JP2006223942A - 防湿加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 特殊な設備や煩雑な操作を用いることなく、容易かつ安価に、防湿性能に優れた生分解性防湿加工品の製造方法を提供する。
【解決手段】 生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することを特徴とする生分解性防湿加工品の製造方法。特に、生分解性樹脂100質量部あたり1〜100質量部の天然ワックスを含有する生分解性防湿コート剤を塗工することを特徴とする前記の生分解性防湿加工品の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することを特徴とする生分解性防湿加工品の製造方法。特に、生分解性樹脂100質量部あたり1〜100質量部の天然ワックスを含有する生分解性防湿コート剤を塗工することを特徴とする前記の生分解性防湿加工品の製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、生分解性防湿加工品の製造方法に関し、詳しくは、生分解性基材に生分解性防湿コート剤を塗工した生分解性防湿加工品の製造方法に関する。
従来より、各種食品や薬品等を入れるための包装容器は、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する。)、ポリプロピレン(以下、「PP」と略称する。)、ナイロン6(以下、「Ny6」と略称する)等の熱可塑性樹脂フィルムを成形加工することにより作製されている。しかし、これらは石油由来であり、生分解性ではないために、廃棄する場合、自然界での分解性に乏しく、自然環境や野生生物に悪影響を及ぼすなど、環境面での問題が懸念されている。
そこで、これらの環境問題に配慮するために注目または見直されてきたのが、ポリ乳酸系樹脂や紙の成形加工品である。例えば、ポリ乳酸樹脂は、とうもろこしやさつまいもなどの農作物を原料とする植物由来であり、資源的にも有利で、生分解性であり、更に透明性、熱溶融成型性、耐熱性に優れている。また、燃焼熱はポリエチレンなどの約1/3なので焼却炉を傷めることがなく、有毒ガスを発生させないなどの利点も挙げられる。
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂や紙は防湿性に乏しく、これらの包装容器に、湿気を嫌う製品を梱包する際には、防湿加工を施す必要がある。
しかしながら、ポリ乳酸系樹脂や紙は防湿性に乏しく、これらの包装容器に、湿気を嫌う製品を梱包する際には、防湿加工を施す必要がある。
例えば、防湿加工には基材に防湿層を積層する方法がある。積層方法としては、防湿性能を有する材料を溶融し積層する方法(特許文献1)や、防湿性能を有する材料を媒体に溶解もしくは分散したものをコートして積層する方法等があるが、薄膜化が可能であることや、取り扱いが容易であることなどから、後者が操作上有利である。
また、コート剤には、媒体の種類により大別して、有機媒体を用いたものと水性媒体を用いたものがある。有機媒体を媒体とする生分解性の防湿コート剤としての可能性を示した例としては特許文献2が知られているが、実質的には有機媒体を除去した防湿組成物を熱圧着した例しか挙げられておらず、コート剤として塗工する際の具体的な方法が示されていない。しかも、近年では、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善等の立場から、有機溶剤の使用が制限され、水性媒体の使用が好まれる傾向にある。こうした中、例えば、生分解性樹脂を用いた水性のコート剤の可能性を示した例としては特許文献3が挙げられるが、実質的には有機媒体を除去した防湿組成物を熱圧着した例しか挙げられておらず、コート剤として塗工する際の具体的な方法が示されていない。また、2つの生分解性樹脂層に挟み込むことを前提に防湿層がワックスを主成分とした組成となっているため、防湿層の強度や密着性、透明性は満足できるものではなかった。
特開平11−58589号公報
特開2004−131575号公報
特開2003−311868号公報
本発明は、上記現状を鑑みてなされたものであり、その目的は、特殊な設備や煩雑な操作を用いることなく、容易かつ安価に、防湿性能に優れた生分解性防湿加工品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することで、生分解性材料を利用することで環境にやさしいのみならず、優れた防湿性能を有する防湿加工品が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
(1)生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することを特徴とする生分解性防湿加工品の製造方法。
(2)生分解性樹脂100質量部あたり1〜100質量部の天然ワックスを含有する生分解性防湿コート剤を塗工することを特徴とする(1)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
(3)生分解性防湿コート剤に含まれる生分解性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする(1)または(2)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
(4)生分解性防湿コート剤の液状媒体が水性媒体であることを特徴とする(1)〜(3)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
(1)生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することを特徴とする生分解性防湿加工品の製造方法。
(2)生分解性樹脂100質量部あたり1〜100質量部の天然ワックスを含有する生分解性防湿コート剤を塗工することを特徴とする(1)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
(3)生分解性防湿コート剤に含まれる生分解性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする(1)または(2)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
(4)生分解性防湿コート剤の液状媒体が水性媒体であることを特徴とする(1)〜(3)記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
本発明の生分解性防湿加工品の製造方法によれば、特殊な設備や煩雑な操作を用いることなく、容易かつ安価に、防湿性能に優れた生分解性防湿加工品を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられる生分解性防湿コート剤は、生分解性樹脂、天然ワックスおよび液状媒体よりなるものである。以下、該生分解性防湿コート剤の構成成分について説明する。
本発明で用いられる液状媒体としては特に限定されず、有機溶剤であってもよいし、水または水と親水性溶媒の混合物であってもよいが、室温・常圧において液体であり、加熱や減圧によって揮発し、除去できるものが好ましい。有機溶剤としては、ジエチルケトン(3−ペンタノン)、メチルプロピルケトン(2−ペンタノン)、メチルイソブチルケトン(4−メチル−2−ペンタノン)、2−ヘキサノン、5−メチル−2−ヘキサノン、2−へプタノン、3−へプタノン、4−へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベッソ100、ソルベッソ150等の芳香族炭化水素類、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−sec−ブチル、酢酸−3−メトキシブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジエチル、γ―ブチロラクトン、イソホロン等のエステル類、加えて後述の親水性の有機溶剤などが挙げられる。
さらに、液状媒体としては、保存安定性、取り扱いの容易さ、さらに、環境保護、省資源、消防法等による危険物規制、職場環境改善等の立場から、水性媒体の使用が好ましい。水性媒体とは水を主成分とする液体からなる媒体であり、水以外の溶媒を混合する場合には、親水性の有機溶剤を用いることが好ましい。親水性の有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類、テトラヒドロフラン(以下「THF」と略称する)、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−tert−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、炭酸ジメチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセトニトリル、そのほか、アンモニアを含む、ジエチルアミン、トリエチルアミン(以下「TEA」と略称する)、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−ジエタノールアミン、モルホリン、3−メトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン等の有機アミン化合物等を挙げることができる。
また、上記の液状媒体中に生分解性樹脂および天然ワックスが含有された状態としては、両方の成分が液状媒体に溶解している状態、いずれかの成分が微粒子として液状媒体に分散し、他方が液状媒体に溶解している状態、両方の成分が液状媒体に微粒子として分散している状態が挙げられ、生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体の組み合わせにより、いずれの状態をとっていてもよいが、保存安定性、取り扱いの容易さ、環境保護などの理由から、特に、生分解性樹脂と天然ワックスとが、いずれも水または水性媒体に微粒子として分散した、いわゆる水性分散体の状態が好ましい。
本発明において使用される生分解性樹脂は、生分解性を有する樹脂が50質量%以上含まれているものが好ましい。生分解性樹脂の種類は限定されないが、ポリエステル樹脂が特に好ましい。生分解性ポリエステル樹脂としては、ポリ乳酸(L型、D型)、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリ−4−ヒドロキシ酪酸、ポリ−4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ−5−ヒドロキシ吉草酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−γ−プロピオラクトン等のヒドロキシアルカノエート単位からなる脂肪族ポリエステルや、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートなどの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸成分と炭素数2〜12の脂肪族ジオール成分とからなる脂肪族ポリエステル、又はこれらの共重合体のほか、前記脂肪族ポリエステルに、生分解性を損なわない範囲でテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸成分を共重合した、ポリ(エチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)などが挙げられ、上記のポリエステルは、単独で用いてもよいし、2種類以上の共重合体または混合物でもよい。
上記した脂肪族ポリエステルに芳香族ジカルボン酸成分を共重合したポリエステルは、熱可塑性樹脂フィルムとの密着性に優れているため、防湿フィルムとして使用する場合に好ましいポリエステル成分である。このようなポリエステルとしては、BASF社製の商品名エコフレックス(以下、「EF」と略称する)などが市販されている。
前述した生分解性ポリエステル樹脂は、液状媒体に溶解または分散するにあたって、その酸価、分子量などを公知の手法により任意に制御して使用してもよい。例えば、酸価を増すために、高分子量のポリエステルを多価カルボン酸で解重合するなどが挙げられる。
本発明で使用される天然ワックスとして、具体的には、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろうなどの植物ワックス、セラックワックス、ラノリンワックスなどの動物ワックス、モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスが挙げられる。中でもキャンデリラワックス、カルナバワックス、パラフィンワックスが適度な生分解性を有し、かつ生分解性樹脂と混合することで優れた防湿性を発現することから好ましく、特に、キャンデリラワックスが好ましい。
本発明で使用される生分解性防湿コート剤における生分解性樹脂と天然ワックスとの配合比率は、防湿組成物層の防湿性および強度を維持するため、生分解性樹脂100質量部に対して、天然ワックスを1〜100質量部とすることが必要であり、好ましくは5〜80質量部で、さらに好ましくは10〜50質量部である。1質量部未満では防湿性が充分に発現されない場合がある。また、天然ワックス成分は、その量が多くなるほど防湿性が向上する傾向にあるが、100質量部を超えて用いても防湿性能はほとんど向上しなくなるため経済的ではなく、さらに、天然ワックスの量が100質量部を超えると、防湿組成物層が白濁したり、もろくなるうえに、基材との密着性が低下する場合がある。
また、本発明で使用される生分解性防湿コート剤において、生分解性樹脂と天然ワックスは充分に混ざり合っていることが防湿性発現のために重要であることから、これらが微粒子状に分散している場合、生分解性樹脂の液状媒体中での数平均粒子径(以下、mn)は、0.5μmであることが好ましく、混合安定性の観点から0.3μm以下がより好ましく、0.2μm未満が最も好ましい。なお、粒度分布については、特に限定されない。また、天然ワックスの液状媒体における数平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましく、混合安定性の観点から0.3μm以下がより好ましく、0.2μm未満が最も好ましい。ここで、上記数平均粒子径は、微粒物質の粒子径を測定するために一般的に使用されている動的光散乱法によって測定される。
本発明で使用される生分解性防湿コート剤には、沸点が300℃以上の分散安定剤を実質的に含有しないものが好ましい。ここで、「分散安定剤」とは、分散体の製造において、分散化促進や分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことである。このような安定剤は加熱や減圧によって除去することが困難であるため防湿組成物層に残存し、防湿組成物層の特性を劣化させる場合がある。沸点が300℃以上の分散安定剤を実質的に含有しないものは、塗膜特性、特に耐水性、防湿性が優れており、これらの性能は長期的に殆ど変化しない。本発明でいう沸点とは、全て常圧における沸点のことである。なお、常圧において沸点を有さない分散安定剤は、本発明でいう沸点が300℃以上の分散安定剤に該当するものとする。
また、「沸点が300℃以上の分散安定剤を実質的に含有しない」とは、こうした安定剤を製造時(樹脂およびワックスの分散時)に用いず、得られた分散体がこうした安定剤を含有しないことを意味する。こうした分散安定剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、効果を損ねない範囲で、全質量の5質量%程度を上限として含まれていてもよい。
本発明でいう沸点が300℃以上の分散安定剤としては、特に、界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性(非イオン性)界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、反応性界面活性剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、乳化剤類も含まれる。例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸およびその塩、アルキルベンゼンスルホン酸およびその塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のソルビタン誘導体等が挙げられ、両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。反応性界面活性剤としては、アルキルプロペニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩、アリルジアルキルフェノールポリエチレンオキサイド付加物やこれらの硫酸エステル塩等の反応性2重結合を有する化合物が挙げられる。
本発明で使用される生分解性防湿コート剤には、耐溶剤性等の性能を向上させるために架橋剤を配合してもよい。架橋剤の配合割合は、生分解性樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜20質量部の範囲であることがより好ましい。添加量が0.1質量部未満であると添加効果が小さく、30質量部を超えるとフィルムとの密着性が低下する傾向にある。架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物、多価の配位座を有する金属塩等を用いることができ、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、ジルコニウム塩化合物、シランカップリング剤等が好ましい。これらの架橋剤は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を併用してもよい。
さらに、本発明で使用される生分解性防湿コート剤には、その特性が損なわれない範囲で、有機・無機フィラー、板状顔料、無機層状化合物、顔料、顔料分散剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、凍結融解安定剤、塗膜形成助剤、防腐剤、防カビ剤、防サビ剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤、耐候剤、難燃剤、レベリング剤、ワキ防止剤等を添加することができる。
本発明で使用される生分解性防湿コート剤を得るための製造方法としては、生分解性樹脂と天然ワックスが液状媒体中に均一に混合される方法であればよく特に限定されるものではないが、例えば水性分散体タイプの防湿コート剤を製造する場合、(A)予め調製された天然ワックスの水性分散体と、生分解性樹脂の水性分散体とを混合する方法、(B)天然ワックスと生分解性樹脂とを同時に水性分散化する方法等が挙げられ、(A)の手法がより簡単に多様な天然ワックスと生分解性樹脂との組み合わせから成る生分解性防湿コート剤を調製できることから好ましい。
上記(A)の方法で用いる予め調製された天然ワックス水性分散体は、例えば、沸点が300℃以上の分散安定剤を含むものと含まないもののいずれも用いることができるが、防湿性および生分解性の面から含まないものが好ましい。
このような、沸点が300℃以上の分散安定剤を含まない天然ワックス水性分散体は、天然ワックス、塩基性化合物、水性媒体を、密閉可能な容器中で加熱、攪拌することで調製することができる。この方法によれば、ホモジナイザーやホモミキサーのような高速撹拌装置を必要とせず、しかも沸点185℃以上の分散安定剤を特に添加する必要なしに、安定な水性分散体を得ることができる。製造装置としては、固/液撹拌装置や乳化機として広く当業者に知られているものを使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。撹拌の方法、撹拌の回転速度は特に限定されないが、樹脂が媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でよい。したがって、高速撹拌(例えば1,000rpm以上)は必須ではなく、簡便な装置でも分散体の製造が可能である。
具体的には、上記の装置に天然ワックス、塩基性化合物、水性媒体などの原料を投入し、次いで、槽内の温度を45〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃の温度に保ちつつ、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜120分間)攪拌を続けることによりワックスを十分に分散化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、分散体を得ることができる。槽内の温度が45℃未満の場合は、ワックスの分散化が困難になる。槽内の温度が200℃を超える反応は不経済なので好ましくない。
特に、上記方法で天然ワックスを水性分散化する際には、その酸価を5〜50mgKOH/gとすることが好ましく、より好ましくは10〜50mgKOH/g、特に好ましくは15〜50mgKOH/gである。また、天然ワックスのケン化価は5〜250mgKOH/gとすることが好ましく、より好ましくは30〜250mgKOH/g、特に好ましくはケン化価が50〜250mgKOH/gである。酸価が5未満またはケン化価が5未満では、ワックスを水性分散化するのが困難になる。一方、酸価が50を超えるまたはケン化価が250を超える天然ワックスは一般的でなく、酸価を50を超える値にするかまたはケン化価が250を超える値にする場合には、新たに官能基を導入するなどの特別な操作が必要となり、不経済である。
上記(A)の方法で用いる、生分解性樹脂の水性分散体の製造方法例としては、生分解性ポリエステル樹脂、塩基性化合物、水性媒体を、容器中で加熱、攪拌する方法が挙げられる。このとき、沸点が300℃以上の分散安定剤を含まないものが好ましい。また、製造装置としては、天然ワックスの水性分散化に使用したものと同様のものを使用することができ、この装置に、生分解性ポリエステル樹脂、塩基性化合物、水性媒体等の原料を投入し、次いで、加温し(例えば40〜200℃)、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜120分間)撹拌を続けることにより生分解性ポリエステル樹脂を充分に水性化させ、その後、好ましくは撹拌下で40℃以下に冷却することにより、生分解性ポリエステル樹脂の水性分散体を得ることができる。
上記のようにして得られた天然ワックス水性分散体、および生分解性ポリエステル樹脂水性分散体は、それらの固形分濃度調整方法を、所望の固形分濃度となるように水性媒体を留去したり、水性媒体により希釈したりすることより、任意に調製することができる。生分解性ポリエステル樹脂、天然ワックスの水性分散体の固形分濃度は、いずれも、粘度等によって適宜変更されるものであるが、5〜60質量%の範囲とすることが好ましい。
生分解性防湿コート剤の製造方法(A)で用いる混合装置としては、液/液混合装置として広く知られている装置を使用することができる。生分解性樹脂水性分散体と天然ワックス水性分散体の分散混合性が良好であるため、極めて短時間かつ簡単な混合操作でよい。
製造法(B)における生分解性防湿コート剤の製造方法においても、例えば、生分解性ポリエステル樹脂と天然ワックス、塩基性化合物、水性媒体を、容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができ、製造装置としては、前記製造法(A)に使用されるものと同様のものを使用することができる。具体的には、装置に生分解性ポリエステル樹脂、天然ワックス、水性媒体等の原料を投入、次いで、加温し(例えば45〜200℃)、好ましくは粗大粒子が無くなるまで(例えば、5〜120分間)攪拌を続けることにより生分解性ポリエステル樹脂および天然ワックスを充分に分散化させ、その後、好ましくは攪拌下で40℃以下に冷却することにより、生分解性防湿コート剤を得ることができる。
本発明で使用される生分解性防湿コート剤においては、固形分濃度が5〜60質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%であり、特に好ましくは20〜40質量%の範囲である。5質量%以下では防湿性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。一方、60質量%を超えると、混合操作や保存性などに問題を生じることがある。固形分濃度の調整方法としては、例えば、所望の固形分濃度となるように水性媒体を留去したり、水性媒体により希釈したりする方法が挙げられる。また、塗工性能、混合安定性を向上させるために例えばエタノール等の低沸点アルコールのような有機溶媒を加えてもよい。
本発明では、上述の生分解性防湿コート剤を用いて、以下の方法により、特殊な設備や煩雑な操作を用いることなしに、容易かつ安価に、目的とする生分解性防湿加工品を製造することができる。すなわち、この製造方法は、塗工工程、熱処理工程の実質的に2工程よりなり、塗工工程においては、前記生分解性コート剤を生分解性基材上に塗工し、熱処理工程においては、生分解性防湿コート剤を塗工した生分解性基材を100℃以上で熱処理することにより、防湿性能を発現させるというものである。本発明の目的とする生分解性防湿加工品を得るためには、これらは何れも不可欠の工程である。
基材としては、生分解性を有するものであればよく、特に限定されるものではない。例えば、基材として紙を用いた場合には、防湿紙とすることができる。基材紙としては和紙、クラフト紙、ライナー紙、アート紙、コート紙、カートン紙等を挙げることができる。
また、基材として後述する生分解性フィルムを用いた合成紙を用いた場合には、防湿合成紙とすることができる。合成紙の構造は特に限定されず、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造としては、例えば基材層と表面層の2層構造、基材層と表裏面に表面層が存在する3層構造、基材層と表面層の間に他の樹脂フィルム層が存在する多層構造を例示することができる。また、各層は無機や有機のフィラーを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。また、微細なボイドを多数有する微多孔性合成紙も使用することができる。
また、基材として生分解性樹脂フィルムを用いた場合には、生分解性防湿フィルムとすることができる。このとき、基材フィルムとしては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂に代表される生分解性樹脂や天然多糖類のキトサンを用いた生分解性フィルム等が挙げられる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではなく、加熱によって収縮する、いわゆるシュリンクフィルムでもよい。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1〜500μmの範囲であればよい。また、基材フィルムには、コロナ放電処理がされていることが好ましい。また、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよく、ガスバリアコート層等の他の層が積層されていてもよい。
本発明の製造方法で得られる生分解性防湿フィルムは、基材フィルムのヘイズにも依るが、非常に高い透明性を発現する。例えば、基材としてポリ乳酸樹脂フィルムを用いた場合、ヘイズが10%以下となる。生分解性樹脂と天然ワックスとの比率により、透明性は変化するが、包装材料のような用途としては、フィルムのヘイズは8%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましい。
上記した生分解性防湿フィルムには、さらに、紙、合成紙、生分解性樹脂製品、鋼板等を積層することができる。これらを積層する面は、生分解性防湿フィルムの防湿組成物側でも基材フィルム側でもよい。また、必要に応じて接着層を設けてもよい。
また、上述の生分解性樹脂の糸からなる織布、編布、不織布に塗工しても良い。
塗工工程で採用される塗工方法としては、基材に防湿コート剤を塗工できる方法であればよく、特に限定されるものではなく、塗工方法として広く当業者に知られている方法を採用することが出来る。かかる方法としては、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
熱処理工程で用いられる熱処理装置としては、装置内を100℃以上に加熱できる装置であればよく、特に限定されるものではなく、熱処理装置として広く当業者に知られている装置を採用することが出来る。かかる装置としては、熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等が採用できる。
本発明における熱処理温度は、防湿性を充分高めるためには100℃以上とすることが必要であり、より好ましくは120℃以上である。使用する生分解性樹脂、天然ワックス、生分解性基材により熱処理温度の上限は異なるが、240℃を超えると防湿性能が低下する傾向がある。さらに具体的には、生分解性樹脂にポリ乳酸樹脂、天然ワックスにキャンデリラワックス、生分解性基材にポリ乳酸樹脂フィルムを使用する場合、100〜160℃の熱処理が好ましく、120〜160℃がより好ましく、140〜160℃が特に好ましい。160℃を超えると、ポリ乳酸樹脂フィルムが著しく劣化する。一方、熱処理温度が100℃未満では液状媒体の除去に時間がかかるうえ、充分な防湿性能が発現しない。
本発明における熱処理時間は、熱処理温度により異なるが、防湿性を充分高めるためには10秒間〜30分間が好ましく、15秒〜10分がより好ましく、30秒〜5分が特に好ましい。
本発明における防湿組成物層の厚みは、防湿性を充分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。また、防湿性の点からは、防湿組成物層は厚いほうがよいが、本発明で用いる防湿組成物層は薄くても防湿性を発現するため、特別に厚くする必要はない。防湿性と経済性を考慮した好ましい防湿組成物層の厚みは0.1〜10μmであり、0.2〜5μmがより好ましく、0.3〜4μmが特に好ましい。
また、基材が紙、織布、編布、不織布等の防湿コーティング剤がしみ込むようなものの場合には、塗布量は、厚みでの評価が難しいため、乾燥後の塗布質量で評価し、その量が1〜200g/m2の範囲であればよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにのみ限定されるものではない。なお、各種の物性については以下の方法によって測定又は評価した。
(1)生分解性樹脂分散体の固形分濃度(質量%):生分解性樹脂分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、生分解性樹脂固形分濃度を求めた。
(2)生分解性樹脂粒子およびワックス粒子の粒子径(μm):マイクロトラック粒度分布計UPA150(日機装株式会社製、MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)を求めた。
(1)生分解性樹脂分散体の固形分濃度(質量%):生分解性樹脂分散体を適量秤量し、これを150℃で残存物(固形分)の質量が恒量に達するまで加熱し、生分解性樹脂固形分濃度を求めた。
(2)生分解性樹脂粒子およびワックス粒子の粒子径(μm):マイクロトラック粒度分布計UPA150(日機装株式会社製、MODEL No.9340)を用い、数平均粒子径(mn)を求めた。
以下、(3)〜(6)の評価において、基材フィルムには、テラマックフィルムTFE−25(ユニチカ株式会社製、厚み25μm)を用いた。
(3)塗工性
生分解性防湿コート剤を基材フィルムの片面に塗工後、熱処理し、フィルム面に防湿組成物層を積層したときの外観を次の2段階で評価した。
○:均一に積層された
×:はじき、むらが確認された
(4)防湿組成物層の厚さ
防湿組成物層を積層した防湿加工フィルムの全体の厚さから、基材フィルムの厚さを減じて求めた。
(5)ヘイズ
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて、防湿加工フィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、実施例で用いた基材フィルムの濁度1.8%を含んでいる。
(6)密着性
防湿組成物層を積層した防湿加工フィルムの積層面に粘着テープ(ニチバン株式会社製、TF−12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した。印刷面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
○:全く剥がれがなかった
×:剥がれが生じた
(7)水蒸気透過度 モコン株式会社製の透湿度測定器(PERMATRAN−W3/31MW)により40℃、100%RHにおける防湿加工フィルムの水蒸気透過度を測定した。なお、基材フィルムの水蒸気透過度は398g/m2/dayであった。
(3)塗工性
生分解性防湿コート剤を基材フィルムの片面に塗工後、熱処理し、フィルム面に防湿組成物層を積層したときの外観を次の2段階で評価した。
○:均一に積層された
×:はじき、むらが確認された
(4)防湿組成物層の厚さ
防湿組成物層を積層した防湿加工フィルムの全体の厚さから、基材フィルムの厚さを減じて求めた。
(5)ヘイズ
JIS−K7361−1に基づいて、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて、防湿加工フィルムのヘイズ測定を行った。ただし、この評価値は、実施例で用いた基材フィルムの濁度1.8%を含んでいる。
(6)密着性
防湿組成物層を積層した防湿加工フィルムの積層面に粘着テープ(ニチバン株式会社製、TF−12)を貼り付けた後、勢いよくテープを剥離した。印刷面の状態を目視で観察して、以下のように評価した。
○:全く剥がれがなかった
×:剥がれが生じた
(7)水蒸気透過度 モコン株式会社製の透湿度測定器(PERMATRAN−W3/31MW)により40℃、100%RHにおける防湿加工フィルムの水蒸気透過度を測定した。なお、基材フィルムの水蒸気透過度は398g/m2/dayであった。
樹脂合成例1
エコフレックス(BASF社製、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、数平均分子量:46,000)300gをオートクレープ中に仕込み、乾燥後、230℃に加熱して溶融した後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製)13.1gを添加し、3時間加熱撹拌して解重合を行い、シート状に払い出した。これを室温まで冷却した後、チップ状に切断し、数平均分子量12,000、酸価30mgKOH/gの生分解性ポリエステル樹脂Aを得た。
エコフレックス(BASF社製、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、数平均分子量:46,000)300gをオートクレープ中に仕込み、乾燥後、230℃に加熱して溶融した後、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸(和光純薬株式会社製)13.1gを添加し、3時間加熱撹拌して解重合を行い、シート状に払い出した。これを室温まで冷却した後、チップ状に切断し、数平均分子量12,000、酸価30mgKOH/gの生分解性ポリエステル樹脂Aを得た。
参考例1(生分解性樹脂水性分散体Iの調製)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、樹脂として100.0gのポリ乳酸樹脂(カーギル・ダウ社製、6300D、酸価:2.08mgKOH/g)、7.0gの界面活性剤(旭電化工業株式会社製、アデカプルロニック P−85)、5.0gのTEA(ナカライテスク株式会社製)、100.0gのTHF(ナカライテスク株式会社製)及び288gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を600rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保って70分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度600rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体からTHFを除去するため、ロータリーエバポレーターを用い、浴温40℃で溶媒留去し、乳白色の均一な生分解性樹脂水性分散体Iを得た。固形分濃度は27.0質量%、数平均粒子径は0.14μmであった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、樹脂として100.0gのポリ乳酸樹脂(カーギル・ダウ社製、6300D、酸価:2.08mgKOH/g)、7.0gの界面活性剤(旭電化工業株式会社製、アデカプルロニック P−85)、5.0gのTEA(ナカライテスク株式会社製)、100.0gのTHF(ナカライテスク株式会社製)及び288gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を600rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を80℃に保って70分間撹拌した。その後、水浴につけて、回転速度600rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリ乳酸樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体からTHFを除去するため、ロータリーエバポレーターを用い、浴温40℃で溶媒留去し、乳白色の均一な生分解性樹脂水性分散体Iを得た。固形分濃度は27.0質量%、数平均粒子径は0.14μmであった。
参考例2
(生分解性樹脂水性分散体IIの調製)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、樹脂として50.0gの生分解性ポリエステル樹脂A、3.3g(樹脂中のカルボキシル基に対して1.2倍当量)のトリエチルアミン(ナカライテスク株式会社製、以下、「TEA」と略称する。)、45.0gのイソプロピルアルコール(ナカライテスク株式会社製)および151.7gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、回転速度400rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、半透明の均一な生分解性樹脂水性分散体IIを得た。固形分濃度は20.0質量%、数平均粒子径は0.02μmであった。
(生分解性樹脂水性分散体IIの調製)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、樹脂として50.0gの生分解性ポリエステル樹脂A、3.3g(樹脂中のカルボキシル基に対して1.2倍当量)のトリエチルアミン(ナカライテスク株式会社製、以下、「TEA」と略称する。)、45.0gのイソプロピルアルコール(ナカライテスク株式会社製)および151.7gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂粒状物の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、ヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100℃に保ってさらに20分間撹拌した。その後、回転速度400rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、半透明の均一な生分解性樹脂水性分散体IIを得た。固形分濃度は20.0質量%、数平均粒子径は0.02μmであった。
参考例3(キャンデリラワックス分散体IIIの調製)
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、40.0gのキャンデリラワックス(東亜化成株式会社製、酸価:15.8、ケン化価:55.4)、8.6gのモルホリン(ナカライテスク株式会社製)及び151.4gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100℃に保ってさらに10分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度600rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、淡黄色の均一なワックス水性分散体IIIを得た。固形分濃度は20.0質量%、数平均粒子径は0.27μmであった。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、40.0gのキャンデリラワックス(東亜化成株式会社製、酸価:15.8、ケン化価:55.4)、8.6gのモルホリン(ナカライテスク株式会社製)及び151.4gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を400rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を100℃に保ってさらに10分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度600rpmのまま攪拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した後、淡黄色の均一なワックス水性分散体IIIを得た。固形分濃度は20.0質量%、数平均粒子径は0.27μmであった。
(生分解性防湿コート剤E−1の調製)
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分30質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−1を得た。
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分30質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−1を得た。
(生分解性防湿コート剤E−2の調製)
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分15質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−2を得た。
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分15質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−2を得た。
(生分解性防湿コート剤E−3の調製)
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分45質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−3を得た。
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体Iの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分45質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−3を得た。
(生分解性防湿コート剤E−4の調製)
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体IIの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分30質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−4を得た。
キャンデリラワックス分散体IIIを、生分解性樹脂水性分散体IIの樹脂成分100質量部に対し、ワックス成分30質量部となるよう配合し、生分解性防湿コート剤E−4を得た。
実施例1
生分解性防湿コート剤E−1を基材フィルムの片面にフィルムアプリケーター(株式会社安田精機製作所製、542-AB)にマイヤーバー(♯2)を設置して塗工後、120℃で1分熱処理した。得られた生分解性防湿加工品の防湿性、透明性、被膜の厚さの評価を行った。
生分解性防湿コート剤E−1を基材フィルムの片面にフィルムアプリケーター(株式会社安田精機製作所製、542-AB)にマイヤーバー(♯2)を設置して塗工後、120℃で1分熱処理した。得られた生分解性防湿加工品の防湿性、透明性、被膜の厚さの評価を行った。
実施例2、3
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、熱処理温度を140℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−2(実施例2)、J−3(実施例3)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、熱処理温度を140℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−2(実施例2)、J−3(実施例3)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例4、5
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−2を用い、熱処理温度を120℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−4(実施例4)、J−5(実施例5)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−2を用い、熱処理温度を120℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−4(実施例4)、J−5(実施例5)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例6〜8
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−3を用い、熱処理温度を120℃、140℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−6(実施例6)、J−7(実施例7)、J−8(実施例8)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−3を用い、熱処理温度を120℃、140℃、160℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−6(実施例6)、J−7(実施例7)、J−8(実施例8)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例9〜11
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−4を用い、熱処理温度を100℃、120℃、140℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−9(実施例9)、J−10(実施例10)、J−11(実施例11)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−4を用い、熱処理温度を100℃、120℃、140℃にした以外は実施例1と同様にして、それぞれ生分解性防湿加工品製造方法J−9(実施例9)、J−10(実施例10)、J−11(実施例11)とした。これらを用いて各種物性の評価を行った。
実施例1〜11で得られた測定結果等をまとめて表1に示す。
比較例1
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、熱処理温度を80℃以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−1とし、各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、熱処理温度を80℃以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−1とし、各種物性の評価を行った。
比較例2
比較例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−2を用いた以外は比較例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−2とし、各種物性の評価を行った。
比較例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−2を用いた以外は比較例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−2とし、各種物性の評価を行った。
比較例3
比較例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−3を用いた以外は比較例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−3とし、各種物性の評価を行った。
比較例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性防湿コート剤E−3を用いた以外は比較例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−3とし、各種物性の評価を行った。
比較例4
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性樹脂水性分散体Iを用いた以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−4とし、各種物性の評価を行った。
比較例5
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えてキャンデリラワックス分散体IIIを用いた以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−5とし、各種物性の評価を行った。
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えて生分解性樹脂水性分散体Iを用いた以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−4とし、各種物性の評価を行った。
比較例5
実施例1の生分解性防湿加工品の製造において、生分解性防湿コート剤E−1に替えてキャンデリラワックス分散体IIIを用いた以外は実施例1と同様にして生分解性防湿加工品製造方法H−5とし、各種物性の評価を行った。
比較例1〜5で得られた測定結果等を表1に示す。
実施例1〜8に示すように、本発明の製造方法に従ってポリ乳酸フィルムにポリ乳酸系防湿コート剤を塗工し、熱処理することで、防湿性および密着性、透明性に優れた生分解性防湿フィルムができた。ワックスの比率に関わらず、熱処理温度が高いほど防湿性能が向上することが確認された。
また実施例9〜11に示すように、本発明の製造方法に従ってポリ乳酸フィルムにエコフレックス系防湿コート剤を塗工し、熱処理することで、防湿性および密着性、透明性に優れた生分解性防湿フィルムができた。この系では120℃の熱処理で最も優れた防湿性能を発現し、140℃の熱処理では性能が低下した。
これに対し、比較例1〜3は、熱処理温度が100℃未満であったため、生分解性樹脂の種類、ワックスの比率に関わらず充分な防湿性を発現しなかった。また、透明性にも乏しいものとなった。
比較例4は、天然ワックスを含まないため防湿性能を発現しなかった。比較例5は生分解性樹脂を含まないため塗工性、密着性に乏しく、透明性も乏しいものとなった。
Claims (4)
- 生分解性樹脂、天然ワックス、液状媒体よりなる生分解性防湿コート剤を生分解性基材に塗工し、次いで、100℃以上で熱処理することを特徴とする生分解性防湿加工品の製造方法。
- 生分解性樹脂100質量部あたり1〜100質量部の天然ワックスを含有する生分解性防湿コート剤を塗工することを特徴とする請求項1記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
- 生分解性防湿コート剤に含まれる生分解性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
- 生分解性防湿コート剤の液状媒体が水性媒体であることを特徴とする請求項1〜3記載の生分解性防湿加工品の製造方法。
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JP2010083942A (ja) * | 2008-09-30 | 2010-04-15 | Pentel Corp | 塗膜及び、その塗膜を形成した塗装物 |
US8137818B2 (en) | 2008-07-28 | 2012-03-20 | Tate & Lyle Ingredients Americas Llc | Poly(lactic acid)-containing compositions for use in imparting oil, grease, or water resistance to paper |
-
2005
- 2005-02-15 JP JP2005038007A patent/JP2006223942A/ja active Pending
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