JP2006226043A - 制震ダンパー接続具、制震ダンパー、及び建造物の制震構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 梁4によって接続される一対の柱3間に制震ダンパー6を設ける。制震ダンパー6を、振動エネルギーを吸収するダンパー本体7と、ダンパー本体7の端部を柱3に接続する制震ダンパー接続具8によって構成する。制震ダンパー接続具8を、柱3に取り付けられて、制震ダンパー本体7を、柱3から離間する向きに相対変位可能にして支持する支持台16と、支持台16とダンパー本体7との間に介装されて、支持台16とダンパー本体7との間隔の増加を許容しつつこの間隔の減少を規制する間隔保持装置17とを有する構成とする。
【選択図】 図3
Description
特許文献1では、架構内に耐震装置用摩擦ダンパ(振動エネルギー吸収機構)を組み込み、この耐震装置用摩擦ダンパによって振動エネルギーを吸収することによって、RC系建造物の振動を減衰させて変形を抑えている。
例えば、既設のRC系建造物の躯体に対して耐震装置用摩擦用ダンパを設置する場合、耐震装置用摩擦ダンパを躯体の骨材に対して直接接続することはできない。このため、耐震装置用摩擦ダンパは、一般に、コンクリート製の躯体に打ち込んだアンカーによって固定されるのであるが、このような接続形態では、十分な接続強度を得ることは困難であった。特に、コンクリートは引張力に対しては脆いので、躯体との接続部から相対的に離間する向きの力(すなわち耐震装置用摩擦ダンパを躯体から引き剥がす向きの力)に対して十分な接続強度を得ることは困難であった。
このように接続強度が低いと、耐震装置用摩擦ダンパに対して力が伝わりにくくなり、ダンパー作動による振動エネルギーの吸収が少なくなるので、耐震装置用摩擦ダンパの性能を十分に発揮することができない。
このように接続構造が大型化すると、架構内に耐震装置用摩擦ダンパを設置することによって架構内の空間が遮られてしまうという問題がある。すなわち、耐震装置用摩擦ダンパによって柱間に形成されている空間が仕切られてしまい、空間を広いままの状態で使用することができないという不都合がある。その結果、建築物の内部空間の機能性や景観が損なわれることにもなる。
また、躯体と耐震装置用摩擦ダンパとの接続構造として、複雑な接続構造や大掛かりな接続構造を採用することで、耐震装置用摩擦ダンパの設置に手間がかかるため、工期が長期化してしまう。
なお、このような躯体と耐震装置用摩擦ダンパとの接続強度に由来する問題は、RC系建造物に限らず、例えば軸組工法を用いた木造建造物にもあてはまる。
すなわち、本発明にかかる制震ダンパー接続具は、建造物の躯体に対して制震ダンパーを接続するための接続具であって、前記躯体に取り付けられて、前記制震ダンパーを、前記躯体から離間する向きに相対変位可能にして支持する支持台と、該支持台と前記制震ダンパーとの間に介装されて、前記支持台と前記制震ダンパーとの間隔の増加を許容しつつ該間隔の減少を規制する間隔保持装置とを有していることを特徴とする。
このため、この制震ダンパー接続具によって躯体に接続された制震ダンパーは、躯体に振動による変形が生じて、この変形に伴って躯体から離間する向きの力を受けた場合には、躯体及び支持台から離間する向きに容易に相対変位するので、支持台と躯体との接続部には、引張力が加わらないか、もしくはごく小さい引張力しか加わらない。
これにより、制震ダンパーに、振動による躯体の変形に伴って躯体に近接する向きの力が作用した場合には、躯体からの力が制震ダンパー接続具を介して制震ダンパーに直ちに伝達されて制震ダンパーが作動し、振動エネルギーの吸収が迅速に行われる。
ここで、このように制震ダンパーに躯体に近接する向きの力が作用した場合には、支持台と躯体との接続部には、圧縮力が加わる。コンクリート製の躯体は、圧縮に対する強度が高く、圧縮力を受けても弾性変形しにくいので、躯体からの力が効果的に制震ダンパーに伝達されることとなり、制震ダンパーの制震能力を十分に発揮させることができる。
ここで、この制震ダンパー接続具は、RC系構造物の躯体への制震ダンパーの接続に用いるほか、軸組工法を用いた木造構造物、他の構造物の躯体への制震ダンパーの接続に用いることができる。
これにより、支持台と制震ダンパーとの間隔の減少が規制されて、制震ダンパーと支持台との間のあそびが解消される。
ここで、この構成の制震ダンパー接続具には、楔部材を上方から押さえて支持台とダンパー本体との間からの脱落を防止する脱落防止装置が設けられていてもよい。
このため、制震ダンパーが支持台から離間する向きに変位して、支持台と制震ダンパーとの間の隙間が広がると、楔部材が付勢部材の付勢力によってこの隙間内に押し込まれる。
これにより、支持台と制震ダンパーとの間隔の減少が規制されて、制震ダンパーと支持台との間のあそびが解消される。
このため、躯体に振動による変形が生じて、この変形に伴って、ダンパー本体に躯体から離間する向きの力が加わった場合には、ダンパー本体が躯体及び支持台から離間する向きに容易に相対変位するので、支持台と躯体との接続部には、引張力が加わらないか、もしくは極小さい引張力しか加わらない。
これにより、ダンパー本体に、振動による躯体の変形に伴って躯体に近接する向きの力が作用した場合には、躯体からの力が制震ダンパー接続具を介してダンパー本体に直ちに伝達されてダンパー本体が作動し、振動エネルギーの吸収が迅速に行われる。
ここで、このようにダンパー本体に躯体に近接する向きの力が作用した場合には、支持台と躯体との接続部には、圧縮力が加わる。コンクリート製の躯体は、圧縮に対する強度が高く、圧縮力を受けても弾性変形しにくいので、躯体からの力が効果的にダンパー本体に伝達されることとなり、制震ダンパーの制震能力を十分に発揮させることができる。
ここで、この制震ダンパーは、RC系構造物の躯体の制震に用いるほか、軸組工法を用いた木造構造物、他の構造物の躯体の制震に用いることができる。
本発明にかかる制震ダンパーでは、ダンパー本体が小型で済むので、設置スペースを低減して、建造物中の有効スペースをより広く取ることができる。
特に、請求項5記載の制震ダンパーは小型であるので、この制震ダンパーを振動エネルギー吸収機構として用いた場合には、建造物中の有効スペースを広く取ることができ、建造物中の機能性や景観を保つことができる。
ここで、この建造物の耐震構造は、RC系構造物に適用するほか、軸組工法を用いた木造構造物、他の構造物に適用することができる。
また、制震ダンパー接続具と躯体との接続構造を簡素なものとすることができるので、接続構造が小型で済み、建造物内の空間を遮ることなく設置することが可能である。
さらに、接続構造が簡素であるので、躯体に対する制震ダンパーの取付けが容易となり、新設、既設を問わずに、短い工期で建造物に制震ダンパーを取り付けることができる。
図1に、本発明にかかる建造物の耐震構造1を示す。本実施形態では、本発明を、柱3と梁4とを剛に接合したラーメン構造のRC系建造物2に適用した例を示す。
なお、ここでは、説明を簡略にするために、例えば、図1に示されるように、2本の柱3と梁4とからなるラーメン架構2に適用した場合について説明する。特に、本実施形態に係る耐震構造1は、図2に示されるように、水平方向の地震荷重Fが作用するラーメン架構に適用される。
ダンパー本体7としては、例えば粘弾性体の粘性を利用した粘弾性ダンパーや、オイルダンパー等の粘性減衰型ダンパー、鋼材の塑性や摩擦等を利用した履歴減衰型ダンパー等が用いられる。
基部21は、柱3に対してグラウトGによって接着されるとともにさらにアンカーボルトBによって柱3に固定されている。
基部21においてダンパー本体7側には、上端から下端に向かうにつれてダンパー本体7側に張り出す傾斜面21aが設けられている。
支持部22の上方には、クランププレート23がボルト固定されており、芯材11は、端部を支持部22とクランププレート23との間に挟み込まれた状態にして支持部22に固定されている。ここで、芯材11の端部は、支持部22に対して軸線方向のあそびをもって設けられており、芯材11は、基部21から離間する方向に相対変位可能とされている。
また、このステー24は、基部21と支持部22との間に挿入される楔部材26(後述)を側方から支持しており、これによって制震ダンパー接続具8からの楔部材26の脱落が防止されている。
楔部材26は、基部21側を向く面が基部21aの傾斜面21aを受ける第一受け面26aとされており、芯材11側を向く面は芯材11の端面11aを受ける第二受け面26bとされている。ここで、第一、第二受け面26a,26bとがなす角度は、基部21aの傾斜面21aと芯材11の端面11aとのなす角度と略同じ角度(但し傾斜方向は逆向き)とされており、第一受け面26aは傾斜面21aに、第二受け面26bは端面11aに、それぞれ面接触するようになっている。
本実施形態に係る耐震構造1によれば、地震の発生により地震荷重Fが作用した場合には、図2に示されるように主として梁4が鉛直面内において変形する。この梁4には鉛直下方に延びるアーム5が固定されているので、このアーム5も梁4の変形によって鉛直面内において回転変位させられる。
一方、制震ダンパー6を床下または床上等、作業員の手の届く範囲内に設置した場合には、点検やメンテナンス作業が容易となる。
制震ダンパー6を構成するダンパー接続具8は、前記のように、ダンパー本体7を、RC系建造物2の柱3から離間する向きに相対変位可能にして支持する構成とされている。
このため、RC系建造物2に振動による変形が生じて、この変形に伴って、ダンパー本体7に柱3から離間する向きの力が加わった場合には、ダンパー本体7が柱3及び支持台16から離間する向きに容易に相対変位するので、支持台16と柱3との接続部には、引張力が加わらないか、もしくは極小さい引張力しか加わらない。
具体的には、ダンパー本体7が支持台16から離間する向きに変位して、支持台16とダンパー本体7との間の隙間が広がると、間隔保持装置17を構成する楔部材26が、その自重及び付勢部材27の付勢力によってこの隙間内に押し込まれて、ダンパー7と支持台16との間のあそびが解消される。
ここで、このようにダンパー本体7に柱3に近接する向きの力が作用した場合には、支持台16と柱3との接続部には、圧縮力が加わる。コンクリート製の柱3は、圧縮に対する強度が高く、圧縮力を受けても弾性変形しにくいので、RC系建造物2からの力が効果的にダンパー本体7に伝達されることとなり、制震ダンパー6の制震能力を十分に発揮させることができる。
また、このように制震ダンパー接続具8と柱3との接続構造を簡素なものとすることができるので、接続構造が小型で済み、RC系建造物2内の空間を遮ることなく設置することが可能である。本実施形態では、ダンパー本体7として、座屈拘束型ダンパーを用いており、ダンパー本体7が小型で済むので、RC系建造物2内の有効スペースをより広く取ることができる。
また、柱3に対する制震ダンパー6の取付けが容易となり、新設、既設を問わずに、短い工期でRC系建造物2に制震ダンパー6を取り付けることができる。
また本実施形態では、付勢部材27にコイルスプリングを適用した例を示したが、これに限られることなく、皿ばねや板ばね、ゴムなどの弾性体の弾性力を付勢力として利用する部材を用いてもよい。また、付勢部材27として楔部材26にウェイトを取り付けてもよい。この場合には、このウェイトの重みが付勢力として楔部材27の押し下げに作用する。
また、本実施形態では、一対の柱3間にまたがる梁4にアーム5を設けて、アーム5と各柱3との間にそれぞれ制震ダンパー6を設けた例を示したが、これに限られることなく、上下一対の梁4間にまたがる柱3の軸方向の途中位置にアーム5を設けて、このアーム5と各梁4との間にそれぞれ制震ダンパー6を設けてもよい。
図5に示す建造物の耐震構造51は、一対の柱3と下側の梁4との接続部から上側の梁4において各柱3間の中間位置との間にそれぞれ制震ダンパー6を設けたものである。
この構成では、下側の梁4の中間部近傍にスペースを確保することができる。
図6に示す建造物の耐震構造52は、一方の柱3と上側の梁4との接続部から他方の柱3と下側の梁4との接続部にかけて制震ダンパー6を設け、さらにこの制震ダンパー6に対して交差するようにして、一方の柱3と下側の梁4との接続部から他方の柱3と上側の梁4との接続部にかけて制震ダンパー6を設けた例を示している。
2 RC系建造物
3 柱(躯体)
4 梁(躯体)
5 アーム
6 制震ダンパー
7 ダンパー本体(振動エネルギー吸収機構)
8 制震ダンパー接続具
16 支持台
17 間隔保持装置
26 楔部材
27 付勢部材
51,52 建造物の耐震構造
Claims (7)
- 建造物の躯体に対して制震ダンパーを接続するための接続具であって、
前記躯体に取り付けられて、前記制震ダンパーを、前記躯体から離間する向きに相対変位可能にして支持する支持台と、
該支持台と前記制震ダンパーとの間に介装されて、前記支持台と前記制震ダンパーとの間隔の増加を許容しつつ該間隔の減少を規制する間隔保持装置とを有していることを特徴とする制震ダンパー接続具。 - 前記間隔保持装置が、前記支持台と前記制震ダンパーとの間に対して先端を差し込まれる楔部材を有していることを特徴とする請求項1記載の制震ダンパー接続具。
- 前記楔部材が、前記支持台と前記制震ダンパーとの間に対して、上方から先端を差し込まれていることを特徴とする請求項2記載の制震ダンパー接続具。
- 前記間隔保持装置が、前記支持台と前記制震ダンパーとの間に先端が差し込まれた楔部材と、
該楔部材を前記先端方向に向けて付勢する付勢部材とを有していることを特徴とする請求項1記載の制震ダンパー接続具。 - 建造物の躯体に対して接続される制震ダンパーであって、
振動エネルギーを吸収するダンパー本体と、
該ダンパー本体を前記躯体に接続する制震ダンパー接続具とを有しており、
該制震ダンパー接続具として、請求項1から4のいずれかに記載の制震ダンパー接続具が用いられていることを特徴とする制震ダンパー。 - 前記ダンパー本体が、座屈拘束型ダンパーとされていることを特徴とする請求項5記載の制震ダンパー。
- 相互に連結される柱と梁とを備える建造物の制震構造であって、
前記柱と梁とのうちのいずれか一方の、地震力により生じる曲げモーメントの方向が切り替わる軸方向の途中位置近傍に設けられるアームと、
前記柱と梁とのうちの他方と前記アームとの間に取り付けられ、地震時に前記アームの変位と前記他方の柱または梁の変形による相対変位で作動する振動エネルギー吸収機構とを備えており、
該振動エネルギー吸収機構として、請求項5または6に記載の制震ダンパーが用いられていることを特徴とする建造物の制震構造。
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