部分には、後述するウォーム歯車減速機構50が配置されていて、電動モータ33から下部舵輪軸31bに対して操舵補助力が供給されるようになっている。
次に、ウォーム歯車減速機構50の構成を、図12の部分断面図を参照しながら説明する。ウォーム歯車減速機構50のウォームホイール11と噛み合うウォーム12の両端には、ウォーム軸12a、12bが一体的に形成されており、これらウォーム軸12a、12bは、それぞれ、ギアケース53に装着された玉軸受54a、54bによって回転自在に支承されている。また、ウォーム軸12bは、電動モータ33の駆動軸33aにスプライン結合又はセレーション結合している。
ウォームホイール11の芯管1は、下部舵輪軸31bと連結しているので、電動モータ33の回転が、ウォーム12及びウォームホイール11を経て下部舵輪軸31bに伝達されることとなる。
図1は本発明の減速ギアの一例を示す斜視図であるが、金属製の芯管1の外周に、樹脂製でその外周端面にギア歯を形成した樹脂部3を一体化したウォームホイール11を備える。このような構成自体は、図10に示したような、芯管1と樹脂部3とを一体化した従来のウォームホイール11と同様である。また、ウォーム12には制限がなく、従来と同様に金属製とすることができる。
この樹脂部3は、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂が主成分であるポリアミドイミド樹脂組成物で形成される。ポリアミドイミド樹脂組成物は、フッ素樹脂、黒鉛等の固体潤滑剤を0.5〜25重量%程度含むことがある。ポリアミドイミド樹脂組成物は少量の強化材を含んでも良い。ポリアミドイミド樹脂組成物の成形体は、160〜170℃で1日程度、水分を予備乾燥後、215〜250℃の温度で1〜3日程度キュアの前工程を実施してから、約260℃で2〜3日以上加熱することで、分子間で脱水反応が起こり高分子量化(イミド化)されるポストキュアが行われる。ポストキュアの最適条件は、樹脂部の成形厚さによって変化する。ポストキュアされることで、キュア前に比べて引張強度が約2倍、伸びが約3倍、ガラス転移温度がキュア前の約230℃からキュア後に約280℃になり、より強靭になる。それに伴って耐摩耗性も格段に向上する。
この樹脂部3は、特に製造法は限定されないが、上記のようにしてポストキュアされたポリアミドイミド樹脂組成物の板材、丸棒等の成形体から、内径部に締め代を持った円筒形に切削加工で製作後、芯管1に加熱圧入することによりウォームホイール11が得られる。この時、芯管1の外周面には、適宜クロスローレット加工等の加工を施すことが好ましく、その加工面を円筒形の樹脂部3に加熱圧入するとよい。
そして、外周面に、例えばシランカップリング剤等のカップリング剤等が塗布された芯管1を加熱圧入し、その後に選択的に高周波融着を行えば、芯管1と樹脂部3とが一体的に接合(接着)される。また、樹脂部3の外径面のギア歯10は、芯管1と樹脂部3とを融着等により一体化した後に、切削加エ等で形成する。なお、カップリング剤を芯管1に塗布する方法としては、メタノール等の溶剤で希釈した溶液を塗布する方法等があげられる。
本発明の接着剤であるシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等は、その化学構造の一端に加水分解性基であるアルコキシ基を有しており、このアルコキシ基が加水分解して水酸基に変化し、この水酸基が金属表面の水酸基と脱水縮合を起こすことにより、金属との間で高い結合力を持つ共有結合を形成する。また、他端には有機官能基を有しており、この有機官能基が、ポリアミドイミド樹脂中のアミド結合等と結合する。そして、これらの結合により芯管1と樹脂部3と強固に結合される。尚、有機官能基としては、反応性を考慮して、アミノ基やエポキシ基を有するものが好適であり、具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート等があげられる。特に、有機官能基としてエポキシ基を持つものは、アミド結合との反応性が高く、より好適である。
上記に示したシランカップリング剤は、更に接着性を向上させるために、反応性有機基で変性されたポリシロキサンとの混合物であってもよい。
本発明の別の接着剤であるトリアジンチオール化合物は、トリアジン環に2〜3箇所のメルカプト基(−SH基)あるいはメルカプト基のアルカリ金属塩(例えば、−SNa基、又は−SK基)になった官能基がついたものである。3つ目のこの官能基部分は、別の構造をしていてもよく、具体的には、ジブチルアミノ基、アニリノ基などが考えられる。アルカリ金属塩も水に溶かすことによって、加水分解しメルカプト基になり、金属とポリアミドイミド樹脂のアミド結合部分と−S−の結合で連結される。トリアジンチオール化合物の具体例としては、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンモノナトリウム塩、2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジントリナトリウム塩などがある。
説明した上記化合物を、金属表面と効率よく結合させるために、芯管1の材料である鉄鋼材料の表面の少なくとも芯管1の外周面1aに、別の金属メッキ(例えば、銅(Cu)メッキ、又はニッケル(Ni)メッキ)や酸素プラズマ処理を行ってもよい。尚、芯管1の外周面1aには、予めショツトブラストやローレット加工等を施しておいてもよく、特にローレット加工が好ましい。ローレット加工のV字溝の深さは0.2〜0.8mm、特に0.3〜0.7mmが適当である。また、芯管1と樹脂部3(上記したポリアミドイミド樹脂が主成分)との結合力をより高めるために、熱処理を行うと更に好適である。加熱温度としては、接合部位の温度で、ポリアミドイミド樹脂の溶融温度である345〜365℃前後の、300〜400℃程度が適当である。熱処理の手段としては、短時間で効率よく温度が上昇する誘導加熱(高周波あるいは低周波)が最も好ましい。この加熱方法で加熱処理を行うと、金属部分及び、金属−接着剤−樹脂の内周面が効果的に加熱され、より強固な結合が可能になる。また、短時間のため、樹脂や接着剤の劣化を最低限に抑制することができる。この劣化は、加熱をアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気で行うと更に抑制することができる。
以下には、本発明に係る電動パワーステアリング装置用減速ギア用の材料のべ一ス樹脂であるポリアミドイミド樹脂について詳細に述べる。本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、その名の通り分子骨格にアミド基とイミド基を有する熱可塑性樹脂であり、その原料はトリカルボン酸とジアミンである。ただし、耐熱性の面から、脂肪族系のモノマーはほとんど用いず、芳香族系を中心とし、例えば、酸成分としては、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸モノクロリド、アミン成分としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4一アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等を挙げることができる。尚、アミン成分としては、例えば上記のものを2種類以上併用して使用しても良い。
本発明で用いる好ましいポリアミドイミド樹脂の1例は、
Figure 2006232111
[I]
[式中、Rはアルキル基を表す。]
で表される高分子化合物である。
ところで、ポリアミドイミド樹脂には幾つかの製造方法があるが、本発明に係るポリアミドイミド樹脂は、如何なる製造方法により得られたものであっても良い。尚、以下には、ポリアミドイミド樹脂の代表的な製造方法である、酸クロライド法、イソシアネート法、直接重合法について簡単に述べる。酸クロライド法は、無水トリメリット酸モノクロライドとジアミンを、0〜30℃の低温で反応させ、ポリアミド酸とした後、脱水閉環してポリアミドイミドとする方法である。ここで、閉環は無水酢酸/トリエチルアミンなどの脱水剤で行うこともできるが、いったんポリアミド酸を水中で沈殿させた後、熱処理でイミド化させることも可能であり、後者の方がより一般的である。イソシアネート法は、ジアミンから誘導されたジイソシアネートを無水トリメリット酸と反応させる方法である。つまりこの方法によれば、ポリアミド酸を経由することなく、炭酸ガスを発生させつつ、一段でポリアミドイミドを合成することができる。直接重合法は、無水トリメリット酸とジアミンをモノマーとするものであり、酸クロライド法に比べ原料代が安くなるというメリットがあるが、重合を進行させるには200℃以上に加熱する必要があり、その結果枝別れ構造ができやすいという欠点も有する。
これらのポリアミドイミド樹脂はベース樹脂として、樹脂単独でも一定以上の耐久性を示し、ウォームホイール11の相手材である金属製のウォーム12の摩耗に対して有利に働き、減速ギアとして十分に機能する。これらのべ一ス樹脂には、摺動性を向上させるために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び/又は黒鉛等の固体潤滑剤及び/又は酸化チタン等の顔料をさらに、全重量中に0.3〜25重量%程度含有させて樹脂組成物を構成してもよい。また、強化材として、黒鉛繊維、ガラス繊維を更に添加した樹脂組成物構成としてもよい。
ウォームホイール11を製造する方法は制限されるものではなく、図2〜図5に示す工程に従うことができる。即ち、先ず図2に示すように、金属製の芯管1の外周面1aにクロスローレット加工を施し、溶剤で脱脂した後、この芯管1の外周面1aに接着剤層8を形成する。接着剤層8の形成方法としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤またはトリアジンチオール系化合物を溶解した溶液(溶媒:水、アルコール、メチルセルソルブ等を適宜選択)に、芯管1を浸漬し、溶媒を乾燥除去する方法が簡便である。この接着剤の層を形成する溶液の濃度は3〜10重量%が適当である。次いで、図3に示すように、スプール4及びディスクゲート5を装着した金型に配置し、射出成形機により上記のポリアミドイミド系樹脂組成物からなるドーナツ状の樹脂部3を成形する。この樹脂部3を上記説明した条件でポストキュア後、加熱して膨張させてから、その中心の空部に、接着剤層8を形成した芯管1を圧入し、その後不活性ガス雰囲気中等で誘導加熱(芯管部加熱温度:300〜400℃)して熱処理を行うことで接合させる。この樹脂部3は、押出成形等で別途成形した板状片や丸棒等の樹脂組成物を同様にポストキュアしたものを切削加工にて、製作したものでもよい。
上記により、図4に示すように、芯管1の外周に接着剤層を介して樹脂部3が接合されたウォームホイールのブランク材7を得る。そして、図5に示すように、ウォームホイールのブランク材7の樹脂部3の外周面3aに切削加工により所定形状のギア歯10を形成してウォームホイール11が得られる。
以上、円筒ウォームギアであるウォームホイールについて説明してきたが、歯車の形状としては、その他、平歯車、はすば歯車、かさ歯車、ハイポイドギア等でもかまわない。
平歯車の構成を、図6の斜視図を参照しながら説明する。平歯車は、芯金1と芯金1の外周に一体的に設けられた樹脂部3とで構成されている。そして、樹脂部3の外径面には、金属製の平歯車と噛み合うギア歯10が形成されている。
次に、はすば歯車の構成を、図7の斜視図を参照しながら説明する。はすば歯車は、芯金1と芯金1の外周に一体的に設けられた樹脂部3とで構成されている。そして、樹脂部3の外径面には、金属製のはすば歯車と噛み合うギア歯10が形成されている。
次にかさ歯車の構成を、図8の斜視図を参照しながら説明する。かさ歯車は、芯金1と芯金1の外周に一体的に設けられた樹脂部3とで構成されている。そして、樹脂部3の外径面には、金属製のかさ歯車と噛み合うギア歯10が形成されている。
次に、ハイポイドギアの構成を、図9の斜視図を参照しながら説明する。ハイポイドギアは、芯金1と芯金1の外周に一体的に設けられた樹脂部3とで構成されている。そして、樹脂部3の外径面には、金属製のハイポイドギアと噛み合うギア歯10が形成されている。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例)
深さ0.5mmのローレット加工を施し、石油ベンジン等の溶剤で脱脂した外径45mm、幅13mm、内径45.5mmの、炭素含量0.45%の機械構造用炭素鋼(S45C)製の芯管を、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製「A−187」)の5重量%メタノール溶液に室温で30秒程度浸漬した後、乾燥して芯管の外周面に接着剤の層を形成した。また、押出成形で製作後、ポストキュア(条件は、165℃、218℃、243℃、252℃の各温度で1日、更に260℃で1日。)されたポリアミドイミド樹脂組成物の棒状体(外径50mmφ、長さ300mm)である素材(日本ポリペンコ(株)製TR−4203;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)0.5wt%及び酸化チタン3wt%含有)から切削加工で、外径60mm、内径44.5mm、幅13mmのドーナツ状の樹脂部を得た。そして、この樹脂部を150℃で1hr加熱して膨張させて、芯管を圧入し、室温まで冷却した。その後、アルゴンガス中で380℃まで接合部と芯管温度が上がるまで誘導加熱して、ウォームホイールのブランク材とし、次いで樹脂部の外周を切削加工してウォームホイール試験体を作成した。
(比較例)
比較のために、ドーナツ状の樹脂部をモノマーキャストナイロン(MCナイロン)の素材(日本ポリペンコ(株)製MC901)で、ポストキュアの工程を実施しなかった以外は実施例1と同様に処理して、ウォームホイール試験体を作成した。
[高面圧での耐久性評価]
大型車を想定し、高トルクのモータを使って、比較例のMCナイロンの樹脂ギア歯の面圧が300MPa(実施例の方が、若干弾性率が高いので、実質面圧は高め)になるようにして、10万回操舵の耐久試験を室温で実施した。1万回ごとに停止し、樹脂ギアの歯の状態を観察し、異常がない場合はグリースを再充填して操舵を継続した。評価結果を以下の表1に示す。
Figure 2006232111
以上説明したように、樹脂部を極めて耐摩耗性と耐疲労性に優れるポリアミドイミド樹脂組成物で形成することで、高面圧の極めて過酷な条件下でも耐久性に優れた電動パワーステアリング装置用減速ギアが得られる。また、樹脂部のポリアミドイミド樹脂組成物のポストキュアを単独で(芯管を伴わずに)行い、ポストキュア後のポリアミドイミド樹脂組成物と芯管が接着剤を介して一体化されていることから、吸水等による寸法変化も抑制され、寸法安定性にも優れる。
本発明の樹脂製歯車は、例えば、電動パワーステアリング装置のパワーアシスト部を構成する歯車減速機構等に好適である。
本発明の減速ギアのー例を示す斜視図である。 図1の減速ギアの金属製芯管の断面図である ドーナツ状樹脂部の成形に用いる金型の断面図である 芯管の外周に接着剤を介して樹脂部が接合されたウォームホイールのブランク材の斜視図である 図4に示すウォームホイールのブランク材の一部に加工されたギア歯を示す斜視図である 平歯車の構成を示す斜視図である。 はすば歯車の構成を示す斜視図である。 かさ歯車の構成を示す斜視図である。 ハイポイドギアの構成を示す斜視図である。 従来技術の減速ギアを示す斜視図である。 電動パワーステアリング装置の構成を示す図である。 ウォーム歯車減速機構の構成を示す図である。
符号の説明
1 金属製の芯管
7 ウォームホイールのブランク材
3 樹脂部
8 接着剤
10 ギア歯
11 ウォームホイール
12 ウォーム
20 減速ギア

Claims (7)

  1. 操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアにおいて、前記減速ギアが、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物を含む樹脂部を、接着剤を介して金属製芯管の外周に接合し一体に設け、前記樹脂部の外周面にギア歯を形成して構成される樹脂製歯車を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  2. 操舵補助出力発生用電動モータの出力をステアリングシャフトに伝達するための電動パワーステアリング装置用減速ギアにおいて、前記減速ギアが、ポストキュアされたポリアミドイミド樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる樹脂部を、接着剤を介して金属製芯管の外周に接合し一体に設け、前記樹脂部の外周面にギア歯を形成して構成される樹脂製歯車を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  3. 前記ポリアミドイミド樹脂が、式
    Figure 2006232111
    [I]
    [式中、Rはアルキル基を表す。]
    で表される高分子化合物である、請求項1又は2のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  4. 前記接着剤が、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤またはトリアジンチオール化合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1、2又は3のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  5. 前記樹脂製歯車が、円筒ウォームギア、はすば歯車、平歯車、かさ歯車、ハイポイドギアからなる群から選択される一つであることを特徴とする、請求項1、2、3又は4のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  6. 前記金属製芯管と前記接着剤を介して前記金属性芯管の外周に接合し一体に設けた前記樹脂部とが、誘導加熱により接合部温度で300〜400℃に加熱されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5のいずれか1項記載の電動パワーステアリング装置用減速ギア。
  7. 前記誘導加熱が、アルゴン等の不活性ガス雰囲気で行われていることを特徴とする、請求項6記載の電動パワーステアリング装置用減速ギア。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2021008953A (ja) * 2019-07-02 2021-01-28 日本精工株式会社 波動歯車減速機及びその製造方法

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