JP2006222314A - 超電導積層体およびその製造方法、ジョセフソン接合素子、電子装置 - Google Patents

超電導積層体およびその製造方法、ジョセフソン接合素子、電子装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 複数の水銀系超電導膜を備えた超電導積層体およびその製造方法、超電導積層体を有するジョセフソン接合素子および電子装置を提供する。
【解決手段】 超電導積層体10は、基板11と、基板11上、第1超電導膜12と、絶縁膜13と、第2超電導膜14が順次積層して構成され、第1超電導膜12および第2超電導膜14が水銀系超電導膜からなり、絶縁膜13がCeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)、および(SrAl0.5Ta0.530.7(SAT)から選択される。第1超電導膜12と、絶縁膜13と、第2超電導膜14は、それぞれ下地に対してエピタキシャル成長してなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複数の水銀系超電導膜を備えた超電導積層体およびその製造方法、超電導積層体を有するジョセフソン接合素子および電子装置に関する。
1987年に臨界温度が92KのYBa2Cu37-x(YBCO)の銅酸化物超電導体が発見されて以来、酸化物超電導体の研究が盛んに行われている。酸化物超電導体は、常電導体から超電導体に変わる臨界温度が液体窒素よりも高く、冷却媒体として液体窒素や、冷凍機を使用できるため冷却コストが液体Heと比較して大幅に低減できる。また、磁場を印加した場合の臨界電流の低下も従来の金属超電導体と比較して大幅に小さいという特長も有する。
銅酸化物超電導体は、例えば、上記のYBCOの他、ビスマス系超電導体のBi2Sr2Ca2Cu310(臨界温度106K)や、タリウム系超電導体のTl2Ba2Ca2Cu310(臨界温度125K)や、水銀系超電導体のHgBa2CaCu2y(臨界温度127K)やHgBa2Ca2Cu3y(臨界温度135K)が代表的なものである。これらのうち、水銀系超電導体はもっとも臨界温度が高いため冷却コストを低減できるので、実用化が大いに期待されており、盛んに研究されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)。
このような高温超電導体は多岐に亘る用途が期待されている。例えば、2つの超電導体に薄い絶縁膜を挟んだジョセフソン接合素子を用いた超電導量子干渉計(SQUID)や、単一磁束量子(SFQ)回路や、また、極めて低損失のマイクロストリップライン型のフィルタ等の電子デバイスである。これらの電子デバイスでは、ジョセフソン接合素子の高集積化や外部からの磁気を遮蔽するために、複数の超電導膜を、絶縁膜を介して積層した超電導積層体から構成されている。かかる超電導積層体では、超電導膜上に絶縁膜と、その上に薄膜で超電導特性の良好な超電導膜を形成する必要がある。
特開2001−64018号公報 Physica C 392−396 (2003)p1296〜p1301
しかしながら、良好な結晶配向性を有する水銀系超電導膜を形成するために、下地となる絶縁膜は、従来、絶縁膜を形成する基板を700℃に加熱してPLD法等により形成していた。一方、水銀系超電導膜は、単に加熱すると500℃以上の高温で分解を始めることが知られている。このように水銀系超電導膜は高温で劣化し易いため、水銀系超電導膜上に絶縁膜を形成する際に水銀系超電導膜の結晶性が劣化あるいは分解等が生じ、超電導特性が劣化するおそれがあるという問題がある。
また、絶縁膜上に水銀系超電導膜を形成する際に、水銀が下地の絶縁膜に拡散し酸化膜の結晶性を劣化させ、絶縁膜上に水銀系超電導膜が結晶配向性良く成長しないという問題がある。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、絶縁膜を介して複数の水銀系超電導膜が積層された超電導積層体およびその製造方法、超電導積層体を有するジョセフソン接合素子および電子装置を提供することである。
本願発明者等は、鋭意検討の結果、従来形成困難であった水銀系超電導膜/絶縁膜/水銀系超電導膜からなる積層体を、絶縁膜に例えばCeO2や、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、SrAl0.5Ta0.53等を用いることで、世界で初めて水銀系超電導膜/絶縁膜/水銀系超電導膜からなる超電導積層体を形成できることを知得したものである。
本発明の一観点によれば、基板と、前記基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが順次エピタキシャル成長により形成された超電導積層体であって、前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とする超電導積層体が提供される。
本発明によれば、水銀系超電導膜からなる第1の超電導膜と第2の超電導膜とが絶縁膜を介して積層されて構成されている。本発明の超電導積層体は新規なものである。さらに、本発明の超電導積層体を構成する水銀系超電導膜は、超電導臨界温度が高く、かつ、絶縁膜を挟んで2層の超電導膜が積層されているので、冷却コストが低廉で、集積化や小型化が可能なジョセフソン素子等の超電導デバイスを実現できる。
なお、本明細書および特許請求の範囲においてエピタキシャル成長とは、エピタキシャル成長により形成された膜が、堆積方向および面内方向の結晶方位がそれぞれ略同一方向に配向していること意味する。ここで、略同一方向とは、X線回折法によるロッキングカーブ(あるいは、本明細書ではωスキャンパターンおよびφスキャンパターンとも呼ぶ。)の測定により得られる回折線の半値幅が5度以下であることをいう。
本発明の他の観点によれば、第1の基板と第2に基板とを互いに所定の結晶方位をずらして接合してなる基板接合部を有するバイクリスタル基板と、前記第1の基板および第2の基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが順次エピタキシャル成長により形成されてなり、前記第1の超電導膜は、前記基板接合部に対応する位置に粒界接合部を有するジョセフソン接合を形成してなり、前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなるジョセフソン接合素子が提供される。
本発明によれば、水銀系超電導膜からなる第1の超電導膜と第2の超電導膜とが絶縁膜を介して積層され、第1超電導膜に粒界接合部が形成され、ジョセフソン接合が形成される。一方、第2の超電導膜は、磁気遮蔽層として機能する。すなわち、第2の超電導膜は、外部からの磁場が超電導回路内に侵入するのを抑制したり、超電導配線のインダクタンスを大幅に低減できる。また、第2の超電導膜は、回路を構成する際のグランド電極としても機能する。したがって、超電導臨界温度が高く、冷却コストが低廉なジョセフソン接合素子が実現できる。さらに、第2の超電導膜が磁気遮蔽層として機能するのでSFQ回路が実現できる。
本発明のその他の観点によれば、基板と、前記基板上に、一側端面が傾斜面からなる第1の超電導電極膜と、前記第1の超電導電極膜上に、前記傾斜面と連続する傾斜面が設けられた絶縁膜と、前記第1の超電導電極膜の傾斜面の表面に形成されたトンネル障壁層と、前記基板の表面、トンネル障壁層および絶縁膜の傾斜面を含む表面を覆う第2の超電導電極膜とを備え、前記第1の超電導電極膜、絶縁膜、および第2超電導電極膜は、各々その下地上にエピタキシャル成長してなり、前記第1の超電導電極膜および第2の超電導電極膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなるジョセフソン接合素子が提供される。
本発明によれば、ジョセフソン接合素子は、水銀系超電導膜からなる第1の電極膜および第2の電極膜を備えているので、超電導臨界温度が高く、冷却コストが低廉なジョセフソン接合素子を実現できる。
本発明のその他の観点によれば、上記いずれかのジョセフソン接合素子を備える電子装置が提供される。
本発明によれば、ジョセフソン接合素子の超電導臨界温度が高いので、電子装置の冷却コストを低減することができる。特に電子装置を冷却する冷凍機を小型化できるので、電子装置の小型化が可能となる。特に従来のYBCO膜を超電導膜として用いたジョセフソン接合素子よりも高温で動作することができる。
本発明のその他の観点によれば、基板と、前記基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが形成された超電導積層体であって、前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなる超電導積層体の製造方法であって、前記基板上に第1の超電導膜を形成する第1の工程と、前記第1の超電導膜上に絶縁膜を形成する第2の工程と、前記絶縁膜上に第2の超電導膜を形成する第3の工程と、を備え、前記第2の工程は、酸素雰囲気中で300℃以上でかつ600℃以下の範囲に第1の超電導膜を加熱して、前記絶縁膜を堆積することを特徴とする超電導積層体の製造方法が提供される。
本発明によれば、絶縁膜に上記いずれかの材料を用いて酸素雰囲気中で300℃以上でかつ600℃以下の範囲に第1の超電導膜を加熱することで、結晶配向性の良好な絶縁膜を形成できる。また、絶縁膜を形成する際に第1の超電導膜の結晶配向性や超電導特性に悪影響を与えることがない。さらに、絶縁膜上に第1の超電導膜の結晶配向性や超電導特性に悪影響を与えずに第2の超電導膜をエピタキシャル成長することができる。
本発明によれば、水銀系超電導膜からなる第1の超電導膜と第2の超電導膜とが絶縁膜を介して積層されて構成されている。本発明の超電導積層体は新規なものである。さらに、本発明の超電導積層体を構成する水銀系超電導膜は、超電導臨界温度が高く、かつ、絶縁膜を挟んで2層の超電導膜が積層されているので、冷却コストが低廉で、集積化や小型化が可能なジョセフソン素子等の超電導デバイスを実現できる。
以下図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る超電導積層体の断面図である。
図1を参照するに、超電導積層体10は、基板11と、その基板11上に、第1超電導膜12と、絶縁膜13と、第2超電導膜14が順次積層して構成される。
超電導積層体10は、第1超電導膜12および第2超電導膜14が水銀系超電導膜からなり、従来では得られなかった水銀系超電導膜の積層体である。
基板11は、水銀系超電導膜をエピタキシャル成長させる基板11であれば特に限定されないが、例えば、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)、LaAlO3、およびSrTiO3から選択することが好ましい。また、基板11は、MgO基板やイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)基板の上に、YBa2Cu37-x(YBCO)膜やCeO2膜をバッファ層として設けたものを用いることができる。
第1超電導膜12および第2超電導膜14は、水銀系超電導膜であり、Hg、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaのうち少なくとも1つの元素からなる酸化物超電導材料(Hg−M−Cu−O)から構成される。水銀系超電導膜として、例えば、HgX2CaCu2yや、HgX2Ca2Cu3yが挙げられる。さらに、水銀系超電導膜は、Hgのサイトを部分的にReに置換した(Hg,Re)X2CaCu2yや(Hg,Re)X2Ca2Cu3yが挙げられる。このようにHgをReに置換することで水銀系超電導膜の結晶性が良好となる。
ここで、上記化学式中のXはBaおよびSrから選択される。また、XはBaとSrの両方を含んでもよい。(Hg,Re)X2CaCu2yは、(Hg1-xaRexa)X2CaCu2yと表した場合、基板11あるいは絶縁膜13上で良質な結晶が形成できる点で、0≦xa≦0.3の範囲にxaを設定することが好ましい。また、同様の理由で、(Hg,Re)X2Ca2Cu3yは、(Hg1-xbRexb)X2Ca2Cu3yと表した場合、基板11あるいは絶縁膜13上で良質な結晶が形成できる点で、0≦xb≦0.3の範囲にxbを設定することが好ましい。
さらに、第1超電導膜12および第2超電導膜14は実質的に同一の組成からなることが好ましい。このように設定することで第1超電導膜12および第2超電導膜14の超電導特性を揃えることができる。なお、ここで、上記化学式中のyは、HgX2CaCu2yの場合は6.10〜6.25程度、HgX2CaCuyの場合は8.15〜8.35程度である。ただし、酸素量は変化し得る値であり、上記超電導膜の酸素量は臨界温度が100K以上を示す程度の酸素量である。
第1超電導膜12および第2超電導膜14は多数の結晶粒子からなる多結晶体であり、ペロブスカイト構造を基本構造とする結晶構造を有する。第1超電導膜12および第2超電導膜14は各々、結晶学的に、膜厚方向(基板11面に直交する方向)に沿ってc軸が配向し、面内方向(基板11面に平行な方向)は、a軸が配向している。すなわち、多数の結晶粒子は、c軸およびa軸の方向が揃った2軸配向を形成している。なお、面内方向の結晶方位は、a軸に限らず、b軸等も結晶粒子間で揃っていることはいうまでもない。 第1超電導膜12および第2超電導膜14を構成する結晶粒子のc軸の配向は、X線回折法により、c軸と直交する結晶面の回折線についてのωスキャンパターンの半値幅が5度以内であることが好ましい。半値幅が5度を超えると臨界電流値が減少してしまう。
また、面内方向の結晶方位の配向は、X線回折法により、a軸を含むc面以外の結晶面、例えば(10l)面(ここでlは整数)などの回折線についてのφスキャンパターンの半値幅が10度以内(より好ましくは5度以内)であることが好ましい。半値幅が10度を超えると臨界電流値が急激に減少してしまう。
また、第1超電導膜12および第2超電導膜14の厚さは、各々、50nm〜1000nmの範囲に設定することが好ましい。第1超電導膜12および第2超電導膜14は50nmよりも薄いと膜に穴が生じるおそれあり、1000nmよりも厚いと結晶配向性や表面状態が劣化するおそれがある。
絶縁膜13は、第1超電導膜12上にエピタキシャル成長し、かつ、絶縁膜13の上に第2超電導膜14をエピタキシャル成長させる絶縁性材料から選択される。絶縁膜13は、例えば、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)、および(SrAl0.5Ta0.530.7(SAT)から選択することが好ましい。
絶縁膜13の厚さは200nm〜1000nmの範囲に設定することが好ましい。絶縁膜13は200nmよりも薄いと第1超電導膜12と第2超電導膜14が電気的に短絡するおそれがあり、1000nmよりも厚いと表面の粗面化し、第2超電導膜14の結晶性や結晶配向性が低下するおそれがある。
本実施の形態に係る超電導積層体10は、水銀系超電導膜からなる第1超電導膜12と第2超電導膜14とが絶縁膜13を介して積層されて構成されている。このような複数の水銀系超電導膜を備えた超電導積層体10は、本願発明者等が初めて形成できたものである。水銀系超電導膜は超電導臨界温度が高いので、超電導体を実用化する際にもっとも重要な課題である冷却コストの低減を大幅に図ることができる。さらに、超電導積層体10は、後述するようにジョセフソン素子やストリップライン伝送回路等の電子デバイスの小型化および集積化を図ることができる。
なお、超電導積層体は、第2超電導膜の上にさらに絶縁膜を形成し、その上に第2超電導膜を形成した、3層以上の超電導膜と、それぞれの超電導膜の間に絶縁膜を設けた積層体としてもよいことはいうまでもない。
次に、第1の実施の形態に係る超電導積層体の製造方法を説明する。
図2(A)〜(D)は、第1の実施の形態に係る超電導積層体の製造工程図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図2(A)の工程では、LSAT等の上述した基板11上に、PLD法により室温下、真空中で、第1超電導膜12のHg以外の材料からなる前駆体膜12Aと、HgO膜12Bの積層体を形成する。第1超電導膜12として、(Hg1-xa,Rexa)Ba2CaCu2yを形成する場合は、前駆体膜12Aは材料としてRexaBa2CaCu2yを用いる。他方、第1超電導膜12として、(Hg1-xb,Rexb)Ba2Ca2Cu3yを形成する場合は、前駆体膜12Aは材料としてRexbBa2Ca2Cu3yを用いる。
また、前駆体膜12Aの厚さを、最終的な第1超電導膜12の厚さと同じ厚さに設定する。また、HgO膜12Bは、前駆体膜12A中のBaが空気中の水蒸気や二酸化炭素との活性が高いため、前駆体膜12Aが直接空気に接触しないようにするためのものである。HgO膜12Bの厚さは例えば50nmに設定する。
次いで、図2(B)の工程では、図2(A)の積層体と、第1超電導膜12として(Hg1-xa,Rexa)Ba2CaCu2yを形成する場合は、HgO、BaO、CaO、CuO粉末をそれぞれ1:2:1:2のモル比で混ぜ合わせたペレットと、BaO、CaO、CuO粉末をそれぞれ2:1:2のモル比で混ぜ合わせたペレットとを石英管に真空封入し、650℃〜775℃で、約6時間の熱処理を行う。熱処理により、Hgが前駆体膜12Aに取り込まれ、前駆体膜12Aが結晶化して第1超電導体膜の(Hg1-xa,Rexa)Ba2CaCu2y膜が形成される。このような前駆体膜の作製と水銀蒸気中での熱処理からなる工程を2段階法と呼ぶ。
なお、第1超電導膜12として(Hg1-xb,Rexb)Ba2Ca2Cu3yを形成する場合は、RexbBa2Ca2Cu3yからなる前駆体膜、HgO、BaO、CaO、CuO粉末をそれぞれ1:2:2:3のモル比で混ぜ合わせたペレットと、BaO、CaO、CuO粉末をそれぞれ2:2:3のモル比で混ぜ合わせたペレットを用いる。
次いで、図2(C)の工程では、図2(B)の積層体の第1超電導体膜上に、PLD法により絶縁膜13を形成する。具体的には、真空中で第1超電導体12を加熱して、酸素雰囲気(例えば酸素ガス圧6.65Pa)中で、上述した絶縁膜13の材料からなるターゲットにパルスレーザを照射する。この際の第1超電導体12の加熱温度は、絶縁膜13の良好な結晶配向性が得られ、かつ第1超電導体に悪影響を与えない温度範囲に設定される。後ほど実施例2において説明するように、加熱温度は、例えば、300℃以上でかつ600℃以下の温度範囲に設定される。このようにして、第1超電導体膜上にエピタキシャル成長した絶縁膜13が形成される。
次いで、図2(D)の工程では、図2(A)および(B)の工程と同様にして、2段階法により第2超電導膜14を形成する。具体的には、PLD法により絶縁膜13上に前駆体膜14A(例えばRexaBa2CaCu2yからなる。)とHgO膜14Bを積層し、次いで、得られた積層体と上記2種類のペレットを石英管に真空封入し、650℃〜775℃で、約6時間の熱処理を行い、その後冷却する。このようにして、図1に示す本実施の形態に係る超電導積層体10が形成される。この際の加熱処理の温度は、第1超電導膜12を形成する際の加熱温度と同様でよい。本願発明者の検討によれば、この加熱処理の第1超電導膜12および絶縁膜13への悪影響はみられず、むしろ第1超電導膜12の結晶配向性が向上する傾向にある。また、第2超電導膜14は絶縁膜13上にエピタキシャル成長する。
本実施の形態に係る超電導積層体の製造方法によれば、第1超電導膜の上に絶縁膜13を形成する際の加熱温度を、所定の温度範囲、例えば、300℃以上でかつ600℃以下の温度範囲に設定することで、第1超電導膜12の結晶配向性や超電導特性に悪影響を与えることなく絶縁膜13の結晶性および結晶配向性を良好とすることができる。さらに絶縁膜13の上に第1超電導膜12に悪影響を与えないで二軸配向した多結晶体の第2超電導膜14を形成できる。
次に、本実施の形態に係る超電導積層体の実施例につい説明する。
[実施例1]
最初に、(LaAlO30.3−(SrAl0.5Ta0.530.7(LSAT)基板上に、第1超電導膜としての(Hg0.9Re0.1)Ba2CaCu2Oy膜を2段階法により形成した。なお、以下、(Hg0.9Re0.1)Ba2CaCu2Oy膜を(Hg,Re)−1212膜という。また、以下、実施例1および実施例第1超電導膜の(Hg,Re)−1212膜を第1(Hg,Re)−1212膜、第2超電導膜の(Hg,Re)−1212膜を第2(Hg,Re)−1212膜と略称する。
具体的には、大きさ5mm×10mmのLSAT基板(板厚0.5mm)上にパルスレーザ堆積(PLD)法により、室温下、真空雰囲気で、前駆体膜として非晶質体あるいは微結晶体のRe0.1Ba2CaCu2Oy膜(膜厚160nm)を形成して、次いでHgO膜(膜厚50nm)を形成した。
このようにして得られたHgO膜/Re0.1Ba2CaCu2膜/LSAT基板の積層体と、HgO、BaO、CaO、CuO粉末をモル比で1:2:1:2および0:2:1:2の比で各々混ぜ合わせた2種類のペレットを石英管に真空封入し、温度650℃〜775℃の温度で6時間熱処理を行い、その後冷却した。この熱処理により、前駆体膜は、その膜中にHgが取り込まれると共に結晶化し、多結晶の(Hg,Re)−1212膜に変換された。このようにして、第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体が得られた。
このようにして得られた第1(Hg,Re)−1212膜上にCeO2膜を形成した。具体的には、パルスレーザ堆積法により、基板温度500℃、酸素ガス圧6.65Pa(50mTorr)の酸素雰囲気中で、CeO2のターゲットにレーザーパルス(レーザ波長248nm、レーザパワー密度2mJ/cm2)を周波数10Hzに設定して15分間成膜を行った。このようにして多結晶体のCeO2膜(膜厚300nm)/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板からなる積層体が得られた。
このようにして得られた積層体のCeO2膜の表面に第2(Hg,Re)−1212膜を2段階法により形成した。形成条件は、第1(Hg,Re)−1212膜と同様とし、結晶化の際の熱処理の条件も第1超電導膜と同様とした。このようにして、第2(Hg,Re)−1212膜(膜厚160nm)/CeO2膜(膜厚300nm)/第1(Hg,Re)−1212膜(膜厚160nm)/LSAT基板の積層体が得られた。
このようにして得られた各成膜段階の積層体の結晶配向および結晶性をX線回折法により確認した。
図3は、実施例1の第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図で、(A)はθ−2θスキャンパターン、(B)は(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターンを示す。図3(A)に示す回折線のうち、指数のみ記載された回折線は、(Hg,Re)−1212膜の回折線であり、図4(A)および図5(A)においても同様である。また、図3(B)のωスキャンパターンは、(005)面の回折線が検出される位置にX線検出器を配置し、X線の入射角を変化させてその角度ωに対する回折線の強度を測定したものであり、いわゆるロッキングカーブである。回折線の半値幅が小さいほど、その回折線を示す面(ここでは(005)面、すなわち、(00l)面(ここで、lは整数))の配向性が良好であることを示す。
図3(A)を参照するに、第1(Hg,Re)−1212膜は、LSAT基板の(00l)面に平行に、第1(Hg,Re)−1212膜のc面が配向して結晶成長したことが分かる。
図3(B)を参照するに、第1(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターンは、半値幅が0.24度であることが分かる。このことは、通常、半値幅が1度以下であれば結晶配向性が良好といわれているので、第1(Hg,Re)−1212膜の(005)面、すなわち(00l)面の結晶配向性が優れていることを示している。したがって、LSAT基板の(00l)面に平行にc面が配向し、かつ結晶配向性の良好な第1(Hg,Re)−1212膜が形成されていることが分かる。
図4は、実施例1のCeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図で、(A)はθ−2θスキャンパターン、(B)は第1(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターン、(C)はCeO2膜の(002)面の回折線についてのωスキャンパターンを示す。
図4(A)を参照するに、CeO2膜は、第1(Hg,Re)−1212膜のc面に平行に、CeO2膜の(00l)面が配向して結晶成長したことが分かる。
図4(B)を参照するに、第1(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターンは、半値幅が0.25度であることが分かる。CeO2膜を形成する前のωスキャンパターン(図3(B)に示す。)とほぼ同等の結晶配向性を示している。このことより、CeO2膜の形成により、第1(Hg,Re)−1212膜の結晶配向性が劣化していないことが分かる。
また、図4(C)を参照するに、CeO2膜の(002)面の回折線についてのωスキャンパターンは、半値幅が0.74度であることが分かる。CeO2膜の(002)面、すなわち(00l)面の結晶配向性が優れていることを示している。したがって、(Hg,Re)−1212膜上に結晶性の良好なCeO2膜が形成されていることが分かる。
したがって、第1(Hg,Re)−1212膜にダメージを与えずに結晶配向性の良好なCeO2膜を形成できることが確認できた。
図5は、実施例1の第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図で、(A)はθ−2θスキャンパターン、(B)は(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターン、(C)はCeO2膜の(002)面の回折線についてのωスキャンパターンを示す。
図5(A)を参照するに第2(Hg,Re)−1212膜は、CeO2膜の(00l)面に平行に、第2(Hg,Re)−1212膜のc面が配向して結晶成長したことが分かる。
ここで、図5(A)では第1および第2(Hg,Re)−1212膜の両方の回折線が重なっている。しかし、(00l)と異なった回折線、すなわち不純物由来の回折線が現れていないため、第1(Hg,Re)−1212膜が劣化あるいは分解等していないことが分かる。
図5(B)を参照するに、第1および第2(Hg,Re)−1212膜の(005)面の回折線についてのωスキャンパターンは、半値幅が0.20度であることが分かる。これは、図4(B)に示したCeO2膜を形成した後のωスキャンパターンよりも優れた結晶配向性を示している。すなわち、第2(Hg,Re)−1212膜の形成により、第1(Hg,Re)−1212膜の結晶配向性が劣化していないことが分かる。
また、図5(C)を参照するに、CeO2膜の(002)面の回折線についてのωスキャンパターンは、半値幅が0.71度であることが分かる。このことは、CeO2膜の(002)面、すなわち(00l)面の結晶配向性が優れていることを示している。したがって、第2(Hg,Re)−1212膜の形成により、CeO2膜の結晶配向性が劣化していないことが分かる。
したがって、第1(Hg,Re)−1212膜やCeO2膜にダメージを与えずに結晶配向性の良好な第2(Hg,Re)−1212膜を形成できることが確認できた。
図6(A)および(B)は、実施例1の超電導積層体のX線回折法によるφスキャンによる回折パターン図であり、(A)はCeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体、(B)は第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の回折パターンを示す。φスキャンは、積層体の面内配向性を示す回折パターン図であり、(Hg,Re)−1212の(103)面、CeOおよびLSATの(202)面の回折線が検出される角度にX線入射角とX線検出器を固定し、積層体を面内方向に360度回転させて得られる。なお、図6(B)のLSAT基板の回折線の強度はログスケールになっている。
図6(A)を参照するに、LSAT基板、第1(Hg,Re)−1212膜、CeO2膜から各々90度おきに回折線が観察されている。このことから、LSAT基板、第1(Hg,Re)−1212膜、CeO2膜はそれぞれ面内配向していることが分かる。
また、図6(B)を参照するに、CeO2膜上に第2(Hg,Re)−1212膜を形成した後でも、LSAT基板、第1(Hg,Re)−1212膜、CeO2膜の回折線が図6(A)と同じ位置に観察され、面内配向性が維持されていることが分かる。また、第2(Hg,Re)−1212膜の面内方向の結晶配向方向は、第1(Hg,Re)−1212膜の結晶配向方向と同方向であることが分かる。
さらに、図6(A)および図6(B)に示す回折線について、第1超電導膜の(Hg,Re)−1212膜の(103)面の回折線の半値幅は0.9度、CeO2膜の(202)面の回折線の半値幅は1.4度であった。
したがって、図6(A)および図6(B)により、第2(Hg,Re)−1212膜の形成により、第1(Hg,Re)−1212膜およびCeO2膜の結晶方位および結晶配向性が劣化しないことが確認できた。
図7(A)〜(C)は実施例1の各成膜段階の積層体表面のSEM写真であり、(A)は第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の第1(Hg,Re)−1212膜表面、(B)はCeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のCeO2膜表面、(C)は第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の第2(Hg,Re)−1212膜表面を示す。
図7(A)〜(C)を参照するに、図7(A)および図7(B)に示す第1(Hg,Re)−1212膜とCeO膜の表面には段差や穴などの欠陥がほとんど観察されず、非常に平滑な表面が形成されていることが分かる。また、図7(C)に示すように、第2(Hg,Re)−1212膜の表面には大きさが数μmの粒(グレイン)が観察された。しかし、大きさが数μmの粒の数は少ないので、表面性が良好であることが分かる。したがって、図7(A)〜(C)によっても、結晶性の良好な膜からなる超電導積層体が形成されていることが確認できた。
図8は、超電導積層体の第1(Hg,Re)−1212膜の各成膜段階の磁化率の温度依存性を示す図である。磁化率はQuantum Design社のMPMS(商品名)により、温度を10Kから130Kまで昇温しながら測定した。なお、ゼロ磁場中で冷却後に試料に磁場を印加し、低温側から昇温して、磁化率が初めて0.0となる温度を臨界温度とした。また、図中、“○”で示す特性は、第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の特性、“△”で示す特性は、CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の特性、“□”で示す特性は、第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の特性を示す。
図8を参照するに、第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体の状態では、臨界温度は113Kであり、その上にCeO2膜を積層することで、臨界温度が109Kを示した。さらに、CeO2膜上に第2(Hg,Re)−1212膜を積層すると、臨界温度は115Kに上昇した。
このことから、CeO2膜を形成した後でも、第1(Hg,Re)−1212膜の超電導特性はほぼ維持されることが確認できた。また、第2(Hg,Re)−1212膜を形成した後でも超電導特性が良好であることが確認できた。
図9は、実施例1の超電導積層体の抵抗率の温度依存性を示す図であり、(A)は第1(Hg,Re)−1212膜、(B)は第2(Hg,Re)−1212膜の特性を示す図である。図9(A)および(B)は、縦軸は抵抗率、横軸は温度を示し、電気抵抗は四端子法により測定した。なお、第1(Hg,Re)−1212膜の電気抵抗を測定する際には、第2(Hg,Re)−1212膜およびCeO2膜の一部を除去して測定を行った。なお、図9の試料は、実施例1の方法で形成したものであるが、図8に示した試料とは異なる試料である。
図9(A)および(B)を参照するに、第1(Hg,Re)−1212膜の臨界温度は118K、第2(Hg,Re)−1212膜の臨界温度は113Kであり、さらに、電気抵抗の点からもほぼ同等の超電導特性を有する超電導積層体が形成できたことが確認できた。
以上により、実施例1によれば、超電導特性が良好で、下層と上層の超電導特性の揃った第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体が得られた。

[実施例2]
実施例1において、CeO2膜を形成する際の温度条件が与える影響を調べた。具体的には、実施例1の成膜方法を用いて、第1(Hg,Re)−1212膜の加熱温度を200℃〜750℃の範囲で50℃ごとに異ならせ、9種類のCeO2膜(膜厚300nm)/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体を形成した。
図10は、実施例2の積層体の第1(Hg,Re)−1212膜およびCeO2膜の特性図である。図10は、積層体のCeO2膜の結晶配向性、第1(Hg,Re)−1212膜については、結晶配向性、CeO2膜の堆積前後の表面状態の変化、および超電導臨界温度を示す。なお、これらの特性は、実施例1と同様の測定法により得られたものであり、その説明を省略する。
図10を参照するに、CeO2膜の結晶配向性についてみると、250℃以下ではCeO2膜は無配向であり、300℃以上かつ750℃以下で二軸配向の状態であることが分かる。
一方、第1(Hg,Re)−1212膜についてみると、結晶配向性は200℃以上かつ600℃以下で二軸配向の結晶状態が維持され、650℃以上で結晶配向性が劣化していることが分かる。また、表面状態は、200℃以上かつ600℃以下で変化はなく、650℃以上で表面性が劣化していることが分かる。さらに、CeO2膜を堆積後の超電導特性は、200℃以上かつ600℃以下で臨界温度にほとんど変化はなく、650℃以上で超電導特性を示さず第1(Hg,Re)−1212膜が分解していることが分かる。
以上により、実施例2によれば、CeO2膜を形成する際の下地となる第1(Hg,Re)−1212膜の加熱温度は、300℃以上でかつ600℃以下の温度範囲に設定することで、第1(Hg,Re)−1212膜に悪影響を与えず、かつ結晶配向性の良好なCeO2膜を形成できることが確認できた。

(第2の実施の形態)
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る超電導積層体の断面図である。本発明の第2の実施の形態に係る超電導積層体は、第1の実施の形態に係る超電導積層体の変形例である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図11を参照するに、超電導積層体20は、基板10と、基板10上に、第1超電導膜12と、絶縁膜積層体21と、第2超電導膜14が順次積層して構成される。絶縁膜積層体21は、第1超電導膜12側から、第1絶縁膜13aと、第2絶縁膜23と、第3絶縁膜13bが順に積層してなる。
第1絶縁膜13aおよび第3絶縁膜13bは、第1の実施の形態の絶縁膜と同様の材料から構成される。第1絶縁膜13aは、第1超電導膜12上にエピタキシャル成長して形成され、第3絶縁膜13bは、第2絶縁膜23上にエピタキシャル成長して形成される。
第2絶縁膜23は、第1絶縁膜13a上にエピタキシャル成長し、第3絶縁膜13bをエピタキシャル成長させる絶縁性材料から選択される。このような絶縁性材料としては、例えば、BaZrO3、SrZrO3、CaZrO3、SrSnO3、MgO、イットリウム安定化ジルコニア、Gd2Zr23が挙げられる。イットリウム安定化ジルコニアは、例えば、Y0.15Zr0.851.93が挙げられる。
超電導積層体20は、第2絶縁膜23の絶縁性材料を適宜選択することで以下のような効果がある。例えば、超電導積層体20を使用する電子デバイスの使用周波数帯で誘電特性が優れた絶縁性材料を第2絶縁膜23に用いることで、超電導積層体20の使用周波数帯における電気特性を向上できる。また、第2絶縁膜23の厚さを適宜選択することで、第1絶縁膜13aおよび第3絶縁膜13bを薄膜化しつつ、第1超電導膜12と第2超電導膜14との電気的な絶縁性を確保できる。
第2絶縁膜23の厚さは、特に制限されないが、200nm〜1000nmの範囲に設定することが好ましい。第2絶縁膜23は200nmよりも薄いと第1超電導膜12と第2超電導膜14が電気的に短絡するおそれがあり、1000nmよりも厚いと結晶配向性が低下するおそれがある。
なお、第2絶縁膜23は、第1絶縁膜13aおよび第3絶縁膜13bと同様に、PLD法やスパッタ法により形成する。
例えば、絶縁膜積層体21の具体的な構成例としては、例えば、第1絶縁膜13a:CeO2膜(厚さ20nm)、第2絶縁膜23:Y安定化ジルコニア(厚さ300nm)、第3絶縁膜23:CeO2膜(厚さ20nm)が挙げられる。これらの絶縁膜積層体21の各々の膜は、例えばPLD法により各々の膜の材料からなるターゲットを使用し、酸素雰囲気中で基板を500℃に加熱して形成する。
なお、第1超電導膜12および第2超電導膜14の形成方法は、第1の実施の形態の超電導積層体と同様であるので、その説明を省略する。
本実施の形態の超電導積層体は、第1絶縁膜13aと第3絶縁膜13bとの間に、第1絶縁膜13aおよび第3絶縁膜13bと異なる材料の第2絶縁膜23を用いることで、第1超電導膜12と第2超電導膜14との間の電気特性を向上することができる。また、超電導積層体の用途に合わせて誘電特性や絶縁膜積層体21の厚さを適切に選択できる。

(第3の実施の形態)
図12は、本発明の第3の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の斜視図である。
図12を参照するに、ジョセフソン接合素子30は、バイクリスタル基板31と、バイクリスタル基板31上に形成された水銀系超電導膜からなる粒界接合層32と、絶縁膜33と、水銀系超電導膜からなる磁気遮蔽層34から構成され、粒界接合層32は粒界接合部32aを有する。
ジョセフソン接合素子30は、第1の実施の形態の基板の換わりにバイクリスタル基板31を用いて形成される。バイクリスタル基板31は、2つの基板31−1、31−2からなる。基板31−1、31−2の各々は、第1の実施の形態の基板と同様の材料からなる。バイクリスタル基板31は、基板接合部31aにおいて、2つの基板31−1、31−2をa軸の結晶方位(図12に示す[100]結晶方位)を所定の角度(例えば20度)だけずらして接合されている。
粒界接合層32は、2つの超電導膜32−1、32−2と、これらの界面に形成された粒界接合部32aからなる。すなわち、粒界接合層32は、超電導膜32−1、32−2の各々は、基板31−1、31−2上にエピタキシャル成長し、基板接合部上に自己組織的に粒界接合部32aが形成されたものである。2つの超電導膜32−1、32−2と粒界接合部32aとはジョセフソン接合を形成している。なお、超電導膜32−1、32−2の各々は第1の実施の形態の第1超電導膜と同様の材料、つまり水銀系超電導膜であり、その厚さも同様の範囲に設定される。
絶縁膜33は、第1の実施の形態の絶縁膜と同様の材料からなり、その厚さも同様の範囲に設定される。磁気遮蔽層34は、第1の実施の形態の第2超電導膜と同様の材料からなり、厚さも同様の範囲に設定される。磁気遮蔽層34も水銀系超電導膜であるので、粒界接合層32とほぼ同じ温度で超電導状態になる。したがって、磁気遮蔽層34をグランドプレーンとすることで、SFQ回路が実現できる。
なお、ジョセフソン接合素子30の製造方法は、バイクリスタル基板31を用いること以外は、第1の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
従来は、水銀系超電導膜からなる粒界接合層が一層のジョセフソン接合素子しか得られていなかった。しかし、本実施の形態によれば、粒界接合層32の上に絶縁膜33を介して水銀系超電導膜の磁気遮蔽層34を設けることができる。したがって、超電導臨界温度が高く、磁気遮蔽層を有するジョセフソン接合素子が実現できる。つまり、このようなジョセフソン接合素子により、超電導回路への外部磁場遮蔽、超電導配線のインダクタンスの低減、およびグランド電極の形成ができるため、SFQ回路の作製が可能となる。その結果、従来のYBCOを用いたSFQ回路よりも高温で動作するSFQ回路が実現できる。

(第4の実施の形態)
図13は、本発明の第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の断面図である。図13は接合部の構造を強調するため厚さ方向が拡大されている。
図13を参照するに、ジョセフソン接合素子40は、基板41と、基板41上に形成された第1超電導電極膜42と、第1超電導電極膜42の傾斜端面に形成された接合層46と、第1超電導電極膜42の上面に形成された絶縁膜43と、基板41、接合層46、および絶縁膜43の表面を覆う第2超電導電極膜45等から構成される。
基板41、第1超電導電極膜42および第2超電導電極膜45、絶縁膜43は、それぞれ、図1に示す第1の実施の形態の基板11、第1超電導膜12および第2超電導膜14、絶縁膜13と同様の材料から構成され、これらの説明を省略する。
接合層46は、第1超電導電極膜42の界面を改質して得られる非超電導体である。接合層46は第1超電導電極膜42の傾斜面をArイオン等のイオン照射により結晶質から非晶質にした後、第2超電導電極膜45の形成時に非超電導体に改質されたものである。なお、接合層46は、非晶質体の超電導体への再結晶化抑制の点で、La、Ga等の元素をドープしてもよい。また、接合層46の厚さは、例えば1nm〜数nm程度に設定される。
このように、第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子40は第1超電導電極膜42が改質された接合層46を有するランプエッジ型であり、接合層46とこれを挟む第1超電導電極膜42および第2超電導電極膜45によりジョセフソン接合が形成されている。
次に第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の製造方法を説明する。
図14(A)〜(F)は、第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の製造工程図である。
最初に、図14(A)の工程では、基板41上に第1超電導電極膜42、絶縁膜43を順に形成する。第1超電導電極膜42は、第1の実施の形態の第1超電導膜と同様にして2段階法により形成する。絶縁膜43は、第1の実施の形態の絶縁膜と同様にしてPLD法を用いて形成する。
次いで、図14(B)の工程では、絶縁膜43上にレジスト膜47を形成し、レジスト膜47をパターニングしてランプエッジを形成する位置を開口する。次いで、レジスト膜47のリフロー処理を行い、レジスト膜47の側端面を緩やかな傾斜面にする。
次いで、図14(C)の工程では、レジスト膜47をマスクとして、Arイオン照射により絶縁膜43および第1超電導電極膜42のエッチング処理を行う。Arイオン照射は、入射方向を基板41表面に対し30°傾きを持たせ、基板41を回転させながら行う。その結果、絶縁膜43および第1超電導電極膜42になだらかな傾斜面を有する側端面が形成される。
次いで、図14(D)の工程では、第1超電導電極膜42の傾斜面にArイオンを例えば加速電圧500Vに設定して照射し接合層46を形成する。接合層46は、このイオン照射により第1超電導電極膜42の結晶質が非晶質に改質されたものである。照射時間は形成する接合層46の厚さに応じて適宜選択する。
次いで、図14(E)の工程では、基板41の表面、接合層46および絶縁膜43の傾斜面に例えばLSAT膜等のドープ層48を極薄く形成する。ドープ層48は、次の第2超電導電極膜45の形成工程での加熱処理により、ドープ層48中のLa等を接合層46に導入する役割を果たす。なお、ドープ層48はPrGaO3でもよい。
次いで、図14(F)の工程では、ドープ層48、すなわち基板41の表面、第1超電導電極膜42の傾斜面および絶縁膜43の表面を覆う第2超電導電極膜45を2段階法により形成する。第2超電導電極膜45は、具体的には、第1の実施の形態の第2超電導膜と同様にして形成する。以上により図14(F)に示すジョセフソン接合素子40が形成される。
本実施の形態によれば、接合層46と、接合層46を介して水銀系超電導膜の第1超電導電極膜42と第2超電導電極膜45からなるランプエッジ型のジョセフソン接合素子40が形成される。水銀系超電導膜を用いた本実施の形態に係るランプエッジ型のジョセフソン接合素子40は、本願発明者等が世界で初めて形成したものである。また、本実施の形態に係るジョセフソン接合素子40は、超電導臨界温度が高いので、冷却コストを低減できる。
[実施例3]
水銀系超電導電極膜とCeO2膜からなる積層膜からなる界面改質ランプエッジ型のジョセフソン接合素子を作製した。
最初に、SrTiO3基板上に第1超電導電極膜として、厚さ160nmの(Hg,Re)−1212膜を実施例1と同様にして2段階法により作製した。
次いで、(Hg,Re)−1212)膜を500℃に加熱して、その上にPLD法により酸素雰囲気下で300nm厚のCeO2膜を堆積した。
次いで、このようにして得られた(Hg,Re)−1212膜とCeO2膜を、Arイオンエッチングにより斜面角度30度のランプ構造に加工した。
次いで、(Hg,Re)−1212膜のランプ斜面にArイオンビームを照射してダメージを与え、アモルファス層を形成した。この際のArイオンの加速電圧を500V、照射時間を5分とした。
次いで、アモルファス層を含む積層体の表面全体に、PLD法により室温下でLSAT膜を極薄く形成した。具体的には、LSATからなるターゲットを使用してパルス周波数5Hz、堆積時間を10秒とした。堆積したLSAT膜は非晶質であり、その厚さは約1nm程度と推定される。LSAT膜は、アモルファス層にLaをドープし、アモルファス層の超電導体への再結晶化を抑制することを目的としたものである。
次いで、LSAT膜の上に第2超電導電極膜として(Hg,Re)−1212膜を、実施例1とほぼ同様にして、再び2段階法により堆積した。具体的には、前駆体膜を結晶化させる熱処理は、650℃30分の前反応の後、725℃5時間行った。
このようにして第2超電導電極膜の(Hg,Re)−1212膜が結晶化した積層体の第1超電導電極膜と第2超電導電極膜にAu電極をスパッタ法により形成し、次いで、5μm幅のジョセフソン接合素子に加工した。以上により、アモルファス層の接合部と、(Hg,Re)−1212膜の第1超電導電極膜および第2超電導電極膜からなるジョセフソン接合素子を形成した。なお、上記の(Hg,Re)−1212は、(Hg0.9,Re0.1)Ba2CaCu2Oyを使用した。
図15は、実施例3のジョセフソン素子の電流−電圧特性図であり、(A)は100K、(B)は107Kにおける特性を示している。
図15(A)および(B)を参照するに、100Kおよび107Kにおいて、電流−電圧特性はオーバーダンプ型の抵抗シャント型接合(RSJ)特性を示している。さらに、図示していないが110Kにおいてもゼロ電圧状態が生じていることを確認できた。
また、実施例3のジョセフソン素子は、100Kにおいて、ジョセフソン素子に種々の大きさの外部磁場を印加してジョセフソン接合を流れる臨界電流量との関係を調べると、ゼロ磁場における臨界電流に対して60%程度の変調を示した。これは、ジョセフソン接合を流れるトンネル電流(ジョセフソン電流)の外部磁場による変調現象である。すなわち、ジョセフソン接合素子が動作することを示している。
以上の結果により、実施例3によれば、水銀系超電導層を用いて界面改質ランプエッジ型のジョセフソン接合素子が実現できた。さらに、実施例3のジョセフソン接合素子は、110K以下で動作することが確認できた。

(第5の実施の形態)
図16(A)本発明の第5の実施の形態に係る超電導量子干渉デバイスの平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。なお、(A)のB−B線断面図を示していないが、(B)と同様である。
図16(A)および(B)を参照するに、第5の実施の形態に係る超電導量子干渉デバイス(SQUID)は、dc−SQUIDであり、並列に接続した2つのジョセフソン接合素子から構成される。
SQUID50は、2つのランプエッジ型のジョセフソン接合素子からなり、基板51と、基板51上に形成された第1超電導電極膜52と、第1超電導電極膜52の傾斜端面に形成された接合層56A、56Bと、第1超電導電極膜52の上面に形成された絶縁膜53と、基板51、接合層56A、56Bおよび絶縁膜53の表面を覆う第2超電導電極膜55等から構成される。
SQUID50は、第2超電導電極膜55が基板21上で2つに分岐して各々、第1超電導電極膜52の先端部を覆い、その覆われた先端部に接合層56A、56Bが形成されている。SQUID50は、2つのジョセフソン接合素子が接続されたループ中の磁束変化を電圧変化として検知するものである。
SQUID50の各々のジョセフソン接合素子は、図13に示す第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子40と同様の構成からなり、製造方法もほぼ同様であるのでその説明を省略する。
SQUID50は、第1超電導電極膜52および第2超電導電極膜55が水銀系超電導膜からなるので従来の他の超電導材料膜を用いたジョセフソン接合素子40よりも超電導臨界温度が高く、冷却コストを低減できる。さらに、従来よりも高い温度で超電導状態が実現されるので、より小型の冷凍機を用いてSQUID50を構成できる。その結果、SQUIDの小型化を図ることができる。このようなSQUID50は、多数のSQUIDを必要とする検査装置、例えば脳波から生じる磁界を検知する検査装置に好適である。
なお、第1超電導電極膜52および第2超電導電極膜55の分岐した先端部のいずれか一方にのみ接合部を形成したrf−SQUIDを構成してもよい。
また、SQUID50と同様にして、ジョセフソン接合素子を並列に多数配列したSFQ回路を形成できる。SFQ回路は、例えば論理素子やメモリ素子として用いることができる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の第1の実施の形態に係る超電導積層体の断面図である。 (A)〜(D)は第1の実施の形態に係る超電導積層体の製造工程図である。 (A)および(B)は実施例1の第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図である。 (A)〜(C)は実施例1のCeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図である。 (A)〜(C)は実施例1の第2(Hg,Re)−1212膜/CeO2膜/第1(Hg,Re)−1212膜/LSAT基板の積層体のX線回折パターン図でる。 (A)および(B)は実施例1の超電導積層体のX線回折法のφスキャンによる回折パターン図である。 (A)〜(C)は実施例1の各成膜段階の積層体表面のSEM写真である。 実施例1の超電導積層体の第1(Hg,Re)−1212膜の各成膜段階の磁化率の温度依存性を示す図である。 実施例1の超電導積層体の抵抗率の温度依存性を示す図であり、(A)は第1(Hg,Re)−1212膜、(B)は第2(Hg,Re)−1212膜の特性を示す図である。 実施例2の積層体の第1(Hg,Re)−1212膜およびCeO2膜の特性図である。 本発明の第2の実施の形態に係る超電導積層体の断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の斜視図である。 本発明の第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の断面図である。 (A)〜(F)は第4の実施の形態に係るジョセフソン接合素子の製造工程図である。 (A)および(B)は実施例3のジョセフソン素子の電流−電圧特性図である。 (A)は本発明の第5の実施の形態に係る電子装置の平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
符号の説明
10、20 超電導積層体
11、41、51 基板
12 第1超電導膜
12A、14A 前駆体膜
12B、14B HgO膜
13、23、33、43、53 絶縁膜
13a 第1絶縁膜
13b 第3絶縁膜
14 第2超電導膜
21 絶縁膜積層体
23 第2絶縁膜
30、40 ジョセフソン接合素子
31 バイクリスタル基板
32 粒界接合層
32a 粒界接合部
34 磁気遮蔽層
42、52 第1超電導電極膜
45、55 第2超電導電極膜
46、56A、56B 接合層
50 超電導量子干渉デバイス(SQUID)

Claims (14)

  1. 基板と、
    前記基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが順次エピタキシャル成長により形成された超電導積層体であって、
    前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、
    前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とする超電導積層体。
  2. 基板と、
    前記基板上に、第1の超電導膜と、第1の絶縁膜と、第2の絶縁膜と、第3の絶縁膜と、第2の超電導膜とが順次エピタキシャル成長により形成された超電導積層体であって、
    前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、
    前記第1の絶縁膜および第3の絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなり、
    前記第2の絶縁膜が、BaZrO3、SrZrO3、CaZrO3、SrSnO3、MgO、イットリウム安定化ジルコニア、およびGd2Zr27からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とする超電導積層体。
  3. 前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、(Hg、Re)X2CaCu2yあるいは(Hg、Re)X2Ca2Cu3yからなり、XがBaおよびSrのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の超電導積層体。
  4. 前記第1の超電導膜または第2の超電導膜は、(Hg1-xa、Rexa)Ba2CaCu2yであることを特徴とする請求項1または2記載の超電導積層体(ただし、xaは0.0以上かつ0.3以下である。)。
  5. 前記第1の超電導膜または第2の超電導膜は、(Hg1-xb、Rexb)Ba2Ca2Cu3yからなることを特徴とする請求項1または2記載の超電導積層体(ただし、xbは0.0以上かつ0.3以下である。)
  6. 前記基板は、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、LaAlO3、およびSrTiO3からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の超電導積層体。
  7. 前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、膜面内の所定の結晶方位に沿ってX線回折法により測定したロッキングカーブの半値幅が5度以下であることを特徴とする請求項1〜5のうち、いずれか一項記載の超電導積層体。
  8. 第1の基板と第2に基板とを互いに所定の結晶方位をずらして接合してなる基板接合部を有するバイクリスタル基板と、
    前記第1の基板および第2の基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが順次エピタキシャル成長により形成されてなり、
    前記第1の超電導膜は、前記基板接合部に対応する位置に粒界接合部を有するジョセフソン接合を形成してなり、
    前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、
    前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とするジョセフソン接合素子。
  9. 基板と、
    前記基板上に、一側端面が傾斜面からなる第1の超電導電極膜と、
    前記第1の超電導電極膜上に、前記傾斜面と連続する傾斜面が設けられた絶縁膜と、
    前記第1の超電導電極膜の傾斜面の表面に形成されたトンネル障壁層と、
    前記基板の表面、トンネル障壁層および絶縁膜の傾斜面を含む表面を覆う第2の超電導電極膜とを備え、
    前記第1の超電導電極膜、絶縁膜、および第2超電導電極膜は、各々その下地上にエピタキシャル成長してなり、
    前記第1の超電導電極膜および第2の超電導電極膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、
    前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなることを特徴とするジョセフソン接合素子。
  10. 前記トンネル障壁層は、第1の超電導電極膜と同一元素を含む非超電導体からなることを特徴とする請求項9記載のジョセフソン接合素子。
  11. 請求項8〜10のうち、いずれか一項記載のジョセフソン接合素子を備える電子装置。
  12. 基板と、
    前記基板上に、第1の超電導膜と、絶縁膜と、第2の超電導膜とが形成された超電導積層体であって、
    前記第1の超電導膜および第2の超電導膜は、水銀、元素M、銅、および酸素を含み、元素MがBa、Sr、およびCaからなる群のうち、少なくとも1つからなり、
    前記絶縁膜が、CeO2、SrTiO3、(LaAlO30.3(SrAl0.5Ta0.530.7、およびSrAl0.5Ta0.53からなる群のうち、いずれか1つからなる超電導積層体の製造方法であって、
    前記基板上に第1の超電導膜を形成する第1の工程と、
    前記第1の超電導膜上に絶縁膜を形成する第2の工程と、
    前記絶縁膜上に第2の超電導膜を形成する第3の工程と、を備え、
    前記第2の工程は、酸素雰囲気中で300℃以上でかつ600℃以下の範囲に第1の超電導膜を加熱して、前記絶縁膜を堆積することを特徴とする超電導積層体の製造方法。
  13. 前記第3の工程は、
    絶縁膜上に前駆体膜およびHgO膜を順次形成した積層体と、水銀、元素M、銅、および酸素を主成分とする第1のペレットと、元素M、銅、および酸素を主成分とする第2のペレットとを密閉容器に真空封入し、650℃〜775℃の範囲に加熱することを特徴とする請求項12記載の超電導積層体の製造方法。
  14. 前記絶縁膜はパルスレーザ堆積法により堆積することを特徴とする請求項12または13記載の超電導積層体の製造方法。
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