JP2006216162A - 回折光学素子および光ピックアップ装置 - Google Patents

回折光学素子および光ピックアップ装置 Download PDF

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一也 宮垣
Hiroyoshi Funato
広義 船戸
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Hiroyuki Sugimoto
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Abstract

【課題】複数の領域に分割された回折格子部の作製時に領域ずれを低減し、領域間の隙間や重なりを低減することにより、光利用効率の高い回折光学素子を実現する。
【解決手段】本発明に係る回折光学素子では、回折格子部は格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域61,62a,63aに分割され、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行である。また、本発明の回折光学素子では、回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域61,62a,63aは、光干渉露光、もしくは、マスター回折光学素子を用いた複製露光により作製されるため、微細ピッチの周期構造を作製でき、かつ、少なくとも3つ以上の領域の格子ベクトルが平行となるように形成しているため、未完全な格子領域を少なくすることができ、高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子を実現することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の格子領域に分割された回折格子部を有する回折光学素子と、その回折光学素子を用いた光ピックアップ装置に関する。
従来、CD(コンパクト・ディスク)系やDVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)系等の光ディスクに光学的に情報を記録または再生する光ディスク装置に搭載される光ピックアップ装置が知られているが、このような光ピックアップ装置で、光ディスクへの照射光と、光ディスクからの反射光とを分離する光学素子として、複数の格子領域に分割された回折格子部を有する回折光学素子を用いたものが種々提案されている(例えば特許文献1、特許文献2等)。なお、ここで言う回折格子とは、ホログラムを含む広義な意味での回折格子である。
ここで、特許文献1には、フォーカス検出用とトラック検出用の3つの異なる回折格子領域2a,2b,2cを同一平面上に配置した構成の回折光学素子(ホログラム素子)2を用いた光ピックアップ装置が記載されており、その実施形態には、図7に示すように、回折光学素子(ホログラム素子)2の3つの領域2a,2b,2cで格子の溝方向を全て同じ(格子ベクトルが全て平行)にした実施例と、図8に示すように、回折光学素子(ホログラム素子)2の3つの領域2a,2b,2cで格子の溝方向を非平行(格子ベクトルが非平行)にした実施例が記載されている。
一方、光ピックアップ装置や表示装置、光スイッチ等に用いられる回折光学素子としては種々のものが提案されているが、そのうち液晶を利用した回折光学素子としては、ポリマー分散型液晶回折光学素子(例えば特許文献3等)や、光硬化型液晶回折光学素子(例えば特許文献4等)などが知られている。
ここで、特許文献3には、電極を有する2枚の基板間に、透明固体材料(例えばポリマー)と液晶材料が交互に規則的に並んだ液晶位相回折格子の製造方法であって、基板上の透明固体材料と対向する基板を密着固定したのち、露光、現像を行って回折格子を形成し、次いで回折格子の溝に沿って液晶材料を注入することを特徴とする液晶位相回折格子の製造方法が記載されている。
また、特許文献4には、重合反応可能な液晶性を示す材料を含む光硬化性の未硬化物に、光干渉露光法を利用して光硬化性の未硬化物を層状に硬化させる工程と、次いで全体の硬化を完了する工程とを有し、その一方の工程でのみ外場を印加するか、両工程で異なる外場を印加することにより、その内部で屈折率が周期的に変化する層構造を有する体積ホログラム光学フィルムを製造することを特徴とする体積ホログラム光学フィルムの製造方法が記載されており、さらには、この製造方法で製造された体積ホログラム光学フィルムを電極付の基板間に挟持してなる液晶光学素子が記載されている。
特許第3435067号公報 特許第3110311号公報 特許第3156303号公報 特許第3315434号公報
近年、光ディスク装置の大容量化にともなって光ピックアップ装置用の光源の短波長化が進んでいる。また、ノート型パーソナルコンピュータなどの普及で薄型の光ピックアップ装置の要求もある。従来のCD系やDVD系の光ディスク装置に用いられる赤色のレーザ光源(例えばレーザ波長が780nmまたは660nm)では、薄型化のために回折光学素子を用いた光ピックアップ装置が既に製品化されている。ところが、近年開発された青色レーザ光対応の回折光学素子を用いた光ピックアップ装置は製品化されていない。これは、短波長化のために回折光学素子の格子ピッチが小さくなり、光利用効率を維持した微細周期構造の作製が困難なためである。具体的には、赤色DVD用の回折光学素子では、回折光学素子の回折角は20〜25°程度に設定されており、レーザ波長を660nmとすると、格子ピッチは1.6〜1.9μm程度になる。現状では、この格子ピッチの加工はフォトリソグラフィ技術などで作製可能であるが、レーザ波長が405nmの青色レーザ光になると、格子ピッチが0.96〜1.2μmと微細になり作製困難である。
フォトリソグラフィ技術を利用せずに微細な周期構造で偏光依存性の回折光学素子を作製可能なことは、例えば特許文献3に開示されている。これはポリマー分散型の液晶回折光学素子であり、このポリマー分散型の液晶回折光学素子を用いて図7や図8に示すような3領域分割の回折光学素子を作製するには、次の2つの方法が考えられる。
(1)二光束干渉露光で領域開口マスクを用いる方法
開口マスクと回折格子を作成する素子基板の拡大図を図9に示す。図9(a)は基板上に記録層を設けた素子基板20の記録層に、二光束B1,B2を直接照射して干渉縞を露光する状態を示し、(b)は基板間に記録層を設けた素子基板22の記録層に、二光束B1,B2を一方の基板を介して照射して干渉縞を露光する状態を示している。開口マスク21の開口部24は、3つの格子領域のうちの一つの領域に対応する部分のみを空けて残りを遮蔽している。例えば図7や図8の格子領域2aを露光する場合には、他の領域2b,2cに対応する部分を遮蔽する。同様に残りの領域2b,2cを順次露光すれば、3回の露光で一つの回折光学素子が完成する。
(2)回折光学素子の原版(マスター回折光学素子)を用いる方法
回折光学素子の原版(マスター回折光学素子)を用いる方法としては、まず、フォトリソグラフィ技術等を用いてマスター回折光学素子(原版)を作製する。次に、この原版を用いて0次光と1次光を発生させ、両者の光を基板上(または基板間)の記録層に照射し、干渉縞を発生させて回折光学素子を複製する。
ここで、図10は上記の(1)または(2)の方法で作製された回折光学素子の格子領域と受光素子32との位置関係の一例を表した図である。回折光学素子の3つの格子領域のうち、格子領域31aからの回折光はフォーカス検出用の受光素子32aに入射し、格子領域31b,31cからの回折光はそれぞれトラック検出用の受光素子32b,32cに入射する。
上記の作製方法(1)、(2)では、どちらの場合でも次の問題が発生する。例えば(1)の方法で図9の素子基板の記録層の領域23aの部分は、2つの光束B1,B2が異なる入射方向から照射されるため、所望の干渉縞が発生し回折格子(ホログラム)が作製可能な領域である。また、記録層の領域23bの部分は片側の光束しか照射されないため不完全に露光された領域である。さらに記録層の領域23cの部分は光束が照射されない未露光部である。このような状況で作製された3領域の回折光学素子は格子ベクトルに依存して、図10に示すように各領域31a,31b,31cの相対位置がずれる。このため回折格子が無い領域と重なる領域が発生する。この場合、回折格子が無い領域は、光ディスクからの反射光が信号検出用の受光素子に回折されずにレーザ光源側に進んでしまう。また、回折格子が重なっている領域では、一部がトラック検出用の受光素子32b,32cに、残りはフォーカス検出用受光素子32aに回折される。
1つ目の問題は、格子領域31b,31cで光利用効率に差が生じることになるため、トラック検出信号にオフセットが生じることである。2つめの問題は、回折光学素子の中心をまたいで不完全な領域が発生するため、光ディスクの情報信号(rf信号)が低下することである。
また、仮に、フォトリソグラフィ技術で3領域の格子ベクトルを平行とするように作製しようとしても、加工性能の限界で高効率の回折光学素子が作れない。
従来技術の問題点をまとめれば、不完全な格子領域を減らすために、3つの格子領域3a,3b,3cの格子ベクトルを平行にすることは赤色DVDでは可能であったが、青色光ディスク用途ではさらに微細ピッチとなり、現状のフォトリソグラフィ技術では高効率な回折光学素子が作製できない。従って、少しでも格子ピッチを大きくする(格子ベクトルの大きさを小さくする)には3つの格子領域の格子ベクトルを非平行にするほうが有利であった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、短波長用で薄型用途の回折光学素子において、複数の領域に分割された回折格子部の作製時に領域ずれを低減し、領域間の隙間や重なりを低減することにより、光利用効率の高い回折光学素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、その光利用効率の高い回折光学素子を用い、高光利用効率、高信頼性化、短波長化、薄型化を図ることができる高性能な光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明では以下のような技術的手段を採っている。
本発明の第1の手段は、複数の格子領域に分割された回折格子部を有する回折光学素子において、前記回折格子部は格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域に分割され、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行であることを特徴とするものである(請求項1)。なお、ここで言う回折格子とは、ホログラムを含む広義な意味での回折格子である。
本発明の第2の手段は、第1の手段の回折光学素子において、前記回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域は、光干渉露光によって形成し、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とするものである(請求項2)。
また、本発明の第3の手段は、第1の手段の回折光学素子において、前記回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域は、マスター回折光学素子を用いた複製露光によって作製し、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とするものである(請求項3)。
本発明の第4の手段は、第1、第2または第3の手段の回折光学素子において、各領域の格子ベクトルの大きさは、他の領域の格子ベクトルの大きさの整数倍ではないことを特徴とするものである(請求項4)。
また、本発明の第5の手段は、第1乃至第4のいずれか一つの手段の回折光学素子において、前記回折格子部は、液晶層とポリマー層が交互に形成されるポリマー分散型液晶回折格子であることを特徴とするものである(請求項5)。
本発明の第6の手段は、第1の手段の回折光学素子において、記録材料として光硬化型液晶を用い、前記回折格子部は第一の露光と第二の露光により形成し、前記第一の露光では、光干渉露光、または、マスター回折光学素子を用いた複製露光により、硬化部と未硬化部とを周期的に作製し、前記第二の露光では、前記未硬化部の配向状態を前記硬化部の配向状態と変わるように外部電界を印加しながら一本の光束により露光し、かつ、前記回折格子部には格子ベクトルの大きさの異なる少なくとも3つの領域を形成し、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とするものである(請求項6)。
本発明の第7の手段は、少なくとも光源と、受光素子部と、前記光源から出射される光をメインビームと複数のサブビームに分離するための回折格子と、そのメインビームと複数のサブビームに分離された光ビームを記録媒体に導き集光する光学系と、前記記録媒体で反射された復路の光ビームの光路を切り換えて前記受光素子部へと導くための回折光学素子とを備えた光ピックアップ装置であり、前記回折光学素子として、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の回折光学素子を用いたことを特徴とするものである(請求項7)。
また、本発明の第8の手段は、第7の手段の光ピックアップ装置において、前記光学系は、コリメートレンズとλ/4板および対物レンズからなることを特徴とするものである(請求項8)。
本発明の回折光学素子においては、回折格子部は格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域に分割され、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行であることにより、未完全な格子領域を少なくすることができ、高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子を実現することが可能となる。
また、本発明の回折光学素子では、回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域は、光干渉露光、もしくは、マスター回折光学素子を用いた複製露光により作製されるため、微細ピッチの周期構造を作製でき、かつ、少なくとも3つ以上の領域の格子ベクトルが平行となるように形成しているため、未完全な格子領域を少なくすることができ、高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子を実現することができる。
さらに本発明の回折光学素子では、上記の効果に加えて、各領域の格子ベクトルの大きさを他の格子ベクトルの大きさの整数倍ではないように設定することにより、不要な回折光が他の回折光と交わらず、高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子を実現することができる。
また、本発明の回折光学素子では、上記の効果に加えて、回折格子部を、液晶層とポリマー層が交互に形成されるポリマー分散型液晶回折格子、もしくは、光効果型液晶を用いた回折格子で構成することにより、偏光依存性の回折光学素子として機能させることができ、より一層、光利用効率が高い回折光学素子を実現することができる。
本発明の光ピックアップ装置は、記録媒体で反射された復路の光ビームの光路を切り換えて受光素子部へと導くための回折光学素子として、第1乃至第6の手段のいずれか一つの回折光学素子を用いているため、トラック信号にオフセットが生じないようにすることができ、高光利用効率、高信頼性化、短波長化、薄型化を図ることができる高性能な光ピックアップ装置を実現することができる。また、回折光学素子を偏光依存性の回折光学素子とすることで、より一層、光利用効率の高い光ピックアップ装置を実現することができる。
以下、本発明の構成、動作および作用を、図面を参照して詳細に説明する。
まず、第1の実施例として、二光束干渉露光法によって作製される回折光学素子の一例を説明する。本実施例の回折光学素子では、例えば図1(a)または(b)に示すように、回折格子部は格子ベクトル(図中の矢印で大きさと方向を示す)の大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域61,62a(62b),63a(63b)に分割されており、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行であることを特徴としている。
図2は二光束干渉露光法を用いて上記のような構成の回折光学素子を作製する際の光学系配置を示す図である。図2において、レーザ光源71からの出射光はシャッタ72を通過し、ミラー73a,73bで折り返されてハーフミラー74に至り、ハーフミラー74で透過光と反射光に二分される。二分されたそれぞれの光束はミラー75a,75bで光路を偏向され、対物レンズとピンホールの組み合わせによるスペイシャルフィルタ76a,76bで高次空間モードをカットされる。スペイシャルフィルタ76a,76bのピンホール通過後の発散光束は、それぞれコリメートレンズ77a,77bで平行光束化され、開口マスク78越しに記録材料79に照射され、二光束による干渉縞が記録材料79に露光される。
ここで、本実施例では二光束干渉露光法により回折光学素子の記録材料79に、3つの格子領域に分割された回折格子部を形成するが、3つの領域の露光方法としては、開口マスク78として開口形状の異なる3つのマスクを用意し、マスクを交換しながら3回露光する方法でも良いし、開口マスク78のマスク基板に3つの開口を位置をずらして配置し、各領域の露光を終了するごとに開口マスク78を所定の距離移動させ、次の開口部を選ぶという方法でも良い。
記録材料79としては、フォトレジストを用いることができ、例えば東京応化製のフォトレジストOFPR-8600を利用することができる。ただし、このフォトレジストは可視光域で光の吸収があるため、この二光束干渉露光で作製された回折光学素子をスタンパ原版に利用して、フォトポリマ(2P樹脂)による複製で回折光学素子を作製しても良い。
次に、図3は本実施例の回折光学素子を光ピックアップ装置に搭載した例を説明するための図である。光ピックアップ装置100は、光源である半導体レーザ(LD)102と光検出用の分割受光素子103とをケース内に一体に収納した半導体レーザユニット101と、半導体レーザ102から出射される光をメインビームと複数のサブビームに分離するための回折格子104と、図1(a)に示すような3つの格子領域61,62a,63aに分割された回折格子を有する回折光学素子105と、コリメートレンズ106とλ/4板および対物レンズ108からなる光学系とで構成される。また、符号109は記録媒体である光ディスクを表している。
半導体レーザ102からの出射光110は回折格子104によってメインビーム以外に複数のサブビーム(図示せず)が生成される。メインビームと複数のサブビームは回折光学素子105に入射される。回折光学素子105の透過光はコリメートレンズ106で平行光となりλ/4板107と対物レンズ108を経て光ディスク109に集光される。光ディスク109からの反射光は対物レンズ108、λ/4板107、コリメートレンズ106を経て回折光学素子105で回折され、回折光111は分割受光素子103で受光される。
回折光学素子105の回折格子部は、図1(a)または(b)に示すように、3つの領域61,62a(62b),63a(63b)に分割されている。このうち領域61はフォーカス検出用に用いるナイフエッジ法のための回折格子領域である。領域62a(62b)、63a(63b)はトラック検出用に用いられる回折格子領域であり、本実施例ではトラック検出にプッシュプル法を採用している。これら3つの領域61,62a(62b),63a(63b)の格子ベクトル(図中の矢印)は図1(a)または(b)のように平行とする。
図3に示す光ピックアップ装置に搭載する場合には、分割受光素子103のフォーカス信号検出用分割PD(フォトダイオード)部と、トラック検出用PD部は直線状に配置される。より具体的には、図1に示すように,分割受光素子103-(a)(または103-(b))は、フォーカス検出用PD部103aと、トラック検出用PD部103b,103cからなる。これらのPD部103a,103b,103cは、各々の中心(重心)がLD102の発光部と回折光学素子105の中心とを含む平面上に含まれる配置となる。本実施例では、回折光学素子105の領域61からの回折光がPD部103aに、同様に領域62a(62b)からの回折光がPD部103cに、領域63a(63b)からの回折光がPD部103bに受光される。ただし、領域61,62a(62b),63a(63b)とPD部103a,103b,103cの組み合せの順列は図1(a)または(b)以外でも良い。
本実施例の回折光学素子の構成の場合、二光束干渉露光時の開口マスク78と記録層79とのわずかな隙間で、図9(a)に示したように、所望の格子領域23aと、不完全領域23bに分けられる。しかし、3つの領域61,62a(62b),63a(63b)の格子ベクトルが平行な場合には、図1に示すように半径方向1本のみの部分が格子無し(同図(a))、または、2つの格子の交わった状態(同図(b))となる。このため未完全な格子領域を少なくすることができ、高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子を実現することができる。
本実施例によれば、光干渉露光によって記録層に回折光学素子を作製するため、格子ピッチ1μm前後の微細周期構造の作製が容易である。このため、短波長用で薄型の光ピックアップ用途に用いることができる。
図4は本発明の第2の実施例を示す複製露光法の説明図である。本実施例はマスター回折光学素子41を用いた複製露光法で回折光学素子を作製するものである。マスター回折光学素子41とは回折光学素子を複製露光で作製するための原版で有り、入射されるビームを0次光と1次光に二分させる。これら二つの光の干渉縞生成部に記録材料42cを配置させることによって、二光束干渉露光法のように回折光学素子を作製することができる。また、0次光と1次光に二分するということは、回折効率が50%程度で良いことを意味する。このため、格子ピッチ1μm前後のマスター回折光学素子41の作製は、現状のフォトリソグラフィ技術で作製できる。また、当然ながらマスター回折光学素子自体も回折格子部が3領域に分割されており、各領域の格子ベクトルは平行とする。
記録材料42cは、2枚の透光性基板42a,42bに挟まれた非重合性液晶と重合性モノマー(もしくはプレポリマー)の混合液である。マスター回折光学素子41から二分された光の干渉縞で光強度の強い部分では重合性モノマーが硬化しポリマーとなる。このとき非重合性液晶分子はポリマー層から分離され、その結果、ポリマー層と液晶層が光干渉縞と同ピッチで周期構造として作製される。液晶の常光屈折率、または、異常光屈折率とポリマーの屈折率を合わすことによって、再生時に特定の偏光に対して効率良く回折し、これに直交する偏光は回折しない偏光依存性の回折光学素子が作製できる。
記録材料に用いる非重合性液晶としては、ネマチック、コレステリック、スメクチックのいずれのタイプでも良く、従来公知のビフェニル、ターフェニル、フェニルシクロヘキサン、ビフェニルシクロヘキサン、安息香酸フェニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル、フェニルピリミジン、フェニルジオキサン、トラン、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン、1−フェニル−2−ビフェニルエタン、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン、ビフェニルカルボン酸フェニルエステル、4−シクロヘキシル安息香酸フェニルエステルなどを骨格とし、アルキル基、アルコキシ基や誘電異方性を付与するための極性付与基としてのシアノ基、ハロゲン基などを置換基として有する液晶などを用いることができる。この非重合性液晶材料は、重合性モノマーあるいはプレポリマーの合計量;100重量部に対して、20重量部〜500重量部の割合で使用されることが好ましい。
記録材料に用いる重合性モノマーまたはそのプレポリマーとしては、重合による硬化収縮が大きいものを用いることが好ましい。このような重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する光重合可能な化合物であって、1分子中に少なくともエチレン性不飽和二重結合を1個有する光重合、光架橋可能なモノマー、オリゴマー、プレポリマー及びそれらの混合物であり、モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸及びその塩、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられるが、特に2官能以上の多官能性モノマーは硬化収縮が大きく、好適に使用できる。不飽和カルボン酸のモノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、及びそれらのハロゲン置換不飽和カルボン酸、例えば塩素化不飽和カルボン酸、臭素化不飽和カルボン酸、弗素化不飽和カルボン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の塩としては前述の酸のナトリウム塩及びカリウム塩等がある。また、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等の多官能性のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、上記の他に熱重合禁止剤、可塑剤等が添加されても良い。
光重合反応のために光重合開始剤を前記液晶と前記モノマーの混合用液に添加することが望ましい。この光重合開始剤としては、ビアセチル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、α−アミノアルキルフェノン、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセンなどを例示することができる。特にビスアシルフォスフィンオキサイド系を用いることが好ましい。
マスター回折光学素子41の3つの格子領域の格子ベクトルの大きさを図1(a)または(b)のように設定すれば、同図(a)の場合、複製された回折光学素子は領域62a,63aに隙間が発生し、同図(b)の場合には領域62b、63bに重なり部分が生じる。しかし、トラック検出用の回折光学素子領域の格子ベクトルが、フォーカス検出用領域の格子ベクトルに比べて非平行(図8(b)の回折光学素子)となるようなマスター回折光学素子による複製では、図10に示すように、回折格子部の直径に相当する長さ分が、回折格子の無い領域と重なる領域となる。これに比べると本実施例では、回折格子部の半径の長さ分が回折格子の無い領域、または重なる領域であるため、光利用効率が高くなる。また、図10ではトラック検出信号にオフセットが生じるが、本実施例ではオフセットが発生しない。このため高信頼性となる。
なお、図10の回折光学素子に比べて本発明の回折光学素子では、格子ベクトルの大きさが大きい領域が一つ存在するが、ポリマー分散型回折光学素子を用いるため、サブミクロンの格子ピッチも問題無く作製が可能である。
また、ポリマー分散型回折光学素子は偏光依存性を有するので、光ピックアップ装置に用いる場合には、図3に示すようにλ/4板107と組み合わせることにより、往路の光ビームは高透過で光ディスク109に集光でき、光ディスク109からの復路ビームのみを分割受光素子103に向けて効率良く回折させることができ、光利用効率が高くなる。
本発明の第3の実施例では、回折光学素子の記録材料として光硬化型液晶を用い、回折格子部は第一の露光と第二の露光により形成し、第一の露光では、光干渉露光、または、マスター回折光学素子を用いた複製露光により、硬化部と未硬化部とを周期的に作製し、第二の露光では、未硬化部の配向状態を硬化部の配向状態と変わるように外部電界を印加しながら一本の光束により露光し、かつ、回折格子部には格子ベクトルの大きさの異なる少なくとも3つの領域を形成し、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたものである。
図5は本発明の第3の実施例の回折光学素子に用いる記録材料を説明するための図である。本実施例では、記録材料として光硬化型液晶82を用い、2枚の透光性基板81a,81bで光硬化型液晶82を挟んでいる。また、透光性基板81a,81bの光硬化型液晶側にはそれぞれ配向膜83を成膜することが望ましい。2枚の透光性基板81a,81bのうち、一方の透光性基板81aが薄い理由は、図4に示すような複製露光を行う場合に、マスター回折光学素子41側の基板を薄くして、マスター回折光学素子41と光硬化型液晶82までの距離を極力短くするためである。
次に露光方法の一例を示す。第一の露光として、図4に示したようなマスター回折光学素子41を用いた複製露光を行う場合には、マスター回折光学素子と上記液晶を含んだ基板を密着させる。露光ビームはマスター回折光学素子で0次光と2次光に二分され、これらによって干渉縞が発生する。この干渉縞に光硬化型液晶層82が配置され、光強度の強い部分が硬化する。このとき、配向膜83によって予め配向された方向で液晶分子が硬化される。次に、マスター回折光学素子41を外して外部電界を印加して第二の露光を行う。印加電界によって重合反応されていない液晶を透光性基板81aの法線方向に向かせ、この状態で重合させる。この2段階の露光によって、周期的に液晶の配向状態を変える構造になる。したがって、特定の偏光で回折し、これに直交する偏光では回折しない偏光依存性の回折光学素子を作製することができる。
本実施例では、実施例1,2と同様に、3つの領域の格子ベクトルを平行にする。また、本実施例の記録材料と露光方法によって偏光依存性の回折光学素子が作製できるため、これにより実施例2と同様に、光利用効率を高め、かつ、トラック検出信号にオフセットが発生しない高信頼性となる回折光学素子を実現することができる。
図6は本発明の第4の実施例を説明するための図であり、図の左側は回折光学素子の3領域分割された回折格子部を示しており、図の右側は多分割受光素子103の分割PD部を示している。図1と同様に、領域91はフォーカス検出用の回折格子領域であり、領域92,93はトラック検出用の回折格子領域である。この回折光学素子を図3に示す光ピックアップ装置に搭載する場合には、分割受光素子103のフォーカス信号検出用分割PD(フォトダイオード)部と、トラック検出用PD部は直線状に配置される。より具体的には、図6に示すように、分割受光素子103は、フォーカス検出用PD部103aと、トラック検出用PD部103b,103cからなる。これらのPD部103a,103b,103cは、各々の中心(重心)がLD102の発光部と回折光学素子105の中心とを含む平面上に含まれる配置となる。本実施例では、回折光学素子の領域91からの回折光がPD部103aに、同様に領域92からの回折光がPD部103cに、領域93からの回折光がPD部103bに受光される。
図6の回折光学素子では、各格子領域の矢印で示す格子ベクトルの大きさの小さい順に領域93,91,92としている。
仮に、領域93と92の格子ベクトルの大きさが1:2では、領域93の2次回折光はPD部103cに受光され、正しいトラック検出が出来なくなる。しかし、本実施例では、各領域の格子ベクトルの大きさが、それ以外の領域の格子ベクトルの大きさの整数倍とならないように設定される。このため、領域93の2次回折光94は多分割受光素子103のPD部103cを照射しない。この構成によれば、各領域から回折されたビームのうち不要回折光(例えば2次回折光)が対応しないPD部にフレア光となって受光されることが無い。このため、高信頼性の光ピックアップ装置を実現することができる。
以上説明したように、本発明によれば、複数の格子領域に分割された回折格子部を有する場合にも、高光利用効率で高信頼性の回折光学素子を実現することができる。そして、この回折光学素子を利用することにより、高光利用効率、高信頼性で、かつ、短波長化、薄型化を図ることができる高性能な光ピックアップ装置を実現することができる。そして、この光ピックアップ装置を利用することにより、青色レーザ光対応で高記録密度の光ディスク装置の実現が可能となる。
また、本発明の高信頼性でかつ高光利用効率の回折光学素子は、光ピックアップ装置の用途の他、画像表示装置等にも利用でき、さらには光スイッチや光分岐素子等にも利用することが可能である。
本発明の第1の実施例を説明するための図であって、回折光学素子の回折格子部の分割形状と、この回折光学素子を光ピックアップ装置に搭載したときの多分割受光素子の受光部の形状および配置関係を説明するための図である。 二光束干渉露光法を用いて第1の実施例の回折光学素子を作製する際の光学系配置を示す図である。 本発明の回折光学素子を搭載する光ピックアップ装置の構成例を示す図である。 本発明の第2の実施例を示す複製露光法の説明図である。 本発明の第3の実施例の回折光学素子に用いる記録材料を説明するための図である。 本発明の第4の実施例を説明するための図であって、回折光学素子の回折格子部の分割形状と、この回折光学素子を光ピックアップ装置に搭載したときの多分割受光素子の受光部の形状および配置関係を説明するための図である。 従来技術の一例を示す図であって、光ピックアップ装置の光学系の概略構成と、回折光学素子及び受光素子の形状および配置を説明する図である。 従来技術の別の例を示す図であって、光ピックアップ装置の光学系の概略構成と、回折光学素子及び受光素子の形状および配置を説明する図である。 回折光学素子の複数の格子領域を二光束干渉露光法と開口マスクを用いて作製する場合の説明図である。 図9に示す方法で作製された従来の格子ベクトルが非平行な回折光学素子の回折格子部の分割形状と、この回折光学素子を光ピックアップ装置に搭載したときの多分割受光素子の受光部の形状および配置関係を説明するための図である。
符号の説明
41:マスター回折光学素子(原版)
42a,42b:透光性基板
42c:記録材料
61、91:フォーカス検出用の回折格子領域
62a,62b,63a,63b,92,93:トラック検出用の回折格子領域
71:レーザ光源
72:シャッタ
73a,73b,75a,75b:ミラー
74:ハーフミラー
76a,76b:スペイシャルフィルタ
77a,77b:コリメートレンズ
78:開口マスク
79:記録材料
81a,81b:透光性基板
82:光硬化型液晶
83:配向膜
100:光ピックアップ装置
101:半導体レーザユニット
102:半導体レーザ(LD)
103:分割受光素子
104:回折格子
105:回折光学素子
106:コリメートレンズ
107:λ/4板
108:対物レンズ
109:光ディスク(記録媒体)

Claims (8)

  1. 複数の格子領域に分割された回折格子部を有する回折光学素子において、
    前記回折格子部は格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域に分割され、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行であることを特徴とする回折光学素子。
  2. 請求項1記載の回折光学素子において、
    前記回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域は、光干渉露光によって形成し、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とする回折光学素子。
  3. 請求項1記載の回折光学素子において、
    前記回折格子部の格子ベクトルの大きさが異なる少なくとも3つ以上の領域は、マスター回折光学素子を用いた複製露光によって作製し、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とする回折光学素子。
  4. 請求項1,2または3記載の回折光学素子において、
    各領域の格子ベクトルの大きさは、他の領域の格子ベクトルの大きさの整数倍ではないことを特徴とする回折光学素子。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の回折光学素子において、
    前記回折格子部は、液晶層とポリマー層が交互に形成されるポリマー分散型液晶回折格子であることを特徴とする回折光学素子。
  6. 請求項1記載の回折光学素子において、
    記録材料として光硬化型液晶を用い、前記回折格子部は第一の露光と第二の露光により形成し、前記第一の露光では、光干渉露光、または、マスター回折光学素子を用いた複製露光により、硬化部と未硬化部とを周期的に作製し、前記第二の露光では、前記未硬化部の配向状態を前記硬化部の配向状態と変わるように外部電界を印加しながら一本の光束により露光し、かつ、前記回折格子部には格子ベクトルの大きさの異なる少なくとも3つの領域を形成し、かつ、全ての領域の格子ベクトルが平行となるようにしたことを特徴とする回折光学素子。
  7. 少なくとも光源と、受光素子部と、前記光源から出射される光をメインビームと複数のサブビームに分離するための回折格子と、そのメインビームと複数のサブビームに分離された光ビームを記録媒体に導き集光する光学系と、前記記録媒体で反射された復路の光ビームの光路を切り換えて前記受光素子部へと導くための回折光学素子とを備え、前記回折光学素子として、請求項1乃至6のいずれか一つに記載の回折光学素子を用いたことを特徴とする光ピックアップ装置。
  8. 請求項7記載の光ピックアップ装置において、
    前記光学系は、コリメートレンズとλ/4板および対物レンズからなることを特徴とする光ピックアップ装置。
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